説明

ペルフルオロエラストマーの接着

硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを有するプライマー組成物であって、前記硬化剤が前記エポキシド樹脂と反応することができ、更に、
(a)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤又は触媒とを硬化させることができるか、又は、(b)前記硬化剤が前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤又は触媒を含むプライマー組成物を提供する。本開示によるプライマー組成物は、ペルフルオロエラストマー化合物を基材に接着するのに用いる。ペルフルオロエラストマー化合物を基材に接着する方法、及び、ペルフルオロエラストマーとプライマー層と基材とを含む多層物品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プライマー組成物と、架橋過程中にペルフルオロエラストマー組成物を基材に接着する方法とに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
1つの態様では、本開示は、硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを含むプライマー組成物であって、前記硬化剤が前記エポキシド樹脂を反応させることができ、更に、(a)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤若しくは触媒とを硬化させることができるか、又は、(b)前記硬化剤が前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤若しくは触媒を含むプライマー組成物を提供する。
【0003】
別の態様では本開示は、ペルフルオロエラストマー化合物を基材に接着する方法であって、(a)硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを含むプライマー組成物であって、前記硬化剤が前記エポキシド樹脂を硬化させることができ、更に、(i)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤若しくは触媒とを硬化させることができるか、又は、(ii)前記硬化剤が前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤若しくは触媒を含むプライマー組成物で、基材をコーティングする工程と、(b)コーティングした基材を前記ペルフルオロエラストマー化合物で被覆する工程と、(c)前記ペルフルオロエラストマーで被覆した基材を少なくとも150℃まで加熱して、硬化及び接着したペルフルオロエラストマー物品を形成させる工程とを含む方法を提供する。
【0004】
更に別の態様では本開示は、基材とプライマー層と硬化性ペルフルオロエラストマー層とを含む多層物品であって、前記プライマー層が、硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを含む組成物に由来し、前記硬化剤が前記エポキシド樹脂を硬化させることができ、更に、(a)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤若しくは触媒とを硬化させることができるか、又は、(b)前記硬化剤が、前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤若しくは触媒を含む多層物品を提供する。
【0005】
上記の本開示の概要は、本発明のそれぞれの実施形態を説明することを目的としたものではない。本発明の1以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明から、また「特許請求の範囲」から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「エポキシド樹脂」という用語は、本明細書で使用する場合、インターポリマー化したエポキシモノマー及び/又はエポキシオリゴマーを意味する。「エポキシ樹脂」という用語は、本明細書で使用する場合、エポキシド樹脂及び硬化剤を意味する。
【0007】
「ペルフルオロ」又は「ペルフルオロ化」という用語は、本明細書で使用する場合、対応する化合物の全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する(ただし、水素原子の一部が塩素、臭素、又はヨウ素原子で置換されている可能性を除外しない)。特に、「ペルフルオロポリマー」という用語は、ペルフルオロ化骨格、すなわち、水素原子がフッ素原子で置換されている骨格を有するフルオロポリマーを意味するよう意図されている(そのフルオロポリマーがクロロトリフルオロエチレンを用いた重合から誘導する場合のように、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素で水素原子の一部が置換されているポリマーを除外しない)。
【0008】
本開示のポリマーは、ペルフルオロエラストマーゴム、及び硬化ペルフルオロエラストマーを含む。ペルフルオロエラストマーは、全てフッ素、ペルフルオロアルキル、又はペルフルオロアルコキシで置換された基をポリマー鎖上に有するポリメチレン型のペルフルオロ化ゴムであり、これらの基のごく一部は、架橋を促進させる官能性を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「ペルフルオロエラストマー」、「ペルフルオロエラストマー組成物」、及び「ペルフルオロエラストマーゴム」という用語は同義的に用いられ、架橋できる非晶質ペルフルオロカーボンポリマーを指し、この架橋によってペルフルオロカーボンエラストマーが生成される。架橋ペルフルオロエラストマーゴムは本明細書では、同義的に「硬化ペルフルオロエラストマー」と称される。
【0009】
「ペルフルオロエラストマー化合物」という用語は、本明細書で使用する場合、ペルフルオロエラストマーゴムと、フルオロポリマーのコンパウンド化の際に典型的に用いられる任意の添加剤又は加工助剤とを含むコンパウンド化混合物を意味する。このような添加剤としては、当該技術分野において既知のものが挙げられる。代表的な添加物としては、安定剤、可塑剤、顔料、潤滑剤、充填剤(フルオロポリマー充填剤、カーボンブラック、炭酸カルシウム、及び二酸化ケイ素(シリカ)など)、並びに、酸受容体(酸化亜鉛、水酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムなど)が挙げられる。
【0010】
ペルフルオロエラストマーは、高温環境、プラズマ環境、及び化学環境に対する耐性があるペルフルオロポリマーである。ペルフルオロエラストマー組成物は、高温環境、プラズマ環境、又は厳しい化学環境に曝露される用途におけるシーリング材として有用である。これらの用途の一部としては、Oリング、フランジシール、パッキン、ガスケット、ポンプのダイヤフラム、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェイスシール、ガス供給プレートシール、ウエハサポートシール、胴シールなどが挙げられる。これらの用途は、化学処理、半導体、航空宇宙、自動車、石油などの様々な産業で見られる。
【0011】
これらの用途の多くでは、架橋又は成形過程中にペルフルオロエラストマー組成物を他の基材に接着させて、複合物品をもたらすのが望ましい。ペルフルオロエラストマーの化学的不活性のため、ペルフルオロエラストマー組成物と他の基材とを強力に接着させることは困難である。例えば200℃を超える温度のような高温に曝露されるときには、ペルフルオロエラストマー組成物と他の基材とを強力に接着させるのは特に困難である。
【0012】
架橋中にフルオロエラストマー及びペルフルオロエラストマーを基材に接着させる既知の方法が存在する。これらの方法のうちのいくつかは、ペルフルオロエラストマー組成物と基材との間にある程度の接着を提供するが、ペルフルオロエラストマー組成物と基材との間の接着性の向上に対するニーズが依然として存在する。
【0013】
本開示は、ペルフルオロエラストマー組成物と、本開示のプライマー組成物でコーティングされた基材とを驚くほど強力に接着させることを提供する。
【0014】
プライマーは、後の変更(例えば層の追加)に合わせて基材表面を調製する目的で基材に塗布されるコーティングである。本開示のプライマー組成物は、エポキシド樹脂と硬化剤と溶媒とを含む。
【0015】
本開示で有用であるエポキシド樹脂は、開環反応によって重合可能なオキシラン環、すなわち
【0016】
【化1】

を少なくとも1つ有する任意の有機化合物である。エポキシドと広く称されているこのような物質は、モノマー性エポキシドとポリマー性エポキシドの両方を含み、脂肪族、複素環式、脂環式、芳香族、及びこれらの組み合わせであることができる。これらは、液体、固体、又はそれらのブレンドであることができ、ブレンドは、硬化前の粘着性混合物をもたらすのに有用である。これらのエポキシド樹脂は一般に、平均で、1分子につき2つ超の官能基、すなわち少なくとも2つのエポキシ基を有し、「ポリエポキシド」とも称される。ポリマー性エポキシドとしては、末端エポキシ基を有する直鎖状ポリマー(例えばポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格にオキシラン単位を有するポリマー(例えばポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダント(pendent)エポキシ基を有するポリマー(例えばグリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシド樹脂の分子量は、少なくとも75、100、500、1000、2000、4000、又は更には5000グラム/モル、最大で4000、6000、8000、100000、又は更には15000グラム/モルであってよい。1つの実施形態では、エポキシド樹脂の分子量は100,000グラム/モル超である。
【0017】
有用なエポキシド樹脂としては、エポキシシクロヘキセンカルボキシレートのようにシクロヘキセンオキシド基を含むものが挙げられ、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシレート、3、4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン(methycyclohexane)カルボキシレート、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートに代表される。この性質を持つ有用なエポキシドの更に詳細な一覧に関しては、米国特許第3,117,099号を参照できる。
【0018】
本開示の実施の際に特に有用である更なるエポキシド樹脂としては、下記の式のグリシジルエーテルモノマーが挙げられる。
【0019】
【化2】

式中、R’は脂肪族、例えばアルキル;芳香族、例えばアリール;又はこれらの組み合わせであり、nは1〜6の整数である。例は、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェノール)プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、及び(クロロメチル)オキシランと4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノールとのコポリマーのような多価フェノールのグリシジルエーテルである。本開示の実施で使用することができるこのタイプのエポキシドの更なる例は、米国特許第3,018,262号で記載されている。
【0020】
本開示で使用することができる市販のエポキシド樹脂は多数ある。具体的には、入手しやすいエポキシドとしては、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、「EPON 828」、「EPON 1004F」、及び「EPON 1001F」という商品名で、OH、ColumbusのHexion Specialty Chemicalsから、並びに、「DER−332」及び「DER−334」という商品名で、MI、MidlandaのDow Chemical Co.から入手可能なもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば「ARALDITE GY281」という商品名で、NY、TarrytownのCiba−Geigy Corp.から、及び、「EPON 862」という商品名でHexion Specialty Chemicalsから入手可能なもの)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、TX、HoustonのUnion Carbide Corp.の「ERL−4206」という商品名を有するもの)、3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、Union Carbide Corp.の「ERL−4221」という商品名を有するもの)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン(例えば、Union Carbide Corp.の「ERL−4234」という商品名を有するもの)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(例えば、Union Carbide Corp.の「ERL−4299」という商品名を有するもの)、ジペンテンジオキシド(例えば、Union Carbide Corp.の「ERL−4269」という商品名を有するもの)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、PA、PhiladelphiaのFMC Corp.の「OXIRON 2001」という商品名を有するもの)、難燃性エポキシド樹脂(例えば、Dow Chemical Co.から入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシド樹脂で、「DER−542」という商品名を有するもの)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Ciba−Geigy Corp.、現在はNJ、Florham ParkのBASF Corp.の「ARALDITE RD−2」という商品名を有するもの)、水素化ビスフェノールA系エポキシド樹脂のジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicalsの「EPONEX 1510」という商品名を有するもの)、並びに、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック(novolak)のポリグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.の「DEN−431」及び「DEN−438」という商品名を有するもの)が挙げられる。
【0021】
1つの実施形態では、本開示のエポキシド樹脂は高い温度安定性を示す。すなわち、少なくとも200℃の温度で分解しない。典型的には、フェノール部分を含むエポキシド樹脂が高温安定性を有する。本開示では、多環芳香族エポキシド樹脂も考えられる。高い温度安定性が見込まれるからである。
【0022】
代表的なエポキシド樹脂としては、クレオソール/ノボラック(creosol/Novolak)、エピクロロヒドリン/テトラフェニロールエタン、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン、ノボラック(Novolak)/ビスフェノールA、エピクロロヒドリン/フェノール−ホルムアルデヒド、9,9ビス−2,3エポキシプロピルフェニルフルオレン、ビスフェノールAF/エピクロロヒドリン、ノボラック(Novolak)/ビスフェノールAF、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用する場合、エポキシド樹脂における「/」は、両方の要素を含む化合物を示す。例えば、ビスフェノールA/エピクロロヒドリンは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。
【0023】
本開示のプライマー組成物中の硬化剤は、エポキシド樹脂を硬化させるためにエポキシド樹脂と反応することができる化合物である。
【0024】
硬化剤としては、例えば、温度感受性のあるもの(例えば、室温で反応するか、又は、加熱によって活性化されるもの)、光分解により活性を有するもの、及びこれらの組み合わせが挙げられる。室温硬化剤、及び加熱活性化硬化剤としては、例えば、エポキシ単独重合型硬化剤と付加型硬化剤のブレンドを挙げることができる。硬化剤は、少なくとも室温、30℃、40℃、50℃、60℃、80℃、100℃、あるいは110℃、最大で50℃、60℃、80℃、100℃、120℃、150℃、180℃、200℃、220℃、250℃、あるいは300℃の温度で反応することができる。
【0025】
好適な硬化剤の例としては、多塩基酸及びその酸無水物、例えば、ジ−、トリ−、及びそれ以上のカルボン酸、例えば、シュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マレイン酸、アルキル及びアルケニル置換コハク酸、酒石酸、並びに無水物、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、及び無水ピロメリト酸;重合可能な不飽和酸、例えば、少なくとも10個の炭素原子を含むもの、例えば、ドデカン二酸(dodecendioic acid)、10,12−エイコサジエン酸(eicosadiendioic acid);及びメルカプタンが挙げられる。
【0026】
他の好適な硬化剤の例としては、含窒素化合物、例えば、ベンジルジメチルアミン、ベンジルアミン、N,N−ジエチルアニリン、メラミン、ピリジン、ヒドラジド、及び芳香族ポリアミン、例えば、o−、m−、及びp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、並びに、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−プロパンジオール−ビス(4−アミノベンゾエート)、フルオレン含有アミン(例えば、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−メチルアミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−アミノフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)フルオレン);1,4−ビス[α−(4−アミノフェニル)−α−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[α−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−α−メチルエチル]ベンゼン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)スルホン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン、及びジアミノナフタレンが挙げられる。
【0027】
他の好適な脂肪族含窒素硬化剤の例としては、ポリ(エーテル)アミン、グアニジン(例えばジシアンジアミド及びテトラメチルグアニジン)、イミダゾール(例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール)、シクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、シクロヘキシルジアミン、テトラメチルピペラミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1,2−ジアミノ−2−メチル−プロパン、2,3−ジアミノ−2−メチルブタン、2,3−ジアミノ−2−メチルペンタン、及び2,4−ジアミノ−2,6−ジメチルオクタンが挙げられる。
【0028】
好適なフェノール硬化剤の例としては、多価フェノール、例えば、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、及びトリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、並びに、これらのオルト置換類似体が挙げられる。
【0029】
他の有用な硬化剤としては、アルミニウム、ホウ素、アンチモン、及びチタンの塩素−、臭素−、及びフッ素−含有ルイス酸、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、五フッ化アンチモン、四フッ化チタンなどが挙げられる。これらのルイス酸をブロックするのが望ましい場合もある。ブロックしたルイス酸の代表的なものは、BF−モノエチルアミン、及びSbFXの付加体(米国特許第4,503,211号に記載されているように、Xはハロゲン、−OH、又はOR1であり、このR1は、脂肪族若しくは芳香族アルコール、アニリン、又はこれらの誘導体の残基である)である。
【0030】
光分解により活性を有する好適な硬化剤としては例えば、アンチモン及びコバルトのヨードニウム及びスルホニウム塩、ビス(アレーン)鉄化合物、並びに、その他の光発生酸又は塩基が挙げられる。
【0031】
エポキシド中で用いるのに適した市販の硬化剤の例としては、「EPI−CURE 8535−W−50」、及び「EPI−CURE 8537−WY−60」(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能)HY955(Ciba Specialty Chemicals Corp.から入手可能)、「AMICURE CG−1400」、「ANCAMINE 2337S」、「CUREZOL 2E4MZ」、及び「CUREZOL PHZ−S」(PA、AllentownのAir Products,Pacific Anchor Chemicalから入手可能)、「EPIKURE 3502」(OH、ColumbusのHexion Specialty Chemicalsから入手可能)、並びに、「DCA−221」(TX、PasadenaのDixie Chemical Co.から入手可能)という商品名で販売されているものが挙げられる。
【0032】
代表的な硬化剤としては、イソフタリルジヒドラジド、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、尿素、チオ尿素、エチレンジアミン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランとメチルイソブチルケトンとの縮合反応物を含むケチミン、アニリン(例えばパラメトキシアニリン)、o−ビスアミノフェノールAF、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
硬化剤は、エポキシド樹脂に対して約0.01〜70重量パーセントの量で存在してよい。硬化剤がカルボン酸、グアニジン、フェノール、酸無水物、又は、一級若しくは二級アミンであるときには、硬化剤は、エポキシド基1当量に対して約0.5〜約1.7当量の酸、無水物、又はアミンで存在してよい。硬化剤が酸無水物又はフェノールであるときには、促進剤をエポキシド樹脂の重量に対して約0.01〜約5.0パーセントの量で加えてもよい。促進剤も用いてもよい。好適な促進剤の例としては、芳香族三級アミン、例えばベンジルジメチルアミン、及びイミダゾール、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。ルイス酸は、エポキシド樹脂の総重量に対して約0.1〜約5重量パーセントの量で用いてよい。
【0034】
エポキシド樹脂と硬化剤は、好適な溶媒中で混合する。この溶媒は、溶解度、蒸発速度、流延性、レベリング性、臭気などの用途要件に基づき選択する。この溶媒は、エポキシド樹脂、好ましくは硬化剤を溶解できるのが好ましい。1つの実施形態では、溶媒のブレンドを用いる。
【0035】
代表的な溶媒としては、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、及びエチルイソプロピルケトンなど)、エステル(エチルアセテート及びブチルアセテートなど)、アルコール(メタノール及びエタノールなど)、スルホン(ジメチルスルホンなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びジエチレングリコールモノメチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、フッ化アルコール(ペルフルオロイソプロパノール、部分フッ化ペンタノールなど)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
本開示のペルフルオロエラストマー化合物は、ペルフルオロエラストマーと架橋剤又は触媒とを含む。本開示で有用なペルフルオロエラストマーは、酸、アルカリ、燃料、ケトン、アルデヒド、エステル、アルコール、及びアミンのような大半の化学物質に対する耐性を示す。本願で開示されるペルフルオロエラストマーは、良好な加工性、耐スコーチ性、及び脱型性と共に、優れた物理的特性(広範な温度範囲にわたる圧縮永久歪抵抗(compression set resistance)など)も示す。
【0037】
代表的なペルフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロアルキルビニルエーテル(例えばペルフルオロメチルビニルエーテル)のインターポリマー化したモノマーを含む。
【0038】
硬化可能であるように、ペルフルオロエラストマー化合物のペルフルオロエラストマーは硬化部位を含む。架橋剤又は触媒に加えて、これらの硬化部位を用いて、ペルフルオロエラストマー化合物を架橋する。いくつかの実施形態では、架橋部位モノマーは、フッ素化されていなくても、部分的にフッ素化されていても(例えばフッ化ビニリデン又はペンタフルオロプロペン)、又は完全にフッ素化されていてもよい。
【0039】
1つの実施形態では、硬化剤は、エポキシド樹脂とペルフルオロエラストマーの両方と反応する。この実施形態では、ペルフルオロエラストマー化合物は、少なくとも1つの硬化部位と架橋剤又は触媒とを含む。
【0040】
別の実施形態では、硬化剤は、ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができない。この実施形態では、ペルフルオロエラストマー化合物中の硬化剤又は触媒は、エポキシド樹脂とペルフルオロエラストマーの両方と反応する。
【0041】
本明細書で使用する場合、架橋剤は架橋反応後にポリマー架橋部の一部となる分子を指し、一方、架橋触媒は架橋反応に関与するが、得られるポリマー架橋部の一部にはならない分子である。
【0042】
本開示のフルオロポリマーは、硬化部位構成成分を含んでもよく、この成分によって、フルオロエラストマーの硬化(又は架橋)が可能になる。代表的な硬化部位としては、窒素含有硬化部位、臭素含有硬化部位、塩素含有硬化部位、若しくはヨウ素含有硬化部位、又はオレフィンが挙げられる。硬化部位を含む典型的な硬化部位モノマーは、重合中にフルオロポリマーの中に組み込まれる。窒素含有硬化部位を含むフルオロポリマーを調製するのに有用な窒素含有基を含むモノマーの例としては、フリーラジカル重合可能なニトリル、イミダート、アミジン、アミド、イミド、及びアミンオキシドが挙げられる。
【0043】
有用な窒素含有硬化部位としては例えば、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF=CFO(CFCN(式中、Lは2〜12の整数である)、CF=CFO(CFOCF(CF)CN(式中、uは、2〜6の整数である)、CF=CFO[CFCF(CF)O](CFO)CF(CF)CN(式中、qは0〜4の整数であり、rは0〜6の整数である)、又はCF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCN(式中、rは1又は2であり、tは1〜4の整数である)、並びに、これらの誘導体及び組み合わせが挙げられる。
【0044】
本開示のペルフルオロエラストマーは、架橋反応用の硬化部位として機能することができる十分な量の窒素官能基を含まなければならない。一実施形態では、窒素含有官能基は、ニトリル含有基である。ニトリル基は、ニトリル含有硬化部位モノマーの使用によって導入することができる、つまり、ニトリル基は、重合中にポリマーに導入される。しかしながら、この開示では他の導入方法も想到される。ニトリル含有硬化部位モノマーの例としては、CF=CFOCF(CFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
フルオロポリマーの側鎖位置における窒素含有硬化部位の量は、一般的に、約0.05〜約5モル%、又は更には0.1〜2モル%である。
【0046】
本開示のフルオロエラストマーゴムは、過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲン含有物質も含んでもよい。一般に、ハロゲンは臭素又はヨウ素である。好適な硬化部位構成成分としては、炭素原子数2〜4個の末端不飽和モノオレフィン、例えば、ブロモジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、及びヨードトリフルオロエチレン、4−ヨード−3,3,4,4テトラフルオロブテン−1、及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1が挙げられる。他の好適な硬化部位構成成分の例としては、CF=CFOCFCFBr、CF=CFOCFCFCFBr、及びCF=CFOCFCFCFOCFCFBrが挙げられる。好ましくは、これらの構成成分の全て又は本質的に全ては、エチレン性不飽和モノマーである。いくつかの実施形態では、臭素及び/又はヨウ素原子が、フルオロエラストマーゴムの末端基であってよい。
【0047】
本発明で有用である別の好適な硬化部位構成成分はオレフィンである。例えば、米国特許第5585449号(Arcellaら)、及び同第5902857号(Wlassicsら)に記載されているようなフッ化ビスオレフィンに由来するペンダントビニル基。
【0048】
架橋剤又は触媒をペルフルオロエラストマーゴムに加えて、フルオロポリマーを架橋させる。一般に、架橋剤又は触媒(1種を超える組成物を含んでよい)の有効量は、重量基準で硬化性組成物100部当たり少なくとも約0.1部、より典型的には硬化性組成物100部当たり少なくとも約0.5部である。重量基準での架橋剤又は触媒の有効量は典型的には、硬化性組成物100部当たり約10部未満、より典型的には硬化性組成物100部当たり約5部未満であるが、これよりも多い量及び少ない量を用いてもよい。
【0049】
架橋剤及び触媒としては、過酸化物、トリアジン形成硬化剤、ベンズイミダゾール形成硬化剤、ベンゾオキサゾール形成硬化剤、アジペート、及びアセテート、有機金属化合物、オニウム塩化合物、ペルフルオロカルボン酸塩、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリ(メチル)アリルイソシヌレート(TMAIC)などを含む当該技術分野において既知のものを挙げることができる。これらの架橋剤及び触媒は、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
【0050】
1つの実施形態では、架橋剤は、トリアジン形成硬化ネットワークから選択してよい。このような架橋剤としては、有機スズ化合物(プロパルギル−、トリフェニル−及びアレニル−、テトラアルキル−、並びにテトラアリールスズ硬化剤など)、アンモニア生成化合物(例えば、米国特許第6,281,296号を参照)、ペルフルオロオクサン酸アンモニウム(例えば、米国特許第5,565,512号を参照)のようなアンモニウム塩、アミジン(例えば、米国特許第6,846,880号を参照)、イミダート(例えば、米国特許第6,657,013号を参照)、金属アミン錯体(例えば、米国特許第6,657,012号を参照)、及び塩酸塩(例えば、米国特許第6,794,457号を参照)が挙げられる。
【0051】
過酸化物も架橋触媒として用いてよい。有用な過酸化物は、硬化温度でフリーラジカルを生成するものである。50℃を超える温度で分解するジアルキル過酸化物又はビス(ジアルキル過酸化物)が特に好ましい。多くの場合、ペルオキシ酸素に結合した三級炭素原子を有するジ−第3ブチルペルオキシドを使用することが好ましい。選択される過酸化物には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)3−へキシン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、第3ブチルペルベンゾアート、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン)、並びにジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)−ブチル]炭酸塩を挙げることができる。一般に、ペルフルオロエラストマー100部当たり約1〜3部の過酸化物が使用される。
【0052】
別の実施形態では、アンモニア生成触媒と共に1つ以上の過酸化物触媒を用いて、フルオロエラストマー組成物を硬化させることができる。触媒は、例えば、第1の構成成分及び第2の構成成分を含むことができ、この第1の構成成分は、R’C(CFR)O(式中、Qは、非妨害有機ホスホニウム、有機スルホニウム、又は有機アンモニウムカチオンであり、各Rは独立して、H、ハロゲン、ヒドロカルビル基、又はハロゲン化ヒドロカルビル基を表し、このヒドロカルビル基の少なくとも1つの炭素原子は、N、O、及びSから選択される1つ以上のへテロ原子で更に置換されてもよく;R’は、H、ヒドロカルビル基、又はハロゲン化ヒドロカルビル基を表し、このヒドロカルビル基の少なくとも1つの炭素原子は、N、O、及びSから選択される1つ以上のへテロ原子で更に置換されてもよいか;又はR若しくはR’のうちの任意の2つは一緒になって二価ヒドロカルビレン基を形成してもよく、このヒドロカルビレン基の少なくとも1つの炭素原子は、N、O、及びSから選択される1つ以上のへテロ原子で更に置換されてもよい)によって表され、第2の構成成分は、[N≡CCFR”]Z(式中、各R”は独立して、F又はCFを表し、bは任意の正の整数を表し、Zは、妨害基を含まないb価の有機部分を表す)によって表される。例えば、米国特許第7,294,677号を参照のこと。例としては、CFOCFCFCN及びテトラブチルホスホニウム2−(p−トルイル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシドの反応生成物;CFOCFCFCN及びテトラブチルアンモニウム2−(p−トルイル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシドの反応生成物;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
1つ以上のアンモニア生成化合物を含む触媒を用いて、ペルフルオロエラストマーを硬化させてもよい。アンモニア生成化合物は、周囲条件で固体又は液体であるが、硬化条件下でアンモニアを生成する化合物を含む。このような化合物としては、例えば、ヘキサメチレンテトラアミン(ウロトロピン)、ジシアンジアミド、及び式Aw+(NHw−の金属含有化合物が挙げられ、式中、Aw+は、Cu2+、Co2+、Co3+、Cu、又はNi2+などの金属カチオンであり、wは金属カチオンの価数に等しく、Yw−は対イオン、典型的には、ハライド、サルフェート、ニトレート、アセテートなどであり、vは1〜約7の整数である。
【0054】
次式を有するもの等の置換及び非置換トリアジン誘導体もまたアンモニア生成化合物として有用である:
【0055】
【化3】

式中、Rは、水素又は1〜約20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル、アリール、若しくはアラルキル基である。特定の有用なトリアジン誘導体としては、ヘキサヒドロ−1,2,5−s−トリアジン、及びアセトアルデヒドアンモニア三量体が挙げられる。
【0056】
1つの実施形態では、架橋剤は下記のものから選択してよい。
【0057】
【化4】

米国特許第6,114,452号に開示されているもののように、式中、AはSO、O、CO、炭素原子数1〜6個のアルキル、炭素原子数1〜10個のペルフルオロアルキル、又は、2つの芳香環を結合する炭素間結合である。
【0058】
有用な架橋剤としては、ビス(アミノフェノール)、例えば2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(例えば米国特許第5,767,204号、及び同第5,700,879号を参照);、テトラフェニルスズ;ビス(アミノチオフェニール)、例えば4,4’−スルホニルビス(2−アミノフェノール);芳香族アミノ化合物;並びに、テトラアミン、例えば3,3’ジアミノベンジジン;及び3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノンを挙げてよい。
【0059】
ビスアミドラゾン化合物、例えば、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンビスアミドラゾン;及びビスアミドキシム(例えば、米国特許第5,621,145号を参照)を用いて、ペルフルオロエラストマー化合物を架橋してもよい。
【0060】
別の実施形態では、下記の式の架橋触媒(又はその前駆体)を用いてもよい。
【0061】
{R(A)(−n){QR’(+)
式中、RはC〜C20アルキル若しくはアルケニル、C〜C20シクロアルキル若しくはシクロアルケニル、又はC〜C20アリール若しくはアラルキル(フッ素化されていなくても、部分的にフッ素化されていても、完全にフッ素化されていてもよい)であり、{R(A)(−n)は酸性アニオン、又は酸誘導体アニオンであり、nはアニオン中のA基の数であり、Qはリン、硫黄、窒素、ヒ素、又はアンチモンであり、各R’は独立して、水素、又は置換若しくは非置換のC1〜20アルキル、アリール、アラルキル、若しくはアルケニル基であり(ただし、Qが窒素であり、組成物中の唯一のフルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、ペルフルオロビニルエーテルと、ニトリル基を含むペルフルオロビニルエーテル硬化部位モノマーとのターポリマーから本質的になるときには、全てのR’がHであるわけではない)、kはQの価数よりも大きい数である。(例えば、米国特許第6,890,995号を参照。)例としては、ビステトラブチルホスホニウムペルフルオロアジペートが挙げられる。
【0062】
別の実施形態では、架橋触媒は、下記の式によって表されてもよい。
【0063】
{RA}(−){QR’(+)
式中、Rは水素、1〜20個の炭素原子を有するアルキル若しくはアルケニル、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル若しくはシクロアルケニル、又は、6〜20個の炭素原子を有するアリール若しくはアルカリールである。Rは、少なくとも1つのヘテロ原子、すなわち、O、P、S、又はNのような非炭素原子を含むことができる。R基中の1つ以上の水素原子がCl、Br、又はIで置換されている場合のように、Rは置換されていることもできる。Aは酸アニオン、又は酸誘導体アニオンであり、例えば、AはCOO、SO、SO、SONH、PO、CHOPO、(CHO)PO、CO、OSO、O(Rが水素、アリール、又はアルキルアリールである場合)、
【0064】
【化5】

であることができ、R’はRの定義(上記)と同様であり、R’に関する特定の選択は、Aに結合しているRと同じであっても異なっていてもよく、1つ以上のA基がRに結合していてもよく;Qはリン(P)、硫黄(S)、窒素(N)、ヒ素(As)、又はアンチモン(Sb)であり、kはQの価数である。(例えば、米国特許第6,844,388号を参照。)例としては、テトラブチルホスホニウムアセテート、及びテトラブチルホスホニウム安息香酸塩を挙げてよい。
【0065】
存在する硬化部位構成成分によって、二重硬化系(dual cure system)を使用することも可能である。例えば、ニトリル含有硬化部位モノマーの共重合単位を有するペルフルオロエラストマーは、有機スズ硬化剤及び助剤(co-agent)と組み合わせた過酸化物の混合物を含む硬化剤を使用して硬化させることができる。
【0066】
助剤(時折、硬化助剤(co-curative)と称される)は、過酸化物と協働して有用な硬化を提供することが可能なポリ不飽和化合物から成ることができる。これらの助剤は、0.1〜10phr(ゴム100部当たりの部)、又は更には1〜5phrと同等量で添加することができる。助剤は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、トリアリルホスフェート、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホラミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、及びトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートという化合物のうちの1つ以上であってよい。トリアリルイソシアヌレートが特に有用である。
【0067】
他の有用な助剤としてはビス−オレフィンが挙げられる。例えば米国特許第5,585,449号、及び同第5,902,857号を参照のこと。
【0068】
例えば、米国特許第4,281,092号及び同第5,554,680号に記載のように、ヒ素、アンチモン、及びスズの有機金属化合物を用いてもよい。具体例としては、アリル−、プロパルギル−、トリフェニル−、アレニル−、及びテトラフェニルスズ並びにトリフェニルスズ水酸化物が挙げられる。
【0069】
本開示では、多層物品は、基材とペルフルオロエラストマー層を密着させるプライマー層を含む。1つの実施形態では、この多層物品は、以下に開示されている方法によって調製する。
【0070】
プライマー組成物を基材に塗布する。本明細書で使用する場合、「基材」という用語は、ペルフルオロエラストマーに接着するのに適した任意の材料を意味する。基材としては例えば、様々な金属(例えばアルミニウム、又はステンレススチールなど)、ポリマー(フッ素化されていないプラスチック及びエラストマー、並びにフッ素化されたプラスチック及びエラストマーなど)、炭素繊維、セラミック(ガラスなど)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態では、ポリマー基材としては、少なくとも150℃、175℃、200℃、250℃、300℃、又は350℃まで安定しているポリマーが挙げられ、例えば、ペルフルオロ化ポリマー、部分フッ化ポリマー、ポリイミドなどが挙げられる。プライマー組成物は、例えばディッピング、スプレーコーティング、流し込み法などを含め、当該技術分野において既知の技法によって基材に塗布してよい。
【0071】
続いて、コーティングした基材をペルフルオロエラストマーコンパウンドと接触させる。コンパウンド化されたペルフルオロエラストマーは、フィルム、小片、コード、プレフォーム、又は粉末の形状であってよい。
【0072】
続いて、ペルフルオロエラストマーコンパウンドで覆われた基材(ペルフルオロエラストマーコンパウンヂ/プライマー/基材)を少なくとも100℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、又は更には200℃、最大で150℃、160℃、180℃、200℃、220℃、250℃、又は更には275℃まで加熱して、ペルフルオロエラストマーコンパウンドを硬化させる。ペルフルオロエラストマーコンパウンドで覆われた基材を成形型中で加熱して、硬化及び接着されたペルフルオロエラストマー物品を形成させてもよい。ペルフルオロエラストマーコンパウンドで覆われた基材を加熱することによって、ペルフルオロエラストマーとエポキシド樹脂を硬化させると共に、層を合わせて接着させ、接着した多層物品を形成させる。
【0073】
後硬化を行って、多層物品をさらに硬化させてもよい。1つの実施形態では、硬化及び接着されたペルフルオロエラストマー物品を少なくとも150℃、175℃、200℃、又は更には200℃、最大で250℃、275℃、300℃、325℃、350℃、又は更には375℃の温度で後硬化させると共に、基材に接着させ続けてよい。
【0074】
ペルフルオロエラストマー組成物と他の基材との間にある本開示のプライマー組成物は、高温、例えば少なくとも200℃、215℃、230℃、250℃、275℃、又は更には300℃などの温度に曝露される場合、接着一体性を保持する。
【実施例】
【0075】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照することによって組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【0076】
【表1】

実施例1:0.186グラムの硬化剤(CUR1)を10グラムのMEKに溶解させた。1グラムのARALDITE ECN 1280を9グラムのMEKに溶解させた。溶媒中のエポキシと溶媒中の硬化剤を1:1で混合して、プライマー組成物を作製した。
【0077】
94重量部のPFE 131T Zを2本ロールミルで、10重量部のASTM規格N−990 MTのカーボンブラック(Canada、AlbertaのCancarb製)、8重量部のSTATEX、1.5重量部のAEROSIL R−972、6重量部のPFE 01C、及び2.5重量部のPFE 02Cとコンパウンド化させた。
【0078】
下記の修正を加えたASTM D−4896−01に従って、上記のプライマー組成物の接着性について試験した。アルミニウム(6061タイプ)クーポン(2.54cm×6.35cm×0.15cm)(MN、St.PaulのLoftech Prototype Manufacturingから入手したもの)に60グリットの酸化アルミニウムでグリットブラストを行い、冷水ですすぎ、アルミニウム洗浄剤(「Oakite Aluminum Cleaner 164」という商品名でNJ、Berkeley HeightsのOakite Products Inc.から入手可能)で洗浄し、「Oakite Deoxidizer LNC」という商品名でNJ、Berkeley HeightsのOakite Products Inc.から入手可能な製品で脱酸素し、冷水中ですすぎ、風乾した。グリットブラストを行い洗浄した2つのアルミニウムクーポンのそれぞれの2.54cm×1.27cmの末端区域の1つに、上記の硬化剤を3滴注ぎ、乾燥させた。
【0079】
ミルでコンパウンド化した未硬化ペルフルオロエラストマーを約2.54cm×1.27cmのフィルム(約1.3グラム)に切断し、プライマー処理及び乾燥を行ったアルミニウムクーポンのうちの1つの約2.54cm×1.27cmの末端部の上に広げた。続いて、プライマー処理したアルミニウムクーポンにペルフルオロエラストマーを10分間、177℃(350°F)で成形した。ペルフルオロポリマーの適用直後の、成形したクーポンについてASTM D−4896−01による接着試験を行った。16時間、200℃で熟成させた(すなわち後硬化させた)後、及び16時間、232℃で熟成させた(すなわち後硬化させた)後にも、成形したクーポンについてASTM D−4896−01による接着試験を行った。3回の全ての接着試験の結果は表1にまとめられている。
【0080】
実施例2〜7:表1の実施例2〜7の部分で示されている材料を用いた以外は、実施例1と同様にしてプライマー組成物を作製し、接着試験を行った。これらの接着結果も表1にまとめられている。
【0081】
実施例8〜11:米国特許出願公開第20060182949号(Salnikovら)の実施例2に従ってプライマー組成物を作製した。このプライマー組成物は、材料の表にEPOXY1及びCUR7として記載されている。この4つの実施例の全てにおいて同じプライマー組成物を用いたが、溶媒は変えた。プライマー組成物は、実施例9以外の全ての溶媒において5重量%で使用し、実施例9では、20重量%含有のプライマー組成物で使用した。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表1にまとめられている。
【0082】
実施例12:用いたプライマー組成物とペルフルオロエラストマーは、実施例1のものと同じであった。ただし、アルミニウムクーポンを用いる代わりに、基材は、炭素繊維複合材(「RIGID CARBON FIBER BARS」という商品名、品番8194K12でIL、ElmhurstのMcMaster−Carr Supply Co.から入手可能)であった。この複合材は、実施例1で用いたアルミニウムクーポンと同じ寸法であった。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0083】
実施例13:0.186グラムの硬化剤(CUR1)を10グラムのMEKに溶解させた。1グラムのARALDITE ECN 1280を9グラムのMEKに溶解させた。溶媒中のエポキシと溶媒中の硬化剤を混合して、プライマー組成物を作製した。
【0084】
97.6重量部のPFE 131T Zを2本ロールミルで、10重量部のSTATEX、1.5重量部のAEROSIL R−972、3重量部のPFE 01C、1重量部のテトラアリルシラン(3M ESPE AGから入手したもの)、0.5部のハイドロタルサイトDHT−2A(JapanのKisuma Chemicalsから入手したもの)、1.5部のTAIC、及び1部の過酸化物(CT、NorwalkのR.T.Vanderbiltから入手したもの)とコンパウンド化させた。
【0085】
実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0086】
実施例14:プライマー組成物は、MIBKとMEKの1.7:1.0混合物中に10重量%のEPOXY1を加えたもの10グラムと、メタノール中に10重量%のCUR2を加えたもの1グラムとから構成された。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0087】
実施例15:プライマー組成物は、MEK中に10重量%のARALDITE ECN 1280を加えたもの5グラムと、MEK中に10重量%のCUR3を加えたもの1グラムとから構成された。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0088】
実施例16:プライマー組成物は、MEK中に10重量%のARALDITE ECN 1280を加えたもの5グラムと、MEK中に10重量%のCUR4を加えたもの1グラムとから構成された。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0089】
実施例17:プライマー組成物は、MEK中に10重量%のARALDITE ECN 1280を加えたもの5グラムと、MEK中に2重量%のCUR5を加えたもの1グラムとから構成された。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0090】
実施例18:プライマー組成物は、MEK中に10重量%のARALDITE ECN 1280を加えたもの5グラムと、1グラムのCUR6とから構成された。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0091】
実施例19:0.186グラムの硬化剤(CUR1)を10グラムのMEKに溶解させた。1グラムのARALDITE ECN 1280を9グラムのMEKに溶解させた。その溶媒中のエポキシと溶媒中の硬化剤とを1:1で混合して、プライマー組成物を作製した。
【0092】
100重量部のPFE 90 Zを2本ロールミルで、15重量部のASTM規格N−990 MTのカーボンブラック(Canada、AlbertaのCancarbによって製造された「THERMAX N990」という商品名で入手したもの)、5重量部の酸化亜鉛(PA、PittsburghのHorsehead Corp.から入手したUSP #1グレードのもの)、2.5部のTAIC、及び1.5部の過酸化物とコンパウンド化させた。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0093】
実施例20:0.186グラムの硬化剤(CUR1)を10グラムのMEKに溶解させた。1グラムのARALDITE ECN 1280を9グラムのMEKに溶解させた。その溶媒中のエポキシと溶媒中の硬化剤とを混合して、プライマー組成物を作製した。
【0094】
100重量部のPFE 131T Zを2本ロールミルで、10重量部のASTM規格N−990 MTのカーボンブラック、8重量部のSTATEX、5重量部のUSP #1グレードの酸化亜鉛(PA、PittsburghのHorsehead Corp.から入手したもの)、3.5部のTAIC、及び1.2部の過酸化物とコンパウンド化させた。
【0095】
実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0096】
実施例21:0.186グラムの硬化剤(CUR1)を10グラムのMEKに溶解させた。1グラムのARALDITE ECN 1280を9グラムのMEKに溶解させた。その溶媒中のエポキシと溶媒中の硬化剤とを1:1で混合して、プライマー組成物を作製した。
【0097】
100重量部のPFE 131T Zを2本ロールミルで、10重量部のASTM規格N−990 MT、8重量部のSTATEX、3.5部のTAIC、及び1.2部の過酸化物とコンパウインド化させた。
【0098】
実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表2にまとめられている。
【0099】
実施例22〜23:アルミニウムの代わりにそれぞれ、カーボンスチールクーポン及びステンレススチールクーポンを基材として用いた以外は、実施例1と同様にしてプライマー組成物を作製し、接着試験を行った。これらの接着結果も表2に示されている。
【0100】
比較例1:プライマー組成物は、エポキシド樹脂がない以外は実施例1のものと同じであった。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表1にまとめられている。
【0101】
比較例2:プライマー組成物は、硬化剤を加えずに1.0グラムのEPOXY1を9.0グラムのMEKに溶解させたものから構成された。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表1にまとめられている。
【0102】
比較例3:プライマー組成物は、CHEMLOK 5150(シラン系樹脂)から構成された。この材料はエポキシ樹脂を含まないが、部分フッ化エラストマーに金属を接着させる目的で用いられる。プライマー組成物を、50重量%にメタノール溶解した。実施例1と同様に接着試験を行った。結果は表1にまとめられている。
【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

1=未試験
2=アルミニウムの代わりに炭素繊維複合材に接着。実施例12以外の全ての実施例ではアルミニウムを使用。
【0105】
3=用いたペルフルオロエラストマーはPFE90XZ。実施例19以外の全ての実施例では、PFE131TZを用いた。
【0106】
4=MN、OakdaleのClassic Manufacturing Co.の1018タイプの軟鋼(カーボンスチール)のクーポンに接着。実施例22以外の全てのサンプルでは、別段の断りのない限りはアルミニウムを用いた。
【0107】
5=MN、OakdaleのClassic Manufacturing Co.の304タイプのステンレススチールのクーポンに接着。実施例23以外の全ての実施例では、別段の断りのない限りはアルミニウムを用いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを含むプライマー組成物であって、前記硬化剤が前記エポキシド樹脂と反応することができ、更に、
(a)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤又は触媒とを硬化させることができるか、又は、
(b)前記硬化剤が前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤又は触媒を含むプライマー組成物。
【請求項2】
前記エポキシド樹脂がフェノール部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシド樹脂の官能価が2よりも大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、イソフタリルジヒドラジド、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、チオ尿素、エチレンジアミン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランとメチルイソブチルケトンとの縮合生成物を含むケチミン、多環芳香族ポリアミン、アミノフェノール含有化合物、o−ビスアミノフェノールAF、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶媒が、ケトン、アルコール、スルホン、スルホキシド、エーテル、グリコールエーテル、アミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒が含フッ素アルコールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記架橋剤又は触媒が、アンモニア生成化合物、有機金属化合物、オニウム塩化合物、ペルフルオロカルボン酸塩、過酸化物、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記硬化部位が、窒素含有硬化部位、臭素含有硬化部位、塩素含有硬化部位、又はヨード含有硬化部位、オレフィン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記窒素含有硬化部位がニトリル含有硬化部位である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記エポキシド樹脂が、クレゾールノボラック、エピクロロヒドリン/テトラフェニロールエタン、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールA、エピクロロヒドリン/フェノール−ホルムアルデヒド、9,9−ビス−2,3−エポキシプロピルフェニルフルオレン、ビスフェノールAF/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールAF、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ペルフルオロエラストマー化合物を基材に接着する方法であって、
(a)前記基材を、硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを含むプライマー組成物でコーティングする工程であって、プライマー組成物は、前記硬化剤が前記エポキシド樹脂を反応させることができ、更に、
(i)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤又は触媒とを硬化させることができるか、又は、
(ii)前記硬化剤が前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤又は触媒を含むプライマー組成物である、コーティング工程と、
(b)前記コーティングした基材を前記ペルフルオロエラストマー化合物で被覆する工程と、
(d)前記ペルフルオロエラストマー化合物で被覆した前記基材を少なくとも150℃まで成形型内で加熱して、硬化及び接着したペルフルオロエラストマー物品を形成する工程と、を含む方法。
【請求項12】
前記硬化及び接着したペルフルオロエラストマー物品を175℃〜300℃の範囲の温度で後硬化させる工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基材とプライマー層と硬化性フルオロエラストマー層とを含む多層物品であって、前記プライマー層は、硬化剤と溶媒とエポキシド樹脂とを含む組成物から得られ、かつ前記硬化剤が前記エポキシド樹脂を硬化させることができ、更に、
(a)前記硬化剤が、少なくとも1つの硬化部位を有するペルフルオロエラストマー化合物と架橋剤又は触媒とを硬化させることができるか、又は、
(b)前記硬化剤が前記ペルフルオロエラストマー化合物を硬化させることができないときには、前記ペルフルオロエラストマーが、前記エポキシド樹脂を硬化させることができる架橋剤又は触媒を含むプライマー層である、多層物品。
【請求項14】
前記エポキシド樹脂がフェノール型エポキシ樹脂である、請求項13に記載の多層物品。
【請求項15】
前記エポキシド樹脂の官能価が2よりも大きい、請求項13に記載の多層物品。
【請求項16】
前記基材が、金属、ポリマー、炭素繊維、セラミック、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の多層物品。
【請求項17】
前記硬化剤が、イソフタリルジヒドラジド、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、チオ尿素、及び、エチレンジアミン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランとメチルイソブチルケトンとの縮合生成物を含むケチミン、o−ビスアミノフェノールAF、並びに、これらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の多層物品。
【請求項18】
前記溶媒が、ケトン、アルコール、スルホン、スルホキシド、エーテル、グリコールエーテル、アミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の多層物品。
【請求項19】
前記エポキシド樹脂が、クレゾールノボラック、エピクロロヒドリン/テトラフェニロールエタン、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールA、エピクロロヒドリン/フェノール−ホルムアルデヒド、9,9−ビス−2,3−エポキシプロピルフェニルフルオリン、エポキシプロピルフェニルフルオレン、ビスフェノールAF/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールAF、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の多層物品。
【請求項20】
前記架橋剤又は触媒が、アンモニア生成化合物、有機金属化合物、オニウム塩化合物、ペルフルオロカルボン酸塩、過酸化物、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の多層物品。

【公表番号】特表2013−513697(P2013−513697A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543230(P2012−543230)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059405
【国際公開番号】WO2011/071984
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】