説明

ホットメルトアプリケータ

【課題】原料ペレットの詰まりが防止され、且つ速やかに溶融され、短時間で、効率よく接着剤を塗布することができるホットメルトアプリケータを提供する。
【解決手段】ホットメルト接着剤(ポリアミド系ホットメルト接着剤等)の原料ペレットが供給されるシリンダ1、及びシリンダ1内に回転可能に配置されたスクリュー2、を有するスクリュー式押出機10と、シリンダ1内で溶融したホットメルト接着剤が送り込まれるとともに、被塗装体にホットメルト接着剤を塗布するための塗布ガン5と、を備え、シリンダ1のうちの原料ペレットが供給されるペレット供給部11を冷却するための冷却手段12(フィン、水冷等)と、ペレット供給部11より下流側に位置するシリンダ1の下流部13を加熱するための加熱手段14(バンドヒータ等)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルトアプリケータに関する。更に詳しくは、本発明は、スクリュー式押出機を用いたホットメルトアプリケータであり、押出機のシリンダのうちの原料ペレットの供給部を冷却するための冷却手段と、供給部より下流部を加熱するための加熱手段とを備えるホットメルトアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホットメルト接着剤のアプリケータとしては、タンク溶融式アプリケータが用いられている。例えば、図9に記載されたタンク溶融式アプリケータ8は、タンク81に原料ペレット86を投入し、タンク81の底部に配設されたヒータ82により加熱して原料ペレット86を溶融させ、その後、ポンプ83により溶融した原料をタンク81から送出し、外周にヒータが取り付けられたフレキシブルホース84を流通させ、塗布ガン85に送り込み、この塗布ガン85から溶融した原料を吐出させることにより、被塗装体にホットメルト接着剤を塗布することができる。
【0003】
しかし、従来のタンク溶融式アプリケータでは、ヒータがタンクの底部のみに配設されているため、原料ペレットの溶融に長時間を必要とし、タンクの容量にもよるが、数十分から1時間程度の時間が必要である。また、塗布を中断し、その後、再開するときの再溶融時には、より長時間を必要とするため、塗布再開に備えて予め加熱を開始しておくという作業も必要になる。更に、ホットメルト接着剤は熱劣化により粘度が低下するため、吐出量の調整が難しくなるという問題もある。また、溶融した原料がタンク及びフレキシブルホース内に長時間滞留して熱劣化し、炭化することもあり、生成したゲル等によってフレキシブルホースが詰まってしまうこともある。更に、フレキシブルホースとはいっても、外周にヒータが取り付けられているため、必ずしも十分に柔軟ではなく、塗布時の操作が容易ではないという問題もあり、ホースを十分に回動させるためには、例えば、5mを超える長寸法のホースにしなければならないという問題もある。
【0004】
また、液材を吐出させ、塗布する装置として、半導体装置におけるアンダーフィル材の注入、及び接着剤、はんだペースト等の塗布に用いられるスクリュー式ディスペンサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。更に、サーボモーター付き電動シリンダーの推力を利用したプランジャータイプのホットメルト用アプリケーターも知られており(例えば、特許文献2参照。)、このホットメルト用アプリケーターでは、ホットメルト溶解タンクを密封することにより、材料の酸化が防止され、品質の安定化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−185916号公報
【特許文献2】特開2005−177728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたディスペンサーはスクリュー式ではあるが、吐出させ、塗布するものがアンダーフィル材等の液材であり、冷却又は加熱は、通常、全く必要とされていない。また、特許文献2に記載されたアプリケーターはホットメルト用であり、タンクにバンドヒーターが巻かれ、加熱されているが、ゾーンによって冷却する、又は加熱するといったことについては全く記載がない。
【0007】
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、スクリュー式押出機を用いたホットメルトアプリケータであり、押出機のシリンダのうちの原料ペレットの供給部を冷却するための冷却手段と、供給部より下流部を加熱するための加熱手段とを備えるホットメルトアプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.ホットメルト接着剤の原料ペレットが供給されるシリンダ、及び前記シリンダ内に回転可能に配置されたスクリュー、を有するスクリュー式押出機と、前記シリンダ内で溶融したホットメルト接着剤が送り込まれるとともに、被塗装体にホットメルト接着剤を塗布するための塗布ガンと、を備えるホットメルトアプリケータであって、
前記シリンダのうちの前記原料ペレットが供給されるペレット供給部を冷却するための冷却手段と、前記ペレット供給部より下流側に位置する前記シリンダの下流部を加熱するための加熱手段と、を備えることを特徴とするホットメルトアプリケータ。
2.前記ホットメルト接着剤が前記塗布ガンから吐出される位置が、前記スクリューの軸線上から外れている前記1.に記載のホットメルトアプリケータ。
3.前記塗布ガンが、前記シリンダの先端部の外周面、又は該シリンダの先端面に取り付けられている前記2.に記載のホットメルトアプリケータ。
4.前記スクリューの先端部から前記塗布ガンへの前記溶融したホットメルト接着剤の流路の周縁部及び該塗布ガンが加熱されている前記2.又は3.に記載されたホットメルトアプリケータ。
5.全長が500mm以下である前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のホットメルトアプリケータ。
6.前記ペレット供給部の内表面の温度が60℃以下である前記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のホットメルトアプリケータ。
7.前記ペレット供給部がアルミニウム製であり、前記下流部が鋼製である前記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載のホットメルトアプリケータ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホットメルトアプリケータは、シリンダのうちのペレット供給部を冷却するための冷却手段と、ペレット供給部より下流部を加熱するための加熱手段と、を備えるため、ペレット供給部における原料ペレットの粘着による詰まりが防止され、且つシリンダの下流部においては原料ペレットが速やかに溶融され、短時間で、効率よく被塗装体にホットメルト接着剤を塗布することができる。また、小型化が容易であり、例えば、スクリュー径が15〜20mmφ程度の小型のスクリュー式押出機を用いることができ、この場合、原料ペレットの溶融に要する時間を、従来のタンク溶融式アプリケータのときの数十分から、数十秒又は数秒にまで短縮することができる。更に、塗布を中断したときに、シリンダ内には先端側の1/3程度の長さに固化したホットメルト接着剤が残留することになるが、これも小型化により少量とすることができるとともに、従来のタンク溶融式アプリケータのときのタンク底部の角部のようなデッドスペースもないため、長時間に亘って熱に曝され、ホットメルト接着剤が劣化し、炭化して、塗布ガンが詰まってしまうという問題もない。
また、ホットメルト接着剤が塗布ガンから吐出される位置が、スクリューの軸線上から外れている場合は、塗布ガンから吐出されたホットメルト接着剤が、スクリューの回転により螺旋状になってしまうのが抑えられ、ホットメルト接着剤を直線状に吐出させることができる。更に、劣化した接着剤が流路に残留し易い塗布ガンの取り外し、及び取り付けが容易であるため、塗布ガンの清掃、又は塗布ガンの取り替えも容易である。
更に、塗布ガンが、シリンダの先端部の外周面、又はシリンダの先端面に取り付けられている場合は、ホットメルト接着剤が吐出される位置を、スクリューの軸線上から容易に外すことができ、ホットメルト接着剤を直線状に吐出させることができる。
また、ホットメルト接着剤がスクリューの軸線上から外れた位置に吐出される場合に、スクリューの先端部から塗布ガンへの溶融したホットメルト接着剤の流路の周縁部及び塗布ガンが加熱されているときは、流路の周縁部及び塗布ガンの内部でのホットメルト接着剤の温度低下による粘度上昇が防止され、被塗装体に、より定量的に、且つ効率よく、ホットメルト接着剤を塗布することができる。
更に、全長が500mm以下である場合は、ホットメルトアプリケータを、例えば、コンピュータ制御されたホットメルト塗布装置に搭載して用いるときに、塗布装置全体を容易に小型化することができる。また、このように加熱される下流部の熱がペレット供給部に伝熱し、昇温し易い、短寸法のホットメルトアプリケータでは、ペレット供給部に冷却手段を設けることによる冷却の作用効果が特に顕著に奏される。
また、ペレット供給部の内表面の温度が60℃以下である場合は、軟化点が高く、粘着し難い原料ペレットはもとより、軟化点が低く、粘着し易い原料ペレットであっても、ペレット供給部への粘着を十分に抑えることができる。
更に、ペレット供給部がアルミニウム製であり、下流部が鋼製である場合は、熱伝導率が大きく、優れた放熱性を有するアルミニウム製であることによっても、ペレット供給部の冷却が促進され、原料ペレットの粘着による詰まりがより十分に抑えられる。また、ペレット供給部がアルミニウム製であれば、ホットメルトアプリケータ全体の軽量化の観点でも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】シリンダのペレット供給部に冷却手段、下流部に加熱手段を備え、ホットメルト接着剤が塗布ガンから吐出される位置が、スクリューの軸線上にあるホットメルトアプリケータの模式的な説明図である。
【図2】シリンダのペレット供給部に冷却手段、下流部に加熱手段を備え、ホットメルト接着剤が塗布ガンから吐出される位置が、スクリューの軸線上から外れているホットメルトアプリケータの模式的な説明図である。
【図3】塗布ガンがシリンダの先端部の外周面に取り付けられており、且つホットメルト接着剤の吐出方向がスクリューの軸線と直交する方向であるホットメルトアプリケータの塗布ガン近傍の模式的な説明図である。
【図4】ホットメルト接着剤が塗布ガンから吐出される位置が、スクリューの軸線上から外れており、且つシリンダの先端面に取り付けられた塗布ガンから吐出されるホットメルト接着剤の吐出方向がスクリューの軸線方向であるホットメルトアプリケータの塗布ガンの近傍の模式的な説明図である。
【図5】ホットメルト接着剤が塗布ガンから吐出される位置が、スクリューの軸線上から外れており、且つシリンダの先端面に取り付けられた塗布ガンから吐出されるホットメルト接着剤の吐出方向がスクリューの軸線と直交する方向であるホットメルトアプリケータの塗布ガンの近傍の模式的な説明図である。
【図6】平板状のエアフィルタの一面の側端部に塗布ガンから吐出されるホットメルト接着剤を塗布している様子を表す説明図である。
【図7】折り畳まれ、複数の襞が形成されたエアフィルタの一面の側端部に塗布ガンから吐出されるホットメルト接着剤を塗布している様子を表す説明図である。
【図8】ホットメルト接着剤が塗布ガンから吐出される位置が、スクリューの軸線上にあるときに、吐出物が螺旋状になる様子を表す説明図である。
【図9】従来のタンク溶融式アプリケータの模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図1〜8を参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本実施形態に係るホットメルトアプリケータ100は、ホットメルト接着剤の原料ペレットが供給されるシリンダ1、及びシリンダ1内に回転可能に配置されたスクリュー2、を有するスクリュー式押出機10と、シリンダ1内で溶融したホットメルト接着剤が送り込まれるとともに、被塗装体にホットメルト接着剤を塗布するための塗布ガン5と、を備え、シリンダ1のうちの原料ペレットが供給されるペレット供給部11を冷却するための冷却手段12と、ペレット供給部11より下流側に位置するシリンダ1の下流部13を加熱するための加熱手段14と、を備える(図1及び図2参照)。
【0013】
前記「ホットメルト接着剤」は特に限定されず、各種のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリウレタン系ホットメルト接着剤、スチレン系ホットメルト樹脂層、ポリエステル系ホットメルト接着剤、オレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0014】
ホットメルト接着剤は前記「原料ペレット」としてスクリュー式押出機10のシリンダ1内に供給される。原料ペレットの形状は特に限定されず、楕円体状、円盤状、円柱状、角柱状等のいずれであってもよいが、ホッパー(例えば、図1及び図2におけるサブホッパー34)からペレット供給部11への原料ペレットの供給がより円滑になされる楕円体状のペレット、及び円盤状のペレットが好ましい。
【0015】
前記「スクリュー式押出機10」は、シリンダ1と、このシリンダ1内に回転可能に配置されたスクリュー2と、を有する。
前記「シリンダ1」は、通常、鋼製の筒状体であり、横断面円形の内部空間に前記「スクリュー2」が回転可能に配置されている。また、前記「スクリュー2」の後端部には駆動手段が取り付けられており、スクリュー2が所定の速度で回転するようになっている。駆動手段は特に限定されないが、例えば、スクリュー2の後端部に固定された歯車42、駆動用モータ41(電気式変速モータ等)、及び駆動用モータの軸に固定された歯車411などを備える駆動手段が挙げられる。図1及び図2における駆動手段では、歯車42と歯車411とが噛み合うことにより、スクリュー2が回転する。
【0016】
シリンダ1は、後端側に位置する前記「ペレット供給部11」と、このペレット供給部11より下流側に位置する前記「下流部13」とを有する。ここで、下流部13となる下流側とは、シリンダ1内におけるホットメルト接着剤の流れを表す用語であり、原料ペレットが供給される側が上流側であり、原料ペレットが加熱され、溶融する側が下流側である。即ち、シリンダ1の後端側がホットメルト接着剤の流れからみれば上流側であり、シリンダ1の先端側がホットメルト接着剤の流れからみれば下流側である。
【0017】
シリンダ1のペレット供給部11にホットメルト接着剤の原料ペレットを供給する方法は特に限定されない。例えば、原料タンク31に投入された原料ペレットを、ポンプ32によりフレキシブルホース33内を空送させ、サブホッパー34に投入し、このサブホッパー34からペレット供給部11に供給する構成とすることができる(図1及び図2参照)。このように、原料ペレットを定量的にサブホッパー34に投入し、且つ原料ペレットの供給量と連動させた所定の速度でスクリュー2を回転させることにより、塗布ガン5から所要量のホットメルト接着剤を所定速度で吐出させることができる。
【0018】
本発明のホットメルトアプリケータ100では、各種のホットメルト接着剤を特に限定されることなく用いることができることは前記のとおりであるが、ホットメルト接着剤には軟化点の異なる多くの種類の製品がある。また、同種のホットメルト接着剤、例えば、ポリアミド系ホットメルト接着剤のうちでも、用いる単量体の種類、複数の単量体を用いるときはそれらの種類及び量比、並びに製造法等によって軟化点には相当な幅がある。これらのうちで、特に軟化点の低いホットメルト接着剤は、室温(20〜30℃)においても粘着性を有することがある。そのため、このようなホットメルト接着剤の原料ペレットをペレット供給部11に供給しようとした場合、ペレット供給部11の内表面に原料ペレットが粘着し、供給路が閉塞されてしまうことがある。
尚、前記の軟化点は、JIS K2207における環球法により測定した値である。
【0019】
前記のように、原料ペレットの粘着によりペレット供給部11が閉塞されてしまうことがあるため、シリンダ1のペレット供給部11には、このペレット供給部11を冷却するための冷却手段12が配設される。冷却手段12は特に限定されず、例えば、ペレット供給部11の外周部に設けられたフィンでもよく、ペレット供給部11の内部に形成された流路に冷媒を流通させる方法でもよい。冷媒の流路を形成する場合、この流路はペレット供給部11の周方向に環状に形成された流路であることが好ましい。また、冷媒は特に限定されず、水及び炭化水素系等の冷媒を用いることができるが、常温(20〜30℃)又は必要に応じて低温に調温された水で十分であることが多く、0℃を下回る低温の媒体による冷却は通常は必要としない。
【0020】
更に、冷却手段12による冷却は、原料ペレットの軟化点により適宜設定することが好ましい。例えば、原料ペレットの前記の方法により測定した軟化点が150℃以上、特に180℃以上の原料ペレットの場合、冷却手段12は、ペレット供給部11の外周部に設けられたフィンで十分であり、フィンのみでも10〜50℃、特に20〜40℃程度の降温が可能である。一方、原料ペレットの軟化点が150℃未満、特に120℃以下、更に100℃以下と軟化点の低い原料ペレットの場合は、ペレット供給部11の内部に冷媒を流通させるための流路を設けることが好ましい。
【0021】
冷却は、原料ペレットの軟化点により適宜設定することが好ましいが、前記のように、原料ペレットの軟化点が高いときは、フィン等の簡易な冷却手段12で容易に冷却することができ、原料ペレットの粘着を防止することができる。例えば、吐出温度が210〜250℃である軟化点の高いホットメルト接着剤であれば、ペレット供給部11の原料ペレット流入口近辺の表面温度が80〜120℃であっても粘着することはなく、簡易な冷却手段12で十分である。一方、原料ペレットの軟化点が低いときは、十分に冷却することができる冷却手段12が必要である。このように、原料ペレットの軟化点と冷却との観点では、軟化点の高い原料ペレットのほうが取り扱い易く、簡易な設備で、原料ペレットをペレット供給部11により容易に供給することができる。
【0022】
前記のように冷却手段12が配設されたペレット供給部11の温度は特に限定されず、原料ペレットの軟化点により適宜設定することができるが、ペレット供給部11の内表面の温度は60℃以下、特に55℃以下、更に50℃以下であることが好ましい。このように、ペレット供給部11の内表面が所定温度以下の低温であれば、軟化点の高い原料ペレットを用いた場合はもとより、軟化点の低い原料ペレットを用いたときも、原料ペレットの粘着によるペレット供給部11の閉塞を十分に防止することができる。
【0023】
本発明のホットメルトアプリケータ100(図1及び図2参照)では、前記のように、シリンダ1のペレット供給部11には冷却手段12を設ける必要がある一方で、シリンダ11の、ペレット供給部11より下流側に位置する下流部13には加熱手段14を設ける必要がある。加熱手段14は、シリンダ11の下流部13を所定温度に加熱することができる限り、特に限定されず、例えば、シリンダ11の外周面にバンドヒータを配設する方法、及びシリンダ11の内部に形成された熱媒の流路にオイル等の熱媒を流通させる方法等が挙げられる。これらのうちでは、簡易な加熱手段14であって、取り扱いも容易なバンドヒータを用いる方法が好ましい。
【0024】
また、加熱手段14は、シリンダ11の下流部13の全体に一体的に設けられた加熱手段14でもよく、分割して設けられた加熱手段でもよいが、分割して設けられた加熱手段であることが好ましい。例えば、シリンダ11の軸方向に、下流部13の後部側から先端部側へと各々が独立して配設された複数のバンドヒータを有する加熱手段14、又はそれぞれが独立して形成された熱媒の流路を有する加熱手段14等により構成することが好ましい。このような構成とすれば、シリンダ11のうちの下流部13の後部側から先端部側に亘って、必要に応じて異なる温度設定とすることができる。このように異なる温度設定を可能とすることにより、原料ペレットの溶融、及びホットメルト接着剤の吐出に要する加熱を超えて過度に高温に加熱することが防止され、ペレット供給部11におけるシリンダ11の冷却の必要性が軽減されるとともに、ホットメルト接着剤の熱劣化も抑えられる。尚、この温度設定は特に限定されないが、通常、下流部13の後部側から先端部側へと徐々に温度が高くなるように設定される。更に、特に原料ペレットの軟化点が低い場合は、後部側の加熱手段14は稼働させず、先端部側の加熱手段14のみで加熱するようにしてもよい。
【0025】
スクリュー式押出機10を構成するシリンダ11の材質は特に限定されず、窒化鋼等の特殊鋼を用いてなるシリンダ11を使用することができる。また、シリンダ11は全体が特殊鋼により構成されていてもよいが、ペレット供給部11を効率よく冷却するためには、ペレット供給部11は放熱性に優れた材料により構成されていることが好ましい。この放熱性に優れた材料としては、熱伝導性の高い各種の金属を用いることができ、例えば、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、銅、ベリリウム及びこれらの金属を含有する合金等が挙げられる。これらのうちでは、熱伝導率がより高く、十分な強度を有し、比重が小さいためホットメルトアプリケータを軽量化することもできるアルミニウムが特に好ましい。更に、ペレット供給部11が放熱性に優れた材料、特にアルミニウムにより構成されておれば、冷却手段12としてフィンを形成した場合に、冷却効率をより高くすることもできる。
【0026】
スクリュー2の材質も特に限定されず、クロムモリブデン鋼等の特殊鋼を用いてなるスクリュー2を使用することができる。また、スクリュー径及びスクリュー長も特に限定されないが、本発明のホットメルトアプリケータ100では、原料ペレットを少容量とし、加熱溶融に要する時間を数秒から数十秒と短時間にすることを主目的としているため、スクリュー径が10〜30mm、特に15〜25mmであり、スクリュー長が200〜350mm、特に250〜300mmであるスクリュー2を用いることが好ましい。
【0027】
スクリュー径は、ホットメルト接着剤の所要吐出量によって調整することが好ましい。例えば、ホットメルト接着剤を車両用のエアフィルタに塗布する場合、前記の径を有するスクリュー2を有するスクリュー式押出機10を備えるホットメルトアプリケータ100であれば、所要量のホットメルト接着剤を、平板状のエアフィルタ(図6の符号6のエアフィルタ参照)の所定位置、及び折り畳まれ、複数の襞が形成されたエアフィルタ(図7の符号61のエアフィルタ参照)の所定位置、に容易に塗布することができる。
【0028】
本発明のホットメルトアプリケータ100は、前記のスクリュー式押出機10と、シリンダ11内で溶融したホットメルト接着剤が送り込まれるとともに、被塗装体にホットメルト接着剤を塗布するための塗布ガン5とを備える(図1及び図2参照)。
前記「塗布ガン5」は、内部にホットメルト接着剤が流通する流路を有し、先端部にはホットメルト接着剤を吐出するためのノズル部が形成されている。この塗布ガン5としては、従来からホットメルトアプリケータに用いられている通常の塗布ガン5を特に限定されることなく用いることができる。
【0029】
また、塗布ガン5は、シリンダ11の先端部に取り付けられるが、ホットメルト接着剤の吐出方向、及び塗布ガン5の取り付け位置等は特に限定されない。例えば、図1のように、塗布ガン5は、ホットメルト接着剤が吐出される位置がスクリュー2の軸線上となるように、シリンダ11の先端面17の中央部に取り付けられていてもよい。一方、吐出されるホットメルト接着剤は、スクリュー2の回転にともなって螺旋状に吐出される傾向があり(図8のホットメルト接着剤7参照)、ホットメルト接着剤を直線状に塗布することができず、ホットメルト接着剤を所定位置に塗布するという観点でも問題である。尚、吐出されたホットメルト接着剤は、通常、塗布ガン5の吐出口から少なくとも10mmは直線状に吐出されるため、塗布ガン5の吐出口と被塗装体の表面との距離が10mm以下であるときは、ホットメルト接着剤が螺旋状に吐出されるという問題を必ずしも考慮する必要はない。
【0030】
前記のホットメルト接着剤が螺旋状に吐出されるという問題に対処するため、ホットメルト接着剤の吐出位置がスクリュー2の軸線上から外れた位置となるように塗布ガン5を取り付けることもできる(例えば、図2参照、この図2に記載のホットメルトアプリケータ100では、塗布ガン5はシリンダ11の先端部の外周面16に取り付けられており、ホットメルト接着剤の流路はスクリュー2の軸線上から外れているとともに、ホットメルト接着剤の吐出方向はスクリュー2の軸線方向と同方向になっている。)。これにより、スクリュー2の回転によりホットメルト接着剤が螺旋状に吐出されることが防止される。
【0031】
また、ホットメルト接着剤の吐出位置がスクリュー2の軸線上から外れた位置となるように塗布ガン5を取り付ける場合、他の態様とすることもできる。
例えば、図3のように、塗布ガン5をシリンダ1の先端部の外周面16に取り付け、ホットメルト接着剤の吐出位置がスクリュー2の軸線上から外れるようにするとともに、ホットメルト接着剤の吐出方向がスクリュー2の軸線方向と直交する方向になる態様とすることもできる。
【0032】
更に、図4のように、塗布ガン5をシリンダ11の先端面17の中央部から外れる位置に取り付け、ホットメルト接着剤の吐出位置がスクリュー2の軸線上から外れるようにするとともに、ホットメルト接着剤の吐出方向がスクリュー2の軸線方向と同方向となる態様とすることもできる。また、図5のように、塗布ガン5をシリンダ1の先端面17に取り付け、ホットメルト接着剤の吐出位置がスクリュー2の軸線上から外れるようにするとともに、ホットメルト接着剤の吐出方向がスクリュー2の軸線方向と直交する方向となる態様とすることもできる。尚、この図5に記載の態様の場合、スクリュー2の軸線方向と同方向の流路は、スクリュー2の軸線上となるように、シリンダ11の先端面17の中央部に位置していてもよい。
【0033】
また、図2乃至図5のように、塗布ガン5をシリンダ11の後端部の外周面16又は先端面17に取り付け、ホットメルト接着剤の流路がスクリュー2の軸線上から外れるようにする場合、スクリュー2の先端部から塗布ガン5に至るホットメルト接着剤の流路が長くなり、塗布ガン5の取り付け位置もスクリュー2の先端部から離間した位置となる。そのため、スクリュー2の先端部から塗布ガン5への溶融したホットメルト接着剤の流路15の周縁部、及び塗布ガン5そのものが加熱されていることが好ましい。この加熱方法は特に限定されないが、例えば、溶融したホットメルト接着剤の流路15の周縁部及び/又は塗布ガン5に設けられた細孔にカートリッジヒータを挿入して加熱することが好ましい。これにより、ホットメルト接着剤の温度低下にともなう粘度上昇を抑えることができ、所要量のホットメルト接着剤を吐出させることができる。
【0034】
更に、塗布ガン5の取り付け位置を図2乃至図5のようにした場合、ホットメルト接着剤の流路15とは別に、流路15から分岐させる等の方法により劣化した接着剤を排出させる排出用流路を設けることもできる。このようにすれば、前回の塗布後、スクリュー式押出機10の先端側に残留した劣化した接着剤を予め排出用流路を経由して排出させ、その後、塗布用の流路15に切り替え、塗布を開始することもできる。
【0035】
本発明のホットメルトアプリケータ100は、コンピュータ制御されたホットメルト塗布装置に搭載して用いることができる。このようにホットメルト塗布装置に搭載して用いるためには、寸法、特に軸方向の寸法が小さいほど、装置を小型化、且つ軽量化することができるため好ましい。このホットメルトアプリケータ100の長さ(全長さであり、例えば、図1及び図2に記載のホットメルトアプリケータ100の場合、歯車42、411の端面から塗布ガン5の先端までの寸法である。)は、500mm以下、特に400mm以下、更に300mm以下であることが好ましい。このように短寸法のホットメルトアプリケータ100であれば、ホットメルト塗布装置を十分に小型化、且つ軽量化することができる。
【0036】
また、ホットメルトアプリケータの径方向の寸法は特に限定されないが、装置の小型化、軽量化のためには小径であることが好ましい。この径方向の寸法はホットメルト接着剤の所要吐出量等によって設定することができるが、所要吐出量等によってホットメルトアプリケータを大型化する必要がある場合は、軸方向の寸法を大きくする(長くする)のではなく、径方向の寸法を大きくする(大径にする)のがよい。これにより、装置の大型化を抑えることができる。
【0037】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、被塗装体に線状、点状、円環状等にホットメルト接着剤を塗布する必要がある各種製品の技術分野において利用することができる。特に、エアフィルタ等の車両用の各種のフィルタの技術分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
100;ホットメルトアプリケータ、10;スクリュー式押出機、1;シリンダ、11;ペレット供給部、12;冷却手段(フィン等)、13;下流部、14;加熱手段(バンドヒータ)、15;流路、16;シリンダの先端部の外周面、17;シリンダの先端面、2;スクリュー、31;原料タンク、32;ポンプ、33;フレキシブルホース、34;サブホッパー、41;スクリュー駆動用電気式変速モータ、42;歯車、5;塗布ガン、6;平板状のフィルタ、61;折り曲げられ、複数の襞が形成されたフィルタ、7;吐出されたホットメルト接着剤、8;タンク溶融式アプリケータ、81;タンク、82;ヒータ、83;ポンプ、84;フレキシブルホース、85;塗布ガン、86;ホットメルト接着剤ペレット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤の原料ペレットが供給されるシリンダ、及び前記シリンダ内に回転可能に配置されたスクリュー、を有するスクリュー式押出機と、
前記シリンダ内で溶融したホットメルト接着剤が送り込まれるとともに、被塗装体にホットメルト接着剤を塗布するための塗布ガンと、を備えるホットメルトアプリケータであって、
前記シリンダのうちの前記原料ペレットが供給されるペレット供給部を冷却するための冷却手段と、
前記ペレット供給部より下流側に位置する前記シリンダの下流部を加熱するための加熱手段と、を備えることを特徴とするホットメルトアプリケータ。
【請求項2】
前記ホットメルト接着剤が前記塗布ガンから吐出される位置が、前記スクリューの軸線上から外れている請求項1に記載のホットメルトアプリケータ。
【請求項3】
前記塗布ガンが、前記シリンダの先端部の外周面、又は該シリンダの先端面に取り付けられている請求項2に記載のホットメルトアプリケータ。
【請求項4】
前記スクリューの先端部から前記塗布ガンへの前記溶融したホットメルト接着剤の流路の周縁部及び該塗布ガンが加熱されている請求項2又は3に記載されたホットメルトアプリケータ。
【請求項5】
全長が500mm以下である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のホットメルトアプリケータ。
【請求項6】
前記ペレット供給部の内表面の温度が60℃以下である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のホットメルトアプリケータ。
【請求項7】
前記ペレット供給部がアルミニウム製であり、前記下流部が鋼製である請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載のホットメルトアプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251241(P2011−251241A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126234(P2010−126234)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】