説明

ベルト式無段変速機

【課題】弁体を移動させるのに必要な作動油の油圧の増大を低減すること。
【解決手段】ベルト式無段変速機110は、プライマリシャフト51に設けられると共に力を受ける受圧面が回転軸に沿って形成され、受圧面に負荷される回転軸を軸とする回転方向の力によって作動油が流れる通路の開口を封じるボール74を移動させてプライマリ油圧室54へ供給する作動油の流量を調節するプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト式無段変速機に関し、さらに詳しくは、油圧室への作動油の供給量を調節する作動油供給量調節装置を備えるベルト式無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機としてベルト式無段変速機がある。ベルト式無段変速機は、入力軸に設けられるプライマリプーリと、出力軸に設けられるセカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリに巻き掛けられるベルトとを備える。ベルト式無段変速機は、前記プライマリプーリと前記ベルトとの接触半径と、前記セカンダリプーリと前記ベルトとの接触半径とを無段階に変化させる。これにより、ベルト式無段変速機は、変速比を無段階に調整できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、プライマリプーリ軸の軸内に配置されてプライマリプーリ軸と一体回転すると共に、プライマリ油圧室への作動油の供給を許容する作動油供給手段と、プライマリプーリ軸の軸内に配置されてプライマリプーリ軸と一体回転すると共に、プライマリ油圧室からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御する作動油排出手段とを備えるベルト式無段変速機が開示されている。このベルト式無段変速機は、開閉部材のピストン部に作動油の油圧を負荷させることで、ピストン部が弁体としてのボールをプライマリシャフトの軸方向に押す。
【0004】
【特許文献1】特開2007−057033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているベルト式無段変速機の前記ピストン部は、プライマリプーリ軸内という限られた空間内に配置される。よって、このベルト無段変速機は、前記ピストン部において作動油の油圧を受ける部分の面積が十分に確保できない。これにより、このベルト式無段変速機では、前記ボールを軸方向へ移動させるのに必要な力を確保するために作動油の油圧が増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、弁体を移動させるのに必要な作動油の油圧の増大を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るベルト式無段変速機は、回転が入力されて回転軸を軸として回転するシャフトと、前記シャフトに連結されて前記回転軸を軸として回転する固定シーブと、前記固定シーブと対向して前記シャフトに設けられて前記回転軸方向に前記シャフト上を移動する可動シーブと、前記シャフトに設けられて、前記可動シーブに対して作動油の油圧によって前記回転軸方向の力を与えるプーリ油圧室と、前記シャフトに設けられると共に力を受ける受圧面が前記回転軸に沿って形成され、前記受圧面に負荷される前記回転軸を軸とする回転方向の力によって前記作動油が流れる通路の開口を封じる弁体を移動させて前記プーリ油圧室へ供給する前記作動油の流量を調節する作動油供給量調節手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、本発明は、弁体を移動させるのに必要な力を受ける受圧面が、前記回転軸に沿って形成される。一般的に、シャフトに形成される空間としては、径方向の空間よりも回転軸方向の空間の方が、設計上の自由度が高いため大きく確保されやすい。よって、本発明に係るベルト式無段変速機は、前記受圧面の面積を大きく確保できるため、前記弁体を移動させるために必要な作動油の油圧の増大を低減できる。
【0009】
本発明の好ましい態様としては、前記シャフトに設けられて油圧室の一部を構成する固定部材と、前記固定部材と対向して設けられて前記油圧室の一部を構成すると共に、前記受圧面を含んで形成されて前記受圧面に負荷される前記回転軸を軸とする回転方向の力を受けることで前記固定部材に対して相対的に移動する可動部材と、を有し、前記作動油供給量調節手段は、前記可動部材の前記固定部材に対する相対的な移動の方向に基づいて前記プーリ油圧室へ供給する前記作動油の流量を調節することが望ましい。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、前記作動油供給量調節手段は、前記可動部材の前記固定部材に対する相対的な移動量に基づいて前記プーリ油圧室へ供給する前記作動油の流量を調節することが望ましい。
【0011】
本発明の好ましい態様としては、前記作動油供給量調節手段は、前記可動部材と連結または一体に形成されて前記回転軸を軸とする回転方向の力を前記回転軸に沿う方向の力に変換して前記弁体に前記回転軸に沿う方向の力を与える変換手段と、を含んで構成されることが望ましい。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記弁体は、弁体支持部材によって支持され、前記変換手段は、前記弁体支持部材を介して前記弁体と連結されることが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様としては、前記変換手段は、前記回転軸を軸として前記シャフトに対して相対的に回転すると共に、前記回転軸と直交する仮想の面からの距離が変化するカム傾斜部と、前記カム傾斜部と接触して前記カム傾斜部に沿って前記カム傾斜部に対して相対的に移動すると共に、自身に負荷される力を前記弁体に伝えるカム部材と、を含んで構成されることが望ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記カム傾斜部は、前記仮想の面と成す角度が異なる複数の面を含んで構成されることが望ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、前記カム傾斜部は、前記仮想の面と成す角度が連続的に変化する曲面を含んで構成されることが望ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、作動油供給量調節手段は、前記受圧面を含んで構成されて、自身に供給される作動油の油圧によって前記受圧面に所定方向の力を与える第1油圧室と、前記受圧面を含んで構成されて、自身に供給される作動油の油圧によって前記受圧面に所定方向とは反対方向の力を与える第2油圧室と、を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るベルト式無段変速機は、弁体を移動させるのに必要な作動油の油圧の増大を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0019】
図1は、本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。図1に示すように、車両100の動力伝達機構は、ベルト式無段変速機110と、内燃機関120と、トルクコンバータ130と、前後進切換機構140と、減速装置150と、差動装置160と、を備える。
【0020】
内燃機関120は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト121から回転を出力する。
【0021】
トルクコンバータ130は、流体クラッチの一種であり、内燃機関120から取り出された回転を作動油を介して前後進切換機構140に伝える。また、トルクコンバータ130は内燃機関120から取り出されたトルクを増幅する。
【0022】
前後進切換機構140は、トルクコンバータ130からの回転の回転方向を切り替えてベルト式無段変速機110へ前記回転を伝える。
【0023】
ベルト式無段変速機110は、前後進切換機構140から入力される回転の回転速度を所望の回転速度に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機110の詳細な説明は後述する。
【0024】
減速装置150は、ベルト式無段変速機110からの回転の回転速度を減速して差動装置160に前記回転を伝える。
【0025】
差動装置160は、車両100が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪180と、外側の車輪180との速度差を吸収する。
【0026】
上記構成要素によって車両100の動力伝達機構は形成される。内燃機関120から取り出された回転は、クランクシャフト121を介してトルクコンバータ130に伝えられる。トルクコンバータ130によってトルクが増幅された回転は、ベルト式無段変速機110の入力軸としてのインプットシャフト131を介して前後進切換機構140に伝えられる。
【0027】
前後進切換機構140によって回転方向が切り替えられた回転は、プライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機110に伝えられる。ベルト式無段変速機110によって、回転速度を変更された回転は、減速装置150に伝えられる。
【0028】
減速装置150によって減速された回転は、減速装置150のファイナルドライブピニオン151と、ファイナルドライブピニオン151と噛み合う差動装置160のリングギア161とを介して差動装置160に伝えられる。
【0029】
差動装置160に伝えられた回転は、ドライブシャフト170に伝達される。差動装置160側とは反対側のドライブシャフト170には、車輪180が取り付けられる。ドライブシャフト170に伝えられた回転は車輪180に伝達される。これにより、車輪180は回転し、車輪180が路面に前記回転を伝達することにより車両100は走行する。
【0030】
なお、本実施形態では内燃機関120をピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。動力発生手段から回転力を得られれば良く、例えば、動力発生手段はロータリー式の内燃機関でもよいし、モータでもよい。
【0031】
ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50と、セカンダリプーリ60と、ベルト80とを含んで構成される。ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50に回転が入力される。プライマリプーリ50に入力された回転は、セカンダリプーリ60に伝えられる。この時、前記回転は、その回転速度を調整、すなわち変速される。セカンダリプーリ60に伝えられた回転は、減速装置150に伝えられる。
【0032】
図2は、本実施形態に係るプライマリプーリを模式的に示す断面図である。プライマリプーリ50は、プライマリシャフト51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プーリ油圧室としてのプライマリ油圧室54と、スプライン55と、プライマリシリンダ56とを備える。プライマリシャフト51は、図1に示すように、軸受81、軸受82によってインプットシャフト131の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。なお、セカンダリプーリ60は、プライマリプーリ50とほぼ同様の構成のため、本実施形態では、プライマリプーリ50を主に説明する。
【0033】
プライマリシャフト51は、筒状に形成される。図2に示すように、プライマリシャフト51は、回転軸RLを軸として回転する。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周部にプライマリシャフト51と一体に、またはプライマリシャフト51に固定して設けられる。これにより、プライマリ固定シーブ52は、回転軸RLを軸にプライマリシャフト51と一体に回転する。
【0034】
ここで、回転軸RLと直交する方向を径方向という。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周から径方向に突出して形成される。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51とは別個に形成される。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51にスプライン55を介して嵌め込まれて取り付けられる。プライマリ可動シーブ53は、プライマリ固定シーブ52と対向する位置にプライマリシャフト51に嵌め込まれる。
【0035】
スプライン55は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の回転軸RLに沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン55は、回転軸RLを回転軸とする回転をプライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ伝える。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン55により、プライマリシャフト51上をスライドして移動すると共に、プライマリシャフト51と一体に回転する。
【0036】
上記構成により、プライマリ固定シーブ52及びプライマリ可動シーブ53の対向面間には、略V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。
【0037】
プライマリシャフト51は、第1油路OL01と、第2油路OL02とを有する。また、プライマリ可動シーブ53は、第3油路OL03を有する。第1油路OL01、第2油路OL02、第3油路OL03は、作動油が流れる通路である。第1油路OL01は、回転軸RLに沿ってプライマリシャフト51に形成される。第2油路OL02は、径方向に沿ってプライマリシャフト51に形成される。第2油路OL02は、第1油路OL01と連通する。
【0038】
第3油路OL03は、一方の開口端が、プライマリ油圧室54と連通し、他方の開口端が第2油路OL02と連通する。上記構成により。作動油は、第1油路OL01と第2油路OL02と第3油路OL03とを介してプライマリ油圧室に供給される。
【0039】
プライマリ油圧室54は、プライマリシャフト51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリシリンダ56とによって囲まれて形成される空間である。プライマリシリンダ56は、貫通孔を有して形成される。プライマリシリンダ56は、前記貫通孔にプライマリシャフト51が嵌め込まれる。プライマリシリンダ56は、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52側とは反対側に設けられる。
【0040】
また、プライマリシリンダ56は、内周部がプライマリ可動シーブ53と隙間無く接触して設けられる。なお、プライマリシリンダ56と、プライマリ可動シーブ53との間には、例えば、シールリングが介在される。これにより、プライマリ油圧室54は、シールリングによって作動油のプライマリ油圧室54からの漏れを低減する。
【0041】
なお、可動部材72の径方向外側の外周部と可動部材72が嵌め込まれるプライマリシャフト51に形成される孔の内周部との間には、シールリングが介在される。これにより、前記シールリングは、第1油路OL01からの作動油の漏れを低減する。また、可動部材72と固定部材71との間にもシールリングが介在される。これにより、前記シールリングは、可動部材72と固定部材71との間からの作動油の漏れを低減する。
【0042】
プライマリ油圧室54に作動油が供給されると、プライマリ油圧室54の油圧により、プライマリ可動シーブ53は、回転軸RL方向のプライマリ固定シーブ52へ近づく方向へ摺動する。これにより、プライマリ可動シーブ53は、プライマリ固定シーブ52に接近する。
【0043】
また、プライマリ油圧室54から作動油が排出されると、ベルト80によるプライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52から遠ざける方向の力により、プライマリ可動シーブ53は、回転軸RL方向のプライマリ固定シーブ52から遠ざかる方向へ摺動する。これにより、プライマリ可動シーブ53は、プライマリ固定シーブ52に対して離れる。
【0044】
プライマリ油圧室54は、プライマリ油圧室54に供給される作動油により、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間に形成されるプライマリ溝80aに巻き掛けられるベルト80に対する挟圧力を発生させる。これにより、プライマリ油圧室54は、ベルト80のプライマリプーリ50に対する接触半径を変更する。よって、プライマリ油圧室54は、ベルト式無段変速機110の変速比を変更する。
【0045】
ベルト80は、金属製の無端ベルトである。プライマリプーリ50に形成されるプライマリ溝80aと、図1に示すセカンダリプーリ60に形成されるセカンダリ溝80bとに巻きかけられる。これにより、ベルト80は、プライマリプーリ50の回転をセカンダリプーリ60へ伝える。なお、セカンダリプーリ60の構成はプライマリプーリ50の構成とほぼ同様である。
【0046】
プライマリプーリ50は、さらに、作動油供給量調節手段としてのプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70を備える。プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、筒状に形成されるプライマリシャフト51の空洞部に嵌め込まれて設けられる。プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、固定部材71と、可動部材72と、変換手段としてのカム部73と、スナップリング76と、第1油圧室77と、第2油圧室78とを含んで構成される。
【0047】
図3は、本実施形態に係るプライマリ油圧室作動油供給量調節装置のA‐A断面を模式的に示す断面図である。図3に示すように、固定部材71と可動部材72とは、油圧モータを構成する。固定部材71は、筒状部分を含んで形成され、その空洞部が第1油路OL01となる。固定部材71は、図2に示すように、プライマリシャフト51に、例えばスナップリング76によって固定される。これにより、固定部材71は、回転軸RLを軸としてプライマリシャフト51と共に回転する。なお、固定部材71は、例えば、プライマリシャフト51の空洞部に圧入されて固定されてもよい。これにより、プライマリプーリ50は、スナップリング76を備えなくても、固定部材71をプライマリシャフト51に対して固定できる。
【0048】
また、固定部材71は、羽根71aを例えば2つ含んで構成される。羽根71aは、筒状部分から径方向外側に突出する。羽根71aは、作動油の油圧を受ける固定部材側受圧面を有する。羽根71aは、図2に示すように、回転軸RL方向に延びるように形成される。
【0049】
また、固定部材71は、プライマリシャフト51に固定されて、プライマリシャフト51と一体に回転しなくてもよい。例えば、固定部材71は、軸受を介してプライマリシャフト51に取り付けられてもよい。この場合、固定部材71と、プライマリシャフト51とは、相対的に回転する。
【0050】
可動部材72は、筒状部分を含んで形成される。可動部材72は、空洞部に固定部材71を含む。可動部材72は、固定部材71に対して相対的に回動できるように固定部材71に連結される。なお、可動部材72は、固定部材71に対して回転軸RLを軸として相対的に回動する。
【0051】
可動部材72は、羽根72aを例えば2つ含んで構成される。羽根72aは、筒状部分から径方向内側に突出する。羽根72aは、作動油の油圧を受ける可動部材側受圧面を有する。羽根72aは、図2に示すように、回転軸RL方向に延びるように形成される。
【0052】
羽根71aは、径方向外側の部分が、可動部材72の内周面に対向する。なお、羽根71aと可動部材72の内周面との隙間には、シールリング79aが介在される。シールリング79aは、前記隙間を埋めて、前記隙間を流れる作動油を封ずる。また、羽根72aは、径方向内側の部材が、固定部材71の外周面に接触する。なお、羽根72aと固定部材71の外周面との隙間には、シールリング79bが介在される。シールリング79bは、前記隙間を埋めて、前記隙間を流れる作動油を封ずる。
【0053】
第1油圧室77及び第2油圧室78は、固定部材71の外周部と可動部材72の内周部との間に形成される空間である。ここで、前記空間は、2つの羽根71aと、2つの羽根72aとによって、2つ1組の部屋が2組形成される。この2組の部屋のうち、一方を第1油圧室77、他方を第2油圧室78とする。
【0054】
第1油圧室77は、作動油供給孔77aを有する。作動油供給孔77aは、後述するモータ作動油供給量調節装置90と接続される。これにより、第1油圧室77は、作動油供給孔77aを介してモータ作動油供給量調節装置90から作動油が供給される。作動油供給孔77aは、例えば、図2に示す回転軸RL方向に形成される。なお、作動油供給孔77aは、径方向に形成されてもよい。
【0055】
第2油圧室78は、作動油供給孔78aを有する。作動油供給孔78aは、後述するモータ作動油供給量調節装置90と接続される。これにより、第2油圧室78は、作動油供給孔78aを介してモータ作動油供給量調節装置90から作動油が供給される。作動油供給孔77aは、例えば、径方向に形成される。なお、作動油供給孔77aは、図2に示す回転軸RL方向に形成されてもよい。
【0056】
例えば、第1油圧室77に作動油供給孔77aを介して作動油が供給されると、第1油圧室77内の作動油の圧力が上昇する。第1油圧室77内の作動油の圧力が第2油圧室78内の作動油の圧力よりも高くなると、可動部材72は、図3の矢印AF01が示すように、第1油圧室77が広がる方向へ固定部材71に対して相対的に回動する。この時、第2油圧室78内の作動油は、作動油供給孔78aを介して第2油圧室78から排出される。
【0057】
また、例えば、第2油圧室78に作動油供給孔78aを介して作動油が供給されると、第2油圧室78内の作動油の圧力が上昇する。第2油圧室78内の作動油の圧力が第1油圧室77内の作動油の圧力よりも高くなると、可動部材72は、図3の矢印AF02が示すように、第2油圧室78が広がる方向へ固定部材71に対して相対的に回動する。この時、第1油圧室77内の作動油は、作動油供給孔77aを介して第1油圧室77から排出される。
【0058】
また、例えば、第1油圧室77からの作動油供給孔77aを介する作動油の供給または排出が停止され、第2油圧室78からの作動油供給孔78aを介する作動油の供給または排出が停止されると、第1油圧室77の作動油の油圧は一定に保たれる。また、第2油圧室78の作動油の油圧も一定に保たれる。これにより、可動部材72は、固定部材71に対して相対的に回動しない。
【0059】
つまり、第1油圧室77の作動油の油圧と、第2油圧室78の作動油の油圧とのバランスが後述するモータ作動油供給量調節装置90によって調節されることにより、可動部材72は、固定部材71に対する相対的な回動の量が調節される。
【0060】
図4は、本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の油圧回路を示す模式図である。図4に示すように、モータ作動油供給量調節装置90は、オイルタンク91と、オイルポンプ92と、調圧弁93と、開閉弁94と、ECU(Electrical Control Unit)95とを含んで構成される。なお、本実施形態では、ECU95が調圧弁93と開閉弁94とを制御するが、例えば、調圧弁93及び開閉弁94は、ECU95に代えて専用の電子制御装置によって制御されてもよい。
【0061】
オイルタンク91は、作動油を溜めておく容器である。作動油はオイルタンク91から供給先へ供給され、供給先からオイルタンク91へ戻される。オイルポンプ92は、作動油をオイルタンク91から吸い上げて加圧する。これにより、オイルポンプ92は、作動油を供給先へ供給する。調圧弁93は、作動油の油圧を調節する。調圧弁93は、ECU95と電気的に接続される。これにより、ECU95は、調圧弁93を制御することにより、作動油の油圧を調節する。なお、本実施形態では、モータ作動油供給量調節装置90は、第1調圧弁93aと第2調圧弁93bとを備える。
【0062】
開閉弁94は、閉弁することで作動油の流れを封じる。また、開閉弁94は、開弁することで作動油を開閉弁94よりも作動油の流れの下流側へ流す。開閉弁94は、ECU95と電気的に接続される。これにより、ECU95は、開閉弁94を制御することにより、作動油の流れを制御する。なお、本実施形態では、モータ作動油供給量調節装置90は、第1開閉弁94aと第2開閉弁94bとを備える。
【0063】
モータ作動油供給量調節装置90は、例えば、油路OL91と、油路OL92aと、油路OL92bと、油路OL93aと、油路OL93aaと、油路OL93abと、油路OL93bと、油路OL93baと、油路OL93bbと、油路OL94aと、油路OL94bと、油路OL95aと、油路OL95bとを含んで油圧回路が形成される。上述の油路OL91から油路OL95bは、作動油が流れる通路である。
【0064】
油路OL91は、一方の開口端がオイルタンク91に接続され、他方の開口端がオイルポンプ92に接続される。油路OL92aは、一方の開口端がオイルポンプ92に接続され、他方の開口端が第1調圧弁93aに接続される。油路OL92bは、一方の開口端がオイルポンプ92に接続され、他方の開口端が第2調圧弁93bに接続される。
【0065】
油路OL93aは、一方の開口端が第1調圧弁93aに接続され、他方の開口端が油路OL93aaと油路OL93abとに分岐する。油路OL93aaは、2つの作動油供給孔77aのうち、一方の作動油供給孔77aに接続される。油路OL93abは、他方の作動油供給孔77aに接続される。
【0066】
油路OL93bは、一方の開口端が第2調圧弁93bに接続され、他方の開口端が油路OL93baと油路OL93bbとに分岐する。油路OL93baは、2つの作動油供給孔78aのうち、一方の作動油供給孔78aに接続される。油路OL93bbは、他方の作動油供給孔78aに接続される。
【0067】
油路OL94aは、一方の開口端が油路OL93aに開口し、他方の開口端が第1開閉弁94aに接続される。油路OL94bは、一方の開口端が油路OL93bに開口し、他方の開口端が第1開閉弁94aに接続される。
【0068】
油路OL95aは、一方の開口端が第1開閉弁94aに接続され、他方の開口端がオイルタンク91に接続される。油路OL95bは、一方の開口端が第2開閉弁94bに接続され、他方の開口端がオイルタンク91に接続される。なお、オイルポンプ92には、他に作動油を必要とする供給先へ通じる油路が接続される。
【0069】
次に、作動油の流れを説明する。作動油の流れは、第1調圧弁93aと、第2調圧弁93bと、第1開閉弁94aと、第2開閉弁94bとに基づいて決まる。具体的には、作動油の流れは、第1調圧弁93aが開弁かつ、第1開閉弁94aが閉弁かつ、第2調圧弁93bが閉弁かつ、第2開閉弁94bが開弁の場合と、第1調圧弁93aが閉弁かつ、第1開閉弁94aが開弁かつ、第2調圧弁93bが開弁かつ、第2開閉弁94bが閉弁の場合と、第1調圧弁93aと、第1開閉弁94aと、第2調圧弁93bと、第2開閉弁94bとが全て閉弁の場合との3つの場合が存在する。
【0070】
図5は、本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。まず、第1調圧弁93aが開弁かつ、第1開閉弁94aが閉弁かつ、第2調圧弁93bが閉弁かつ、第2開閉弁94bが開弁の場合の作動油の流れを説明する。作動油は、まずオイルタンク91から油路OL91を介してオイルポンプ92へ向かって流れる。ここで、第1調圧弁93aは開弁しているので、作動油は、オイルポンプ92から油路OL92aを介して第1調圧弁93aへ向かって流れる。また、第2調圧弁93bは閉弁しているので、作動油は、オイルポンプ92から油路OL92bを介して第2調圧弁93bへ向かっては流れない。
【0071】
第1調圧弁93aに供給された作動油は、第1調圧弁93aによって圧力が調整されて、油路OL93aを介して油路OL93aaと油路OL93abとへ向かって流れる。ここで、第1開閉弁94aは閉弁しているので、作動油は、油路OL93aから油路OL94aを介して第1開閉弁94aへ向かっては流れない。油路OL93aaと油路OL93abとに供給された作動油は、それぞれ作動油供給孔77aに供給される。これにより、第1油圧室77内の作動油の油圧が上昇する。よって、可動部材72は、第1油圧室77が広がる方向へ固定部材71に対して相対的に回動する。
【0072】
このとき、第1油圧室77が広がると第2油圧室78は狭まる。これにより、第2油圧室78内の作動油の油圧は上昇する。第2油圧室78内の油圧は、油路OL93baと油路OL93bbとを介して油路OL93bへ向かって流れる。つまり、第2油圧室78内の作動油は、油路OL93baと油路OL93bbとを介して第2油圧室78から排出される。
【0073】
ここで、第2調圧弁93bは閉弁しているので、作動油は、第2調圧弁93bへ向かっては流れない。また、第2開閉弁94bは、開弁しているので、油路OL93bに導かれた作動油は、油路OL94bを介して第2開閉弁94bへ向かって流れる。第2開閉弁94bへ導かれた作動油は、油路OL95bを介してオイルタンク91へ向かって流れる。これにより、作動油は、オイルタンク91へ戻される。
【0074】
図6は、本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。次に、第1調圧弁93aが閉弁かつ、第1開閉弁94aが開弁かつ、第2調圧弁93bが開弁かつ、第2開閉弁94bが閉弁の場合の作動油の流れを説明する。作動油は、まずオイルタンク91から油路OL91を介してオイルポンプ92へ向かって流れる。ここで、第2調圧弁93bは開弁しているので、作動油は、オイルポンプ92から油路OL92bを介して第2調圧弁93bへ向かって流れる。また、第1調圧弁93aは閉弁しているので、作動油は、オイルポンプ92から油路OL92aを介して第1調圧弁93aへ向かっては流れない。
【0075】
第2調圧弁93bに供給された作動油は、第2調圧弁93bによって調圧されて、油路OL93bを介して油路OL93baと油路OL93bbとへ向かって流れる。ここで、第2開閉弁94bは閉弁しているので、作動油は、油路OL93bから油路OL94bを介して第2開閉弁94bへ向かっては流れない。油路OL93baと油路OL93bbとに供給された作動油は、それぞれ作動油供給孔78aに供給される。これにより、第2油圧室78内の作動油の油圧が上昇する。よって、可動部材72は、第2油圧室78が広がる方向へ固定部材71に対して相対的に回動する。
【0076】
このとき、第2油圧室78が広がると第1油圧室77は狭まる。これにより、第1油圧室77内の作動油の油圧は上昇する。第1油圧室77内の油圧は、油路OL93aaと油路OL93abとを介して油路OL93aへ向かって流れる。つまり、第2油圧室78内の作動油は、油路OL93aaと油路OL93abとを介して第1油圧室77から排出される。
【0077】
ここで、第1調圧弁93aは閉弁しているので、作動油は、第1調圧弁93aへ向かっては流れない。また、第1開閉弁94aは、開弁しているので、油路OL93aに導かれた作動油は、油路OL94aを介して第1開閉弁94aへ向かって流れる。第1開閉弁94aへ導かれた作動油は、油路OL95aを介してオイルタンク91へ向かって流れる。これにより、作動油は、オイルタンク91へ戻される。
【0078】
第1調圧弁93aと、第1開閉弁94aと、第2調圧弁93bと、第2開閉弁94bとが全て閉弁の場合は、作動油の流れは生じない。つまり、第1油圧室77内の作動油の油圧と第2油圧室78内の作動油の油圧とは、一定に保たれる。よって、可動部材72は、固定部材71に対して相対的に回動しない。上記構成により、モータ作動油供給量調節装置90は、可動部材72の固定部材71に対する相対的な回動の量を調節する。
【0079】
図7は、本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の他の油圧回路を示す模式図である。なお、モータ作動油供給量調節装置90の油圧回路は、上述の構成に限定されない。モータ作動油供給量調節装置90Aの油圧回路は、例えば、図7に示すように、1つの調圧弁93から作動油の供給先を第1油圧室77と第2油圧室78とに切り替えて作動油を供給してもよい。
【0080】
図7に示すように、モータ作動油供給量調節装置90Aは、オイルタンク91と、オイルポンプ92と、調圧弁93と、ECU95と、切替弁96とを含んで構成される。なお、本実施形態では、ECU95が調圧弁93と切替弁96とを制御するが、例えば、調圧弁93及び切替弁96は、ECU95に代えて専用の電子制御装置によって制御されてもよい。
【0081】
切替弁96は、切替弁96に導かれる作動油の供給先を切り替える。切替弁96は、ECU95と電気的に接続される。これにより、切替弁96は、ECU95によって切替弁96の内部の油路を切り替えられる。切替弁96は、例えば、開口96aと、開口96bと、開口96cと、開口96dと、開口96eとを有する。これらの開口は、ECU95によって切替弁96の内部の油路を切り替えられることによって、それぞれの連通関係が切り替えられる。
【0082】
切替弁96は、内部に形成される油路を切り替えることにより少なくとも2通りの作動油の流れを形成する。一方の油路は、開口96bと開口96dとが連通し、開口96cと開口96eとが連通する。他方の油路は、開口96aと開口96dとが連通し、開口96bと開口96eとが連通する。
【0083】
モータ作動油供給量調節装置90Aは、例えば、油路OL91と、油路OL92と、油路OL93と、油路OL96aと、油路OL96aaと、油路OL96abと、油路OL96bと、油路OL96baと、油路OL96bbと、油路OL97と、油路OL97aと、油路OL97bとを含んで油圧回路が形成される。上述の油路OL91から油路OL97は、作動油が流れる通路である。
【0084】
油路OL91は、一方の開口端がオイルタンク91に接続され、他方の開口端がオイルポンプ92に接続される。油路OL92は、一方の開口端がオイルポンプ92に接続され、他方の開口端が調圧弁93に接続される。油路OL93は、一方の開口端が調圧弁93に接続され、他方の開口端が切替弁96の開口96bに接続される。
【0085】
油路OL96aは、一方の開口端が切替弁96の開口96dに接続され、他方の開口端が油路OL96aaと油路OL96abとに分岐する。油路OL96aaは、2つの作動油供給孔77aのうち、一方の作動油供給孔77aに接続される。油路OL96abは、他方の作動油供給孔77aに接続される。
【0086】
油路OL96bは、一方の開口端が切替弁96の開口96eに接続され、他方の開口端が油路OL96baと油路OL96bbとに分岐する。油路OL96baは、2つの作動油供給孔78aのうち、一方の作動油供給孔78aに接続される。油路OL96bbは、他方の作動油供給孔78aに接続される。
【0087】
油路OL97aは、一方の開口端が切替弁96の開口96aに接続され、他方の開口端が油路OL97に開口する。油路OL97bは、一方の開口端が切替弁96の開口96cに接続され、他方の開口端が油路OL97に開口する。つまり、油路OL97aと、油路OL97bとは、油路OL97に集合する。油路OL97は、油路OL97a及び油路OL97b側とは反対側の開口端が、オイルタンク91に接続される。なお、調圧弁93には、他に作動油を必要とする供給先へ通じる油路が接続される。
【0088】
次に、作動油の流れを説明する。作動油の流れは、調圧弁93と切替弁96とに基づいて決まる。具体的には、作動油の流れは、調圧弁93が開弁かつ、切替弁96の内部回路が内部回路Aの場合と、調圧弁93が開弁かつ切替弁96の内部回路が内部回路Bの場合と、調圧弁93が閉弁の場合との3つの場合が存在する。
【0089】
図8は、本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。まず、調圧弁93が開弁かつ、切替弁96の内部回路が内部回路Aの場合の作動油の流れを説明する。作動油は、まずオイルタンク91から油路OL91を介してオイルポンプ92へ向かって流れる。次に、作動油は、オイルポンプ92によって加圧されて、油路OL92を介して調圧弁93へ向かって流れる。
【0090】
調圧弁93に供給された作動油は、調圧弁93によって調圧されて、油路OL93を介して切替弁96の開口96bへ向かって流れる。ここで、切替弁96の内部回路は、内部回路Aの状態である。よって、作動油は、開口96bから開口96dへ向かって切替弁96の内部を流れる。開口96dから油路OL96aに導かれた作動油は、油路OL96aを介して油路OL96aaと油路OL96abとへ向かって流れる。油路OL96aaと油路OL96abとに供給された作動油は、それぞれ作動油供給孔77aに供給される。これにより、第1油圧室77内の作動油の油圧が上昇する。よって、可動部材72は、第1油圧室77が広がる方向へ固定部材71に対して相対的に回動する。
【0091】
このとき、第1油圧室77が広がると第2油圧室78は狭まる。これにより、第2油圧室78内の作動油の油圧は上昇する。第2油圧室78内の油圧は、油路OL96baと油路OL96bbとを介して油路OL96bへ向かって流れる。つまり、第2油圧室78内の作動油は、油路OL96baと油路OL96bbとを介して第2油圧室78から排出される。
【0092】
油路OL96bに導かれた作動油は、油路OL96bを介して切替弁96の開口96eへ向かって流れる。ここで、切替弁96の内部回路は、内部回路Aの状態である。よって、作動油は、開口96eから開口96cへ向かって切替弁96の内部を流れる。開口96cから油路OL97bに導かれた作動油は、油路OL97bを介して油路OL97へ向かって流れる。油路OL97に導かれた作動油は、油路OL97を介してオイルタンク91へ向かって流れる。これにより、作動油は、オイルタンク91へ戻される。
【0093】
図9は、本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。次に、調圧弁93が開弁かつ、切替弁96の内部回路が内部回路Bの場合の作動油の流れを説明する。作動油は、まずオイルタンク91から油路OL91を介してオイルポンプ92へ向かって流れる。次に、作動油は、オイルポンプ92によって加圧されて、油路OL92を介して調圧弁93へ向かって流れる。
【0094】
調圧弁93に供給された作動油は、調圧弁93によって調圧されて、油路OL93を介して切替弁96の開口96bへ向かって流れる。ここで、切替弁96の内部回路は、内部回路Bの状態である。よって、作動油は、開口96bから開口96eへ向かって切替弁96の内部を流れる。開口96eから油路OL96bに導かれた作動油は、油路OL96bを介して油路OL96baと油路OL96bbとへ向かって流れる。油路OL96baと油路OL96bbとに供給された作動油は、それぞれ作動油供給孔78aに供給される。これにより、第2油圧室78内の作動油の油圧が上昇する。よって、可動部材72は、第2油圧室78が広がる方向へ固定部材71に対して相対的に回動する。
【0095】
このとき、第2油圧室78が広がると第1油圧室77は狭まる。これにより、第1油圧室77内の作動油の油圧は上昇する。第1油圧室77内の油圧は、油路OL96aaと油路OL96abとを介して油路OL96aへ向かって流れる。つまり、第1油圧室77内の作動油は、油路OL96aaと油路OL96abとを介して第1油圧室77から排出される。
【0096】
油路OL96aに導かれた作動油は、油路OL96aを介して切替弁96の開口96dへ向かって流れる。ここで、切替弁96の内部回路は、内部回路Bの状態である。よって、作動油は、開口96dから開口96aへ向かって切替弁96の内部を流れる。開口96aから油路OL97aに導かれた作動油は、油路OL97aを介して油路OL97へ向かって流れる。油路OL97に導かれた作動油は、油路OL97を介してオイルタンク91へ向かって流れる。これにより、作動油は、オイルタンク91へ戻される。
【0097】
調圧弁93が閉弁の場合は、作動油の流れは生じない。つまり、第1油圧室77内の作動油の油圧と第2油圧室78内の作動油の油圧とは、一定に保たれる。よって、可動部材72は、固定部材71に対して相対的に回動しない。上記構成により、モータ作動油供給量調節装置90Aは、可動部材72の固定部材71に対する相対的な回動の方向を切り替える。
【0098】
このように、モータ作動油供給量調節装置90Aは、油圧回路を図7、図8及び図9に示す油圧回路とすることで、図4、図5及び図6に示す油圧回路よりも部品点数を低減できる。これにより、モータ作動油供給量調節装置90Aは、図4、図5及び図6に示す油圧回路よりも製造コストを低減できる。但し、油圧回路を図4、図5及び図6に示す油圧回路とすると、モータ作動油供給量調節装置90Aは、調圧弁93を2つ有する。これにより、第1油圧室77と第2油圧室78とに可動部材72の固定部材71に対する相対的な回動の方向のみではなく、可動部材72の固定部材71に対する相対的な回動の量を調節できる。
【0099】
図10は、本実施形態に係るカム部近傍を拡大して立体的に示す模式図である。図11は、本実施形態に係るカム部近傍を拡大して模式的に示す断面図である。なお、図11は、回転軸RLに沿う面の断面図である。ここで、可動部材72は、図2に示すように、回転軸RL方向に延びるように形成される。カム部73は、図10及び図11に示すように、この可動部材72の第2油路OL02側に設けられる。カム部73は、カム傾斜部73aと、カム部材としてのカム棒74bとを含んで構成される。また、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、弁体としてのボール74と、弁体支持部材としてのボールホルダ74aと、スプリング75aと、ガイド棒75bとを有する。
【0100】
カム傾斜部73aは、可動部材72の第2油路OL02側の端部に形成される。カム傾斜部73aは、筒状に形成される可動部材72の端部に周方向に形成される。カム傾斜部73aは、回転軸RLと直交する面に対して角度を有する部分を少なくとも一部有する。つまり、カム傾斜部73aは、回転軸RLと直交する仮想の面からカム傾斜部73aまでの距離が不均一に形成される。
【0101】
このとき、カム傾斜部73aは、前記仮想の面から最も近い部位にカム棒74bがあるときに、ボール74が、第1油路OL01の開口端と接触するように形成される。なお、本実施形態では、例えば、図10及び図11に示すように、可動部材72の端面がカム傾斜部73aとして機能する。
【0102】
ボール74は、第1油路OL01の直径よりも大きい直径を有する球体である。なお、ボール74の形状は、球体に限定されず、第1油路OL01の開口端を塞げる形状であればよい。ボール74は、図11に示すように第1油路OL01の開口端に押し付けられることにより、第1油路OL01と、図2に示すと第2油路OL02との連通を封じる。
【0103】
ボールホルダ74aは、ボール74を転動できるように支持する。ボールホルダ74aは、図11に示すように、ボール74の外径に合わせた窪みを有する。ボールホルダ74aは、前記窪みに前記ボール74が嵌め込まれる。これにより、ボール74は、ボールホルダ74aの前記窪みの中で転動する。
【0104】
ボール74が転動することによって、第1油路OL01の開口端と接触するボール74の部分が変わる。よって、カム部73は、ボール74の特定の部位のみが、第1油路OL01の開口端と接触する場合よりも、ボール74の摩耗を低減できる。
【0105】
カム棒74bは、棒状の部材である。カム棒74bは、カム傾斜部73aと接触するように設けられる。本実施形態では、カム棒74bは、筒状の可動部材72の端面に環状に形成されるカム傾斜部73aに、両端部が接触するようにカム傾斜部73aに掛け渡されて設けられる。また、カム棒74bは、ボールホルダ74aにカム棒74bがカム傾斜部73aから受ける力が伝わるように連結される。本実施形態では、カム棒74bはボールホルダ74aに固定される。
【0106】
上記構成により、ボール74とボールホルダ74aとカム棒74bとは一体に動く。ここで、従来のベルト式無段変速機では、ピストン部材がボールに直接接触して、ボールに対してセカンダリシャフトの回転軸方向の力を加える。これにより、ボールのピストン部材と接触する一部分が摩耗するおそれがある。これにより、従来のベルト式無段変速機では、ボールの摩耗した部分から作動油が漏れるおそれがある。
【0107】
しかしながら、ベルト式無段変速機110は、ボール74がボールホルダ74aに包み込まれるように支持されている。これにより、ボール74とボール74に力を与える部材との接触面積が増加する。よって、ベルト式無段変速機110は、ボール74の一部分の摩耗を低減できる。また、上述のように、ボール74は、ボールホルダ74aの窪みの中で転動する。これにより、ベルト式無段変速機110は、より好適にボール74の特定の一部分の摩耗を低減できる。
【0108】
スプリング75aは、弾性部材である。スプリング75aは、ボール74に回転軸RL方向の力を与えるように連結される。本実施形態では、スプリング75aは、回転軸RLにスプリング75aの軸線が沿うようにカム棒74bに一方の端部が固定される。また、スプリング75aは、他方の端部が、図2に示すように、プライマリシャフト51に固定される。これにより、スプリング75aは、カム棒74bがカム傾斜部73aに沿って相対的に移動できる程度の最低限の力でカム棒74bをカム傾斜部73aに押し付ける。
【0109】
ガイド棒75bは、棒状部材である。ガイド棒75bは、一方の端部がカム棒74bに固定される。また、ガイド棒75bは、他方の端部が、プライマリシャフト51に形成された孔であるガイド孔75cに嵌め込まれる。ガイド孔75cは、図2に示すように、回転軸RLに沿う方向に形成される。これにより、ガイド棒75bと、ガイド孔75cとは、カム棒74bの回転軸RL方向の移動を許容すると共に、カム棒74bの回転軸RLを軸とする回動を規制する。
【0110】
つまり、カム棒74bは、回転軸RL方向に移動できると共に、プライマリシャフト51と一体に回転する。しかし、カム傾斜部73aは、プライマリシャフト51と一体には回転せず、プライマリシャフト51に対して相対的に回転する。よって、カム傾斜部73aは、カム棒74bに対しても回転軸RLを軸に相対的に回動する。
【0111】
なお、カム棒74bは、ガイド棒75bとガイド孔75cとによって、回転軸RL方向の移動が許容されると共に、回転軸RLを軸とする回動が規制されたが、本実施形態はこれに限定されない。カム棒74bは、例えば両端部をプライマリシャフト51の内周面に形成された溝に嵌め込まれて支持されてもよい。前記溝は、回転軸RL方向に沿って形成される。この構成でも、カム棒74bは、回転軸RL方向の移動が許容されると共に、回転軸RLを軸とする回動が規制される。
【0112】
カム傾斜部73aがカム棒74bに対して相対的に回動するとき、カム棒74bはカム傾斜部73a上を沿って移動する。これにより、カム棒74bに連結されるボール74は、カム傾斜部73aからボール74が第1油路OL01の開口端から離れる方向の力を受ける。
【0113】
ここで、カム傾斜部73aは、上述のように、回転軸RLと直交する仮想の面からの距離が不均一である。よって、カム棒74bが、カム傾斜部73aに対して相対的に回動すると、カム棒74bと第1油路OL01の開口端との距離が変化する。これにより、カム棒74b及びボールホルダ74aを介して連結されるボール74と第1油路OL01の開口端との距離も変化する。
【0114】
図12は、本実施形態に係るボールが開口端から離れる様子を模式的に示す断面図である。上記構成により、カム棒74bがカム傾斜部73aに沿って移動すると、図12に示すように、ボール74と第1油路OL01との間に隙間が生じる。すると、第1油路OL01と第2油路OL02とが連通する。これにより、第1油路OL01内の作動油は、図12の矢印が示すように、第2油路OL02と第3油路OL03とを介してプライマリ油圧室54へ供給される。
【0115】
ここで、従来のベルト式無段変速機では、ボールをプライマリシャフトの回転軸方向に移動させるための力を作動油から得る受圧面が、前記回転軸と直交して形成されている。一方、ベルト式無段変速機110は、上述のように、固定部材71の受圧面と、可動部材72の受圧面とが、回転軸RL方向に沿って形成される。プライマリシャフト51の軸内に形成される空洞部では、径方向の空間よりも回転軸RL方向の空間の方が、設計上の自由度が高い。
【0116】
よって、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、径方向に前記受圧面を形成するよりも、回転軸RL方向に前記受圧面を形成するほうが好ましい。これにより、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、ベルト式無段変速機110を大型化することなく、受圧面の面積を十分に確保できる。よって、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、従来よりも、より小さい油圧で、ボール74と第1油路OL01との間の隙間の大きさを調節できる。
【0117】
なお、以下ボール74と第1油路OL01との間の隙間の大きさを単にプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度という。ボール74と第1油路OL01との間の隙間が大きいほど、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度は大きい。また、ボール74と第1油路OL01との間の隙間が小さいほど、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度は小さい。
【0118】
図13は、本実施形態に係るカム傾斜部の形状を示す展開図である。図13は、環状に形成されるカム傾斜部73aのうち半周分を展開して示す。これにより、図13は、回転軸RLと直交する仮想の面からカム傾斜部73aまでの距離の変化を示す。なお、以下回転軸RLと直交する仮想の面からカム傾斜部73aまでの距離の変化を単に変化という。また、以下回転軸RLと直交する仮想の面からカム傾斜部73aまでの距離の変化の量を単に変化量という。
【0119】
プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、図10に示すカム傾斜部73aの形状によって、カム棒74bとカム傾斜部73aとの相対的な回動にともなうプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化の形態が変化する。カム傾斜部73aは、図13に示すように、それぞれ変化量が異なる複数のカム面を有するように形成されると好ましい。本実施形態では、カム傾斜部73aは、カム面PL11と、カム面PL12と、カム面PL13とを含んでカム面PL10が構成される。カム面PL11は、最も変化量の小さいカム面である。カム面PL12は、カム面PL11と隣接して形成される。また、カム面PL12は、カム面PL11よりも変化量が大きい。
【0120】
カム面PL13は、カム面PL12と隣接して形成される。また、カム面PL13は、最も変化量が大きい。上記構成により、図10に示すカム棒74bがカム傾斜部73aに沿って移動すると、前記仮想の面からボールホルダ74aまでの距離の変化の量も変化する。つまり、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量が変化する。具体的には、カム棒74bが図13に示すカム面PL11からカム面PL13へ向かってカム傾斜部73aに沿って相対的に移動すると、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量は、徐々に大きくなる。
【0121】
なお、カム傾斜部73aは、カム面PL10以外にカム面PL20を有してもよい。カム面PL20は、図13に示すように、カム面PL10とはある基準点から反対側に形成される。カム面PL20は、カム面PL21と、カム面PL22と、カム面PL23とを含んで構成される。カム面PL21は、最も変化量の大きいカム面である。カム面PL22は、カム面PL21と隣接して形成される。また、カム面PL22は、カム面PL21よりも変化量が小さい。
【0122】
カム面PL23は、カム面PL22と隣接して形成される。また、カム面PL23は、最も変化量が小さい。上記構成により、図10に示すカム棒74bがカム傾斜部73aに沿って移動すると、前記仮想の面からボールホルダ74aまでの距離の変化の量も変化する。つまり、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量が変化する。具体的には、カム棒74bが図13に示すカム面PL21からカム面PL23へ向かってカム傾斜部73aに沿って相対的に移動すると、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度は大きくなる一方、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量は、徐々に小さくなる。
【0123】
このように、カム傾斜部73aがカム面PL10及びカム面PL20のように、変化量の異なる複数のカム面を有することで、可動部材72の固定部材71に対する相対的な回動によるプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量の変化の形態をあらかじめ複数通り設定できる。つまり、本実施形態の場合、図10に示すカム棒74bが、カム傾斜部73aに対して図13に示すカム面PL10に沿って相対的に移動すると、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量は、徐々に大きくなる。また、図10に示すカム棒74bが、カム傾斜部73aに対して図13に示すカム面PL20に沿って相対的に移動すると、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量は、徐々に小さくなる。
【0124】
図14は、本実施形態に係る他のカム傾斜部の形状を示す展開図である。図14は、環状に形成されるカム傾斜部73bのうち半周分を展開して示す。なお、カム傾斜部73aは、それぞれ変化量が異なる複数のカム面を有するように形成されると説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、カム傾斜部73bは、図14に示すように滑らかな曲線を含んで形成される。
【0125】
カム傾斜部73bは、回転軸RLと直交する仮想の面と成す角度が連続的に変化する曲面を含んで構成される。つまり、図13に示すカム傾斜部73aを有するプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、数段階に分けてプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量が変化したが、図14に示すカム傾斜部73bを有するプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、無段階にプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度の変化量が変化する。
【0126】
これにより、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、より滑らかにプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度が変化する。よって、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、より正確に、プライマリ油圧室54へ供給する作動油の流量を調節できる。つまり、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、より正確にプライマリ可動シーブ53がベルト80に対して与える狭圧力を調節できる。結果として、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、ベルト式無段変速機110の変速の精度を向上できる。
【0127】
なお、カム傾斜部は、図13に示すようなそれぞれ変化量が異なる複数のカム面を段階的に有するカム傾斜部73aと、図14に示すような変化量が連続的に変化するカム傾斜部73bとを組み合わせて形成されてもよい。
【0128】
また、カム傾斜部73a、カム傾斜部73bは、可動部材72の端面に形成されるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、カム傾斜部73a、カム傾斜部73bは、筒状に形成される可動部材72の内周面にカム溝として形成されてもよい。この場合、カム棒74bは、前記カム溝に端部が嵌め込まれて設けられる。このとき、前記カム溝の壁面がカム傾斜部73a、カム傾斜部73bとして機能する。
【0129】
このように形成することにより、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、カム棒74bのカム傾斜部73a、カム傾斜部73bから離れる方向の移動を抑制できる。つまり、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、カム棒74bがカム傾斜部73a、カム傾斜部73bから浮き上がることを抑制できる。
【0130】
図15は、本実施形態に係る他のカム部近傍を拡大して模式的示す断面図である。なお、本実施形態では、回転軸RLを軸とする回転力を回転軸RL方向の力に変換する変換手段として、カム部73は、カム傾斜部73aとカム棒74bとを含んで構成されるが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、カム部73Aは、可動部材側ネジ部72cと、ボールホルダ側ネジ部74cとを含んで構成される。
【0131】
可動部材側ネジ部72cは、可動部材72の内周面に周方向に沿って形成される。ボールホルダ側ネジ部74cは、ボールホルダ74aの外周面に周方向に沿って形成される。可動部材側ネジ部72cとボールホルダ側ネジ部74cとは、嵌め合わされて設けられる。つまり、ボールホルダ74aの外周面は、可動部材72の内周面に合わせて形成される。
【0132】
なお、スプリング75aは、一方の端部がボールホルダ74aに連結され、他方の端部が図2に示すように、プライマリシャフト51に固定される。これにより、ボールホルダ74aは、矢印が示すように回転軸RL方向の力を受ける。また、ガイド棒75bは、一方の端部がボールホルダ74aに固定される。また、ガイド棒75bは、他方の端部が、ガイド孔75cに嵌め込まれる。ガイド孔75cは、図2に示すように、回転軸RLに沿う方向に形成される。
【0133】
これにより、ガイド棒75bと、ガイド孔75cとは、ボールホルダ74aの回転軸RL方向の移動を許容すると共に、ボールホルダ74aの回転軸RLを軸とする回動を規制する。つまり、ボールホルダ74aは、回転軸RL方向に移動できると共に、プライマリシャフト51と一体に回転する。
【0134】
これにより、可動部材72が回転軸RLを軸に回動すると、ボールホルダ74aは、可動部材側ネジ部72cと、ボールホルダ側ネジ部74cとの嵌合部から回転軸RL方向の力を受ける。つまり、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、可動部材側ネジ部72cとボールホルダ側ネジ部74cとによって、いわゆるネジ機構が構成される。
【0135】
なお、可動部材側ネジ部72c及びボールホルダ側ネジ部74cは、ボールネジによって構成されると好ましい。これにより、カム部73Aは、可動部材側ネジ部72cとボールホルダ側ネジ部74cとの間の摩擦抵抗を低減できる。
【0136】
このように、可動部材72が回転軸RLを軸に回動すると、ボールホルダ74aは、回転軸RL方向に移動する。これにともなって、ボール74は、回転軸RL方向に移動する。結果として、ボール74と第1油路OL01の開口端との隙間の大きさが変化する。つまり、上記構成により、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度が変化する。
【0137】
ベルト式無段変速機110は、上記構成のプライマリ油圧室作動油供給量調節装置70を備えても、ベルト式無段変速機110を大型化することなく、受圧面の面積を十分に確保できる。よって、ベルト式無段変速機110は、従来よりも、より小さい油圧で、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70の開度を調節できる。
【0138】
図16は、本実施形態に係る他の可変開口部近傍を拡大して模式的に示す断面図である。プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70は、カム部73、カム部73Aを備えずに、図16に示す可変開口部73Bを備えてもよい。
【0139】
可変開口部73Bは、第1部材41と、第2部材42とを含んで構成される。第1部材41と第2部材42とは重ねて設けられる。図16は、第1部材41と第2部材42とを重ねて示す。図16では、斜線同士が重なり合って網掛け部として示されている部分が、第1部材41と第2部材42とが重なっている部分である。
【0140】
第1部材41は、円盤状に形成される。第1部材41は、例えば第1開口41aを2つ有する。第2部材42は、円盤状に形成される。第2部材42は、例えば第2開口42aを2つ有する。第1部材41と第2部材42とが重ねられると、図16に示すように、第1開口41aと第2開口42aとが重なり、共通開口43が生じる場合がある。共通開口43は、図2に示す第1油路OL01と第2油路OL02とを連通する。つまり、作動油は、共通開口43を通過する。
【0141】
第1部材41は、図2に示す可動部材72に連結され、回転軸RLを軸に回動する。第2部材42は、プライマリシャフト51に連結される。これにより、可動部材72がプライマリシャフト51に対して相対的に回動すると、第1部材41は、第2部材42に対して相対的に回動する。すると、可動部材72の固定部材71に対する相対的な移動量に基づいて共通開口43の大きさは変化する。
【0142】
これにより、可変開口部73Bは、共通開口43を通過する作動油の流量を調節する。このように、可変開口部73Bは、可動部材72の回転運動を直線運動に変換することなく、作動油の流量を調節する。
【0143】
なお、本実施形態では、ベルト式無段変速機110は、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70をプライマリプーリ50に備えるものとして説明したが、本実施形態はこれに限定されない。ベルト式無段変速機110は、プライマリ油圧室作動油供給量調節装置70と同様の構成のセカンダリ油圧室作動油供給量調節装置をセカンダリプーリ60に備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本発明に係るベルト式無段変速機は油圧により油圧室に供給する作動油の供給量を調節することに適しており、特に、前記油圧の増大を低減することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。
【図2】本実施形態に係るプライマリプーリを模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るプライマリ油圧室作動油供給量調節装置のA‐A断面を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の油圧回路を示す模式図である。
【図5】本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。
【図6】本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。
【図7】本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の他の油圧回路を示す模式図である。
【図8】本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。
【図9】本実施形態に係るモータ作動油供給量調節装置の作動油の流れの1つを示す説明図である。
【図10】本実施形態に係るカム部近傍を拡大して立体的に示す模式図である。
【図11】本実施形態に係るカム部近傍を拡大して模式的に示す断面図である。
【図12】本実施形態に係るボールが開口端から離れる様子を模式的に示す断面図である。
【図13】本実施形態に係るカム傾斜部の形状を示す展開図である。
【図14】本実施形態に係る他のカム傾斜部の形状を示す展開図である。
【図15】本実施形態に係る他のカム部近傍を拡大して模式的に示す断面図である。
【図16】本実施形態に係る他の可変開口部近傍を拡大して模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0146】
41 第1部材
41a 第1開口
42 第2部材
42a 第2開口
43 共通開口
50 プライマリプーリ
51 プライマリシャフト
52 プライマリ固定シーブ
53 プライマリ可動シーブ
54 プライマリ油圧室
55 スプライン
56 プライマリシリンダ
60 セカンダリプーリ
61 セカンダリシャフト
70 プライマリ油圧室作動油供給量調節装置
71 固定部材
71a 羽根
72 可動部材
72a 羽根
72c 可動部材側ネジ部
73、73A カム部
73B 可変開口部
73a、73b カム傾斜部
74 ボール
74a ボールホルダ
74b カム棒
74c ボールホルダ側ネジ部
75a スプリング
75b ガイド棒
75c ガイド孔
76 スナップリング
77 第1油圧室
77a 作動油供給孔
78 第2油圧室
78a 作動油供給孔
79a、79b シールリング
80 ベルト
80a プライマリ溝
80b セカンダリ溝
81、82、83、84 軸受
90、90A モータ作動油供給量調節装置
91 オイルタンク
92 オイルポンプ
93 調圧弁
93a 第1調圧弁
93b 第2調圧弁
94 開閉弁
94a 第1開閉弁
94b 第2開閉弁
95 ECU
96 切替弁
96a、96b、96c、96d、96e 開口
100 車両
110 ベルト式無段変速機
120 内燃機関
121 クランクシャフト
130 トルクコンバータ
131 インプットシャフト
140 前後進切換機構
150 減速装置
151 ファイナルドライブピニオン
160 差動装置
161 リングギア
170 ドライブシャフト
180 車輪
OL01 第1油路
OL02 第2油路
OL03 第3油路
OL91〜OL97b 油路
PL10〜PL23 カム面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転が入力されて回転軸を軸として回転するシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記回転軸を軸として回転する固定シーブと、
前記固定シーブと対向して前記シャフトに設けられて前記回転軸方向に前記シャフト上を移動する可動シーブと、
前記シャフトに設けられて、前記可動シーブに対して作動油の油圧によって前記回転軸方向の力を与えるプーリ油圧室と、
前記シャフトに設けられると共に力を受ける受圧面が前記回転軸に沿って形成され、前記受圧面に負荷される前記回転軸を軸とする回転方向の力によって前記作動油が流れる通路の開口を封じる弁体を移動させて前記プーリ油圧室へ供給する前記作動油の流量を調節する作動油供給量調節手段と、
を備えることを特徴とするベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記シャフトに設けられて油圧室の一部を構成する固定部材と、
前記固定部材と対向して設けられて前記油圧室の一部を構成すると共に、前記受圧面を含んで形成されて前記受圧面に負荷される前記回転軸を軸とする回転方向の力を受けることで前記固定部材に対して相対的に移動する可動部材と、
を有し、前記作動油供給量調節手段は、前記可動部材の前記固定部材に対する相対的な移動の方向に基づいて前記プーリ油圧室へ供給する前記作動油の流量を調節することを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記作動油供給量調節手段は、前記可動部材の前記固定部材に対する相対的な移動量に基づいて前記プーリ油圧室へ供給する前記作動油の流量を調節することを特徴とする請求項2に記載のベルト式無段変速機。
【請求項4】
前記作動油供給量調節手段は、
前記可動部材と連結または一体に形成されて前記回転軸を軸とする回転方向の力を前記回転軸に沿う方向の力に変換して前記弁体に前記回転軸に沿う方向の力を与える変換手段と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のベルト式無段変速機。
【請求項5】
前記弁体は、弁体支持部材によって支持され、前記変換手段は、前記弁体支持部材を介して前記弁体と連結されることを特徴とする請求項4に記載のベルト式無段変速機。
【請求項6】
前記変換手段は、
前記回転軸を軸として前記シャフトに対して相対的に回転すると共に、前記回転軸と直交する仮想の面からの距離が変化するカム傾斜部と、
前記カム傾斜部と接触して前記カム傾斜部に沿って前記カム傾斜部に対して相対的に移動すると共に、自身に負荷される力を前記弁体に伝えるカム部材と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のベルト式無段変速機。
【請求項7】
前記カム傾斜部は、前記仮想の面と成す角度が異なる複数の面を含んで構成されることを特徴とする請求項6に記載のベルト式無段変速機。
【請求項8】
前記カム傾斜部は、前記仮想の面と成す角度が連続的に変化する曲面を含んで構成されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のベルト式無段変速機。
【請求項9】
作動油供給量調節手段は、
前記受圧面を含んで構成されて、自身に供給される作動油の油圧によって前記受圧面に所定方向の力を与える第1油圧室と、
前記受圧面を含んで構成されて、自身に供給される作動油の油圧によって前記受圧面に所定方向とは反対方向の力を与える第2油圧室と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のベルト式無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−185992(P2009−185992A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29520(P2008−29520)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】