説明

ヘッドマウントディスプレイ

【課題】実物画像と関連画像とを使用者の意思に基づいて簡易に切り替えることができるヘッドマウントディスプレイを提供すること。
【解決手段】CCDセンサによってヘッドマウントディスプレイの使用者の視野方向を撮影する(S11)。撮像された画像からバーコードを抽出する(S12)。そのバーコードにて特定することにより自動車を特定する(S13)。そして、撮像倍率が閾値倍率以下の場合には(S14:NO)、実物画像を表示し(S17)、撮像倍率が閾値倍率より大きい場合には(S14:YES)、その実物画像に対応した内部画像を表示する(S15)。撮像倍率は使用者が設定可能であり、その撮像倍率に基づいて実物画像又は内部画像がヘッドマウントディスプレイに表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実物を示した実物画像若しくはその実物に関連した関連画像を表示するヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実物を示した実物画像若しくはその実物に関連した関連画像を表示するヘッドマウントディスプレイが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のヘッドマウントディスプレイでは、ヘッドマウントディスプレイを装着した使用者が、特定の実物の方向に向いた場合には、その実物を示した実物画像を表示するとともに、使用者が、一定時間以上その実物画像を視認していた場合には、その実物に興味があるとして、その実物に関連する関連画像も表示している。こうすることによって、使用者の興味をヘッドマウントディスプレイでの画像表示に反映させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−38008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一定時間以上、使用者が同じ実物画像を見ているからといって、常にその実物画像で示される実物に興味があるとは限らない。何も考えずに一点を見ていることもある。したがって、特許文献1に記載のヘッドマウントディスプレイでは、使用者が所望しないにもかかわらず関連画像が表示されてしまうことがあり、それが煩わしいという問題点があった。また、視線方向に交差するオブジェクトが複数有る場合に、特定するオブジェクトを選択することができず、所望の画像を見ることができない問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、実物を示した実物画像若しくはその実物に関連した関連画像を表示するヘッドマウントディスプレイにおいて、実物画像と関連画像とを使用者の意思に基づいて簡易に切り替えることができるヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1のヘッドマウントディスプレイは、使用者の頭部に装着され、当該使用者の目に画像を表示する表示手段を備えたヘッドマウントディスプレイと、当該ヘッドマウントディスプレイを装着する使用者の視野に対応した実物を実物画像として撮像するとともに、前記実物を撮像するときの撮像条件を前記使用者が設定可能な撮像手段と、当該撮像手段によって撮像される実物に関連した画像である関連画像をその実物に対応させて記憶する関連画像記憶手段とを備えるヘッドマウントディスプレイシステムに使用される前記ヘッドマウントディスプレイであって、前記撮像条件に基づいて、前記実物画像と前記関連画像のいずれか一方を選択する選択手段と、当該選択手段によって前記実物画像が選択された場合には、前記実物画像を前記表示手段に表示し、前記関連画像が選択された場合には、前記実物に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記関連画像を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えている。
【0007】
また、請求項2のヘッドマウントディスプレイは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記撮像手段によって撮像された実物画像に含まれている実物を特定する実物特定手段を備え、前記表示制御手段は、当該実物特定手段によって特定された実物に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記関連画像を表示することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3のヘッドマウントディスプレイは、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記関連画像記憶手段は、前記関連画像として、前記使用者がその実物を見る位置に対応した内部画像を、各位置に対応させて記憶し、前記実物特定手段は、特定した実物を撮像した位置も特定し、前記表示制御手段は、前記関連画像を表示するときには、前記実物特定手段によって特定された位置に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記内部画像を前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4のヘッドマウントディスプレイは、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の構成に加え、前記撮像条件として、撮像倍率を設定可能であり、前記選択手段は、前記撮像倍率が所定の閾値以下の場合に前記実物画像を選択する一方で、前記撮像倍率が前記所定の閾値より大きい場合に前記関連画像を選択することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5のヘッドマウントディスプレイは、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の構成に加え、前記撮像手段によって撮像される実物には、自身を識別する識別情報が付されており、前記実物特定手段は、前記実物画像に含まれている前記識別情報に基づいて、前記撮像手段が撮像した実物を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイによれば、実物特定手段は、撮像手段によって撮像された実物画像で示される実物を特定する。選択手段は、撮像条件に基づいて、実物画像と関連画像のいずれか一方を選択することができる。そして、表示制御手段は、選択手段によって実物画像が選択された場合には、実物画像を表示する一方で、関連画像が選択された場合には、実物に対応して関連画像記憶手段に記憶されている関連画像を表示することができる。このように、撮像条件は使用者が設定可能であり、その撮像条件に基づいて実物画像又は関連画像がヘッドマウントディスプレイに表示される。したがって、実物画像と関連画像とを使用者の意思に基づいて簡易に切り替えることができる。
【0012】
請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイによれば、実物特定手段により、撮像手段によって撮像された撮像画像に含まれている実物を示した画像がどの実物を示した画像なのかを特定することによって、表示制御手段は、当該実物特定手段によって特定された実物に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記関連画像を表示することができる。
【0013】
請求項3のヘッドマウントディスプレイによれば、使用者は実物の内部画像を視認できる。そして、その内部画像は、使用者がその実物を見る位置に対応した画像である。したがって、使用者は、実物の内部を多方向から把握することができる。
【0014】
請求項4のヘッドマウントディスプレイによれば、撮像倍率によって、表示させる画像を実物画像又は関連画像に決定しているので、使用者は容易に表示させる画像を切り替えることができる。また、一般的に使用者は、興味がある実物、すなわち関連画像を表示させたい実物ほど直感的に撮像倍率を大きく設定すると考えられる。そこで、選択手段は、撮像倍率が所定値より小さい場合に実物画像を選択する一方で、撮像倍率が所定値以上の場合に関連画像を選択している。その結果、使用者は、どちらの画像を表示させるか決定するための操作がやりやすい。
【0015】
請求項5のヘッドマウントディスプレイによれば、識別情報に基づいて実物を特定しているので、確実に撮像手段が撮像した実物を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヘッドマウントディスプレイ1が適用されるヘッドマウントディスプレイシステム5の概略構成を示した図である。
【図2】ヘッドマウントディスプレイ1の電気的及び光学的構成を示す説明図である。
【図3】記憶装置300に記憶されているテーブル301の概念図である。
【図4】制御部110が実行する処理を示したフローチャートである。
【図5】使用者50が自動車401の前方に居る場合における実物画像404をヘッドマウントディスプレイ1に表示した図である。
【図6】使用者50が自動車401の側方に居る場合における実物画像404をヘッドマウントディスプレイ1に表示した図である。
【図7】使用者50が自動車401の前方に居る場合における内部画像403a1をヘッドマウントディスプレイ1に表示した図である。
【図8】使用者50が自動車401の側方に居る場合における内部画像403a2をヘッドマウントディスプレイ1に表示した図である。
【図9】使用者50が自動車401に対してどの位置に居るのかを判定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るヘッドマウントディスプレイの実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1を用いたヘッドマウントディスプレイシステム5の概略構成を示した図である。図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイシステム5は、ヘッドマウントディスプレイ1と記憶装置300とをネットワーク200を介して接続して構成されている。そして、ヘッドマウントディスプレイ1は使用者50によって装着される。
【0018】
使用者50は、一例として、自動車401a、401b、401c(以下、総称して「自動車401」ともいう)を視認するものとする。また、本実施形態の自動車401a、401b、401cはそれぞれ車種が異なっているものとする。各自動車401の前面、側面には、バーコード402(識別情報)が付してある。詳細には自動車401aの前面にはバーコード402a1、側面にはバーコード402a2が付されている。また、自動車401bの前面にはバーコード402b1、側面にはバーコード402b2が付されている。また、自動車401cの前面にはバーコード402c1、側面にはバーコード402c2が付されている。また、図示外の他の自動車についてもその前面と側面には、固有のバーコードが付されているものとする。従って、バーコード402a1〜402c2は各自動車401a〜401cを特定する情報である。また、バーコード402a1〜402c2は、後述するCCDセンサ2にて撮像されたときの撮像位置、すなわち使用者50は自動車401の前面を撮像する位置に居るのか側面を撮像する位置に居るのかを特定する情報でもある。
【0019】
次に、先ずヘッドマウントディスプレイ1の構造について図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1は、内部又は外部に記憶されている各種情報を画像信号に変換し、この画像信号に基づいて生成した画像光(以下、「画像光」という。)を使用者50の眼Eに導いて走査する光走査部10(図2参照)を備えている。このヘッドマウントディスプレイ1では、ヘッドマウントディスプレイ1が使用者50の頭部に装着された状態で、使用者50がヘッドマウントディスプレイ1の電源を入れると、光走査部10が動作を開始する。光走査部10の動作により、画像光が使用者50の網膜上で2次元方向に走査されることにより、使用者50に情報に対応する画像を視認させることができる。また、このヘッドマウントディスプレイ1は、使用者50が外界を視認できないように構成されている。
【0020】
また、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、使用者50の視野に対応して自動車401を撮像する撮像手段としてのCCDセンサ2を備えている。なお、ヘッドマウントディスプレイ1は、外界の明るさを検出する輝度センサ8と、CCDセンサ2の撮像範囲を照らすLED3とを備えており(図2参照)、輝度センサ8により外界の明るさが所定の明るさを下回ったことが検知されたときに、LED3がCCDセンサ2の撮像範囲を照らす。
【0021】
図2に示すように、このヘッドマウントディスプレイ1は、当該ヘッドマウントディスプレイ1全体の動作を統括制御する制御部110と、この制御部110から供給される画像信号に基づいて生成した画像光を2次元的に走査することにより画像を表示することによって、画像信号に応じた画像を視認させる光走査部10とを備えている。
【0022】
光走査部10は、この制御部110から供給される画像信号をドットクロック毎に読み出し、読み出した映像信号に応じて強度変調された画像光を生成して出射する画像光生成部20を備え、さらに、その画像光生成部20と使用者50の眼Eとの間には、画像光生成部20で生成され、光ファイバ100を介して出射されるレーザビーム(画像光)を平行光とするコリメート光学系61と、このコリメート光学系61で平行光化された画像光を画像表示のために水平方向(第1方向)に往復走査する第1光走査部として機能する水平走査部70と、水平走査部70で水平方向に走査された画像光を垂直方向(第1方向と略直交する第2方向)に往復走査する第2光走査部として機能する垂直走査部80と、水平走査部70と垂直走査部80との間に設けられたリレー光学系75と、このように水平方向と垂直方向に走査(2次元的に走査)された画像光を瞳孔Eaへ出射するためのリレー光学系90とを備えている。また、使用者50が外界を視認できないようにするために、使用者50の目の周りを閉塞する閉塞部材(図示略)を備えている。
【0023】
また、画像光生成部20には、パーソナルコンピュータ(図示略)等の外部装置から供給される画像信号が、インターフェース104と制御部110とを介して入力され、その画像信号に基づいて画像を合成するための要素となる各信号等を発生する信号処理回路21が設けられている。この信号処理回路21において、青(B)、緑(G)、赤(R)の各画像信号22a〜22cが生成され、後記する光源部30へ出力される。また、信号処理回路21は、水平走査部70で使用される水平駆動信号23と、垂直走査部80で使用される垂直駆動信号24とをそれぞれ出力する。
【0024】
さらに、画像光生成部20は、信号処理回路21からドットクロック毎に出力される3つの画像信号(B,G,R)22a〜22cに応じた青、緑、赤の画像光を出力する画像光出力部として機能する光源部30と、これらの3つの画像光を1つの画像光に結合して任意の画像光を生成するための光合成部40を備えている。
【0025】
光源部30は、青色の画像光を発生させるBレーザ34及びBレーザ34を駆動するBレーザドライバ31と、緑色の画像光を発生させるGレーザ35及びGレーザ35を駆動するGレーザドライバ32と、赤色の画像光を発生させるRレーザ36及びRレーザ36を駆動するRレーザドライバ33とを備えている。なお、各レーザ34、35、36は、例えば、半導体レーザや高調波発生機構付き固体レーザとして構成することが可能である。なお、半導体レーザを用いる場合は駆動電流を直接変調して、画像光の強度変調を行うことができるが、固体レーザを用いる場合は、各レーザそれぞれに外部変調器を備えて画像光の強度変調を行う。
【0026】
光合成部40は、光源部30から入射する画像光を平行光にコリメートするように設けられたコリメート光学系41、42、43と、このコリメートされた画像光を合成するためのダイクロイックミラー44、45、46と、合成された画像光を光ファイバ100に導く結合光学系47とを備えている。
【0027】
各レーザ34、35、36から出射したレーザ光は、コリメート光学系41、42、43によってそれぞれ平行化された後に、ダイクロイックミラー44、45、46に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー44、45、46により、各画像光が波長に関して選択的に反射・透過される。
【0028】
具体的には、Bレーザ34から出射した青色画像光は、コリメート光学系41によって平行光化された後に、ダイクロイックミラー44に入射される。Gレーザ35から出射した緑色画像光は、コリメート光学系42を経てダイクロイックミラー45に入射される。Rレーザ36から出射した赤色画像光は、コリメート光学系43を経てダイクロイックミラー46に入射される。
【0029】
それら3つのダイクロイックミラー44、45、46にそれぞれ入射した3原色の画像光は、波長選択的に反射または透過して結合光学系47に達し、集光され光ファイバ100へ出力される。
【0030】
水平走査部70及び垂直走査部80は、光ファイバ100から入射された画像光を画像として投影可能な状態にするために、水平方向と垂直方向に走査して走査画像光とするものである。
【0031】
水平走査部70は、画像光を水平方向に走査するための反射面を有する共振型偏向素子71と、この共振型偏向素子71を共振させ、共振型偏向素子71の反射面を揺動させる駆動信号を発生する駆動信号発生器としての水平走査駆動回路72と、共振型偏向素子71から出力される変位信号に基づいて、共振型偏向素子71の反射面の揺動範囲及び揺動周波数等の揺動状態を検出する水平走査角検出回路73とを有している。
【0032】
本実施形態において、水平走査角検出回路73は、検出した共振型偏向素子71の揺動状態を示す信号を制御部110へ入力するようにしている。
【0033】
垂直走査部80は、画像光を垂直方向に走査するための偏向素子81と、この偏向素子81を駆動させる垂直走査制御回路82と、この垂直走査制御回路82による反射面の揺動範囲及び揺動周波数等の揺動状態を検出する垂直走査角検出回路83とを備えている。
【0034】
また、水平走査駆動回路72と垂直走査制御回路82は、信号処理回路21から出力される水平駆動信号23と垂直駆動信号24に基づいてそれぞれ駆動し、垂直走査角検出回路83は、検出した偏向素子81の揺動状態を示す信号を制御部110へ入力するようにしている。
【0035】
そして、後に詳述する制御部110は、信号処理回路21の動作を制御することによって、これら水平駆動信号23と垂直駆動信号24とを調整することによって、水平走査部70と垂直走査部80に画像光の走査角を変更させて、表示する画像を形成する。
【0036】
こうして変更された走査角度は水平走査角検出回路73および垂直走査角検出回路83からの検出信号に基づいて制御部110により検出され、信号処理回路21と水平走査駆動回路72とを介して水平駆動信号23にフィードバックされると共に、信号処理回路21と垂直走査制御回路82とを介して垂直駆動信号24にフィードバックされる。
【0037】
また、水平走査部70と垂直走査部80との間での画像光を中継するリレー光学系75は、共振型偏向素子71によって水平方向に走査された画像光を、偏向素子81の反射面に入射させる。偏向素子81に入射した画像光は、偏向素子81によって垂直方向に走査されて、2次元的に走査された走査画像光として、リレー光学系90へ出射する。
【0038】
リレー光学系90は、正の屈折力を持つレンズ系91、94を有している。垂直走査部80から出射された表示用の走査画像光は、レンズ系91によって、それぞれの画像光がその画像光の中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束画像光に変換される。そして、走査画像光は、レンズ系94によってそれぞれほぼ平行な画像光となると共に、これらの画像光の中心線が使用者50の瞳孔Eaに収束するように変換される。
【0039】
なお、本実施形態においては、光ファイバ100から出射した画像光は、水平走査部70によって水平方向に走査された後、垂直走査部80によって垂直方向に走査される。しかし、水平走査部70と垂直走査部80との配置を入れ替え、画像光が垂直走査部80によって垂直方向に走査された後、水平走査部70によって水平方向に走査されるようにしても良い。
【0040】
また、制御部110は、CPU101と、不揮発性メモリであるフラッシュメモリ102と、RAM103とを備えている。そして、これらCPU101、フラッシュメモリ102、RAM103は、データ通信用のバスにそれぞれ接続されており、このデータ通信用のバスを介して各種情報の送受信を行う。
【0041】
また、この制御部110は、当該ヘッドマウントディスプレイ1の電源スイッチSW、自動車401を撮像するCCDセンサ2、外界の明るさ(輝度)を検知する輝度センサ8、輝度センサ8により外界の明るさが所定の明るさを下回ったことが検知されたときに、CCDセンサ2の撮像範囲を照らすLED3、使用者50によって操作可能な操作スイッチ7、他の装置との通信を制御するための通信制御回路9、CCDセンサ2による撮像倍率を設定する撮像倍率設定部11、パーソナルコンピュータ等の外部装置と接続可能なインターフェース104とも接続されている。なお使用者50は、撮像倍率設定部11にて撮像倍率を設定することができる。ここで、撮像倍率設定部11にて設定される撮像倍率は、デジタルズームを行う場合には、予め決められているズームの範囲、一例として、1倍〜5倍等である。また、CCDセンサ2に図示外の電動ズームレンズを設けて、光学的ズームを行う場合は、その電動ズームレンズの倍率を設定するようにしても良い。例えば、1倍〜3倍等である。尚、撮像倍率設定部11にて設定された撮像倍率は、フラッシュメモリ102に記憶される。
【0042】
CPU101は、フラッシュメモリ102に記憶されている各種情報処理プログラムを実行することにより、ヘッドマウントディスプレイ1を構成する図示しない各種回路を動作させて、ヘッドマウントディスプレイ1が備える各種機能を実行させる演算処理装置である。
【0043】
フラッシュメモリ102は、ヘッドマウントディスプレイ1により表示する画像の表示制御を行う際に画像光生成部20、水平走査部70、垂直走査部80等を動作させるための情報処理プログラム等、制御部110がヘッドマウントディスプレイ1全体の動作を統括制御するためにCPU101により実行される各種情報処理プログラムを記憶している。
【0044】
次に、図1及び図3を参照して、記憶装置300について説明する。この記憶装置300は、本発明の「関連画像記憶手段」に相当し、記憶装置300には、CCDセンサ2によって撮像される可能性がある各自動車401に関連した画像である関連画像を含むテーブル301が記憶されている。図3に示すようにテーブル301は、自動車区分欄302、撮像位置欄303、バーコード記憶欄304及び関連画像記憶欄305から構成される。
【0045】
自動車区分欄302には各自動車401a,401b,401cを示した情報が記憶されている。撮像位置欄303には、自動車401のどの方向から撮像したのかを示した情報が記憶されている。バーコード記憶欄304には、各自動車401に予め付されているバーコード402a1,402a2,402b1,402b2,402c1,402c2が示す数字が各々記憶されている。一例として、日本のJIS規格、ヨーロッパのEAN規格又はアメリカのUPC規格の何れか場合には、13桁又は8桁の数字が記憶されている。現在、世界で使用されているバーコードの種類は、約100種類と多いため、バーコード記憶欄304には、使用するバーコードに対応した数値を記憶しておけば良い。尚、バーコードそのものの画像を記憶したり、バーコードと数値の両方を記憶しても良い。また、関連画像記憶欄305には各バーコード402a1〜402c2に対応した自動車401a,401b,401cの内部を示した内部画像403a1,403a2,403b1,403b2,403c1,403c2・・・が関連画像として記憶されている。詳細には、バーコード402a1に対応付けて、自動車401aを前方から視認したときのその自動車401aの内部画像403a1が記憶されている。また、バーコード402a2に対応付けて、自動車401aを側方から視認したときのその自動車401aの内部画像403a2が記憶されている。また、バーコード402b1に対応付けて、自動車401bを前方から視認したときのその自動車401bの内部画像403b1が記憶されている。また、バーコード402b2に対応付けて、自動車401bを側方から視認したときのその自動車401bの内部画像403b2が記憶されている。また、バーコード402c1に対応付けて、自動車401cを前方から視認したときのその自動車401cの内部画像403c1が記憶されている。また、バーコード402c2に対応付けて、自動車401cを側方から視認したときのその自動車401cの内部画像403c2が記憶されている。ここでは説明を省略するが、他の自動車401についても、バーコード402に対応付けて内部画像403が記憶されている。
【0046】
次に、制御部110が実行する処理について図4のフローチャートを参照して説明する。なお、この処理は使用者50によって操作スイッチ7に含まれている開始ボタンが操作されたときに開始する。以下「表示」と言ったときには、画像光を使用者50の網膜上で2次元方向に走査させることにより、使用者50に情報に対応する画像を視認させることを言う。
【0047】
先ず、制御部110の制御により、CCDセンサ2が使用者50の視野に対応した自動車401を実物画像404(図5及び図6参照)として撮像する(S11)。そして、その実物画像404からバーコード402を抽出する(S12)。この抽出方法は、周知の画像認識方により、実物画像404からバーコードの特徴を示す部分の画像を切り出し、ノイズ除去等の処理を行い、次いで、バーコード402の画像を数値に変換する(S12)。その数値が、記憶装置300に記憶されているテーブル301のバーコード記憶欄304のバーコード402a1、402a2、402b1、402b2、402c1、402c2・・・のどれに一致するかを特定する(S13)。
【0048】
一致するバーコードが有った場合には(S13:YES)、次いで、使用者50が撮像倍率設定部11にて設定した撮像倍率が、所定の閾値倍率(例えば2倍)より大きいか否かを判断する(S14)。撮像倍率が閾値倍率以下の場合には(S14:NO)、図5や図6に示すように、S11にて撮像した実物画像404を表示する(S17)。この際、撮像倍率に応じた大きさで実物画像404を表示する(S17)。このように、使用者50は、外界を視認することができないので自動車401を直接視認することはできないが、実物画像404として自動車401を視認することができる。
【0049】
一方、撮像倍率が閾値倍率より大きい場合には(S14:YES)、S13にて特定したバーコード402に対応付けて記憶装置300に記憶されている内部画像403を表示する(S15)。この際、撮像倍率に応じた大きさで内部画像を表示する(S15)。例えば、S13にて特定されたバーコード402がバーコード402a1である場合には、図7に示すように、自動車401aを前方から視認したときのその自動車401aの内部画像403a1が表示される。また、S13にて特定されたバーコード402がバーコード402a2である場合には、図8に示すように、自動車401aを横方向から視認したときのその自動車401aの内部画像403a2が表示される。このように、使用者50は自動車401の内部を内部画像403として視認できる。尚、S13の判断処理で、バーコードが特定されない場合には(S13:NO)、実物画像を表示する(S17)。
【0050】
その後、使用者50によって操作スイッチ7に含まれている終了ボタンが操作されたか否かで、図4のフローチャートで示す処理を終了するか否かを判断する(S16)。終了ボタンが操作された場合には(S16:YES)、図4のフローチャートで示す処理を終了する。一方、終了ボタンが操作されていない場合には(S16:NO)、S11の処理に戻る。したがって、使用者50が居る位置はそのままで、使用者50が撮像倍率を所定値以上にしたり、所定値より小さくしたりすることによって、自動車401の内部画像403と実物画像404間で表示が切り替わることになる(S11〜S17)。また、使用者50の視線が移動して、CCDセンサ2が他の自動車401を撮像した場合には(S11)、他の自動車401に付されているバーコード402を抽出し(S12)、その特徴によりバーコード402を特定して(S12)、他の自動車401を示した実物画像404若しくは内部画像403を表示することになる(S11〜S17)。
【0051】
以上、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1によれば、CCDセンサ2によって撮像された実物画像404で示される自動車401をバーコード402にて特定する。そして、撮像倍率が所定値より小さい場合には実物画像404を表示する一方で、撮像倍率が所定値以上の場合にはその実物画像404に対応した内部画像403を表示する。
【0052】
このように、撮像倍率は使用者50が設定可能であり、その撮像倍率に基づいて実物画像404又は内部画像403がヘッドマウントディスプレイ1に表示される。したがって、実物画像404と内部画像403とを使用者50の意思に基づいて簡易に切り替えることができる。
【0053】
また、ヘッドマウントディスプレイ1によれば、使用者50は自動車401の内部画像403を視認できる。そして、その内部画像403は、使用者50がその自動車401を見る位置に対応した画像である。したがって、使用者50は、自動車401の内部を多方向から把握することができる。
【0054】
また、ヘッドマウントディスプレイ1によれば、撮像倍率によって、表示させる画像を実物画像404又は内部画像403に決定しているので、使用者50は容易に表示させる画像を切り替えることができる。また、一般的に使用者50は、興味がある自動車401、すなわち、内部画像403を表示させたい自動車401ほど直感的に撮像倍率を大きく設定すると考えられる。そこで、撮像倍率が所定値より小さい場合に実物画像404を表示する一方で、撮像倍率が所定値以上の場合に内部画像403を表示している。その結果、使用者50は、どちらの画像を表示させるか決定するための操作がやりやすいと考えられる。
【0055】
また、ヘッドマウントディスプレイ1によれば、バーコード(識別情報)に基づいて自動車401を特定しているので、確実にCCDセンサ2が撮像した自動車401を特定することができる。
【0056】
なお、本発明に係るヘッドマウントディスプレイ1は、上記実施形態に限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変形しても良い。例えば、上記実施形態では、自動車401及び撮像位置を特定するのにバーコード402を用いていたが、QRコード(登録商標)や、ICタグなど他の識別情報を自動車401に付して、その識別情報に基づいて自動車401及び撮像位置を特定しても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、撮像位置として、自動車401の前方と側方の2つに限っていたが、後方や斜め前方等、さらに多くの撮像位置を採用して多方向から内部画像403を表示するようにしても良い。この場合、各方向に対応する内部画像403を用意しておく必要がある。また、使用者50が自動車401に対してどの位置に居るのかを判定する方法として、例えば実物画像404に含まれているバーコード402の大きさや傾きに基づいて、その位置を判定することもできる。
【0058】
一例として、図9に示すように、自動車401に貼り付けされたバーコード402に対して、使用者が正面に位置している場合には、バーコードは、歪まずに撮影される。一方、自動車401に貼り付けされたバーコード402に対して、使用者が斜めの位置にいる場合には、バーコードは、歪んで撮影される。従って、この歪みを検出することによって、使用者の自動車401に対する置関係を判別することができる(図9参照)。
【0059】
また、各自動車401の位置を予め記憶しておき、使用者50の位置をGPS受信機によって検出して、自動車401の位置と使用者50の位置に基づいて、使用者50が自動車401に対してどの位置に居るのかを判定しても良い。また、特許公報3422383号に記載されているように、自動車401の四隅に発光体を付しておき、実物画像404において、各発光体間の相対位置に基づいて、使用者50が自動車401に対してどの位置に居るのかを判定しても良い。
【0060】
また、上記実施形態では自動車401の内部を示した内部画像403を関連画像としていたが、関連画像として、例えば自動車401の3次元CAD線、車種名、燃費を示した画像等、自動車401に関連する画像であるならばその内容は問わない。また、上記実施形態では撮像対象を自動車401としていたが、他の実物を撮像対象としてもかまわない。
【0061】
また、上記実施形態では撮像倍率に基づいて、実物画像404と内部画像403とを切り替えていたが、使用者50と撮像される自動車401との距離等、他の撮像条件に基づいて実物画像404と内部画像403とを切り替えても良い。使用者50と撮像される自動車401との距離に基づいて、実物画像404と内部画像403とを切り替える場合、例えば実物画像404の全領域に対する自動車401に相当する画像の割合の大小やバーコード402の大きさで、あるいはフォーカス調整でその距離を判定するようにしても良い。
【0062】
また、上記の実施の形態では、記憶装置300は、ヘッドマウントディスプレイ1と別に設けてネットワーク200で接続しているが、記憶装置300をフラッシュメモリ等で構成して、ヘッドマウントディスプレイ1と一体化しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 ヘッドマウントディスプレイ
2 CCDセンサ(撮像手段)
5 ヘッドマウントディスプレイシステム
11 撮像倍率設定部
110 制御部
300 記憶装置(関連画像記憶手段)
401 自動車(実物)
402 バーコード(識別情報)
403 内部画像(関連画像)
404 実物画像
S13 実物特定手段
S14 選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着され、当該使用者の目に画像を表示する表示手段を備えたヘッドマウントディスプレイと、
当該ヘッドマウントディスプレイを装着する使用者の視野に対応した実物を実物画像として撮像するとともに、前記実物を撮像するときの撮像条件を前記使用者が設定可能な撮像手段と、
当該撮像手段によって撮像される実物に関連した画像である関連画像をその実物に対応させて記憶する関連画像記憶手段とを備えるヘッドマウントディスプレイシステムに使用される前記ヘッドマウントディスプレイであって、
前記撮像条件に基づいて、前記実物画像と前記関連画像のいずれか一方を選択する選択手段と、
当該選択手段によって前記実物画像が選択された場合には、前記実物画像を前記表示手段に表示し、前記関連画像が選択された場合には、前記実物に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記関連画像を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記撮像手段によって撮像された実物画像に含まれている実物を特定する実物特定手段を備え、
前記表示制御手段は、当該実物特定手段によって特定された実物に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記関連画像を表示することを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記関連画像記憶手段は、前記関連画像として、前記使用者がその実物を見る位置に対応した内部画像を、各位置に対応させて記憶し、
前記実物特定手段は、特定した実物を撮像した位置も特定し、
前記表示制御手段は、前記関連画像を表示するときには、前記実物特定手段によって特定された位置に対応して前記関連画像記憶手段に記憶されている前記内部画像を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記撮像条件として、撮像倍率を設定可能であり、
前記選択手段は、前記撮像倍率が所定の閾値以下の場合に前記実物画像を選択する一方で、前記撮像倍率が前記所定の閾値より大きい場合に前記関連画像を選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記撮像手段によって撮像される実物には、自身を識別する識別情報が付されており、
前記実物特定手段は、前記実物画像に含まれている前記識別情報に基づいて、前記撮像手段が撮像した実物を特定することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−200209(P2010−200209A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45260(P2009−45260)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】