説明

ベルトモール

【課題】低コストでありながら、車外に露出する意匠部の車外側面に耐候性を付与しつつベルトモール本体の反り返りを防止できるベルトモールを提供する。
【解決手段】ベルトモール本体21の意匠部23の車外側面及び保持部22の車内側面には、ベルトモール本体より成形収縮率が高い樹脂材料からなる表皮材33、34を設け、意匠部の車内側面及び保持部の車外側面には上記表皮材を設けない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアに対して昇降するスライドガラスの表面に摺接することによりスライドガラス表面の汚れや水分を除去するシールリップを備えるベルトモールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両ドアに固定したベルトモールが開示してある。このベルトモールは、アウタパネル上縁に沿って固定されるベルトモール本体と、ベルトモール本体の車内側面に突設した、スライドガラス表面に摺接してスライドガラス表面の汚れや水分を除去するシールリップと、を具備している。ベルトモール本体は、アウタパネル上縁の車外側に位置する意匠部と、アウタパネル上縁の車内側に位置する保持部と、を具備している。ベルトモール本体(意匠部と保持部)の内層はポリプロピレンを含有する樹脂材料製であり、該内層の表面全体を、ポリプロピレンを含有する樹脂材料製の外層で覆っている。さらに、意匠部を覆う外層の車外側面を表皮層で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−279787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のベルトモールの意匠部の車外側面が表皮層となっているため、意匠部の車外側面には耐候性がない。
また、ベルトモール本体の表面全体を内層よりも成形収縮率が高い樹脂材料からなる外層で覆っているが、ベルトモール本体の内層をポリプロピレンを含有する樹脂材料で成形してあり、かつベルトモール本体の断面形状が複雑な形状であるため、意匠部が車外側に反り返ると共に保持部が車内側に反り返るおそれがある。
さらに、一般的に外層の樹脂材は内層の樹脂材より高価であるため、意匠部の車外側への反り返りの防止及び保持部の車内側への反り返りの防止に対する寄与度が小さい意匠部の車内側部及び保持部の車外側部にも表皮層を設けた特許文献1の構造ではベルトモールの製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明は、低コストでありながら、車外に露出する意匠部の車外側面に耐候性を付与しつつ、ベルトモール本体の反り返りを防止できるベルトモールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のベルトモールは、車両ドアのアウタパネル上縁の車外側に位置する意匠部と、アウタパネル上縁の車内側に位置する保持部と、を具備する、樹脂材料からなり上記上縁に沿って固定するベルトモール本体と、を備えるベルトモールにおいて、上記意匠部の車外側面及び上記保持部の車内側面には、上記ベルトモール本体より成形収縮率が高い樹脂材料からなる表皮材を設け、上記意匠部の車内側面の少なくとも一部及び上記保持部の車外側面の少なくとも一部に上記表皮材を設けない部位を形成したことを特徴としている。
【0007】
上記保持部の車内側面に、スライドガラスに摺接する上下一対のシールリップを突設し、上記保持部の車内側面に設けた上記表皮材が、上下のシールリップ間に位置していてもよい。
【0008】
上記意匠部の車外側面に設けた上記表皮材及び上記保持部の車内側面に設けた上記表皮材を同じ樹脂材料により成形してもよい。
【発明の効果】
【0009】
ベルトモール本体の意匠部の車外側面にベルトモール本体より成形収縮率が高い樹脂材料からなる表皮材を被せたので、意匠部の車外側面に耐候性を付与できる。
さらに、意匠部の車外側面及び保持部の車内側面にはベルトモール本体より成形収縮率が高い樹脂材料からなる表皮材を設ける一方で、意匠部の車内側面の少なくとも一部及び上記保持部の車外側面の少なくとも一部には当該表皮材を設けないので、意匠部の車外側への反り返りと保持部の車内側への反り返りを防止できる。
また、一般的に表皮材の原材料はベルトモール本体の原材料より価格が高いが、ベルトモール本体の表面全体を表皮材で覆うのではなく、ベルトモール本体の表面の一部のみに表皮材を被せているので、低コストで製造可能である。
【0010】
請求項2のように構成すれば、保持部の車内側面に設ける表皮材の大きさが小さくなるので、より低コスト化を図れる。
【0011】
請求項3のように構成すれば、ベルトモールの成形に用いる樹脂押出機の数を減らせるので、ベルトモールの成形が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の車両ドアの側面図である。
【図2】ベルトモールの拡大横断面図である。
【図3】図1のIII−III矢線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の図2と同様の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態を図1から図3を利用しながら説明する。なお、以下の説明中の前後方向は、図1に記載した矢印の方向(車両の長手方向)を基準としている。
図1は本発明を適用する車両ドア10を示している。車両ドア10のアウタパネル11及びドアサッシ12は金属製であり、アウタパネル11とドアサッシ12の間には窓孔13が形成してある。窓孔13内にはアウタパネル11とインナパネル(図示略)の間に位置するスライドガラスWが昇降自在に設けてある。
アウタパネル11上縁にはベルトモール20が固定してある。図1に示すようにベルトモール20は前後方向(車両ドア10の長手方向)に延出する細長形状であり、その断面形状はいずれの長手方向位置においても図2及び図3に示す形状である。
ベルトモール20は、アウタパネル11上縁に固定したときに該上縁の車内側に位置する保持部22と、保持部22の上端から下方に向かって一体的に延び、かつアウタパネル11上縁に固定したときに該上縁の車外側に位置する意匠部23と、からなるベルトモール本体21を有している。ベルトモール本体21はポリプロピレン製(柔軟性樹脂材料)であり、意匠部23の車内側面にはベルトモール本体21より軟質の樹脂材料、例えばTPO(ポリオレフィン系軟質樹脂)からなる内リップ24が固定してあり、保持部22の車内側面には突条25が一体的に突設してある。さらに、保持部22の下端部には係合溝26が凹設してあり、意匠部23の下端面にはベルトモール本体21より軟質の樹脂材料、例えばTPO(ポリオレフィン系軟質樹脂)からなるボディータッチリップ27の上端が固定してある。
保持部22の車外側面の上下両端には、ベルトモール本体21より軟質の樹脂材料、例えばTPO(ポリオレフィン系軟質樹脂)からなる上シールリップ29と下シールリップ30の基端部がそれぞれ固定してある。上シールリップ29と下シールリップ30は図2及び図3に示す断面形状であり、押出成形によってベルトモール本体21、内リップ24、及びボディータッチリップ27と一体的に成形される。図2及び図3に示すように、上シールリップ29の基端部の上端の車内側の角部の断面形状は曲面ではなく角形である。上シールリップ29及び下シールリップ30の車内側の側面には、スライドガラスWと摺接することによりスライドガラスWの表面に付着したゴミ(汚れ)や水分を除去する毛質部31がそれぞれ設けてある。
図2及び図3に示すように、保持部22の車内側面と意匠部23の車外側面とには、共にベルトモール本体21より成形収縮率が高い高結晶ポリプロピレン(樹脂材料)からなる表皮材33と表皮材34がそれぞれ固定状態で被せてある。図示するように、表皮材33は上シールリップ29と下シールリップ30の間に位置する部分に設けてある。一方、表皮材34は、上シールリップ29の基端部上端とボディータッチリップ27の間に位置する部分に設けてある。この表皮材33及び表皮材34も、押出成形によってベルトモール本体21、内リップ24、ボディータッチリップ27、上シールリップ29、下シールリップ30と一体的に成形される。
【0014】
以上のような構成からなるベルトモール20を図3に示すようにアウタパネル11上縁に装着すると、ベルトモール本体21の保持部22がアウタパネル11上縁の車内側に位置し意匠部23がアウタパネル11上縁の車外側に位置する。そして、保持部22の係合溝26がアウタパネル11上縁に形成された係止突片11aの下縁部に係合し、かつ、保持部22の車外側面の上下方向の中間部がアウタパネル11上縁の車内側面に接触すると共に、内リップ24とボディータッチリップ27が弾性変形しながらアウタパネル11上縁の車外側面に接触する。上シールリップ29及び下シールリップ30は、アウタパネル11に取り付ける前の状態にあるとき、またはスライドガラスWが全開位置に移動して上シールリップ29及び下シールリップ30より下方に移動したときは図2に示す自由状態となり、全開位置から上昇したスライドガラスWの車外側面に接触すると図3に示す形状に弾性変形する。
【0015】
以上説明したように本実施形態の車両ドア10では、意匠部23の車外側面に表皮材34を設けて、図1に示すように表皮材34を車外側に露出させている。表皮材34はベルトモール本体21のポリプロピレンより成形収縮率が高い高結晶ポリプロピレン製であるため耐候性を有する。そのため、表皮材34を設けずに意匠部23を露出させる場合に比べて車両ドア10の美観が向上している。
さらに、意匠部23の車内側面及び保持部22の車外側面には高結晶ポリプロピレン製の表皮材を設けずに、保持部22の車内側面と意匠部23の車外側面とに高結晶ポリプロピレン製の表皮材33と表皮材34を設けている。そのため、表皮材33と表皮材34によって、保持部22の車内側への反り返りと意匠部23の車外側への反り返りを防止している。
また、表皮材33と表皮材34の原材料である高結晶ポリプロピレンはベルトモール本体21の原材料であるポリプロピレンより高価であるが、ベルトモール本体21の表面の一部のみに表皮材33と表皮材34を設けている(保持部22の車内側への反り返りと意匠部23の車側側への反り返りに対する寄与度が小さい意匠部23の車内側面及び保持部22の車外側面には高結晶ポリプロピレン製の表皮材を設けていない)ので、本実施形態のベルトモール20は低コストで製造可能である。
さらに、表皮材33と表皮材34の材質を同一にしているので、表皮材33と表皮材34の原材料の種類を変えた場合に比べて、ベルトモール20の成形に用いる樹脂押出機の数を減らすことが可能である。そのため、表皮材33と表皮材34の原材料の種類を変えた場合に比べてベルトモール20の成形は容易である。
【0016】
次に本発明の第2の実施形態について図4を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材には同じ符合を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のベルトモール40の特徴は表皮材41の上下寸法を第1の実施形態に比べて大きくした点にある。即ち、図示するように保持部22の車内側面全体及び保持部22の車外側面の下端部には表皮材34と同じ材質の表皮材41が固定状態で被せてあり、表皮材41の表面に上シールリップ29及び下シールリップ30の基端部を固定している。表皮材41の上端と表皮材34の上端は互いに接触している。本実施形態の表皮材41も、押出成形によってベルトモール本体21、内リップ24、ボディータッチリップ27、上シールリップ29、下シールリップ30、及び表皮材34と一体的に成形される。
このような構成である本実施形態のベルトモール40も第1の実施形態のベルトモール20と同様の作用効果を発揮できる。さらに本実施形態のベルトモール40では保持部22の車外側面の下端部にも表皮材41を被せているが、保持部22の車外側面における下端部を除く部分には表皮材41を被せていないので、ベルトモール20と同様に低コストで製造可能である。
【0017】
最後に本発明の第3の実施形態について図5を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材には同じ符合を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のベルトモール50のベルトモール本体21の意匠部51は、その下端部の形状が意匠部23とは異なる。また、意匠部51の下端面には、ボディータッチリップ27と同じ材質かつボディータッチリップ27とは異なる形状のボディータッチリップ52が固定してある。ボディータッチリップ52の上端部の車外側端の下側角部の断面形状は曲面ではなく角形である。また、上シールリップ29と同じ材質である上シールリップ53の基端部の上端には、その車内側端面が曲面となっている突条54が一体的に突設してある。さらに、表皮材33と同じ材質である表皮材55は、意匠部51の車外側面全体及び突条54の上面に固定状態で被せてある。本実施形態のベルトモール本体21、内リップ24、下シールリップ30、表皮材33、ボディータッチリップ52、上シールリップ53、及び表皮材55も押出成形によって一体的に成形される。
このような本実施形態のベルトモール50も第1の実施形態のベルトモール20と同様の作用効果を発揮する。
しかも、突条54がベルトモール本体21とスライドガラスWの隙間に形成される溝をある程度覆うので、意匠性を向上させることができ、しかも雨水等の当該溝への侵入を減らすことが可能である。
【0018】
以上、各実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば第1から第3の実施形態のベルトモール本体21をポリプロピレンとは別の樹脂材料により成形し、表皮材33、34、41、55を高結晶ポリプロピレンとは別の樹脂材料により成形してもよい。ただし、この場合も表皮材33、34、41、55の樹脂材料の成形収縮率をベルトモール本体21の樹脂材料の成形収縮率よりも高くする。
また、ベルトモール本体21の意匠部23、51の車内側面の一部に、ベルトモール本体21より成形収縮率が高い樹脂材料からなる表皮材を被せても良い。
さらに、ベルトモール本体21の保持部22の車内側面に被せる表皮材の材質と、意匠部23、51の車外側面に被せる表皮材の材質と、あるいはその他の箇所(保持部22の車外側面、意匠部23、51の車内側面)に被せる表皮材の樹脂材の材質とを、互いに異ならせても良い。但し、この場合もベルトモール本体21の樹脂材よりも成形収縮率を高くする。
【符号の説明】
【0019】
10 車両ドア
11 アウタパネル
11a 係止突片
12 ドアサッシ
13 窓孔
20 ベルトモール
21 ベルトモール本体
22 保持部
23 意匠部
24 内リップ
25 突条
26 係合溝
27 ボディータッチリップ
29 上シールリップ
30 下シールリップ
31 毛質部
33 34 表皮材
40 ベルトモール
41 表皮材
50 ベルトモール
51 意匠部
52 ボディータッチリップ
53 上シールリップ
54 突条
55 表皮材
W スライドガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアのアウタパネル上縁の車外側に位置する意匠部と、アウタパネル上縁の車内側に位置する保持部と、を具備する、樹脂材料からなり上記上縁に沿って固定するベルトモール本体と、
を備えるベルトモールにおいて、
上記意匠部の車外側面及び上記保持部の車内側面には、上記ベルトモール本体より成形収縮率が高い樹脂材料からなる表皮材を設け、上記意匠部の車内側面の少なくとも一部及び上記保持部の車外側面の少なくとも一部に上記表皮材を設けない部位を形成したことを特徴とするベルトモール。
【請求項2】
請求項1記載のベルトモールにおいて、
上記保持部の車内側面に、スライドガラスに摺接する上下一対のシールリップを突設し、
上記保持部の車内側面に設けた上記表皮材が、上下のシールリップ間に位置するベルトモール。
【請求項3】
請求項1または2記載のベルトモールにおいて、
上記意匠部の車外側面に設けた上記表皮材及び上記保持部の車内側面に設けた上記表皮材を同じ樹脂材料により成形したベルトモール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−285130(P2010−285130A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142558(P2009−142558)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】