説明

ベリリウム材充填体およびベリリウム材充填体の成形方法

【課題】ブランケットに用いられた時に、Beの密度を向上させ、微粒子の粒径が小さく、本質的に脆い物質でありながら割れの成長が妨げられ、高い充填化と掃引気体効果の高い流通抵抗とされたベリリウム材充填体およびベリリウム材充填体成形方法を提供する。
【解決手段】BeとTi、V、Zr、Nb、Ta、Ma、W、Yのいずれかの組成を有する粒子が充填容器に充填されて構成されるものであって、これらの組成を有する微粒子が焼結され、化学量論端的組成の単一相の焼結粒子塊が形成され、前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が、焼結粒子塊間の間隙に充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベリリウム材充填体およびベリリウム材充填体の成形方法に関し、特に核融合炉中性子槽倍材として使用して最適なベリリウム材充填体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、核融合炉中性子増倍材として好適な材料の開発において、ベリリウム金属間化合物に注目し、化学式Be−xat%M(但し、Mは、Ti、V、Mo、W、Zr、NbおよびTaのうちから選んだいずれか一種)7.7<x<10.5(at%)で表される、Be12MBe12MまたはBe13MとBe17Mとのベリリウム金属間化合物の複合相からなること特徴とする材料を開示している。さらに、かかる材料の組織は、鋳造組織で、かつ結晶粒径が50μm以下であり、20μm以下とすることが望ましく、平均粒径で0.1〜3.0mm程度とすることが望ましく、その真球度は粒径×0.5mm以下とすることが望ましく、Feの濃度は0.4質量%以下、酸化物混入量は5.0質量%以下とすることが有利であることが示されている。かかる増倍材の製造方法として、所望の金属間化合物の組成比率となるようにベリリウムと各種金属とを混ぜ、これらを溶解したのち、所定の電極形状に機械加工して、ついで、得られた消耗電極を用い、不活性ガスを雰囲気ガスとして充填した密閉容器内に、アーク溶解電極とベリリウム 製の消耗電極とを対向して設け、該消耗電極を回転させつつ両電極間にアークを飛ばすことにより、該消耗電極を溶解しながら遠心力により溶滴として飛散させることによって微小球を製造する、回転電極法によって増倍材微小球を製造することを開示している。好適な製造条件としては、雰囲気ガス圧:500〜12000Torr、アーク電流:100〜1000A、消耗電極の周速度:4〜1000m/sと与えられている。
【0003】
特許文献2は、金属、合金、または液相を有するセラッミクスからなる群から選択される少なくとも一つの物質を実質的に球形である粉末の製造方法において、複数の、好ましくは3個の、ジェットが一点に収斂する直流非移行型不活性ガスプラズマトーチが、中心軸に対して30°傾き、中心軸の周囲に120°離れて配置し、プラズマジェットの収斂点に少なくとも一つの物質が溶融して、或いは、引き伸ばされた形状として連続的に供給され、プラズマジェットは溶融金属液滴を噴霧化するために十分なエネルギーを有し、微粒子は約10K/sの速度で冷却する過程で粒径が10乃至300μmの球形粒子からなる粉末として固化させるプラズマ噴霧法を記述している。
【0004】
特許文献3には、少なくとも一種のベリリウム金属間化合物相と金属相との複合相からなることを特徴とする核融合炉用中性子増倍材、更には上記ベリリウム金属間化合物相が、Beと、Ti,V,Zr,Nb,Ta,Mo,WまたはYとの化合物であることを特徴とする核融合炉用中性子増倍材が記載されている。
【0005】
特許文献4には、化学式:Be−xat%M
但し、Mは、Ti,V,Mo,W,Zr,NbおよびTaのうちから選んだいずれか一種
2.0≦x≦15.0(at%)
で表わされる核融合炉プラズマ対向材料用ベリリウム金属間化合物が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3882114号公報
【特許文献2】米国特許第5,707,419号公報
【特許文献3】特許第3882110号
【特許文献4】特許第3864182号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えばBe12Ti又はBe12Vなどのベリリウム金属間化合物は高温における核融合炉用中性子増倍材として優れた性質を有するが、これらは室温において脆いためにその加工や取扱いが極めて難しい問題があり、その実使用が危ぶまれていたとしている。そこで、少なくとも一種のベリリウム金属間化合物と金属相からなる材料が提案されていたが、従来技術は、ベリリウム金属間化合物の複合相のみで延性を有利に改善し、高温特性及び延性に優れた核融合炉用中性子増倍材を提供できるとしている。さらに、従来技術は、ベリリウム金属間化合物からなり、粒子径が最大3mmである微小粒子を回転電極法で製造するために、製品と同材質である消耗電極を溶融とそれに引続き鋳造組織を機械的に加工するために、核融合炉用中性子増倍材として要求される靭性、延性を必要とし、また、消耗電極として必須の条件である耐熱衝撃性が劣ることなどの本質的な問題を解決するために複雑な組成が必要となり、また、製造技術上において、最大3mmまでの微粒子中の結晶粒径を50μm以下に抑制するために回転電極装置の内部の不活性雰囲気圧力を最大で約15気圧に高めて冷却速度を人為的に促進する必要があった。
【0008】
一方、従来技術は、金属、合金、セラッミクスから選択した、少なくとも一つの物質の実質的に球形である粉末の製造を可能にしている。しかし、異種金属元素種からなり、単一で均質な組成を有する球形粒子の製造を可能にするためには、予め、異種金属元素種からなり、単一で均質な組成を有する物質を溶融相として、或いは、固体として調製して細長く加工し、しかる後に開示されている方法を適用しなければならない。この前処理操作は、費用と手間を要するだけでなく、異種金属元素種からなり、単一で均質な組成を有する物質の物性が構成する金属元素種の物性と著しく相違する場合には適用することが困難になる場合がある。例えば、金属間化合物が生成して材料の靭性が低下し、脆化している場合には、細長く加工することは事実上不可能である。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてブランケットに用いられるように構成し、そしてブランケットに用いられた時に、Beの密度を向上させ、微粒子の粒径が小さく、本質的に脆い物質でありながら割れの成長が妨げられ、高い充填化と掃引気体効果の高い流通抵抗とされたベリリウム材充填体およびベリリウム材充填体成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子が充填容器に充填されて構成されるものであって、
BeMの組成を有する微粒子が焼結され、該微粒子を集合させた化学量論的組成の単一相の焼結粒子塊が形成されて、前記充填容器に充填されること
を特徴とするベリリウム材充填体を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記焼結粒子塊が微小球、ブロック状、棒状に形成され、これらが組み合わされて前記充填容器に充填されることを特徴とするベリリウム材充填体を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が焼結粒子塊間の間隙に充填されることを特徴とするベリリウム材充填体を提供する。
【0013】
本発明は、
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子が充填容器に充填されて構成されるものであって、
上述の組成を有する微粒子が焼結され、該微粒子を集合させた化学量論端的組成の単一相の焼結粒子塊が形成され、
前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が、焼結粒子塊間の間隙に充填されて構成されること
を特徴とするベリリウム材充填体を提供する。
【0014】
本発明は、また、焼結粒子塊を構成する微粒子は開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過した、平均粒子径が10−50μmであることを特徴とするベリリウム材充填体を提供する。
【0015】
本発明は、また、粗粒子は開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過しない粒子であることを特徴とするベリリウム材充填体を提供する。
【0016】
本発明は、
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子を充填容器に充填してベリリウム材充填体を成形する方法において、
造粒法と熱処理法でBeMの組成を有する微粒子を焼結し、化学量論的組成の単一相の焼結粒子塊化を形成し、
前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子を、焼結粒子塊間の間隙に充填するようにして焼結粒子塊および粗粒子を前記充填容器に充填すること
を特徴とするベリリウム材充填体の成形方法を提供する。
【0017】
本発明は、また、微粒子が、金属材をプラズマ中に供給して溶融液滴化し、引き続いて急冷することによって球形化して形成した球形微粒子であることを特徴とするベリリウム材充填体の成形方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかからなる微粒子が造粒後に焼結されることによって球形化された焼結粒子塊を焼結粒子塊の間に充填された粗粒子によってベリリウム材充填体が成形されるので、粒径の小さな微粒子を使用することができ、本質的に脆い物質でありながら割れの成長が妨げられ、高い充填化と掃引気体効果の高い流通抵抗のベリリウム材充填体およびベリリウム材充填体成形方法を提供することができる。このようにして成形されたベリリウム材充填体によってブランケットを形成することができ、このブランケットを形成したときに、Be密度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例であるベリリウム材充填体の成形方法を示すフローチャート図である。
【0021】
図1において、本発明の実施例は、BeおよびTiまたはVのプラズマ微粒化ステップ(S1)、生成された微粒子であるBe12TiまたはBe12V微粒子篩分けステップ(S2)、熱可塑剤準備ステップ(S3)、篩分けられた微粒子分に準備された熱可塑剤を添加して混練するステップ(S4)、混練した材料を射出成形機によって熱間射出成形するステップ(S5)、熱間射出成形によって球形粒子を形成する球形化ステップ(S6)、加熱によって球形粒子から熱可塑成形剤を除去する成形剤熱分解除去ステップ(S7)、焼結粒子塊化するステップ(S8)、ステップS2によって篩分けられた粗粒子を確保するステップ(S9)、焼結粒子塊を任意の充填容器に充填し、焼結粒子塊間の間隙に逐次粗粒子を充填する逐次充填ステップ(S10)、これらのステップによってベリリウム材充填体を成形するステップ(S11)から構成される。
【0022】
本実施例は、これらのステップによって
プラズマによる微粒子生成(S1)
粒度別分別による微粒子分別(S2)
微粒子への熱可塑性成形剤(結合剤)の添加(S3、S4)
熱処理による熱可塑性成形剤の除去(S5、S6、S7)
焼結粒子塊の形成(S8)
逐次充填(S9、S10)
充填体成形(S11)
が構成される。以下、これらの形成方法について説明する。
【0023】
(1)プラズマによる微粒子生成(S1)
図2は、異種金属から形成する金属粒子の製造装置の構成を示す図である。
図2において、異種金属から形成する金属粒子の製造装置50は、水冷されたステンレス鋼製の容器1と、中心軸に対して30°傾斜し、中心軸の周囲に120°ずつ離れて配置される3組の非移行型プラズマトーチ2と、プラズマトーチを構成するタングステン棒製の陽極3と、環状銅製の陰極4と、アルゴンガスの入口部5を有してプラズマジェットを構成するアルゴンガス投入部6と、細長く形成された挿入部7を有して異種金属例えば一方がBeで他方がTiもしくはVで形成された2つのワイヤ8(8A,8B)を挿入口部14(14A,14B)から挿入することのできるワイヤ供給装置9と、ワイヤ供給装置9を操作制御して、挿入するワイヤ8の挿入速度を制御する制御装置10と、容器1内の発生気体を排出する排出口部11と、製品である金属粒子を取り出す取り出し口部12とから構成される。
【0024】
ワイヤ8の挿入速度を制御することによってそれぞれの金属の質量比(構成比)を制御することができる。
【0025】
この例ではワイヤを用いているが、二つの異種金属を細長い金属材として構成して機械的複合を図った材料あるいは二種類の粉末を別個に投入するなどの方法を援用してもよい。ここで、異種金属として、例えばベリリウム(Be)、およびチタン(Ti)あるいはバナジウム(V)が採用される。Ti、V以外にもZr、Nb、Ta、Mo、W、Yのいずれを採用することができる。
【0026】
細長く成形された複数の金属素材については、複数のプラズマジェットが形成する交差点に挿入する単位時間当たりの複数の金属素材の重量比が、目的とする金属の組成比に等しくする必要があり、このため、複数の金属素材は長さ当たりに断面積が一様な(直径が一様な)ワイヤが好適である。
【0027】
ベリリウムとチタン或いはベリリウムとバナジウムを素材として、Be12Ti或いはBe12Vの分子式を有する金属間化合物の球状粒子の製造が行われた。Be12Tiにおけるベリリウムとチタンの重量比率は69.318%:30.682%であり、容積比率は84.596%:15.404%であり、Be12Vにおけるベリリウムとバナジウムの重量比率は67.979%:32.021%であり、容積比率は87.318%:12.682%である。
【0028】
異種金属ワイヤの単位長さ当たりの質量比が、目的とする金属の組成比に等しい構成となるためには、ベリリウム線直径が3mmである場合に、チタン線直径は1.280mm、バナジウム線直径は1.162mmであり、ベリリウム線の挿入速度が10.000mm/minである場合に同じ直径のチタン線の挿入速度は1.821mm/minであり、同じ直径のバナジウム線の挿入速度は1.452mm/minである。
【0029】
Be12Tiの元素質量組成比(Be:Ti=69.318%:30.682%)、Be12Vの元素質量組成比(Be:V=67.979%:32.021%)に相当する毎時質量挿入割合においてBe線及びTi又はV線を素材として、3組のプラズマジェットが構成する交差点に送りこみ、溶融液滴の状態でBeとTi又はVとの金属間化合物を生成させ、続いて溶融液滴をプラズマジェットによって分散し、球状化した溶融微粒子を急速に冷却して球状化した粒子からなる粉末を製造する。素材の挿入速度に対してアルゴン流量が高く、従ってプラズマ温度を維持するための電気入力も高いと粉末の微粒子成分が増加する傾向がある。典型的な運転条件において、ベリリウム金属間化合物の球状化した粒子からなる粉末の粒度は、総重量の50%が粒径45μm以下の微粒子で構成される。
【0030】
このようにして、Be12TiまたはBe12Vの組成を有する粒子が形成される。これらの粒子は化学量論的組成の単一相の微粒子と粗粒子が混在する。
【0031】
同様にしてBe13TiまたはBe13Vの組成を有する粒子を形成し得る。また同様にしてBe17TiまたはBe17Vの組成を有する粒子を形成し得る。
【0032】
従って、化学的両論的組成の単一相の粒子として、
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子が形成される。
【0033】
(2)粒度別分別による微粒子分別(S2)
200メッシュ標準篩の開度は75μmであり、総重量の70%は篩下分であり微粒子分となり、30%が篩上分であり粗粒子分となる。
製造された異種金属からなる金属粒子の粉末は、最大粒径が125μmであり、分別しない粉末の十分に大きな容器に対する充填効率は70.8%であった。粒径が75μm以上である金属粒子量は全体の30%であり、その充填効率は66.6%であった。粒径が75μmm以下である金属粒子量は全体の70%であり、その充填効率は70.5%であった。
【0034】
粒径が75μmm以下である金属粒子の粉末を45μmm粒子で代表して表面積を計算すると、940cm/cmであり、粒径が75μmm以上である金属粒子の粉末を100μmm粒子で代表して表面積を計算すると、396cm/cmであって、分別しない粉末の表面積は786.8cm/cmであった。
【0035】
このように、この例にあっては、開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過した、平均粒子径が10−50μmの粒子を微粒子とし、通過しなかった粗い粒子を粗粒子として分別している。
【0036】
(3)微粒子への熱可塑性成形剤(結合剤)の添加(S3、S4)
成形剤(結合剤)としては、比較的低温で完全にモノマーに熱分解する熱可塑性物質が好ましい。好適な選択は、チタン粉末の射出成型において実績がある、ポリメチルメタクリレート(軟化点125℃、分解点350−450℃、溶媒:ベンゼン、トルエン)又はポリプロピレンカーボネート(軟化点>40℃、分解点>300℃、溶媒:アセトン、メチルエチルケトン)であって、添加量は素材粉末嵩容積の10容積%以下である。
【0037】
プラズマ微粒化装置100で製造されるBe12Ti又はBe12Vの球形粒子からなる粉末は200メッシュの標準篩からなる分離装置で粗粒子分と微粒子分に分別され、微粒子分には熱可塑性成形剤を添加して捏練する。他の材料についても同様である。
【0038】
(4)熱処理による熱可塑性成形剤の除去(S5、S6、S7)
成形された球形状の粒子の粒塊は減圧雰囲気中で結合剤の溶融温度から分解温度にかけてゆっくりと昇温しながら加熱し、分解温度において十分な時間を保持して成形剤の熱分解を完了させ、除去する。
【0039】
(5)焼結粒子塊の形成(S8)
前述した組成を有する微粒子を焼結し、該微粒子を集合させた化学量論的組成の単一相の焼結粒子塊を形成する。
【0040】
粒径が45μm程度の球形粒子からなるチタン粉末の射出成型には多くの実績があり、ベリリウム金属間化合物の球形粒子からなる粉末についてもチタンについての実績を応用して実行することができる。直径が約3mmの棒状に熱間射出成型することは容易にでき、直径と高さが3mmの直円柱を形成し、一組みの半球形金型で圧縮するなどの適宜の方法で球状化することができる。また、通常セラミック粉末の造粒に用いられる転動造粒法により球状化することができる。直径が約3mmで空隙率が0.295の球状粒塊は、平均粒径が45μmである微粒子の約20万個が集合して形成されている。
【0041】
成形され、結合剤を除去された粒塊は不活性雰囲気或いは減圧雰囲気中で、Be12Tiはその融点である約1700℃以下で、Be12Vはその融点である約1850℃以下で空隙率が0.07に低下するまで焼結され、焼結後の粒塊密度は焼結前と比較して127%に増加し、体積は焼結前と比較して約79%に減少し、粒塊直径は2.8mmに減少する。焼結によって個々の球状粒子の接触点において拡散が起こり、粒子の中心間距離が短縮し、粒塊の内部表面積は約23%に減少するが、不定型で表面積が大きい粉末の焼結と異なり、球状の粒子充填体の焼結における特徴として、閉鎖された気孔は少ないので核反応ガスの拡散効果に大きな影響を与えることはなく、核反応ガスの蓄積に由来するスエリングなどの心配は起こらない。粒塊内では焼結前の粒子構造が保存されており、粒子構造内の結晶粒は加熱履歴中にも粒子境界を超えて成長し難い。また、脆さの故に発生する割れが粒塊全体に波及することは起こり難い。
【0042】
(6)逐次充填(S9、S10)
開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過した、平均粒子径が10−50μmの微粒子を用いて焼結粒子塊が形成される。
【0043】
微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が、焼結粒子塊間の間隙に充填される。微粒子よりも形状が大きく(200メッシュ標準篩を通過しない粒子、すなわち所定の標準篩を通過しない粒子)、化学量論的組成の単一相の粗粒子を、焼結粒子塊間の間隙に充填するようにして焼結粒子塊および粗粒子を充填容器に逐時充填して行く。
【0044】
(7)充填体成形(S11)
熱間造粒法によって粒塊を形成し、必要に応じて球形化し、成形剤を熱分解除去し、不活性雰囲気中或いは減圧雰囲気中で焼結して焼結粒塊とし、最終的に核融合炉の中性子増倍材容器中にまず粒塊を充填し、続いて篩別してあった粗粒子分を粒塊の充填間隙に充填して中性子増倍材容器から取り出されて成形体として完成する。
【0045】
(8)成形された充填体
以下、成形された充填体の構造、性状について説明する。
図3に、成形体とされた充填体を示す微粒子および粗粒子が例えばセラミックスで構成された被覆体21に充填された。成形体は1)球状もしくは2)直円柱状とされる。他の形状であってもよい。球体の場合、直径(中心粒径)の例として1mmΦあるいは2mmΦが採用される。他の大きさにしてもよい。直円柱体の場合、サイズ例としては5~2mmΦ、50〜200mm(高さ)が採用される。他の大きさにしてもよい。
【0046】
図4に、球状体の拡大図を示す。一部を更に拡大した図を示す。
図4に、単一径球充填体の体積拡散焼結過程を、一つの球体が12個の球体と接触する面心立方体系の細密充填体について粒子中心間距離/粒子直径比をパラメータとして模式的に示す。球状態の一部を拡大すると、金属間化合物粒子が生成されていることが判る。この金属間化合物は化学量論的組成の単一相を呈する。焼成することによって粒子同士が融着し、全体として図3に示すように、球状体あるいは直円柱体をなす焼結粒子塊とすることができる。
【0047】
図5および図6に、実際の充填体100において一つの球体が9個の球体と接触すると想定して種々の特性の変化を示した。
図5および図6において、直径2.77mmで一様な粒塊を粒塊直径と比較して有限で、十分に大きい容器に充填する場合の到達充填効率は実験的に64%であった。容器容積の36%に相当する充填空隙に、大きい容器への充填効率が66.6%である75−125μm粉末を充填すると、実際の充填効率は60%であった。粒塊の相対密度は92%であり、微粒子自体の相対密度は100%であったので、充填体の最終的な相対密度は80.5%であって、最大粒径が125μmであり、分別しない粉末の十分に大きな容器に対する充填効率である70.8%と比較して9.7%高くなった。
【0048】
焼結した粒塊の空隙比表面積は125cm2/cm3であり、粒塊の間隙に充填した75−125μm粉末の比表面積は108cm2/cm3であった。粒塊を充填した後に、空隙に75−125μm粉末を逐次的に充填した充填体の比表面積は103.3cm2/cm3であった。この比表面積は比表面積786.8cm2/cm3の例と比較して著しく小さいことが示された。
【実施例2】
【0049】
図7は、第2の実施例についてベリリウム金属間化合物の製造、成形のフローを示す。第1の実施例と同一の製造、成形方法については第1の実施例の説明を採用する。
【0050】
この実施例において、原料としてBeワイヤとTiワイヤあるいはBe粉末とTi粉末を使用して(S21、S31)、プラズマアトマイジング(S22)、射出成形、転動造粒(S23)、によって製造、形成を行い、焼成すること(S24)によって微小球状の焼結粒子魂を生成し(S25)、開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過しない粗粒子(粗粒体)を形成すること(S26)は先の実施例と同じである。そして、この例の場合、プラズマアトマイジングに代えて赤外線加熱法を採用することが提案される。
【0051】
このようにして、BexMの組成を有する微粒子が焼結され、化学論理的組成の単一相の微小球状の焼結粒子塊が形成される。更に、微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が形成される。この例の場合、Be粉末およびTi粉末(S31)は、粉砕・混合され(S32)、溶解され(S33)、更に粉砕・混合され(S34)、冷間押出され(S35)、プラズマ焼成される(S35)。
【0052】
これらのステップによって上述したBexMの組成を有する微粒子が焼結され、化学量論的組成の単一相のブロック状あるいは棒状の焼結粒子塊が形成される(S37)ステップS22のプラズマアトマイジングまたは赤外線加熱によって形成した微粒子を使用して冷間押出を行い(S35)、プラズマ焼成するようにしてもよい(S36)。
【0053】
図8は、生成した微小球による焼結粒子塊を単一球17として、あるいはブロック状あるいは棒状の焼結粒子塊18、19を使用し、あるいは/および生成した粗粒子20を被覆体21に充填して充填体100を形成した状態を示す。
図8において、上図から微小球状焼結粒子塊を単一球として被覆体21に充填された例(単一球充填)、形状の異なる微小球焼結粒子塊および粗粒子が混在状態で被覆体21に充填された例(多次球充填)、ブロック状焼結粒子塊と微小球焼結粒子塊が混在する状態で被覆体21に充填された例(ブロック状―微小球の混合充填)および棒状焼結粒子塊と微小球焼結粒子塊が混在する状態で被覆体21に充填された例(棒状―微小球の混合充填)を示す。
【0054】
微小球焼結粒子塊の被覆体21への充填によって、熱伝導性の均一化および空隙率を減らして、被覆体21への充填率を向上させることができる。更に、ブロック状焼結粒子塊あるいは棒状焼結粒子塊を混在させることによってこれらの形状に基づいてBe充填量の増大を図ることができる。
【0055】
このように形成した成形体としてベリリウム材充填体をトリチウム増殖材としてのブランケットに使用することによって、Be密度を向上させるブランケットとすることができる。ベリリウム金属間化合物成形体の核融合ブランケットの充填について述べると次のようになる。
【0056】
単一球充填
単一球充填は、単一直径を有する微小球を集合して充填し、又は集合した微粒子間に粗粒体を充填した充填体である。容器上部から微小球を流し込む充填(ランダム充填)しながら、微小球が共振する振動を与えるか(振動充填)、又は上下や左右から衝撃(タッピング充填)を与えることにより
充填する。
【0057】
多次球充填
多次球充填は、大きさの異なる直径を有する微小球、又は粗粒体を充填した充填体である。最も大きな直径を有する微小球(1次球)を最初に振動充填、又はタッピング充填し、1次球が通過しない程度のメッシュにより上部を保持する。次にそのメッシュを介して、より小さい直径を有する微小球(2次球)を振動充填又はタッピング充填することにより、1次球の狭隘部に2次球が入り込み、より密な充填体となる。3次球以降は同様な手法により充填する。
【0058】
ブロック状-微小球の混合充填あるいは棒状-微小球の混合充填これらは、ブロック状又は棒状の充填物に対して、微小球又は粗粒体を廻りに充填した充填体である。充填容器の下部に先ず微小球を振動充填又はタッピング充填する。その微小球の上に容器壁近傍を外してブロック状又は棒状の充填物を装荷し、容器壁近傍に微小球をランダム充填してから振動充填又はタッピング充填により、ブロック状又は棒状の充填物が埋まるまで微小球を充填する。より高密度充填にする場合は、この状態からさらに多次球充填法を適用し、ブロック状又は棒状充填物の廻りの微小球を多次球充填体とする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例の方法をフローで示す図。
【図2】図1に用いられる製造装置の構成を示す図。
【図3】生成した焼結粒子塊の形状を示す図。
【図4】金属間化合物粒子から焼結粒子塊が成形された状態を示す図。
【図5】焼結によって空隙が減少し、Be密度が向上することを示す図。
【図6】図5の場合のデータ例を示す図。
【図7】本発明の他の実施例の方法をフローで示す図。
【図8】本発明の実施例の充填体の形状を示す図。
【符号の説明】
【0060】
1…容器、2…非移行型プラズマトーチ、3…陽極、4…陰極、8…ワイヤ、9…ワイヤ供給装置、10…制御装置、17…単一球、18…ブロック状焼結粒子塊、19…棒状焼結粒子塊、20…粗粒子(粗粒体)、21…被覆体、100…充填体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子が充填容器に充填されて構成されるものであって、
上述の組成を有する微粒子が焼結され、該微粒子を集合させた化学量論的組成の単一相の焼結粒子塊が形成されて、前記充填容器に充填されること
を特徴とするベリリウム材充填体。
【請求項2】
請求項1において、前記焼結粒子塊が微小球、ブロック状、棒状に形成され、これらが組み合わされて前記充填容器に充填されることを特徴とするベリリウム材充填体。
【請求項3】
請求項2において、前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が焼結粒子塊間の間隙に充填されることを特徴とするベリリウム材充填体。
【請求項4】
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子が充填容器に充填されて構成されるものであって、
上述の組成を有する微粒子が焼結され、該微粒子を集合させた化学量論的組成の単一相の焼結粒子塊が形成され、
前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子が、焼結粒子塊間の間隙に充填されて構成されること
を特徴とするベリリウム材充填体。
【請求項5】
請求項4において、焼結粒子塊を構成する微粒子は開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過した、平均粒子径が10−50μmであることを特徴とするベリリウム材充填体。
【請求項6】
請求項5において、粗粒子は開度が75μmの200メッシュ標準篩を通過しない粒子であることを特徴とするベリリウム材充填体。
【請求項7】
TiBe,TiBe,TiBe17,TiBe12
VBe,VBe12,CrBe2,CrBe12,MnBe12,BaBe13,
FeBe,FeBe11,FeBe12,NiBeNiBe21,NiBe22,
ZrBe,ZrBe,ZrBe17,ZrBe13
NbBe,NbBe,NbBe,NbBe17,NbBe12
TaBe,TaBe,TaBe,TaBe,TaBe17,TaBe12
MoBe,MoBe,MoBe12,MoBe22
WBe,WBe12,WBe22,およびYBe13
のいずれかの組成を有する粒子を充填容器に充填してベリリウム材充填体を成形する方法において、
造粒法と熱処理法で上述の組成を有する微粒子を焼結し、該微粒子を集合させた化学量論的組成の単一相の焼結粒子塊化を形成し、
前記微粒子よりも形状が大きく、化学量論的組成の単一相の粗粒子を、焼結粒子塊間の間隙に充填するようにして焼結粒子塊および粗粒子を前記充填容器に充填すること
を特徴とするベリリウム材充填体の成形方法。
【請求項8】
請求項7において、微粒子が、金属材をプラズマ中に供給して溶融液滴化し、引き続いて急冷することによって球形化して形成した球形微粒子であることを特徴とするベリリウム材充填体の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−19608(P2010−19608A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178353(P2008−178353)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】