説明

ホットメルト塗布装置およびホットメルト塗布方法

【課題】丸棒状部材の部材外周面に、ホットメルトが適切に塗布されるようにする。
【解決手段】ディッピングローラ60の外周付着面60Aに外周塗布面70Aが平行に臨むように配設した塗布ローラ70は、第2駆動手段74により回転駆動される。塗布ローラ70の外周塗布面70Aに部材外周面13を平行に臨ませる丸棒状部材11は、部材支持部82に支持された状態で第3駆動手段88により回転駆動される。丸棒状部材11の部材外周面13全周にホットメルトHMの塗布が完了したら、第2駆動手段74を制御して塗布ローラ70の回転を停止させると共に、第3駆動手段88を制御して丸棒状部材11の回転を塗布時よりも増速させる。そして丸棒状部材11を、増速回転した状態で塗布ローラ70から離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト塗布装置およびホットメルト塗布方法に関し、更に詳細には、液状化したホットメルトを、丸棒状部材の部材外周面に所定の幅で塗布するホットメルト塗布装置と、このホットメルト塗布装置を使用して実施されるホットメルト塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12(a)は、コピー機やプリンタ等の事務機器における給紙ローラ等として実施に供されるローラ部材の概略斜視図である。このローラ部材10は、図12(b)に示すように、ポリウレタンフォームやゴムスポンジ等を材質とする円筒状の弾性部材12と、金属または合成樹脂等を材質として、弾性部材12に貫通するシャフト状の丸棒状部材11とからなる。丸棒状部材11に対する弾性部材12の固定は、丸棒状部材11の部材外周面13に予めホットメルトHMを塗布しておき、丸棒状部材11に弾性部材12を装着した後に加熱して溶融したホットメルトHMの接着力を利用してなされる。事務機器等に実施されるローラ部材10は、高い精度が要求される高機能部材であり、ホットメルトHMの塗布態様(塗布幅や塗布厚の均一性等)が品質に大きな影響を及ぼすこととなっている。
【0003】
丸棒状部材11に対するホットメルトHMの塗布作業は、図13および図14に概略的に示すように、一般的に「ロールコーター」とも称されるホットメルト塗布装置M1を利用して行なわれる。このホットメルト塗布装置M1は、貯留槽20内に貯留されている液状化したホットメルトHMに外周付着面24Aの一部が浸漬した状態で配設されたディッピングローラ24と、ディッピングローラ24と平行に配設されて外周塗布面30Aを前記外周付着面24Aに臨ませた塗布ローラ30と、塗布ローラ30に近接・離間可能に配設されて丸棒状部材11を支持する部材支持部82とを備えている。ディッピングローラ24は、貯留槽20の対向した壁面に対して水平に架設され、回転軸25に連結されたモータ等の駆動手段26により所定の回転速度で回転する。塗布ローラ30は、図示しないフレームに回転軸31の両端が回転自在に支持されている。部材支持部82は、丸棒状部材11を両端外方から回転自在に支持する支持軸37,37を有し、手動により昇降させることで塗布ローラ30に対して近接および離間移動する。なお、貯留槽20の上部には、ディッピングローラ24の外周付着面24Aに先端部が近接するようにスクレーパ39が配設され、外周付着面24Aに必要以上に付着したホットメルトHMを掻き取るようになっている。
【0004】
前述のような構成のホットメルト塗布装置M1を使用したホットメルト塗布作業は、図15に示すような作業工程を経て実施される。先ず、貯留槽20に配設された加熱手段(図示せず)により、貯留槽20に貯留されているホットメルトHMが液状化したら、図16に示すように、駆動手段26によりディッピングローラ24を所定の回転数で回転させ(図16では反時計方向へ回転させる)、外周付着面24AにホットメルトHMを付着させる。ディッピングローラ24の外周付着面24Aに付着したホットメルトHMが塗布ローラ30の外周塗布面30Aに接触すると、ホットメルトHMの粘着力により該塗布ローラ30が図16において時計方向へ従動回転する。従って、ディッピングローラ24の外周付着面24Aに付着していたホットメルトHMが、外周付着面24Aから剥離して塗布ローラ30の外周塗布面30Aに転移する。
【0005】
そして、部材支持部82に支持した丸棒状部材11を塗布ローラ30に向けて近接移動させ、丸棒状部材11の部材外周面13を塗布ローラ30の外周塗布面30Aに近接させる。塗布ローラ30の外周塗布面30Aに付着したホットメルトHMが丸棒状部材11の近接部位まで到来すると、該丸棒状部材11は塗布ローラ30の回転に伴って図16の反時計方向へ従動回転すると共に、外周塗布面30Aに付着していたホットメルトHMが丸棒状部材11の部材外周面13に転移する。丸棒状部材11における部材外周面13の全周に亘ってホットメルトHMが塗布されたら、適宜タイミングにおいて丸棒状部材11を塗布ローラ30から離間させることで、丸棒状部材11の部材外周面13に対するホットメルトHMの塗布作業が完了する。このようなホットメルト塗布装置およびホットメルト塗布方法に関しては、例えば特許文献1に開示されている(但し、特許文献1に開示のホットメルト塗布装置は、丸棒状部材ではなく、シート状の部材にホットメルトを塗布するものである)。
【特許文献1】特開2001−340794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図13および図14に示した従来のホットメルト塗布装置M1は、前述したように、塗布ローラ30を回転駆動する独立した駆動手段を備えていないため、塗布ローラ30の回転はディッピングローラ24の回転に依存するものとなっている。しかも塗布ローラ30の回転は、ディッピングローラ24の外周付着面24Aに付着したホットメルトHMの粘着力により発現されるため、外周付着面24Aに付着しているホットメルトHMの付着量や粘性の違い等により、該塗布ローラ30の安定的な回転が維持され難い欠点があった。従って、塗布ローラ30の外周塗布面30Aに対するホットメルトHMの付着量が不均一になり易いので、外周塗布面30Aによる丸棒状部材11の塗布時間を長く(例えば丸棒状部材11が4〜5回転するのに要する時間)設定することで、部材外周面13にホットメルトHMが均一に塗布されるようにしていた。
【0007】
しかしながら、塗布時間を長くすると、ディッピングローラ24および塗布ローラ30によって丸棒状部材11が近接している部位へホットメルトHMが連続して供給されることになり、ホットメルトHMの供給過多状態が発生してしまう。ホットメルトHMが過剰に供給されると、丸棒状部材11の部材外周面13に付着せずに余剰となったホットメルトHMは、図17に示すように、外周塗布面30Aと部材外周面13との境界部分に沿って塗布ローラ30の両端方向へ移動し、該塗布ローラ30の両側の端面30B,30Bに溢れるように付着する。しかも、塗布ローラ30の外周塗布面30Aと端面30Bとが直角になっているため、ホットメルトHMは表面張力によって塗布ローラ30の両端角部に留まって流れなくなり、端面30B,30Bに付着したホットメルトHMの一部は、丸棒状部材11の部材外周面13に盛り上がるように付着し、そのまま冷却して固化してしまう。従って、丸棒状部材11の部材外周面13に塗布されたホットメルトHMには、図19に示すように、周方向に延在する膨出部14が形成される不都合が発生していた。
【0008】
一方、部材外周面13に対するホットメルトHMの塗布が終了して、丸棒状部材11を塗布ローラ30から離間させる場合には、離間すると同時に丸棒状部材11の回転が停止するので、図18に示すように、所謂「糸引き」現象が発生し易くなっていた。特に、前述のように塗布時間を長く設定すると、ホットメルトHMの温度が低下して粘性が高くなってしまい、糸引き現象がより一層顕著に発現するようになる。このように糸引き現象が発現した場合には、図19に示すように、丸棒状部材11の部材外周面13に塗布されたホットメルトHMの外表面に、丸棒状部材11の長手方向に延在するバリ状突部15が形成される不都合が発生していた。
【0009】
すなわち、従来のホットメルト塗布装置M1を使用して丸棒状部材11の部材外周面13にホットメルトHMを塗布した場合には、固化したホットメルトHMの外表面に多くの凹凸部分が形成され、かつホットメルトHMの塗布厚が不均一となる欠点を内在していた。しかも膨出部14は、塗布ローラ30の接触領域(塗布領域)から外れた位置に形成されるために塗布面積が大きくなってしまい、丸棒状部材11に弾性部材12を装着した際に該弾性部材12の端部からはみ出てしまう。このように、ホットメルトHMの塗布厚が不均一になったり、塗布面積が大きくなった場合には、弾性部材12に丸棒状部材11を挿通させる際や挿通させた後にホットメルトHMの脱落が発生し易く、脱落したホットメルトHMの小片が該弾性部材12の外表面に付着するおそれがあった。また、ホットメルトHMが厚く塗布された部分では、弾性部材12の柔軟性が阻害される問題等もあった。
【0010】
更に、前述した従来のホットメルト塗布装置M1への丸棒状部材11の装着は、作業員の手作業によってなされていた。このため、丸棒状部材11の着脱に時間が掛かり、ホットメルトHMの塗布作業効率が向上しない課題を内在していた。また、丸棒状部材11は、作業員が直接掴むために高温に予熱することができず、ホットメルトHMの塗布時には該丸棒状部材11の温度が低くなり、ホットメルトHMが冷却されて粘性が高まり、前述した各不都合が一段と発生し易くなっていた。
【0011】
従って本発明では、ホットメルトが供給過多となるのを防止して、丸棒状部材の部材外周面にホットメルトが適切に塗布されるようにし得るホットメルト塗布装置と、丸棒状部材の部材外周面に対してホットメルトを均一に塗布し得ると共に、塗布されたホットメルトの表面に凹凸が形成されないようにしたホットメルト塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明は、貯留槽に貯留されている液状化したホットメルトに外周付着面の一部が浸漬し、第1駆動手段により回転駆動されるディッピングローラと、前記ディッピングローラの外周付着面に外周塗布面が平行に臨み、外周付着面に付着したホットメルトが外周塗布面に転移される塗布ローラと、前記塗布ローラの外周塗布面に部材外周面を平行に臨ませた丸棒状部材を回転可能に支持する部材支持部とを備え、前記塗布ローラの外周塗布面に近接した前記丸棒状部材の部材外周面に、外周塗布面に転移している前記ホットメルトを所定の幅で塗布するホットメルト塗布装置において、
前記塗布ローラを回転駆動する第2駆動手段と、
前記部材支持部に支持した前記丸棒状部材を回転駆動する第3駆動手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
従って、請求項1に係る発明によれば、ディッピングローラ、塗布ローラおよび丸棒状部材の各々の回転数および回転方向の変更や、回転・停止等の制御を、個別に行なうことが可能である。従って、丸棒状部材の部材外周面にホットメルトを塗布する際には、部材外周面の全周に亘ってホットメルトが塗布された時点で塗布ローラのみを停止させることができるので、ホットメルトの供給過多を防止することが可能となる。また、丸棒状部材の部材外周面にホットメルトが塗布された後には、丸棒状部材だけを増速回転させることができるので、部材外周面に塗布されたホットメルトの塗布厚を均一にし得ると共に、該ホットメルトの外表面の凹凸を解消することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記塗布ローラの軸方向両端部に、前記外周塗布面から軸端に向かうにつれて徐々に小径となる傾斜面が設けられていることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、余剰のホットメルトを、塗布ローラの両端部に設けた傾斜面上に移動させることで、丸棒状部材の部材外周面に付着するのを防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記外周塗布面に対する前記傾斜面の傾斜角度を、25〜45度の範囲に設定したことを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、余剰のホットメルトが、外周塗布面と傾斜面との境界部分に留まらずに該傾斜面上へ円滑に移動する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記傾斜面に付着したホットメルトを掻き取るスクレーパを備えたことを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、傾斜面にホットメルトが溜まるのを防止し得る。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記部材支持部に連結され、前記塗布ローラに対して前記丸棒状部材を近接・離間移動させるよう部材支持部を作動する作動手段を備えたことを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、塗布ローラに対する丸棒状部材の近接および離間移動を自動的に行なうことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記部材支持部における前記丸棒状部材の着脱位置に該丸棒状部材を搬入すると共に、前記部材支持部に支持されていた前記丸棒状部材を搬出する部材搬送装置を備えたことを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、ホットメルト塗布装置に対する丸棒状部材の搬入および搬出を、部材搬送装置により自動的に行なうことができるので、ホットメルト塗布作業の効率化および省力化を図り得る。更に、丸棒状部材を、予め80℃程度に予熱した状態でホットメルト塗布装置へ供給するようにすることもできるので、部材外周面に塗布されるホットメルトの急激な温度低下を防止することを可能とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、貯留槽に貯留されている液状化したホットメルトを、丸棒状部材の部材外周面に所定の幅で塗布するホットメルト塗布方法であって、
前記ホットメルトに外周付着面の一部が浸漬したディッピングローラを第1駆動手段により定速回転させて、前記ホットメルトを外周付着面に付着させ、
前記ディッピングローラの外周付着面に外周塗布面を臨ませた塗布ローラを、第2駆動手段によりディッピングローラの回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させて、ディッピングローラの外周付着面に付着している前記ホットメルトを外周塗布面に転移させ、
部材支持部に支持した前記丸棒状部材を、第3駆動手段により前記塗布ローラの回転方向と反対方向に同一周速となる第1回転速度で同期回転させたもとで、該丸棒状部材の部材外周面を該塗布ローラの外周塗布面に近接して該部材外周面にホットメルトを塗布し、
前記部材外周面の全周に前記ホットメルトが塗布されたら、前記第2駆動手段を停止して前記塗布ローラの回転を停止させ、
前記第3駆動手段により前記第1回転速度より高い第2回転速度で回転させた前記丸棒状部材を、前記塗布ローラから離間させることを要旨とする。
【0020】
従って、請求項7に係る発明によれば、塗布ローラの回転を、ディッピングローラの回転方向と反対方向に同一周速で同期させるようにしたので、外周付着面に付着しているホットメルトを外周塗布面へ適切に転移させることができる。そして、丸棒状部材の回転を、塗布ローラの回転方向と反対方向に同一周速で同期させるようにしたので、外周塗布面に付着しているホットメルトを部材外周面へ適切に塗布することができる。また、丸棒状部材の部材外周面の全周にホットメルトが塗布された時点で、塗布ローラの回転を停止してホットメルトの供給を停止するようにしたので、部材外周面に必要以上のホットメルトが塗布されることを防止し得る。更に、ホットメルトの塗布完了後に丸棒状部材を増速回転させるようにしたので、塗布されたホットメルトの外表面が塗布ローラの外周塗布面に摺接するようになり、ホットメルトの塗布厚の均一化が図られると共に、ホットメルトの外表面の凹凸が解消される。更にまた、丸棒状部材を回転させた状態で塗布ローラから離間させるので、部材外周面に塗布されたホットメルトと外周塗布面に付着しているホットメルトとの間で糸引き現象が発生することを防止し得る。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記第2回転速度は、第1回転速度の4〜5倍に設定されることを要旨とする。
従って、請求項8に係る発明によれば、塗布ローラと丸棒状部材との回転差が大きくなるので、丸棒状部材に塗布されたホットメルトの外表面が美麗になると共に、丸棒状部材に塗布されたホットメルトと塗布ローラの外周塗布面に付着しているホットメルトが確実に分離する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るホットメルト塗布装置によれば、ホットメルトが供給過多となるのを防止して、丸棒状部材の部材外周面にホットメルトが適切に塗布されるようにし得る。
別の発明に係るホットメルト塗布方法によれば、丸棒状部材の部材外周面に対してホットメルトを均一に塗布し得ると共に、塗布されたホットメルトの表面に凹凸が形成されないようにし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明に係るホットメルト塗布装置およびホットメルト塗布方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0024】
先ず、実施例のホットメルト塗布方法を実施するためのホットメルト塗布装置について、図1〜図4を引用して説明する。なお実施例では、図1において、紙面手前側をホットメルト塗布装置Mの前側、紙面奥側を後側とし、同図の上方をホットメルト塗布装置Mの上側、下方を下側と指称する。
【0025】
実施例のホットメルト塗布装置Mは、図1〜図3に示すように、貯留槽55、ディッピングローラ60および塗布ローラ70等が配設された固定フレーム40と、丸棒状部材11を支持する部材支持部82が配設された昇降フレーム41とを備えている。固定フレーム40は、装置のベースとなるベースプレート42と、装置の前側に位置する前部フレーム43と、この前部フレーム43から後方へ所要距離離間して位置する後部フレーム44と、前部フレーム43および後部フレーム44の上部に水平に固定された上部フレーム45とからなり、全体的には枠体状に構成されている。なお、上部フレーム45には、塗布ローラ70が配設される開口部が形成されている。
【0026】
昇降フレーム41は、後部フレーム44の背面側に配設されたスライド機構47により、固定フレーム40に対して昇降し得るようになっている。スライド機構47は、後部フレーム44の背面側に固定されて、左右に所要距離離間した位置で垂直に延在する2本のガイドレール48,48と、昇降フレーム41の前面側に固定されて、各ガイドレール48,48に沿ってスライドするスライダ49,49と、シリンダ本体50Aがベースプレート42に固定されると共にロッド50Bの先端が昇降フレーム41に連結された流体圧シリンダ(作動手段)50とから構成されている。従って、ロッド50Bが前進するように流体圧シリンダ50を付勢制御した際には、昇降フレーム41は固定フレーム40に対して上昇移動し、ロッド50Bが後退するよう流体圧シリンダ50を付勢制御した際には、昇降フレーム41は固定フレーム40に対して下降移動する。なお、昇降フレーム41の上部には、後述する部材支持部82を設置するためのテーブル51が、左右方向へ横長かつ水平に延在するように配設されている。
【0027】
貯留槽55は、上方に開口した矩形の金属製容器であって、所要量のホットメルトHMを貯留し得る。そして貯留槽55の壁面には、電熱線ヒータ等の加熱手段(図示せず)が配設されており、内部に貯留したホットメルトHMを、100℃程度に加熱すると共に保温して液状化させた状態で貯留する。また、貯留槽55の左壁部には、ディッピングローラ60の回転軸61が挿通する貫通軸支部56が設けられていると共に、貯留槽55の右壁部には、回転軸61の端部を支持する軸支部57が設けられている。このような貯留槽55は、ベースプレート42の上面に設けられた設置台58に載置され、固定フレーム40内に収容された状態で位置調整(左右方向、前後方向、上下方向の3方向)が可能となっている。
【0028】
ディッピングローラ60は、ステンレス等を材質とする金属製のローラで、その外周面をホットメルトHMが付着する外周付着面60Aとすると共に、同軸線上に延出する回転軸61を両端部に備えている。このようなディッピングローラ60は、回転軸61を前述した貫通軸支部56および軸支部57で支持することで、貯留槽55の上部開口に臨むように該貯留槽55の内側に配設される。そして、貯留槽55内に規定範囲内でホットメルトHMを貯留させた際には、ホットメルトHMに外周付着面60Aの一部(下部)が浸漬した状態でディッピングローラ60が位置する。なおディッピングローラ60は、ローラ内部に適宜の加熱手段を設けて、外周付着面60Aを所定温度に加熱保温し得るように構成してもよい。
【0029】
貯留槽55の左側壁の外面部には、ディッピングローラ60に回転を付与する第1駆動手段62が配設されている。この第1駆動手段62は、例えば減速機構を備えたモータであり、減速機構の出力軸に固定された第1駆動ギア65が、貫通軸支部56から貯留槽55の外方へ延出した回転軸61に固定した第1従動ギア66に噛合している。従って、第1駆動手段62を駆動制御することで、ディッピングローラ60が所定の回転速度で回転する。なお第1駆動手段62は、減速機構を備えたモータに限定されるものではなく、ディッピングローラ60に所定の回転を付与し得るものであれば、これ以外の駆動源を採用することも可能である。また、第1駆動手段62と回転軸61との回転伝達機構は、前述したギア機構以外でもよく、例えばタイミングベルト機構やチェン機構等であってもよい。
【0030】
貯留槽55の上部には、塗布ローラ70の配設位置より回転方向の上流側(図4(a)では、塗布ローラ70より右側)に、ディッピングローラ60の外周付着面60Aに先端部を臨ませた第1スクレーパ68が配設されている。この第1スクレーパ68は、ディッピングローラ60の外周付着面60Aに必要量以上のホットメルトHMが付着した場合に、該ディッピングローラ60の回転に伴ってホットメルトHMの余剰分を掻き落とし、塗布ローラ70に向けて一定量のホットメルトHMを供給するために機能する。なお、第1スクレーパ68の取付位置を変更することにより、ディッピングローラ60の外周付着面60Aと第1スクレーパ68の先端部との間隔S1(図4(a)参照)を調整し得る。
【0031】
図1および図2に示した塗布ローラ70は、ステンレス等を材質とする金属製のローラで、その外周面をホットメルトHMが付着する外周塗布面70Aとすると共に、同軸線上に延出した回転軸71を両端部に備えている。この塗布ローラ70は、上部フレーム45の左右に対向した状態で配設された左回転支持軸72および右回転支持軸73を、回転軸71の端面に夫々突入して係止させることで、上部フレーム45の開口部内において水平状態で配設される。そして、上部フレーム45に取付けられた塗布ローラ70は、ディッピングローラ60の上方において該ディッピングローラ60に平行に臨み、塗布ローラ70の外周塗布面70Aがディッピングローラ60の外周付着面60Aに近接している。また左回転支持軸72は、回転軸71との滑りを防止する滑り止め(図示せず)を備えている。なお、前述した設置台58での貯留槽55の昇降調整により、ディッピングローラ60の外周付着面60Aと塗布ローラ70の外周塗布面70Aとの間隔S2(図4(a)参照)を調整し得る。
【0032】
上部フレーム45の左端部には、塗布ローラ70に回転を付与する第2駆動手段74が取付けられている。この第2駆動手段74は、例えば減速機構を備えたモータであり、減速機構の出力軸に固定された第2駆動ギア77が、上部フレーム45の左端外方へ延出した左回転支持軸72に固定した第2従動ギア78に噛合している。従って、第2駆動手段74を駆動制御することで左回転支持軸72が回転し、この左回転支持軸72の回転に伴って塗布ローラ70が回転する。なお第2駆動手段74は、減速機構を備えたモータに限定されるものではなく、塗布ローラ70に所定の回転を付与し得るものであれば、これ以外の駆動源を採用することも可能である。また、第2駆動手段74と回転軸71との回転伝達機構は、前述したギア機構以外でもよく、例えばタイミングベルト機構やチェン機構等であってもよい。
【0033】
上部フレーム45に配設された右回転支持軸73は、軸方向に移動して左回転支持軸72との距離を変更し得るようになっており、上部フレーム45に対する塗布ローラ70の着脱が許容される構造となっている。これにより、長さが異なる複数の塗布ローラ70が準備され、ホットメルトHMが塗布される丸棒状部材11の長さ(部材外周面13におけるホットメルトHMの塗布領域の長さ)に応じて、塗布ローラ70の着脱および交換がなされる。
【0034】
更に塗布ローラ70は、図2および図4(b)に示すように、外周塗布面70Aから軸端に向かうにつれて徐々に小径となる傾斜面79を、両側の端部に備えている。この傾斜面79は、外周塗布面70Aから軸端に向かって直線状に傾斜する所謂テーパ状を呈している。そして傾斜面79は、外周塗布面70Aに対する傾斜角度Rが25〜45°の範囲内に設定され、実施例では30°程度に設定されている。このような傾斜角度Rに設定された傾斜面79は、塗布ローラ70と丸棒状部材11との接触部位に供給されて軸方向の両側へ移動したホットメルトHMを、該傾斜面79に沿って流動させるために供される。すなわち、外周塗布面70Aから傾斜面79に移動したホットメルトHMは、該傾斜面79上を伝って端部側へ移動するに従って径方向内方へ移動するため、丸棒状部材11の部材外周面13から徐々に離間する方向に移動することになり、部材外周面13に付着し難くなる。なお塗布ローラ70は、ローラ内部に適宜の加熱手段を設けて、外周塗布面70Aおよび傾斜面79を所定温度に加熱保温し得るように構成してもよい。
【0035】
前述した傾斜面79の傾斜角度Rを25°より小さく設定した場合には、ホットメルトHMが傾斜面79上を端部側へ移動しても、部材外周面13から余り離間しないので部材外周面13に付着するおそれがあり、傾斜面79を設けた効果がない。また、傾斜角度Rを45°より大きく設定した場合には、ホットメルトHMが有する表面張力により傾斜面79上へ移動し難くなり、該ホットメルトHMは外周塗布面70Aと傾斜面79との境界部分に留まってしまう。従って、外周塗布面70Aと傾斜面79との境界部分に留まったホットメルトHMは、丸棒状部材11の部材外周面13に付着して盛り上がった状態で固化してしまい、傾斜面79を設けない従来の場合と同じ現象が発現する。
【0036】
一方、上部フレーム45には、図2および図4(a),(b)に示すように、塗布ローラ70の傾斜面79,79に先端部を臨ませた第2スクレーパ(スクレーパ)80が配設されている。この第2スクレーパ80は、外周塗布面70Aから傾斜面79に移動して該傾斜面79に付着したホットメルトHMを掻き取るよう機能する。従って、塗布ローラ70の回転に伴い、傾斜面79に移動したホットメルトHMが第2スクレーパ80で掻き取られるので、傾斜面79にホットメルトHMが溜まることが防止される。なお、第2スクレーパ80によって掻き取られたホットメルトHMは、貯留槽55内に落下するようになっている。
【0037】
部材支持部82は、図1および図2に示すように、テーブル51の上面左側に配設された左支持体83と、テーブル51の上面右側に配設された右支持体84とを有している。左支持体83には、丸棒状部材11の左端部を側方から支持する第1回転支持軸85が、前方へ延出した延出部83Aに回転可能に配設されている。また右支持体84には、丸棒状部材11の右端部を側方から支持する第2回転支持軸86が、前方へ延出した延出部84Aに回転可能に配設されている。これら第1回転支持軸85および第2回転支持軸86は、同一軸線上に位置するように配設されており、両回転支持軸85,86間に支持した丸棒状部材11を、塗布ローラ70と平行な水平状態に臨ませる。なお第1回転支持軸85は、丸棒状部材11との滑りを防止する滑り止め(図示せず)を備えている。
【0038】
左支持体83の延出部83Aには、第1回転支持軸85に回転を付与する第3駆動手段88が取付けられている。この第3駆動手段88は、加減速制御が可能な公知のモータであり、出力軸に固定された第3駆動ギア91が、延出部83Aから外方へ延出した第1回転支持軸85の左端部に固定した第3従動ギア92に噛合している。従って、第3駆動手段88を駆動制御することで第1回転支持軸85が回転し、これにより第1回転支持軸85に支持された丸棒状部材11に回転が付与される。そして、第3駆動手段88を加減速させることで、丸棒状部材11の回転速度を増減させ得る。なお第3駆動手段88は、加減速制御を行ない得るものであれば、これ以外の駆動源を採用することも可能である。また、第3駆動手段88と第1回転支持軸85との回転伝達機構は、前述したギア機構以外でもよく、例えばタイミングベルト機構やチェン機構等であってもよい。更には、回転伝達機構を介さずに、第3駆動手段88の出力軸と第1回転支持軸85とを直結させてもよい。
【0039】
前述した左支持体83および右支持体84は、テーブル51の上面に設けられてホットメルト塗布装置Mの左右方向に延在するスライドレール94に沿ってスライド移動可能となっている。左支持体83は、テーブル51の左端部に設置した第1シリンダ95のロッド95Aに連結されており、ロッド95Aが前進するように第1シリンダ95を付勢制御すると左支持体83は図2の右方向へ移動し、ロッド95Aが後退するように第1シリンダ95を付勢制御すると左支持体83は図2の左方向へ移動する。また右支持体84は、テーブル51の右端部に設置した第2シリンダ96のロッド96Aに連結されており、ロッド96Aが前進するように第2シリンダ96を付勢制御すると右支持体84は図2の左方向へ移動し、ロッド96Aが後退するように第2シリンダ96を付勢制御すると右支持体84は図2の右方向へ移動する。従って、第1シリンダ95および第2シリンダ96を付勢制御して、左支持体83に設けた第1回転支持軸85および右支持体84に設けた第2回転支持軸86を相互に近接させることで丸棒状部材11を支持すると共に、両回転支持軸85,86を相互に離間させることで丸棒状部材11の支持を解除し得る。
【0040】
また実施例のホットメルト塗布装置Mは、図1および図3に示すように、部材支持部82の第1回転支持軸85および第2回転支持軸86における丸棒状部材11の着脱位置に該丸棒状部材11を搬入すると共に、第1回転支持軸85および第2回転支持軸86に支持されていた丸棒状部材11を搬出する部材搬送装置100を備えている。この部材搬送装置100は、ホットメルト塗布前の丸棒状部材11の両端近傍を把持して、該丸棒状部材11を部材供給部110から部材支持部82へ搬送する第1把持部101,101と、ホットメルトHM塗布後の丸棒状部材11の両端近傍を把持して、該丸棒状部材11を部材支持部82から部材搬出部111へ搬出する第2把持部102,102とを備えている。各第1把持部101および各第2把持部102は、図示しない作動手段により昇降移動および水平移動が可能な支持フレーム103に懸下状態に配設されており、丸棒状部材11を前後から把持可能な把持片104,104を備えている。すなわち、図3に実線で示すように、支持フレーム103を前方へ移動させた際には、第1把持部101が部材供給部110に載置されている丸棒状部材11を把持可能となると共に、第2把持部102が部材支持部82に支持されている丸棒状部材11を把持可能となる。また、図3に2点鎖線で示すように、支持フレーム103を後方へ移動させた際には、第1把持部101が部材支持部82に支持されている丸棒状部材11を把持可能となると共に、第2把持部102が部材搬出部111へ丸棒状部材11を放出可能となる。
【0041】
前述のように構成された実施例のホットメルト塗布装置Mは、前述すると共に図4(a)に示すように、貯留槽55に配設した第1スクレーパ68の装着位置を調整することで、第1スクレーパ68の先端部とディッピングローラ60の外周付着面60Aとの間隔S1を変更することができ、この間隔S1の変更に基づいて塗布ローラ70に対するホットメルトHMの供給量を調整し得るよう構成されている。また、前述すると共に図4(a)に示すように、貯留槽55を支持する設置台58により該貯留槽55の位置を調整することで、ディッピングローラ60の外周付着面60Aと塗布ローラ70の外周塗布面70Aとの間隔S2を調整することができ、この間隔S2の変更に基づいて丸棒状部材11に対するホットメルトHMの供給量を調整し得るよう構成されている。
【0042】
また、実施例のホットメルト塗布装置Mは、第1駆動手段62によりディッピングローラ60を回転させると共に、第2駆動手段74により塗布ローラ70を回転させる構造となっているので、ディッピングローラ60と塗布ローラ70との回転態様を様々に変更することが可能である。例えば、第1駆動手段62と第2駆動手段74とを夫々同時に駆動させることで、ディッピングローラ60と塗布ローラ70とを同期させながら回転させ得る。すなわち、塗布ローラ70を、ディッピングローラ60の回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させることができる。また、第1駆動手段62駆動すると共に第2駆動手段74を停止することで、ディッピングローラ60が回転している状態で塗布ローラ70のみを停止させることができる。
【0043】
また、第3駆動手段88により第1回転支持軸85を介して丸棒状部材11を回転させる構造となっているので、塗布ローラ70と丸棒状部材11との回転態様を様々に変更することが可能である。例えば、第2駆動手段74と第3駆動手段88とを夫々同時に駆動させることで、塗布ローラ70と丸棒状部材11とを同期させながら回転させ得る。すなわち、丸棒状部材11を、塗布ローラ70の回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させることができる。更に、第3駆動手段88を駆動すると共に第2駆動手段74を停止することで、丸棒状部材11が回転している状態で塗布ローラ70のみを停止させることができる。
【0044】
更に、第3駆動手段88を加減速調整することにより、塗布ローラ70の回転・停止および回転数に関係なく、丸棒状部材11の回転数を変更することが可能である。また、第3駆動手段88を逆方向に駆動することにより、丸棒状部材11を、塗布ローラ70の回転方向と同一方向に回転させることもできる。
【0045】
次に、前述のように構成された実施例のホットメルト塗布装置Mを使用したホットメルト塗布方法につき、図5〜図11を引用して説明する。実施例のホットメルト塗布方法は、図5に示した工程図に従って実行される。
【0046】
先ず、ホットメルトHMを塗布しようとする丸棒状部材11の長さに対応する塗布ローラ70を選択し、上部フレーム45に設けた左回転支持軸72および右回転支持軸73の間にセットする。そして、貯留槽55の位置調整を行ないながら、ディッピングローラ60の外周付着面60Aと塗布ローラ70の外周塗布面70Aとの間隔S2を調節する。また、第1スクレーパ68の配設位置を調整して、ディッピングローラ60の外周付着面60Aと第1スクレーパ68の先端部との間隔S1を調節する。なお、間隔S1および間隔S2は、部材外周面13に塗布されるホットメルトHMの塗布厚を勘案して、これを基に設定する。塗布準備が完了したら、貯留槽55に配設した加熱手段により、貯留槽55内に補給したホットメルトHMを100℃程度まで加熱して、該ホットメルトHMを塗布作業に適するように液状化させる。
【0047】
貯留槽55内に貯留されているホットメルトHMが液状化したら、図7に示すように、ホットメルトHMに外周付着面60Aの一部が浸漬した状態で配設されたディッピングローラ60を、第1駆動手段62で回転駆動する。第1駆動手段62を駆動させると、ディッピングローラ60は、図7において反時計方向へ所定の回転速度で定速回転し、回転に伴ってホットメルトHM内から上方へ移動する外周付着面60Aに、ホットメルトHMが連続的に付着するようになる。なお、ホットメルトHMの粘性が高くなる等に起因して、ディッピングローラ60の外周付着面60Aに多くのホットメルトHMが付着した場合には、第1スクレーパ68により余剰のホットメルトHMが掻き取られる。
【0048】
また、ディッピングローラ60の回転開始と略同時に、ディッピングローラ60と平行に配設されて外周塗布面70Aを外周付着面60Aに近接させた塗布ローラ70を、第2駆動手段74で回転駆動する。実施例では、第2駆動手段74を制御して、塗布ローラ70を、ディッピングローラ60の回転方向とは反対方向(図7において時計方向)に同一周速で回転させる。これにより、ディッピングローラ60と塗布ローラ70とが同期しながら回転し、外周付着面60Aと外周塗布面70Aとの間に速度差が生じない。従って、外周付着面60Aに付着しているホットメルトHMが外周塗布面70Aに連続的に付着するようになり、外周付着面60Aから外周塗布面70AへのホットメルトHMの転移が適切かつ効率的になされる。また、ディッピングローラ60と塗布ローラ70とが同期しながら回転するので、塗布ローラ70に向けて一定量のホットメルトHMが供給され、外周付着面60Aと外周塗布面70Aとの近接部分に対してホットメルトHMの供給過多となることは殆どない。
【0049】
一方、第1駆動手段62によるディッピングローラ60の回転開始と並行して、部材搬送装置100による丸棒状部材11の供給が実行される。部材搬送装置100の各第1把持部101,101に把持された丸棒状部材11が、図6に示すように着脱位置に到来したら、ロッド95A,96Aが前進するように第1シリンダ95および第2シリンダ96を作動させ、相互に離間していた左支持体83および右支持体84を近接させる。これにより、左支持体83の第1回転支持軸85および右支持体84の第2回転支持軸86が丸棒状部材11の左右両端部に当接し、これら第1回転支持軸85および第2回転支持軸86間に丸棒状部材11が支持される。なお、部材搬送装置100により供給される丸棒状部材11は、搬送する前に例えば80℃程度に予熱しておくことが望ましい。
【0050】
第1回転支持軸85および第2回転支持軸86間に丸棒状部材11が支持され、該丸棒状部材11を把持していた部材搬送装置100が上方へ待避したら、第3駆動手段88により第1回転支持軸85に回転を付与して、丸棒状部材11を回転させる。実施例では、第3駆動手段88を制御して、丸棒状部材11を、塗布ローラ70の回転方向とは反対方向(図7において反時計方向)に同一周速となる第1回転速度で回転させる。例えば、直径5mm程度の丸棒状部材11の部材外周面13にホットメルトHMを塗布する場合は、丸棒状部材11に付与される回転数(第1回転速度)を、20rpm程度に設定するのが望ましい。従って、塗布ローラ70の回転数は、丸棒状部材11の第1回転速度における周速に基づいて決定され、またディッピングローラ60の回転数は、塗布ローラ70の周速に基づいて決定される。
【0051】
また、第3駆動手段88による丸棒状部材11の回転開始と略同時に、ロッド50Bが後退するように流体圧シリンダ50を作動して昇降フレーム41を下降させ、回転している丸棒状部材11の部材外周面13を塗布ローラ70の外周塗布面70Aに近接させる。塗布ローラ70と丸棒状部材11とは、同一周速で反対方向へ回転しているので、外周塗布面70Aと部材外周面13との間に速度差が生じない。従って、外周塗布面70Aに付着しているホットメルトHMが部材外周面13に連続的に塗布されるようになり、外周塗布面70Aから部材外周面13へのホットメルトHMの転移が効率的かつ適切になされる。
【0052】
なお、部材外周面13と外周塗布面70Aとの近接部位に供給される余剰のホットメルトHMは、塗布ローラ70の両端方向へ移動した後に、両側に設けた傾斜面79,79上へ適宜流動するようになる。従って、部材外周面13と外周塗布面70Aとの近接部分にホットメルトHMが溜まることはなく、丸棒状部材11の部材外周面13にホットメルトHMが必要以上に付着することは防止される。
【0053】
そして、各傾斜面79に移動したホットメルトHMは、該傾斜面79上を伝って端部側へ移動して丸棒状部材11の部材外周面13から離間するようになるので、部材外周面13に付着して固化しない。更に、傾斜面79に移動したホットメルトHMは、塗布ローラ70の回転に伴い、第2スクレーパ80によって掻き取られた後、最終的には貯留槽55へ落下して再び加熱される。
【0054】
丸棒状部材11が塗布ローラ70に近接しながら1回転して、部材外周面13の全周に亘ってホットメルトHMが塗布されたら、第2駆動手段74を駆動停止して塗布ローラ70の回転を停止させる。これにより、部材外周面13と外周塗布面70Aとの近接部分にホットメルトHMが供給されなくなるので、ホットメルトHMの供給過多が発生しない。
【0055】
そして、塗布ローラ70の回転停止と略同時に、第3駆動手段88を制御して、前述した第1回転速度より速い第2回転速度で丸棒状部材11を増速回転させる。実施例では、第3駆動手段88を制御して、塗布ローラ70の回転方向と反対方向(図9において反時計方向)に、第1回転速度の4〜5倍(80〜100rpm)とされる第2回転速度で、丸棒状部材11を回転する。丸棒状部材11を第2回転速度で回転させることにより、停止した塗布ローラ70と丸棒状部材11との周速差が大きくなるので、丸棒状部材11に塗布されたホットメルトHMと塗布ローラ70の外周塗布面70Aに付着しているホットメルトHMとを確実に分離させることができる。更に、丸棒状部材11を第2回転速度で回転させることで、部材外周面13に塗布されたホットメルトHMが、回転停止した塗布ローラ70の外周塗布面70Aに摺接するようになるので、ホットメルトHMの外表面の凹凸が解消される。
【0056】
第2回転速度で回転する丸棒状部材11が所定回数だけ回転(例えば5回転)したら、ロッド50Bが前進するように流体圧シリンダ50を作動して昇降フレーム41を上昇させ、回転している丸棒状部材11を、停止している塗布ローラ70から離間させる。そして、丸棒状部材11が塗布ローラ70から離間したら第3駆動手段88を停止させ、丸棒状部材11の回転を停止させる。
【0057】
丸棒状部材11の回転が停止したら、部材搬送装置100による丸棒状部材11の搬出が実行される。部材搬送装置100の第2把持部102,102が丸棒状部材11を把持したら、ロッド95A,96Aが後退するように第1シリンダ95および第2シリンダ96を付勢制御して、相互に近接していた左支持体83および右支持体84を離間させる。これにより、左支持体83の第1回転支持軸85および右支持体84の第2回転支持軸86による丸棒状部材11の支持が解除され、部材搬送装置100による搬出が行なわれて、当該丸棒状部材11に対するホットメルトHMの塗布作業が完了する。
【0058】
従って、実施例のホットメルト塗布装置Mによれば、ディッピングローラ60を回転駆動する第1駆動手段62の他に、塗布ローラ70を回転駆動する第2駆動手段74および丸棒状部材11を回転させる第3駆動手段88を夫々備えているので、ディッピングローラ60、塗布ローラ70および丸棒状部材11の各々の回転数および回転方向の変更や、回転・停止等の制御を、個別に行なうことが可能である。従って、丸棒状部材11の部材外周面13にホットメルトHMを塗布する際には、部材外周面13の全周に亘ってホットメルトHMが塗布された時点で塗布ローラ70のみを停止させることができるので、ホットメルトHMの供給過多を防止することが可能となる。また、丸棒状部材11の部材外周面13にホットメルトHMが塗布された後には、丸棒状部材11だけを増速回転させることができるので、部材外周面13に塗布されたホットメルトHMの塗布厚を均一にし得ると共に、該ホットメルトHMの外表面の凹凸を解消することが可能である。
【0059】
また、丸棒状部材11の部材外周面13と塗布ローラ70との近接部位に供給される余剰のホットメルトHMを、塗布ローラ70の両端部に設けた傾斜面79上に移動させることで、丸棒状部材11の部材外周面13に付着するのを防止でき、ホットメルトHMが固化した膨出部(図19参照)が形成されるのを防ぐことができる。更に、傾斜面79に移動したホットメルトHMを、塗布ローラ70の回転に伴って第2スクレーパ80で掻き取ることができるので、傾斜面79にホットメルトHMが溜まることを防止できる。
【0060】
そして、塗布ローラ70に対する丸棒状部材11の近接および離間移動を流体圧シリンダ50により行なうので、外周塗布面70Aに対して部材外周面13が近接した際の間隔を適切にすることができる。更に、ホットメルト塗布装置Mへの丸棒状部材11の搬入および搬出は、部材搬送装置100によって自動化できるので、ホットメルト塗布作業の効率化および省力化を図り得る。更に、丸棒状部材11を、予め80℃程度に予熱した状態でホットメルト塗布装置Mへ供給するようにすることもできるので、部材外周面13に塗布されるホットメルトHMの急激な温度低下を防止することを可能とする。
【0061】
一方、実施例のホットメルト塗布方法によれば、塗布ローラ70を、ディッピングローラ60の回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させるようにしたので、ディッピングローラ60の外周付着面60Aから塗布ローラ70の外周塗布面70AへホットメルトHMを適切に転移させることができる。そして、丸棒状部材11を、塗布ローラ70の回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させるようにしたので、塗布ローラ70の外周塗布面70Aに付着しているホットメルトHMを、丸棒状部材11の部材外周面13に適切に塗布することができる。そして、丸棒状部材11の部材外周面13の全周にホットメルトHMが塗布された時点で、塗布ローラ70の回転を停止してホットメルトHMの供給を停止するようにしたので、部材外周面13に必要以上のホットメルトHMが塗布されることを防止し得る。更に、ホットメルトHMの塗布完了後に丸棒状部材11を増速回転させるようにしたので、塗布されたホットメルトHMの外表面が塗布ローラ70の外周塗布面70Aに摺接するようになり、ホットメルトHMの塗布厚の均一化が図られると共に、ホットメルトHMの外表面の凹凸が解消される。更にまた、丸棒状部材11を回転させた状態で塗布ローラ70から離間させるので、部材外周面13に塗布されたホットメルトHMと外周塗布面70Aに付着しているホットメルトHMとの間で糸引き現象が発生しない。
【0062】
そして、第2回転速度を第1回転速度の4〜5倍に設定したことにより、塗布ローラ70と丸棒状部材11との周速差が大きくなるので、丸棒状部材11の部材外周面13に塗布されたホットメルトHMの外表面が美麗になると共に、丸棒状部材11に塗布されたホットメルトHMと塗布ローラ70の外周塗布面70Aに付着しているホットメルトHMとを確実に分離することができる。また、余剰のホットメルトHMを塗布ローラ70の傾斜面79へ移動させるようにしたので、丸棒状部材11の部材外周面13にホットメルトHMが膨出した状態で付着することを防止し得る。更に、傾斜面79に移動したホットメルトHMを第2スクレーパ80で掻き取るようにしたので、傾斜面79にホットメルトHMが溜まることも防止できる。
【0063】
なお、本願発明に係るホットメルト塗布装置は、前述した実施例の形態に限定されるものではなく、次のように変更することが可能である。
(1)実施例のホットメルト塗布装置Mでは、第2駆動手段74を左回転支持軸72に連結した構造となっていたが、この第2駆動手段74は右回転支持軸73に連結するようにしてもよい。
(2)実施例のホットメルト塗布装置Mでは、第3駆動手段88を第1回転支持軸85に連結した構造となっていたが、この第3駆動手段88は第2回転支持軸86に連結するようにしてもよい。
(3)実施例のホットメルト塗布装置Mでは、塗布ローラ70に対してディッピングローラ60の位置調整を行なうことで、塗布ローラ70とディッピングローラ60との間隔S2を調整する構造となっているが、ディッピングローラ60に対して塗布ローラ70の位置調整を行なう構造としてもよい。すなわち、上部フレーム45に配設した左回転支持軸72および右回転支持軸73を、上部フレーム45に対して位置調整可能に配設すれば、塗布ローラ70の位置調整が可能である。
(4)実施例のホットメルト塗布装置Mでは、塗布ローラ70の両端に設けた傾斜面79を、外周塗布面70Aから端部に向かって直線状に傾斜した所謂テーパ面として構成されているが、この傾斜面79は、外周塗布面70Aから端部に向かって凸曲面状または凹曲面状に構成してもよい。
【0064】
また、本願発明に係るホットメルト塗布方法は、前述した実施例に限定されるものではなく、次のように変更することが可能である。
(1)実施例のホットメルト塗布方法では、丸棒状部材11の部材外周面13に対するホットメルトHMの塗布が完了した際に、丸棒状部材11を塗布時と同一回転方向(塗布ローラ70の回転方向と反対方向)へ増速回転させるようにしたが、塗布時の回転方向とは逆回転方向(図9において時計方向であって、塗布ローラ70の回転方向と同一方向)へ増速回転させるようにしてもよい。
(2)実施例のホットメルト塗布方法では、第2回転速度を第1回転速度の4〜5倍程度に設定したが、この第2回転速度は5倍以上に設定してもよい。
(3)実施例のホットメルト塗布方法では、丸棒状部材11の離間タイミングを、第2回転速度で5回転程度回転した時点としたが、この離間タイミングは1回転以上であればよい。
【0065】
本願が対象とする丸棒状部材11は、給紙装置等に実施されるローラ部材10を構成するものに限定されず、外形形状が細長の丸棒状を呈する部材の全てが対象とされる。すなわち丸棒状部材11は、中実丸棒状のみならず中空丸棒状であってもよいし、また材質も金属製のみならず合成樹脂製であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例のホットメルト塗布装置を、一部省略して示した正面図である。
【図2】実施例のホットメルト塗布装置を、一部省略して示した平面図である。
【図3】実施例のホットメルト塗布装置を、一部省略して示した右側面図である。
【図4】(a)は、貯留槽、ディッピングローラおよび塗布ローラと、第1スクレーパおよび第2スクレーパを示した説明断面図、(b)は、塗布ローラと第2スクレーパとを示した説明図である。
【図5】実施例のホットメルト塗布方法の工程図である。
【図6】ホットメルト塗布装置の部材支持部に、部材搬送装置により丸棒状部材を支持する状態を示した説明図である。
【図7】塗布ローラを、ディッピングローラの回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させてホットメルトを外周塗布面に転移させると共に、丸棒状部材を回転させる状態を示した説明図である。
【図8】丸棒状部材を第1回転速度で回転させた状態で塗布ローラに接触させ、外周塗布面に付着していたホットメルトを部材外周面に塗布する状態を示した説明図である。
【図9】丸棒状部材の部材外周面の全周にホットメルトが塗布された時点で、塗布ローラを停止すると共に、丸棒状部材を第2回転速度に増速回転させる状態を示した説明図である。
【図10】丸棒状部材を、回転させた状態で塗布ローラから離間させる状態を示した説明図である。
【図11】部材支持部に支持されていた丸棒状部材を部材搬送装置により搬出する状態を示した説明図である。
【図12】(a)は、丸棒状部材に円筒状の弾性部材を固定して構成されるローラ部材の斜視図、(b)は、ホットメルトを塗布したシャフト部材の部材外周面に弾性部材を装着する状態を示した説明図である。
【図13】従来のホットメルト塗布装置の概略構成を、装置正面から見た説明断面図である。
【図14】従来のホットメルト塗布装置の概略構成を、装置側面から見た説明断面図である。
【図15】従来のホットメルト塗布方法の工程図である。
【図16】従来のホットメルト塗布方法により、丸棒状部材の部材外周面にホットメルトを塗布している状態を示した説明断面図である。
【図17】塗布ローラの継続回転に伴うホットメルトの供給過多により、ホットメルトが塗布ローラの両端方向へ移動し、丸棒状部材の両端近傍にホットメルトが固化した膨出部が形成される不都合を示した説明断面図である。
【図18】丸棒状部材を離間させる際に、ホットメルトによる糸引き現象が発現することを示した説明断面図である。
【図19】従来のホットメルト塗布方法により丸棒状部材の部材外周面にホットメルトを塗布した場合に、塗布後に固化したホットメルトの形状を概略的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0067】
11 丸棒状部材,13 部材外周面,50 流体圧シリンダ(作動手段)
55 貯留槽,60 ディッピングローラ,60A 外周付着面,62 第1駆動手段
70 塗布ローラ,70A 外周塗布面,74 第2駆動手段,79 傾斜面
80 第2スクレーパ(スクレーパ),82 部材支持部,88 第3駆動手段
100 部材搬送装置,HM ホットメルト,R 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽に貯留されている液状化したホットメルトに外周付着面の一部が浸漬し、第1駆動手段により回転駆動されるディッピングローラと、前記ディッピングローラの外周付着面に外周塗布面が平行に臨み、外周付着面に付着したホットメルトが外周塗布面に転移される塗布ローラと、前記塗布ローラの外周塗布面に部材外周面を平行に臨ませた丸棒状部材を回転可能に支持する部材支持部とを備え、前記塗布ローラの外周塗布面に近接した前記丸棒状部材の部材外周面に、外周塗布面に転移している前記ホットメルトを所定の幅で塗布するホットメルト塗布装置において、
前記塗布ローラを回転駆動する第2駆動手段と、
前記部材支持部に支持した前記丸棒状部材を回転駆動する第3駆動手段とを備えた
ことを特徴とするホットメルト塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ローラの軸方向両端部に、前記外周塗布面から軸端に向かうにつれて徐々に小径となる傾斜面が設けられている請求項1記載のホットメルト塗布装置。
【請求項3】
前記外周塗布面に対する前記傾斜面の傾斜角度を、25〜45度の範囲に設定した請求項2記載のホットメルト塗布装置。
【請求項4】
前記傾斜面に付着したホットメルトを掻き取るスクレーパを備えた請求項2または3記載のホットメルト塗布装置。
【請求項5】
前記部材支持部に連結され、前記塗布ローラに対して前記丸棒状部材を近接・離間移動させるよう部材支持部を作動する作動手段を備えた請求項1〜4の何れか一項に記載のホットメルト塗布装置。
【請求項6】
前記部材支持部における前記丸棒状部材の着脱位置に該丸棒状部材を搬入すると共に、前記部材支持部に支持されていた前記丸棒状部材を搬出する部材搬送装置を備えた請求項1〜5の何れか一項に記載のホットメルト塗布装置。
【請求項7】
貯留槽に貯留されている液状化したホットメルトを、丸棒状部材の部材外周面に所定の幅で塗布するホットメルト塗布方法であって、
前記ホットメルトに外周付着面の一部が浸漬したディッピングローラを第1駆動手段により定速回転させて、前記ホットメルトを外周付着面に付着させ、
前記ディッピングローラの外周付着面に外周塗布面を臨ませた塗布ローラを、第2駆動手段によりディッピングローラの回転方向と反対方向に同一周速で同期回転させて、ディッピングローラの外周付着面に付着している前記ホットメルトを外周塗布面に転移させ、
部材支持部に支持した前記丸棒状部材を、第3駆動手段により前記塗布ローラの回転方向と反対方向に同一周速となる第1回転速度で同期回転させたもとで、該丸棒状部材の部材外周面を該塗布ローラの外周塗布面に近接して該部材外周面にホットメルトを塗布し、
前記部材外周面の全周に前記ホットメルトが塗布されたら、前記第2駆動手段を停止して前記塗布ローラの回転を停止させ、
前記第3駆動手段により前記第1回転速度より高い第2回転速度で回転させた前記丸棒状部材を、前記塗布ローラから離間させる
ことを特徴とするホットメルト塗布方法。
【請求項8】
前記第2回転速度は、第1回転速度の4〜5倍に設定される請求項7記載のホットメルト塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2008−279347(P2008−279347A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124964(P2007−124964)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】