説明

ホログラフィック光トラッピングを用いて物質を操作し、処理するためのシステム及び方法

動的光学素子(DOE)でレーザービームを変調することにより形成される光トラップを用いて1つ又は複数の特質を有する1つ又は複数の粒子を操作するための方法である。本方法は、粒子の少なくとも1つの特質を選択する段階、粒子の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームを発生させる段階、及びDOEの算定値を選択する段階を含み、算定値が粒子の少なくとも1つの選定特質に対応する。本方法はさらに、ビーム及びDOEを変調して、少なくとも1つの選定特質に対応する特性を有する少なくとも1つのホログラフィック光トラップを生成する段階、選定サイズを有するビーム焦点又はスポットサイズにトラップを合焦させる段階、並びにその中に粒子をトラッピングするために粒子位置近くにビーム焦点を設置する段階を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィックトラッピングを用いてナノ物質、マイクロ物質及びピコ物質を操作し、処理するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
本発明は、以下の仮出願の完全な特許(utility)申請に関連し、且つ変換である:
60/543,488(2004年2月11日提出)。
60/519,407(2003年11月12日提出)。
60/515,091(2003年10月28日提出)。
60/515,092(2003年10月28日提出)。
60/531,254(2003年12月20日提出)。
上記に特定された出願の教示は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
ナノ物質は一般に、ナノ領域において少なくとも1つの寸法を有すると特性化される物質及び構造体と記述され得る。これらの物質は、多数の及び種々の用途を有する。ナノ物質としては、元素物質、例えば元素原子、例えば金、及びより規則性構造体、例えばナノチューブ及びバッキーボールが挙げられる。ナノチューブは、特に関心が高い1つ又は複数の原子又は分子層で形成される中空対称物体であり、炭素で作られるナノチューブである。バッキーボールは、原子又は元素炭素の中空球である。ナノ物質及び規則性ナノ構造体の他の例は、以下で考察される。
【0004】
ナノチューブは、それらの並外れた機械的、電気的及び光学的特性が多数の用途を可能にするため、特に興味深いナノ構造体である。炭素から作成されるナノチューブは、炭素構造と関連した高度の多用性、例えばDNA分子と連結する能力を提供する。10年以上もの間持続されたナノチューブ研究は、無数の上首尾の技術を生み出してきた。ナノチューブを含浸させた絶縁材は、導体に変えられ得る。ナノチューブ補強材は、それらの機械的強度改良のために開発中である。研究者等は、ディスプレイにおける電子エミッターとして用いるための整列ナノチューブの大型アレイを発達させてきた。
【0005】
カーボンナノチューブの独特の特性を利用するその他の用途が予見される。これらの用途としては、非常に大きい弾性材料のモジュール、ナノチューブベースの電子構成部分、及び光を導くためにナノチューブを用いる構造体が挙げられる。
【0006】
これらの技術の多くの開発に際して広範に認められる課題が存在する。1つの課題は、構造特性、例えばそれらのキラリティ、直径、長さ及びその他の特性に基づいたナノ物質の分離又は精製を包含する。例えば種々のナノチューブの分離を包含する近年の進歩は、DNAとの特異的結合を使用し、又は電気泳動を用いる。別の重要な課題は、制御アセンブリー、蒸着及び配向のためのナノ物質の操作を包含する。ある型の蒸着のための方法が存在するが、三次元で単一物体を移動し、物体の大群をパターン化する能力は依然として欠いている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回析光学素子(DOE)でレーザービームを変調することにより形成される光トラップを用いて1つ又は複数の特質を有する物質粒子を操作するための方法の発見に基づいている。該方法によれば、物質の少なくとも1つの特質が選択され、物質の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームが発生し、物質の少なくとも1つの選定特質に対応するDOEの算定値が選択され、ビーム及びDOEが変調されて、少なくとも1つの選定特質に対応する特性を有するホログラフィック光トラップを生成し、トラップが合焦され、その中に粒子をトラッピングするために、粒子位置近くにビーム焦点が設置される。
【0008】
さらなる態様によると、本発明は、トラップの機能性を観察すること、機能性を調整するために観察に応答してDOE値を再算定すること、及び少なくとも1つの選定特質に関して満足のいく機能性が達成されるまで観察及び再算定段階を反復することをさらに包含する。
【0009】
本発明によると、トラップの機能性はその形状を形作ることにより変化させ得る。粒子を操作することを含む本発明の様々な態様は、以下の:
選定位置にトラップ粒子を移動すること、
トラップ粒子の一部を1つ表面又は別の粒子に付着させること、
隣接媒体中の選択された流動パターンを確立するために付着粒子を選択的に加熱すること、
粒子を適所で安定させること、
粒子をトラップエネルギーで加熱すること、
近接物体との衝突のために粒子を移動させること、
近接物体を貫通するために衝撃波で粒子を変形させること、
粒子を選定パターンに整列させること、
隣接媒体の対応する選定流動パターンを確立するために選定パターンに整列された粒子を選択的に加熱すること、
第1機能性を有する第1選定トラップ中で粒子をトラッピングし、第2機能性を有する前記粒子上に第2選定トラップを重ね合わせること、
一表面上に粒子を蒸着させること、
表面と直角を成す平行軸アラインメントで一表面上に粒子を蒸着させること、
表面と平行な平行軸アラインメントで一平面上に粒子を蒸着させること、
本体の一表面から粒子を除去すること、
一表面から粒子を融除すること、
少なくとも1つのサイズ、形状、長さ、伝導率、誘電率、屈折率、キラリティ、熱吸収性を含むナノ粒子の特質によって、ナノ粒子を選別すること、
媒体の膨張を引き起こすために媒体中で粒子を選択的に加熱すること、
媒体を膨張させ、それによりチャネルを閉鎖するためにその中にチャネルを有する媒体中で粒子を選択的に加熱すること、
サイズ、機能性、吸収性、蛍光、キラリティ及び長さに基づいて粒子を識別すること、及び
入射放射線に応答して粒子から放出されるエネルギーを検知すること
を1つ又は複数含む。
【0010】
本発明と一致するシステム及び方法は、種々の工業用ポリマー及びバイオポリマーをナノチューブ及びナノ構造体に付着させる。これらのポリマーは次に、機能性化コロイド球に付着され得る。球は、光学ピンセットによるナノ構造体の操作を助長する。さらに、次にホログラフィック光トラッピングを用いて、基板上に及び基板から大量のナノ構造体をパターン化並びに制御し得る。
【0011】
ホログラフィック光トラッピングを用いる本発明と一致するシステム及び方法は、ナノ物質及びナノ構造体の操作並びに処理のための種々の技法を可能にし、且つ増強する。
【0012】
本発明の例示的実施の形態は、チューブの操作及びパターン化を助長する光トラッピング化ナノスフェアのクラウドを用いてナノチューブを制御するための方法を含む。ホログラフィック光トラッピングは、トラップの形状が複雑に形作られて、ナノスフェアのクラウドの詳細な制御を可能にし、これが次にナノチューブのさらに用途の多い操作を可能にするため、この領域において異なる利点を付与する。
【0013】
本発明は、回析光学素子(DOE)、例えば空間光モジュレーター、デジタル光プロセッサー又はその他の回析素子、及びそれにより変調されてナノ粒子をトラッピングするためのホログラムを生成するレーザーを用いる装置を包含する。
【0014】
本発明は、本明細書中に開示された方法及び種々の装置により生成される生成物も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明と一致する方法を実行するために光トラップを形成するための例示的コンパクトシステムの構成部分図を示す。
【0016】
【図2】図1のコンパクトシステムが結合する倒立顕微鏡を示す。
【0017】
【図3】(a)は図1の光トラッピングシステムに関連して配置される標的試料中の単一壁ナノチューブの例示的分散を示す。(b)は光対流トラップを形成するためにレーザーを用いて図1の光トラッピングシステムにより集合された単一壁ナノチューブの例示群を示す。(c)はナノチューブが基板上に蒸着される前に予定パターンでトラップ化ナノチューブを移動する図1の光トラッピングシステムの能力を示すマルチフレームの時間平均を表す。(d)は 基板上に集合ナノチューブを蒸着する場合にCCDカメラを飽和させるために図1の光トラッピングシステムにより生成される強い光のバーストを表す。(e)は 基板上に図1の光トラッピングシステムにより蒸着されたナノチューブを表す。(f)は 図1の光トラッピングシステムによる特定パターンでの集合ナノチューブの蒸着を示す明視野像を表す。(g)は 図1の光トラッピングシステムによるナノチューブ束からのナノチューブロープ又はファイバーのトラッピング及び部分抽出を示す暗視野像を表す。hは 図1の光トラッピングシステムによるナノチューブ束からの(g)示すナノチューブロープ又はファイバーのさらなる抽出を示す別の暗視野像を表す。(i)は 図1の光トラッピングシステムによるナノチューブ束からの(g)及び(h)に示すナノチューブロープの抽出完了を示す別の暗視野像を表す。(j)は光学渦を生成するよう改造された図1の光トラッピングシステムによる数束のナノチューブのトラッピング及び回転を表す。(k)は 光学渦を用いてナノチューブを回転する場合の図1の光トラッピングシステムにより生成されるナノチューブの束の回転パターンを示すいくつかのフレームの時間平均を表す。(l)は ガラス表面に蒸着されたナノチューブのシート上にホログラフィックエッチングのためにシステムのレーザーを合焦するよう改造された場合の、図1の光トラッピングシステムにより平行して生成された多数のパターンを表す。
【0018】
【図4A】粒子の末端に結合されたコロイド球を用いて延長ナノ粒子を操作するための技法を示す。
【0019】
【図4B】粒子の末端に結合されたコロイド球を用いて延長ナノ粒子を操作するための技法を示す。
【0020】
【図5A】ナノハンドルを形成するために粒子のクラウドを用いて延長ナノ粒子を操作するための技法を示す。
【0021】
【図5B】ナノハンドルを形成するために粒子のクラウドを用いて延長ナノ粒子を操作するための技法を示す。
【0022】
【図6A】延長ナノ粒子が延伸により改質され得て、且つ多構成部分粒子が分離され得る種々の技法を示す。
【0023】
【図6B】延長ナノ粒子が延伸により改質され得て、且つ多構成部分粒子が分離され得る種々の技法を示す。
【0024】
【図7A】ナノ粒子が選定パターン又は配向で他の構造体に結合され得る技法を示す。
【0025】
【図7B】ナノ粒子が選定パターン又は配向で他の構造体に結合され得る技法を示す。
【0026】
【図7C】ナノ粒子が選定パターン又は配向で他の構造体に結合され得る技法を示す。
【0027】
【図8A】粒子が一表面上に蒸着され得て、且つ蒸着粒子又は他の物質が物質の除去により、例えばエッチングにより改質され得る技法を示す。
【0028】
【図8B】粒子が一表面上に蒸着され得て、且つ蒸着粒子又は他の物質が物質の除去により、例えばエッチングにより改質され得る技法を示す。
【0029】
【図8C】粒子が一表面上に蒸着され得て、且つ蒸着粒子又は他の物質が物質の除去により、例えばエッチングにより改質され得る技法を示す。
【0030】
【図8D】粒子が一表面上に蒸着され得て、且つ蒸着粒子又は他の物質が物質の除去により、例えばエッチングにより改質され得る技法を示す。
【0031】
【図8E】粒子が一表面上に蒸着され得て、且つ蒸着粒子又は他の物質が物質の除去により、例えばエッチングにより改質され得る技法を示す。
【0032】
【図9A】ナノ粒子が細胞中に又は細胞の壁の中に挿入されるか又は埋め込まれ得る技法を示す。
【0033】
【図9B】ナノ粒子が細胞中に又は細胞の壁の中に挿入されるか又は埋め込まれ得る技法を示す。
【0034】
【図9C】ナノ粒子が細胞中に又は細胞の壁の中に挿入されるか又は埋め込まれ得る技法を示す。
【0035】
【図9D】ナノ粒子が細胞中に又は細胞の壁の中に挿入されるか又は埋め込まれ得る技法を示す。
【0036】
【図9E】ナノ粒子が細胞中に又は細胞の壁の中に挿入されるか又は埋め込まれ得る技法を示す。
【0037】
【図9F】ナノ粒子が細胞中に又は細胞の壁の中に挿入されるか又は埋め込まれ得る技法を示す。
【0038】
【図10A】ナノチャネルが本体の表面に形成され得る技法を示す。
【0039】
【図10B】ナノチャネルが本体の表面に形成され得る技法を示す。
【0040】
【図10C】ナノチャネルが本体の表面に形成され得る技法を示す。
【0041】
【図10D】ナノチャネルが本体の表面に形成され得る技法を示す。
【0042】
【図11A】ナノ粒子が、ゼプト注射器を形成するよう操作され得る技法を示す。
【0043】
【図11B】ナノ粒子が、ゼプト注射器を形成するよう操作され得る技法を示す。
【0044】
【図12A】選定流動パターンを確立するために流体媒質中でナノ粒子が選択的にトラップされ、且つ加熱され得て、且つこのような選択的加熱がナノ流体デバイス中で用いられ得る技法を示す。
【0045】
【図12B】選定流動パターンを確立するために流体媒質中でナノ粒子が選択的にトラップされ、且つ加熱され得て、且つこのような選択的加熱がナノ流体デバイス中で用いられ得る技法を示す。
【0046】
【図12C】選定流動パターンを確立するために流体媒質中でナノ粒子が選択的にトラップされ、且つ加熱され得て、且つこのような選択的加熱がナノ流体デバイス中で用いられ得る技法を示す。
【0047】
【図12D】選定流動パターンを確立するために流体媒質中でナノ粒子が選択的にトラップされ、且つ加熱され得て、且つこのような選択的加熱がナノ流体デバイス中で用いられ得る技法を示す。
【0048】
【図12E】選定流動パターンを確立するために流体媒質中でナノ粒子が選択的にトラップされ、且つ加熱され得て、且つこのような選択的加熱がナノ流体デバイス中で用いられ得る技法を示す。
【0049】
【図13A】本体の内部特質に影響を及ぼすために、且つそれによりその中に形成されるナノチャネル中の流動を選択的に制御するために、ナノ粒子が選択的に加熱され得る技法を示す。
【0050】
【図13B】本体の内部特質に影響を及ぼすために、且つそれによりその中に形成されるナノチャネル中の流動を選択的に制御するために、ナノ粒子が選択的に加熱され得る技法を示す。
【0051】
【図13C】本体の内部特質に影響を及ぼすために、且つそれによりその中に形成されるナノチャネル中の流動を選択的に制御するために、ナノ粒子が選択的に加熱され得る技法を示す。
【0052】
【図13D】本体の内部特質に影響を及ぼすために、且つそれによりその中に形成されるナノチャネル中の流動を選択的に制御するために、ナノ粒子が選択的に加熱され得る技法を示す。
【0053】
【図13E】本体の内部特質に影響を及ぼすために、且つそれによりその中に形成されるナノチャネル中の流動を選択的に制御するために、ナノ粒子が選択的に加熱され得る技法を示す。
【0054】
【図14A】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0055】
【図14B】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0056】
【図14C】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0057】
【図14D】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0058】
【図14E】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0059】
【図14F】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0060】
【図14G】ナノ粒子が選択可能な電気的特質を有する伝導性ストランドに形成され得る技法を示す。
【0061】
【図15】本発明の方法を実施するためのブロック図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明の特定の実施形態は、その原理及び操作を説明する目的のために、かなり詳細に以下で説明される。しかしながら種々の修正がなされ、且つ本発明の範囲は下記の例示的実施形態に限定されない。例えば本発明はナノ物質を、時としてマイクロ物質を例示的実施形態として用いることにより記載されるが、本発明は、マイクロレジメ(regime)、約1mm又はそれ以下から、ピコレジメ、約0.1nmまでの広範囲の物質サイズに亘って用途を有すると理解されるべきであり、且つこのような用途は本発明に含まれると意図される。
【0063】
本明細書中で用いる場合、ナノという用語は、ナノ領域の特徴的サイズを有する粒子、物質及び構造体、即ち10−6m未満というミクロン以下の特徴的寸法を有する粒子を指す。これらの粒子は、原子、分子、このような原子の集塊、及び分子物質であり得るし、並びに元素物質、又は原子若しくは分子物質の規則正しいアレイであり得る。ナノ物質としては、製剤、生体物質(bio materials)及び海水からの集合金属も挙げられるが、これらに限定されない。それらは、分子が溶液中に存在するか又は微小粒子が懸濁液中に存在する領域も含み得る。説明の目的のために有用である場合、ナノ粒子、ナノ物質又はナノ構造体の特定の構造が記述される。しばしば当該用語は、互換的に用いられる。時としては、ナノは単独で用いられ、このような場合のナノはこれらの物質のクラスを指し、又は、ナノメートル(nm)での寸法を指す、と概して理解されるべきである。広範な条件での考察の状況は、何が記載されているかを当業者に明らかにするに違いない。同様にマイクロ物質は1mm未満であり、且つピコ物質は0.1nm未満であり得る。
【0064】
ナノ粒子の操作は達成が困難であり、且つ修得するのが難しいツールの類別を要する。例えばホログラムを生成するために動的光学素子(DOE)を用いるホログラフィック技法を用いて、約10−6mのマイクロ領域の1つ又は複数の粒子が捕捉され、且つ操作され得る、ということが既知である。例示的一実施形態では、DOEは、レーザービームを変調するための空間的光モジュレーター(SLM)であり得る。DOEは、デジタル光プロセッサー(DLP)、又は回転台上に載せられた固定曝露ホログラフィックプレート等でもあり得る。一度に一マイクロ粒子をトラッピングするというよりむしろ、DOEは、複数のマイクロ粒子をトラッピングするために複数のビームレットを生成する。ナノ粒子はホログラフィックレーザー技法を用いて光学的にトラップされ得る、ということが同様に既知である。しかしながら慣用的技法を用いて個別にほとんどのナノ粒子を光学的にトラップすることは非常に困難であるが、その難しさはホログラフィック技術にも同様に及んでいる。
【0065】
この難しさの理由は、マイクロ粒子、即ち10−6mより大きい粒子が通常はレイ光学レジメとして既知のレジメでトラップされる、ということである。このレジメでは、粒子は一般にビーム直径よりはるかに大きい。ナノ粒子は、レイリーレジメ中に存在し、ここでは粒子はビーム直径よりもずっと小さい。その差は単に尺度の問題であるというわけではない。おおよその類似性を記載すると、その差は、バスケットボール対塵粒子を見つけ出すために暗室中でフラッシュライトを用いるのと同様である。他の比較がなされ得るが、重要なことは、サイズの差が非常に大きく、マイクロレジメに関して既知の技法が有意の修正を伴わずにナノレジメに関して容易に適合されず、且つ実際的ではない、ということである。しかしながら本明細書中で後述されるように、ナノ領域での所望の結果を達成するために新規の方法を用いて既知の装置を用いることができる。
【0066】
本明細書中で用いる場合、操作という用語は、ナノ粒子が入射エネルギーにより影響を及ぼされる任意の技法を広範に含む。これは、トラッピング、移動、取出し、加熱、融除等を包含する。このような定義の理由は、あることを成し遂げるための技法が別のことを成し遂げるために容易に適合され得る、というものである。例えば本明細書中で後述されるように、ナノ粒子を同時的に又は別々にトラップし、且つ過熱し、且つ技法が単独で用いられるか、又は組合せて用いられるかによって、種々の結果を達成し得る。
【0067】
装置
図1は、1つ又は複数の光トラップを形成するための本発明と一致するコンパクトシステムの一実施形態の構成部分図を示す。システムは、動的光学素子を反射動的表面と比較する相パターン化光学素子51を包含する。一例示的デバイスは、相だけの空間的光モジュレーター、例えば「PAL−SLMシリーズX7665」(浜松ホトニクス株式会社(日本)製)、「SLM512SA7」又は「SLM512SA15」(ともにボールダーノンリニアーシステム(Boulder Nonlinear Systems) (ラフィエット、コロラド州)製)である。別の例示では、DOEは、マイクロミラーを用いるテキサスインスツルメント(Texas Ins(登録商標)truments)のデジタル光プロセッサー(DLP)である。これらの動的光学素子は、コンピューターが本明細書中で形成されるホログラムを制御する符号化可能反射表面を有する。
【0068】
光学素子51は、第1光チャネル53aが提供されるハウジング52と一列に並べられるか、又はそれに付着される。第1光チャネルの一端53bは光学素子51に近接して存在し、第1光チャネルの他端53cは、それと直角を成して形成される第2光チャネル53dと交差、且つ連通する。第2光チャネルは、小塔又は「ノーズピース」54bを載せている顕微鏡レンズの基部54a内に形成される。ノーズピース54bは、NixonTE200シリーズ顕微鏡に合うよう適合される(示されていない)。第2光チsャンネルは、第2光チャネルとも直角を成す第3光チャネル55aと連絡する。第3光チャネル55aは、ノーズピース54bの上部表面からノーズピース54aの基部を通って横断し、対物レンズ集束レンズ56と平行である。集束レンズは、背面開口57を形成する上面及び底面を有する。第2光チャネル及び集束レンズの背面開口57間の第3光チャネル中に介入されるのは、二色性鏡ビームスプリッター58である。光トラップ50を形成するためのコンパクトシステム内の他の構成部分としては、第1鏡M1(第1光チャネルを通って相パターン化光学素子から発するビームレットを反射する)、第1組の伝達光学素子TO1(第1光チャネル内に配置され、第1鏡M1により反射されるビームレットを受け入れるよう一列に並べられる)、第2組の伝達光学素子(第1光チャネル内に配置され、第1組の伝達レンズTO1を通過するビームレットを受け入れるよう一列に並べられる)、並びに第2鏡M2(第1光チャネルと第2光チャネルの交差点に位置し、第2組の伝達光学素子TO2及び第3光チャネル55aを通過するビームレットを反射するよう一列に並べられる)が挙げられる。
【0069】
光トラップを形成するために、レーザービーム(示されていない)は、光ファイバー150を通してコリメーター末端151の外に向けられて、光学素子51の動的表面59から反射される。光ファイバー150のコリメーター末端151を出る光のビーム(示されていない)は、光学素子51の動力学表面59により複数のビームレットに回析される(示されていない)。各ビームレットの数、型及び方向は、動的表面媒体59中で符号化されるホログラムを変更することにより制御され、且つ変更され得る。次にビームレットは、第1鏡M1から発して、第1組の伝達光学素子TO1を通って、第1光チャネル53aを下って、第2組の伝達光学素子TO2を通って第2鏡M2に反射し、且つ二色性鏡58で対物レンズ56の背面開口57まで向けられて、対物レンズ56を通して収束され、それにより光トラップを形成するために必要な光学的勾配条件を生成する。画像形成のために二色性鏡58により分割される光のその部分は、第3光チャネル55bの下部を通過して、光学的データ流を形成する(示されていない)。
【0070】
ビームレットの相プロフィールが末梢で強度が低く、末梢から内方の領域でより強い実施形態では、約15%未満だけ背面開口57を過剰充填することは、背面開口57を過剰充填せずに生成された光トラップより大きい強度を光トラップの末梢で有する光トラップを形成するために有用である。
【0071】
図2は、光トラップを形成するためのコンパクトシステム(図1)が搭載されたNixonTE200シリーズ顕微鏡の立面図である。結合ハウジング52を伴うノーズピース54bは、ノーズピース54a及び54bのための台(示されていない)を介して顕微鏡中に直接嵌合する。ハウジング及びその内容物並びに結合光学素子51は、ノーズピース54a及び54bに固定され、顕微鏡の残り部分に対する変更又は修正をほとんど又は全く必要としない。画像形成のために、光源61が対物レンズ56上に提供され得る。
【0072】
各々2つのレンズ素子を含有する第1及び第2組の伝達光学素子TO1及びTO2が示されている。レンズは、凸レンズ又は凹レンズであり得る。多種多様な型及び量のレンズ、例えば対称空隙一重レンズ、対称空隙二重レンズ及び/又は付加的レンズ又はレンズ群が、第1鏡M1から第2鏡M2への画像伝達を達成するために選択され得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2組の伝達光学素子は、望遠レンズとして組合せて作用するような距離で間隔を置かれる対称空隙二重レンズである。
【0073】
1つ又は複数の光トラップを形成する図1に示したコンパクトシステム50は、光学ピンセットの一実施形態である。光学ピンセットは、ナノ物質を制御するための強力な方法を提供した。特にホログラフィック光トラッピングは、これらの寸法での多数のナノ構造体、例えばナノチューブ又はナノチューブ集合体を操作するための光トラッピングの使用を可能にする。これらの操作は、ホログラフィック光トラッピング、例えば標準ガウストラップを超える光の様式の作成を利用して、種々の有用な方法でナノ構造体、例えばナノチューブを制御する。
【0074】
標準ガウス光トラップのほかに、光の様式、例えば光学渦は、構造体を回転させるために用いられ得る。光学渦は、ナノ体を分解するためにも有用である。ベッセルビームは、それらのトラッピング領域の長いアスペクト比により、多数のナノ構造体、例えばナノファイバー又は長い単一ファイバーをトラップするために用いられ得る。
【0075】
光学ピンセットによるこれらのナノ体の操作は、ナノ体を接合するか又は分断する切断又は溶接技法により増大され得る。例えばピンセット操作レーザーはこの目的のために適切に用いられ得て、或いは第2のレーザーが用いられ得る。
【0076】
さらに放射圧及び熱を用いて、表面上に操作ナノ物体を蒸着し得る。この制御ナノ蒸着は、複雑なパターンを書き込ませる。
【0077】
個々のナノ体のほかに、ナノ体の群を操作する能力を用いて、ナノベースの物質を生成し得る。例えばナノチューブは、物質を生成するために集合されてもよく、或いは存在する物質中のナノチューブは、例えばそれらの位置又は配向を調整するために、ホログラフィック光学ピンセットにより処理されてもよい。この技法の特定例は、太陽電池の領域である。多数の新規の太陽電池物質は、ナノチューブを包含する。しかしながら効率的物質を作成するに際しての大きな障害は、物質の作成中にナノチューブを整列させる能力である。ホログラフィック光トラッピングは、この能力を提供する。
【0078】
ホログラフィック光学ピンセットに関する重要な用途は、ナノチューブを選別することである。この選別法は、ナノ処理の2つの段階で重要である。第1段階は、ナノ体(「ナノチューブ」物質を除く)の精製を包含する。ホログラフィック光トラッピングはサイズ及び粘稠性に基づいた物質の選別を得意とし、この選別段階のために用いられ得る。第2段階は、それらの特性に基づいたナノ体の選別、例えば導性ナノチューブを半導性ナノチューブから選別することを包含する。この分離は、ナノチューブが、ナノチューブ構造体のキラリティを除いて、構成、サイズ及び形状が非常に類似し得るので、伝統的に非常に難しかった。ホログラフィック光トラップにおける光との相互作用は、このキラリティに基づいた選別のための有用な方法を提供する。例えば光学渦は、それらが種々の量の運動量を異なるキラル構造体に付与するので、用いられ得る。さらに、光は異なる伝導率の物質と別の仕方で相互作用するので、ガウス又はベッセルビームトラップは、伝導率に基づいた選別のために用いられ得る。概して、異なる長さ、厚み、キラリティ又は伝導率のナノチューブと光との異なる相互作用は、ホログラフィック光トラップでナノチューブを選別するために用いられ得る。
【0079】
異なる様式(形状又は光学的特質)を有する異なるトラップは、異なる特質を有するナノ構造体を操作するために用いられ得る。例えばベッセルトラップは、中空円筒の形態の特徴的光分布を有し、即ち、円筒内側の領域は、トラップを形成する光が破壊的に干渉するため本質的に暗く、一方、表面上の光は構成的に干渉する。ベッセルトラップ中の光分布は、延長物体がトラップ内で捕捉され、したがって操作され得るよう変化する。ベッセルトラップは,時々、光学ボトルと呼ばれる。
【0080】
ガウストラップは、ガウス関数として変化する特徴的光分布を有し、即ち光は最大の各側面で低下する。ある種の用途において2つのピークを有するガウス様分布を生じることもできる。
【0081】
ホログラフィック金蒸着
光トラップを用いて、種々の形状、サイズ及び粘稠度を有する粒子を操作し得る。種々のサイズの金属が、光トラッピングされてきた。唯一方向から入るビームを包含する光トラッピングシステムは、ビームの伝播方向での力の平衡を包含する。トラッピング力はトラップの焦点に向けて粒子を引き動かす傾向があり、放射圧は粒子をトラップに押し戻し、トラップから押し出す傾向がある。良好なトラップは、トラップの焦点からわずかだけ下流で粒子をトラップする。しかしながら意図して放射圧により粒子を抑制させることにより、粒子はレーザートラップによりストリーム中に導かれて、物質の表面に向けられ得る。これらの粒子及び表面は、粒子が所望のパターンで表面に蒸着され得るよう選択される。例えばナノサイズの金粒子は、あるパターンで蒸着され得る。アニール過程を利用して、パターンの特性、例えばその結合性を改質し得る。
【0082】
蒸着粒子の位置に多少の熱変動が存在するので、ナノ粒子はミクロンスケールの精度で蒸着される。しかしながらフィードバックシステムを利用して粒子を軽く押して、ナノメートルスケールでの精度を達成し得る。高速空間光モジュレーターを用いて、適切な速度を有するトラッピングレーザーを改質し得る。
【0083】
ホログラフィック光トラッピングはまた、このプロセスの大幅な平行化を可能にし、多数のパターンを同時的に書き込ませるが、これは集積回路の製造のための興味を引く一特徴である。光トラップを用いて実行可能な三次元位置決定は、多層回路及び構造体の構築を可能にする。
【0084】
流体中のピンセットからの熱作用は非常に強く、物質の濃度の強力な所在を作り出すために用いられ得る。これらの熱作用は、ホログラフィック光トラッピングを用いることにより非常に精確に制御されて、複数のピンセットを作り出し得る。したがって「熱ピンセット操作」を用いて、選別目的のためにナノチューブの流れを生じ得るし、或いは一度にナノチューブの大群を移動し得る。熱集合ナノチューブの蒸着も実行され得る。
【0085】
例示的画像
図3(a)は、ナノチューブを安定化するためにSDS界面活性剤の5%溶液を有する水中の例示的単一壁ナノチューブの分散を示す。チューブを画像化するために、暗視野顕微鏡を要する。
【0086】
図3(b)は、光対流トラップで集合されたこれらのナノチューブの一群を示す。
【0087】
図3(d)は、基板上にチューブを蒸着する場合にCCDカメラを飽和させる強い光のバーストを示す。
【0088】
図3(e)は、基板上に蒸着されたナノチューブを示す。
【0089】
図3(c)は、ホログラフィック光トラップを用いて、予定パターンで、(それらが蒸着される前に)トラップ化ナノチューブを移動させる能力を示す数個のフレームの時間平均を示す。
【0090】
図3(f)は、特定パターンでのナノチューブの蒸着を示す明視野像である。
【0091】
図3(g)〜3(i)は、ナノチューブの一束からのナノチューブロープの抽出を示す暗視野像である。
【0092】
図3(j)は、電荷I=10光学渦によるナノチューブの一束の回転を示す。
【0093】
図3(k)は、回転パターンを示すいくつかのフレームの時間平均である。
【0094】
図3(l)は、ガラス表面基板上に蒸着されたナノチューブのシート上のレーザーでのホログラフィックエッチングによる図1の光トラッピングシステムにより平行して生成された多数のパターンを示す。
【0095】
ホログラフィック光トラップがナノ体を操作し、並びにナノベースの物質を加工処理する設備は、非常に広い種類の用途を切り開く。ナノチューブの異なるキラリティとレーザー光との相互作用における差のため、確立されたホログラフィック光学的選別方法は、全ての重要なパラメーター、例えばキラリティに基づいてナノチューブを選別するために用いられ得る。ナノチューブを整列させる能力は、今は達成されていない物質加工処理の課題、例えば強度付加のために、又は伝導率の改良のために、物質中のナノチューブを整列させることに解決を提供する。
【0096】
延長ナノ構造体の操作
ナノ粒子及びその他の延長粒子を操作するための種々の技法を、以下に紹介する。添付の図面に関連した具体例を、序論の後に示す。
【0097】
金電極の融除
ホログラフィック光学ピンセットは、表面からコーティングを融除するために用いられ得る。例えば金は、パターンを生成するために除去され得る。さらにピンセットを用いて、存在するパターンから物質を除去し、別の方法でできるより微細な特徴を作り上げ得る。例えば電極は、電極が非常に小さな特徴を有して、別の方法では不可能である測定を可能にするよう蝕刻され得る。
【0098】
種々の物質の平行融除マイクロプロセッシング
微小流体チップは、特にラボオンチップ用途のために重要性を増しつつある。ホログラフィック光学ピンセットによるこのようなチップの駆動は、チップ機能性の精確な制御のために必要な弁、ポンプ、注射器及びその他の特徴の複雑な制御を可能にする。さらにプラスチックのレーザー融除が、微小流体チャネルの作成のために用いられ得る。透明プラスチックを用いて、ガラススライド上に薄い(〜400ミクロン)シートを生成する。プラスチックは、レーザーからの光を吸収し(この場合、ビームによる融解を用いて物質を取り除く)、或いはレーザーにより融除される(この場合、物質を蝕刻除去することによりチャネルが形成される)。ホログラフィック光学ピンセットシステムを用いて、基板を加工処理するための光の多数の個別に制御可能な三次元スポットを作成する。スポットは基板を横切って動かされて、物質を除去し、同時に多数のチャネルを形成する。ホログラフィック光学ピンセットを用いることの利点は多い。多数のチャネルが同時に書き込まれて、製造時間を低減する。ビームは操縦可能であるため、顕微鏡戴物台の移動は必要ない。ビームは15nm内に配置できるので、これは分解能を改良する。さらにまたホログラムは三次元であるので、複雑な三次元パターンが作成され得る。プラスチックのほかに、この技法は他の物質、例えばナノチューブ、塊状金元素、白金、チタン(tatanium)、DNA、熱吸収体、コロイド球、ポリマー、バイオポリマー、量子ドット、製剤及び生体物質のうちの少なくとも1つに適用される。
【0099】
ホログラフィックに生成した構成可能な金ワイヤ
ホログラフィック光トラッピングは、レーザービームによる金ナノ粒子の操作を可能にする。ベッセル・ビームを用いて、金粒子の線が作成されて、効果的に金製のワイヤを作成し得る。これらのワイヤは、下記のように動力学的に再構成され得る。多重ベッセルトラップを作成する能力は、相互連結物の複雑なネットワークが生成され得る、ということを意味する。
【0100】
ホログラフィック光学ピンセットは、三次元領域での時間依存性点様位置を限定し得る。限定される点は、これらの点に又は付近に、物体を選択的に引き付ける(又は保持する)か、或いははねのける(又は除外する)別個の容積の光強度である。したがってこの光は、空間における選択的位置のアレイを形成する。これらの点の時間依存性制御は、各々の個々の位置が、異なるサイズ、形状又は組成を有する1つ又は複数の物体を含有し得る選択的位置の移動アレイを可能にする。さらに個々の点又は点の収集物は点滅され、それによりアレイ位置を調子を合わせて出現、消失させ得る。
【0101】
本発明は、空間における時間依存性アレイの形成に対する延長であり、アレイ位置間に種々の型の連結を形成することを包含する。点様光強度領域というよりむしろ一次元領域を提供する光の形態(例えばベッセルビーム)を用いて、相互連結点のネットワーク構造が三次元領域で形成され得る。このネットワーク構造は時間依存性であってもよく、即ち特定点間の連結は種々の時間に点滅され、或いは移動され得る。このような動きは、上記のようなアレイ又はいくつかのその他の方法で限定される点により限定される点の収集物の動きを追跡し得る。例えば物体は、いくつかのその他のメカニズムを用いて空間に固定され得る。さらに新規のアレイが、上述した点のアレイ上に重ね合わされて形成され得るか、或いはこのようなアレイと完全に独立して形成される。この新規のアレイは、形成される光の二次元構造の端点によって限定される。
【0102】
このようなネットワーク構造の一例は、その平均サイズがネットワークを形成する光の波長での粒子の皮膚深度のオーダーであるか又はそれより小さい伝導性粒子の溶液中で算出される光強度最大値の一次元ネットワークの存在により作成される、伝導性ネットワーク(又は「ワイヤ」)に形成する、伝導性ナノ粒子(例えば金粒子)の集中である。
【0103】
別の例として、粒子の混合物を考慮することは有用である。それらの粒子のサイズより大きいサイズを有するものもあれば、これらの他の粒子の皮膚深度より小さいサイズを有するものもある伝導性粒子のこのような溶液中では、前の例で記述された光のネットワークは第1の型の粒子の線状連結を、そのような(sae)線状ネットワークに伴って、第2の型の粒子を除外したワイヤを作り上げる。より大きな及びより小さな粒子が異なる伝導率を有する場合、2つの型の粒子の牽引及び反発の程度の変更は、線状構造の端点(アレイ「点」)間の種々の抵抗を有するネットワークを生じる。このようにして、可変性抵抗がネットワーク構造全体を通して得られ得る。
【0104】
この考え方についての本発明の拡大部分は、光の表面を作成することにより閉鎖一次元構造の収集物間の連結を形成することである。この概念の適用は、電気浸透性分離を光蠕動性(peristoltic)又はその他の光学的選別メカニズムと組合せるための仮想コンデンサーの作成、或いは負の誘電体のような光学的誘導性層理を用いた複雑な新規の光学素子の作成を包含する。
【0105】
固定拡散又は運動性物質の迅速破壊、融除又はキリング
製造及び加工処理に際して、重要な工程はしばしば、化合物、物質、廃棄物又は生物学的素子の除去、破壊、融除又はキリングである。光は、上記のくず除去、破壊、融除又はキリングのためのエネルギー源として用いられ得る。広範に変化し、制御される力及び空間分布を伴う光のビームは、スキャニングにより、並びに集束メカニズムにより物質に適用され得る。これらのビームは、精確に除去、切断、形成又はキリングし得る。以下で考察するように、その作用は試料を形作ると言及される。一手段は、ガルボ駆動鏡を用いて、一領域から形成、除去、破壊又はキリングが起こるのが所望される別の領域にパルス化ビームを移動する。
【0106】
例示的一手段は、代替的反射性(又は吸収性)及び透過性物質の制御アレイが光により影響を及ぼされる試料の上に置かれる。このようなアレイの例は、MEMS鏡アレイ、及び、光の一分極を伝送する相アレイである。アレイの全ての部分が反射(又は吸収)様式である場合、系は止まっている。アレイの素子の選択的作動は、時間及び空間的依存方式で、形成作用を作動する。一試料の両連続形成が実行され得る。試料空間を通して移動する試料物質の場合、1つ又は複数の形成パターンが、アレイを通り過ぎる試料に押しつけられる。測定システム及び形成ツール間のフィードバックは、試料依存性形成パターンを試料に押しつけるために用い得る。このシステムは、パルス化又は連続光源を用いて実行され得る。光の1つ又は複数のビームを用いて制御アレイを照明し、それにより形成力を提供し得る。或いは1つ又は複数の回析光学素子を用いて、制御アレイの各素子に関してビームを作り出し得る。単数又は複数の回析光学素子が動力学的である場合、例えばSLMの場合、回析光学素子は、一デバイス中で多重ビーム作成機能及び制御アレイ機能の両方を遂行し得る。
【0107】
別の実施形態は、音響光学セル(AOC)を通して向けられる単一光ビームを用いる。このような配列を用いて、試料中の異なる領域に光を向け得る。パルス化光源を用いて、光は、形成を必要とする1つ又は複数の試料上の部位に向けられ得る。このようにして、単一レーザーを用いて、一試料領域中の多数の部位を形成し得る。形成が所望されない場合の光パルス中、AOCはその光パルスを、試料領域の外側のビームブロックに向け得る。
【0108】
この手段は、連続ビームを用いても実行され得る。AOCの上流の制御ビーム断続装置は、AOC性能及び形成されている試料と一致した方法で、連続形成を、又は光ビームの点滅を遂行する選択肢をユーザーに与える。測定システムと形成ツール間のフィードバックを用いて、同様に試料依存性形成パターンを試料に押しつける。
【0109】
ホログラフィック光学ピンセットを用いた熱ベースのトラッピング
概して、強力吸収体上でレーザーピンセットにより生成される熱作用は、非吸収性検体であっても、その上でのトラッピング作用よりはるかに強力である。ホログラフィック光学ピンセットは、物体操作のためのこれらの熱作用の利用を可能にする。吸収性粒子は、先ず、ホログラフィックに生成された光学ボトルでトラップされ得る。次にこれらのボトルは物体近くに移動される。その後、ポイントトラップが次に吸収性粒子上に形成される。次に大きな流れが生じ、これを用いて隣接粒子の動きを導き得る。さらにまた熱作用を用いて、所望の媒体及び粒子流動を作り上げるために、特殊化トラップ粒子、蒸着粒子及び特殊化領域を加熱し得る。
【0110】
別の実施形態では、パターンの中心に向かって粒子を追いやる傾向がある流れを生じる、レーザーの一パターンで加熱され得る吸収性物質の層を、その上に蒸着された小室を用いることにより、それらの粒子がパターンにより確定された一定半径内に存在する場合に、粒子は二次元でトラップされ、操作される。
【0111】
さらに別の実施形態は、2フォトンプロセスで吸収する流体を包含する。これは、トラップ位置での優先的加熱を可能にする。適切な三次元パターンで加熱することにより、パターンにより確定される一定半径内のパターンで、粒子は加熱パターンの中心に引き寄せられる。
【0112】
微小流体流の制御のためのホログラフィック光学ピンセット
ホログラフィック光トラッピングは、広範囲の用途を可能にした非常に多能な技法である。しかしながらレーザーを用いたトラッピングは、レーザートラップにより生成される力が本来、比較的弱い、という事実を欠点として有する。しかしながらレーザートラップの熱作用により生成される力は、非常に強力であり得る。これらの熱作用は、顕微鏡的吸収体、例えばグラファイト粒子を、当該システムに導入することにより実現され得る。これらの粒子を微小流体チャネルに埋め込むことにより、大きな流体流が生成されて、強力なポンプのエネルギー源を提供し得る。さらにホログラフィック光トラップの多能性は、これらのポンプが多数であることを可能にし、それらの三次元位置決定を可能にする。
【0113】
該システムの別の実施形態は、表面上に吸収性パターンを蒸着することを包含するが、これは、パターンに従ってどこででも表面の指示された加熱を可能にする。ガラス表面上にレーザー放射を吸収する物質の薄いコーティングを蒸着することにより、任意の位置で加熱して、非常に精確に流れを設計させる表面が生成される。ホログラフィック光トラッピングは、複数のトラップを作成させ、その各々は可変性力を有し得る。これは、随意の経路に粒子を動かす流れを形成させる。さらに、トラップは動力学的に置かれるので、流れは調子を合わせて容易に再構成されて、種々の形態の化学的加工処理及び流体計算を可能にする。
【0114】
適切な流動パターンの算定では、静電場との類似性が助けとなる。それらの最も簡単な形態の流れは二次元性であり、別個の粒子、パターン又は連続表面のいずれかの加熱に起因する。これらは、流動が基本的に対流性であり、したがって三次元性であるので、偽二次元性である。しかしながら加熱が生じ、それにより二次元システムを回収する流れの層に焦点を合わせるためには有用である。これは、しばしば運搬されている粒子又はパケットがそれらの周囲流体と密度整合性でないので、多くの場合、現実的である。
【0115】
三次元流でさえ、レーザー放射を吸収する流体を用いることにより形成され得る。三次元トラップを作成する能力は、三次元小室中のあらゆる場所の加熱を可能にする。2フォトンプロセスで吸収するだけの流体を用いることにより、加熱は、トラップの正面及び後ろの円錐形の光というよりむしろ、トラップの焦点に限局され得る。ベッセルビームは、カラム中で加熱するために有益に用いられ得る。光の他の様式が同様に利用され得る。熱作用は、単独で、又は光トラッピングと組合せて、粒子を操作するために用いられ得る。
【0116】
ホログラフィック光トラッピングは、微小流体流のために用いられるホログラフィック光学ピンセットと組合せられ得る。標準ホログラフィック光トラッピング静的及び動的選別技法は全て、熱技法を用いて生成される流れ中の粒子に作用を及ぼすために用いられ得る。
【0117】
微小流体デバイスの光学的制御
微小流体チップは、流体で充填され得る、周囲物質中に作成される開放チャネルを含む。しばしば、チップは平坦であり、この場合、チャネルは全て平面に存在する。このようなデバイスは、例えば物質の平坦表面に形成し、その面に第2平坦物質を結合することにより製造され得る。より複雑なデバイスは、チャネル中で三次元(3D)であり得て、全て単一平面に存在するわけではない。このようなデバイスは、例えば、その各々がそれらの中に限定されるチャネルを有するPDMSの多重薄層のスタックを結合することにより、製造され得る。
【0118】
微小流体デバイスを構築するために多数の技法が確立されてきたが、微小流体チップ内の流体又は溶液の制御は、依然として難しい。3つの一般的流動制御法が存在する:(1)1つ又は複数のチャネル入口及び出口の圧が、例えば注射器ポンプ又は空気膜で制御される圧力駆動流。たいていの場合、すべて又はほとんどすべての入口及び出口の圧は、精確に制御されることが好ましい。(2)2又はそれ以上のチャネル入口及び出口での電圧が制御される熱電気浸透流(EOF)。流体及びチャネル壁特性の適切な制御により、壁に沿ったイオン濃度がチャネル表面に沿って流動し、それによりチャネル中の流体を引っ張り得る。(3)チャネル壁に対して柔軟性物質を用いた空気制御下での固有の蠕動性バルビング/ポンピングは、流動性チャネル近くの弁に拡大され得る空気制御下での隣接空気チャネルを作成させる。多数の弁が互いに隣接して配置されて、蠕動性ポンプを形成し得る。
【0119】
これらの技法の各々において、該システムは好ましくは完全に又はほぼ完全に閉鎖される。構成部分は好ましくは、圧力が変更される場合、非常に長い緩和時間をもたらす構成部分の延伸を回避するよう、かなり剛性であるべきである。制御ラインの数は、入口及び出口の数(nutriber)と線状に比例する。したがってそれは、2〜3だけより多い入口及び出口としてはかさ高く、且つ費用が掛かる。
【0120】
EOF中の流れは、精確に制御するのが難しい。表面は、好ましくは極再現可能な仕方で調製される。流体は、好ましくは適切な且つ制御された特性を有する。単一チップの作用は、劣化する傾向がある。同様の方法で製造される多数のデバイスはしばしば異なって作用する。遅い流れ(<10um/s又は100um/s)に関しては、異なる入口及び出口における流体カラム中のほんの小さな変動により、光学ピンセットが圧力駆動流に対して粒子を保持し得るものがEOF流を支配し得る。したがって、EOFは迅速流のために最も良く機能し、また、システム化学上の精確な制御が重要である。
【0121】
多重性の可能性により、空気制御ラインは、圧力駆動流及びEOFより良好に高くなる。しかしながら多数のかさ厚く且つ費用のかかる圧力マニホールドは,微小流体チップを制御するために重要であり得る。制御ラインは、好ましくは初期チップ設計に組み込まれ、非常に複雑なチップを生じ得る。いくつかの場合、制御ラインは、可能であるか又はチップそれ自体の費用に付加するチップ設計を限定し得る。
【0122】
本発明に従って、光に直接的に応答する適切に構築された微小流体デバイスが作成され得る。一操作は、軟質物質チップ(例えばPDMSから作られるもの)中に光吸収染料のポケットを製造することである。適切な波長及び強度を有する光が染料受器上で照らされる場合、受器は膨張し、チャネルを押して、部分的に又は完全にチャネルを閉鎖する。光は、受器上に合焦されるか、或いは別の形状の、平行ビームであり得る。第2の表徴は、連続軟質チップ物質(例えばPDMS)中に光吸収性染料を組入れることである。光がチップ壁の領域上で照らされる場合、光吸収性染料は光を吸収し、加熱し、膨張する。十分な光がチャネルに隣接するチップ壁の領域上で照らされる場合、チャネルは部分的に又は完全に閉鎖されて、弁を作り出す。この表徴において、特別の努力又は考察が設計時に成され得なかったとしても、弁はチャネルの任意の部分で生成され得る。ほとんどの表徴において、多数のこのような弁は、1つ又は複数の蠕動性ポンプを生成するよう結合され得る。
【0123】
複雑な3D微小流体チップに対して、光誘導性バルビングは、良好に高まる。壁物質は実質的に光に透過性であり得るので、他のチャネルにより取り囲まれるチャネルを弁で調節し得る。これは、加熱が所望される位置の一点に光を合焦することにより実行される。したがってバルビング又はポンピングに関して3D微小流体デバイスを可能にすることは、一般にバルビング又はポンピングに関して2D微小流体デバイスを可能にすること以上の努力ではあり得ない。
【0124】
流れを制御するために、この設計は、空気制御チップと同一の利益の多くを共有する。流体カラム高を制御し、各入口及び出口上の圧力を制御し、或いは表面及び流体化学を精確に制御する必要がない。その代わり、蠕動的ポンピングは局所的に制御され、流量は、幾何学及び光がパルスされる速度により示される。したがって設計は、エージング、表面化学、流体特性及び外部環境因子に対して強健であるべきである。
【0125】
流体チップ中に光トラッピングをすでに用いているシステムに関して、この設計は、光学ピンセットが、物体を操作するためだけでなく、微小流体バルブを制御するためにも用いられ得る、という付加的利益を有する。
【0126】
バブル又は細胞注射のホログラフィック光学的制御
近年の報告は、超音波的作成バブルが、衝撃波からの圧力パルスでヒットした場合、長いプロボシスを生じ、これは細胞膜を貫通するために用いられ得る、ということを実証した。ホログラフィック光トラップを用いて生成され得る相プロフィールの多能性のため、これらのトラップを用いてバブルを操作し得る。これは次に、これらの技法の組合せが細胞膜を貫通するための完全制御可能ツールを可能にする、ということを意味する。衝撃波発生の多重源の使用は、プロボシスの配向を可能にする。実際、ホログラフィ的発生音波は、この配向の精密制御を可能にする。
【0127】
ゼプト注射器
ホログラフィックピンセットは、微小流体構成部分を駆動するに際しての重要な目的にも役立ち得る。顕微鏡的量の試薬を用いた洗練された試験を可能にするラボオンチップ用途は、ポンプ及び弁のような構成部分を有する微小流体小室を要する。流体の精確且つ均一注射を要する用途に関しては、球体がトラップされ、球体の直径と同様の直径を有するカラムを通して押し出される。カラム中の任意の流体がカラムから押し出され、マイクロシリンジを形成する。10nmピンセット操作分解能により、また、10の位のマノメーターのサイズに過ぎない物体をピンセット操作する能力により、このマイクロシリンジは、1/10,000フェムトリットル又は10の位のゼプトリットルで測定される精度で流体を押し出し得る。これは、極小量に過ぎない試薬が利用できる、又はこのような試薬の費用が法外である実験を容易にする。中心小室を取り囲む一連のこのような注射器は、精確な時限列でのホログラフィックピンセットにより制御され、これが、種々の化学物質又は生物学的分子間の複雑な相互作用の、初めての試験を可能にする。重要であり得る任意の弁は、ピンセット操作球体を用いてチャネルを遮断又は非遮断することにより、容易に実現される。このラボオンチップは平面的でなくともよい。三次元でピンセット操作する能力は、複雑な幾何学、例えば同時的に駆動され得る小室のスタック、或いは球状マイクロインジェクション小室を可能にする。
【0128】
介在流体により媒介される球体及び周囲壁間の静電力は、非常に大きいことがある。これらの力は、光学ピンセットが行使し得る約100ピコニュートンより容易に大きくなり得る。これは、このような接着が起きる可能性を回避することが重要である、ということを意味する。これを実行する一方法は、チューブ中の溶液のイオン強度を制御することによる。それは非常に低いイオン強度を有する選り抜きの少数への注射のために利用可能な試薬を低減するため、一般的解決として、これは難しい。より良好な解決法は、それらの表面に繋ぎとめられたポリマーを有する微粒子(inicrosphere)を用いることである。これらのポリマーは、立体反発力により表面への球体の接着を防止する。ポリマーは、非常に短く、典型的にはマノメーターの長さであり、注射器の流体ポンピング機能を妨害すべきでない。
【0129】
しばしば生物学的細胞又は小物体は、特定の用途のために変更される必要がある。これは、物理的変化、例えば細胞膜の切断又はポリマーの変形、或いは化学的変化、例えば細胞中への特定のタンパク質又はDNA配列の導入を必要とし得る。これを成し遂げるための方法は、標的物体を貫通し、変形し、又は別の方法で影響を及ぼす発射体として本質的に役立つ小物体の使用を包含する。発射体、例えばビーズは、短いレーザーパルスに対する応答のために選択される。10ナノメートル〜10ミクロンの範囲内の発射体が、この目的のために用いられ得る。例えばバングス・ラボラトリー(Bangs Laboratories, Inc.)は、この目的のために用いられ得る0.97ミクロン直径シリカビーズを製造する。発射体は、それが選定レーザーパルスでヒットされる場合、大運動量を付与される。試料(例えば顕微鏡スライド)中の発射体の位置決定は、光学ピンセット装置を用いて実施され得る。ホログラフィック光トラッピングデバイス、例えばArryx BioRyx(登録商標)200システムの使用は、付加的機能性を付与する。発射体が所望位置で標的近くに置かれると、レーザーパルスが合焦され、標的に発射される。このパルスは、レーザーカッター、例えばMicroPoint2203(商標)(Photonic Ins(登録商標)truments, Inc.)により発生され得る。生成した熱及びもたらされる運動量は、標的物体に様々な影響を及ぼし得る。発射体は細胞を貫通するために用いられ、さらに特定の化学物質を送達するために、又は細胞内の細胞小器官及び構造体に物理的に作用するために細胞内で用いられ得る。これは、遺伝子銃と同様の方法で、しかし個々の細胞を選択的に標的化する能力を用いて、発射体の特定の型(例えばタングステン製のもの)に関する要件を伴わずに、用いられ得る。或いは発射体は、縁近くに配置される場合、標的物体の縁を変形するか又は切断し得る。発射体はまた、標的物体中に埋め込まれるようになるか又はそれを完全に通り抜けることもある。ホログラフィック光学ピンセットを用いて、任意数の発射体が、一群の細胞上に、能動的に又は受動的に配置され、連続的に発射され得るが、レーザーパルスの発射速度及びパルス焦点が移動され得る速度により制限され得る。レーザーパルスエネルギー、持続期間、波長並びに発射体のサイズ及び構成の組合せが、発射体に付与される運動量を確定する。これらのパラメーターは、標的中への発射体の貫通を制御するために調整され得る。例えば細胞壁、細胞質又は細胞核中への貫通制御が、全て達成され得る。
【0130】
上記の導入的説明を以下でさらに詳述する。例えば本発明は、表面上のパターンにこのような物質を蒸着するために、非物質を操作するよう適合される。
【0131】
図4A及び4Bは、延長ナノ構造体の操作のための技法を示す。種々のナノ物質、例えばナノ粒子及びナノ構造体は典型的には液体媒質の容積中に懸濁される、と理解されるべきである。図4Aにおいて、ナノチューブ100は、例示的延長ナノ構造体として示された媒質101中に懸濁される。ナノチューブ100は、末端部分102を有する。末端102は、ナノチューブ100と相溶性である中間種によりコロイド球104に結合される。中間種104は、工業用ポリマー又はバイオポリマーであり得る。コロイド球104は、中間種と相溶性であるよう、適切に機能化され得る。
【0132】
図4A及び図4Bに示すように、光トラップ108は、個々のコロイド球104をピンセット操作し、且つ個別に種々の方向に球体を移動するための光学ピンセットとして用いられ得る。例えば図4Bでは、球体は、チューブ100から延伸するよう反対方向に動かされ得る。或いはチューブ100は、実線で示す位置と点線で示す位置との間で互いに関して球体を回転することにより、空間で配向され得る。
【0133】
図5A及び図5Bは、前記の図と同様の配列を示すが、但し、この配列では、ナノ粒子110はナノチューブとともに液体媒質101中に懸濁される。チューブ100の末端102が標的化され、且つナノ粒子111に沿って光トラップ112中に捕捉され、したがってナノ粒子110が末端102の周囲で合一し、又は集合して、ナノハンドル110’を形成し、これがチューブの操作を促す。その他のナノ構造体は図4及び5の実施例に従って操作され得る、と理解されるべきである。さらにナノ物質の他の形態の操作、選別、蒸着及び除去は、本明細書中で後述されるように達成され得る。
【0134】
図6Aは、異なるナノ構造体120A及び120Bが共通培地中に置かれる配列を示す。構造体は、種々の長さのナノチューブ、又は検知可能な特性を有するその他の構造体であり得る。図6Aでは、当該特性はナノ構造体120A及び120Bの長さである。長さlaを有するナノ構造体120Aは、一対の間隔を置いた光トラップ122Aにより捕捉される。間隔は、ナノ粒子120Aの長さに対応する。同様に長さLBを有するナノ粒子又は構造体120Bは、一対の適切な間隔を置いた光トラップ122Bにより捕捉される。トラップの長さ又は形状は、異なる長さのナノ構造体間を識別するのを可能にし、したがってトラップは、ナノ構造体を捕捉し、別個の位置にナノ構造体を移動することにより分離され得る。
【0135】
図6Bは、多構成部分ナノ構造体を示す。例示的構造体は、例えばDNA分子130であり、これは、光トラップ134A及び134Bによりそれぞれの鎖の各々の対応する末端132A及び132Bを固定し、図に示すようにトラップを移動することにより、分離鎖130A及び130Bに分離され得る。トラップの引張り力は鎖を分離し、且つ塩基対結合133を無力にする。
【0136】
上記の教示を用いて、コロイド球又はナノハンドルを同様に鎖の末端に結合することにより、分離工程を増強し得る、と理解されるべきである。
【0137】
図7Aは、ナノ構造体、例えばナノチューブ140が光トラップ144に捕捉されたその末端142を有する技法を示す。図7Bでは、チューブ140の一捕捉末端は、末端142が相溶性表面146に固定されるように操作され得る。このようにして、1つ又は複数のナノチューブが、表面と直角を成す軸アラインメントと平行に表面上に固定されるか又は蒸着され、その自由末端は、図示すように表面146から分離される。
【0138】
或いは、図7Cにおいて、ナノチューブ140の末端142A−142Bはともに、対応する光トラップ144A−144B中に捕捉され、且つ末端は、基板146上に各チューブが結合されて蒸着されるよう、操作され得る。この例では、チューブは、表面146の平面中の軸アラインメントと平行に対称パターンで整列される。
【0139】
図8Aに示すように、金元素塊を含むナノ物質は、一列に蒸着されて、非常に薄い金導体を形成する。金ナノ粒子150は光トラップ152中にトラップされ、且つ蒸着のために基板154に選定パターン156で運搬される(図8B)。或いは、図8Cに示すように、パターン158は、修正されるか又は改良され得る。上記のように、又は他の方法、例えばフォトリソグラフィーにより生成され得るパターン158は、人工産物158Aを有する。人工産物はパターンに結合されてもよく、又はパターンに近いどこかに配置されてもよい。人工産物は、表面154から人工産物を融除するか又は除去するための光トラッピング技法を用いることにより、除去され得る。
【0140】
図8Dにおいて、電極160は基板162上に蒸着される。電極は、長方形の形態である。図8Eでは、電極は線164に沿って蝕刻されるか又は融除されて、電極160を領域160A及び160Bに電気的に分離する。
【0141】
別の例示では、ナノ粒子、マイクロ粒子、ピコ粒子又はその他の物体が他の物体に挿入されるか又は結合され得る。例えば図9Aでは、細胞170は細胞壁又は膜172を有する。ナノ粒子、例えば遺伝子174は、光トラップ176により壁172に隣接して配置される。その後、光の強力なビーム178、例えばレーザービームを用いて、細胞壁172に隣接する遺伝子174(又はDNA若しくはRNAのその他のポリマー若しくは粒子)を標的化し得る。レーザービームが粒子に向けられると、ビーム圧が細胞壁172中に遺伝子174を埋め込み(図9B)、又はビーム圧が十分に増大される場合は、ビームは細胞壁172に開口180を形成して、遺伝子176を細胞の内部182に運搬する(図9C)。或いはトラップ176を用いて、粒子174を適所に移動し得る。
【0142】
図9D〜図9Fは、細胞壁172を貫通するか又は切断するための本発明の実施形態を示す。該配置において、1つ又は複数のナノバブル180が流体181の容積中に生成される。バブル180は、超音波源又はヒーターのような供給源184により生成され得る。ナノバブル186は、光学的にトラップされ、且つトラップ187により細胞膜172に隣接した適所に保持される。流体媒質181中に提供される音響源188は、活性化されると、媒質中に衝撃前線189を生じる(図9E)。音響前線189は、トラップ化ナノバブルを変形し、且つバブル壁中にプロボシス190を生じ、これが細胞膜172を貫通する。プロボシスの貫通深度は、細胞壁を切断するために(図9F)、又は壁中にナノ粒子を埋め込むための開口を単に提供するために制御され得る。例えば遺伝子セグメント又はその他のナノ構造体は、細胞の外側で光トラッピングされて、その後、図に示すように細胞壁中の開口192中に、及び開口192を通して配置され得る。
【0143】
図10A〜図10Dは、チャネル又は他のナノ体が物体193の表面上及び表面中に形成され得る技法を示す。レーザー光の強力なビーム194が、物体193の表面195に向けられる。ビーム193は、ゆるく結合した粒子を取り除き、又はより高いエネルギーを用いて、表面192を蝕刻して、その中にナノチャネル196を形成する(図10A〜図10B)。その後、カバープレート198が、図10Cに示すように物体の上面192に固定されて、閉鎖チャネル200を形成し得る。チャネルは種々の形態をとり得て、且つ相互連結してマニホールド又はその他のパターン化チャネル203を形成して、微小流体デバイスを形成する(図10D)。
【0144】
図11A〜図11Bは、下流位置にナノ量の試薬を送達するためのナノデバイス210を示す。デバイス210は、その中に形成されたチャネル214を有するブロック物質212を含む。ナノチャネル214内に適合するようなサイズのナノスフェア216は、トラップ216中に捕捉され、ある量の試薬218とともにチャネル214中に置かれる(図11B)。ナノスフェア216は、チャネル216内に光トラッピングされて、且つその中で矢印方向に前後に動かされる。長さL及び直径Dのナノチャネル214が、容積を限定する。ナノチャネル214中で長さlに亘ってスフェアを動かすことにより、測定量の試薬218が置き換えられる。このようなデバイスは、極小量の試薬(例えばゼプトリットル)を送達し得る。
【0145】
図12A〜図12Cは、本発明の別の実施形態を示すが、この場合、ナノ粒子130は、流体媒質136を含有する空間134内の表面132上に光トラッピングすることにより蒸着され得る。ナノ粒子は、パターン化され得る。例示的実施形態では、ナノ粒子は4×4パターン138で配置される。粒子130が熱吸収体である(即ち、粒子は媒質に対して優先的にエネルギーを吸収する)場合には、レーザービーム又はトラップ140を用いて当該パターンで粒子を選択的に照明することにより、種々の流動パターンが媒質中で設定され得る。
【0146】
図12Bでは、粒子130は光トラップ140により照明される。粒子はエネルギーを吸収して隣接媒質136を加熱し、そこに対流142を引き起こす。
【0147】
図示すように、媒質136はその中に分散された他のナノ粒子142を有し得る。これらはまた、光により、若しくは流体流により、又はその両方により、トラップ140に引き付けられ得る。トラップへのエネルギー供給を変更することにより、所望の対流及び粒子流が確立され得る。容積内の流体の循環を保持しながら、懸濁粒子を別のトラップ146でトラップすることもできる(図12C)。
【0148】
図12Cは、三次元配置での流れ制御を示す。トラップ160のパターンは、媒質164の容積162中に確立される。粒子160は、トラップ166により選定位置に置かれ得る。該配置では、垂直方向に配置された粒子160Vは、媒質中に垂直流(矢印V)を生じる。水平方向に配置された粒子166Hは、媒質中に水平流(矢印H)を生じる。このような電気的トラッピングパターンを用いて、対応する垂直及び水平加熱並びに流動パターンFV及びFHを三次元で確立し、変更し得る。
【0149】
例示的一実施形態図12Dでは、粒子160は、その内部が相対的に冷たいベッセルトラップ172(光学ボトル)中にトラップされ得る。ポイントトラップ174がベッセルトラップ上に重ね合わされる場合、その内部は照明されるようになり、且つ粒子170はエネルギーを吸収して、且つベッセルトラップ又はボトルと独立して流体流を生じ得る。
【0150】
図12Eを参照すると、他の流動パターンが多重トラップの整列を用いて確立されるが、この場合、粒子170はベッセルトラップ174中に置かれ、且つトラップの交互に並んだカラムはポイントトラップ174により照明されて、上方流を作り出す。交互カラム中の粒子は、依然として相対的に冷たい。その結果、下方対流低部Fが大きく且つ変更されたパターンで生成され得る。
【0151】
図13Aは、チャネル184A〜184Cにより相互連結された小室182A〜182Dを有するラボオンチップ180を示す。種々の小室182A〜182Dの間で逐次的に小室内で流体及び粒子が移動するよう、流動パターンが確立され得る。光トラップ186を用いて粒子をトラップし、且つ小室間でさまざまに粒子を移動し得る。或いは例えば図12Bに記述したような熱流動が、1つ又は複数の種々の小室内に確立されて、小室間に流動パターンを生じ得る。
【0152】
図13Cは、その中に小室192及び194を有するブロック190を示す。小室182及び184は、チャネル196により連結される。チャネルを介して小室間に流れが生じる。ブロック180を形成する物質は、弾性ポリマー物質、例えばその中に分散された吸収性ナノ粒子198を有するPDMSであり得る。チャネル196に隣接した領域200中のナノ粒子が光トラップ202により標的化される場合、粒子はエネルギーを吸収して、且つチャネルの周辺の物質を膨張させ、それによりチャネルを閉鎖させる(図13C)。トラップがオフ状態である場合、物質は冷却し、且つチャネル196が開く。
【0153】
図13Dは、本体206中に形成されたチャネル204が多数の供給路208A〜208Dを有する配置を示す。各供給路及びチャネルは、トラップ209により標的化され、それによりトラップが選択的に適用され得る。
【0154】
図13Eは、チャネル210が本体211中に形成される配置を示す。トラップ212A〜212Cは、位置214A〜214Cで選択的に適用される。トラップが順に(例えば212A・・・212B・・・212C・・・212A・・・)活性化される場合、チャネル200壁は位置214A・・・214B・・・214C・・・214A・・・で対応する順序で閉鎖する。同様に、各トラップがオフ状態になると、チャネル壁の対応する部分は再開する。したがって、チャネルに沿って蠕動性行動により流れが生じる。
【0155】
図13A〜図13Eでは、チャネルの領域でレーザーをパルス放射して、チャネル中にポンピング作用を生じることもできる。例えば1つ又は複数のトラップ位置がチャネルに沿って確定された場合、レーザートラップを周期的に点滅して、チャネル内に圧力の揺らぎを引き起こし、これが上流又は下流脈動と組合せられると、蠕動性ポンピングが達成され得る。
【0156】
図14Aは本発明の別の実施形態を示すが、この場合、流体媒質232の容積230は、その中に懸濁されたある濃度のナノ粒子234を含有する。表面236及び236’は、対応する接点A、B、C及びA’、B’、C’により形成される。光トラップ、例えばベッセルビーム238が、接点A及びC’間に確立される。その結果、ナノ粒子234が集まり、且つ経路240に沿って集塊して、図示すように接点A及びC’を相互接触する。
【0157】
図14Bでは、ベッセルビーム244は、伝導性経路248を生成する。経路248は、接点B及びA’を連結する。ベッセルビームは選択的に活性化され、且つ脱活性化されて、それにより種々のその他の伝導性経路が該表面間に確立され得る。
【0158】
図14Cは、流体媒質250が2つの型のナノ粒子252及び254を含有する本発明の一実施形態を示す。図示した配置において、粒子232は、ナノ粒子254の伝導率とは異なる選定伝導率を有する。ベッセルビーム256が適合されて、伝導性粒子252を引き付けて、接点A及びA’間に伝導性経路260を形成する。同様に、接点B及びB’間に経路262を確立するべく、伝導率サイズ、キラリティ又はその他の特徴に基づいて、ベッセルビーム261が適合されて、ナノ粒子254を引き付ける。経路260及び262の伝導率は、ナノ粒子のそれぞれの伝導率にしたがって異なり得る。
【0159】
図14Dでは、伝導性経路264及び264’が、それぞれ接点A−B及びA’−B’間に確立され得る。その結果、伝導性経路260、264は一緒になって、媒質を通過する、且つそれ自体を、及び組合せ平行抵抗として表徴する(manifest)表面間に、伝導性経路を確立する。
【0160】
図14Eでは、ベッセルビーム268及び270は、伝導性経路272及び274を生成するよう改造され得る。伝導性経路272は低抵抗ナノ粒子から形成され、且つ伝導性経路274は低伝導性ナノ粒子から形成されて、それにより一連の抵抗を形成する。それぞれの伝導性経路272及び274のそれぞれの長さLA及びLBは、表面間に可変性抵抗を確立するよう変更され得る。
【0161】
図14Fは、複数のナノ導体282A〜282Gを含む切換可能な式ワイヤ280を示す。導体は、電流を支持するのに十分に近位でベッセルビーム264中にトラップされる。
【0162】
図14Gでは、ベッセルビームはオフ状態であり、且つ1つ又は複数のナノ導体、例えば282Dが拡散し、それにより回路を開かせる。この実施例における電流は、開路であるが、電流はゼロである。ビームのスイッチが元に戻されると、導体282Dは接近して引っ張られ、それにより電流が流される。
【0163】
或いはベッセルビーム284は、残され、且つナノ導体282Dが、図示すようにビーム内の最大位置間のポイントトラップ288により切換され得て(この場合、電流はオンである)、且つビームの外側の点線で示した位置では、電流はゼロである。
【0164】
図15は、方法が例示される本発明の例示的実施形態を示す。本発明によれば、ナノ粒子は、本明細書中に上記したホログラフィック技法を用いてトラップされ、且つ操作される。しかしながら本発明の実行は、単に記載された設備を組み立てることによって達成されるわけではない。実際的及び効率的方法でナノ粒子を首尾よくトラップするためには、動的光学素子(DOE)、例えば空間光モジュラー(SLM)又はデジタル光プロセッサー(DLP)を用いて、ナノ粒子の特質に関連する特質を有するホログラムを生成する必要がある。言い換えれば、所望の機能性を最良に達成するようなホログラムを見つけ出す必要がある。
【0165】
本発明による方法は、ナノ粒子の所望の操作の実際的履行を可能にする。例示的実施形態では、該方法は、動的光学素子(DOE)を用いてレーザービームを変調することにより形成される光トラップを用いて1つ又は複数のナノ特質を有するナノ物質粒子を捕捉し、且つ操作することにより実行される。ナノ物質の少なくとも1つの特質が選択される。このような特質は、サイズ、伝導率、キラリティ、屈折率等であり得る。ナノ物質の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームが生成される。ナノ物質の少なくとも1つの選定特質に対応するDOEに関する算定値が選択される。ビームはDOEにより変調されて、少なくとも1つの選定特質に対応する特性を有するホログラフィック光トラップを生成する。例示的実施形態では、トラップは約1/4選定波長のスポットサイズに合焦され、且つビーム焦点は、その中に粒子をトラッピングするために粒子の近くに配置される。
【0166】
本方法は、最も有用で、安定した且つ非常に機能的なトラップを見出すためのツールとしてDOEを用いることにより、実際的方法で実行される。この目的のために、ホログラムが選択される。その時、トラップはホログラムから生成される。その結果生じたトラップ機能性は、ヒト観察者により、又は自動観察機等により観察され、且つ結果によって、さらなるホログラムが選択される。十分に機能的で、安定し且つ有用なトラップが生成されると観察者が満足するまで、該プロセスは継続する。
【0167】
本方法は、このような技法が、機能的且つ安定なトラップを最適に見出すためのツールとしてDOEを使用しないという点で、従来技術を改良する。実際、実用的ホログラムに関する計算の考え得る組合せは、実際的に無限の組合せにより膨大な数になる。したがって十分に強力なプロセッサーと結合された高速DOEが用いられない限り、ナノ粒子の光トラッピングを実際的に達成することができるとは思われない。しかしながら本発明では、DOE及びコンピュータードライブを用いて、ナノ粒子の特質に基づいたホログラム計算のための特質を見つけ出す。従来技術システムは、ホログラム計算を粒子特質に適応させることなく、単に既知の配置を用いることによりトライ・アンド・エラーによっている。したがって本発明の方法を用いて節約される時間量は、実際の時間枠でのナノ粒子の操作のための多数の技法の開発を可能にした。
【0168】
生成物
本発明は、本明細書中に開示された方法及び装置にしたがって生成される生成物も包含する。例えば本発明は、動的光学素子により変調されたレーザービームを用いて粒子を操作して、光トラップを生成することにより生成される生成物を含む。本発明は、このようなレーザービームを用いて粒子を操作し、且つ動的光学素子を変調するための装置により生成される生成物を包含する。例示的一実施形態において、本発明は、記載の方法及び装置を用いてナノチューブを操作し、且つナノチューブを結合して構造体を形成することにより形成される構造体を含む。
【0169】
本発明の例示的実施形態であるとみなされるものを記述してきたが、種々の修正がそこになされうることは当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲において、その範囲内に入るような修正及び変更を含むよう意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的光学素子(DOE)でレーザービームを変調することにより生成される光トラップを用いて1つ又は複数の特質を有する1つ又は複数の粒子を操作するための方法であって、以下の:
前記粒子の少なくとも1つの特質を選択する段階、
前記粒子の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームを発生させる段階、
前記DOEの算定値を選択する段階であって、該算定値が前記粒子の前記少なくとも1つの選定特質に対応する段階、
前記ビーム及び前記DOEを変調して、前記少なくとも1つの選定特質に対応する特性を有する少なくとも1つのホログラフィック光トラップを生成する段階、
選定サイズを有するビーム焦点又はスポットサイズに前記トラップを合焦させる段階、及び
その中に前記粒子をトラッピングするために粒子位置近くに前記ビーム焦点を設置する段階
を含む、動的光学素子(DOE)でレーザービームを変調することにより生成される光トラップを用いて1つ又は複数の特質を有する1つ又は複数の粒子を操作するための方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのトラップの機能性を観察する段階、
前記機能性を調整するために前記観察された機能性に応答してDOE値を再算定する段階、及び
前記少なくとも1つの選定特質に関して満足のいく機能性が達成されるまで観察及び再算定段階を反復する段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
その形状を形作ることにより、前記少なくとも1つのトラップの前記機能性を変更する段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子の操作が、以下の:
選定位置に前記トラップ粒子を移動する段階、
前記トラップ粒子の一部を1つ表面又は別の粒子に付着させる段階、
隣接媒体中の流動パターンを確立するために前記付着粒子を選択的に加熱する段階、
前記粒子を適所で安定させる段階、
前記粒子をトラップエネルギーで加熱する段階、
近接物体との衝突のために前記粒子を発射する段階、
近接物体を貫通するために衝撃波で前記粒子を変形させる段階、
粒子を選定パターンに整列させる段階、
隣接媒体の対応する選定流動パターンを確立するために選定パターンに整列された粒子を選択的に加熱する段階、
第1機能性を有する第1選定トラップ中で粒子をトラッピングし、第2機能性を有する前記粒子上に第2選定トラップを重ね合わせる段階、
一表面上に粒子を蒸着させる段階、
前記表面と直角を成す平行軸アラインメントで一表面上に粒子を蒸着させる段階、
前記表面と平行な平行軸アラインメントで一平面上に粒子を蒸着させる段階、
一表面又は本体から粒子を除去する段階、
一表面から粒子を融除(ablating)する段階、
サイズ、形状、長さ、伝導率、誘電率、屈折率、キラリティ、蛍光及び熱吸収性の少なくとも1つを含むナノ粒子の特質によってナノ粒子を選別する段階、
媒体の膨張を引き起こすために該媒体中で粒子を選択的に加熱する段階、
媒体を膨張させ、それによりチャネルを閉鎖するためにその中に該チャネルを有する該媒体中で粒子を選択的に加熱する段階、
サイズ、機能性、吸収性、蛍光、キラリティ及び長さに基づいて粒子を識別する段階、及び
入射放射線に応答して前記粒子から放出されるエネルギーを検知する段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1つ又は複数の粒子が、ナノチューブ、塊状元素金、白金、チタン(tatanium)、DNA、熱吸収体、コロイド球、ポリマー、バイオポリマー、量子ドット、製剤、及び生体物質(bio material)のうちの少なくとも1つを含むナノ物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
機能化コロイド球に少なくとも1つの前記ポリマーを付着させる段階、
少なくとも1つのナノ粒子の少なくとも1つの末端部分に前記ポリマーを付着させる段階、及び
第1操作可能光トラップ中で前記機能化コロイド球をトラッピングする段階
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー及び付着コロイド球のうちの1つを前記粒子のもう1つの末端部分に付着させること、及び第1光トラップとは独立して操作可能な光トラップ中で前記球をトラッピングして、それにより前記粒子が空間で延ばされ、圧縮され、又は配向され得ることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子が前記レーザーのほぼ前記波長の寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子が前記レーザーの約1/2〜約1/4波長の寸法を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トラップの少なくとも1つの特質が前記レーザー光の一様式を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザー光の前記様式が、ガウス分布、ベッセル分布、点分布及び光学渦の少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
トラップの焦点近くの前記トラップ化粒子の位置決定を最大にするために該トラップに関するトラッピング力を前記レーザーの放射圧と平衡させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
DOEが空間的光モジュレーター、デジタル光プロセッサー及び固定曝露ホログラフィックプレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子が1つ又は複数のマイクロ粒子、ナノ粒子及びピコ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法に従って製造される、生成物。
【請求項16】
動的光学素子(DOE)で前記粒子の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームを変調し、前記粒子の少なくとも1つの選定特質に対応する選定算定値を有するレーザービームを発生し、該ビーム及び前記DOEを変調して、少なくとも1つのホログラフィック光トラップを生成し、選定サイズを有するビーム焦点又はスポットサイズにトラップを合焦させ、その中に前記粒子をトラッピングするために粒子位置近くに前記ビーム焦点を置くことにより形成される光トラップを用いて1つ又は複数の特質を有する粒子のアセンブリーから製造される、生成物。
【請求項17】
少なくとも1つのトラップの機能性を観察し、前記機能性を調整するために前記観察された機能性に応答して前記DOE値を再算定し、統計学的機能性が少なくとも1つの選定特質に関して達成されるまで前記観察及び再算定段階を反復することにより形成される、請求項16に記載の生成物。
【請求項18】
少なくとも1つの選定特質を有する1つ又は複数の物質粒子を操作するための装置であって、以下の:
前記物質の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームを発生するレーザー、
ホログラムを生成するための動的光学素子(DOE)であって、該ホログラムが前記物質の前記少なくとも1つの選定特質に対応する算定値を有するDOE、
前記少なくとも1つの選定特質に対応する特性を有するホログラフィック光トラップを生成するために前記DOEにより変調される前記レーザービーム
を備える、少なくとも1つの選定特質を有する1つ又は複数の物質粒子を操作するための装置。
【請求項19】
選定スポットサイズのビーム焦点に前記トラップを合焦するためのレーザーをさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記トラップの前記機能性を観察するための手段をさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記機能性を調整するために観察された機能性に応答して前記DOE値を再算定するための手段を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記DOEが少なくとも1つの空間的光変調(SLM)及びデジタル光プロセッサー(DLP)を備える、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記DOEを制御するためのコンピューターをさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
前記DOEがその中に前記ホログラムを形成するためにコンピューターにより制御される符号化可能反射表面をさらに備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記粒子を観察するための顕微鏡をさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項26】
例えばガウストラップ、ベッセルビーム、光学渦、オプティカルボトル及びポイントトラップの少なくとも1つを含む光トラップを生じるよう適合されるホログラムを前記DOEが生成する、請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記ホログラムが前記粒子の前記特質のために最適化された特質を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項28】
前記装置を変形するための衝撃波を生成するための手段を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項29】
前記トラップが選定光学プロフィールを有する、請求項18に記載の装置。
【請求項30】
前記粒子が1つ又は複数のナノ粒子、マイクロ粒子及びピコ粒子を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項31】
前記1つ又は複数の粒子が、ナノチューブ、塊状元素金、白金、チタン(tatanium)、DNA、熱吸収体、コロイド球、ポリマー、バイオポリマー、量子ドット、製剤、及び生体物質のうちの少なくとも1つを含むナノ物質である、請求項18に記載の装置。
【請求項32】
請求項18に記載の装置により生成される、生成物。
【請求項33】
少なくとも1つの選定特質を有する1つ又は複数の物質粒子を操作するための装置により生成される生成物であって、前記装置が、前記物質の少なくとも1つの選定特質に対応する選定波長を有するレーザービームを発生するためのレーザー、前記物質の前記少なくとも1つの選定特質に対応する算定値を有するホログラムを生成するための動的光学素子(DOE)、前記少なくとも1つの選定特質に対応する特性を有する1つ又は複数のホログラフィック光トラップを生成するために前記DOEにより変調される前記レーザービームを有し、ここで、前記トラップが粒子上に合焦され、前記トラップ化粒子が他の粒子に付着されてそのアセンブリーから生成物を形成する、少なくとも1つの選定特質を有する1つ又は複数の物質粒子を操作するための装置により生成される生成物。
【請求項34】
ナノチューブから形成される構造の生成方法であって、以下の:
前記構造をアセンブルするためのナノチューブを収集すること、任意に動的光学素子でレーザービームを変調することにより形成される光トラップで前記ナノチューブを光学的にトラッピングすること、該トラップ化ナノチューブのうちの選択された1つを互いに近接して移動すること、前記選定ナノチューブをアセンブリーに付着させて、それにより該ナノチューブ構造を形成すること
を含む、ナノチューブから形成される構造の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−510160(P2007−510160A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538183(P2006−538183)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/035538
【国際公開番号】WO2005/060431
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503419767)アリックス インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】