説明

ペット用洗浄剤組成物

【課題】セラミド類を含有するペット用洗浄剤組成物において、セラミド類の残留性を向上させ、それにより高い洗浄力を示しつつも、ペットの皮膚を健全にすることができるペット用洗浄料を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1)等で表されるセラミド類:0.05〜2質量%


(B)非イオン界面活性剤:10〜50質量%、(C)低級アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール及び多価アルコール誘導体から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類:20〜50質量%、(D)第4級アンモニウム型陽イオン性界面活性剤:0.1〜5質量%(E)水を含有するペット用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド又はセラミド類似物質を含有する、ペット用の洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトや哺乳動物の皮膚は、外界からの微生物、化学物質、紫外線等による生物的、化学的又は物理的な侵襲を防御すると共に、水分等の生体必須成分の損失を防ぐバリアー膜として重要な機能を営んでいる。バリアー膜として機能しているのは、表皮最外層に位置する厚さ約20μmの角質層である。角質層は、レンガ状に積み重なった角質細胞を細胞間脂質がモルタルの様に繋ぎ止めることにより、強固なバリアー膜を形成している。この角質細胞間脂質の中で、セラミドはキー成分として脂質バリアーを構築し、皮膚を柔軟でみずみずしく保つために重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献1及び2参照)。
【0003】
こういった特徴を持つことから、従来セラミドはその類似物質と共に様々な化粧品等に応用されており、既にヒト用のシャンプーとして特許出願等も行われている。例えば、セラミド又はセラミド類縁体としてerythro体:threo体の比率が一定範囲にあるラセミ混合物を使用したもの(特許文献1参照)、セラミド又はグリコセラミドにアニオン性界面活性剤、双極イオン性界面活性剤及びカチオン高分子を組み合わせた、髪のもつれを解きほぐし、良好な美観や感触を与える洗浄剤組成物(特許文献2参照)、セラミド又はグリコセラミドとカチオン界面活性剤を組み合わせたカチオン分散剤(特許文献3参照)等がある。
【0004】
一方、犬や猫のようなペットは古来人間の友として繋がりを持ってきたが、特に近年ではコンパニオンアニマルとして室内でヒトと同じ環境で日常生活を行うようになってきている。そのため、ハウスダストや有害化学物質によって、皮膚状態が健全でなくなるようなケースが多く見られるようになってきている。このようなハウスダストや有害化学物質の除去を目的として、獣医師からは全身を洗うことが薦められているが、実際には洗うことにより角層の水分保持能が低下し、ドライスキン状態を誘発して、逆に症状が悪化することも認められている。角質層水分量の低減を抑制する目的でアニオン性、両性又は半極性界面活性剤に非イオン界面活性剤と特定のカチオン高分子を組み合わせた洗浄剤組成物が開示されている(特許文献4参照)が、洗浄頻度が通常は月に1回、多くても週に1回程度であるペットに対しては、このような洗浄剤で洗浄しても、満足な結果を得ることはできなかった。斯かる事情を鑑み、本発明者らはヒトの角質層に適用されているセラミド又はセラミド類似物質(以下、「セラミド類」という)を、アニオン又は非イオン界面活性剤、カチオン性重合体又は両性重合体、及び一定のアルコール類と共に水中に共存させた組成物が、ペットに対しても高い洗浄力を示し、洗浄後の皮膚からの水分の蒸散を抑制し、その結果としてペットの皮膚を健全にすることができるペット用全身洗浄料を開示している(特許文献5、6参照)。これにより、週に2回の洗浄頻度でペットに対して高い洗浄力を有し、ペットの皮膚を健全に保つことができるようになった。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2,673,179号明細書
【特許文献2】特開平8−59443号公報
【特許文献3】特表平6−502660号公報
【特許文献4】特開2004−35524号公報
【特許文献5】特開2005−289820号公報
【特許文献6】特開2008−127278号公報
【非特許文献1】Downing D.T., et al., J.Lipid.Res.,24, 759 (1983)
【非特許文献2】Downing D.T., et al., J.Invest.Dermat.,84, 410 (1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来よりもさらにセラミド類の残留性を向上させ、それにより週に1回の洗浄頻度でも高い洗浄力を示し、ペットの皮膚を健全にすることができるペット用洗浄料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ヒトの角質層に適用されているセラミド又はセラミド類似物質(以下、「セラミド類」という)を、非イオン界面活性剤、特定の構造を有する陽イオン性界面活性剤、及び一定のアルコール類と共に水中に共存させた組成物が、上記要求を満たすものであることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(E)
(A)一般式(1)又は(2)で表されるセラミド類:0.05〜2質量%
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1はヒドロキシ基、オキソ基若しくはアミノ基が置換してもよい炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し、Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し、破線はZがメチン基である場合の不飽和結合を示し、Y1は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、又は隣接する酸素原子とともにオキソ基を形成し、Y2、Y3及びY4は各々独立して水素原子、ヒドロキシ基又はアセトキシ基を示し(但し、Zがメチン基であるとき、Y2とY3は一方が水素原子で他方は存在せず、−O−Y1がオキソ基であるとき、Y4は存在しない)、R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、R4はヒドロキシ基、オキソ基又はアミノ基が置換してもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、R5は水素原子を示すか、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す(但し、R1が水素原子でZが酸素原子であるとき、R5はヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数10〜30の炭化水素基であり、R1が水素原子以外の基であるとき、R5は水素原子あるいは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数1〜30の炭化水素基である)。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R6は水酸基及び/又はアルコキシ基が置換していてもよい炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、R7は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を示し、R8は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を示す。〕
【0012】
(B)非イオン界面活性剤:10〜50質量%、
(C)低級アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール及び多価アルコール誘導体から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類:20〜50質量%、
(D)一般式(3)又は(4)で表される陽イオン性界面活性剤:0.1〜5質量%
【0013】
【化3】

【0014】
[式(3)中、R1は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基を示し、R2は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を示し、R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。式(4)中、R5は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
(E)水
を含有するペット用洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペット用洗浄剤組成物は、従来よりも高いセラミド類の残留性を達成し、それにより週に1回の洗浄頻度でもペットを高い洗浄力で洗浄できると共に、洗浄後の皮膚からの水分の蒸散を抑制することができ、それゆえに飼主の負担が少なくてもペットの皮膚を健全に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のペット用洗浄剤組成物を構成する成分(A)のセラミド及びセラミド類似物質は、角質細胞間に層状構造を形成し、角質細胞の水和や接着に寄与できる天然又は合成の両親媒性物質である。成分(A)のうち一般式(1)で表されるセラミド類において、一般式(1)中のR1としては、ヒドロキシ基が置換してもよい炭素数7〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子が好ましい。Y1としては、水素原子、グリセリル基が好ましい。Y2、Y3及びY4としては、その0〜1個がヒドロキシ基であり、残余が水素原子であるのが好ましい。R2及びR3としては、一方が水素原子又はヒドロキシメチル基であり、他方が水素原子であるのが好ましい。
【0017】
4としては、ヒドロキシ基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜35の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基、又は該炭化水素基のω位に、ヒドロキシ基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合又はアミド結合したものが好ましい。結合する脂肪酸としては、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸又はリノール酸が好ましい。R5としては、水素原子あるいは、ヒドロキシ基及びヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよい総炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。ここで、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるセラミド類に含まれるものとして、天然又は天然型セラミド、及びその誘導体(以下、「天然型セラミド類」と記載する)、更にセラミド類似物質がある。
【0019】
天然型セラミド類の具体例としては、以下に構造を示すような、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7(例えば、J. Lipid Res., 24:759 (1983)の図2、及びJ. Lipid. Res.,35:2069 (1994)の図4記載のブタ及びヒトのセラミド類)が挙げられる。
【0020】
【化4】

【0021】
さらに、これらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)も挙げられる。これらは天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
【0022】
また、一般式(1)で表されるセラミド類に含まれるセラミド類似物質の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
成分(A)のセラミド類のうち、一般式(2)で表されるジアミド化合物もセラミド類似物質である。一般式(2)中のR6としては、水酸基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよい炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。なかでも、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、又は水酸基が1〜2個、炭素数1〜6のアルコキシ基が1個、若しくは水酸基と炭素数1〜6のアルコキシ基が1個ずつ置換した、炭素数2〜12のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、2−メチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、9−ヒドロキシノニル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル基、9−メトキシノニル基等が挙げられ、なかでも2−ヒドロキシエチル基、メチル基、ドデシル基、2−メトキシエチル基が好ましい。
【0025】
一般式(2)において、R7としては、炭素数2〜5の、特に炭素数2〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましい。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2−エチルトリメチレン基等が挙げられ、なかでもエチレン基及びトリメチレン基が好ましい。
【0026】
一般式(2)において、R8としては、炭素数2〜22の直鎖又は分岐鎖の二価炭化水素基が好ましく、特に炭素数11〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、及び1〜4個の二重結合を有するアルケニレン基が好ましい。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基、1−メチルエチレン基、2−エチルトリメチレン基、1−メチルヘプタメチレン基、2−メチルヘプタメチレン基、1−ブチルヘキサメチレン基、2−メチル−5−エチルヘプタメチレン基、2,3,6−トリメチルヘプタメチレン基、6−エチルデカメチレン基、7−メチルテトラデカメチレン基、7−エチルヘキサデカメチレン基、7,12−ジメチルオクタデカメチレン基、8,11−ジメチルオクタデカメチレン基、7,10−ジメチル−7−エチルヘキサデカメチレン基、1−オクタデシルエチレン基、エテニレン基、1−オクタデセニルエチレン基、7,11−オクタデカジエニレン基、7−エテニル−9−ヘキサデカメチレン基、7,12−ジメチル−7,11−オクタデカジエニレン基、8,11−ジメチル−7,11−オクタデカジエニレン基等が挙げられる。このうち、7,12−ジメチルオクタデカメチレン基、7,12−ジメチル−7,11−オクタデカジエニレン基、オクタデカメチレン基、ウンデカメチレン基、トリデカメチレン基が特に好ましい。
【0027】
特に好ましいセラミド類(2)は、R6、R7及びR8として、それぞれ上で挙げた好ましい基を組み合わせた化合物であり、その具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
一般式(1)又は(2)で表されるセラミド類は、成分(A)として2種以上を併用することもでき、またその含有量は、本発明のペット用洗浄剤組成物中の0.05〜2質量%であるが、0.1〜1.5質量%であることが、洗浄後の皮膚からの水分蒸散量を抑制する点、及び肌感触の点から好ましい。
【0031】
本発明のペット用洗浄剤組成物を構成する成分(B)である非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノカプリル酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノイソステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(以下「POE」という)ソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類;POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類;POEモノオレエート、POEジステアレート、POEジオレエート、ステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類;POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE 2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類;POE・ポリオキシプロピレン(以下「POP」という)セチルエーテル、POE・POP 2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類;テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油あるいは硬化ヒマシ油誘導体;POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド;オクチルグルコシド、ドデシルグルコシド、テトラデシルグルコシド、ヘキサデシルグルコシド等のアルキルグルコシド類;POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等を挙げることができる。これらの非イオン界面活性剤のうち、アルキルグルコシド類が起泡性の点から好ましい。
【0032】
これら非イオン界面活性剤は、成分(B)として2種以上を併用することもでき、またその含有量は、本発明のペット用洗浄剤組成物中の10〜50質量%であるが、15〜40質量%であることが、洗浄性の点、成分(A)を皮膚上に残留させ、皮膚からの水分蒸散量を効果的に抑制する点から好ましい。
【0033】
成分(A)のセラミド類と成分(B)の非イオン界面活性剤との比率は、十分な洗浄性を有し、かつ成分(A)の皮膚への残存量を最適にする点から、(A)/(B)=1/200〜1/10、特に1/167〜1/20の質量比とすることが好ましい。
【0034】
本発明のペット用洗浄剤組成物を構成する成分(C)のうち、低級アルコールは、炭素数2〜5の直鎖又は分岐のアルコール、具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等が挙げられる。芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、2−ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール等が挙げられる。多価アルコール又はその誘導体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール等の4価アルコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール重合体;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール重合体アルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のジプロピレングリコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の2価アルコールエーテルエステル;キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等のグリセリンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル;エチレングリコールジアジペート、エチレングリコールジサクシネート等の2価アルコールジエステル;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等の糖類又は糖アルコール類;グリソリッド、テトラハイドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
【0035】
これらアルコール類のうち、低級アルコールとしてはエタノールが、芳香族アルコールとしてはベンジルアルコールが、多価アルコールとしてはグリセリンや1,3−ブチレングリコールが、多価アルコール誘導体としてはエチレングリコール重合体のアルキルエーテル類が、保存安定性の点から好ましい。
【0036】
これらアルコール類は、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、本発明のペット用洗浄剤組成物中の20〜50質量%であるが、25〜40質量%であることが、洗浄性の点、成分(A)を均一に分散させ、被毛の仕上がり感を向上させる点、及び成分(A)を皮膚上に残留させ、皮膚からの水分蒸散量を効果的に抑制する点から好ましい。
【0037】
本発明のペット用洗浄剤組成物を構成する成分(D)である、特定構造を有する陽イオン性界面活性剤としては、一般式(3)、(4)で表わされるものが挙げられる。
【0038】
【化8】

【0039】
[式(3)中、R1は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基を示し、R2は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を示し、R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。式(4)中、R5 は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
【0040】
具体的には、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられるが、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウムが好ましく、特に臭化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウムは殺菌力も強く有しており、より好ましい。
【0041】
成分(D)の陽イオン性界面活性剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜5質量%、特に0.1〜3質量%配合するのが、成分(A)の残留性が向上し、かつ皮膚感触の点から好ましい。また、成分(A)のセラミド類と成分(D)の陽イオン性界面活性剤との比率は、成分(A)の皮膚への残存量を最適にする点から、(A)/(D)=1/4〜1/1、特に1/3〜2/3の質量比とするのが好ましい。また成分(B)の非イオン界面活性剤と成分(D)の陽イオン性界面活性剤との比率は、成分(A)の皮膚への残存量と洗浄性のバランスの点から、(B)/(D)=50/1〜5/1、特に40/1〜10/1の質量比とするのが好ましい。さらに、成分(C)のアルコール類と成分(D)の陽イオン性界面活性剤との比率は、成分(A)の残留性の観点から、(C)/(D)=50/1〜5/1、特に40/1〜10/1の質量比とするのが好ましい。
【0042】
本発明のペット用洗浄剤組成物を構成する成分(E)の水としては、公知の方法で精製された水を用いることができる。水の含有量は、組成物の安定性の点から、本発明のペット用洗浄剤組成物中20〜80質量%、特に30〜60質量%であることが好ましい。
【0043】
本発明のペット用洗浄剤組成物は、さらに(F)成分として、ポリエーテル変性シリコーンを0.1〜5質量%含有すると、さらに成分(A)の皮膚への残留性が向上して好ましい。ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、ポリエチレングリコールにより変性されたジメチルポリシロキサン、ポリプロピレングリコールにより変性されたジメチルポリシロキサン、ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールブロックコポリマーにより部分変性されたジメチルポリシロキサン、あるいは以下の式(5)〜(7)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0044】
【化9】

【0045】
上記式(5)〜(7)中、Rはメチル基又は一部がフェニル基、R'は水素又は炭素数1〜12のアルキル基、qは1〜5、pは2〜3の数、x、m、nは平均数であり、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンが分子中にポリオキシアルキレン基を2〜90質量%含有し、且つ該ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの粘度が25℃において5〜5000mm2/sになるような数値を表す。市販品としては信越化学工業社製のKF−6011、KF−6012、KF−615A、東レ・ダウコーニング社製のSH3771M、SH3775Mや日本ユニカ社製のL−7002等が挙げられる。
【0046】
上述のポリエーテル変性シリコーンは、二種以上を併用することもでき、またその含有量は、本発明のペット用洗浄剤組成物中の0.1〜5質量%であるが、0.3〜3質量%であることが、被毛が少ない部位でも成分(A)を十分に皮膚上に残留させ、かつ皮膚感触の点から好ましい。
【0047】
本発明のペット用洗浄剤組成物には、上記成分(A)〜(F)のほかに、通常の洗浄剤等に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級アルコール、エステル類、成分(F)以外のシリコーン類、両性界面活性剤、カチオン重合体、両性重合体、アニオン重合体、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、合成樹脂エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を、必要に応じて適宜配合することができる。
【0048】
本発明のペット用洗浄剤組成物は、ペットに対して、通常のシャンプーと同じように使用することができる。この洗浄剤組成物でペットを洗うと、週に1回の洗浄頻度でもペットを高い洗浄力で洗浄できると共に、洗浄後の皮膚からの水分の蒸散を抑制することができ、それゆえに飼主の負担が少なくてもペットの皮膚を健全に保つことができる。
【実施例】
【0049】
実施例1〜4及び比較例1〜4
表1記載の成分を配合したペット用洗浄剤組成物を調製し、下記の評価を行い、結果を表1に示した。
【0050】
〔評価方法〕
(1)セラミド類の残留量の測定
ビーグルの全身を、表1に記載の実施例1〜4及び比較例1〜4で通常のシャンプーと同じように洗浄する。乾燥後、そけい部の被毛を2cm×2cmに毛刈りし、毛刈り部位をアセトン/エーテル(2/1)で15秒間×3回抽出する。溶媒を乾燥窒素ガスにて除去し、メタノール1mLに溶解させる。このエタノール溶液より液体クロマトグラフィーにて、残留したビス(メトキシプロピルアミド)オクタンを定量し、定量値を皮膚1cm2当たりに換算する。
【0051】
【表1】

【0052】
(2)皮膚症状の評価
アトピー性皮膚炎に罹患している犬25頭を5頭ずつ5群に分け、実施例1〜4及び比較例1〜4で、それぞれ3ヶ月間に週1回の頻度で洗浄し、3ヶ月後のそけい部での「かゆみ」、「フケ」、「皮膚の乾燥状態」及び「紅斑」の改善効果を試験開始前と比較評価した。評価基準は以下のとおり。
【0053】
・かゆみ:試験開始前と終了後に飼主に11段階(0:全くかゆがらない〜10:絶えず掻いている)のかゆみスケールを渡し、犬のかゆがる程度を評価した。試験前後でのかゆみ変化の平均値より、以下の基準に従って判定した結果を表2に示す。
【0054】
◎:かゆみが平均で3を超える改善
○:かゆみが平均で2を超え3以下の改善
△:かゆみが平均で0を超え2以下の改善
×:かゆみが平均で不変か悪化
【0055】
・フケ,乾燥,紅斑:試験開始前と終了後に専門医が5段階(1:症状がない〜5:強い症状)で評価した。試験前後での症状変化の平均値より、以下の基準に従って判定した結果を表2に示す。
【0056】
◎:症状が平均で2を超える改善
○:症状が平均で1を超え2以下の改善
△:症状が平均で0を超え1以下の改善
×:症状が平均で不変か悪化
【0057】
【表2】

【0058】
実施例1〜4では、3ヶ月間使用することにより、週に1回の洗浄頻度でも「かゆみ」、「フケ」、「皮膚の乾燥状態」及び「紅斑」の顕著な改善が認められた。比較例1では週に1回の洗浄では顕著な効果が認められなかった。比較例2〜4では皮膚の乾燥に伴い、かゆみやフケが増悪した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E)
(A)一般式(1)又は(2)で表されるセラミド類:0.05〜2質量%
【化1】

〔式中、R1はヒドロキシ基、オキソ基若しくはアミノ基が置換してもよい炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し、Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し、破線はZがメチン基である場合の不飽和結合を示し、Y1は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、又は隣接する酸素原子とともにオキソ基を形成し、Y2、Y3及びY4は各々独立して水素原子、ヒドロキシ基又はアセトキシ基を示し(但し、Zがメチン基であるとき、Y2とY3は一方が水素原子で他方は存在せず、−O−Y1がオキソ基であるとき、Y4は存在しない)、R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、R4はヒドロキシ基、オキソ基又はアミノ基が置換してもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、R5は水素原子を示すか、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す(但し、R1が水素原子でZが酸素原子であるとき、R5はヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数10〜30の炭化水素基であり、R1が水素原子以外の基であるとき、R5は水素原子あるいは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有してもよい総炭素数1〜30の炭化水素基である)。〕
【化2】

〔式中、R6は水酸基及び/又はアルコキシ基が置換していてもよい炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、R7は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を示し、R8は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を示す。〕
(B)非イオン界面活性剤:10〜50質量%、
(C)低級アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール及び多価アルコール誘導体から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類:20〜50質量%、
(D)一般式(3)又は(4)で表される陽イオン性界面活性剤:0.1〜5質量%
【化3】

[式(3)中、R1は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基を示し、R2は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を示し、R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。式(4)中、R5は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜28のアルキル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
(E)水
を含有するペット用洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに(F)成分として、ポリエーテル変性シリコーンを0.1〜5質量%含有する請求項1記載のペット用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−116342(P2010−116342A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290161(P2008−290161)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】