説明

ベルト張架装置、及び画像形成装置

【課題】発明の課題は、ベルトの波打ちを抑制したベルト張架装置を提供することである。また、本発明の課題は、画像の濃淡発生が抑制された画像形成装置を提供することである。
【解決手段】張架ロール120におけるリブ部材ガイド124が伸縮部材(バネ部材126)を設けることで張架ロール120軸方向に移動され得る構成とする。これにより、無端ベルト110の軸方向幅が縮まると、無端ベルト110のリブ部材114に押圧されてリブ部材ガイド124が張架ロール120軸方向内側へ移動して張架ロール120に軸方向長さが縮まる。一方、無端ベルト110が広がると、リブ部材ガイド124が張架ロール120軸方向外側へ移動して張架ロール120に軸方向長さが広がる。結果、ベルトの波打ちが防止さ、当該ベルト張架装置を画像形成装置用の部材として適用することで画像の濃淡発生等の画像欠陥が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト張架装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置としては、例えば、無端ベルトを中間転写ベルトとして使用した中間転写方式のカラー画像形成装置がある。これは、電子写真プロセス等によりトナー像が形成される像保持体(例えば感光体ドラム)の転写部で接触して回転する中間転写ベルトを複数のベルト支持ロール間に張架して配設したものであり、その像保持体上に形成される複数のトナー像を一旦中間転写ベルトの同じ位置に重ねあわせるように一次転写した後、その中間転写ベルト上に転写されたトナー像を用紙に一括して転写するものである。そして、用紙上に転写された多重のトナー像は、その後定着装置により定着されてカラー画像となる。
【0003】
この他、無端ベルトを備えた画像形成装置としては、用紙を保持して複数の画像形成ユニットの転写部を通過させるように搬送する用紙搬送ベルトを使用した、いわゆるタンデムタイプのカラー画像形成装置もある。これは、各色成分のトナー像を個々に形成するため画像形成ユニットを複数並べて配置し、その各画像形成ユニットの転写部で接触して回転するように用紙搬送ベルトを複数のベルト支持ロール間に張架して配設したものであり、その用紙搬送ベルトに吸着して保持した用紙を各画像形成ユニットの転写部を通過させるように搬送することにより、各画像形成ユニットで形成される各トナー像を同じ用紙に順次重ねあわせるように転写し、最後に定着させてカラー画像とするものである。
【0004】
例えば、画像形成装置に利用する無端ベルトには、ベルトの蛇行を防止するために、ベルトの軸方向片端部又は両端部に、リブ部材を設けることが提案されている(例えば、特許文献1、2等)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−175686号公報
【特許文献2】特開2005−221625公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、複数のロールにより張架されている無端ベルトにおいて、常温環境(例えば20℃50%RH))から高温高湿度環境(例えば30℃85%RH)に置くと、ロールに接していない部分のベルトは温度/湿度により膨張するが、ロールに接しているベルトはロールとの接触により膨張しづらく、張架したベルトに波打ちが発生することがある。この現象が生じると、例えば、無端ベルトを中間転写ベルトとして使用した画像形成装置ではベルトの波打ちと似た形状で画像の濃淡が生じて、画像欠陥として現われることがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ベルトの波打ちを抑制したベルト張架装置を提供することである。また、本発明の課題は、ベルトの波打ちに起因する画像欠陥が抑制された画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
ベルト本体と、前記ベルト本体の軸方向における少なくとも一方の片側縁部の内周面に前記ベルト本体の周方向に沿って帯状に設けられた凸状部材と、を有する無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周面に接触し当該無端ベルトを張架するための張架部材本体と、前記張架部材本体の軸方向両端部側の少なくとも1方に配設され、前記凸状部材と接触して前記無端ベルトの軸方向の移動を規制する規制部材と、前記張架部材本体の軸方向端部と前記規制部材との間に配置され、前記張架部材本体の軸方向に伸縮する伸縮部材と、を有する張架手段と、
を備えることを特徴とするベルト張架装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記伸縮部材がバネ部材であることを特徴とする請求項1に記載のベルト張架装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記像保持体、前記帯電手段、前記転写手段、及び前記定着手段の少なくとも1つが、請求項1又は2に記載のベルト張架装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ロールに接しているベルトがロールとの接触により膨張しづらい構成に比べて、ベルトの波打ちが抑制される、といった効果を奏することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、ロールに接しているベルトがロールとの接触により膨張しづらい構成に比べて安定してベルトの蛇行が防止されつつ、ベルトの波打ちが抑制される、といった効果を奏することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、ロールに接しているベルトがロールとの接触により膨張しづらい構成に比べてベルトの波打ちに起因する画像欠陥が抑制される、といった効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能・作用を有する部材には全図面通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るベルト張架装置を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る張架装置を示す部分断面図(図1のA−A断面図)である。図3は、第1実施形態に係る無端ベルト示す斜視図である。
【0016】
第1実施形態に係るベルト張架装置100は、図1及び図2に示すように、無端ベルト110と、無端ベルト110の内周面と接触して設けられ、無端ベルト110を回転するように張架する張架ロール120(張架部材)と、を備えている。なお、本実施形態では、張架ロール120が、3つの形態を説明するが、2つ以上であれば、特に制限はない。
【0017】
また、無端ベルト110は、例えば図3に示すように、ベルト本体112と、ベルト本体112の側縁に沿ってベルト本体112内周面の両端部(ベルト軸方向の両端部)に配設されたリブ部材114(凸状部材:蛇行防止部材)と、を含んで構成している。また、図示しないが、リブ部材114は、接着部等を介して配設されている。
【0018】
なお、本実施形態では、リブ部材114がベルト本体112の両端部(ベルト軸方向の両端部)に配設された形態を説明するが、ベルト本体112の片端部(ベルト軸方向の片端部)に配設した形態であってもよい。
【0019】
以下、各部材につき詳細に説明する。
【0020】
−張架ロール−
張架ロール120は、無端ベルト110の内周面に接触する張架ロール本体122(張架部材本体)と、張架ロール本体122の軸方向両端部側に配設されるリブ部材ガイド124(規制部材)と、張架ロール本体122の軸方向両端部とリブ部材ガイド124との間に配置されバネ部材126(伸縮部材)と、張架ロール本体122の軸方向両端面中央部に連結され、リブ部材ガイド124を貫き当該軸方向外側に延在するシャフト128と、を備える。
【0021】
張架ロール本体122は、他の張架ロールと共に無端ベルト110内周面に接触し、張力を掛けつつ保持する機能(張架する機能)を持つ部材である。張架ロール本体122は、例えば、軸方向両端が開口した円筒状体122Aと、当該開口を塞ぐフランジ122Bと、で構成されている。張架ロール本体122の構成材料としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0022】
張架ロール本体122の外周面には、図示しないが、無端ベルトに負荷がかかったときにも中間転写ベルト4をスリップさせない目的で、高摩擦材料層122Cを設けている。高摩擦材料層122Cとしては、例えばポリウレタンの被覆層(5μm以上50μm以下:望ましくは25μm)が適用される。
【0023】
リブ部材ガイド124は、リブ部材114と接触して無端ベルト110の軸方向の移動を規制する部材である。リブ部材ガイド124は、例えば、第1円柱部124Aと第1円柱部124Aよりも外形が大きい第2円柱部124Bとが同軸に連結されて構成でされている。リブ部材ガイド124は、第2円柱部124Bが第1円柱部124Aに対し張架ロール本体122側に配設されている。なお、第1円柱部124Aと第2円柱部124Bは一体的に形成されている。
【0024】
そして、リブ部材ガイド124は、張架ロール本体122と同軸に、シャフト128により貫通あされて配設されている。本実施形態では、第2円柱部124Bにリブ部材114の側面が接触することで、無端ベルト110の軸方向の移動を規制している。
【0025】
リブ部材ガイド124は、張架ロール本体122の軸方向の両端部に配設した形態を説明したが、張架ロール本体122の軸方向の片端部のみに配設した形態としてもよい。なお、リブ部材114がベルト本体112の両端部(ベルト軸方向の両端部)に配設された形態の場合、ベルト本体の蛇行防止の点から、リブ部材ガイド124は、張架ロール本体122の軸方向の両端部に配設することが好ましい。
また、リブ部材114がベルト本体112の軸方向の片端部のみに設けられた場合、張架ロール本体122の軸方向の両端部のうち、リブ部材ガイド124は、無端ベルト110のリブ部材114が設けられた側の端部側に配設される。
【0026】
ここで、リブ部材ガイド124は、上記構成に限られず、例えば、リブ部材114が挿入される溝を周方向に沿って設けた円柱部材で構成してもよい。また、リブ部材ガイド124の構成材料としては、表面が滑らかで、摺動性の良好な樹脂材料を使用するのが好ましく、例えば、ポリアセタールが使用される。
【0027】
バネ部材126は、例えば、張架ロール本体122の軸方向両端部とリブ部材ガイド124との間に連結して配設されている。そして、バネ部材126のバネ力に従って、ベルト軸方向に伸縮する。言い換えれば、張架ロール120の軸方向長さが伸縮、即ちバネ力が付加された状態で張架ロール120軸方向にリブ部材ガイド124が移動する。
【0028】
バネ部材126は、張架ロールの軸方向に伸縮する部材であり、例えば、図4に示すが如く、中央に開口が設けれ、盤面が波打った皿バネ(波バネ)が適用される。なお、バネ部材126は、皿バネに限られず、巻きバネ、板バネ、角バネ、竹の子バネ等の各種バネ部材が適用され得る。バネ部材126のバネ力は、リブ部材ガイド124がリブ部材114と接触する際に必要な押圧力に応じて選択される。
【0029】
なお、本実施形態では、バネ部材126が張架ロール本体122の軸方向の両端部とリブ部材ガイド124との間に配した形態を説明したが、リブ部材ガイド124と同様に、バネ部材126が張架ロール本体122の軸方向の片端部と該片端部側のリブ部材ガイド124との間に配した形態であってもよい。なお、リブ部材ガイド124が張架ロール本体122の軸方向の両端部に配設した形態の場合、ベルトの波打ちを抑制する点から、バネ部材126は、張架ロール本体122の軸方向の両端部とリブ部材ガイド124との間に配した形態が好ましい。
また、リブ部材114がベルト本体112の軸方向の片端部のみに設けられた場合、張架ロール本体122の軸方向の両端部のうち、バネ部材126は、無端ベルト110のリブ部材114が設けられた側の端部とリブ部材ガイド124との間に配設される。
【0030】
また、本実施形態では、伸縮部材としてバネ部材126を適用した形態を説明したが、伸縮部材は、弾性変形する弾性部材であれば、特に制限はく、例えば、樹脂部材、ゴム部材等も適用し得る。
【0031】
ここで、張架ロール120は、例えば、テンションロール、ステアリングロール、アイドルロール、駆動ロール、バックアップロール等として、ベルト張架装置に配される。これらのロールは、用途に応じて配設される。なお、ベルト張架装置には、複数本の張架ロールが配されるが、全てのロールが上記構成の張架ロールである必要ななく、少なくとも1つの張架ロールに適用され得る。
【0032】
−ベルト本体−
ベルト本体112の材質としては、ヤング率2000N/mm以上の樹脂材料が好ましく用いられる。ヤング率2000N/mm以上の樹脂材料を用いることで、ベルト走行時に、リブ部材114に加わる応力によるベルト変形が抑制される。ベルト本体112の材質としては、熱硬化性樹脂が好ましく、具体的にはポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0033】
ベルト本体112の材質として特に好適には、例えばポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂が用いられる。
【0034】
特に、ベルト本体112の材質としては、周長変動の少ない、すなわちヤング率が3000N/mm以上の樹脂材料が好ましい。ヤング率が3000N/mm以上の樹脂材料としては、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられるが、特に高ヤング率の樹脂材料であるポリイミド樹脂が特に好ましい。例えば、宇部興産(株)のユーピレックスSなどのポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系樹脂材料にカーボンブラックを分散した場合のヤング率は、6200N/mmであり、無端ベルトとして機械特性が満足される。
【0035】
ベルト本体112は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。無端ベルトの厚さは、通常、0.02mm以上0.2mm以下程度が望ましく、より望ましくは0.07mm以上0.1mm以下程度である。
【0036】
ベルト本体112の一例を挙げると、電子写真方式を用いた画像形成装置等における中間転写ベルト及び転写搬送ベルトの場合、導電性フィラー(導電剤)を含有するポリイミド系樹脂からなる半導電性ベルト等が好適に使用される。ここで、「導電性」とは、例えば体積抵抗率が10 Ωcm未満を意味する。また、「半導電性」とは、例えば体積抵抗率が10以上1013 Ωcm以下を意味する。以下同様である。
【0037】
ここで、例えば、無端ベルト110を画像形成装置の中間転写ベルトとして用いる場合、1×10Ω/□以上1×1014Ω/□以下の範囲に表面抵抗率を、1×10Ωcm以上1×1013Ωcm以下の範囲に体積抵抗率を制御するために、ベルト本体112には必要に応じて導電性フィラーを配合することがよい。この導電性フィラーとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属又は合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウム又は酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、又はポリアニリン、ポリピローラ、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどが好適に使用できる。これら導電性フィラーは単独又は2種以上を併用して使用される。安価及び抵抗調整が容易であるという観点からはカーボンブラックを使用することが好適である。さらに、必要に応じて分散剤、滑剤などの加工助剤を無端ベルト中に添加することができる。
【0038】
−リブ部材−
リブ部材114は、ベルト本体112の軸方向における少なくとも片側縁部の内周面(ベルトの幅方向における少なくとも片側縁部の内周面)に、当該ベルト本体112の周方向に沿って全周に渡り帯状に連続して、且つベルト本体112の内周面から突出するように配設されている。
【0039】
リブ部材114は、例えば、その端面がベルト本体112の一端面(ベルト本体112軸方向外側の一端面)と所定の間隙を持って配設されている。リブ部材114の配設位置(接着位置即ち、ベルト本体側縁からの距離)は、無端ベルトの用途、機能、無端ベルトを用いる装置等に応じて設定される。なお、リブ部材114は、その端面がベルト本体112の幅方向端面と面一で設けてもよい。
【0040】
リブ部材114は、デュロメータ硬さがA60以上A90以下の弾性部材であることが望ましく、特に望ましくは、A60以上A80以下の範囲である。無端ベルト110がベルト支持ローラの軸方向へ移動しようとする寄り力が発生すると、その寄り力に抗して発生する同じ強度の反力(応力)がリブ部材に直接かかることとなり、この応力をリブ部材114自身である程度分散吸収することができるという観点から、デュロメータ硬さが上記範囲であることがよい。
【0041】
デュロメータ硬さがA60よりも小さい場合は、リブ部材の変形が大きいので、無端ベルトが乗り上げてしまう場合があり、デュロメータ硬さがA90よりも大きい場合は、無端ベルト110がベルト支持ローラに追従しなくなってしまう場合がある。ここで、デュロメータ硬さとは、JIS K6253(1997年)に規定されるゴム硬度である。
【0042】
リブ部材の材質としては、ポリウレタン樹脂、ネオプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の適度な硬度を有する弾性材料等が使用できる。これらの中でも、電気絶縁性、耐湿、耐溶剤、耐オゾン及び耐熱性、耐磨耗性を考慮すると、特にポリウレタンゴムやシリコーンゴムが好適に用いられる。
【0043】
ここで、本実施形態では、両方の側縁に沿ってリブ部材114を設けた形態を説明したが、ベルト本体112の片方の側縁に沿ってリブ部材114を設けた形態でもよい。蛇行防止効果、耐久性及び補強効果等の点から、リブ部材114は、ベルト本体112の両方の側縁に沿って設けることがより好ましい。
【0044】
また、本実施形態では、リブ部材114をベルト本体112の周方向全周に渡って配設している。無端ベルト110の補強効果の点から、このようにリブ部材114をベルト本体112の周方向全周に渡って配設することが望ましいが、リブ部材114は、例えば1mm以上10mm以下程度の間隙を有するように不連続で配設してもよい。
【0045】
−接着部−
リブ部材114は接着部等を介してベルト本体112に取り付けることができ、該接着部としては以下の如く接着剤が好適に用いられる。
【0046】
(1)弾性接着剤
本発明に用いられる接着剤としては、硬化後の接着剤のデュロメータ硬さがA30以上A50以下の範囲内の弾性を有することが好ましく、例えば、セメダイン(株)製のアクリル変性シリコンポリマーを主成分とするスーパ−XNo8008、コニシ(株)製の特殊変成シリコンポリマーを主成分とするサイフレックス100などを挙げることができる。ベルト本体との接着強度よりセメダイン(株)製のアクリル変性シリコンポリマーを主成分とするスーパ−XNo8008がより好ましく用いられる。
【0047】
(2)感熱性接着剤シート
感熱性接着剤シートとしては、ベルト本体112とリブ部材114との接着性に優れたものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系、シリコン系、天然又は合成のゴム系、ウレタン系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂系などの樹脂系材料を主材料とする接着剤シートを用いることができる。
【0048】
具体的には、東洋紡(株)製ポリエステル系接着剤シートGM−913、GM−920、ソニーケミカル(株)製ポリエステル系接着剤シートD3600などを挙げることができる。無端ベルトとの接着強度よりソニーケミカル(株)製ポリエステル系接着剤シートD3600、東洋紡(株)製ポリエステル系接着剤シートGM−920がより望ましくは用いられる。
【0049】
弾性接着剤又は感熱性接着剤シートを用いた接着部の厚みは、0.01mm以上0.3mm以下が望ましく、より望ましくは0.02以上0.05mm以下である。前記接着部の厚みが0.01mm未満の場合には、均一な接着強度が得られない場合があり、0.3mmを超える場合には、接着時に加える圧力によってリブ部材114の位置ずれを起こす場合がある。
【0050】
弾性接着剤又は感熱性接着シートを用いたベルト本体112に対するリブ部材114の貼設は、シート状のベルト本体112を用い、まず該ベルト本体112にリブ部材114を貼設して、その後ベルト本体112の端部と他端部とを接着して環状に形成してもよいし、まずベルト本体112を環状に形成した後にリブ部材114を貼設してもよい。
【0051】
以上説明した本実施形態では、張架ロール120におけるリブ部材ガイド124が伸縮部材(バネ部材126)を設けることで張架ロール120軸方向に移動され得る構成となっている。このため、無端ベルト110の軸方向幅が縮まると、無端ベルト110のリブ部材114に押圧されてリブ部材ガイド124が張架ロール120軸方向内側へ移動して張架ロール120に軸方向長さが縮まる。一方、無端ベルト110が広がると、リブ部材ガイド124が張架ロール120軸方向外側へ移動して張架ロール120に軸方向長さが広がる。
【0052】
ここで、例えば、無端ベルト110は、高温高湿(例えば、30℃85%RH)の環境下では、熱膨張及び湿度膨張する。例えば、無端ベルト110(ベルト本体)の構成材料の熱膨張係数が50(ppm/℃)程度ある場合、常温常湿(20℃55%RH)でのベルトの幅が350mmであるのに対し、高温高湿(30℃85℃RH)では350.18mmとなる。
【0053】
そして、無端ベルト110の回転方向の膨張分は、張架ロール120により張力(テンション)が掛かっているため、その膨張した分だけベルトが伸びる。一方、無端ベルトの軸方向(幅方向)の膨張分は、張架ロール120間でロールと非接触な領域では膨張した分だけベルトが伸びるが、張架ロール120と接触した領域では張架ロール120との摩擦により動きづらくスリップされずにベルトが伸び難くい。
【0054】
このため、無端ベルト110における、ロール非接触領域とロール接触領域との間でベルト幅が異なるってしまう。結果、無端ベルトにおける張架ロール120間でロール非接触な領域で、波打ちが発生することになる。
【0055】
そこで、本実施形態では、ベルトの膨張・収縮の伴って、上述の如く、張架ロール120におけるリブ部材ガイド124が張架ロール120軸方向に移動する構成とし、無端ベルト110のロール接触領域での膨張・収縮がの阻害を防止し、ロール非接触領域とロール接触領域との間でのベルト幅の差が発生するのが抑制される。結果、例えば、環境が変化してベルトが熱膨張しても、無端ベルトの波打ちの発生が抑制される。
【0056】
また、本実施形態では、伸縮部材としてバネ部材126を適用しているので、バネ力が付加された状態で張架ロール120軸方向にリブ部材ガイド124が移動するので、リブ部材ガイド124がリブ部材114に押圧された状態で追随する。結果、ベルト幅が膨張・収縮してもリブ部材114をガイド(案内)し、安定してベルトの蛇行が防止される。
【0057】
なお、本実施形態に係るベルト張架装置100は、例えば、電子写真式複写機、レーザープリンター等における画像形成装置用における、転写装置、感光体(像保持体)、帯電装置、定着装置、用紙搬送装置等の画像形成用の装置に適用され得る。また、ベルト張架装置100は、画像形成用の装置に限らず、搬送装置全般に適用され得る。
【0058】
また、無端ベルト110は、その用途、機能等に応じて、材質、形状、大きさ等が適宜設定される。
【0059】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0060】
第2実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルトを備えるベルト張架装置として第1実施形態に係るベルト張架装置を備えるものである。
【0061】
第2実施形態に係る画像形成装置は、図5に示すように、感光体ドラム等の潜像保持体(以下、「感光体ドラム」で代表して説明する)1の表面は帯電器2により所定の電荷で一様に帯電され、レーザー光Lの書き込み走査で第1色の画像信号に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像は感光体ドラム1の、A方向への回転で現像装置ユニット3の第1色の現像器との対向位置に到り、第1色の現像器でトナー現像される。感光体ドラム1はトナー像Tを保持してさらに回転する。
【0062】
上記トナー現像動作に合わせて、中間転写ベルト4は感光体ドラム1の周速と略同一の速度で移動し、感光体ドラム1と中間転写ベルト4とが接する位置の直下付近で中間転写ベルト4に接して配置された1次転写ロール5が配置されている1次転写部において、該1次転写ロール5に印加される上記トナーの帯電極性と逆極性の転写電界によって感光体ドラム1に保持されていたトナー像Tが中間転写ベルト4に1次転写される。以上で、1次転写サイクルが終了する。
【0063】
中間転写ベルト4に1次転写されたトナー像は中間転写ベルト4の周回移動によって2次転写ロール6が配置されている2次転写部に到る。フルカラー画像形成装置の場合には潜像の形成からトナー像の1次転写までを予定色(一般にはイエロー(Y) 、マゼンタ(M) 、シアン(C) 及びブラック(Bk))分だけ繰り返して中間転写ベルト4上に多色トナーを重ね合わせたカラートナー像を形成する。
【0064】
各色のトナー像を形成するため、現像装置ユニット3はイエロー現像器3−1、マゼンタ現像器3−2、シアン現像器3−3及びブラック現像器3−4の4色現像器からなる回転装置で構成され、感光体ドラム1に形成された各色の潜像を順次現像できるように構成されている。
【0065】
感光体ドラム1に保持された第1色のトナー像が1次転写部で中間転写ベルト4上に転写された後、感光体ドラム1上の残留トナーは感光体クリーナ7で除去されるとともに図示しない除電器で電荷が中和された後、次の,第2色に対応する潜像の形成がなされる。第2色の静電潜像も第1色と同様にして現像され、その第2色のトナー像が中間転写ベルト4上の、先に転写された第1色のトナー像に重ねて転写される。以下、第3色以降についても同様にして中問転写ベルト4に多重転写され、その結果、中間転写ベルト4には未定着の複数色トナーが重畳したカラートナー像が形成される。
【0066】
すべての色のトナー像が1次転写された中間転写ベルト4が2次転写位置に達する時点で、タイミングを合わせて給紙容器8から送り出された記録媒体としての記録紙Pが2次転写位置に給送される。
【0067】
記録紙Pを2次転写ロール6及び中間転写ベルト4によって挟持して搬送する際、2次転写ロール6に印加される前記トナー像の帯電極性と逆極性の転写電圧で形成される転写電界により中間転写ベルト4のトナー像が記録紙Pに2次転写される。
【0068】
トナー像が2次転写された記録紙Pは定着器9に送られ、加熱・加圧処理によりトナー像を記録紙Pに固定し、作像プロセスを終了する。なお、トナー像が2次転写された記録紙Pを除電するための除電器(図示せず)が2次転写ロール6の下流に配置される。
【0069】
2次転写ロール6は、中間転写ベルト4に対して矢印C方向に接触・離間自在に設けられていて、記録紙Pの進入に合わせて接し、排出に合わせて離間する。2次転写ロール6は2次転写の終了とともに待避位置に戻る。また、中間転写ベルト4に対向して配置されているクリーナ10も記録紙Pへ転写されなかったトナー像をクリ−ニングすべく、中間転写ベルト4に対して2次転写ロール6同様、接触・離間する。
【0070】
中間転写ベルト4は、駆動ロール11、アイドルロール12、2次転写バックアップロール13及びテンションロール14により張架され、ベルト張架装置15を構成している。そして、中間転写ベルト4は、駆動ロール11により矢印B方向に搬送される。中間転写ベルト4には、該中間転写ベルト4が駆動ロール11等、各ロールの軸方向での位置を規制するためのリブ部材が設けられている(図1及び図2参照)。
【0071】
また、駆動ロール11には、ベルトクリーナ10や2次転写ロール6による負荷がかかったときにも中間転写ベルト4がスリップしないように、その表面に高摩擦処理が施されており、例えば高摩擦材料の被覆層が形成されている。この高摩擦処理としては、アルミニウム製ロールの表面に、ウレタンゴム等の高摩擦樹脂をコーテイングしたりして、長期に渡って駆動ロールと中間転写ベルトの摩擦係数を維持できるようにしている。
【0072】
以上説明した本実施形態では、中間転写ベルトを張架するベルト張架装置として上記第1実施形態に係るベルト張架装置を適用しているので、中間転写ベルトの波打ちが抑制され、転写状態の変動が抑制される。結果、画像の濃淡発生等の画像欠陥が抑制される。
【0073】
なお、本実施形態では、感光体ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、帯電ベルト、定着ベルト等を備えた画像形成装置であってもよく、これらのベルトを張架するベルト張架装置として上記第1実施形態に係るベルト張架装置が適用され得る。
【0074】
(試験例)
以下、第2実施形態に係る画像形成装置の試験例を示す。なお、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0075】
−試験例−
次の構成のベルト張架装置を準備し、第2実施形態に係る画像形成装置と同様な構成の複写機(図5参照)に装着し、まず、温度20℃湿度55%RHの環境下でマゼンタ色によるベタ画像を出力した。この際、ベルト張架装置(ベルトユニット)の駆動ロール、アイドルロール間の中間転写ベルトには波うちがなく、画像上の濃淡もなかった。
【0076】
次に、複写機を30℃湿度85%RHの環境下に移し、12時間放置した後、当該環境下でマゼンタ色によるベタ画像を出力した。この際でも、ベルト張架装置(ベルトユニット)の駆動ロール、アイドルロール間の中間転写ベルトには波うちがなく、画像上の濃淡もなかった。
【0077】
−ベルト張架装置の構成−
中間転写ベルト、駆動ロール、アイドルロール、2次転写バックアップロール及びテンションロールを準備し、中間転写ベルトを当該ロール群より張架した構成とした(図5参照)。なお、張架は、中間転写ベルトは、その周方向に3kgのテンションがテンションロールにより負荷されるように行った。
【0078】
・中間転写ベルト:厚さ0.1mm、ベルト幅350mm、外径Φ168mmのポリイミド製無端ベルトの軸方向両端部の内周面に、幅5mm、厚さ1mmのリブ部材をベルト端部から軸方向0.5mm内側にベルト周方向に沿って貼着した中間転写ベルト。
・駆動ロール、アイドルロール:アルミ製で直径φ28mmの張架ロール本体の軸方向両端にポリアセタール(POM)製のリブガイド部材を、SAE(炭素鋼)製の皿バネ東海バネ工業(株)B−28)を介して配設したロール。SAE製の皿バネは、リブガイド部材同士の距離(ベルトのリブ部材と接触する部位同士間のロール軸方向の距離)を339mmにするのに3kgのバネ力(圧縮力)がかかるように用いた。
【0079】
(比較例1)
試験例1において、駆動ロールとアイドルロールには皿バネを介さず(設けず)、張架ロール本体両端部にリブガイド部材を設置したこと以外は、試験例1と同様にして評価を行った。その結果、温度20℃湿度55%RHの環境下におけるマゼンタ色によるベタ画像の出力では、ベルト張架装置(ベルトユニット)の駆動ロール、アイドルロール間の中間転写ベルトには波うちがなく、画像上の濃淡もなかった。一方、30℃湿度85%RHの環境下におけるマゼンタ色によるベタ画像の出力では、ベルト張架装置(ベルトユニット)の駆動ロール、アイドルロール間の中間転写ベルトに波うちが発生し、画像上の濃淡が発生した。
【0080】
以上の試験例から、本試験例では、装置停止時に環境が変化してベルトが熱膨張しても波打ちが発生せず、画像の濃淡が発生しないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1実施形態に係るベルト張架装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る張架装置を示す部分断面図(図1のA−A断面図)である。
【図3】第1実施形態に係る無端ベルト示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るバネ部材を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0082】
1 感光体ドラム(像保持体)
2 帯電器(帯電装置)
3 現像装置ユニット(現像装置)
3−1 イエロー現像器(現像装置)
3−2 マゼンタ現像器(現像装置)
3−3 シアン現像器(現像装置)
3−4 ブラック現像器(現像装置)
4 中問転写ベルト(無端ベルト)
5 1次転写ロール
6 2次転写ロール
7 感光体クリーナ
8 給紙容器
9 定着器(定着装置)
10 ベルトクリーナ
11 駆動ロール
12 アイドルロール
13 2次転写バックアップロール
14 テンションロール
15 ベルト張架装置
100 ベルト張架装置
110 無端ベルト
112 ベルト本体
114 リブ部材
120 張架ロール
122 張架ロール本体
124 リブ部材ガイド
126 バネ部材
128 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、前記ベルト本体の軸方向における少なくとも一方の片側縁部の内周面に前記ベルト本体の周方向に沿って帯状に設けられた凸状部材と、を有する無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周面に接触しベルトを張架するための張架部材本体と、前記張架部材本体の軸方向両端部側の少なくとも1方に配設され、前記凸状部材と接触して前記無端ベルトの軸方向の移動を規制する規制部材と、前記張架部材本体の軸方向端部と前記規制部材との間に配置され、前記張架部材本体の軸方向に伸縮する伸縮部材と、を有する張架手段と、
を備えることを特徴とするベルト張架装置。
【請求項2】
前記伸縮部材が、バネ部材であることを特徴とする請求項1に記載のベルト張架装置。
【請求項3】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記像保持体、前記帯電手段、前記転写手段、及び前記定着手段の少なくとも1つが、請求項1又は2に記載のベルト張架装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−185645(P2008−185645A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17034(P2007−17034)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】