説明

ベルト駆動装置、ベルト定着装置、画像形成装置

【課題】無端状のベルトの寄りを解消すると共に、装置の省スペース化とコストダウンを同時に図ることができるベルト駆動装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2つのローラ1、2により張架された無端状のベルト3と、そのベルト3の外周面に接触してベル3トとの間でニップを形成する加圧ローラ4とを備えたベルト駆動装置において、ベルト表面の静摩擦係数を0.19以下し、また、加圧ローラ表面の静摩擦係数を0.22以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式等を利用したFAX、プリンタ、複写機等の画像形成装置に適用されるベルト駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置では、複数のローラに巻き掛けられた無端状ベルトを各種ユニットに用いることが知られている。例えばベルト定着装置を構成するベルト、転写ベルト、感光体ベルトなどである。無端状ベルトは走行中に幅方向(ローラ軸線方向)への寄りを生じることがある。この寄りを規制するための技術が以下のように種々提案されている。
例えば、特許文献1、特許文献2に開示されているように、無端状ベルトの回転トルクを利用して該ベルトの寄りを規制する。具体的には、無端状ベルトを揺動可能なローラに巻き掛け、特許文献1の場合には無端状ベルトが寄りを生じたときに乗り上げる検知部材を、特許文献2の場合には無端状ベルト端部が当接する垂直な面を有する検知部材を、揺動可能なローラと一体的に設け、無端状ベルトの回転トルクにより検知部材が回転駆動されると、一端を検知部材に固定され他端を不動部に固定された糸が検知部材に巻き取られ、揺動可能なローラが他のローラから離間する向き、即ち、寄りを規制する向きに変位することで無端状ベルトの寄りを規制する。
また無端状ベルト端部の内周面あるいは外周面にベルト寄り規制部材を貼り付けたり、ローラ軸端部にベルト寄り止めリングを設けることも知られている。
【特許文献1】特公平6−99055号公報
【特許文献2】実開平4−60916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2に開示された構成では、揺動可能なローラが寄りを規制する向きに変位した際に速やかに無端状ベルトの寄りが解消しないと、該ベルトが検知部材との摺動摩擦により摩耗して劣化してしまうという不具合がある。また、ベルトに大きな寄り力が作用したときにベルト寄り規制部材が剥がれたり、ベルトが規制部材を乗り越えたりする不具合がある。
また、ベルト寄り止めリングを設ける構成では、無端状ベルトに大きな寄り力が作用したとき無端状ベルトの座屈現象により、ベルト端部が破損する恐れがあった。さらに、上記各手段はベルト寄り規制をするための部品を必要とするため、装置の省スペース化やコストアップの弊害となっていた。
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであって、無端状ベルトの寄りを解消すると共に、装置の省スペース化とコストダウンを同時に図ることができるベルト駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、少なくとも2つのローラにより張架された無端状のベルトと、そのベルトの外周面に接触してベルトとの間でニップを形成する加圧ローラとを備えたベルト駆動装置において、ベルト表面の静摩擦係数を0.19以下とするベルト駆動装置を最も主要な特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のベルト駆動装置において、加圧ローラ表面の静摩擦係数を0.22以下とするベルト駆動装置を主要な特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のベルト駆動装置が適用されるベルト定着装置を最も主要な特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のベルト定着装置が搭載される画像形成装置を最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、少なくとも2つのローラにより張架された無端状のベルトと、そのベルトの外周面に接触してベルトとの間でニップを形成する加圧ローラとを備えたベルト駆動装置において、ベルト表面の静摩擦係数を0.19以下とし、また、加圧ローラ表面の静摩擦係数を0.22以下とすることで、ベルトの寄りを解消すると共に、装置の省スペース化とコストダウンを同時に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は本発明の実施形態に係るベルト定着装置の構成図である。図示したのは、電磁誘導加熱方式のベルト定着装置であるが、本発明のベルト定着装置を電磁誘導加熱方式に限定するものではない。
誘導加熱手段6による電磁誘導によって加熱される加熱ローラ1と、加熱ローラ1と平行に配置された定着ローラ2と、加熱ローラ1と定着ローラ2とに張装され、加熱ローラ1により加熱されるとともに何れかのローラの回転により矢印A方向に回転する無端帯状、かつ耐熱性のベルト(トナー加熱媒体)3と、ベルト3を介して定着ローラ2に圧接されるとともにベルト3に対して順方向に回転する加圧ローラ4と、ベルト3の内側に配置された温度検出手段5と、を備えている。
加熱ローラ1はたとえば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金からなる中空円筒状の磁性金属部材で構成され、外径をたとえば20mm、肉厚をたとえば0.2mmとして、低熱容量で昇温の速い構成となっている。
定着ローラ2は、たとえばステンレススチール等の金属製の芯金2aと、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金2aを被覆した弾性部材2bとからなる。そして、加圧ローラ4からの押圧力でこの加圧ローラ4と定着ローラ2との間に所定幅の接触部を形成するために、定着ローラ2の外径を35mm程度として加熱ローラ1より大きくしている。
弾性部材2bはその肉厚を8mm程度、硬度を32°(Asker硬度)程度としている。この構成により、加熱ローラ1の熱容量は定着ローラ2の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ1が急速に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
加熱ローラ1と定着ローラ2との間に張り渡されたベルト3は、誘導加熱手段6により加熱される加熱ローラ1との接触部位W1で加熱される。そして、ローラ1、2の回転によってベルト3の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト3全体に渡って加熱される。
ベルト3の基材として、上記金属からなる発熱層の代わりに、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂層を用いてもよい。
【0007】
加圧ローラ4は、たとえば銅またはアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金4aと、この芯金4aの表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材4bと、から構成されている。芯金4aには上記金属以外にSUSを使用してもよい。
加圧ローラ4はベルト3を介して定着ローラ2を押圧して定着ニップ部Nを形成しているが、本実施形態では、加圧ローラ4の硬度を定着ローラ2に比べて硬くすることによって、加圧ローラ4が定着ローラ2(及びベルト3)へ食い込む形となり、この食い込みにより、記録材11は加圧ローラ4表面の円周形状に沿うため、記録材11がベルト3表面から離れやすくなる効果を持たせている。記録材11上にはトナー像Tが搭載される。
この加圧ローラ4の外径は定着ローラ2とほぼ同じで40mm程度であるが、肉厚は1mm程度で定着ローラ2より薄く、また硬度は80°(Asker硬度)程度で前述したとおり定着ローラ2より硬く構成されている。
電磁誘導により加熱ローラ1を加熱する誘導加熱手段6は、図1および図2(a)、(b)に示すように、磁界発生手段である励磁コイル7と、この励磁コイル7が巻き回されたコイルガイド板8とを有している。コイルガイド板8は加熱ローラ1の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、図2(b)に示すように、励磁コイル7は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板8に沿って加熱ローラ1の軸方向に交互に巻き付けたものである。
【0008】
なお、励磁コイル7は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続されている。励磁コイル7の外側には、図1に示すように、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア9が、励磁コイルコア支持部材10に固定されて励磁コイル7に近接配置されている。なお、本実施形態において、励磁コイルコア9は比透磁率が2500のものを使用している。
励磁コイル7には駆動電源から10kHz〜1MHzの高周波交流電流、好ましくは20kHz〜800kHzの高周波交流電流が給電され、これにより交番磁界を発生する。そして、加熱ローラ1とベルト3との接触領域W1およびその近傍部においてこの交番磁界が加熱ローラ1およびベルト3の発熱層3aに作用し、これらの内部では交番磁界の変化を妨げる方向に渦電流が流れる。
この渦電流が加熱ローラ1および発熱層3aの抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として加熱ローラ1とベルト3との接触領域およびその近傍部において加熱ローラ1および発熱層3aを有するベルト3が電磁誘導加熱される。
このようにして加熱されたベルト3は、定着ニップ部Nの入口側近傍においてベルト3の内面側に当接して配置されたサーミスタなどの熱応答性の高い感温素子からなる温度検出手段5により内面温度が検知される。
【0009】
次にベルト寄りについて説明する。上記のような構成のベルト定着装置では、定着ローラ2に対する加圧ローラ4の平行度のズレが最もベルト寄りに寄与する。これは平行度がズレることによってベルト3に軸方向への力が加わるためである。平行度のズレは部品の寸法公差の積み上がりや駆動による微小なローラ位置の変動により発生するが、ベルト寄りはニップでの加圧ローラ4による押圧力や線速と相関があり、押圧力が大きいほど、また線速が速いほど加圧ローラ平行度のズレの影響が顕著に現れる。
従ってウォームアップ時間を短縮するため定着ローラ2、加圧ローラ4を小径とし、ニップ幅を稼ぐために低硬度の定着ローラ2を装備して押圧力を増加した高生産性(プリントスピードが速い)の画像形成装置はベルト寄りが出やすい。
図3はベルトと加圧ローラの摩擦係数とベルト寄り速度との関係を示す図表である。実験の結果、このような条件下にあってもベルト3の表面静摩擦係数を0.19以下に、加圧ローラ4の表面摩擦係数を0.22以下にすることにより平行度がズレることによって発生するベルト軸方向の力を低減することが可能となり、ベルト寄りを改善できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るベルト定着装置の構成図である。
【図2】図1に示す励磁コイルの配置を示す図である。
【図3】ベルトと加圧ローラの摩擦係数とベルト寄り速度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
1 加熱ローラ、2 定着ローラ、3 ベルト、4 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのローラにより張架された無端状のベルトと、そのベルトの外周面に接触してベルトとの間でニップを形成する加圧ローラと、を備えたベルト駆動装置において、ベルト表面の静摩擦係数を0.19以下とすることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のベルト駆動装置において、加圧ローラ表面の静摩擦係数を0.22以下とすることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のベルト駆動装置を備えたことを特徴とするベルト定着装置。
【請求項4】
請求項3記載のベルト定着装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−148146(P2007−148146A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344343(P2005−344343)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】