説明

ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】アイボックスへの光照射効率を向上することができ、視点移動に伴う表示像の輝度変化量を抑制することが可能であり、また望ましい配光角度特性を実現可能なヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置の照明光学系111は、光線L0を放出する光源111aと、光線L0を分割し光源111aの像を複数生成するレンズアレイ111cと、レンズアレイ111cにより生成される光源111aの像から発せられる光線L0を所定の角度で表示部材113に入射させるフィールドレンズ111dと、を有し、レンズアレイ111cは、レンズアレイ111cにより生成される光源111aの像面が、フィールドレンズ111dの物体側焦点に対してフィールドレンズ111dの主点側に位置するように配設されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々提案されているヘッドアップディスプレイ装置は、光源を含む照明光学系と液晶表示パネルとを備える液晶表示器から発せられる表示光を車両のフロントガラスや専用のコンバイナからなる投射部材を介して観察者(車両用ヘッドアップディスプレイ装置においては主に運転者)の視点範囲(以下、アイボックスとも称する)に投影して虚像を表示するものである。従来のヘッドアップディスプレイ装置として例えば特許文献1に開示されるものがある。かかるヘッドアップディスプレイ装置は、照明光学系として、発光素子が発した照明光を集光するコンデンサレンズと、コンデンサレンズによって集光された照明光を少なくとも横方向に広げるレンチキュラレンズと、トロイダル面を有する集光レンズと、を備えるものである。
【0003】
上述のような照明光学系を用いたヘッドアップディスプレイ装置によれば、観察者のアイボックスに対応するように表示部材を透過照明することが可能となり、高輝度で虚像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−169399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンチキュラレンズを用いたヘッドアップディスプレイ装置においては、光軸に対して斜め方向の大部分(特に、いわゆる斜め横、斜め縦方向以外の、縦横方向で同時に斜めになって進む光)で配光制御が困難であり光軸に対する上下左右方向の配光強度に比べて光軸に対する斜め方向の配光強度が低くなることから、観察者の視点移動に伴う表示像の輝度変化量が大きくなるという問題点があった。また、ヘッドアップディスプレイ装置にはプロジェクターなどとは異なる配光角度特性が求められており、望ましい配光角度特性を実現する必要があった。
【0006】
そこで本発明は、アイボックスへの光照射効率を向上することができ、視点移動に伴う表示像の輝度変化量を抑制することが可能であり、また望ましい配光角度特性を実現可能なヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、照明光学系と表示部材とを備える表示器から発せられる表示光を投射部材を介して観察者の視点領域に導いて虚像を表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照明光学系は、
光線を放出する光源と、
前記光線を分割し前記光源の像を複数生成するレンズアレイと、
前記レンズアレイにより生成される前記光源の像から発せられる前記光線を所定の角度で前記表示部材に入射させるフィールドレンズと、を有し、
前記レンズアレイは、前記レンズアレイにより生成される前記光源の像面が、前記フィールドレンズの物体側焦点に対して前記フィールドレンズの主点側に位置するように配設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アイボックスへの光照射効率を向上することができ、視点移動に伴う表示像の輝度変化量を抑制することが可能であり、また望ましい配光角度特性を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態であるヘッドアップディスプレイ装置の概観図。
【図2】同上ヘッドアップディスプレイ装置の断面図。
【図3】同上ヘッドアップディスプレイ装置における光路を説明する図。
【図4】同上ヘッドアップディスプレイ装置の第1のケース体の固定方法を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1から図4に基づいて、本発明を車両用のヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態を説明する。
【0011】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、図1に示すように車両200のインパネ210内部に配設され、後述する液晶表示器110が発する表示光Lをフロントガラス(投射部材)220を介して反射させ、車両200の運転者(観察者)Dのアイボックスに導いて虚像(表示像)Vを表示するものである。運転者Dは表示光Lによる虚像Vを風景を重畳させて視認することができる。
【0012】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、図2に示すように液晶表示器(表示器)110と、凹面鏡120と、ハウジング130と、放熱部材140と、から主に構成されている。
【0013】
液晶表示器110は、照明光学系111と、光拡散部材112と、液晶表示パネル(表示部材)113と、第1のケース体114と、第2のケース体115と、第3のケース体116と、を備えるものである。
【0014】
照明光学系111は、いわゆるケーラー照明光学系であり、図3に示すように、光源111aと、コンデンサレンズ111bと、レンズアレイ111cと、フィールドレンズ111dと、で構成される。また、照明光学系111は、光源111aから発せられる光線L0を液晶表示パネル113の有効領域に均等に照射させつつ、同光線を凹面鏡120とフロントガラス220とで構成される投射光学系を介して運転者Dのアイボックスへ導くように液晶表示パネル113面から射出される表示光Lの角度を制御するものである。
【0015】
光源111aは、LEDなどの発光素子からなり、光線L0を発する。光源111aは、回路基板(光源基板)117に実装されている。
【0016】
コンデンサレンズ111bは、波長587.56nmにおける屈折率Ndが1.4〜1.7である光学樹脂により作製される凸レンズからなり、光源111aから射出される光線L0を集光し、ヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aに対して平行化する機能を有する。コンデンサレンズ111bは、1個の光源111aに対して1つのレンズが対応し、本実施形態のように光源111aが複数使用される場合は、凸レンズ部が複数配置された集合レンズの形態を取る。コンデンサレンズ111bの有効焦点距離は5〜9mmであり、レンズ製造上の都合からレンズ曲面頂点間距離(レンズ厚さ)を一定以下に抑えたい場合など、仕様によっては2枚のレンズで構成してもよい。光源111aはその射出面がコンデンサレンズ111bの焦点に位置し、光源111aから射出される近軸光線がコンデンサレンズ111b透過後に光軸Aと平行になる。なお、コンデンサレンズ111bの入射側曲面頂点と光源111aの射出面との間隔は光源111aからの光取り込み量及び寸法制約などを条件として規定される。光源111aがランバシアン配光に近い特性を持つ場合、コンデンサレンズ111bの射出側曲面形状は球面を基本とするが、光源111aの配光特性に応じて非球面形状としてもよい。
【0017】
レンズアレイ111cは、波長587.56mmにおける屈折率Ndが1.4〜1.7である光学樹脂により作製される両凸レンズがヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aに対して垂直な平面に規則的に複数配置されてなる光学部材であり、コンデンサレンズ111bによって平行化された光線L0をアレイ数に応じて分割して中間像を結ぶ役割を有する。この中間像は、コンデンサレンズ111bによって生成される光源111aの拡大像をアレイ数で分割した像である。レンズアレイ111cは、各レンズの縦横幅を調整することにより、中間像面から射出される光線L0の配光角度(開口数)を、縦方向と横方向(液晶表示パネル113の短辺方向と長辺方向)とでそれぞれ異ならせて最適化することができる。各レンズの縦横幅の比(縦幅:横幅)は、液晶表示パネル113のアスペクト比(表示画面の縦横サイズ比)に略等しくなるように設定される。これにより、レンズアレイ111cで生成される中間像の形状が液晶表示パネル113の表示画面と相似となり、この中間像が後述するフィールドレンズ111dの作用で液晶表示パネル113に拡大照射されるため、液晶表示パネル113入射時の照明効率を向上させることができる。レンズアレイ111cにおいて、各レンズの曲面形状は球面(球面の一部を矩形で切り取った曲面)を基本とするが、曲面形状をトロイダル面のような非球面とすれば、各レンズの縦横幅を同等として縦方向、横方向の配光角度をそれぞれ最適化することも可能である。また、レンズアレイ111cの厚さ、すなわち曲面頂点間距離は、レンズの入射側曲面を基準として、レンズアレイ111cに入射した近軸平行光が屈折して集光する位置(設計上、この位置が前記中間像面と等しい)を出射側曲面とするように規定される。なお、レンズアレイ11cの入射側曲面と出射側曲面とは、互いに向きが逆の同じ曲率半径を有する、主平面対称の組み合わせとなる。また、レンズアレイ111c全体の縦横幅は、液晶表示パネル113面における出射光線の配光角度に合わせて規定される。例えば、フィールドレンズ111dの焦点距離が固定される場合、レンズアレイ111c全体の縦横幅が大きくなるに伴って液晶表示パネル113における射出光線の配光角度が広くなる。そのため、レンズアレイ111c全体の縦横幅が決定された後、コンデンサレンズ111bの有効曲面サイズが規定され、コンデンサレンズ111bの詳細設計が行われる。コンデンサレンズ111bとレンズアレイ111cの間隔は光学的な観点からは不問として良いが、製品寸法の小型化などを考慮すると極力短くすることが望ましい場合がある。
【0018】
フィールドレンズ111dは、波長587.56nmにおける屈折率Ndが1.4〜1.7である光学樹脂により作製される凸レンズからなり、本実施形態においては少なくとも2つの凸レンズからなる。フィールドレンズ111dは、レンズアレイ111cが生成した中間像から発せられる光線L0を、所定の配光角度で液晶表示パネル113へ導く役割を有する。すなわち、照明光学系111は、レンズアレイ111cによって光源111aからの平行化された光線L0を分割して各中間像を生成し、生成される各中間像から発せられる光線L0をフィールドレンズ111dによってそれぞれ液晶表示パネル113面(液晶層の厚さ方向の中心線を通る平面)全体を照射するように拡大し、また、個々の物点を1つの面である液晶表示パネル113面に重ねるものである。これにより、アイボックスBへの光照射効率を向上することができ、また、集光後に横方向及び縦方向にのみ広げるレンチキュラレンズを用いた従来の方法と比べて虚像Vの輝度均斉度を改善して視点移動に伴う虚像Vの輝度変化量を抑制することができる。液晶表示パネル113面における配光角度は、運転者DのアイボックスBと予め位置が定められる虚像Vを結ぶ光線群を、ヘッドアップディスプレイ装置100の投射光学系(本実施形態ではフロントガラス220及び凹面鏡120で構成される)を介して逆光線追跡することにより求められるものである。フィールドレンズ111dを構成する2つの凸レンズの間隔(空気層)は、フィールドレンズ111dの有効焦点距離の1/2以上の長さとすることが望ましい。これは、液晶表示パネル113面における配光角度(像側開口数)が大きい場合、2つの凸レンズ間距離が短くなるに応じて、フィールドレンズ111dによる集光度が劣化し、液晶表示パネル113面における光照射効率及び輝度均斉度が低下するため、この性能悪化を回避するべく2つの凸レンズ間にある程度の間隔が必要なためである。また、現在量産されている多くのヘッドアップディスプレイ装置における液晶表示パネル113面での望ましい配光角度特性は、面中央の点ではヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aを軸として同心円状に広がり、面中央から離れた任意の点においては面中央からの距離に比例してヘッドアップディスプレイ装置100の光軸Aに対して外側に広がる傾斜角を有するものである。かかる配光角度特性を実現するべく、本実施形態においては、レンズアレイ111cの中間像面F1が、フィールドレンズ111dの物体側焦点P1よりフィールドレンズ111dの主点P2側に位置するようにレンズアレイ111c及びフィールドレンズ111dを配置している。物理法則として、レンズの焦点を通過して斜め方向からレンズに入射する光線は、レンズ透過後に光軸と平行となって進む。また、斜め入射する光線と光軸との交点がレンズの主点と焦点の間に位置する場合、レンズ透過後の光線は光軸から離れる方向に(発散方向に広がって)進む。したがって、レンズアレイ111cの中間像面F1とフィールドレンズ111dの物体側焦点P1とを上記のような位置関係とすると、上述のヘッドアップディスプレイ装置に望ましい配光角度を達成できることが理論上確認できる。ところで、一般的なプロジェクターなどに使用されるケーラー照明光学系は、液晶表示パネルなどの照明対象にテレセントリックな光線を導くため、レンズアレイの中間像面をフィールドレンズの物体側焦点に一致させるような設計が基本となる。この違いにより、本願発明における照明光学系111は独特な光学系と言える。また、レンズアレイ111cの中間像面F1は、レンズアレイ111cの主点に対して像側(虚像V側)に位置する。したがって、凹面レンチキュラレンズなど、中間像がその主点に対して物体側(光源側)に位置する場合のように中間像とフィールドレンズ111dの物体側焦点P1を極力接近させる仕様において中間像を生成するレンズ自身の厚みによって光学設計に障害が発生することがない。また、フィールドレンズ111dは、その像側焦点P3が液晶表示パネル113面と略一致するように配置される。これは、レンズアレイ111cによって生成される各中間像から同じ角度で出射される光線群を、フィールドレンズ111dによって液晶表示パネル113面に結像させるための配置であり、液晶表示パネル113面における均斉度向上に寄与することができる。フィールドレンズ111dの射出側曲面頂点と液晶表示パネル113面との間隔は光学設計上は規定しない。ただし、後述する光拡散部材112を配置することから、両者の間隔を10mm程度設けることが望ましい。フィールドレンズ111dを構成する曲面は球面形状を有するが、液晶表示パネル113面における集光度を改善するために非球面形状としてもよい。
【0019】
光拡散部材112は、透明樹脂材料を基材としたフィルム状あるいは板状の部材であり、照明光学系111のフィールドレンズ111dと液晶表示パネル113との間に、全光路を覆う大きさで配置される。光拡散部材112は、第3のケース体116内に外装部品での挟み込みや接着等によって固定される。光拡散部材112は、フィールドレンズ111dの射出側曲面で反射される外光を拡散し、また、照明光学系111のレンズアレイ111cにより生成される中間像の境界部分を運転者Dから直視できないようにする機能を有する。
【0020】
液晶表示パネル113は、透明電極膜が形成された一対の透光性基板に液晶層を封入した液晶セルの前後両面に偏光板を貼着してなるものであり、第3のケース体116内に収納される。フィールドレンズ111dによって所定の配光角度で液晶表示パネル113面へ導かれた光線L0は液晶表示パネル113を透過して表示光Lとなり投射光学系を構成する凹面鏡120に照射される。
【0021】
第1のケース体114は、液晶表示器110の後方側に設けられ、非透光性樹脂材料からなる断面略矩形状の筒状部材であり、コンデンサレンズ111bを収納する収納空間を形成する壁部114aと、壁部114aの一方の端部(後方側の端部)から延設され壁部114aに対して垂直な鍔部114bと、壁部114aの他方の端部(前方側の端部)に形成される切り欠き部114cと、を備える。図4は第1のケース体114の固定方法を示す図である。なお、図4においては第1のケース体114は鍔部114bのみを図示している。第1のケース体114は、鍔部114bの後面側に高精度に位置出しされた2つの位置決めピン114dが設けられている。第1のケース体114の配設に際し、まず、この位置決めピン114dをコンデンサレンズ111b及び回路基板117にそれぞれ2個所形成される位置決め孔111e、117aに貫通させ、さらに、放熱部材140に2個所形成される位置決め孔141に挿入し、これらの部材の位置決めを行う。コンデンサレンズ111bの位置決め孔111eはコンデンサレンズ111bのレンズ曲面頂点に対して高精度に位置出しされ、回路基板117の位置決め孔117aは光源111aの実装領域に対して高精度に位置出しされている。また、位置決め孔111e、117a、141はそれぞれ同一の孔間ピッチ及び孔径を有し、位置決めピン114dが各位置決め孔111e、117a、141に挿入されることにより、コンデンサレンズ111bのレンズ曲面頂点と光源111aの発光領域中心が同軸上に位置する状態となる。また、第1のケース体114は、鍔部114bにネジSが挿通される2個所の貫通孔114eが設けられている。同様にコンデンサレンズ111b及び回路基板117にはそれぞれ2個所にネジSが挿通される貫通孔111f、117bが形成されている。ネジSは貫通孔114e、111f、117bに挿通された後放熱部材140に2個所形成されるネジ孔142に螺着され、第1のケース体114は放熱部材140にネジ止めされる。その際、第1のケース体114は、放熱部材140との間に回路基板117及びコンデンサレンズ111bを狭持してこれらを固定する。図2に戻って、第1のケース体114の壁部114aの他方の端部(前方側の端部)に設けられる切り欠き部114cには、レンズアレイ111cの周辺に形成される平面部111gが突き当てられ、レンズアレイ111cが位置決めされる。レンズアレイ111cはさらに、この平面部111gを第1のケース体114と第2のケース体115とで狭持されることで任意の位置に固定される。
【0022】
第2のケース体115は、非透光性樹脂材料からなる断面略矩形状の筒状部材であり、第1のケース体114と第3のケース体116との間に設けられ、照明光学系111を構成する各部材を収納、保持する。第2のケース体115は、前方側が後方側に対して幅狭となる段差形状を有する壁部115aと、壁部115aの一方の端部(後方側の端部)に延設される鍔部115bと、を備える。鍔部115bにはネジ貫通孔(図示しない)が設けられており、第2のケース体115は放熱部材140にネジ止めされる。また、第2のケース体115は、壁部115aの段差部分の内面側に放熱部材140へのネジ止めに際してレンズアレイ111cの平面部111gに突き当てられる突出面115cを有し、この突出面115cと第1のケース体114の切り欠き部114cとで平面部111gを狭持することでレンズアレイ114が固定される。また、第2のケース体115は、フィールドレンズ111dを保持する役割を有し、フィールドレンズ111dを構成する2つの凸レンズは、それぞれ第2のケース体115の壁部115aの内面に固定され、両者の間隔は精度良く保持される。
【0023】
第3のケース体116は、液晶表示器100の前方側(射出側)に設けられ、非透光性樹脂材料からなり、光拡散部材112及び液晶表示パネル113を収納するものである。第3のケース体120は液晶表示パネル113の表示面を露出する窓部116aが設けられる。
【0024】
凹面鏡120は、例えばポリカーボネートなどの樹脂材料に例えばアルミニウムなどの金属を蒸着させて凹面状の反射面を形成してなるものである。凹面鏡120によって液晶表示器110が発した表示光Lが拡大されてフロントガラス220に照射される。
【0025】
ハウジング130は、非透光性樹脂材料からなり、液晶表示器110及び凹面鏡120を収納する。ハウジング130には、表示光を出射する窓部131が設けられている。この窓部131は例えばアクリルなどの透光性樹脂材料からなり、湾曲形成となっている。また、ハウジング130には、後方側に放熱部材140を配設するための開口部132が設けられている。
【0026】
放熱部材140は、ハウジング130の開口部132に設けられる。放熱部材140は、例えばアルミニウムなどの金属材料で作成されるフィン型の構造体であり、光源117が発する熱を外部に放出する役割を有する。放熱部材140には、ネジ止めにより第1,第2のケース体114,115が固定される。また、放熱部材140はハウジング130にネジ止めされる。
【0027】
以上の各部によってヘッドアップディスプレイ装置100が構成されている。
【0028】
本実施形態によれば、照明光学系111に光線L0を分割し光源111aの中間像を複数生成するレンズアレイ111cと、レンズアレイ111cにより生成される中間像から発せられる光線L0を所定の角度で液晶表示パネル113に入射させるフィールドレンズ111dと、を備えることによって、アイボックスBへの光照射効率を向上することができ、また、虚像Vの輝度均斉度を改善して視点移動に伴う虚像Vの輝度変化量を抑制することができる。さらに、レンズアレイ111cを、レンズアレイ111cにより生成される中間像面F1が、フィールドレンズ111dの物体側焦点P1に対してフィールドレンズ111dの主点P2側に位置するように配設することにより、ヘッドアップディスプレイ装置100における液晶表示パネル113面での望ましい配光角度特性を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態は、フィールドレンズ111dを、その像側焦点P3が液晶表示パネル113面に略一致するように配設することにより、液晶表示パネル113面における均斉度を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態は、光源111aとレンズアレイ111cとの間に、光線L0を集光するコンデンサレンズ111bを配設することにより、レンズアレイ111cに効率良く光源111aからの光線L0を集光することができる。なお、光源111aが平行光を発し、所定の幅を有するものであれば、コンデンサレンズ111bを設けない仕様も可能である。
【0031】
また、本実施形態において、レンズアレイ111dは、生成する中間像の開口数を液晶表示パネル113の短辺方向と長辺方向とで異ならせることでそれぞれ最適化することができる。具体的方法の1つとして、レンズアレイ111dは、両凸レンズが一体的に複数配置されてなり、前記両凸レンズは、その曲面有効領域の長辺幅と短辺幅の比が液晶表示パネル113の表示領域のアスペクト比と略等しく形成することで縦方向と横方向の開口数をそれぞれ最適化することができる。
【0032】
また、本実施形態において、フィールドレンズ111dは、少なくとも2つの凸レンズからなり、前記凸レンズ間にフィールドレンズ111dの有効焦点距離に対して2分の1以上の長さの空気層を設けることによって、容易に集光度の高いフィールドレンズ111dを設けることができる。なお、製造の容易性を考慮しなければ1つの凸レンズでフィールドレンズ111dを構成することも可能である。
【0033】
また、本実施形態は、フィールドレンズ111dと液晶表示パネル113との間に光拡散部材112が配設されることにより、フィールドレンズ111dの射出側曲面で反射される外光を拡散し、また、照明光学系111のレンズアレイ111cにより生成される中間像の境界部分を運転者Dから直視できないようにしてヘッドアップディスプレイ装置100の表示品位を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態は、光源111aを実装する回路基板117と位置決めピン114dが形成された第1のケース体114とを備え、光源基板117とコンデンサレンズ111bとは互いに対向する位置に貫通孔117a,111eを備え、光源基板117とコンデンサレンズ111bとは、貫通孔117a,111eに位置決めピン114dが挿通され、第1のケース体114と光源基板117の背面側に配設される放熱部材140とによって狭持されてなる。これにより、容易に光源111aとコンデンサレンズ111bとを精度良く位置決めすることができる。さらに、本実施形態は、フィールドレンズ111dを保持する第2のケース体115を備え、レンズアレイ111cは、端部に平面部111gを有し、第1のケース体114と第二のケース体115とで平面部111gが狭持されることによって、容易にレンズアレイ111cを配設固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に好適である。
【符号の説明】
【0036】
100 ヘッドアップディスプレイ装置
110 液晶表示器
111 照明光学系
111a 光源
111b コンデンサレンズ
111c レンズアレイ
111d フィールドレンズ
112 光拡散部材
113 液晶表示パネル(表示部材)
114 第1のケース体
115 第2のケース体
116 第3のケース体
117 回路基板(光源基板)
120 凹面鏡
130 ハウジング
140 放熱部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系と表示部材とを備える表示器から発せられる表示光を投射部材を介して観察者の視点領域に導いて虚像を表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照明光学系は、
光線を放出する光源と、
前記光線を分割し前記光源の像を複数生成するレンズアレイと、
前記レンズアレイにより生成される前記光源の像から発せられる前記光線を所定の角度で前記表示部材に入射させるフィールドレンズと、を有し、
前記レンズアレイは、前記レンズアレイにより生成される前記光源の像面が、前記フィールドレンズの物体側焦点に対して前記フィールドレンズの主点側に位置するように配設されてなることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記フィールドレンズは、その像側焦点が前記表示部材の面に略一致するように配設されてなることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記光源と前記レンズアレイとの間に、前記光線を集光するコンデンサレンズを配設してなることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記レンズアレイは、生成する前記光源の像の開口数が前記表示部材の短辺方向と長辺方向とで異なることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記レンズアレイは、両凸レンズが一体的に複数配置されてなり、前記両凸レンズは、その曲面有効領域の長辺幅と短辺幅の比が前記表示部材の表示領域のアスペクト比と略等しく形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記フィールドレンズは、少なくとも2つの凸レンズからなり、前記凸レンズ間に前記フィールドレンズの有効焦点距離に対して2分の1以上の長さの空気層が設けられてなることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記フィールドレンズと前記表示部材との間に光拡散部材が配設されてなることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記光源を実装する光源基板と位置決めピンが形成された第1のケース体とを備え、
前記光源基板と前記コンデンサレンズとは互いに対向する位置に貫通孔を備え、
前記光源基板と前記コンデンサレンズとは、前記貫通孔に前記位置決めピンが挿通され、前記第1のケース体と前記光源基板の背面側に配設される放熱部材とによって狭持されてなることを特徴とする請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
前記フィールドレンズを保持する第2のケース体を備え、
前記レンズアレイは、端部に平面部を有し、
前記第1のケース体と前記第二のケース体とで前記平面部が狭持されてなることを特徴とする請求項8に記載のヘッドアップディスプレイ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203176(P2012−203176A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67426(P2011−67426)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】