説明

ホームドア装置

【課題】通路用開口領域を広くできる大型ドアを備え、開閉のための進退動作のドア移動時にドアの上下動の発生を防止して安定かつ滑らかに移動でき、ドア筐体部にシースルー構造を設けたホームドア装置を提供する。
【解決手段】ホームドア装置10は、ドア筐体部14、ドア筐体部内に収納された2枚のホームドア15,16、2本のレール27,28、2組のドア駆動装置を備え、2本のレールはドア筐体部の底部に平行に配置され、ホームドアはレールの真上に配置され、ホーム側のホームドアのドア駆動装置をドア筐体部の底部の付近に配置し、かつ線路側のホームドアのドア駆動装置をドア筐体部の上壁部の付近に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホームドア装置に関し、特に、乗降客の安全を確保するため駅ホームに設置され、新しいドア支持機構およびドア駆動機構とシースルー構造とを備え、さらにドアの大型化にも適したホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅のホーム(駅ホームまたはプラットホーム)では、電車(列車)に対して乗降する旅客の安全性を確保するためホーム柵またはホームドア装置が設置されている。ホームドア装置では、電車が駅ホームに入ってくる時にドアが閉じ、柵の一部として旅客と電車とを隔離する。ホームドア装置は、駅ホームの縁に沿って進退動作することにより開閉自在なドア(可動部)と、当該ドアを収納するドア筐体部(固定部)とから構成される。ドアを支持する機構およびドアを進退動作させるドア駆動機構はドア筐体部の内部に設けられている。ホームドア装置では、ドアが開いた状態で、すなわちドアがドア筐体部内に収容された状態で、旅客の乗り降りが行われる。
【0003】
現在、多く用いられているホームドア装置はドア幅の長さが1.5mのものである。乗降を行うために開口領域の長さは、両側にドア筐体部が設置されかつ各々からドアが進退する構造になっているので、1.5(m)×2で3mの長さになっている。これが標準タイプのホームドア装置の寸法である。
【0004】
1つのドア筐体部は両側に形成されたドア進退口の各々を経由してドアを進退させる。図10と図11に示すように、1つのドア筐体部101の内部には、ホーム側と線路側の各々に位置する2枚のドア102,103を立てた状態でかつ互いに平行な状態で収容している。標準タイプのホームドア装置において、ホーム側ドア102は、ドア筐体部101のホーム側の壁構造部において高さ方向中間位置に設けられたレール104に懸架状態で取り付けている。すなわち、レール104上に摺動するように設けられたリニアガイド105に懸架機構106で取り付けられる。ホーム側ドア102は、対応するドア駆動機構(モータ107等)によりレール104上を移動するように設けられている。他方、線路側ドア103は、ドア筐体101の底部108に設けられたレール109に配置される。すなわち、当該レール109の設置位置に対してドア筐体部101の厚み幅の方向にずれた位置で、かつレール109に配置されたリニアガイド110に蝶つがい支持機構111で支持されている。線路側ドア103は、対応する他のドア駆動装置(モータ112等)にレール109の上を移動自在となるように設けられている。2つのドア駆動装置の各々のモータ107,112は、ドア筐体部101のホーム側壁部113の側に配置されている。
【0005】
現在、多く用いられている標準タイプのホームドア装置で、ドア筐体部101の内部に収容される2枚のドア102,103についてのレール構造は、ドア筐体部101の幅を可能な限り狭くできるように、ホーム側ドア102では中間的高さ位置に設けたレール104および懸架機構106を利用し、線路側ドア103では底部レール109の構造を利用している。そのため、線路側ドア103に関してはモーメント荷重(矢印114)が生じる。
【0006】
さらにドア筐体部101の内部のドア支持機構およびドア駆動機構の配置位置によれば、特にホーム側ドア102についてホーム側の壁構造部の中間的な高さ位置の存するスペースを利用してレール104、モータ107、動力伝達ベルトを配置している。このため、例えばドア筐体部101にホーム側から線路側を見通せる窓部を形成する必要がある場合に、ドア筐体部101の内部に配置された機構要素が障害になって当該窓部を形成することが非常に困難である。なお、ドア筐体部またはドア等に透明部材を備えた窓部を形成することにより、当該窓部を介してホーム側から線路側を見通すことのできる構造を「シースルー構造」と呼ぶことにする。
【0007】
従来のホームドア装置として下記の特許文献1と特許文献2に開示される装置が知られている。
【0008】
特許文献1に開示されるホームドア装置は、戸袋から開閉自在に設けられたドア(扉)を移動させるドア移動機構としてリニアモータが用いられている。当該リニアモータは、巻線を備える一次側部材と、磁性を有する可動子を備える二次側部材とを有する。一次側部材はドアに固定され、二次側部材は戸袋に固定される。戸袋には、高さ方向における中間的な高さ位置に走行路が設置されており、他方、扉には当該走行路を走行するスライド部材が取り付けられる。このホームドア装置では、1つの戸袋の中に1枚のドアが収容さされた構造になっている。特許文献1では、ドア駆動装置の構造を簡単化してかつ大きな出力を得られるようにしている。
【0009】
特許文献2に開示されるホームドア装置は、戸袋をコンパクトに形成するための構造を提案している。このホームドア装置では、ドアパネルの側にレールを設け、戸袋パネルの側にレールガイドを設けている。戸袋パネルのレールガイドはドアパネルのレールに係合し、レールを摺動自在に案内する。図4等を参照すると、このホームドア装置では、1つの戸袋には1枚のドアパネルが内蔵されており、戸袋パネルおよびドアパネルの各々の下側領域を利用してドア移動機構を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−168452公報
【特許文献2】特開2005−138725公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
鉄道駅によっては、乗降口の数あるいは位置が異なる様々なタイプの電車が停車する駅ホームが存在する。このような駅ホームにホームドア装置を設置する場合、開閉ドアは、すべての電車の乗降口に対応できることが必要となる。そのためには、標準タイプのホームドア装置で対応することができない。換言すれば、標準タイプのホームドア装置の場合には、隣り合う2つのホームドア装置の間に形成されるホームドア開口領域の位置と、停車した電車の乗降口の位置とが一致しない場合が生じ得る。
【0012】
上記の問題を解決するためには、ドア幅の長さを大きくした大型のホームドア装置が必要となる。この場合、ドア幅の長さは例えば2.3mである。このため、乗降を行うために開口領域の長さは、2.3(m)×2で4.6mの長さになる。隣り合う2つのホームドア筐体部の間の開口領域がこの程度の長さに設計されると、上記の様々なタイプの電車のドアに対応させることができる。
【0013】
上記のごとき寸法を有する大型のホームドア装置を、上記の標準タイプのホームドア装置の構造を利用して製作すると、次の問題が起きる。
(1)ホーム側ドア102を支持する機構は懸架機構106であるので、レール104は中間的な高さの空中に設けられ、ホーム側ドア102は空中に浮いた状態にある。このため、レール104に沿ってホーム側ドア102が移動すると、レール104がたわみ、ホーム側ドア102が周期的に上下動しやすい。この傾向は、ドアが大型化することにより顕著になり、この上下動を考慮した筐体開口(ドアの出入り口)にせざるを得ないことになり、製品外観上大きな問題となる。
(2)線路側ドア103は、レール109の上に摺動自在に取り付けられたリニアガイド110に対して蝶つがい支持機構111を介して連結されているので、リニアガイド110に対してモーメント荷重114が発生する。レール109の上を移動するリニアガイド110にモーメント荷重がかかっている状態は構造上望ましくない。
(3)現在の標準タイプのホームドア装置は、ドア筐体部101の高さ方向の略中間部にレール104等が配置されているので、シースルー構造を容易に設けることができない。特に大型のホームドア装置では、ドア筐体部の形状が大きくなるので、ホーム側から線路側を見通すことのできる窓部を形成することが望まれている。
【0014】
またホームドア装置を大型化する場合において、特に、両端の壁部のスリット状のドア開口部を通して進退動作する2枚の大型ドアを収容するように設けられたドア筐体部は、その厚み幅の寸法が大きくなる傾向にある。大型のホームドア装置のドア筐体部の厚み幅の寸法は可能な限り小さいことが望まれている。
【0015】
さらに、特にドア筐体部における上記シースルー構造は、大型のホームドア装置だけではなく、標準タイプのホームドア装置においても、ホーム側に居る利用者に対して線路側の情報を提供できるものであり、駅ホームでの安全性を高める観点で極めて重要な要素である。
【0016】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、乗降のための通路用開口領域を広くできる大型のドアを備えることができ、進退自在に設けられた2枚の大型のドアを収容できるコンパクトな戸袋構造を有し、開閉のための進退動作のドア移動時にドアの上下動の発生を防止して安定かつ滑らかに移動させることができ、モーメント荷重が生じる構造をなくし、ドア筐体部の厚みを可能な限り薄くすることができ、さらに2枚のドアとドア筐体部に透明窓部を形成してドア筐体部そのものにもシースルー構造を設けることができる大型のホームドア装置を提供することにある。
【0017】
さらに本発明の他の目的は、ドア筐体部において新規なシースルー構造を可能にし、ドアの開閉のための進退動作を滑らかに行うことができるドア支持機構およびドア駆動機構を有し、標準タイプにも適したホームドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るホームドア装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0019】
第1のホームドア装置(請求項1に対応)は、前提構成として、駅ホームの線路側縁に沿って設置されるドア筐体部、当該ドア筐体部の内部に平行な状態で収納されておりかつ各々がドア筐体部の両端の端壁部のドア開口部を通って進退動作により開閉自在に動作する2枚のホームドア、ドア筐体部内に設けられた2枚のホームドアの各々の移動動作を案内する2本のレール、および移動動作を可能にする2組のドア駆動装置を備えている。このホームドア装置において、さらに、2本のレールはドア筐体部の底部に平行に配置され、かつ、2枚のホームドアは2本のレールの真上に配置され、ホーム側のホームドアのドア駆動装置をドア筐体部の底部の付近に配置し、かつ線路側のホームドアのドア駆動装置をドア筐体部の上壁部の付近に配置している。
【0020】
上記のホームドア装置では、ドア筺体部内に収容された2枚のホームドアは、ドア筐体部の底部の内面に平行に設置された2本のレールの各々の真上に配置される。ホームドアによる荷重はすべて直線的に各レールに加わり、モーメント荷重がかかるのを防止することができる。また懸架構造を採用していないため、ホームドアの移動時に上下方向に周期的に変動することも防止できる。また2つのホームドアの各々のドア駆動機構の設置位置を底部の付近(ホーム手前側のホームドア)と上壁部の付近(線路奥側のホームドア)にすることにより、ドア筐体部の内部空間で中間的な高さ位置の箇所を開放し、これによりドア筐体部に窓部を設けることが可能になり、さらに各ホームドアのドア支持機構およびドア駆動機構のメンテナンスも容易に行うことができる。
【0021】
第2のホームドア装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、2本のレールの各々には摺動自在なリニアガイドが設けられ、2枚のホームドアの各々は、対応するリニアガイドの上に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
第3のホームドア装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、2組のドア駆動装置の各々は、モータと、ドア筐体部の長さ方向に回転自在に掛け渡されかつ対応するホームドアに固定されたベルトと、モータの駆動力をベルトの回転動作に変換する動力伝達手段とから構成され、底部の付近に配置されたドア駆動装置のモータ、および、上壁部の付近に配置されたドア駆動装置のモータは、両端の端壁部のいずれかに近い箇所に設置されることを特徴とする。
【0023】
第4のホームドア装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ドア筐体部の内部に、その高さ方向における中間部にものが配置されない開放空間を形成したことを特徴とする。
【0024】
第5のホームドア装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ドア筐体部のホーム側正面側壁と線路側背面側壁の各々の中間部の高さ位置の箇所に、開放空間を利用して、見通し用の窓部を設けたことを特徴とする。
【0025】
第6のホームドア装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、2枚のホームドアの各々の中央高さ位置の箇所に窓部を設け、2枚のホームドアがドア筐体部内に収容されたときにドア筐体部および2枚のホームドアの各々の窓部の位置が一致してホーム側から線路側を見通し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ホームドア装置において、ドア筺体部内に収容される2枚のホームドアは、ドア筐体部の底部に平行に設置された2本のレールの各々の真上に配置されるため、ホームドアによる荷重はすべて直線的に各レールに加わり、モーメント荷重がかかるのを防止することができ、ホームドアの開閉動作の進退移動時に上下方向に周期的に変動することを防止でき、滑らかなドア開閉動作を行うことができる。また2つのホームドアの各々のドア駆動機構の設置位置について、ホーム側ホームドアはドア筐体部の底部付近とし、かつ線路側のホームドアはドア筐体部の上壁部付近とすることにより、ドア筐体部の内部空間で中間的な高さ位置に内蔵要素を配置せず、当該高さ位置の箇所を開放し、これによりドア筐体部に窓部を設けることができ、ドア筐体部の厚み幅寸法を小さくすることができ、さらに各ホームドアのドア支持機構およびドア駆動機構のメンテナンスも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の代表的な実施形態に係る大型のホームドア装置を示す正面図である。
【図2】図1に示したホームドア装置でドア筐体部内のホームドアを左右に進出させたときの正面図である。
【図3】駅ホームに設置された隣り合う2台のホームドア装置の平面図である。
【図4】ドア筐体部内に収容された状態の2枚のホームドアの配置状態を示す平面図である。
【図5】2枚のホームドアを左右方向の外側最終位置に送り出したときのドア筐体部の内部状態の構造を示す正面図である。
【図6】ドア筐体部の内部構造を示す平面図である。
【図7】図5に示したドア筐体部を右上から見た斜視図である。
【図8】ドア筐体部の外観を示す斜視図である。
【図9】ドア筐体部内におけるドア支持機構の要部の取付け関係を示す側面図である。
【図10】従来の標準タイプのホームドア装置の内部構造の要部を示す正面図である。
【図11】従来の標準タイプのホームドア装置の内部構造の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は本発明に係るホームドア装置の一実施形態の正面図を示す。図1では駅ホームの床面に設置された1台のホームドア装置であってホーム側から見た1台のホームドア装置の正面図を示している。この図示例で2枚のホームドアはドア筐体部の中に収容された状態にある。図2は、同じくホームドア装置の正面図を示し、この場合にはドア筐体部内の2枚のホームドアが左右両側へ引き出されかつ最終位置まで進み出た状態を示している。図3は駅ホームに設置された隣り合う2台のホームドア装置の平面図を示す。図4はドア筐体部内に収容された状態の2枚のホームドアの配置状態を示す平面図である。
【0030】
この実施形態のホームドア装置の説明では、従来の標準タイプとは異なる大型のホームドア装置の例で説明する。本発明に係るホームドア装置の特徴的な構造部分は大型のホームドア装置に適したものとして考え出されたものであるが、他方で、大型のホームドア装置に限定されるものではなく、その特徴的構成については従来からの標準タイプのホームドア装置に適用することができるのは勿論である。
【0031】
1台のホームドア装置10の全体は、駅ホーム11において線路側12の縁11Aに沿ってホーム床面に設置されている。通常、ホームドア装置10は、駅ホーム11に入線し停車した電車の各車両ドアの位置に対応して所要数のホームドア装置10が配置され固定されている。図3に示すように、隣り合う2台のホームドア装置10の間に形成される開口領域13が停車した電車に対して乗降を行うための通路用開口領域である。本実施形態のホームドア装置では大型のサイズで形成されている。乗降のための通路用開口領域13の長さ(幅W1)は、この大型のホームドア装置10の場合、例えば4.6mに設定される。このような大型のホームドア装置10であるため、広く設定された通路用開口領域13の幅(W1)は、車両ドアの個数や位置が異なる各種のタイプの電車に対応させることができる。換言すれば、車両ドアの個数や位置が異なる各種のタイプの電車が入線しても、当該ホームドア装置によれば支障なく旅客を乗降させることができる。
【0032】
図2では、電車(列車)が駅ホームに到着する前の段階においてドア筐体部14内に収容されていた2枚のホームドア15,16が、ドア筐体部14の両端の端壁部のスリット状ドア開口部から突き出て進み、上記通路用開口領域13を閉じた状態を示している。図1では、2枚のホームドア15,16は、ドア筐体部14の中に後退し、通路用開口領域13が開いた状態を示している。ドア筐体部14内に収容された2枚のホームドア15,16の配置状態を図4に示す。立てて設けられたホームドア15,16は、互いに平行に、かつ大部分がほぼ重ね合わせられた位置関係となるように配置されている。図1および図2に示したホームドア装置10では、そのドア筐体部14の中において、例えば、図4に示すように、駅ホーム11の側のホームドア15は右方向で進退動作を行い、線路側12のホームドア16は左方向で進退動作を行うように構成されている。
【0033】
なお図3に示すような隣り合う2台のホームドア装置10では、実際には、駅ホーム側と線路側の2つのホームドアの配置位置を異ならせている。すなわち、図3中左側のホームドア装置10は、本実施形態で説明されるように駅ホーム側のホームドア15を右方向に進退させかつ線路側ホームドア16を左方向に進退させるのに対して、図3中右側のホームドア装置10は駅ホーム側ホームドア15を左方向に進退させかつ線路側ホームドア16を右方向に進退させるように構成されている。これにより、左右の2台のホームドア装置10から駅ホーム11側のホームドア15が外側に移動したとき、両ホームドア15の先端部が当接するようになり、通路用開口領域13が左右の2枚のホームドア15により閉じられる。なおその他の構成については左右の2台のホームドア装置10において同じである。
【0034】
ホームドア装置10のドア筐体部14には、正面部から見ると、高さ方向のほぼ中間位置に例えば3つの窓部17が形成されている。ドア筐体部14の3つの窓部17を通して、駅ホーム11に居る旅客はホーム側から線路側12を見通すことができるように構成されている。窓部17を設けるために、ドア筐体部14におけるホーム側正面側壁、および線路側背面側壁の各々に窓部が形成されている。さらにドア筐体部14の内部において、中間高さ位置の領域は、ドア駆動機構等の内蔵装置に関して物要素が何も配置されていない開放空間として形成されている。また2枚のホームドア15,16の各々にも、その高さ方向の中間領域に位置的に3つの窓部17に対応するように複数の窓部18が形成されている。ドア筐体部14内に2枚のホームドア15,16が収容された状態では、ドア筐体部14のホーム側正面側壁および線路側背面側壁の各窓部と、ホームドア15,16の各窓部18とが、見通しを可能とするように全体的にまたは部分的に一致した位置に配置されるようになっている。
【0035】
上記の窓部17,18は、それぞれ、例えば矩形に形成された開口部に透明な強化ガラスまたは強化プラスチック等が嵌め込まれることにより作られている。
【0036】
本実施形態に係るホームドア装置10のドア筐体部14は、正面から見ると、そのフレーム構造に基づいて3つの区画から形成されており、3つの区画の各々に対応して上記の窓部17が形成されている。
【0037】
次に、図5〜図9を参照して、上記ホームドア装置10の内部構造および内部に設けられた機構を説明する。ホームドア装置10のドア筐体部14の内部には2つのホームドア15,16に関する戸袋構造を備えている。2つのホームドア15,16の戸袋構造は、それぞれ、ドア支持機構とドア駆動機構を備える。
【0038】
図5は、ホームドア15,16を左右方向の外側の最終位置に送り出したときのドア筐体部14の内部状態の構造を示す正面図である。図5では、正面側壁(3枚のパネル壁)、背面側壁(3枚のパネル壁)、上壁部、および制御装置等を取り外し、それらの図示を省略している。図6は図5の平面図である。図7は図5を右上側から見た斜視図である。図8は、正面側壁および上壁部等を備えたドア筐体部14の右上側から見た斜視図である。図9はホームドアを支持するドア支持機構の要部構造を示す図である。
【0039】
ドア筐体部14の外形部は、図8に示すように、両側の端壁部21と、正面側壁22と、底部23と、上壁部24と、背面側壁(図示せず)とから構成され、箱形状に形成されている。底部23と両端の2つの端壁部21とによって上記のフレーム構造が形成される。このフレーム構造では、正面部側および背面部側のそれぞれに2本の支柱25が設けられている。両側の端壁部21と、正面部側および背面部側の各々の2本の支柱25を利用して、それらの間に、上記の正面側壁22と背面側壁が設けられる。正面側壁22と背面側壁は3枚のパネル壁である。上壁部24は、ドア筐体部14の上部を塞ぐような形で設けられる。
【0040】
前述した通り正面側壁22と背面側壁には、3つの区画の各々に対応して、窓部17が形成されている。またドア筐体部14の両側の端壁部21にはスリット形状のドア開口部26が形成される。ドア筐体部14内において出入り可能な構造にて収容される2つのホームドア15,16はスリット状のドア開口部26を通して出入り動作を行う。
【0041】
ドア筐体部14内の底部23には、底部長手方向に平行に2本のレール27,28が固定されている。駅ホーム側のレール27はホームドア15を支持しかつ移動させるためのレールである。線路側のレール28はホームドア16を支持しかつ移動させるためのレールである。
【0042】
駅ホーム側のレール27には2つのリニアガイド31が摺動自在または転がり自在な構造で取り付けられている。2つのリニアガイド31は、間をあけて配置され、かつホームドア15の後端部(図5と図7で左端部)を支持するドア支持枠部32を備える。ドア支持枠部32は、図7に示されるように隙間をあけて配置された平行な2枚のプレート部材を有し、2枚のプレート部材の共通下辺部に沿って2つのリニアガイド32が距離をあけて取り付けられてる。図7および図5等に示されるようにドア支持枠部32の2枚の平行なプレート部材の間に、ホームドア15の後端部15A(フレーム構造部)の下部が固定される。こうしてホームドア15は、その後端部をリニアガイド31に設けられたドア支持枠部32に固定され、当該支持枠部32より支持されている。レール27に対してホームドア15は、リニアガイド31を介してレール27の真上の位置に配置される。2つのリニアガイド31によってホームドア15がレール27上で進退移動するとき、ホームドア15はレール27の真上の位置で移動する。ホームドア15の下辺部分は上記のごとくリニアガイド31を備えたドア支持枠部32で支持されるが、その上辺部分はドア筐体部14の上壁部24に沿って設けられたガイド部材(図5中に図示せず)によって案内可能に支持されている。当該ガイド部材はレール27に平行になるように配置されている。上記のドア支持構造によって、ホームドア15の進退動作による移動時に、レール27の真上を移動させるので当該レール27によってホームドア15が上下方向にぶれるのがなくなり、さらにガイド部材等によってホームドア15が横方向にぶれるのを抑制する。
【0043】
また線路側に位置するレール28についても、同様に、2つのリニアガイド33が摺動自在または転がり自在な構造で取り付けられている。2つのリニアガイド33は、ホームドア16の後端部(図5と図7で右端部)を支持するドア支持枠部34を備えている。ホームドア16は、その後端部16A(フレーム構造部)の下部を、前述した通りの取付け構造に基づいて、2つのリニアガイド33を備えたドア支持枠部34に固定され、当該ドア支持枠部34より支持されている。レール28に対してホームドア16は、2つのリニアガイド33を介してレール28の真上の位置に配置される。リニアガイド33によってホームドア16がレール28上で進退移動するとき、ホームドア16はレール28の真上の位置で移動する。ホームドア16の下辺部分は上記のごとくリニアガイド33を備えたドア支持枠部34で支持されるが、他方、その上辺部分はドア筐体部14の上壁部24に沿って設けられたガイド部材(図5中に図示せず)によって案内可能に支持されている。当該ガイド部材はレール28に平行になるように配置されている。上記のドア支持構造によって、ホームドア16の進退動作による移動時に、レール28の真上を移動させるので当該レール28によってホームドア16が上下方向にぶれるのがなくなり、さらにガイド部材等によってホームドア16が横方向にぶれるのを抑制する。
【0044】
図9に示した側面図では、ドア筐体部14内における2つのレール27,28と、リニアガイド31,33と、ドア支持枠部32,34と、ホームドア15,16と、ガイド部材35,36との配置関係を示している。
【0045】
次にホームドア15のドア駆動機構について説明する。41は環状の形状を有するベルトである。環状のベルト41は、左側の端壁部21の内面部の下側に対応する箇所に回転自在に取り付けられた支持ベルト車42と、右側の端壁部21の内面部の下側に対応する箇所に取り付けた駆動ベルト車43との間に掛け渡されている。ベルト41は、駆動ベルト車43と支持ベルト車42との間の距離を適切に調整することにより、適切なテンションで掛け渡される。駆動ベルト車43は動力伝達機構を介してモータ44の駆動軸と連結されている。ベルト41、支持ベルト車42、駆動ベルト車43、およびモータ43等からなるドア駆動機構は、ドア筐体部14内において前述した窓部17が形成される領域よりも下側の領域に配置されている。以上のように構成されたベルト41に対して、環状のベルト41の下側部分に、ホームドア15を支持するドア支持枠部32が連結金具45によって連結されている。図5および図7等に示された状態は、ベルト41が反時計回りに移動することにより、リニアガイド31がレール27の上を右方向に移動してドア支持枠部32が右端位置まで移動した状態を示している。これによりホームドア15の閉じ動作(進み動作)が完了する。図5等に示された状態において、ベルト41が時計回りに移動すると、リニアガイド31がレール27の上を左方向に移動してドア支持枠部32が左端位置まで移動することになる。これによりホームドア15の開き動作(退き動作)が完了する。ホームドア15の開閉のためのモータ44の動作は、電車の入線、電車の乗降ドアの開閉のタイミング等に合わせて行われ、図示しない制御装置によって制御される。
【0046】
さらに他方のホームドア16のドア駆動機構について説明する。ホームドア16のドア駆動機構においても環状の形状を有するベルト51が設けられる。当該環状のベルト51は、右側の端壁部21の内面部のほぼ上端に対応する箇所に回転自在に取り付けられた支持ベルト車52と、左側の端壁部21の内面部のほぼ上端に対応する箇所に取り付けた駆動ベルト車53との間に掛け渡されている。ベルト51は、駆動ベルト車53と支持ベルト車52との間の距離を適切に調整することにより、適切なテンションで掛け渡されている。駆動ベルト車53は動力伝達機構を介してモータ54の駆動軸と連結されている。ベルト51、支持ベルト車52、駆動ベルト車53、およびモータ54等からなるドア駆動機構は、ドア筐体部14において前述した窓部17が形成される領域よりも上側に位置する領域であって、ホームドア16の上辺部よりも上側のほぼ上端箇所に配置されている。以上のように構成されたベルト51に対して、環状のベルト51の下側部分に、ホームドア16の後端部16Aの上側フレーム部分が連結金具55によって連結されている(図5に示す)。図5および図7等に示された状態は、ベルト51が時計回りに移動することにより、リニアガイド33がレール28の上を左方向に移動してドア支持枠部34が左端位置まで移動した状態を示している。これによりホームドア16の閉じ動作(進み動作)が完了する。図5等に示された状態において、ベルト51が反時計回りに移動すると、リニアガイド33がレール28の上を右方向に移動してドア支持枠部34が右端位置まで移動することになる。これによりホームドア16の開き動作(退き動作)が完了する。ホームドア16の開閉のためのモータ54の動作は、電車の入線、電車の乗降ドアの開閉のタイミング等に合わせて行われ、図示しない制御装置によって制御される。
【0047】
上記の2つのホームドア15,16の開閉動作は同時に行われるため、上記の2つのドア駆動機構のドア開閉のための動作は図示しない制御装置によって同期して行われる。
【0048】
上記のドア支持機構およびドア駆動機構によれば次の利点を有している。
第1に、2枚のホームドア15,16のそれぞれのドア支持機構を、ドア筐体部14の底部23の内面に平行な2本のレール27,28を設置し、当該レールの真上にホームドア15,16を配置するようにした。これにより、ホームドア15,16の重量は各々のレール27,28によって支持され、レール27,28の上をホームドア15,16が進退動作を行うために移動するときに上下動が生じるのを抑制することができる。
第2に、上記のごときドア支持機構を設けるようにしたため、ホームドア15,16の全荷重がレール27,28にかかる構造になり、モーメント荷重が生じることがなく、ホームドアの移動時に不安定な状態が生じないという利点を有している。
第3に、ホームドア15,16を移動させるドア駆動機構の機構部分を、ドア筐体部14の中間高さ位置に相当する領域の下側をおよび上側の各領域に配置するようにし、これにより中間高さ位置の領域にものが配置されず、開放するようにしたため、前述した通りドア筐体部14において少なくとも1つの窓部17を形成することができる。
【0049】
上記の実施形態の説明では大型のホームドア装置について説明したが、特徴的構成である2つのホームドアについてのドア支持機構、ドア駆動機構の構成およびドア筐体部内の配置関係、さらにドア筐体部における窓部の配置に係る構造等については、標準タイプのホームドア装置や、小型のホームドア装置等にも適用することができる。
【0050】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、数値等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るホームドア装置は、好ましくは大きなサイズのホームドアを2枚収容するドア筐体部を備えたホームドア装置に最適であり、ホームドアの安定した開閉動作を実現し、かつホーム側から線路側の見通しを良くし、安全性を高めるのに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 ホームドア装置
11 駅ホーム
12 線路側
13 通路用開口領域
15,16 ホームドア
17,18 窓部
21 端壁部
22 正面側壁
23 底部
24 上壁部
25 支柱
26 ドア開口部
27,28 レール
31,33 リニアガイド
32,34 ドア支持枠部
35,36 ガイド部材
41,51 ベルト
42,52 支持ベルト車
43,53 駆動ベルト車
44,54 モータ
45,55 連結金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ホームの線路側縁に沿って設置されるドア筐体部と、このドア筐体部の内部に平行な状態で収納されておりかつ各々が前記ドア筐体部の両端の端壁部のドア開口部を通って進退動作により開閉自在に動作する2枚のホームドアと、前記ドア筐体部内に設けられた2枚の前記ホームドアの各々の移動動作を案内する2本のレールおよび移動動作を可能にする2組のドア駆動装置とを備えるホームドア装置において、
2本の前記レールは前記ドア筐体部の底部に平行に配置され、かつ、2枚の前記ホームドアは2本の前記レールの真上に配置され、
ホーム側の前記ホームドアの前記ドア駆動装置を前記ドア筐体部の前記底部の付近に配置し、かつ線路側の前記ホームドアの前記ドア駆動装置を前記ドア筐体部の上壁部の付近に配置したことを特徴とするホームドア装置。
【請求項2】
2本の前記レールの各々には摺動自在なリニアガイドが設けられ、2枚のホームドアの各々は、対応する前記リニアガイドの上に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のホームドア装置。
【請求項3】
2組の前記ドア駆動装置の各々は、モータと、前記ドア筐体部の長さ方向に回転自在に掛け渡されかつ対応する前記ホームドアに固定されたベルトと、前記モータの駆動力を前記ベルトの回転動作に変換する動力伝達手段とから構成され、
前記底部の付近に配置された前記ドア駆動装置の前記モータ、および、前記上壁部の付近に配置された前記ドア駆動装置の前記モータは、両端の前記端壁部のいずれかに近い箇所に設置されることを特徴とする請求項1記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記ドア筐体部の内部に、その高さ方向における中間部にものが配置されない開放空間を形成したことを特徴とする請求項3記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記ドア筐体部のホーム側正面側壁と線路側背面側壁の各々の前記中間部の高さ位置の箇所に、前記開放空間を利用して、見通し用の窓部を設けたことを特徴とすることを請求項4記載のホームドア装置。
【請求項6】
2枚の前記ホームドアの各々の中央高さ位置の箇所に窓部を設け、2枚の前記ホームドアが前記ドア筐体部内に収容されたときに前記ドア筐体部および2枚の前記ホームドアの各々の前記窓部の位置が一致してホーム側から線路側を見通し得ることを特徴とする請求項4記載のホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−260397(P2010−260397A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111088(P2009−111088)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】