説明

ペランパネルの中間体である2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの調製方法

【課題】従来技術に関する欠点を少なくとも一部克服することを可能とする、2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩の代替的な調製方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、活性物質ペランパネルを合成する中間体である2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの合成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質ペランパネルを合成する中間体である2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンを合成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペランパネルは、パーキンソン病、てんかん及び多発性硬化症を治療するのに使用される、現在、臨床試験第三相にある医薬活性物質である。
【0003】
下記の化学式を有するペランパネル
【化1】


は、E 2007、ER 155055−90及び3−(2−シアノフェニル)−1−フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンとしても知られている
【0004】
特許公開公報EP1300396、EP1465626、EP1772450、EP1764361及びEP1970370において報告されているもののように、このような分子の種々の合成方法が知られている。
【0005】
先行技術によって報告されている、このような活性物質の合成方法の多くは、下記の化学式:
【化2】


を有する、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンとしても知られる基本中間体5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを使用し、或いは式:
【化3】


を有する、2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又は6’−メトキシ−2,3’−ビピリジンと名付けられるその合成前駆体を使用している。2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンは、先行技術において完全に報告されているように、実際には単純な酸触媒作用による6’−メトキシ−2,3’−ビピリジンの脱メチル化によって調製されている。
【0006】
2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンを合成する種々の方法が知られている。以下のダイアグラム(I)において要約される方法が、公開公報WO2001096308に記載されている:
【化4】

【0007】
このような方法では、特別な設備を使用して極低温状態(T=−78℃)で操作する必要性、及び後処理によりボロン酸を単離する必要性などの明らかな不利点が目立つ;さらに、2−ブロモピリジンの使用が想定され、これは、2−クロロピリジンと比較して、廃棄物生成の点で、より不都合なものである。
【0008】
WO2004009553に記載されている他の方法は、ダイアグラム(II)において要約される:
【化5】

【0009】
この方法は、方法の原子経済性の低さ及び特別な設備を使用して低温T(−78℃)で操作する必要性を伴う高分子量のベンゼンスルホニルピリジンの使用などの、明らかな不利点を示している。
【0010】
最後に、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを調製するための全く異なった方法が、WO20087093392に記載されているが、この方法は、2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンと名付けられる中間体前駆体の調製を含まず、ダイアグラム(III)において示される:
【化6】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明が取り組む課題は、先行技術に関する上述の欠点を少なくとも一部克服することを可能とする、式(I)を有する2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩:
【化7】


(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)の代替的な調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題は、その定義が本明細書の不可欠な部分を構成する、添付の特許請求の範囲において記載されている式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩の合成方法によって解決される。
【0013】
本発明による方法のさらなる特性及び利点は、非限定的な例としてなされた、好ましい実施形態についての以下の記載から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩
【化8】


(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)の調製方法であって、
下記のステップ:
(a)式(IV)の5−ハロゲン−2−アルコキシピリジン
【化9】


(式中、Xは塩素、臭素及びヨウ素の中から選択され、Rは直鎖又は分枝したC1〜C6アルキル基である)を、
式(III)の(6−アルコキシピリジン−3−イル)マグネシウムハライド、又は式(III−2)を有するその塩化リチウム錯体:
【化10】


(式中、X’は塩素、臭素及びヨウ素の中から選択される)に転化するステップ、
(b)ステップ(a)において得られた化合物を、式(II)の2−ハロゲン化ピリジン又は2−擬ハロゲン化ピリジン
【化11】


(式中、X1は塩素、臭素、ヨウ素、トリフレート、ノナフレート、メシレート、トシレート及びベシレートの中から選択され、又は−O(C=O)NR’であり、ここでR’は、直鎖若しくは分岐C〜Cアルキル基であり又はフェニル若しくはベンジルである)と反応させて、
式(I)の化合物又はその塩を生成するステップ
を含む方法に関する。
【0015】
基Rは、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基であり、すなわち基Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシルなどから選択される。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明による方法では、2−クロロピリジン、すなわちX1が塩素である式(II)を有する化合物を使用する。
【0017】
より好ましい実施形態において、本発明による方法では、2−クロロピリジン、すなわちX1が塩素である式(II)を有する化合物、及び5−ブロモ−2−アルコキシピリジン、すなわちXが臭化物である式(IV)を有する化合物を使用する。
【0018】
式(II)を有する化合物の置換基X1がトリフレート、ノナフレート、メシレート、トシレート及びベシレートから選択される場合、このような基とピリジン環との間の結合は、スルホネート基に属する酸素の原子によってなされる。
【0019】
X1が−O(C=O)NR’である場合、R’は、直鎖又は分岐C〜Cアルキル置換基であり、すなわちR’はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルから選択され、又はフェニル若しくはベンジルである。
【0020】
本発明による方法、特にステップ(b)は、パラジウム、ニッケル、鉄又はコバルトの金属錯体によって行われる触媒作用によって実施される。
【0021】
好ましい実施形態により、ステップ(b)は、触媒として、式Pd(dppf)Clを有するパラジウム錯体又はその溶媒和物、すなわち、パラジウムビス−ジフェニルホスフィノフェロセンジクロリド又はその溶媒和物を使用して行われる。この触媒の典型的な溶媒和物は、ジクロロメタンと形成される溶媒和物である。
【0022】
ステップ(b)において使用される金属錯体は、式(II)の化合物に対して約0.1%〜5%のモル量で、好ましくは約0.1%〜1%のモル量で使用される。式(II)の化合物に対して約0.25モル%のモル量の触媒が使用されることがより一層好ましい。
【0023】
本発明による方法によれば、ステップ(b)は、テトラヒドロフラン、メチル−テトラヒドロフラン、トルエン及びこれらの混合物から選択される有機溶媒中で実施される。
【0024】
更に、ステップ(b)は、25〜75℃の温度範囲で実施され、好ましくは45から50℃の間で実施される。第1の温度範囲においてステップ(b)は、1〜5時間の範囲にある時間で完結し、一方45〜50℃で操作すると、反応は2〜4時間で完結する。
【0025】
ステップ(b)は、式(II)を有する2−ハロゲン化ピリジン又は擬ハロゲン化ピリジンに対して1.1〜1.7モル当量の、式(III)又は(III−2)を有するグリニャール試薬を使用して実施され、1.1〜1.6モル当量のグリニャール試薬が使用されることが好ましく、1.2〜1.5モル当量が使用されることがより一層好ましい。
【0026】
本発明による方法は、ステップ(a)において、式(IV)を有する5−ハロゲン−2−アルコキシピリジンと、グリニャール試薬若しくはその塩化リチウム錯体との間の反応によって、又は金属マグネシウムによって、式(III)又は(III−2)を有するグリニャール試薬の形成をもたらす。
【0027】
このような目的には、イソプロピルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムクロリド及びそれらに対応する塩化リチウム錯体などのグリニャール試薬が、ハロゲン−金属交換のためのグリニャール試薬として好都合に使用することができる。イソプロピルマグネシウムクロリド及びその対応する塩化リチウム錯体が特に好ましい。
【0028】
塩化リチウムとのグリニャール試薬錯体は、錯体を有しない対応するグリニャール試薬よりも少ない試薬を使用してより短時間で、より大きな転化率(94%に対して99%)で式(III−2)を有する中間体の調製を可能とする点で、特に好ましい。
【0029】
式(IV)を有する5−ハロゲン−2−アルコキシピリジンが、反応のために使用されるグリニャール試薬又はその塩化リチウム錯体のハロゲン以外のハロゲン基Xを有する場合、式(III)又は(III−2)を有する対応する生成物は、出発ハロゲン−2−アルコキシピリジンと同一とすることができる基X’を有するか、或いはX’は使用されるグリニャール試薬のハロゲンとすることができ、或いは2種の異なるハロゲンを有する化合物の混合物を得ることができる。全ての場合に、これらの反応生成物は、本発明の一部であるものと理解される。
【0030】
ハロゲン−金属交換による、すなわちもう一つのグリニャール試薬の使用によるグリニャール試薬の合成は、有機化学分野における共通の一般的知識により、低温で、すなわち0℃未満から20℃までの温度で典型的には実施される。しかし、この場合、予想外にも、ステップ(a)において、式(III)又は(III−2)を有するグリニャール試薬の形成を可能にするため、異なるより厳しい条件が必要とされ、特にステップ(a)が、25℃から70℃の間で実施される必要があることが見出された。好ましい実施形態によれば、ステップ(a)は、25〜30℃の範囲にある温度で実施される。
【0031】
式(III)又は(III−2)を有するグリニャール試薬を調製するために、どちらの場合も式(IV)の化合物に対して、1.3〜2.5、好ましくは1.6〜2.2モル当量のグリニャール試薬、又は1.1〜1.5モル当量のグリニャール塩化リチウム錯体試薬がそれぞれ必要とされる。
【0032】
ステップ(a)の反応は、4〜72時間の時間間隔で完結する。特に、ステップ(a)の反応はグリニャール塩化リチウム錯体試薬が使用される場合4〜15時間で完結するが、普通のグリニャール試薬が使用される場合15〜72時間で完結する。
【0033】
特に、ステップ(a)を25〜30℃の温度で行うとき、式(IV)を有する化合物に対して1.1〜1.5モル当量の量でのグリニャール塩化リチウム錯体試薬が使用される場合、反応は少なくとも4〜8時間で完結する。1.3〜1.35モル当量の試薬が使用されると、反応は5時間で完結する。転化率は、HPLCによって測定して98%を超え、典型的には99%である。
【0034】
ステップ(a)を25〜30℃の温度で行うとき、およそ2モル当量の普通のグリニャール試薬が使用される場合、反応は24時間で完結する。転化率は典型的には94%のオーダーである。
【0035】
ステップ(a)から得られる生成物のHPLC(原子/原子%)純度は、全ての場合、すなわち、普通のグリニャール試薬を使用する場合と、その塩化リチウム錯体を使用する場合との両方で、一般に94%である。
【0036】
したがって、ステップ(a)を実施する最良の条件は、グリニャール塩化リチウム錯体試薬を、式(IV)を有する化合物に対しておよそ1.3〜1.35モル当量の量で使用して25〜30℃の温度で操作することであることが判明している。反応は、およそ5時間で完結する。別法として、式(IV)を有する化合物に対して計算しておよそ2.0モル当量の普通のグリニャール試薬を使用し、25〜30℃で操作すると、反応時間はおよそ24時間である。
【0037】
本発明による方法は、2−メトキシ−5(ピリジン−2−イル)ピリジンを調製するために、すなわち、Rがメチルである式(I)を有する化合物を調製するために使用されることが好ましい。
【0038】
したがって、本発明によるステップ(a)は、式(III)の(6−アルコキシピリジン−3−イル)マグネシウムハライド、又は式(III−2)のその塩化リチウム錯体:
【化12】


(式中、X’は塩素、臭素及びヨウ素の中から選択され、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)の調製を可能にする。
【0039】
したがって、化合物名(6−メトキシピリジン−3−イル)マグネシウムブロミドを有する化合物が、本発明による方法の中間体を構成する。化合物名(6−メトキシピリジン−3−イル)マグネシウムクロリドを有する化合物も、本方法の中間体である。
【0040】
群:
a.(6−(C2〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムクロリド、
b.(6−(C2〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド、
c.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムヨージド、
d.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムクロリド塩化リチウム錯体、
e.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド塩化リチウム錯体、
f.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムヨージド塩化リチウム錯体
から選択される化合物も、本発明による方法の中間体を構成する。
【0041】
既に説明したように、群:
a.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムクロリド塩化リチウム錯体、
b.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド塩化リチウム錯体、
c.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムヨージド塩化リチウム錯体
から選択されるグリニャール塩化リチウム錯体化合物が、特に好ましい。
【0042】
上記に掲げた2つの群に属する化合物の中で、C1〜C6−アルコキシ基がメトキシ基である化合物が好ましい。
【0043】
したがって、式(IV)の5−ハロゲン−2−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジンの転化によって調製され、式(III)又は式(III−2)を有するこのような合成中間体は、Rが直鎖若しくは分岐C1〜C6アルキル基である式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンを調製するのに、又はその塩を調製するのに有用である。
【0044】
ステップ(b)の転化率は、典型的には99%を超え、反応の終わりに得られた生成物のHPLC(原子/原子%)純度は、一般に約94%である。
【0045】
本発明による方法により、ステップ(a)の収率及びステップ(b)の収率を考慮すると、後処理の最後には、モル収率89〜92%で式(I)の化合物の調製が可能となる。
【0046】
このような単純且つ経済的に有利な方法によって同様な収率で生成物(I)を得ることが可能となる方法は、現在まで知られていないようである。
【0047】
本発明による方法のもう一つの利点は、グリニャール試薬の形成(ステップ(a))、並びにグリニャール試薬と2−ハロゲン化ピリジンとの間のカップリングステップ(b)が少なくとも25℃で実施される点である。中間体グリニャール試薬を単離することは必要でなく又はさらには好都合でもなく、このため、一定の同一の温度で、例えば、好ましくは45から50℃の間で操作しても、方法全体をワンポットで行うことが可能である。
【0048】
本発明による方法により、先行技術の方法におけるような、特別な極低温設備の使用及び−78℃で作業する必要性を避けることが可能になる。
【0049】
その上、脱離基がハロゲン原子であるので、本発明による方法は、先行技術の方法で使用されるベンゼンスルホネートなどの「大きな」脱離基を使用しないで済ませることができる点で、原子経済的に高収率を有する。
【0050】
本発明による方法によって得られる式(I)の化合物は、任意選択的に有機合成の既知の技術により単離でき、且つ/又は、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンとしても知られている基本中間体5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを形成するように、酸加水分解に直接供することもできる。
【0051】
具体的には、式(I)の化合物2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩:
【化13】


(式中、Rは直鎖又は分岐C2〜C6アルキル基であり、ここでRはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシルなどから選択される)は、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを調製するのに有用であり、このため最終的にはペランパネルを調製するのに有用であることも示された。
【0052】
このような目的には、Rがエチル又はイソプロピルである式(I)の化合物が好ましく、Rがエチルである式(I)の化合物がより一層好ましい。
【0053】
式(I)の化合物の加水分解のステップから化合物2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを単離した固体の形態で得るまでをワンポットで実施する本発明による方法の全体的モル収率は、式(II)の化合物から出発して典型的には81%である。したがって、式(I)の化合物を加水分解し、生成物2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを単離するステップは、およそ90%のモル収率を有すると見積もられる。こうして得られた生成物2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンは、99.0%を超えるHPLC純度(HPLC原子/原子%)、典型的には99.5%のHPLC純度(HPLC原子/原子%)を有する。
【実施例】
【0054】
(例1)
式(I)の2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの合成
【化14】


5.0gの5−ブロモ−2−メトキシピリジン(1.2当量)、15ml(2−クロロピリジンに対して6倍容量)の無水テトラヒドロフラン(窒素気泡を通すことによって1時間、予め脱気された)を、予め乾燥され窒素流下に保持され、温度計、冷却器及び滴下漏斗が取り付けられたフラスコに入れる。温度を25〜30℃で保ちながら、THF中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウム錯体26.6ml(25.3g、1.56当量)を約1時間で添加する。反応媒質を、25〜30℃で少なくとも5時間撹拌する。HPLCによりチェックした転化率は95%超である。162mg(1モル%)のPd(dppf)Cl(1,1’−[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II))と、2.52g(1当量)の2−クロロピリジンと、15ml(6倍容量)の予め脱気された無水テトラヒドロフランとを、予め乾燥され窒素流下に保持されたもう一つのフラスコに投入する。反応媒質を45〜50℃に加熱し、15分間撹拌する。予め調製されたグリニャール試薬の懸濁液を、カニューレを介して適切な滴下漏斗中に移す。グリニャール試薬を、温度を45〜50℃で保持しながら、2−クロロピリジン及び触媒が入った前記フラスコに約1時間で投与する。反応媒質を45〜50℃で少なくとも1時間撹拌する。HPLCにより転化率をチェックする。温度を20〜25℃で保持しながら、30ml(12倍容量)の脱イオン水を30分間かけて注意深く添加する。これを15分間撹拌し、デカンテーションし、相を分離する。水性相を、10ml(4倍容量)のtert−ブチル−メチルエーテルで2回に分けて抽出する。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、T<40℃において真空下で蒸発させて、モル収率90.7%に等しい、重量/重量力価81.56%、LCAP78.81%を有する4.6gの湿った生成物を黄色油として得る。この粗生成物は、先行技術の方法による加水分解という次の段階において直接使用される。1H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.77(d,J=2.4 Hz,1H)、8.70〜8.69(m,1H)、8.28(dd,J=8.6,2.5 Hz,1H)、7.77(m,1H)、7.68(d,J=8.0 Hz,1H)、7.30〜7.23(m,1H)、6.87(d,J=8.7 Hz,1H)、4.02(s,3H)。スペクトルデータは、文献において示されたデータに一致している。
【0055】
(例2)
式(I)の2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの合成
【化15】


5.0gの5−ブロモ−2−メトキシピリジン(1.1当量)、16.5ml(2−クロロピリジンに対して6倍容量)の無水テトラヒドロフラン(窒素気泡を通すことによって1時間、予め脱気された)を、予め乾燥され窒素流下に保持され、温度計、冷却器及び滴下漏斗が取り付けられたフラスコに投入する。温度を25〜30℃で保ちながら、THF中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウム錯体26.6ml(25.3g、1.56当量)を約1時間で添加する。これを、25〜30℃で少なくとも5時間撹拌する。HPLCによりチェックした転化率は95%超である。177mg(1モル%)のPd(dppf)Cl(1,1’−[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II))と、2.74g(1当量)の2−クロロピリジンと、16.5ml(6倍容量)の予め脱気された無水テトラヒドロフランとを、予め乾燥され窒素流下に保持されたもう一つのフラスコに投入する。反応媒質を45〜50℃に加熱し、15分間撹拌する。予め調製されたグリニャール試薬の懸濁液を、カニューレを介して適切な滴下漏斗中に移す。グリニャール試薬を、温度を45〜50℃で保持しながら、2−クロロピリジン及び触媒が入った前記フラスコに約1時間で混入する。これを45〜50℃で、少なくとも1時間撹拌する。HPLCにより転化率をチェックする。温度を20〜25℃で保持しながら、33ml(12倍容量)の脱イオン水を30分間かけて注意深く添加する。これを15分間撹拌し、デカンテーションし、相を分離する。水性相を、11ml(4倍容量)のtert−ブチル−メチルエーテルで2回に分けて抽出する。有機相を、11ml(4倍容量)の塩化ナトリウム飽和溶液で洗浄する。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、T<40℃において真空下で蒸発させて、モル収率56.8%に等しい、重量/重量力価82.37%、LCAP79.35%を有する3.1gの湿った生成物を黄色油として得る。(この実験では、相に分離する間に生成物の偶発的損失があった)。
【0056】
この粗生成物は、先行技術の方法による加水分解という次の段階において直接使用される。1H−NMR(400MHz,CDCl):δ=8.77(d,J=2.4 Hz,1H)、8.70〜8.69(m,1H)、8.28(dd,J=8.6,2.5 Hz,1H)、7.77(m,1H)、7.68(d,J=8.0 Hz,1H)、7.30〜7.23(m,1H)、6.87(d,J=8.7 Hz,1H)、4.02(s,3H)。スペクトルデータは、文献において示されたデータと一致している。
【0057】
(例3)
式(I)の2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの合成
【化16】


1.09kg=0.75リットル(1.1当量、d=1.453g/ml)の5−ブロモ−2−メトキシピリジンと、3.60リットル(6倍容量)の無水トルエン(予め窒素流下で脱気された)とを、予め窒素下で乾燥された反応器Aに投入する。混合物を25〜30℃に加熱し、THF中のイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウム錯体溶液(20重量/重量%)5.70kg(1.485当量)を約1時間にわたって添加する。これを、25〜30℃で少なくとも8時間撹拌する(反応を、一晩実施することができる)。転化率は、HPLCにより監視される。反応が完結すると、9.67gのPd(dppf)Cl2(0.25モル%)と、0.50リットルに等しい0.60kg(1当量、d=1.2g/ml)の2−クロロピリジンと、3.60リットル(6倍容量)の予め窒素流下で脱気された無水トルエンとの混合物を、予め乾燥され窒素流下に保持された反応器Bに投入する。混合物を45〜50℃で30分間撹拌する。反応器Aからのグリニャール試薬の懸濁液を、Tを45〜50℃で保持しながら、およそ1時間かけて反応器B中に移す。完結したら、撹拌を45〜50℃で少なくとも4時間遂行する。転化率はHPLCで監視される(>99%;生成物のHPLC純度原子/原子%>94%)。反応が完結したら、混合物を25〜30℃にまで冷却し、温度を20〜25℃で保持しながら3.60リットル(6倍容量)の純水を、約30分〜1時間かけて注意深く添加する。撹拌を15分間行なう。この二相混合物を、濾紙で濾過し、固体残渣を0.60リットル(1倍容量)のトルエンで洗浄する。濾液を、反応器Cに投入する。有機相(反応生成物を含有する)を分離する。3.60リットル(6倍容量)の純水を有機相に添加する。撹拌を15分間継続し、混合物を静置してデカンテーションし、相を分離する。有機相(反応生成物を含有する)を回収する。1.41リットル(2.35倍容量)の濃塩酸と2.06リットル(3.44倍容量)の純水とを使用して調製した塩酸4M溶液を有機相に添加する。撹拌を15分間継続し、混合物を静置してデカンテーションし、水性酸性相(生成物は、水性相中に存在する)を分離する。酸性水性相(生成物を含有する)を、1.20リットル(2×2倍容量)のMTBEで2回洗浄する。水性相を分離し、秤量する。2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの溶液における収率を、外部標準HPLC分析により決定する(溶液におけるモル収率:90.3%):
【0058】
(例4)
5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン又は2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンの合成
例3により得られた2−メトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンを含有する酸性水性相を、反応器Cに再導入する。混合物を加熱して、少なくとも4時間還流する(95〜100℃)。転化率はHPLCにより監視される。反応が完結したら、これを20〜25℃まで冷却し、酸性水性相を、3.54リットル(5.9倍容量)のMTBEで洗浄する(生成物は、水性相中に存在する)。撹拌を15分間継続し、混合物を静置してデカンテーションし、相を分離する。相が分離したら、およそ1.5リットルの水酸化ナトリウム30%溶液で水性相(生成物を含有する)のpHを12.5〜13に調節する。そのようにして得られた塩基性水性相を、3.54リットル(5.9倍容量)のMTBEで洗浄する(生成物は、水性相中に存在する)。撹拌を15分間継続し、混合物を静置してデカンテーションし、相を分離する。およそ0.3リットルの濃塩酸で水性相のpHを約7〜7.5に調節する。7.26リットル(12.1倍容量)のn−ブタノールと、0.67kg(1.12倍重量)の塩化ナトリウム及び2.68リットル(4.47倍容量)の純水を混合することにより得られた20%塩化ナトリウム溶液とを、水性相に添加する。撹拌を15分間継続し、混合物を静置してデカンテーションし、相を分離する(生成物は、有機相に移る)。水性相を7.26リットル(12.1倍容量)のn−ブタノールで再び抽出する。撹拌を15分間継続し、混合物を静置してデカンテーションし、相を分離する。そのようにして得られた有機相を、45〜60℃において真空下で蒸発させ、残渣とする。この蒸留残渣を、2.4リットル(4倍容量)の酢酸エチルで回収する。混合物を加熱して還流させ、15分間撹拌する。これを20〜25℃まで冷却し、30分間撹拌し、次いでこれを−10/−5℃まで冷却し、少なくとも2時間撹拌する。混合物を濾過し、2×0.60リットル(2×1倍容量)の冷酢酸エチル(−10/−5℃)で洗浄する。生成物を、45〜50℃において真空下で少なくとも6時間乾燥させる。出発2−クロロ−ピリジンからのモル収率80.9%に等しい736gの生成物が得られる(HPLC純度原子/原子% 99.4%)。
【0059】
(例5)
式(I、R=Etである)の2−エトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの合成
例3が繰り返されるが、5−ブロモ−2−メトキシピリジンの代わりに5−ブロモ−2−エトキシピリジン(Aldrich)を使用し、5グラムの出発化合物によりこれを行う。
【0060】
そのようにして得られた2−エトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンは、次のスペクトルを有する
【化17】

【0061】
2−エトキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンを、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを得るように、例4における条件と同一の加水分解条件に供すると、加水分解反応は還流4時間で早くも完結する。そのため、このような中間体は、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを、したがってペランパネルを調製するのに極めて有用である。
【0062】
(例6)
式(I、R=iPrである)を有する2−イソプロポキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンの合成。
例3が繰り返されるが、5−ブロモ−2−メトキシピリジンの代わりに5−ブロモ−2−イソプロポキシピリジン(Aldrich)を使用し、1グラムの出発化合物によりこれを行う。
【0063】
そのようにして得られた2−イソプロポキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンは、次のスペクトルを有する
【化18】

【0064】
2−イソプロポキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジンを、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを得るように、例4における条件と同一の加水分解条件に供すると、加水分解反応は還流4時間で早くも完結する。そのため、このような中間体は、2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オンを、したがってペランパネルを調製するのに極めて有用である。
【0065】
特に、本発明の条件の使用が、良好な収率、方法の優れた原子経済性で、単一ステップで、極低温設備及び条件の使用を避けて、式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩を得ることを可能にする仕方は評価されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩:
【化1】


(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)の調製方法であって、
下記のステップ:
(a)式(IV)の5−ハロゲン−2−アルコキシピリジン
【化2】


(式中、Xは塩素、臭素及びヨウ素の中から選択され、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)を、
式(III)の(6−アルコキシピリジン−3−イル)マグネシウムハライド、又は式(III−2)のその塩化リチウム錯体:
【化3】


(式中、X’は塩素、臭素及びヨウ素の中から選択される)に転化するステップ、
(b)ステップ(a)において得られた化合物を、式(II)の2−ハロゲン化ピリジン又は2−擬ハロゲン化ピリジン
【化4】


(式中、X1は塩素、臭素、ヨウ素、トリフレート、ノナフレート、メシレート、トシレート及びベシレートの中から選択され、又は−O(C=O)NR’であり、ここでR’は、直鎖若しくは分岐C〜Cアルキル基であり又はフェニル若しくはベンジルである)と反応させて、
式(I)の化合物又はその塩を生成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
X1が塩素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)がパラジウム、ニッケル、鉄又はコバルトの金属錯体によって触媒される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
パラジウムの錯体が、Pd(dppf)Cl又はその溶媒和物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属錯体が、式(II)の化合物に対して約0.1%〜1%のモル量で使用される、請求項3から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が、25から75℃までの温度範囲で実施される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、45から50℃の間で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、グリニャール試薬若しくはその塩化リチウム錯体によって、又は金属マグネシウムによって実施される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
グリニャール試薬が、イソプロピルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムクロリド及びそれらの塩化リチウム錯体の中から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)が、25℃から70℃の間で実施される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)が、25から30℃の間で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)が、式(IV)の化合物に対して、1.3〜2.5モル当量のグリニャール試薬によって、又は1.1〜1.5モル当量のグリニャール試薬塩化リチウム錯体によって実施される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Rがメチルである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式(III)の(6−アルコキシピリジン−3−イル)マグネシウムハライド、又は式(III−2)のその塩化リチウム錯体:
【化5】


(式中、X’は塩素、臭素及びヨウ素の中から選択され、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)。
【請求項15】
化合物名が(6−メトキシピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド、又は(6−メトキシピリジン−3−イル)マグネシウムクロリドである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
a.(6−(C2〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムクロリド、
b.(6−(C2〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド、
c.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムヨージド、
d.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムクロリド塩化リチウム錯体、
e.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド塩化リチウム錯体、
f.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムヨージド塩化リチウム錯体
の群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
a.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムクロリド塩化リチウム錯体、
b.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムブロミド塩化リチウム錯体、
c.(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムヨージド塩化リチウム錯体
から選択される、請求項14又は16に記載の化合物。
【請求項18】
C1〜C6アルコキシ基がメトキシ基である、請求項16又は17に記載の化合物。
【請求項19】
式(III)の(6−アルコキシピリジン−3−イル)マグネシウムハライド、又は式(III−2)のその塩化リチウム錯体:
【化6】


(式中、X’は塩素、臭素及びヨウ素の中から選択され、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)の調製方法であって、
式(IV)の5−ハロゲン−2−アルコキシピリジン:
【化7】


(式中、Xは塩素、臭素及びヨウ素の中から選択され、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)の転化による方法。
【請求項20】
式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基である)又はその塩を調製するための、請求項14から18までのいずれか一項に記載の式(III)の(6−(C1〜C6−アルコキシ)ピリジン−3−イル)マグネシウムハライド又は式(III−2)のその塩化リチウム錯体の使用。
【請求項21】
式(I)の2−アルコキシ−5−(ピリジン−2−イル)ピリジン又はその塩:
【化8】


(式中、Rは直鎖又は分岐C2〜C6アルキル基である)。
【請求項22】
2,3’−ビピリジン−6’(1’H)−オン又はペランパネルを調製するための、請求項21に記載の化合物の使用。

【公開番号】特開2013−95752(P2013−95752A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−230411(P2012−230411)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(512008417)エッフェ.イ.エッセ.ファッブリカ イタリアーナ スィンテティチ ソシエタ ペル アチオニ (2)
【Fターム(参考)】