説明

ヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイント

【課題】簡単且つ低コストなヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイントを提供する。
【解決手段】ユニバーサルジョイント10がリング30によって画成されるスパイダーを有し、リング30は四つの連結部を有し、四つの連結部は90°離間され且つそれぞれのフォーク15と係合し、それぞれのフォーク15は二つの連結部材11、12のそれぞれのアーム14の端部を画成し、二つの連結部材11、12は、使用中、エンジン2のケーシング6及び減速ギア3のケーシング7に対して固定され、各フォーク15及び対応する連結部は互いに同軸のそれぞれの貫通孔19、20、32を有し且つスクリュー34によって係合され、制動材がリング30の連結部とスクリュー34のシャンク39との間及びリング30の連結部とフォーク15との間に介在せしめられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコプターエンジンのケーシングと減速ギアのケーシングとを連結するための非回転式ユニバーサルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のユニバーサルジョイントは、ジンバル(gimbal)としても公知であり、一方では、熱膨張によって引き起こされる運動を補償すべく、他方では、減速ギアによってエンジンに伝達され、且つ、ヘリコプターのメインローターによって減速ギアに及ぼされる荷重によって引き起こされる比較的小さな運動を補償すべくエンジンについて均衡な制約(isostatic constraint)を画成する。
【0003】
公知の非回転式ユニバーサルジョイントのスパイダー(spider)は、同軸のシャフトのために中心に空間を有するリングによって画成され、同軸のシャフトはエンジンから減速ギアに動力を伝達すべく回転する。リングは、エンジンのケーシングに対して固定された直径方向に反対側に位置する第1の一対のアームと、第1の一対のアームに対して90°オフセットし且つ減速ギアのケーシングに対して固定された第2の一対のアームとに連結される。
【0004】
リング及びアームの端部は、リングの軸線に対して径方向に延在するそれぞれのボルトと、回転式伝達シャフトとによって連結され、各々のボルトは、関係するアームの外面上に載る頭部を備えたスクリューと、スクリューのシャンク(shank)の端部に螺入され且つリングの内面上に載るナットとを具備する。
【0005】
リングは、通常、ボルトにせん断応力を及ぼし且つアームに曲げ応力を及ぼし、これらは定量化が困難である。記述された公知の解決策では、スクリューのシャンクに対するせん断応力及びアームに対する曲げ応力は、アームから突出するスクリューのせいで比較的厳しく、公知の解決策は、擦れ(fretting)、すなわち、互いに対して擦れ合う、相対移動する接触面によって引き起こされる摩耗、特にリングにおける孔の内面に対するスクリューのシャンクの表面によって引き起こされる摩耗の影響を受けやすい。
【0006】
摩耗並びに厳しいせん断応力及び曲げ応力によってスクリュー及びアームの故障がもたらされるので、ボルト及びジンバルは全体として設計段階において強化されなければならず、このため、重量の増加がもたらされる。
【0007】
重量を増加させることなく各スクリューのシャンクに対するせん断応力及びアームに対する曲げ応力を最小にするために、アームは、スパイダーリングの孔を備えたそれぞれの部分によって係合される端フォーク(end fork)を有して設計されることができ、四つのスクリューの各々は、それぞれのフォークを通って収まり、すなわち、離間された二つの点において支持される。スクリューが突出することをなくすことによって、この型の組立体では、曲がりが低減され、このため、リングによってスクリューに及ぼされるせん断応力が減少せしめられる。この型の一つの解決策が、欧州特許第1539573号明細書において公知技術として記述され且つ添付の特許請求の範囲の請求項1における序文に相当する。
【0008】
上記の公知の解決策を更に改良すること、擦れ及び衝撃によって引き起こされる摩耗を低減すること、及びそれの容積を最小にすることの必要性が感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、簡単且つ低コストな態様で上記を実現するように設計されたヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイントを提供することであり、ヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイントは、好ましくは、ヘリコプターエンジンと減速ギアとの間に容易に設置される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイントであって、
長手方向の軸線回りに延在するリングであって、90°離間され且つ前記長手方向の軸線に対して径方向のそれぞれの第1貫通孔を有する四つの連結部を具備するリングによって画成されるスパイダーと、
二つの連結部材であって、エンジンのケーシング及び減速ギアのケーシングに対して固定され且つそれぞれの対のアームを具備し、各連結部材のアームが、互いに直径方向に反対側に位置し、他方の連結部材のアームに対して90°オフセットし、且つそれぞれのフォークを具備し、前記フォークの各々が、対応する前記連結部によって係合される接線方向のスロットを間に画成する二つの対向するフィンガーを具備し、各前記フォークのフィンガーが、対応する連結部内の第1孔と同軸のそれぞれの第2貫通孔を有する、二つの連結部材と、
四つの連結ボルト装置であって、各々が、対応する前記連結部にそれぞれの前記フォークを固定するためにあり、且つ、
a)前記第1孔及び第2孔と係合するシャンクを備えたスクリューと、
b)前記シャンクのネジ切りされた端部に螺入されるナットスクリューと
を具備する、四つの連結ボルト装置と
を具備する非回転式ユニバーサルジョイントにおいて、
前記連結ボルト装置が、スクリューのシャンクとリングの連結部との間に介在せしめられた第1制動手段を具備することを特徴とする、非回転式ユニバーサルジョイントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明に係る、ヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイントの断面図を示す。
【図2】図2は、わかりやすくするために一部が取り除かれた状態の、図1における非回転式ユニバーサルジョイントの分解図を示す。
【図3】図3は、図1における非回転式ユニバーサルジョイントの拡大詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
限定するものではない、本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して例によって記述される。
図1における番号1が全体としてヘリコプター駆動ユニットを示し、ヘリコプター駆動ユニットは、(部分的に且つ概略的に示される)タービンエンジン2及び減速ギア3を具備し、タービンエンジン2及び減速ギア3は、長手方向の軸線5に沿って延在する回転式伝達シャフト4によって連結される。エンジン2及び減速ギア3はそれぞれのケーシング6及び7を具備し、ケーシング6及び7は、ジンバルとしても公知な非回転式ユニバーサルジョイント10によって互いに連結される。
【0013】
ジョイント10は、シャフト4と同軸にシャフト4を通して収められ、且つ、それぞれのケーシング6及び7に対して固定された追加の本体によって又はそれぞれのケーシング6及び7の一部を形成する部分によって画成される二つの連結部材11、12を具備する。
【0014】
図1及び図2を参照すると、部材12は、環状部13と、直径方向に反対側に位置する二つのアーム14とを具備し、直径方向に反対側に位置する二つのアーム14は環状部13から軸線5に対して平行に突出し且つそれぞれの端フォーク15を具備する。
【0015】
各フォーク15は軸線5に対して接線方向(tangential)のほぼ平坦且つ平行なプレート16及び17の形態の二つのフィンガー(finger)を具備し、二つのフィンガーはこれらの間にほぼ一定の大きさのスロット18を画成する。プレート16は軸線5に対して二つのプレートのうちの最も外側のプレートである。各フォーク15のプレート16、17はそれぞれの円形孔19、20を有し、円形孔19、20は直径が等しく且つ軸線5に対して径方向の軸線21に沿って互いに同軸である。各フォーク15は、再び軸線5に対して、外側面22によって接線方向の境界が定められ、外側面22は環状部13の凹んだ前面23と滑らかに融合する。言い換えれば、環状部13の軸線方向の厚みはフォーク15に向かって徐々に周囲に増加する。
【0016】
部材11は部材12とほぼ同一であるので、その構成部品は、同一の参照番号を使用して示される。
【0017】
部材11及び部材12は、リング30によって画成されるスパイダーによって連結され、リング30はシャフト4と同軸であり且つほぼ平坦な四つの部分31を具備し、ほぼ平坦な四つの部分31は、軸線5に対して接線方向であり、90°離間され、スロット18と係合し、且つ対応する孔19、20と同軸のそれぞれの孔32を有する。各フォーク15は、連結ボルト装置33によって、対応する部分31に固定され、連結ボルト装置33は頭部35を備えたスクリュー34を具備し、頭部35は、ワッシャー36が介在した状態で、プレート16の外側上に載る。より具体的には、ワッシャー36はブッシング(bushing)の環状フランジ37によって画成され、ブッシングは、スクリュー34のシャンク39と孔19の内面との間に介在せしめられた筒状部38を具備する。シャンク39は、孔19に加えて、孔32及び20内にも収まり且つネジ部41で終端し、ネジ部41の大部分は孔20の内側に収容され、すなわち、ネジ部41の小さな部分のみが孔20から突出する。
【0018】
図1を参照すると、各装置33は、商標名スパイラロック(SPIRALOCK:登録商標)として公知の特別なネジ部を備えたナットスクリュー43を具備する。しかしながら、任意の同等のセルフロックシステムがスパイラロックのネジ部の代わりに使用されてもよい。
【0019】
ナットスクリュー43は、内側がネジ切りされた筒状部44を具備するリングナットによって画成され、筒状部44はネジ部41上に螺入され且つ穴20と同軸に係合する。リングナットは、プレート17上に載る、軸線21に対して垂直な環状フランジ47も具備し且つタブ48を有し、タブ48は、回転を妨げるべくプレート17の縁上に収まるように軸線21に対して平行に曲げられる。
【0020】
図3を参照すると、各装置33は形状及び大きさが同一の二つのブッシング50も具備し、二つのブッシング50は、それぞれの円筒部51が孔32の内面とシャンク39の中間部52との間に介在せしめられるように、同軸且つ対称に孔32の入口及び出口に収められる。二つのブッシング50は軸線21に対して垂直なそれぞれの環状フランジ54を具備し、環状フランジ54は部分31とプレート16との間及び部分31とプレート17との間に介在せしめられ且つ部分31上に直接載る。二つのブッシング50はそれぞれの制動材(damper)55も具備し、各制動材55は、制動材料(damping material)、特に硬化ゴムのようなエラストマー材料の中間層によって画成される。各制動材55は、部分51に沿って延在する部分56と、フランジ54に沿って延在する部分57とを具備する。より具体的には、各ブッシング50の制動材55は、剛性材料(例えば金属)から作られた同軸の二つの部材58と59との間に挟み込まれ、且つ部分51の外側の円筒面及びフランジ54の外側の平坦な面を画成する。
【0021】
図2を参照すると、好ましくは、スペーサ60は、各フランジ54と、対応するプレート16、17との間に介在せしめられる。スペーサ60はそれぞれのタブ61を有し、タブ61は、回転を妨げるべくプレート16、17の縁上に収まるように軸線21に対して平行に曲げられる。
【0022】
ユニット1が動いているときにリング30によってスクリュー34に伝達される小さな運動が、突出することとは対照的に、離間され且つフォーク15のプレート16、17によって画成される二つの点においてアーム14によって支持される各スクリュー34のおかげで、比較的小さいせん断応力を生成する。
【0023】
これと同時に、制動材55は緩衝材を形成し、緩衝材は、孔32の内面とシャンク39の外面との間における軸線5に対する接線方向の小さな相対運動と、部分31の平坦な面とプレート16、17との間における軸線5に対する径方向の小さな相対運動とを確実なものとする。これら小さな運動が、摺動を生じさせず、且つ、衝撃を防ぐように制動されるので、摩耗が、リング30がスクリュー34によって係合されてアーム14に連結される領域において低減される。
【0024】
ブッシング50がプレート16及び17の両方について同一であるという事実によって、ジョイント10を組み立てるための構成部品のリスト、ひいてはコストも減少せしめられる。これと同時に、各部分31について、制動部57を備えた二つのフランジ54を使用することによって、軸線21に沿った制動作用が二倍生成される。さらに、部分51が孔32と係合するので、ブッシング50は、アーム14に収まる前にリング30に収まることができ、このためジョイント10の組立が容易にされる。
【0025】
頭部35及びナットスクリュー43が、相対運動における部材とは対照的に、互いに対して固定された部材(すなわち、ワッシャー36を無視すると、プレート16、17)上に軸線21に沿って載るので、スクリュー34による連結は、ネジのトルクが比較的小さい場合でさえも堅く且つ安全性が高く、スパイラロックのネジ部及びワッシャー36はスクリューが緩むのを防ぐことを補助する。
【0026】
最後に、部材11、12の形状は、部材11、12が故障しにくくなるように、アーム14と融合する湾曲面23を画成する。
【0027】
添付の特許請求の範囲において定義されるような本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書において記述され且つ示されたようなジョイント10に対して変更がなされうることは明らかである。
【0028】
特に、制動システムは孔19及び20内にも提供されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプター駆動ユニット用の非回転式ユニバーサルジョイント(10)であって、
長手方向の軸線(5)回りに延在するリング(30)であって、90°離間され且つ前記長手方向の軸線(5)に対して径方向のそれぞれの第1貫通孔(32)を有する四つの連結部(31)を具備するリング(30)によって画成されるスパイダーと、
二つの連結部材(11、12)であって、エンジン(2)のケーシング(6)及び減速ギア(3)のケーシング(7)に対して固定され且つそれぞれの対のアーム(14)を具備し、各連結部材(11、12)の前記アーム(14)が、互いに直径方向に反対側に位置し、他方の連結部材のアームに対して90°オフセットし、且つそれぞれのフォーク(15)を具備し、前記フォーク(15)の各々が、対応する前記連結部(31)によって係合される接線方向のスロット(18)を間に画成する二つの対向するフィンガー(16、17)を具備し、各前記フォーク(15)のフィンガー(16、17)が、対応する前記連結部(31)内の第1孔(32)と同軸のそれぞれの第2貫通孔(19、20)を有する、二つの連結部材(11、12)と、
四つの連結ボルト装置(33)であって、各々が、対応する前記連結部(31)にそれぞれの前記フォーク(15)を固定するためにあり、且つ、
a)前記第1孔(32)及び第2孔(19、20)と係合するシャンク(39)を備えたスクリュー(34)と、
b)前記シャンク(39)のネジ切りされた端部(41)に螺入されるナットスクリュー(43)と
を具備する、四つの連結ボルト装置(33)と
を具備する非回転式ユニバーサルジョイントにおいて、
前記連結ボルト装置(33)が、前記スクリュー(34)のシャンク(39)と前記リング(30)の連結部(31)との間に介在せしめられた第1制動手段(56)を具備することを特徴とする、非回転式ユニバーサルジョイント。
【請求項2】
前記連結ボルト装置(33)が、前記リング(30)の連結部(31)と前記フォーク(15)のフィンガー(16、17)との間に介在せしめられた第2制動手段(57)を具備することを特徴とする、請求項1に記載のジョイント。
【請求項3】
各前記連結部(31)について、前記第1制動手段(56)及び第2制動手段(57)が、前記シャンク(39)と前記連結部(31)との間に介在せしめられた第1部分(56)と、該第1部分(56)に結合され、且つ、前記連結部(31)と、対応する前記フィンガー(16、17)との間に介在せしめられた第2部分(57)とを具備する制動材料(55)の層によって画成されることを特徴とする、請求項2に記載のジョイント。
【請求項4】
前記連結ボルト装置(33)各々が、前記第1制動手段(56)を具備し且つ前記第1孔(32)と係合するブッシング(50)を具備することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のジョイント。
【請求項5】
前記ブッシング(50)が前記第2制動手段(57)も具備することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のジョイント。
【請求項6】
各前記連結部(31)について、前記第1孔(32)の入口及び出口にそれぞれ収められる、それぞれの一対のブッシング(50)を具備することを特徴とする、請求項5に記載のジョイント。
【請求項7】
前記ブッシング(50)が同一の形状及び大きさであることを特徴とする、請求項6に記載のジョイント。
【請求項8】
各前記ブッシング(50)が、互いに同軸であり且つ前記第1制動手段(56)に対して両側に固定された二つの剛性部材(58、59)を具備することを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載のジョイント。
【請求項9】
各前記ブッシング(50)の剛性部材が前記第2制動手段(57)に対して両側に固定されることを特徴とする、請求項8に記載のジョイント。
【請求項10】
前記ブッシング(50)と前記フィンガー(16、17)との間に介在せしめられた少なくとも一つのスペーサ(60)を具備することを特徴とする、請求項9に記載のジョイント。
【請求項11】
各前記ナットスクリュー(43)が、対応する前記フォーク(15)内の第2孔(20)と係合する、内部がネジ切りされた筒状部(44)を具備することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のジョイント。
【請求項12】
各前記ナットスクリュー(43)が、対応する前記フォーク(15)のフィンガー(17)上に載る環状フランジ(47)を具備することを特徴とする、請求項11に記載のジョイント。
【請求項13】
前記ナットスクリュー(43)のネジ部がスパイラロック(SPIRALOCK:登録商標)であり又は同等のセルフロックシステムを具備することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30780(P2012−30780A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−119609(P2011−119609)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(591069248)アグスタウェストランド ソチェタ ペル アツィオニ (31)
【Fターム(参考)】