説明

ベーンポンプ

【課題】 制御が複雑化することなく容易に吐出流量を制御可能なベーンポンプを提供すること。
【解決手段】 本発明のベーンポンプは、制御弁として、カムリングの揺動を制御する制御室への油路を切り替えるスプールと、該スプールに所定の荷重を付与する弾性体と、スプールの作動方向に所望の付勢力を付与するソレノイドと、弾性体の所定の荷重を調整する調整機構と、を有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータのスリット溝にベーンを出没可能に収容し、カムリング内周面とロータ外周面とベーンとの間に形成したポンプ室の容積をカムリングの揺動により変化させる可変容量形のベーンポンプが知られている。例えば、特許文献1に記載のベーンポンプは、吐出流量を所望の値とするために、カムリングの偏心量を制御する制御弁に付勢力を付与するソレノイドを設け、所定の付勢力を付与することで吐出流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−304139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のベーンポンプでは、制御弁のコイルスプリングの初期セット荷重を調整することができないため、この初期セット荷重を調整するには、ソレノイドの制御によって対応する必要があり、制御が複雑化するおそれがあった。また、コイルスプリングの付勢する方向とソレノイドが付勢する方向とが同一であるため、初期セット荷重が高すぎる場合には、最低吐出流量が高めに設定されるため、エネルギ効率が悪化するという問題があった。
本発明の目的とするところは、制御が複雑化することなく容易に吐出流量を制御可能なベーンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のベーンポンプは、制御弁として、カムリングの揺動を制御する制御室への油路を切り替えるスプールと、該スプールに所定の荷重を付与する弾性体と、スプールの作動方向に所望の付勢力を付与するソレノイドと、弾性体への所定の荷重を調整する調整機構と、を有することとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、弾性体の初期セット荷重を調整することが可能となり、制御が複雑化することなく安定した吐出流量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のベーンポンプが適用されるCVTのブロック図である。
【図2】実施例1のベーンポンプの内部を回転軸方向から見た断面図である。
【図3】実施例1のプレートをz軸正方向側から見た平面図である。
【図4】実施例1のリアボディをz軸正方向側から見た図である。
【図5】実施例1のフロントボディをz軸負方向側から見た図である。
【図6】実施例1の制御部及び制御室との関係を表す概略図である。
【図7】実施例1の可変容量型ベーンポンプの回転数と吐出流量との関係を表す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
〔ベーンポンプの概要〕
実施例1のベーンポンプ1の概要を説明する。ベーンポンプ1は、自動車の油圧式アクチュエータへの油圧供給源として用いられる。具体的には、ベルト式の連続可変トランスミッション(CVT100)の油圧供給源として使用される。なお、他の油圧式アクチュエータ、例えばパワーステアリングシステムの油圧供給源として使用しても良い。
ベーンポンプ1は内燃機関のクランクシャフトにより駆動され、作動流体を吸入・吐出する。作動流体として作動油、具体的にはATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)を用いる。作動油(ATF)は、弾性係数が比較的大きく、僅かな容積変化に対して圧力が大きく変化する性質を有している。
図1は、ベーンポンプ1が適用されるCVT100の一例を示すブロック図である。
コントロールバルブ200内には、CVTコントロールユニット300により制御される各種のバルブ201〜213が設けられている。ベーンポンプ1から吐出された作動油は、コントロールバルブ200を介してCVT100の各部(プライマリプーリ101、セカンダリプーリ102、フォワードクラッチ103、リバースブレーキ104、トルクコンバータ105、潤滑・冷却系等106等)に供給される。
ベーンポンプ1は、吐出容量(1回転当たりに吐出する流体量。以下、ポンプ容量という。)を可変にできる可変容量形であり、作動油を吸入・吐出するポンプ部2と、吐出容量を制御する制御部3とを、一体のユニットとして有している。
【0009】
〔ポンプ部の構成〕
ポンプ部2は主な構成要素として、クランクシャフトにより駆動される駆動軸5と、駆動軸5により回転駆動されるロータ6と、ロータ6の外周に形成された複数のスリット61のそれぞれに突没可能に収容されたベーン7と、ロータ6を囲んで配置されるカムリング8と、カムリング8を囲んで配置されるアダプタリング9と、カムリング8およびロータ6の軸方向側面に配置され、カムリング8、ロータ6およびベーン7とともに複数のポンプ室rを形成するプレート41と、収容孔400を有し、収容孔400の底部402にプレート41を収容するとともに、収容孔400内にカムリング8、ロータ6およびベーン7を収容するリアボディ40と、リアボディ40の収容孔400を閉塞するとともに、カムリング8、ロータ6およびベーン7とともに複数のポンプ室rを形成するフロントボディ42を有している。
【0010】
図2は、ベーンポンプ1の内部を回転軸方向から見た一部断面図である。説明の便宜上、三次元直交座標系を設け、ベーンポンプ1の径方向にx軸およびy軸、ベーンポンプ1の回転軸方向にz軸を設定する。ベーンポンプ1の回転軸O上にz軸を設け、回転軸Oに対してカムリング8の中心軸Pが揺動する方向にx軸を設け、x軸およびz軸に直交する方向にy軸を設ける。図2の紙面上方をz軸正方向とし、Oに対してPが離れる側(第2閉じ込み領域に対する第1閉じ込み領域の側。図3参照。)をx軸正方向とし、吸入領域に対して吐出領域の側をy軸正方向とする。
【0011】
(アダプタリングの構成)
リアボディ40には、z軸方向に延びる略円筒状の収容孔400が形成されている。この収容孔400には、円環状のアダプタリング9が設置されている。
アダプタリング9の内周面は、z軸方向に延びる略円筒状の収容孔90を構成している。収容孔90のx軸正方向側には、yz平面と略平行な第1平面部91が形成されている。収容孔90のx軸負方向側には、yz平面と略平行な第2平面部92が形成されている。第2平面部92のz軸方向略中央には、段差部920がx軸負方向側に形成されている。
収容孔90のy軸正方向側であって回転軸Oに対して若干x軸正方向寄りには、z軸と略平行な第3平面部93が形成されている。第3平面部93には、z軸方向から見て半円状の溝(凹部930)が形成されている。凹部930を挟んだ両側には、アダプタリング9を径方向に貫通する連通路931,932が形成されている。凹部930のx軸正方向側における第3平面部93には第1連通路931が開口し、第3平面部93のx軸負方向側に隣接して第2連通路932が開口している。収容孔90のy軸負方向側には、xz平面と略平行な第4平面部94が形成されている。第4平面部94には、z軸方向から見て矩形状の溝(凹部940)が形成されている。
【0012】
(カムリングの構成)
アダプタリング9の収容孔90内には、円環状のカムリング8が揺動自在に設置されている。言い換えると、アダプタリング9は、カムリング8を取り囲むように配置されている。z軸方向から見て、カムリング8のカムリング内周面80およびカムリング外周面81は略円形であり、カムリング8の径方向幅は略一定である。カムリング8のy軸正方向側のカムリング外周面81には、z軸方向から見て半円状の溝(凹部810)が形成されている。
カムリング8のx軸負方向側のカムリング外周面81には、x軸方向に軸を有する略円筒状の凹部811が所定深さまで穿設されている。アダプタリング内周の凹部930とカムリング外周の凹部810との間には、z軸方向に延びるピン10が、これらの凹部930,810に挟み込まれるように、各凹部930,810に当接して設置される。
前述のアダプタリング内周の凹部940には、シール部材11が設置される。シール部材11は、カムリング外周面81のy軸負方向側に当接する。
アダプタリング内周の段差部920には、弾性部材としてのスプリング12の一端が設置される。スプリング12はコイルスプリングである。カムリング外周の凹部811には、スプリング12の他端が嵌挿される。スプリング12は圧縮状態で設置され、アダプタリング9に対してカムリング8をx軸正方向側に常時付勢する。
アダプタリング9の収容孔90のx軸方向寸法、すなわち第1平面部91と第2平面部92との間の距離は、カムリング外周面81の直径よりも大きく設けられている。カムリング8は、アダプタリング9に対して平面部93で支持され、平面部93を支点にxy平面内で揺動自在に設置されている。ピン10はアダプタリング9に対するカムリング8の位置ズレ(相対回転)を抑制する。
カムリング8の揺動は、x軸正方向側では、カムリング外周面81がアダプタリング9の第1平面部91に当接することで規制され、x軸負方向側では、カムリング外周面81がアダプタリング9の第2平面部92に当接することで規制される。カムリング8の中心軸Pの回転軸Oに対する偏心量をδとする。カムリング外周面81が第2平面部92に当接する位置(最小偏心位置)では、偏心量δが最小値となる。カムリング外周面81が第1平面部91に当接する図2の位置(最大偏心位置)では、偏心量δが最大となる。カムリング8が揺動する際には、平面部93がカムリング外周面81に摺接するとともに、シール部材11がカムリング外周面81に摺接する。
【0013】
(制御室の構成)
アダプタリング内周面95とカムリング外周面81との間の空間は、そのz軸負方向側がプレート41に、z軸正方向側がフロントボディ42により封止される一方、平面部93とシール部材11とにより、2つの制御室R1,R2に液密に隔成されている。
x軸正方向側には第1制御室R1が形成され、x軸負方向側には第2制御室R2が形成されている。第1制御室R1には第1連通路931が開口し、第2制御室R2には第2連通路932が開口している。なお、上記規制位置で、カムリング外周とアダプタリング内周との間には所定の隙間が確保されており、第1、第2制御室R1,R2の容積は所定以上でありゼロとならない。
【0014】
(ロータの構成)
ボディ4(リアボディ40、プレート41、フロントボディ42)には駆動軸5が回転自在に軸支されている。駆動軸5は、チェーンを介して内燃機関のクランクシャフトに結合されており、クランクシャフトに同期して回転する。駆動軸5の外周には、ロータ6が同軸に固定(スプライン結合)されている。ロータ6は略円柱状であり、カムリング8の内周側に設置されている。言い換えると、カムリング8は、ロータ6を取り囲むように配置されている。ロータ6のロータ外周面60とカムリング8のカムリング内周面80とプレート41、フロントボディ42との間に、環状室R3が形成されている。ロータ6は、駆動軸5とともに、回転軸Oの周りに、図2の時計回り方向に回転する。
ロータ6には、複数の溝(スリット61)が放射状に形成されている。各スリット61は、z軸方向から見て、ロータ外周面60から回転軸Oに向かって所定深さまで、ロータ径方向に延びて直線状に設けられており、ロータ6のz軸方向全範囲にわたって形成されている。スリット61は、ロータ6を周方向に等分割する位置に11箇所、形成されている。
ベーン7は、略矩形状の板部材(羽根)であり、複数(11枚)設けられ、各スリット61に1枚ずつ出没可能に収容されている。ベーン7のロータ外径側(回転軸Oから離れる側)の先端部(ベーン先端部70)は、カムリング内周面80に対応して緩やかな曲面状に形成されている。なお、スリット61とベーン7の数は11に限らない。
各スリット61のロータ内径側(回転軸Oに向かう側)の端部(スリット基端部610)は、略円筒状に形成されており、z軸方向から見て、ロータ周方向におけるスリット本体部611の幅よりも大径の略円形である。なお、スリット基端部610を特に円筒状に形成しなくてもよく、例えばスリット本体部611と同様の溝形状としてもよい。スリット基端部610と、このスリット61に収容されたベーン7のロータ内径側の端部(ベーン基端部71)との間には、このベーン7の背圧室br(受圧部)が形成されている。
【0015】
ロータ外周面60には、各ベーン7に対応する位置に、z軸方向から見て略台形状の突出部62が設けられている。突出部62は、ロータ6のz軸方向全範囲にわたって、ロータ外周面60から所定高さまで突出するように形成されている。突出部62の略中央位置には、各スリット61の開口部が設けられている。スリット61のロータ径方向長さ(突出部62およびスリット基端部610を含む)は、ベーン7のロータ径方向長さと略同じに設けられている。
突出部62を設けることで、スリット61のロータ径方向長さが所定以上確保され、例えば第1閉じ込み領域でベーン7がスリット61から最大限突出したとしてもスリット61におけるベーン7の保持性が確保されている。
環状室R3は、複数のベーン7によって、複数(11個)のポンプ室(容積室)rに区画されている。以下、ロータ6の回転方向(図2の時計回り方向。以下、単に回転方向という。)において隣り合うベーン7同士の間(2つのベーン7の側面間)の距離を、1ピッチという。1つのポンプ室rの回転方向幅は、1ピッチであり不変である。
カムリング8の中心軸Pが回転軸Oに対して(x軸正方向側に)偏心した状態では、x軸負方向側からx軸正方向側に向かうにつれて、ロータ外周面60とカムリング内周面80との間のロータ径方向距離(ポンプ室rの径方向寸法)が大きくなる。この距離の変化に応じ、ベーン7がスリット61から出没することで、各ポンプ室rが隔成されるとともに、x軸正方向側のポンプ室rのほうが、x軸負方向側のポンプ室rよりも、容積が大きくなる。このポンプ室rの容積の差異により、x軸を境としてy軸負方向側では、ロータ6の回転方向(図2の時計回り方向)であるx軸正方向側に向かうにつれて、ポンプ室rの容積が拡大する一方、x軸を境としてy軸正方向側では、ロータ6の回転方向(図2の時計回り方向)であるx軸負方向側に向かうにつれて、ポンプ室rの容積が縮小する。
【0016】
〔プレートの構成〕
図3は、プレート41をz軸正方向側から見た平面図である。プレート41には、吸入ポート43と、吐出ポート44と、吸入側背圧ポート45と、吐出側背圧ポート46と、ピン設置孔47と、貫通孔48とが形成されている。ピン設置孔47にはピン10が挿入され固定設置される。貫通孔48には駆動軸5が挿入され回転自在に設置される。
【0017】
(吸入ポートの構成)
吸入ポート43は、外部から吸入側のポンプ室rに作動油を導入する際の入り口となる部分であり、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が拡大するy軸負方向側の区間に設けられている。吸入ポート43は、吸入側円弧溝430と吸入孔431,432とを有している。吸入側円弧溝430は、プレート41のz軸正方向側の面410に形成され、ポンプ吸入側の油圧が導入される溝であって、吸入側のポンプ室rの配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。
吸入側円弧溝430に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して吸入側円弧溝430のx軸負方向側の始点Aとx軸正方向側の終点Bとがなす略4.5ピッチ分に相当する角度αの範囲に、ベーンポンプ1の吸入領域が設けられている。吸入側円弧溝430の始点Aおよび終点Bは、x軸に対して略0.5ピッチに相当する角度βだけy軸負方向側に離れた位置に設けられている。
吸入側円弧溝430の終端部436は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入側円弧溝430の始端部には、回転負方向に凸の略半円弧状に形成された本体始端部433と、本体始端部433に連続するノッチ434とが形成されている。ノッチ434は、本体始端部433からポンプ回転方向と回転負方向に延びるように、略0.5ピッチの長さだけ形成されており、その先端は始点Aと一致している。吸入側円弧溝430のロータ径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられている(図2参照)。
吸入側円弧溝430のロータ内径側の縁437は、ロータ外周面60(突出部62を除く)よりも若干ロータ外径側に位置する。吸入側円弧溝430のロータ外径側の縁438は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも若干ロータ外径側に位置し、その終端側で、最大偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも僅かにロータ外径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、吸入側の各ポンプ室rは、z軸方向から見て吸入側円弧溝430と重なり、吸入側円弧溝430と連通している。
【0018】
吸入側円弧溝430の回転方向略中央には、吸入孔431が開口している。吸入孔431は、z軸方向から見て略長円状であり、ロータ径方向幅が吸入側円弧溝430と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入孔431は、プレート41をz軸方向に貫通して、y軸と重なる位置に形成されている。
吸入孔432は、吸入孔431と同様の形状であり、プレート41をz軸方向に貫通している。吸入側円弧溝430は、本体始端部433と吸入孔431,432との間、および終端部436において、プレート41の(z軸方向)厚さの20%弱の(z軸方向)深さを有している。
本体始端部433から吸入孔432までの間は、傾斜が設けられており、回転方向に徐々に深くなり、吸入孔432に達する部位ではプレート41の厚さと同じ深さとなるように形成されている。吸入孔431から終端部436までの間は、傾斜が設けられており、回転方向に徐々に浅くなり、終端部436に達する部位では本体始端部433と同じ深さとなるように形成されている。
ノッチ434は、z軸方向から見て、回転方向に向かうにつれて徐々にロータ径方向幅が大きくなる略鋭三角形状に設けられている。ノッチ434のロータ径方向幅の最大値は、吸入側円弧溝430の幅よりも小さく設けられている。ノッチ434の(z軸方向)深さは、回転方向に向かうにつれてゼロからプレート41の厚さの数%まで徐々に増加する。すなわち、ノッチ434の流路断面積は、吸入側円弧溝430の本体部よりも小さく、ノッチ434は、回転方向に流路断面積が徐々に大きくなる絞り部を構成している。
【0019】
(吐出ポートの構成)
吐出ポート44は、吐出側のポンプ室rから外部へ作動油を吐出する際の出口となる部分であり、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が縮小するy軸正方向側の区間に設けられている。吐出ポート44は、吐出側円弧溝440と吐出孔441,442とを有している。吐出側円弧溝440は、第1プレート41の面410に形成され、ポンプ吐出側の油圧が導入される溝であって、吐出側のポンプ室rの配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。
吐出側円弧溝440に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して吐出側円弧溝440のx軸正方向側の始点Cとx軸負方向側の終点Dとがなす角度αの範囲に、ベーンポンプ1の吐出領域が設けられている。吐出側円弧溝440の始点Cおよび終点Dは、x軸に対して略0.5ピッチ分に相当する角度βだけy軸正方向側に離れた位置に設けられている。
吐出側円弧溝440のロータ径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝430のロータ径方向幅よりも若干小さい。吐出側円弧溝440のロータ内径側の縁446は、(突出部62を除く)ロータ外周面60よりも若干ロータ外径側に位置する。吐出側円弧溝440のロータ外径側の縁447は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80と略重なる。吐出側の各ポンプ室rは、カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て吐出側円弧溝440と重なり、吐出側円弧溝440と連通している。
吐出側円弧溝440の回転方向側の終端部444には、吐出孔442が開口している。吐出孔442は、z軸方向から見て略長円状であり、ロータ径方向における幅が吐出側円弧溝440と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチよりも若干長い。吐出孔442は、プレート41をz軸方向に貫通して形成されている。吐出孔442の回転方向側縁は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されており、終端部444の回転方向側縁と一致している。
【0020】
吐出側円弧溝440の始端部443は、始点Cから吐出孔441の回転負方向側の縁445まで延びて形成されている。縁445は、z軸方向から見て、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されており、その先端Eは、始点Cから回転方向に略1ピッチの距離をおいた位置にある。回転方向で吸入側円弧溝430の終点Bと対向する始端部443の先端は、z軸方向から見て略矩形状に形成されており、ロータ径方向に延びる縁を有している。
吐出側円弧溝440の吐出孔441,442との間に設けられた本体部448の(z軸方向)深さは、プレート41の(z軸方向)厚さの略25%である。始端部443は本体部448よりも溝深さが浅く、始点Cから縁445に至るまで傾斜が設けられている。始点Cでの溝深さは0で、縁445に向かうにつれて徐々に深くなり、縁445に達する部位では第1プレート41の厚さの10%弱の深さとなる。
始端部443は、その流路断面積が本体部448よりも小さく、かつ回転方向に向かうにつれて徐々に(z軸方向)深さが大きくなる形状に設けられており、回転方向に流路断面積が徐々に大きくなる絞り部を構成している。吸入側円弧溝430の終点Bと吐出側円弧溝440の始点Cとの間の面410には溝が設けられておらず、この区間に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して終点Bと始点Cとがなす角度2βの範囲に、ベーンポンプ1の第1閉じ込み領域が設けられている。第1閉じ込み領域の角度範囲は、略1ピッチ分に相当する。
同様に、吐出側円弧溝440の終点Dと吸入側円弧溝430の始点Aとの間の面410には溝が設けられておらず、この区間に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して終点Dと始点Aとがなす角度2βの範囲に、第2閉じ込み領域が設けられている。第2閉じ込み領域の角度範囲は、略1ピッチ分に相当する。
【0021】
(閉じ込み領域)
第1閉じ込み領域および第2閉じ込み領域は、この領域内にあるポンプ室rの作動油を閉じ込め、吐出側円弧溝440と吸入側円弧溝430とが連通することを抑制する部分であり、x軸に跨る区間に設けられている(図3参照)。
(背圧ポート)
プレート41には、ベーン7の根元(背圧室br、スリット基端部610)に連通する背圧ポート45,46が、吸入側と吐出側でそれぞれ分離して設けられている(図3参照)。
【0022】
〈吸入側背圧ポート〉(図3参照)
吸入側背圧ポート45は、吸入領域の大部分に位置する複数のベーン7の背圧室brと吸入ポート43とを連通するポートである。ベーン7が「吸入領域に位置する」とは、z軸方向から見て、ベーン7のベーン先端部70が吸入ポート43(吸入側円弧溝430)と重なっていることをいう。吸入側背圧ポート45は、吸入側背圧円弧溝450と吸入孔451とを有している。
吸入側背圧円弧溝450は、プレート41の面410に形成され、ポンプ吸入側の油圧が導入される溝であって、ベーン7の背圧室br(ロータ6のスリット基端部610)の配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吸入側背圧円弧溝450は、略3ピッチ分に相当する角度の範囲(吸入側円弧溝430よりも狭い範囲)で形成されている。
吸入側背圧円弧溝450の始点aは、吸入側円弧溝430(ノッチ434)の始点Aよりも若干回転方向側であって本体始端部433の回転方向側に隣接する位置にある。吸入側背圧円弧溝450の終点bは、吸入側円弧溝430の終点Bよりも回転負方向側に略1.5ピッチ分に相当する角度だけ離れた位置にある。吸入側背圧円弧溝450のロータ径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝430と略等しく、スリット基端部610のロータ径方向寸法と略等しい。
吸入側背圧円弧溝450のロータ内径側の縁454は、スリット基端部610のロータ内径側縁よりも若干ロータ内径側に位置する。吸入側背圧円弧溝450のロータ外径側の縁455は、スリット基端部610のロータ外径側縁よりも僅かにロータ内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吸入側背圧円弧溝450は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なるロータ径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。
吸入側背圧円弧溝450の回転負方向寄り(始点a側)には、ロータ径方向で吸入側円弧溝430の吸入孔432と重なる位置に、吸入孔451が開口している。吸入孔451は、z軸方向から見て略長円状であり、ロータ径方向における幅が吸入側背圧円弧溝450と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入孔451は、プレート41をz軸方向に貫通して形成されており、後述するリアボディ40の低圧室491を介して吸入側円弧溝430の吸入孔431と連通している。
吸入側背圧円弧溝450において、始点aから吸入孔451までの間には、始端部452が設けられている。z軸方向から見て、始端部452の先端は、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入側背圧円弧溝450の終端部453は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。始端部452の(z軸方向)深さは、プレート41の厚さの40%弱であり、終端部453の深さは、プレート41の厚さの20%弱である。終端部453から吸入孔451までの区間には傾斜が設けられており、回転負方向に連通孔451に向かうにつれて徐々に深くなり、吸入孔451に達する部位ではプレート41の厚さと同じ深さとなるように形成されている。
【0023】
〈吐出側背圧ポート〉(図3参照)
吐出側背圧ポート46は、吐出領域、第1閉じ込み領域、第2閉じ込み領域の大半、および吸入領域の一部に位置する複数のベーン7の背圧室brと、吐出ポート44とを連通するポートである。ベーン7が「吐出領域等に位置する」とは、z軸方向から見て、ベーン7のベーン先端部70が吐出ポート44(吐出側円弧溝440)等と重なっていることをいう。吐出側背圧ポート46は、吐出側背圧円弧溝460と連通孔461とを有している。
吐出側背圧円弧溝460は、プレート41の面410に形成され、ポンプ吐出側の油圧が導入される溝であって、ベーン7の背圧室br(スリット基端部610)の配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吐出側背圧円弧溝460は、略7ピッチ分に相当する角度の範囲(吐出側円弧溝440よりも広い範囲)で形成されている。
吐出側背圧円弧溝460は吸入領域まで臨むように形成されており、吐出側背圧円弧溝460の始点cは、吐出側円弧溝440の始点Cよりも回転負方向側に、第1閉じ込み領域を越え、さらに吸入側円弧溝430の終点Bよりも回転負方向側に位置している。始点cは、終点Bから略1ピッチの(2βに相当する)距離をおいた位置にある。
吐出側背圧円弧溝460の終点dは、吐出側円弧溝440の終点Dよりも回転方向側に1ピッチ弱に相当する角度だけ離れており、第2閉じ込み領域の終端部近くに位置している。
吐出側背圧円弧溝460のロータ径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吐出側円弧溝440よりも僅かに小さく、スリット基端部610のロータ径方向寸法よりも若干小さい。
【0024】
吐出側背圧円弧溝460のロータ内径側の縁464は、スリット基端部610のロータ内径側縁よりも若干ロータ外径側に位置する。吐出側背圧円弧溝460のロータ外径側の縁465は、スリット基端部610のロータ外径側縁よりも僅かにロータ内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吐出側背圧円弧溝460は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なるロータ径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。
吐出側背圧円弧溝460の回転負方向寄り(始点c側)には、第1閉じ込み領域の始端側において、吸入側円弧溝430の終点Bとx軸(第1閉じ込み領域の中間点)とに挟まれた角度位置に、連通孔461が開口している。連通孔461の直径は、吐出側背圧円弧溝460のロータ径方向幅と略等しい。連通孔461は、プレート41内をz軸負方向側に向かうにつれてロータ外径側に位置するように、z軸方向に対して斜めにプレート41を貫通して形成されている。連通孔461は、第1プレート41のz軸負方向側の面に開口し、後述するリアボディ40の高圧室492を介して吐出ポート44(吐出側円弧溝440)の吐出孔441と連通している。吐出側背圧円弧溝460は、始端部462と背圧ポート本体部468を有している。
【0025】
〔リアボディの詳細〕
図4は、リアボディ40をz軸正方向側から見た図である。リアボディ40の底部402には、貫通孔490、低圧室491、高圧室492、吐出室493が形成されている。
貫通孔490には、駆動軸5が挿入され回転自在に設置される。低圧室491は、底部402に凹状に形成されている。この低圧室491の開口部は、プレート41に形成された吸入ポート43の吸入孔431,432および吸入側背圧ポート45の吸入孔451のz軸負方向側開口部を覆うように設けられている。すなわち、吸入ポート43および吸入側背圧ポート45は低圧室491を介して連通しており、吸入ポート43および吸入側背圧ポート45には吸入圧が作用することとなる。
高圧室492は、底部402に凹状に形成されている。この高圧室492の開口部は、プレート41に形成された吐出ポート44の吐出孔441および吐出側背圧ポート46の連通孔461のz軸負方向側開口部を覆うように設けられている。すなわち、吐出ポート44および吐出側背圧ポート46は高圧室492を介して連通しており、吐出ポート44および吐出側背圧ポート46には吐出圧が作用することとなる。
吐出室493は、底部402に凹状に形成されている。この吐出室493の開口部は、プレート41に形成された吐出ポート44の吐出孔442のz軸負方向側開口部を覆うように設けられている。この吐出室493は吐出通路65(図2参照)と連通しており、この吐出通路65から高圧の作動油が吐出される。更に、高圧室492と吐出室493は連通されている。
また高圧室492と吐出室493の外周を覆うようにシール溝494が形成されている。このシール溝494にはシール部材495が設けられている。プレート41のz軸負方向側の面がリアボディ40の底部402と対向して設置された状態では、シール部材495がz軸方向に圧縮されてプレート41のz軸負方向側の面に密着し、これにより高圧室492と吐出室493とが液密に保たれる。シール部材495によって、シール部材495外部の低圧領域496とシール部材495内部の高圧領域497とが画成されている。
【0026】
〔フロントボディの詳細〕
図5は、フロントボディ42をz軸負方向側から見た図である。フロントボディ42は、z軸負方向に突出したプレート面50を有している。プレート面50には、吸入ポート51、吐出ポート52と、吸入側背圧ポート53と、吐出側背圧ポート54と、ピン設置孔55と、貫通孔56とが形成されている。ピン設置孔55にはピン10が挿入され固定設置される。貫通孔56には駆動軸5が挿入され回転自在に設置される。吸入ポート51、吐出ポート52と、吸入側背圧ポート53および吐出側背圧ポート54は、プレート41に形成された吸入ポート43と、吐出ポート44と、吸入側背圧ポート45と、吐出側背圧ポート46と対応する位置に形成されている。
(吸入ポートの構成)(図5参照)
吸入ポート51は、吸入側のポンプ室rと連通しており、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が拡大するy軸負方向側の区間に設けられている。吸入ポート51は、吸入側円弧溝510と吸入孔511,512とを有している。吸入側円弧溝510は、吸入側のポンプ室rの配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。
吸入側円弧溝510の終端部516は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入側円弧溝510の始端部515には、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入側円弧溝510のロータ径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられている。
吸入側円弧溝510のロータ内径側の縁517は、ロータ外周面60(突出部62を除く)よりも若干ロータ外径側に位置する。吸入側円弧溝510のロータ外径側の縁518は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも若干ロータ外径側に位置し、その終端側で、最大偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも僅かにロータ外径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、吸入側の各ポンプ室rは、z軸方向から見て吸入側円弧溝510と重なり、吸入側円弧溝510と連通している。
吸入側円弧溝510の回転方向終端部から中央部付近にかけて吸入孔511が開口している。吸入孔511は、ロータ径方向幅が吸入側円弧溝510と略等しく、回転方向における長さが略3ピッチである。吸入孔511は、フロントボディ42に形成された吸入通路64に接続されており、この吸入通路64から作動油が供給される。
吸入側円弧溝510には、吸入孔511に隣接して回転方向終端側に、吸入孔512が開口している。吸入孔512は、ロータ径方向幅が吸入側円弧溝510と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入孔512も、フロントボディ42に形成された吸入通路64に接続されている。
【0027】
(吐出ポートの構成)(図5参照)
吐出ポート52は、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が縮小するy軸正方向側の区間に設けられている。吐出ポート52は、ノッチ521を有する吐出側円弧溝520を有している。吐出側円弧溝520は、吐出側のポンプ室rの配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。
吐出側円弧溝520のロータ径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝510のロータ径方向幅よりも若干小さい。吐出側円弧溝520のロータ内径側の縁526は、ロータ外周面60(突出部62を除く)よりも若干ロータ外径側に位置する。吐出側円弧溝520のロータ外径側の縁527は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80と略重なる。吐出側の各ポンプ室rは、カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て吐出側円弧溝520と重なり、吐出側円弧溝520と連通している。
吐出側円弧溝520の回転負方向側の端部には、ノッチ521が形成されている。このノッチ521は、吐出側円弧溝520よりも深さが浅く形成されている。
吐出側円弧溝520の回転正方向側端部は、回転正方向に向かって凸の略半円状に形成されている。また吐出側円弧溝520の回転負方向側であって、ノッチ521との境部分は回転負方向に向かって凸の略半円状に形成されている。またノッチ521の回転負方向側の縁は、矩形に形成されている。
【0028】
(吸入側背圧ポートの構成)(図5参照)
プレート面51には、ベーン7の根元(背圧室br、スリット基端部610)に連通する背圧ポート53,54が、吸入側と吐出側でそれぞれ分離して設けられている。吸入側背圧ポート53は、吸入領域の大部分に位置する複数のベーン7の背圧室brと吸入ポート51とを連通するポートである。吸入側背圧ポート53は、吸入側背圧円弧溝530と吸入孔531とを有している。
吸入側背圧円弧溝530は、ベーン7の背圧室br(ロータ6のスリット基端部610)の配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吸入側背圧円弧溝530は、略3ピッチ分に相当する角度の範囲(吸入側円弧溝510よりも狭い範囲)で形成されている。
吸入側背圧円弧溝530のロータ径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝510と略等しく、スリット基端部610のロータ径方向寸法と略等しい。
吸入側背圧円弧溝530のロータ内径側の縁534は、スリット基端部610のロータ内径側縁よりも若干ロータ内径側に位置する。吸入側背圧円弧溝530のロータ外径側の縁515は、スリット基端部610のロータ外径側縁よりも僅かにロータ内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吸入側背圧円弧溝530は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なるロータ径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。
吸入側背圧円弧溝530の回転負方向寄りには、ロータ径方向で吸入側円弧溝510の吸入孔512と重なる位置に、吸入孔531が開口している。吸入孔531は、z軸方向から見て略長円状であり、ロータ径方向における幅が吸入側背圧円弧溝530と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。
z軸方向から見て、吸入側背圧円弧溝530の回転方向両側は回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。
【0029】
(吐出側背圧ポートの構成)(図5参照)
吐出側背圧ポート54は、吐出側背圧円弧溝540とオリフィス溝541とを有している。
吐出側背圧円弧溝540は、ベーン7の背圧室br(スリット基端部610)の配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吐出側背圧円弧溝540は、略7ピッチ分に相当する角度の範囲(吐出側円弧溝520よりも広い範囲)で形成されている。
吐出側背圧円弧溝540は吸入領域まで臨むように形成されており、吐出側背圧円弧溝540の始点は、吐出側円弧溝520の始点よりも回転負方向側に、第1閉じ込み領域を越え、さらに吸入側円弧溝510の終点よりも回転負方向側に位置している。
吐出側背圧円弧溝540の終点は、吐出側円弧溝520の終点よりも回転方向側にまで形成されており、第2閉じ込み領域の終端部近くに位置している。
吐出側背圧円弧溝540のロータ径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吐出側円弧溝520よりも僅かに小さく、スリット基端部610のロータ径方向寸法よりも若干小さい。
吐出側背圧円弧溝540のロータ内径側の縁544は、スリット基端部610のロータ内径側縁よりも若干ロータ外径側に位置する。吐出側背圧円弧溝540のロータ外径側の縁545は、スリット基端部610のロータ外径側縁よりも僅かにロータ内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吐出側背圧円弧溝540は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なるロータ径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。
吐出側背圧円弧溝540の回転正方向側端部は、回転正方向に向かって凸の略半円状に形成されている。また吐出側背圧円弧溝540の回転負方向側であって、ノッチ521との境部分は矩形に形成されている。またオリフィス溝541の回転負方向側の縁は、矩形に形成されている。
【0030】
(潤滑油溝)(図5参照)
吐出ポート52の吐出側円弧溝520の回転正方向側端には、第2閉じ込み領域であって吸入ポート51、吐出ポート52よりも外周側に連通する潤滑油溝57が形成されている。また吐出側円弧溝520の回転正方向側には、第1閉じ込み領域であって吸入ポート51、吐出ポート52よりも外周側に連通する潤滑油溝58が形成されている。この潤滑油溝57,58から作動油が潤滑油として揺動するカムリング8とプレート面50との間に供給される。
吸入ポート51の外周には、潤滑油溝59が形成されている。この潤滑油溝59は、潤滑油吸入孔591から第1制御室R1の作動油を潤滑油として揺動するカムリング8とプレート面50との間に供給する。
【0031】
〔制御部の詳細〕
図2に戻って説明すると、制御部3は、リアボディ40に設けられており、制御弁30と第1、第2通路31,32と制御室R1,R2とを有している。制御弁30は第1制御室R1と第2制御室R2への作動流体の流入・流出を制御するスプール弁であり、リアボディ40内の収容孔401に収容されたスプール302と、スプール302をソレノイド301側に付勢するスプリング303と、スプリング303のリテーニング位置(スプリングセット荷重)を調整する調整機構304と、スプール302のスプリング303の荷重方向と反対方向に要求に応じた付勢力を付与するソレノイド301のプランジャ301aとを有する。
収容孔401のx軸正方向側の端部には、後述するメータリングオリフィス700の上流側の吐出圧が供給される上流側ポート401aが形成されている。この上流側ポート401aよりx軸負方向側に隣接して第1通路31が開口しており、その間をスプール302の第1ランド部302aにより連通もしくは遮断可能に配置されている。一方、収容孔401のx軸負方向側の端部には、後述するメータリングオリフィス700の下流側の吐出圧(すなわち、CVTに吐出される圧)が供給される下流側ポート401bが形成されている。この下流側ポート401bよりx軸正方向側に隣接して第2通路32が開口しており、その間をスプール302の第2ランド部302bにより連通もしくは遮断可能に配置されている。
図6は実施例1の制御部及び制御室との関係を表す概略図である。吐出室493と吐出通路65とを結ぶ通路上には、メータリングオリフィス700よりも上流側において分岐し、上流側ポート401aに接続される上流側油路65aと、メータリングオリフィス700よりも下流側において分岐し、下流側ポート401bに接続される下流側油路65bとを有する。
【0032】
ここで、調整機構304について詳述する。リアボディ40には、収容孔401のx軸負方向側の端部において、リアボディ外部に貫通すると共に内周にねじが形成された調整用ねじ穴401cが形成されている。この調整用ねじ穴401cの形成されたリアボディ40の外壁面には、調整用ねじ穴401cを中心として取り囲む平滑面401dが形成されている。調整用ねじ穴401cには、外周に調整用ねじ穴401cと螺合するねじが形成された円柱状の位置決めボルト304aが取り付けられている。位置決めボルト304aは、収容孔401内に臨む端部にスプリング303を保持する突起304a1を有し、スプリング303の径方向への脱落を防止する。また、他端にはドライバ等の工具と係合する切りこみ等が形成され、リアボディ40に対する軸方向位置を調整可能としている。位置決めボルト304aには、軸方向の位置決め後にリアボディ40に対して固定するナット304bが取り付けられている。ナット304bを締め付けることで、平滑面401dとの間に軸力を発生することができ、位置決めボルト304aをリアボディ40の調整用ねじ穴401cにしっかりと固定すると共にシール性を確保する。
【0033】
[作用]
実施例1のベーンポンプ1の作用を説明する(図3参照)。
(ポンプ作用)
カムリング8を回転軸Oに対してx軸正方向に偏心して配置した状態でロータ6を回転させることにより、ポンプ室rは回転軸周りに回転しつつ周期的に拡縮する。ポンプ室rが回転方向に拡大するy軸負方向側で、吸入ポート43からポンプ室rに作動油を吸入し、ポンプ室rが回転方向に縮小するy軸正方向側で、ポンプ室rから吐出ポート44へ上記吸入した作動油を吐出する。
具体的には、あるポンプ室rに着目すると、吸入領域において、このポンプ室rの回転負方向側のベーン7(以下、後側ベーン7)が吸入側円弧溝430の終点Bを通過するまで、言い換えると、回転正方向側のベーン7(以下、前側ベーン7)が吐出側円弧溝440の始点Cを通過するまで、当該ポンプ室rの容積は増大する。この間、当該ポンプ室rは吸入側円弧溝430と連通しているため、作動油を吸入ポート43から吸入する。
第1閉じ込み領域において、当該ポンプ室rの後側ベーン7(の回転正方向側の面)が吸入側円弧溝430の終点Bと一致し、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が吐出側円弧溝440の始点Cと一致する回転位置では、当該ポンプ室rは吸入側円弧溝430とも吐出側円弧溝440とも連通せず、液密に確保される。
当該ポンプ室rの後側ベーン7が吸入側円弧溝430の終点Bを通過(前側ベーン7が吐出側円弧溝440の始点Cを通過)した後は、吐出領域において、回転に応じて当該ポンプ室rの容積は減少し、吐出側円弧溝440と連通するため、ポンプ室rから作動油を吐出ポート44へ吐出する。
第2閉じ込み領域において、当該ポンプ室rの後側ベーン7(の回転正方向側の面)が吐出側円弧溝440の終点Dと一致し、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が吸入側円弧溝430の始点Aと一致する位置では、当該ポンプ室rは吐出側円弧溝440とも吸入側円弧溝430とも連通せず、液密に確保される。
【0034】
実施例1では、第1、第2閉じ込み領域の範囲がそれぞれ1ピッチ分(1つのポンプ室rの分)だけ設けられているため、吸入領域と吐出領域とが連通することを抑制しつつ、ポンプ効率を向上することができる。なお、閉じ込み領域(吸入ポート43と吐出ポート44の間隔)を1ピッチ以上の範囲にわたって設けることとしてもよい。言い換えると、閉じ込み領域の角度範囲は、吐出領域と吸入領域を連通させない範囲であれば、任意に設定可能である。
なお、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が第1閉じ込み領域から吐出領域へ移行するとき、始端部443の絞り作用により、ポンプ室rと吐出側円弧溝440の連通が急激に行われないため、吐出ポート44およびポンプ室rの圧力の変動が抑制される。すなわち、高圧の吐出ポート44から低圧のポンプ室rへ作動油が急激に流入することが抑制されるため、吐出ポート44から吐出孔442を介して接続された外部の配管に供給される流量の急激な減少が抑制される。よって、配管における圧力変動(油撃)を抑制することができる。また、ポンプ室rに供給される流量の急激な増加が抑制されるため、ポンプ室rにおける圧力変動も抑制することができる。なお、始端部443を適宜省略することとしてもよい。
また、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が第2閉じ込み領域から吸入領域へ移行するとき、ノッチ434の絞り作用により、ポンプ室rと吸入側円弧溝430の連通が急激に行われないため、吸入ポート43およびポンプ室rの圧力の変動が抑制される。すなわち、ポンプ室rの容積が一気に増大することが抑制され、高圧のポンプ室rから低圧の吸入ポート43へ作動油が急激に流出することが抑制されるため、気泡の発生(キャビテーション)を抑制することができる。なお、ノッチ434を適宜省略することとしてもよい。
【0035】
(容量可変作用)
まず、ソレノイド301が非作動状態について図6及び図7を参照しながら説明する。図7は、実施例1の可変容量型ベーンポンプの回転数と吐出流量との関係を表す特性図である。スプール302には、スプリング303により初期セット荷重がx軸正方向側に付与されており、ポンプ作動初期の比較的流量が少ない状態では、メータリングオリフィス700の前後差圧はさほど大きくなく、スプリング303の荷重によってスプール302はx軸正方向側に付勢されるため、第1ランド部302aは上流側ポート401aと第1通路31とを遮断し、第2ランド部302bは下流側ポート401bと第2通路32とを連通する。これにより、第1制御室R1には吐出圧は供給されず、第2制御室R2に吐出圧が供給されるため、カムリング8は偏心状態となってポンプ吐出流量は回転数に応じて増大する(図7の固定容量域(a)参照)。
ポンプの吐出流量が増大すると、メータリングオリフィス700の上流側と下流側との間の差圧が大きくなり、上流側が下流側よりも高圧となる。このとき、スプール302の第1ランド部302aにx軸負方向側に作動させる大きな力が作用し、スプリング303の初期セット荷重及び第2ランド部302bに作用するx軸正方向側の力との合計を上回る力が作用し始める。そして、第1ランド部302aは上流側ポート401aと第1通路31とを連通し、第2ランド部302bは下流側ポート401bと第2通路32とを遮断する。これにより、第1制御室R1にはメータリングオリフィス700より上流側の高い吐出圧が供給され、第2制御室R2には吐出圧の供給がされなくなるから、カムリング8の偏心量が小さくなり、ポンプ回転数が上昇してもポンプ吐出流量は増大しない。ポンプ吐出流量が減少しすぎると、メータリングオリフィス700の上流側と下流側との差圧が小さくなるから、再度カムリング8が偏心し、適宜吐出流量の増大が図られる(図7の吐出流量制御域(b)参照)。
【0036】
ソレノイド301が非作動状態にあっては、スプリング303の初期セット荷重に対向する力が油圧のみであるため、吐出流量が大きくならないと、メータリングオリフィス700の上下において十分な差圧が確保できない。よって、比較的高い吐出流量を達成した後、一定の流量を維持する。次に、ソレノイド301に所定の付勢力を発生させるべく通電すると、スプリング303の初期セット荷重を小さく変更したのと同じ作用が得られるため、非作動時よりも早いタイミングでスプール302が切り替わる。よって、メータリングオリフィス700の上下において大きな差圧が無くとも、僅かな差圧でスプール302が作動し、比較的低い吐出流量を達成した後、一定の流量を維持する。すなわち、ソレノイド301の発生する付勢力によって吐出流量を制御することができる。CVTコントロールユニット300では、アクセル開度、エンジン回転数、車速といった走行状況に応じてライン圧を適宜制御する。よって、高い吐出流量が要求されたときは、ソレノイド301に通電する電流(電磁力)をOFFもしくは小さくし、低い吐出流量が要求されたときは、ソレノイド301に通電する電流(電磁力)を大きくする。
【0037】
(調整機構に関する作用)
次に、調整機構304を備えた理由について説明する。上述したように、実施例1の可変容量型ベーンポンプは、所定の吐出流量に到達すると、制御弁30の作動により一定の吐出流量に制御する。この吐出流量をどこで一定とするかは、ソレノイド301に通電する電流値と、スプリング303の初期セット荷重との関係で決定される。ここで、スプリング303の初期セット荷重とは、スプリング303のバネ定数と縮み量で決まるため、バネ特性のばらつきの影響を受けやすい。このばらつきに対応すべく、例えば、ソレノイド301で通電する電流値を補正することで吐出流量を制御することが考えられる。しかしながら、制御上での対応をする場合には、制御ロジック内に補正ロジックを組み込む必要があり、CVTコントロールユニット300の開発とポンプの開発とを別々に行うような場合、ロジックの変更や追加等を要求するのは困難な場合が多い。また、電流値で調整する場合には、不要な電流値を流す必要に迫られた場合には、最終的に燃費悪化の原因ともなる。
そこで、初期セット荷重を機械的に構成された調整機構304により調整することとした。すなわち、位置決めボルト304aは、収容孔401に対して軸方向位置を調整できるため、例えば初期セット荷重が小さいと考えられるときは、位置決めボルト304aを収容孔401内に更にねじ込み、その位置でナット304bを締め付ける。これにより、スプリング303の縮み量を制御することができ、初期セット荷重を機械的に微調整することができ、特段の制御ロジックの変更や追加を要求する必要がない。
【0038】
また、実施例1の可変容量型ベーンポンプは、自動変速機の油圧供給用として使用されるため、ソレノイド301等の故障時には、最大吐出流量を確保することが望ましい。吐出流量不足は、自動変速機内でのベルト滑りやクラッチ等の締結力不足によるスリップを招くおそれがあり、耐久性に影響を与えるような2次故障を引き起こしかねないからである。そのためには、スプリング303の初期セット荷重が作用する方向と対向する位置にソレノイド301を設置することになる。言い換えると、スプリング303とソレノイド301とはスプール302を介して対抗する位置に配置することになり、スプリング303が設置される位置は、リアボディ40以外の構成が特に必要とされないため、調整用ねじ穴401cを容易に形成することができる。
【0039】
[効果]
以下、実施例1から把握されるベーンポンプ1の効果を列挙する。
(1)駆動軸5により回転駆動されるロータ6と、ロータ6の外周に形成された複数のスリット61のそれぞれに突没可能に収容されたベーン7と、ロータ6を囲んで配置されるカムリング8と、収容孔400内にカムリング8、ロータ6およびベーン7を収容するリアボディ40と、リアボディ40の収容孔400を閉塞するとともに、カムリング8、ロータ6およびベーン7とともに複数のポンプ室rを形成するフロントボディ42と、プレート41およびフロントボディ42の側面であって、ロータ6およびベーン7と対向する対向側面に形成され、ロータ6の回転に応じて複数のポンプ室rの容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポート43,51と、対向側面に形成され、ロータ6の回転に応じて複数のポンプ室rの容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポート44,52と、吐出ポート44,52から排出される作動油によってカムリング8の揺動量を制御する制御弁30と、を設け、制御弁30は、カムリング8の揺動を制御する第1制御室R1及び第2制御室R2への油路を切り替えるスプール302と、スプール302に初期セット荷重(所定の荷重)を付与するスプリング303(弾性体)と、スプール302の作動方向に所望の付勢力を付与するソレノイド301と、スプリング303の縮み量(弾性体への所定の荷重)を調整する調整機構304と、を有する。
よって、スプリング303の初期セット荷重を調整することが可能となり、制御が複雑化することなく安定した吐出流量を得ることができる。尚、弾性体としてスプリングを用いたが、例えばゴムや樹脂等の弾性力を利用してもよい。また、所定の荷重をスプリングの縮み量により調整したが、スプリングの特性変更や他の手段により荷重を調整するように構成しても本発明に含まれる。
【0040】
(2)ソレノイド301は、スプール302を挟んでスプリング303と対向する位置に設けられている。よって、調整機構304を設ける際にソレノイド301の構成が邪魔になることがなく、容易に調整機構304を配置することができる。
【0041】
(3)吐出ポートから排出される作動油は、CVTにおいて使用される作動油であり、ソレノイド301は、CVTの要求に応じ、要求された吐出流量が大きいときは小さな電流が流れ、要求された吐出流量が小さいときは大きな電流が流れる。ソレノイド等のフェール時には、CVTにおいて二次故障を回避する観点から吐出流量として高い値が望ましい。このとき、ソレノイド非作動時には吐出流量が最大となることで、高い信頼性を確保することができる。
【0042】
(4)調整機構304は、リアボディ40内にスプール302を収容する収容孔401と、該収容孔401からリアボディ40外部に貫通すると共に内周にねじが形成された調整用ねじ穴401cと、外周に調整用ねじ穴401cと螺合するネジが形成され、スプリング303の端部と当接する円柱状の位置決めボルト304a(調整用部材)と、外部から位置決めボルト304aをリアボディ40に対して固定するナット304b(固定手段)と、を備えた。よって、簡単な構成で初期セット荷重を調整することができる。尚、調整用部材としては、ボルト等に限らず例えばカシメや、接着剤等によりリアボディに対して調整用部材を固定できれば、ナットのような固定手段が無い場合であっても本発明に含まれる。
〔他の実施例〕
以上、本発明の可変容量型ベーンポンプを実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 ベーンポンプ
6 ロータ
7 ベーン
8 カムリング
30 制御弁
40 リアボディ
41 プレート
42 フロントボディ
43 吐出ポート
44 吸入側背圧ポート
45 吐出側背圧ポート
51 吸入ポート
52 吐出ポート
53 吸入側背圧ポート
54 吐出側背圧ポート
61 スリット
304 調整機構
400 収容孔
402 底部
r ポンプ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸により回転駆動されるロータと、
前記ロータの外周に形成された複数のスリットのそれぞれに突没可能に収容されたベーンと、
前記ロータを取り囲んで揺動自在に配置されたカムリングと、
開口部内に前記カムリング、前記ロータおよび前記ベーンを収容するリアボディと、
前記リアボディの前記開口部を閉塞するとともに、前記カムリング、前記ロータおよび前記ベーンとともに複数のポンプ室を形成するフロントボディと、
前記ロータおよび前記ベーンと対向する対向側面に形成され、前記ロータの回転に応じて前記複数のポンプ室の容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポートと、
前記対向側面に形成され、前記ロータの回転に応じて前記複数のポンプ室の容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポートと、
前記吐出ポートから排出される前記作動油によって前記カムリングの揺動量を制御する制御弁と、
を備え、
前記制御弁は、前記カムリングの揺動を制御する制御室への油路を切り替えるスプールと、該スプールに所定の荷重を付与する弾性体と、前記スプールの作動方向に所望の付勢力を付与するソレノイドと、前記弾性体への所定の荷重を調整する調整機構と、
を有することを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のベーンポンプにおいて、
前記ソレノイドは、前記スプールを挟んで前記弾性体と対向する位置に設けられていることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベーンポンプにおいて、
前記吐出ポートから排出される作動油は、車両の自動変速機において使用される作動油であり、
前記ソレノイドは、前記自動変速機の要求に応じ、要求された吐出流量が大きいときは小さな電流が流れ、要求された吐出流量が小さいときは大きな電流が流れることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一つに記載のベーンポンプにおいて、
前記調整機構は、前記リアボディ内に前記スプールを収容する収容孔と、
該収容孔から前記リアボディ外部に貫通すると共に内周にねじが形成された調整用ねじ穴と、
外周に前記調整用ねじ穴と螺合するネジが形成され、前記弾性体の端部と当接する円柱状の調整用部材と、
外部から前記調整用部材を前記リアボディに対して固定する固定手段と、
を備えたことを特徴とするベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−87777(P2012−87777A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84793(P2011−84793)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】