説明

ホワイトバランス補正係数決定方法、ホワイトバランス補正係数決定装置、ホワイトバランス補正方法、ホワイトバランス補正装置、及び撮像装置

【課題】撮像した画像中に含まれる人物の白目領域の色情報に基づき、ホワイトバランス補正において適切に使用可能なホワイトバランス補正係数を決定することができるホワイトバランス補正係数決定方法、ホワイトバランス補正係数決定装置、ホワイトバランス補正方法、ホワイトバランス補正装置、及び撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像素子から出力された画像データと対応する画像中に含まれる人物の顔面領域を検出する顔面領域検出ステップS41と、顔面領域検出ステップで検出された顔面領域中に含まれる白目領域を検出する白目領域検出ステップS43と、白目領域検出ステップで複数の白目領域が検出された場合に当該複数の白目領域の色情報に基づき画像のホワイトバランス補正において使用する補正係数を予め定めた決定手順に従って決定する補正係数決定ステップとなる基準白目領域WB処理ルーチンのステップS49を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトバランス補正係数決定方法、ホワイトバランス補正係数決定装置、ホワイトバランス補正方法、ホワイトバランス補正装置、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載されるように、電子カメラ等の撮像装置により撮像された画像のホワイトバランスを補正する技術が知られている。すなわち、特許文献1の撮像装置では、撮像画像中に含まれる人物の顔面領域中から白目領域を検出すると共に、その白目領域の色情報に基づいてホワイトバランス補正係数(以下、「WB補正係数」ともいう。)を決定し、そのWB補正係数を使用して画像中の白目領域が白色に写るように画像全体のホワイトバランスを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−182369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の撮像装置では、撮像画像中に複数の顔面領域(すなわち、複数の人物)が写っている場合、それらのうちから任意の一人の顔面領域を検出し、その任意の一人の顔面領域に含まれる目領域中の白目領域の色情報に基づいてWB補正係数を決定している。そのため、その任意の一人の白目領域が、たまたま充血していたり、病気等で変色していたりすると、その画像全体のホワイトバランス補正に使用するには適切でないWB補正係数に決定してしまう虞があり、そうなると高精度なホワイトバランスの補正が期待できなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像した画像中に含まれる人物の白目領域の色情報に基づき、ホワイトバランス補正において適切に使用可能なホワイトバランス補正係数を決定することができるホワイトバランス補正係数決定方法、ホワイトバランス補正係数決定装置を提供することにある。また、本発明の更なる目的は、高精度なホワイトバランス補正が期待できるホワイトバランス補正方法、ホワイトバランス補正装置、及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のホワイトバランス補正係数決定方法は、被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像中に含まれる人物の顔面領域を検出する顔面領域検出ステップと、前記顔面領域検出ステップで検出された顔面領域中に含まれる白目領域を検出する白目領域検出ステップと、前記白目領域検出ステップで複数の白目領域が検出された場合に当該複数の白目領域の色情報に基づき前記画像のホワイトバランス補正において使用する補正係数を予め定めた決定手順に従って決定する補正係数決定ステップとを備えたことを要旨とする。
【0007】
また、本発明のホワイトバランス補正係数決定方法において、前記補正係数決定ステップでは、前記白目領域検出ステップで検出した前記複数の白目領域から予め定めた異常条件に該当する異常白目領域を除外した残りの白目領域の色情報に基づき前記補正係数を決定することを要旨とする。
【0008】
また、本発明のホワイトバランス補正係数決定方法において、前記補正係数決定ステップでは、前記複数の白目領域のうちから予め定めた基準条件に該当する一つの白目領域を基準白目領域として決定し、当該基準白目領域の色情報に基づき前記補正係数を決定することを要旨とする。
【0009】
また、本発明のホワイトバランス補正係数決定方法は、前記顔面領域検出ステップで複数の顔面領域が検出された場合に前記各顔面領域のうち主要被写体となる人物の顔面領域を予め定めた決定手順に従って基準顔面領域として決定する基準顔面領域決定ステップを更に備え、前記白目領域検出ステップでは、前記基準顔面領域中に含まれる白目領域を検出することを要旨とする。
【0010】
また、本発明のホワイトバランス補正係数決定方法において、前記補正係数決定ステップでは、前記複数の白目領域から予め定めた異常条件に該当する異常白目領域を除外した残りの白目領域を少なくとも含む一群の白目領域の各色情報が示す一群の色情報値の平均値に基づき前記補正係数を決定することを要旨とする。
【0011】
また、本発明のホワイトバランス補正係数決定装置は、被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像中に含まれる人物の顔面領域を検出する顔面領域検出手段と、前記顔面領域検出手段により検出された顔面領域中に含まれる白目領域を検出する白目領域検出手段と、前記白目領域検出手段により複数の白目領域が検出された場合に当該複数の白目領域の色情報に基づき前記画像のホワイトバランス補正において使用する補正係数を予め定めた決定手順に従って決定する補正係数決定手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
また、本発明のホワイトバランス補正係数決定装置において、前記顔面領域検出手段により複数の顔面領域が検出された場合に前記各顔面領域のうち主要被写体となる人物の顔面領域を予め定めた決定手順に従って基準顔面領域として決定する基準顔面領域決定手段を更に備え、前記白目領域検出手段は、前記基準顔面領域中に含まれる白目領域を検出することを要旨とする。
【0013】
また、本発明のホワイトバランス補正方法は、被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像のホワイトバランスを上記ホワイトバランス補正係数決定方法によって決定した補正係数を使用して補正する補正ステップを備えたことを要旨とする。
【0014】
また、本発明のホワイトバランス補正装置は、被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像のホワイトバランスを上記ホワイトバランス補正係数決定方法によって決定した補正係数を使用して補正する補正手段を備えたことを要旨とする。
【0015】
また、本発明の撮像装置は、被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子から出力された画像データと対応する画像を表示する表示手段と、上記のホワイトバランス補正係数決定装置と、前記補正係数決定装置により決定された補正係数を用いて前記画像のホワイトバランスを補正する補正手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮像した画像中に含まれる人物の白目領域の色情報に基づいてホワイトバランス補正において適切に使用可能なホワイトバランス補正係数を決定することができると共に、高精度なホワイトバランス補正が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】デジタルカメラの回路構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態における人物集合写真の画面図。
【図3】撮影処理ルーチンのフローチャート。
【図4】WB処理ルーチンのフローチャート。
【図5】特別AWB処理ルーチンのフローチャート。
【図6】基準白目領域WB処理ルーチンのフローチャート。
【図7】HSV色空間における色相値の異常範囲を示す模式図。
【図8】HSV色空間における彩度値の異常範囲を示す模式図。
【図9】HSV色空間における明度値の異常範囲を示す模式図。
【図10】第2実施形態における人物集合写真の画面図。
【図11】変形例における人物集合写真の画面図。
【図12】他の変形例における人物集合写真の画面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を撮像装置としてのデジタルスチルカメラ(以下、「カメラ」という。)で撮像した画像のホワイトバランス(以下、「WB」と称することもある。)を補正する際のWB補正係数決定方法とWB補正方法、及びその際に使用するWB補正係数決定装置とWB補正装置に具体化した第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0019】
図1はカメラ11の回路構成を示すブロック図であり、同図に示すように、カメラ11は、ズームレンズなどの複数のレンズからなるレンズ部12(図1では図面の簡略化のため1つのレンズのみ図示)と、レンズ部12を通過した被写体光をレンズ部12の像空間側において結像させる撮像素子13をカメラ本体(図示略)内に有している。撮像素子13の出力側には、AFE(Analog Front End)14と画像処理回路15が直列に接続されている。そして、MPU(Micro Processing Unit)16に対して画像処理回路15がデータバス17を介して接続されている。
【0020】
また、MPU16には、カメラ11の制御プログラムを記憶した不揮発性メモリ18、バッファメモリとして機能するRAM19、表示手段として機能する液晶表示のモニタ20、及び記録媒体であるメモリカード21を挿脱可能なカードI/F(Inter-Face)22がデータバス17を介して接続されている。さらに、カメラ本体には、そのカメラ11の使用者により操作されるモード切り替えボタンやレリーズボタン等からなる操作部材23がMPU16との間でデータ通信可能に設けられている。
【0021】
撮像素子13は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサからなり、その入射側となる撮像面には多数の受光素子(図示略)が二次元的に配列されると共に、その表面側にはR(赤),G(緑),B(青)の原色フィルタ(図示略)が規則的に配列されている。そして、撮像素子13は、その撮像面に結像した被写体像に対応した信号電荷を蓄積し、その蓄積した信号電荷を画像データの元となる画素信号と呼ばれるアナログ信号でAFE14に出力する。
【0022】
AFE14は、撮像素子13から入力したアナログ信号の画素信号を所定のタイミングでサンプリング(相関二重サンプリング)し、例えばISO感度に基づく所定信号レベルとなるように増幅する信号処理部(図示略)と、その増幅後の画素信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示略)を有している。そして、AFE14は、アナログ信号の画素信号をA/D変換部でデジタル化することにより生成した画像データを画像処理回路15に出力する。なお、このときAFE14から出力される画像データは、画素毎にR,G,Bの濃度値を持つ画像データではあるが、未だ画像ファイルに変換処理(すなわち、現像処理)される前の生のデータ(以下、「RAWデータ」という。)であるため、そのままでは画像として見ることはできない。
【0023】
画像処理回路15は、AFE14から入力したRAWデータの画像データに対して、色補間処理、階調補正、ホワイトバランス(WB)補正処理及び輪郭補償等の各種の表示用画像処理を施し、画像として見られるデータ内容にする。そして、そのように表示用画像処理を施した画像データを、画像処理回路15は、RAM19に一旦記憶させると共に、モニタ20にスルー画像として表示させる。また、レリーズボタンが全押し操作された場合は、そのときの画像データと対応する画像をモニタ20に確認用画像として表示させる一方、例えばJPEG圧縮のためのフォーマット処理等の所定の画像処理を施した後に、メモリカード21に画像ファイルとして記録させる。
【0024】
MPU16は、不揮発性メモリ18に記憶された制御プログラムに基づきカメラ11における各種の処理動作(例えば画像処理回路15での画像処理等)を統括的に制御する。そして、データバス17は、そうしたMPU16の制御に伴う各種データの伝送路として機能する。また、操作部材23のモード切り替えボタンはカメラ11の動作モードを例えば撮影モードと再生モードとの間で切り替える場合に操作されるボタンであり、レリーズボタンは撮影モードにおいて被写体を撮影するときに押し下げ操作されるボタンである。
【0025】
そして、このカメラ11では、操作部材23におけるレリーズボタンが半押し操作された段階で、被写体に対する焦点合わせのためのAF(Auto Focus)処理と露出調整のためのAE(Auto Exposure)処理が実行されるようになっている。また、その後においてレリーズボタンが全押し操作された段階で、図2に示すような写真P1(図2の場合は、7人の人物が写った集合写真)が撮影され、その写真P1の画像について各種の画像処理が実行されるようになっている。
【0026】
そこで次に、被写体の撮影時にカメラ11のMPU16が実行する撮影処理ルーチンの概要を図3のフローチャートを参照しながら以下説明する。
さて、MPU16は、カメラ11における電源ボタン(図示略)がON操作された状態において操作部材23のモード切り替えボタンが撮影モードに切り替えられると、図3に示す「撮影処理ルーチン」を開始する。そして先ずステップS11において、MPU16は、リセット処理など必要とされる初期化処理を行った後に所定の画像処理を実行する。すなわち、撮像素子13からAFE14を介して画像処理回路15に入力されたRAWデータの画像データに対してスルー画像表示のための解像度変換処理を含む表示用画像処理を画像処理回路15において行なわせた後、その処理を次のステップS12に移行する。
【0027】
そして、次のステップS12において、MPU16は、画像処理回路15で表示用画像処理が施された画像データに対応したスルー画像をモニタ20に表示させる。そして、次のステップS13において、MPU16は、モニタ20上に動画態様で表示される被写体のスルー画像に対して図4に示すWB処理ルーチンを実行する。すなわち、モニタ20に表示されるスルー画像中の白色の領域が撮影時の光源の下で白色に写るように画像全体のホワイトバランスを補正するための処理を実行する。なお、このWB処理ルーチンの詳細については後述する。
【0028】
さて、ステップS13でWB処理ルーチンを実行すると、MPU16は、次のステップS14に処理を移行する。そして、ステップS14において、MPU16は、先のステップS13でのWB補正内容が反映されたスルー画像をモニタ20に表示させる。その後、スルー画像の表示状態を継続させつつ、MPU16は、その処理を次のステップS15に移行する。そして次のステップS15において、MPU16は、操作部材23のレリーズボタンが半押しされたか否かを判定する。
【0029】
そして、このステップS15の判定結果が否定判定(ステップS15=NO)である場合、MPU16は、その処理を次のステップS16に移行し、ステップS16において、電源ボタンがOFFされたか否かを判定する。そして、このステップS16の判定結果が肯定判定(ステップS16=YES)である場合、MPU16は、本撮影処理ルーチンを終了する。その一方、ステップS16の判定結果が否定判定(ステップS16=NO)である場合、MPU16は、その処理をステップS15に戻す。そして、レリーズボタンが半押しされたか否かの判定を繰り返し、このステップS15の判定結果が肯定判定(ステップS15=YES)になると、MPU16は、その処理を次のステップS17に移行する。
【0030】
そして、ステップS17において、MPU16は、レンズ部12のズームレンズを駆動制御することにより、被写体に対する焦点合わせのためのAF処理を実行した後、その次のステップS18において、図示しない絞り機構を駆動制御することにより、露出調整のためのAE処理を実行する。そして、AF処理及びAE処理を実行すると、次のステップS19において、MPU16は、操作部材23のレリーズボタンが全押しされたか否かを判定する。
【0031】
そして、このステップS19の判定結果が否定判定(ステップS19=NO)である場合、MPU16は、その処理を次のステップS20に移行し、ステップS20において、レリーズボタンの半押し状態が解除されたか否かを判定する。そして、このステップS20の判定結果が肯定判定(ステップS20=YES)である場合、MPU16は、その処理を先のステップS15に戻し、ステップS15以下の各処理を繰り返す。その一方、ステップS20の判定結果が否定判定(ステップS20=NO)である場合、MPU16は、その処理をステップS19に戻す。そして、レリーズボタンが全押しされたか否かの判定を繰り返し、このステップS19の判定結果が肯定判定(ステップS19=YES)になると、MPU16は、その処理を次のステップS21に移行する。
【0032】
そして、ステップS21において、MPU16は、その時点で撮像素子13からAFE14を介して画像処理回路15に入力されたRAWデータの画像データに対して確認用の静止画像を表示させるための表示用画像処理を画像処理回路15において行なわせた後、その処理を次のステップS22に移行する。そして、次のステップS22において、MPU16は、その画像処理が施された画像データと対応する表示用画像に対して図4に示すWB処理ルーチンを実行する。すなわち、モニタ20に表示される静止画像中の白色の領域が撮影時の光源の下で白色に写るように画像全体のホワイトバランスを補正するための処理を実行する。
【0033】
このステップS22でのWB処理ルーチンを実行すると、MPU16は、次のステップS23に処理を移行する。そして、ステップS23において、MPU16は、ステップS22でのWB補正内容が反映された静止画像をモニタ20に表示させた後、その静止画像の表示状態を継続させつつ、次のステップS24に処理を移行する。そして次のステップS24において、MPU16は、メタデータにファイル名及び所定の付加情報を含ませた画像ファイルを画像処理回路15において作成させる。そして次のステップS25において、MPU16は、JPEG圧縮等の所定のフォーマット処理を施された画像ファイルをカードI/F22に挿入されているメモリカード21に記録させた後、ステップS12に処理を戻し、以後、再びステップS12以降の各処理を繰り返す。
【0034】
次に、MPU16が撮影処理ルーチンのステップS13(及びステップS22)で実行するWB処理ルーチンについて図4を参照しながら説明する。
さて、WB処理ルーチンが開始すると、まずステップS31において、MPU16は、その時点でのカメラ11におけるWB処理の設定モードを判定する。具体的には、光源の色温度の違いに応じて自動的にWB補正が実行されるAWB(オートホワイトバランス)モードに設定されているか否かを判定する。
【0035】
そして、このステップS31の判定結果が否定判定(ステップS31=NO)である場合、MPU16は、その処理をステップS32に移行する。そして、次のステップS32において、MPU16は、「マニュアルWB処理ルーチン」を実行する。すなわち、その時点でユーザによるダイヤル操作等の手動操作で設定されているWB補正係数を所定のメモリ(例えば、不揮発性メモリ18)から読み出し、その読み出したWB補正係数を使用して画像全体のホワイトバランス補正を行なう。その後、MPU16は、撮影処理ルーチンにおける次のステップ(S14又はS23)に処理を移行する。
【0036】
一方、先のステップS31の判定結果が肯定判定(ステップS31=YES)であった場合、MPU16は、ステップS33において、その時点でのカメラ11におけるシーンモードが風景モードやペットモード等以外の人物を被写体に含む特別シーンモードに設定されているか否かを判定する。そして、このステップS33の判定結果が否定判定(ステップS33=NO)である場合、MPU16は、その処理をステップS34に移行する。
【0037】
そして次のステップS34において、MPU16は、自動的に画像全体の色情報を平均化して無彩色とするようなWB補正が行われる周知の「通常AWB処理ルーチン」を実行する。すなわち、その時点でモニタ20に表示されている画像全体をモニタ20の画面内で複数のエリアに分割し、分割エリア毎にR,G,Bの各色信号の平均積算値を求めると共に、その平均積算値からR信号の積算値とG信号の積算値との比(R/B)及びB信号の積算値とG信号の積算値との比(B/G)をWB補正係数として求める。そして、そのようにして求めたWB補正係数を使用して、画像内におけるR,G,Bの各色信号の相対比率が1:1:1となるように、画像全体のホワイトバランスを補正する。その後、MPU16は、撮影処理ルーチンにおける次のステップ(S14又はS23)に処理を移行する。
【0038】
また一方、先のステップS33での判定結果が肯定判定(ステップS33=YES)である場合、MPU16は、その処理をステップS35に移行する。そして次のステップS35において、MPU16は、画像内に被写体として写っている人物の白目領域の色情報に基づきWB補正が行われる「特別AWB処理ルーチン」を実行する。
【0039】
そこで次に、MPU16がWB処理ルーチンのステップS35で実行する特別AWB処理ルーチンについて図5を参照しながら説明する。
さて、特別AWB処理ルーチンが開始すると、まず、ステップS41において、MPU16は、モニタ20に表示される画像(スルー画像又は静止画像)中に含まれる人物の顔面領域30(図2参照)を検出する。すなわち、MPU16は、顔面領域検出手段として顔面領域検出ステップを実行する。そして、次のステップS42において、MPU16は、顔面領域30が検出されたか否か、すなわち画像中に人物の顔が写っているか否かを判定する。そして、このステップS42の判定結果が否定判定(ステップS42=NO)である場合、MPU16は、その処理を図4のWB処理ルーチンにおけるステップS34に移行し、既述した通常AWB処理ルーチンを実行する。
【0040】
その一方、ステップS42の判定結果が肯定判定(ステップS42=YES)である場合、MPU16は、次のステップS43において、その検出された顔面領域30中に含まれる目領域31(図2参照)中の白目領域32(図2参照)を検出する。すなわち、MPU16は、白目領域検出手段として白目領域検出ステップを実行する。そして、次のステップS44において、MPU16は、白目領域32が検出されたか否か、すなわち、顔面領域30中から目領域31が検出されたとしても、その目領域31中に白目領域32が含まれているか否かを判定する。そして、このステップS44の判定結果が否定判定(ステップS44=NO)である場合、MPU16は、その処理を図4のWB処理ルーチンにおけるステップS34に移行し、既述した通常AWB処理ルーチンを実行する。
【0041】
その一方、ステップS44の判定結果が肯定判定(ステップS44=YES)である場合、MPU16は、次のステップS45において、その検出された白目領域32の数は1つであるか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定判定(ステップS45=YES)である場合、MPU16は、次のステップS46において、その1つの白目領域32内の色情報に基づきWB補正係数を算出する。すなわち、その1つの白目領域32内を複数のエリアに分割し、分割エリア毎にR,G,Bの各色信号の平均積算値を求めると共に、その平均積算値からR信号の積算値とG信号の積算値との比(R/B)及びB信号の積算値とG信号の積算値との比(B/G)をWB補正係数として求める。
【0042】
そして、次のステップS47において、MPU16は、そのようにして求めたWB補正係数をRAM19に一旦記憶させて、画像全体のWB補正に使用する補正係数として設定する。そして、次のステップS48において、MPU16は、RAM19から読み出したWB補正係数を使用して、画像内におけるR,G,Bの各色信号の相対比率が1:1:1となるように、画像全体のホワイトバランスを補正する。すなわち、MPU16は、補正手段として補正ステップを実行する。そして、その後、MPU16は、撮影処理ルーチンにおける次のステップ(S14又はS23)に処理を移行する。
【0043】
一方、先のステップS45の判定結果が否定判定(ステップS=NO)である場合、MPU16は、その処理をステップS49に移行し、基準となる1つの白目領域32を決定してWB補正処理を行う基準白目領域WB処理ルーチンを実行する。すなわち、MPU16は、補正係数決定ステップを実行する。
【0044】
そこで次に、MPU16が特別AWB処理ルーチンのステップS49で実行する基準白目領域WB処理ルーチンについて図6を参照しながら説明する。
さて、基準白目領域WB処理ルーチンが開始すると、まずステップS51において、MPU16は、その時点で検出されている複数の白目領域32を選考対象白目領域として、当該選考対象白目領域の色情報を表す色空間をRGB色空間からHSV色空間へと色変換する。すなわち、各白目領域32の色情報を表すための色空間を、R(赤),G(緑),B(青)の各濃度値(色情報値)で表わすRGB色空間から、H(色相),S(彩度),V(明度)の各値(色情報値)で表わすHSV色空間40(図7〜図9参照)へと色変換する。
【0045】
ここで、HSV色空間40について説明する。
図7〜図9に示すように、HSV色空間40は、無彩色軸線40aを中心軸線とする円錐形状の色空間であり、色相Hは、図7に示すように、無彩色軸線40aを中心とする色空間内の周方向における角度位置が、R(赤)→Y(黄)→G(緑)→C(シアン)→B(青)→M(マゼンタ)という各色の色相値を表すようになっている。そして、図7に示すように、周方向でR(赤)と対応したR角度位置からY(黄)方向へ所定角度位置ずれした第1閾値位置41aよりもR角度位置側であって、且つ同じくR角度位置からM(マゼンタ)方向へ所定角度位置ずれした第2閾値位置41bよりもR角度位置側となる所定角度範囲のハッチング領域が色相異常領域41とされている。
【0046】
また、彩度Sは、図8に示すように、無彩色軸線40aを中心とする色空間内の径方向における中心からの距離が、その色空間内での各色の彩度値を表すようになっている。そして、図8に示すように、径方向で無彩色軸線40aからの距離が第1閾値位置42aよりも大きくなる外側ハッチング領域と、同じく無彩色軸線40aからの距離が第2閾値位置42b(<第1閾値位置42a)よりも小さくなる内側ハッチング領域とが、彩度異常領域42とされている。
【0047】
また、明度Vは、図9に示すように、無彩色軸線40aを中心とする色空間内の軸線方向における高さ位置が、その色空間内での各色の明度値を表すようになっている。そして、図9に示すように、軸線方向で第1閾値位置43aよりも高さ位置が高くなる上側ハッチング領域と、第2閾値位置43b(<第1閾値位置43a)よりも高さ位置が低くなる下側ハッチング領域とが、明度異常領域43とされている。
【0048】
再び、図6に戻って、ステップS51でのHSV色空間40への色変換を実行すると、次のステップS52において、MPU16は、その時点で検出されている複数の白目領域32のうちから当該白目領域32における色相Hの色情報値(色相値)が異常である色相異常白目領域を特定する。すなわち、その時点で選考対象とされる複数の白目領域32を第一次選考対象白目領域として、それら複数の第一次選考対象白目領域のうちから、図7にハッチング領域で示す色相異常領域41内に色相値が存在することになる白目領域32を、色相異常白目領域として特定する。
【0049】
そして次のステップS53において、MPU16は、それら複数の第一次選考対象白目領域のうちで色相異常白目領域とされる白目領域32の比率が50%未満であるか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定判定(ステップS53=YES)である場合、次のステップS55において、MPU16は、それら複数の第一次選考対象白目領域から色相異常白目領域を除外する。その結果、第一次選考対象白目領域よりも数量の少ない白目領域32が第二次選考対象白目領域として残ることになる。そして、MPU16は、その処理を次のステップS55に移行する。
【0050】
その一方、ステップS53の判定結果が否定判定(ステップS53=NO)である場合、MPU16は、ステップS54の処理をすることなく、その処理をステップS55に移行する。したがって、この場合は、第一次選考対象白目領域と同じ数量の白目領域32が第二次選考対象白目領域として残ることになる。
【0051】
以上のようにして基準白目領域の第一次選考が終了すると、次のステップS55において、MPU16は、その時点で残っている第二次選考対象白目領域のうちから当該白目領域32における彩度Sの色情報値(彩度値)が異常である彩度異常白目領域を特定する。すなわち、その時点で残っている第二次選考対象白目領域のうちから、図8にハッチング領域で示す彩度異常領域42内に彩度値が存在することになる白目領域32を、彩度異常白目領域として特定する。
【0052】
そして次のステップS56において、MPU16は、それら複数の第二次選考対象白目領域のうちで彩度異常白目領域とされる白目領域32の比率が50%未満であるか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定判定(ステップS56=YES)である場合、次のステップS57において、MPU16は、それら複数の第二次選考対象白目領域から彩度異常白目領域を除外する。その結果、第二次次選考対象白目領域よりも数量の少ない白目領域32が第三次選考対象白目領域として残ることになる。そして、MPU16は、その処理を次のステップS58に移行する。
【0053】
その一方、ステップS56の判定結果が否定判定(ステップS56=NO)である場合、MPU16は、ステップS57の処理をすることなく、その処理をステップS58に移行する。したがって、この場合は、第二次選考対象白目領域と同じ数量の白目領域32が第三次選考対象白目領域として残ることになる。
【0054】
以上のようにして基準白目領域の第二次選考が終了すると、次のステップS58において、MPU16は、その時点で残っている第三次選考対象白目領域のうちから当該白目領域32における明度Vの色情報値(明度値)が異常である明度異常白目領域を特定する。すなわち、その時点で残っている第三次選考対象白目領域のうちから、図9にハッチング領域で示す明度異常領域43内に明度値が存在することになる白目領域32を、明度異常白目領域として特定する。
【0055】
そして次のステップS59において、MPU16は、それら複数の第三次選考対象白目領域のうちで明度異常白目領域とされる白目領域32の比率が50%未満であるか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定判定(ステップS59=YES)である場合、次のステップS60において、MPU16は、それら複数の第三次選考対象白目領域から明度異常白目領域を除外する。その結果、第三次選考対象白目領域よりも数量の少ない白目領域32が最終選考対象白目領域として残ることになる。そして、MPU16は、その処理を次のステップS61に移行する。
【0056】
その一方、ステップS59の判定結果が否定判定(ステップS59=NO)である場合、MPU16は、ステップS60の処理をすることなく、その処理をステップS61に移行する。したがって、この場合は、第三次選考対象白目領域と同じ数量の白目領域32が最終選考対象白目領域として残ることになる。
【0057】
以上のようにして基準白目領域の第三次選考が終了すると、次のステップS61において、MPU16は、その時点で残っている最終選考対象白目領域のうちからWB補正係数を算出するための色情報を取得する対象領域となる基準白目領域を特定する。すなわち、その時点で残っている最終選考対象白目領域のうちから予め定めた選考基準値(本実施形態では彩度値)が中央値となる1つの白目領域32を基準白目領域として特定する。
【0058】
そして、基準白目領域が特定されると、次のステップS62において、MPU16は、その基準白目領域内の色情報に基づきWB補正係数を算出する。すなわち、基準白目領域内を複数のエリアに分割し、分割エリア毎にR,G,Bの各色信号の平均積算値を求めると共に、その平均積算値からR信号の積算値とG信号の積算値との比(R/B)及びB信号の積算値とG信号の積算値との比(B/G)をWB補正係数として求める。
【0059】
そして、次のステップS63において、MPU16は、そのようにして求めたWB補正係数をRAM19に一旦記憶させて、画像全体のWB補正に使用する補正係数として設定する。その後、MPU16は、特別AWB処理ルーチンにおける次のステップ(S48)に処理を移行する。そして、そのステップS48において、MPU16は、RAM19から読み出したWB補正係数を使用して、画像内におけるR,G,Bの各色信号の相対比率が1:1:1となるように、画像全体のホワイトバランスを補正する。すなわち、MPU16は、ここでも補正手段として補正ステップを実行する。そして、その後、MPU16は、撮影処理ルーチンにおける次のステップ(S14又はS23)に処理を移行する。
【0060】
次に、以上のように構成された本実施形態のカメラ11の作用について、特に、撮影時においてモニタ20に表示される画像のホワイトバランス(WB)を補正する場合に使用するWB補正係数の決定方法及びその補正係数を使用したWBの補正方法に着目して以下説明する。
【0061】
なお、説明の前提として、この場合にカメラ11で撮影する写真は図2に示す人物集合写真であって、Aさん〜Gさんまでの7人全員の顔がそれぞれ両目を開けた状態で写っているものとする。但し、そのうちで後列右から二人目のBさんは左目が赤っぽく充血していると共に、前列右端のEさんは左右両目共に日が陰って暗くなった陰領域Kに位置しており、さらに前列左端のGさんは左右両目共に肝臓疾患が原因で黄ばみを生じているものとする。そして、撮影時点でのカメラ11のWB補正の設定モードは自動的にWB補正が行なわれるAWBモードになっていると共に、その際のシーンモードは特別シーンモードに設定されているものとする。
【0062】
さて、以上のような前提の下、カメラ11が電源ボタンをON操作された状態でレンズ部12を被写体となる7人の人物(Aさん〜Gさん)に向けると、その7人の集合写真の画像がスルー画像としてモニタ20に表示される。そして、この場合は、WB補正の設定モードがAWBモードであって且つシーンモードが特別シーンモードであるため、画像中の白目領域32の色情報に基づきWB補正係数が決定されると共に、そのようにして決定されたWB補正係数を用いてWB補正が行なわれることになる。
【0063】
まず、モニタ20のスルー画像では7人全員の顔が両目を各々開けた状態で写っているため、全部で14の白目領域32が1つの基準白目領域を選考する際の選考対象白目領域となる。そして、それら14個の第一次選考対象白目領域のうちから、まず色相Hの色情報値である色相値が異常な色相異常白目領域が除外される。この場合、後列右から二人目のBさんは左目が赤っぽく充血しているため、その左目の白目領域32は色相値が色相異常領域41内に位置する。したがって、この第一次選考ではBさんの左目の白目領域32が除外されることになり、残り13個の白目領域32が第二次選考対象白目領域とされる。
【0064】
すると次に、残り13個の第二次選考対象白目領域のうちから、彩度Sの色情報値である彩度値が異常な彩度異常白目領域が除外される。この場合、前列左端のGさんは左右両目共に肝臓疾患が原因で黄ばみを生じており、ややくすんだ色合いをしているため、それら左右両目の各白目領域32は彩度値が低く彩度異常領域42内に位置する。したがって、この第二次選考ではGさんの左右両目の白目領域32が除外されることになり、残り11個の白目領域32が第三次選考対象白目領域とされる。
【0065】
すると次に、残り11個の第三次選考対象白目領域のうちから、明度Vの色情報値である明度値が異常な明度異常白目領域が除外される。この場合、前列右端のEさんは左右両目共に日陰の暗い陰領域K内に位置しているため、その左右両目の各白目領域32は明度値が明度異常領域43内に位置する。したがって、第三次選考ではEさんの左右両目の白目領域32が除外されることになり、残り9個の白目領域32が最終選考対象白目領域とされる。
【0066】
すると次に、残り9個の最終選考対象白目領域のうちから、彩度Sの色情報値である彩度値が中央値となる1つの白目領域32が基準白目領域として決定される。ここで、残り9個の各白目領域32の彩度値の相対比較では、後列右端のAさんの左右両目の彩度値が最低値(0.15)である一方、後列左端のDさんの左右両目の彩度値が最高値(0.35)であり、そして前列中央のFさんの左目の彩度値が中央値(0.25)であったとする。
【0067】
すると、この場合は、彩度値が最高値でも最低値でもない中央値であるFさんの左目の白目領域32が基準白目領域として決定される。そして、Fさんの左目の白目領域32の色情報(R,G,Bの各色の濃度値)からスルー画像のWB補正用のWB補正係数が求められ、そのようにして求められた補正係数を使用して次フレームからのスルー画像の画像全体のホワイトバランスが補正される。
【0068】
その後、レリーズボタンが半押しされると、AF処理及びAE処理がなされ、さらに、全押しされると、その時点のRAWデータと対応した画像中の顔面領域30から、スルー画像のWB補正の場合と同様に、1つの基準白目領域が選考される。そして、そのようにして選考された基準白目領域の色情報(R,G,Bの各色の濃度値)から確認用静止画像のWB補正用のWB補正係数が求められ、そのようにして求められた補正係数を使用して確認用静止画像の画像全体のホワイトバランスが補正される。
【0069】
以上のように、本実施形態では、白目領域32の色情報(色相H、彩度S、明度V)を数値化して表示する色情報値(色相値、彩度値、明度値)が色相異常領域41内や彩度異常領域42内や明度異常領域43内に位置することになる異常白目領域(Bさんの左目、Gさんの左右両目、Eさんの左右両目)を基準白目領域として選考することはない。したがって、そうした異常白目領域の色情報に基づいて画像全体のWB補正に用いるWB補正係数として不適切な補正係数を算出してしまう虞がない。
【0070】
また、そのように異常白目領域を除外して残った最終選考対象白目領域のうちからも、それらの中で色情報値(例えば彩度値)が最大値や最低値のものではなく、最も平均的な値とみなせる中央値となる白目領域32が基準白目領域として決定されるため、バランスを失した偏りのあるWB補正係数を算出することも抑制される。その結果、撮影時の光源の違いに関わらず画像全体のWB補正において適切に使用可能なWB補正係数が決定されるようになり、そうした補正係数が用いられることから高精度なWB補正が期待される。
【0071】
以上のような第 1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)画像データと対応する画像の中から複数の白目領域32が検出された場合には、基準白目領域WB処理ルーチン(ステップS49)をMPU16が実行することにより、予め定めた決定手順に従って適切な1つの基準白目領域を決定でき、その基準白目領域の色情報に基づき適切なWB補正係数を算出することができる。したがって、撮像した画像中に含まれる人物の白目領域32の色情報に基づき、ホワイトバランス補正において適切に使用可能なホワイトバランス補正係数を決定することができると共に、そのようにして決定したWB補正係数を使用することで高精度なホワイトバランス補正が期待できる。
【0072】
(2)基準白目領域を選考する際の母集団となる選考対象白目領域が多数存在する場合でも、それらの中から予め定めた異常条件に該当する(すなわち、その白目領域32の色情報値がHSV色空間40内の異常領域41,42,43内に位置する)白目領域32については、これらを異常白目領域として除外した残りから選考を行なうことができる。したがって、基準白目領域の選考を効率良く行なうことができる。
【0073】
(3)基準白目領域を選考する際には、HSV色空間40の色情報を構成する色相Hと彩度Sと明度Vの各々について、その時点で選考対象白目領域として残っている白目領域32の色情報値(色相値、彩度値、明度値)が異常領域41,42,43内に位置するか否かを判定した結果で選考対象白目領域を次々に絞り込んでいる。したがって、基準白目領域の選考をきめ細かく行なうことができる。
【0074】
(4)最終的に1つの基準白目領域を決定するにあたり、その時点で選考対象白目領域として残っている白目領域32の中から、その色情報値(本実施形態の場合は、彩度値)が最大値でも最低値でもない中央値である白目領域32を選んでいるので、WB補正係数としてバランスを失した偏りのあるWB補正係数を算出することを抑制できる。
【0075】
(5)基準白目領域の選考において、その時点での選考対象白目領域の中に占める当該選考段階で除外対象候補とされる異常白目領域の比率が大きい(本実施形態の場合は50%以上)の場合には、それらの異常白目領域を除外せずに、色情報値が広範囲に亘る多数の白目領域の中から基準白目領域を選考するようにしている。したがって、基準白目領域の選考を柔軟な選考基準でもって行なうことができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態は第1実施形態との対比において、図5に示す特別AWB処理ルーチンのステップS42とステップS43の間に基準顔面領域決定ステップを有する点、及び、ステップS49の基準白目領域WB処理ルーチンの一部を変更した点でのみ相違している。したがって、以下ではこの相違点について主に説明することにし、その他の共通する点については同一符号などを付すことで重複した説明を省略する。
【0077】
さて、特別AWB処理ルーチンにおけるステップS42の判定結果が肯定判定(すなわち、ステップS42=YES)である場合、MPU16は、基準顔面領域決定ステップを実行する。
【0078】
すなわち、MPU16は、まず検出された顔面領域30が複数あるか否かを判定する。そして、その判定結果が否定判定(すなわち、検出された顔面領域30は1つ)である場合、MPU16は、その処理を次のステップS43に移行し、以後、第1実施形態の場合と同様の処理を行なう。その一方、判定結果が肯定判定(すなわち、検出された顔面領域30が複数)である場合、MPU16は、それら複数の顔面領域30から予め定めた決定手順に従って一つの基準顔面領域を決定する。
【0079】
本実施形態の場合は、図10の写真P2に示すように、顔面積の大きさが最大となる人物(図2の場合は前列中央のFさん)を主要被写体とみなし、かかる主要被写体とみなされる人物の顔面領域30を基準顔面領域に決定する。この点で、こうした基準顔面領域決定ステップを実行するMPU16は、基準顔面領域決定手段として機能することになる。
【0080】
そして次のステップS43において、MPU16は、主要被写体とみなされたFさんの顔面領域30を基準顔面領域として、当該顔面領域中から白目領域32を検出する。そしてステップS45における判定結果が否定判定となった場合、次のステップS49で基準白目領域WB処理ルーチンを実行し、1つの基準白目領域を決定する。
【0081】
このステップS49の基準白目領域WB処理ルーチンにおいて、本実施形態では、2つの白目領域32(すなわち、Fさんの左右両目)のうち何れか一方の白目領域の色情報値(色相値、彩度値、明度値)が異常領域41,42,43内に位置することになると、その一方の白目領域32が選考対象白目領域から除外される。そして、残る1つの白目領域32が次の選考段階で他の色情報値(色相値、彩度値、明度値)が異常領域41,42,43内に位置することになってしまった場合には、先の選考段階で除外された前記一方の白目領域32も含めて2つの白目領域32が有する色情報値の合計を2で除することにより平均値を求めるようにしている。
【0082】
そして、以上のような手順に従ってWB補正係数を算出し、そのようにして算出された補正係数を用いてWB補正が行なわれる。したがって、この第2実施形態によれば、第1実施形態における(1)に相当する効果を得ることができると共に、その写真P2の画像内で主要被写体とみなされる人物の白目領域を基準にしてWB補正係数を求めることができるので、主要被写体を鮮やかに表現できるようになる。
【0083】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態は第1実施形態との対比において、図5に示す特別AWB処理ルーチンのステップS42とステップS43の間に基準顔面領域決定ステップを有する点、及び、ステップS49の基準白目領域WB処理ルーチンの一部を変更した点でのみ相違している。したがって、以下ではこの相違点について主に説明することにし、その他の共通する点については同一符号などを付すことで重複した説明を省略する。
【0084】
さて、特別AWB処理ルーチンにおけるステップS42の判定結果が肯定判定(すなわち、ステップS42=YES)である場合、MPU16は、基準顔面領域決定ステップを実行する。この点で、第3実施形態は第2実施形態と共通しているといえる。
【0085】
すなわち、第3実施形態でも、MPU16は、検出された顔面領域30が複数あると、それら複数の顔面領域30から予め定めた決定手順に従って主要被写体とみなされる人物の顔面領域30を一つの基準顔面領域として決定する。
【0086】
但し、本実施形態の場合は、ステップS49の基準白目領域WB処理ルーチンにおいて2つの白目領域32(すなわち、Fさんの左右両目)が各々有する色情報値の合計を2で除することにより平均値を求め、その平均値に基づきWB補正係数を算出し、そのようにして算出された補正係数を用いてWB補正が行なわれるようになっている。
【0087】
したがって、この第3実施形態においても、第1実施形態における(1)に相当する効果を得ることができると共に、その画像内で主要被写体とみなされる人物の白目領域を基準にしてWB補正係数を求めることができるので、主要被写体を鮮やかに表現できるようになる。さらには、効率良く基準白目領域を決定することができるようになる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態は第1実施形態との対比において、図5に示す特別AWB処理ルーチンでのステップS49の基準白目領域WB処理ルーチンの処理内容を変更した点でのみ相違している。したがって、以下ではこの相違点について主に説明することにし、その他の共通する点については同一符号などを付すことで重複した説明を省略する。
【0089】
さて、特別AWB処理ルーチンにおけるステップS45の判定結果が否定判定となった場合、MPU16は、次のステップS49で基準白目領域WB処理ルーチンを実行する。そして、この場合、第4実施形態では、選考対象白目領域とされる複数の白目領域32の各々が有する色情報値の合計を、そのときの選考対象白目領域とされている白目領域32の数で除することにより平均値を求め、その平均値に基づきWB補正係数を算出し、そのようにして算出された補正係数を用いてWB補正が行なわれるようになっている。
【0090】
但し、その白目領域32が有する色情報値が異常領域41,42,43に位置することになる異常白目領域は除外して残った一群の白目領域を選考対象白目領域として、それらの各白目領域32が各々有する色情報値の平均値をWB補正係数として求めるようにしてもよい。
【0091】
したがって、この第4実施形態においても、第1実施形態における(1)に相当する効果を得ることができると共に、選考対象白目領域とされる複数の白目領域32がそれぞれ有している各色情報値の合計の平均値に基づき効率良くWB補正係数を求めることができるようになる。
【0092】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記各実施形態において、選考対象白目領域の中から異常白目領域を除外することをせずに、選考対象白目領域の全てからダイレクトに基準白目領域を予め定めた決定手順に従い選考するようにしてもよい。
【0093】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、最終選考では、色情報値(彩度値)が中央値ではなくて最頻値となる白目領域32を基準白目領域に決定してもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、最終選考では、彩度値以外の他の色情報値(色相値、明度値)が中央値(又は最頻値)となる白目領域32を基準白目領域に決定してもよい。
【0094】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、色相値による第一次選考、彩度値による第二次選考、明度値による第三次選考は省略し、何れか一つの色情報値(例えば、彩度値)による最終選考だけでもよい。または、第一次選考〜第三次選考は、それらの少なくとも一つが行なわれるものであってもよい。
【0095】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、HSV色空間40内において色情報値の異常領域41,42,43の範囲を規定する第1閾値位置41a,42a,43a及び第2閾値位置41b,42b,43bは任意に変更可能である。
【0096】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、基準白目領域WB処理ルーチンにおけるステップS53,S56,S59で異常白目領域の占有率を判定する際の数値は50%に限定されず任意に変更可能である。
【0097】
・上記第2実施形態及び第3実施形態において、主要被写体を選択する際には、図11の写真P3に示すように、その顔に焦点33が合っている人物(図11の場合は前列中央のFさん)を主要被写体とみなして基準顔面領域を決定するようにしてもよい。又は、図12の写真P4に示すように、その顔に焦点33が一番近い人物(図12の場合は後列左端のDさん)を主要被写体とみなして基準顔面領域を決定するようにしてもよい。要するに、画像中において、最も焦点33に近い顔面領域30の人物を主要被写体とみなして基準顔面領域を決定するようにしてもよい。
【0098】
・上記各実施形態において、MPU16は、画像処理回路15においてRAWデータの画像ファイルを生成させると共に、そのメタデータに付加情報としてWB補正係数の情報を組み込み、その画像ファイルのデータをカメラ11とは別のホワイトバランス補正装置として機能するPC等で読み込ませて、その画像のWB補正を行なうようにしてもよい。
【0099】
・上記実施形態においては、撮像装置の一種であるデジタルスチルカメラに具体化したが、例えばデジタルビデオカメラやカメラ機能付き携帯電話などの他の撮像装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0100】
11…カメラ(撮像装置)、13…撮像素子、15…画像処理回路、16…MPU(顔面領域検出手段、白目領域検出手段、補正係数決定手段、基準顔面領域決定手段、補正手段、ホワイトバランス補正係数決定装置、ホワイトバランス補正装置)、20…モニタ(表示手段)、30…顔面領域、32…白目領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像中に含まれる人物の顔面領域を検出する顔面領域検出ステップと、
前記顔面領域検出ステップで検出された顔面領域中に含まれる白目領域を検出する白目領域検出ステップと、
前記白目領域検出ステップで複数の白目領域が検出された場合に当該複数の白目領域の色情報に基づき前記画像のホワイトバランス補正において使用する補正係数を予め定めた決定手順に従って決定する補正係数決定ステップと
を備えたことを特徴とするホワイトバランス補正係数決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のホワイトバランス補正係数決定方法において、
前記補正係数決定ステップでは、前記白目領域検出ステップで検出した前記複数の白目領域から予め定めた異常条件に該当する異常白目領域を除外した残りの白目領域の色情報に基づき前記補正係数を決定することを特徴とするホワイトバランス補正係数決定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のホワイトバランス補正係数決定方法において、
前記補正係数決定ステップでは、前記複数の白目領域のうちから予め定めた基準条件に該当する一つの白目領域を基準白目領域として決定し、当該基準白目領域の色情報に基づき前記補正係数を決定することを特徴とするホワイトバランス補正係数決定方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のホワイトバランス補正係数決定方法において、
前記顔面領域検出ステップで複数の顔面領域が検出された場合に前記各顔面領域のうち主要被写体となる人物の顔面領域を予め定めた決定手順に従って基準顔面領域として決定する基準顔面領域決定ステップを更に備え、
前記白目領域検出ステップでは、前記基準顔面領域中に含まれる白目領域を検出することを特徴とするホワイトバランス補正係数決定方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のホワイトバランス補正係数決定方法において、
前記補正係数決定ステップでは、前記複数の白目領域から予め定めた異常条件に該当する異常白目領域を除外した残りの白目領域を少なくとも含む一群の白目領域の各色情報が示す一群の色情報値の平均値に基づき前記補正係数を決定することを特徴とするホワイトバランス補正係数決定方法。
【請求項6】
被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像中に含まれる人物の顔面領域を検出する顔面領域検出手段と、
前記顔面領域検出手段により検出された顔面領域中に含まれる白目領域を検出する白目領域検出手段と、
前記白目領域検出手段により複数の白目領域が検出された場合に当該複数の白目領域の色情報に基づき前記画像のホワイトバランス補正において使用する補正係数を予め定めた決定手順に従って決定する補正係数決定手段と
を備えたことを特徴とするホワイトバランス補正係数決定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のホワイトバランス補正係数決定装置において、
前記顔面領域検出手段により複数の顔面領域が検出された場合に前記各顔面領域のうち主要被写体となる人物の顔面領域を予め定めた決定手順に従って基準顔面領域として決定する基準顔面領域決定手段を更に備え、
前記白目領域検出手段は、前記基準顔面領域中に含まれる白目領域を検出することを特徴とするホワイトバランス補正係数決定装置。
【請求項8】
被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像のホワイトバランスを請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のホワイトバランス補正係数決定方法によって決定した補正係数を使用して補正する補正ステップを備えたことを特徴とするホワイトバランス補正方法。
【請求項9】
被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子から出力された画像データと対応する画像のホワイトバランスを請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のホワイトバランス補正係数決定方法によって決定した補正係数を使用して補正する補正手段を備えたことを特徴とするホワイトバランス補正装置。
【請求項10】
被写体からの光を受光して電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子から出力された画像データと対応する画像を表示する表示手段と、
請求項6又は請求項7に記載のホワイトバランス補正係数決定装置と、
前記補正係数決定装置により決定された補正係数を用いて前記画像のホワイトバランスを補正する補正手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−109411(P2011−109411A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262286(P2009−262286)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】