説明

ホールICの製造方法

【課題】低コストで実現することができ、かつ生産性を向上させることができる、方向検出ホールICの検査工程を含む方向検出ホールICの製造方法を提供する。
【解決手段】ヘルムホルツ・コイル30が生成する磁界のうち、磁束密度勾配を有する周辺領域(検査位置P1、P2)に、方向検出特性検査対象のホールIC5a、5bが配置され、均一な磁束密度を有する中心領域(検査位置P3)に磁界検出特性検査対象のホールIC5cが配置される。当該状態でヘルムホルツ・コイル30に通電して磁界を発生させるとともに当該磁界による磁束密度を変動させて、ホールIC5a、5bの方向検出特性とホールIC5cの磁界検出特性が同時に測定される。測定完了後に搬送ライン62を一方向に移動させ、各ホールICを検査位置P1、P2、P3のそれぞれで測定が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール素子を搭載した半導体装置に関し、特に、ホール素子と、増幅器やシュミット・トリガ回路等の周辺回路とを、同一チップに形成したホールICの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホールICの用途として、電機分野ではノートPCや携帯電話等の開閉検出、自動車分野ではドアの開閉やシフトレバー位置の検出等が知られている。また、近年、自動車のパワーウィンドウ、サンルーフあるいは車輪等を駆動する回転軸の速度や回転方向検出にもホールICが用いられるようになっている。
【0003】
一般に、ホールICは半導体基板上にエピタキシャル層等の拡散層を成長させ、当該拡散層にホール素子が形成された構造を有し、当該ホール素子を貫通する磁束密度に比例した微小な差電圧がホール素子の2つの出力端子から取り出される。この微小な差電圧は、同一チップに設けられた増幅器によって増幅され、さらにシュミット・トリガ回路に入力される。シュミット・トリガ回路は入力されたアナログ信号を論理信号(ハイ信号/ロー信号)に変換する。当該シュミット・トリガ回路からの論理出力はスイッチ回路に入力される。したがって、このホールICでは、磁束密度の極性あるいは磁束密度の大きさの変化に応じて、スイッチ回路の状態(オン/オフ)が切り替わるスイッチ動作をすることになる。
【0004】
このようなホールICの製造工程は、通常の半導体集積回路と同様に、拡散工程(ウェーハ工程)とその後の検査工程とで構成されている。図12は、ホールICの製造工程に含まれる検査工程を実施するために使用される、従来のホールIC検査装置を模式的に示す要部断面図である。
【0005】
従来のホールICの検査工程では、図12に示すように、まず、鉄心122と巻線123から成るコイルのエアギャップ125内にホールIC121が挿入される。次いで、巻線123に接続された電流源124の直流電流を増加させ、エアギャップ125に発生する磁場の磁束密度を時間的に階段状に増加させる。この直流電流増大の過程で、磁束密度の強度に応じてホールIC121上のホール素子からの出力(差電圧)が変化し、ホールIC121がスイッチ動作する。このスイッチ動作するときの磁束密度を測定することでホールIC121の検査が行われる(例えば、特許文献1の図6等参照)。
【0006】
ところで、近年、上記のような磁束密度を検知する機能に加えて磁力線集中領域(磁束密度の大きい領域)の移動方向も検出する機能を備える1チップホールIC(以下、方向検出ホールICという。)が安全対策等の観点で注目されている。例えば、自動車のパワーウィンドウやサンルーフ等では、異物の挟み込みが発生すると、それに続いて跳ね返りが発生する。このとき、パワーウィンドウやサンルーフ等を駆動する回転軸が反動で瞬間的に逆回転する。この駆動回転軸に永久磁石を取付け、その磁束密度の移動方向を上記方向検出ホールICでモニタする構成を採用すると、瞬間的な逆回転を検知して駆動を安全に停止させることができる。
【0007】
この方向検出ホールICは同一基板上に少なくとも2つのホール素子を備える。当該ホール素子は、一方向に並べて配置されており、各ホール素子に、増幅器、シュミット・トリガ回路などの周辺回路がそれぞれ設けられている。例えば、2つのホール素子が一方向に並べられたホールICでは、磁力線集中領域がホール素子が配列された方向に片側から移動してきたとき、一方のホール素子から順に磁力線集中領域の磁束密度に対応する電圧が出力される。当該出力された電圧によりシュミット・トリガ回路が動作するか否かを検出して磁力線集中領域の移動方向を判定する。
【0008】
このような方向検出ホールICもまた、その製造工程に含まれる検査工程では図12に示すホールIC検査装置を用いた検査が行われる。このホールIC検査装置により方向検出ホールICを検査する場合、まず、コイルのエアギャップ125内に方向検出ホールICが動作する所定の磁束密度の磁場が形成される。当該状態で、エアギャップ125内に方向検出ホールICが挿入される。このとき、方向検出ホールICは、チップ上に並べられた2つのホール素子11(図12では2個まとめて表示している)の配列方向に沿った移動により挿入される。この場合、最初にエアギャップ125内に挿入されたホール素子に接続されたシュミット・トリガ回路が磁束検知に応じた論理信号を出力し、続いてエアギャップ125内に挿入された他方のホール素子に接続されたシュミット・トリガ回路が磁束検知に応じた論理信号を出力する。
【0009】
これにより各シュミット・トリガ回路の信号出力順序から、相対的にエアギャップ125内の磁力線集中領域の移動する方向を検出させ、方向検出ホールICの方向検出の検査を実施するのである。また、当該検査工程では、このような方向検出特性検査と共に上述の磁界検出特性に関する通常のホールICとしての検査も実施される。
【特許文献1】特開平7−20155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上で説明した方向検出ホールICの検査工程は以下のようにまとめられる。まず、方向検出ホールICは、そのチップ上に並べられた2つのホール素子の配列方向に沿った移動により、磁場が生成された検査装置のエアギャップ125内に外部から挿入され、方向検出機能の検査が行われる(移動1回/検査1回)。次いで、方向検出ホールICは、検査装置のエアギャップ125内に固定された状態で、エアギャップ125に発生する磁束密度の大きさを変化させることにより、磁界検出機能の検査が行われる(検査1回)。続いて、方向検出ホールICは、最初の移動方向と同一方向への移動により、一旦エアギャップ125の外部に引き出される。そして、方向検出ホールICは、当該移動方向と逆方向の移動によりのエアギャップ125内に再度挿入され、逆方向の方向検出機能の検査が行われる(移動2回/検査1回)。さらに、検査が完了した方向検出ホールICは、エアギャップ125から引き出される(移動1回)。
【0011】
以上のように、従来の検査装置を使用する検査工程では、1個の方向検出ホールICの検査に直接関係する部分のみで、方向検出ホールICの4回の移動と、個別の3回の測定が必要である。このような検査を自動実施する検査装置は、搬送機構の構成が複雑になり、また、エアギャップに異なる磁界を発生させ異なった内容の検査(測定)を実施する検査プログラムおよび各検査項目実施のタイミングを、検査中に移動する方向検出ホールICの搬送タイミングと同期させる検査プログラムシーケンスが複雑になる。その結果、検査装置が高価になるという問題点がある。また、従来の検査方法では、上述のように、方向検出ホールICを1個ずつしか検査することができず、検査時間が長くなり生産性が低下するという問題点もある。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、低コストで実現することができ、かつ生産性を向上させることができる、方向検出ホールICの検査工程を含む方向検出ホールICの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、同一形状の2個の環状コイルを、各環状コイルが含まれる面を対向させて構成されたヘルムホルツ・コイルが発生する磁界内に、一方向に並べられた少なくとも2個のホール素子を有するホールICを設置し、当該ホールICの特性を検査する検査工程を含むホールICの製造方法を前提としている。このヘルムホルツ・コイルは、環状コイル間に挟まれた空間内の周辺領域において、前記空間の中央領域から離れるにしたがって磁束密度が減少する磁束密度勾配を有する磁界を通電により発生させる。また、このホールICは、磁束密度の大きい磁力線集中領域が上記2個のホール素子のうちの一方側から他方側へ移動する際に、前記一方側のホール素子における磁束密度が先に増加したことを検知して、磁力線集中領域の移動方向を検出する方向検出機能を有する。そして、本発明に係るホールICの製造方法では、検査工程が以下のようにして実施される。まず、少なくとも2個の前記ホールICが上記空間内の周辺領域に設置される(第1工程)。次いで、上記ヘルムホルツ・コイルに通電して上記空間内に磁界を発生させるとともに当該磁界による磁束密度を変動させ、上記少なくとも2個のホールICの方向検出特性が測定される(第2工程)。
【0014】
このホールICの製造方法によれば、ヘルムホルツ・コイルにより形成される磁束密度勾配を有する磁場を利用して方向検出特性検査を実施するため、従来に比べて、方向検出ホールICの検査工程における搬送回数を削減でき、搬送機構とシーケンスを簡素化することができる。
【0015】
また、上記ホールICの製造方法において、上記2個のホールICは、少なくとも2個のホール素子が並べられた方向に磁束密度勾配が生じ、かつ上記環状コイル間の空間の中央領域に含まれる所定の点に対して対称な位置に設置されることが好ましい。これにより、ホールICの方向を変更することなく、磁力線集中領域の移動方向が正反対になる状態の方向検出特性を測定することができる。
【0016】
また、上記検査工程は、複数のホールICを順次検査する構成であることが好ましい。例えば、上記第2工程の後、2個のホールICのうちの一方を、他方のホールICが設置されていた位置に設置するとともに、一方のホールICが設置されていた位置に新たなホールICを設置する移動が実施される。そして、当該移動の後、上記ヘルムホルツ・コイルに通電して上記空間内に磁界を発生させるとともに当該磁界による磁束密度を変動させて、上記一方のホールICと新たなホールICの方向検出特性が測定される。この移動と測定とを繰り返し実施することによって、複数のホールICを順次検査することが可能になる。
【0017】
さらに、上記ホールICは、当該ホールICが有するホール素子を貫通する所定の大きさの磁束密度を検知する磁界検出機能をさらに有していてもよい。この場合、上記第1工程において、少なくとも2個のホールICの間の、上記空間の中央領域に少なくとも1個のホールICがさらに設置されることが好ましい。この場合、上記第2工程において、上記空間の中央領域に設置されたホールICの磁界検出特性を、方向検出特性と同時に測定することができる。その結果、従来に比べて、方向検出ホールICの検査工程における搬送回数を削減した状態で、ホールICの磁界検出特性と方向検出特性とを検査することができる。この構成においても、複数のホールICを順次検査する構成であることが好ましい。
【0018】
加えて、上記ホールICが、検出した磁力線集中領域の移動方向に応じて互いに異なる2種の信号のいずれかを出力する構成である場合、上記第2工程において方向検出特性が測定されるホールICに対して、当該第2工程の直前に、当該第2工程において当該ホールICに対して期待される出力信号とは異なる信号を出力する状態に当該ホールICを設定する構成にすれば、磁力線集中領域の移動を互いに逆方向とした検査を連続して行う場合でも、検出動作の異常の有無を確実に判定することができる。
【0019】
また、上述の各ホールICの製造方法において、上記ホールICの各設置位置に、複数のホールICからなるホールIC群が設置され、当該ホールIC群に属する各ホールICに、それぞれの設置位置に対応する検査が実施されてもよい。この場合、ホールIC群を効率よく配置するために、上記ヘルムホルツ・コイルを構成する環状コイルの外形を正方形にすることができる。
【0020】
なお、上述の各ホールICの製造方法では、同一のホールICに対する異なる位置での測定結果に基づいて、当該ホールICの良否判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ヘルムホルツ・コイルにより形成される磁束密度勾配を有する磁場を利用して方向検出特性検査を実施することで、従来に比べて、方向検出ホールICの検査工程における搬送回数を削減でき、搬送機構とシーケンスを簡素化することができる。その結果、設備費用を低減できるとともに、検査時間を短く抑えることで生産性を向上させることができ、ホールICの生産コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態の説明に先立ち、まず、本発明が検査対象とする方向検出ホールICの構成とその動作について説明する。
【0023】
図1は方向検出ホールICの構成を示すブロック図である。図1において、方向検出ホールIC1は、2個のホール素子11、15を備える。各ホール素子11、15には、増幅器およびシュミット・トリガ回路を含む周辺回路がそれぞれ接続されている。すなわち、ホール素子11には、ホール素子11の電圧出力を増幅する増幅器12と、増幅器12からの出力信号が入力され、入力されたアナログ信号を論理信号(H信号/L信号)に変換するシュミット・トリガ回路13とが接続されている。また、ホール素子15には、ホール素子15の電圧出力を増幅する増幅器16と、増幅器16からの出力信号が入力され、入力されたアナログ信号を論理信号(H信号/L信号)に変換するシュミット・トリガ回路17とが接続されている。また、シュミット・トリガ回路13、17の出力信号は方向検出回路18に入力されている。方向検出回路18は、2つのシュミット・トリガ回路13、17の動作順序を比較して磁力線集中領域が移動する方向を検出し、検出結果を論理信号として出力する。
【0024】
なお、公知のように、シュミット・トリガ回路は、入力信号に対する出力信号がヒステリシスを有する。すなわち、入力信号に対する2つの閾値を有し、入力信号が高い閾値を超えたときに一方の論理信号(例えば、H信号)を出力し、入力信号が低い閾値を下回ったときに他方の論理信号(例えば、L信号)を出力する。また、入力信号が低い閾値と高い閾値との間に属するときは直前の出力を維持する。
【0025】
また、シュミット・トリガ回路13の出力信号はスイッチ回路14に入力され、方向検出回路18の出力信号はスイッチ回路19の制御端子に入力されている。スイッチ回路14、19は、制御端子に入力された論理信号レベルに応じて、入出力端子間のオン状態とオフ状態とが切り替わる。スイッチ回路14、19は、例えば、トランジスタスイッチからなり、入出力端子の一方が接地されている。このため、スイッチ回路14の他方の入出力端子4はホール素子11を貫通する磁束密度の極性あるいは大きさに応じてスイッチ動作する出力を取り出す磁界検出出力端子として機能する。また、スイッチ回路19の他方の入出力端子9は方向検出回路18の出力を取り出す方向検出出力端子として機能する。なお、図1では図示を省略しているが、検査工程では、入出力端子4および入出力端子9には適宜プルアップ抵抗が接続され、それぞれの出力が電圧レベル変化として検出される。なお、以下では、入出力端子4を磁界検出端子4と称し、入出力端子9を方向検出端子9と称する。
【0026】
続いて、上述の方向検出ホールIC1の動作について説明する。図2は、方向検出ホールIC1による回転方向検出のメカニズムを説明するための概略図である。なお、図2では、図1に示した方向検出ホールIC1の同一の構成要素には、図1と同一の符号を付している。
【0027】
図2(a)に示すように、回転方向を検出する対象である円柱状の回転体20は、その軸心に一致する回転軸25を中心として回転する。回転体20には、その円周に沿って4個の永久磁石が等間隔に取り付けられており、回転体20の外面がS極S1、S極S2、N極N1、N極N2になっている。なお、N極とS極とは交互に配置されている。
【0028】
方向検出ホールIC1は、回転体20の外周に近接するとともにホール素子11、ホール素子15が回転体20の外周に対向する状態で設置される。このとき、ホール素子11とホール素子15とを結ぶ直線に垂直な面26が回転軸25を含む状態になっており、回転体20の回転方向に沿って、ホール素子15、ホール素子11の順で下流側から配置されている。
【0029】
さて、図2において永久磁石N極N1が発生する磁力線24は、永久磁石N極N1の中心直下で最も密であり、向きは回転体20の直径方向(方向検出ホールIC1に対して垂直)に近く、磁束密度が大きく磁界が強い。磁力線24は、中心から周辺に離れるにしたがって疎になり、磁束密度が小さく磁界が弱くなる。永久磁石N極N2も同様で、永久磁石S極S1ならびに永久磁石S極S2は磁束の向きが反転する。
【0030】
図2(b)は、ホール素子11を貫通する磁束密度と、図1に示す磁界検出端子4からの出力電位との関係を表すグラフである。図2(b)において、横軸が磁束密度に対応し、縦軸が出力電位に対応する。なお、ここでは、ホール素子の裏面から表面に向かう磁束をプラス極性と定義している。特性21から理解できるように、ホール素子11を貫通する磁束密度がプラス極性の所定の閾値L1を超えると、スイッチ回路14はオン状態になり、磁界検出端子4からの出力電位は低下する(L信号を出力)。また、当該状態から磁束密度が減少しマイナス極性の所定の閾値L2を下回ると、スイッチ回路14はオフ状態になり、磁界検出端子4からの出力電位は上昇する(H信号を出力)。
【0031】
図2(c)は、回転体20を図2(a)において反時計周り(各磁極がN極N1、S極S1、N極N2、S極S2の順で、方向検出ホールIC1に対向する位置を繰り返し通過する方向)に回転させた場合の磁界検出出力および方向検出出力の変動を示す図である。特性22が磁界検出出力であり、特性23が方向検出出力である。図2(c)において、横軸は時間に対応し、縦軸がそれぞれの出力電位に対応する。
【0032】
特性22から理解できるように、ホール素子11に回転体20の永久磁石S極S1ならびに永久磁石S極S2の中心が接近すると、ホール素子11を貫通するプラス極性の磁束密度が大きくなる。その結果、図1に示すシュミット・トリガ回路13が動作してスイッチ回路14はオン状態になり(図2(b)参照)、磁界検出端子4の磁界検出出力はオン状態(L信号)になる。また、ホール素子11に回転体20の永久磁石N極N1ならびに永久磁石N極N2が接近すると、ホール素子11を貫通するマイナス極性の磁束密度が大きくなり、シュミット・トリガ回路13が反転動作してスイッチ回路14はオフ状態になり(図2(b)参照)、磁界検出端子4の磁界検出出力はオフ状態(H信号)になる。
【0033】
また、回転体20の永久磁石S極S1が方向検出ホールIC1に接近する場合、永久磁石S極S1はホール素子15よりも先にホール素子11に接近する。そのため、永久磁石S極S1の中心(磁力線集中領域)とホール素子11との距離が先に短くなり、磁束密度が大きくなる。この場合、図1に示すシュミット・トリガ回路13が先に動作して所定の状態(ここではスイッチ回路14をオン状態にする状態)になり、遅れてホール素子15に対応するシュミット・トリガ回路17が動作して所定の状態になる。このように、シュミット・トリガ回路13、シュミット・トリガ回路17の順で動作した場合に、方向検出回路18がスイッチ回路19をオン状態にする信号(例えば、H信号)を出力するように構成されていると、図2(c)に示すように、図1に示す方向検出端子9から特性23に示す方向検出出力が出力される。これにより、磁束密度が大きい磁力線集中領域が移動する方向(図2では、方向検出ホールIC1に対する永久磁石の移動方向である左→右)を検出することができる。
【0034】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態よる方向検出ホールICの検査工程で使用される検査装置の要部を模式的に示す平面図であり、図4は当該検査装置の要部を模式的に示す断面図と、当該断面図に対応する磁束密度強度分布を示す図である。なお、図4(a)、図4(b)は、図3に示すA−A線における断面に対応している。
【0036】
本実施形態では、方向検出ホールICの検査に使用する検査装置が、ヘルムホルツ・コイル30によって磁束を発生する。本実施形態のヘルムホルツ・コイル30は、全てが同一サイズを有する2つの円形コイル30a、30bを同軸上に、かつ円形コイル30a、30bの半径に相当する距離をおいて対向して平行に配置した構成を有している。当該2つの円形コイル30a、30bは同一方向の磁場を形成する状態で直列に接続されており、電流を印加すると両コイル30a、30b間の中心部の広い範囲にわたって均一な磁束密度を有する磁場を発生できるという特徴を有している。
【0037】
図3および図4に示すように、検査対象の方向検出ホールIC1は、搬送ライン33によって当該ヘルムホルツ・コイル30に搬入される。搬送ライン33は、対向する2つの円形コイル30a、30bの間で、両者に平行に、かつ両円形コイル30a、30bの中心を通過する軸(以下中心軸32という。)と交差する状態で配置されている。搬送ライン33は、例えば、セラミック等の透磁率が1に近く、ヘルムホルツ・コイル30が発生する磁力線の分布に影響を与えない材質により構成されている。また、搬送ライン33は、検査対象の方向検出ホールICをその外形で位置を規制する、等間隔で設けられた複数の窪みを有し、当該各窪みに検査対象の方向検出ホールIC1が所定の方向に向けて収容される。各方向検出ホールIC1は、チップ上のホール素子11の中心とホール素子15の中心とを結ぶ線を延長した線と上記中心軸32とが交差する向きで搬送ライン33に搭載される。このため、所定の等間隔で容易にかつ正確に複数の被検査ホールICを配列することができる。さらに、図3、図4に矢印で示すように搬送ライン33は、方向検出ホールIC1のホール素子15を前方として、円形コイル30a、30bと平行に移動可能に構成されている。なお、図3、図4では、複数の方向検出ホールIC1として、方向検出ホールIC1a、1bのみを示している。各方向検出ホールIC1a、1b上に設けられたホール素子11a、11b、15a、15bは、それぞれ図1のホール素子11、15と同様の特性を有している。また、以下では、各方向検出ホールIC1a、1bについて図1に示す構成部位を特定する場合には、図1で示した符号に添字a、bを付して表現する。
【0038】
搬送ライン33上に搭載された、隣接する方向検出ホールIC1(例えば1aと1b)は、両者の中間点を上記中心軸32と搬送ライン33とが交差する位置(点32a)に配置したときに、円形コイル30a、30bの中心軸32(あるいは、点32a)に対して対称に位置する検査位置P1、P2に配置される。このとき、方向検出ホールIC1a上のホール素子11a、15aと、方向検出ホールIC1b上のホール素子11b、15bとが、両コイル30a、30bの対向する内側面から等距離にある面32b内に位置する。例えば、各ホール素子の表面や厚さ方向の中間面が面32bに位置する。
【0039】
図4(b)は、図4(a)に示す面32bにおける磁束密度強度分布を示す図である。図4(b)において、横軸は上記中心軸32からの距離に対応し、縦軸は磁束密度に対応する。なお、図4(b)に示す磁束密度強度分布41は、円形コイル30a、30bが、コイル30aからコイル30bに向かう方向に磁界を発生させた場合について示している。
【0040】
図4(b)から理解できるように、面32bの中心領域(中心軸32から所定の距離以内である領域)では磁束密度の大きさは一定になる。また、当該中心領域の周囲に位置する周辺領域では磁束密度の大きさが中心軸32から遠ざかるにつれてほぼ一定の割合で減少する磁束密度勾配を有する。この磁束密度勾配は中心軸32に対して点対称である。
【0041】
また、上記検査装置は、検査対象の方向検出ホールIC1の特性を測定するための検査プローブ34、35を備える。検査プローブ34、35は、透磁率が1に近い銅等からなり、2つの円形コイル30a、30bの間で、搬送ライン33により搬送される方向検出ホールIC1の各端子(磁界検出端子4、方向検出端子9、電源端子、接地端子等)に接離可能に配置されている。すなわち、検査プローブ34、35は、搬送ライン33が移動する際には、方向検出ホールIC1の各端子から離脱しており、搬送ライン33により各方向検出ホールIC1が上記検査位置P1、P2に配置された後、方向検出ホールIC1の各端子に接触する。図4の例では、先行する方向検出ホールIC1b(検査位置P2)に検査プローブ35が接触し、後続の方向検出ホールIC1a(検査位置P1)に検査プローブ34が接触する。当該状態で、検査装置が備える図示しない電源装置が、各方向検出ホールIC1の電源端子と接地端子間に検査プローブ34、35を介して所定の直流電圧を印加する。続いて、検査装置はヘルムホルツ・コイル30が発生する磁束密度を徐々に増大させる。このとき、検査装置が備える図示しない測定装置が、各方向検出ホールIC1の磁界検出端子4、方向検出端子9の電位を計測する。特に限定されないが、本実施形態では、検査プローブ34、35は上下方向に移動することにより、方向検出ホールIC1の各端子との接離を実現している。
【0042】
続いて、上述した構造を有する検査装置を使用した方向検出ホールICの検査手順を説明する。まず、搬送ライン33上に検査対象の複数の方向検出ホールIC1が搭載され、搬送ライン33の上記所定方向への移動により、上記検査位置に配置される。ここでは、図3、図4(a)に示すように、方向検出ホールIC1a、1bが検査位置P1、P2に配置されたとする。上述のように、当該2つの方向検出ホールIC1a、1bは中心軸32に互いに対称に位置する。
【0043】
方向検出ホールIC1a、1bの検査位置P1、P2への配置が完了すると、ヘルムホルツ・コイル30が通電され、図4(b)に示した、円形コイル30a、30bの半径方向の磁束密度勾配を有する磁場が生成される。図4(b)の例では、このとき、検査位置P1の方向検出ホールIC1aのチップ上に並べられたホール素子11aとホール素子15aとに加わる磁束密度にΔBの差異が発生している。同時に、検査位置P2の方向検出ホールIC1bのチップ上に並べられたホール素子11bとホール素子15bとに加わる磁束密度に−ΔB(方向検出ホールIC1aと逆極性)の差異が発生している。この状態から円形コイル30a、30bに印加する電流を除々に増大させると、ヘルムホルツ・コイル30が生成する磁場の面32bにおける磁束密度は、図4(b)に示す磁束密度強度分布41の形状を保ちながら、磁束密度の大きさの絶対値が印加電流に比例して上昇する。
【0044】
この過程で、方向検出ホールIC1aにおいては、まず、ホール素子15aに加わる磁束密度がホール素子15aに対応するシュミット・トリガ回路17aを動作させる所定の磁束密度に到達する。続いてホール素子11aに加わる磁束密度が大きさΔBに対応する分だけ遅れてホール素子11aに対応するシュミット・トリガ回路13aを動作させる所定の磁束密度に到達する。したがって、本手法により、例えば、図2に示したような永久磁石から生じた磁力線集中領域がホール素子15aからホール素子11aへ移動する状態を生み出すことができる。また、これと同時に方向検出ホールIC1bにおいては、方向検出ホールIC1aの場合と同様にして永久磁石から生じた磁力線集中領域がホール素子11bからホール素子15bへ移動する状態を生み出すことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の検査装置を使用した検査工程では、ヘルムホルツ・コイル30が生成する磁場の、磁束密度に勾配が存在する領域に被検査ホールICを固定した状態で磁束密度の大きさを変化させ、その過程で、プルアップ抵抗を介して電源電圧を印加することで、方向検出端子9の出力変化(電位変化)を測定する。したがって、2個の方向検出ホールIC1a、1bの方向検出特性の検査を一度に実施することができる。
【0046】
なお、上記では、上記実施形態が、検査中の移動を伴うことなく、2個の方向検出ホールICの方向検出特性を同時に検査できることのみを説明した。そのため、上記手法では、方向検出ホールIC1a、1bに対して実施された方向検出特性の検査は、磁力線集中領域が特定の一方向に移動した場合のみである。このため、磁力線集中領域が逆方向に移動する場合の方向検出特性の検査を別途実施する必要がある。しかし、この点については、図3、図4(a)に示す搬送ライン33に、2個以上の被検査ホールICが所定の等間隔で搭載されているので、当該搬送ライン33を一方向(ここでは、図3、図4(a)に矢印で示す方向)に搬送して、検査を繰り返すことで極めて容易に解決できる。
【0047】
すなわち、図3、図4(a)に示す例では、方向検出ホールIC1a、1bに対する上述の検査を実施した後、搬送ライン33を1ステップ分だけ移動させる。ここで、1ステップ分の移動とは、方向検出ホールIC1bがある検査位置P2まで方向検出ホールIC1aを移動させて配置すると同時に、方向検出ホールIC1aがある検査位置P1に後続の新たな方向検出ホールIC1を移動させて配置する、搬送ライン33の移動である。
【0048】
そして、当該状態で、上述した方向検出特性の検査を再度実施する。この場合、方向検出ホールIC1aについては、磁力線集中領域がホール素子11aからホール素子15aへ移動する状態についての方向検出特性の検査が実施され、上記新たな方向検出ホールICについては、磁力線集中領域がホール素子15からホール素子11へ移動する状態についての方向検出特性の検査が実施される。このように、移動と測定とが繰り返し実施されることで、両方向への磁力線集中領域の移動に対する検査を実行でき、先の検査結果と合わせることで良否の判定を行うことができる。このように被検査ホールICを順次所定の位置に移動させて検査を行う場合、最初の被検査ホールICの検査では図3における方向検出ホールIC1aの位置でしか検査が実施されないが、それ以降の検査では常に2個の被検査ホールICに対して検査が実施されることになる。
【0049】
ところで、上述の検査装置を使用する検査工程では、検査対象の方向検出ホールICにわずかな改良を加えることで、さらに容易に、方向検出特性の検査を実施することが可能になる。図5は、当該改良を加えた方向検出ホールICの構造を示すブロック図である。なお、図5において、図1に示した方向検出ホールICと同一の作用効果を奏する部位には同一の符号を付し、以下での説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、この方向検出ホールIC5は、図1の方向検出ホールIC1において方向検出回路18の動作を制御するシリアル制御端子51を設けたことが特徴である。シリアル制御端子51は、方向検出回路18の状態をリセットするとともに、方向検出回路18から出力される出力信号レベルを所望の値(L信号またはH信号)に設定する機能を有している。
【0051】
この方向検出ホールIC5に対して上述の方向検出特性検査を実施する場合、当該検査に先だってシリアル制御端子51への制御信号入力により、方向検出特性検査において方向検出ホールIC5が磁力線集中領域の移動を正常に検知することによって方向検出回路18から出力されるべき出力電圧レベル(L信号またはH信号)と逆極性に設定する。すなわち、スイッチ回路19を、正常な検知時に期待される方向検出端子9の出力と逆の状態に設定し、方向検出特性検査を実施する。これにより、磁力線集中領域の移動を互いに逆方向とした検査を連続して行う場合でも、方向検出機能が動作すると方向検出出力の電圧レベル(極性)が必ず反転することになり、検出動作の異常の有無を確実に判定することが可能になる。
【0052】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、方向検出ホールICの方向検出特性検査を、従来に比べて極めて容易に実施できる検査装置を使用した検査工程について説明した。本実施形態では、方向検出特性検査に加えて、磁界検出特性検査を実施することができる検査装置を使用したホールICの検査工程について説明する。
【0053】
図6は、本実施形態による方向検出ホールICの検査工程で使用される検査装置の要部を模式的に示す断面図と、当該断面図に対応する磁束密度強度分布を示す図である。この検査装置の大部分は第1の実施形態において図3および図4を用いて説明した検査装置と同一であるが、上述のように、磁界検出特性の検査も実施できる点が第1の実施形態の検査装置と相違する。なお、図6において、第1の実施形態の検査装置と同一の作用効果を奏する部位には、同一の符号を付している。
【0054】
図6(a)に示すように、この検査装置は、第1の実施形態の検査装置と、搬送ライン62の構造が相違する。すなわち、この検査装置の搬送ライン62は、対向する2つの円形コイル30a、30bの間で、検査対象の方向検出ホールICをその外形で位置を規制する等間隔で設けられた3個の窪みを有している。当該各窪みに検査対象の方向検出ホールICが所定の方向に向けて収容される。ここでは、図5に示した方向検出ホールIC5が検査対象であり、図6(a)では、複数の方向検出ホールIC5として、方向検出ホールIC5a、5b、5cのみを示している。各方向検出ホールIC5a、5b、5c上に設けられたホール素子11a、11b、11c、15a、15b、15cは、それぞれ図5のホール素子11、15と同様の特性を有している。また、以下では、各方向検出ホールIC5a、5b、5cについて図5に示す構成部位を特定する場合には、図5で示した符号に添字a、b、cを付して表現する。
【0055】
なお、ヘルムホルツ・コイル30に対する搬送ライン62の配置は、第1の実施形態と同様である。すなわち、対向する2つの円形コイル30a、30bの間で、両者に平行に、かつ中心軸32と交差する状態で配置されている。また、搬送ライン62は、第1の実施形態と同様、透磁率が1に近いセラミック等からなり、図6(a)に示す矢印の方向に1ステップずつ移動して、複数の方向検出ホールIC5を各検査位置P1、P2、P3へ連続して搬送する。ここで、1ステップの移動とは、図6(a)において、方向検出ホールIC5bがある検査位置P2への方向検出ホールIC5cの移動、方向検出ホールIC5cがある検査位置P3への方向検出ホールIC5aの移動および方向検出ホールIC5aがある検査位置P1への後続の新たな方向検出ホールIC5の移動を、同時に実現する搬送ライン62の移動である。
【0056】
この検査装置の構成では、方向検出ホールIC5a、5bは、第1実施形態と同様に、面32b上の周辺領域、かつ円形コイル30a、30bの中心軸に対して対称となる位置に配置される。また、方向検出ホールIC5cは面32b上の中心領域に配置される。
【0057】
さらに、上記検査装置は、検査対象の方向検出ホールIC5の特性を測定するための検査プローブ34、35、61を備える。検査プローブ34、35、61は、透磁率が1に近い銅等からなり、2つの円形コイル30a、30bの間で、搬送ライン62により搬送される方向検出ホールIC5の各端子に接離可能に配置されている。第1の実施形態と同様に、検査プローブ34、35は、磁界検出端子4、方向検出端子9、電源端子、接地端子にそれぞれ接離するプローブ針を備えていてもよいが、ここでは、検査プローブ34、35は方向検出端子9、電源端子、接地端子にそれぞれ接離するプローブ針を備えている。また、検査プローブ61は、磁界検出端子4、電源端子、接地端子にそれぞれ接離するプローブ針を備えている。
【0058】
検査プローブ34、35、61は、搬送ライン62が移動する際には、方向検出ホールIC5の各端子から離脱しており、搬送ライン62により各方向検出ホールIC5が上記各検査位置に配置された後、各方向検出ホールIC5の各端子に接触する。図6の例では、先行する方向検出ホールIC5b(検査位置P2)に検査プローブ35が接触し、その後続の中央部の方向検出ホールIC5c(検査位置P3)に検査プローブ62が接触し、その後続の方向検出ホールIC5a(検査位置P1)に検査プローブ34が接触する。特に限定されないが、本実施形態では、検査プローブ34、35、61は上下方向に移動することにより、方向検出ホールIC5の各端子との接離を実現している。
【0059】
続いて、上述した構造を有する検査装置を使用した方向検出ホールICの検査手順を説明する。図7は、方向検出ホールICの検査手順を示すフロー図である。
【0060】
まず、搬送ライン62上に検査対象の複数の方向検出ホールIC5が搭載され、搬送ライン62の上記所定方向への移動により、上記検査位置P1、P2、P3に方向検出ホールIC5が配置される。ここでは、図6(a)に示すように、方向検出ホールIC5a、5b、5cが検査位置P1、P2、P3にそれぞれ配置されたとする。
【0061】
当該状態で、各検査位置P1、P2、P3のそれぞれにおいて、対応する検査が同時に実施される。すなわち、検査位置P1では、方向検出ホールIC5aに対し、ホール素子15a側からホール素子11a側への磁力線集中領域の移動を検出する方向検出特性検査が実施される。また、検査位置P2では、方向検出ホールIC5bに対し、ホール素子11b側からホール素子15b側への磁力線集中領域の移動を検出する方向検出特性検査が実施される。さらに、検査位置P3では、方向検出ホールIC5cに対して磁界検出特性検査が実施される。
【0062】
すなわち、検査位置P1、P2、P3のそれぞれに方向検出ホールIC5a、5b、5cが配置されると、各方向検出ホールIC5a、5b、5cに検査プローブ34、35、61が接触する。このとき、ヘルムホルツ・コイル30の発生磁束密度は0(駆動電流0)である。当該状態で、検査位置P1、P2、P3では、各方向検出ホールIC5a、5b、5cと検査プローブ34、35、61との電気的接触が確認される(コンタクト・チェック工程S11、S21、S31)。当該コンタクト・チェックは、例えば、電源端子と接地端子との間に微小な電位差を印加したときに両端子間に電流が流れるか否かや、端子間のダイオード特性等を測定することで、判定することができる。また、検査位置P3では、コンタクト・チェックS31に引き続き、方向検出ホールIC5cのDC検査が行われる(DC検査測定工程S32)。このDC検査では、磁界検出端子リーク測定、出力トランジスタリーク測定、出力トランジスタ飽和電圧測定、消費電流測定等が実施される。ここで、磁界検出端子リーク測定とは、磁界検出出力がオフ状態となる固定の磁束密度が発生された状況下において、ホールIC5cへの電源電圧を印加した状態で、磁界検出端子4cに電圧を印加してリーク電流を確認する検査である。出力トランジスタリーク測定とは、上記リーク測定と同様の条件下で、トランジスタ(スイッチ回路14c)の電源電圧端子と磁界検出端子4cとの間に最大定格電圧を印加し、リーク電流を測定する検査である。出力トランジスタ飽和電圧測定とは、磁界検出出力がオン状態となる固定の磁束密度が発生された状況下において、ホールIC5への電源電圧を印加した状態で、磁界検出端子4cに電流を印加して飽和電圧を確認する検査である。消費電流測定とは、上記出力トランジスタ飽和電圧測定と同様の条件下で、電源電流を確認する検査である。なお、図7に示すように検査位置P3においてDC検査測定工程S32が実施されている間は、検査位置P1、P2では、方向検出ホールIC5a、5bの検査は休止している。
【0063】
検査位置P3におけるDC検査測定工程S32が完了すると、検査位置P1、P2では方向検出特性検査が開始され、検査位置P3では磁界検出特性検査が開始される。まず、検査位置P1、P2では、方向検出特性検査の実施準備のため、ヘルムホルツ・コイル30の発生磁束密度が0の状態で、方向検出ホールIC5a、5bに対し、検査装置が備える図示しない電源装置により電源電圧が印加される。また、このとき、方向検出回路18a、18bのシリアル制御端子51a、51bには、各検査位置P1、P2に対応する方向検出出力の期待値と逆極性になる状態に方向検出回路18a、18bをそれぞれ移行するための制御信号が入力される(方向検出リセット工程S12、S22)。また、同時に、検査位置P3では、磁界検出特性検査の実施準備のため、方向検出ホールIC5cに対する電源電圧の再設定、および磁界検出特性検査工程における設定磁束密度の確認等が行われる(条件設定工程S33)。
【0064】
方向検出リセット工程S12、S22および条件設定工程S33が完了すると、ヘルムホルツ・コイル30が通電され、磁場が生成される。そして、検査位置P1、P2において方向検出ホールIC5a、5bに対する方向検出特性検査が実施され(方向検出特性検査工程S13、S23)、同時に、検査位置P3において方向検出ホールIC5cに対する磁界検出特性検査が実施される(磁界検出特性工程S34)。なお、方向検出ホールIC5a、5bの方向検出端子9a、9bに対するリーク測定、出力トランジスタ19a、19bのリーク測定、出力トランジスタ19a、19bの飽和電圧等のDC検査測定が必要な場合は、上記コンタクト・チェック工程S11、S21において、方向検出ホールIC5a、5bのシリアル制御端子51a、51bを介して方向検出端子9a、9bの極性を切替え、検査位置P1、P2において実施することも可能である。
【0065】
また、このとき、ヘルムホルツ・コイル30の駆動回路では、ヘルムホルツ・コイル30が発生する磁場の磁束密度の大きさを変化させる制御(スイープ)が実施される。図8は、当該ヘルムホルツ・コイル30の磁束密度のスイープ制御方法を説明する図である。図8(a)は、中心領域と周辺領域とにおける磁束密度の時間変化を示す図である。また、図8(b)は、検査位置P3での検査における磁界検出出力、および検査位置P1、P2での検査における方向検出出力を示す図である。なお、図8において、横軸は時間に対応する。
【0066】
図8(a)の特性81、82に示すように、本実施形態では、ヘルムホルツ・コイル30の磁束密度のスイープ制御は、基本的にはヘルムホルツ・コイル30を正弦波状の電流で駆動することで実現される。この場合、図8に示すように、ヘルムホルツ・コイル30の中心領域(例えば検査位置P3;特性81)と周辺領域(例えば検査位置P1、P2;特性82)とにおいて、磁束密度の大きさに差異はあるが、各位置における磁束密度の時間的変化率は等しくなる。
【0067】
このとき、検査位置P3における、方向検出ホールIC5cに対する磁界検出特性検査では、検査が開始され、ヘルムホルツ・コイル30内部の磁束密度が0から次第にプラス極性に増加すると、方向検出ホールIC5cのチップ上に設けられたホール素子11cを貫通する磁束密度の大きさがシュミット・トリガ回路13cのプラス極性側の閾値に対応する大きさL1に到達し、図8(b)の特性83に示すように磁界検出出力がオン状態になる。時間がさらに経過し、磁束密度が0を通過してマイナス極性方向に増加すると、今度はホール素子11cを貫通する磁束密度の大きさがシュミット・トリガ回路13cのマイナス極性側の閾値L2に対応する大きさに到達し、図8(b)の特性83に示すように磁界検出出力はオフ状態になる。また、本発明において採用したヘルムホルツ・コイル30は、中心領域に発生する磁束密度の再現性に優れており、このような磁界検出特性検査には好適である。なお、上記説明ではシュミット・トリガ回路の閾値がプラス極性側とマイナス極性側とに設定されたホールICに適用した場合を述べたが、シュミット・トリガ回路の2つの閾値が同一極性の範囲内に設定されたホールICに対する検査にも同様に適用可能である。
【0068】
一方、検査位置P1、P2における、方向検出ホールIC5a、IC5bに対する方向検出特性検査では、検査が開始され、ヘルムホルツ・コイル30内部の磁束密度が0から次第にプラス極性に増加すると、ヘルムホルツ・コイル30の中心軸32に近い一方のホール素子(方向検出ホールIC5aのホール素子15aと方向検出ホールIC5bのホール素子11b)を貫通する磁束密度の大きさがシュミット・トリガ回路17a、13bのプラス極性側の閾値に対応する大きさL1に到達する。続いて、他方のホール素子(方向検出ホールIC5aのホール素子11aと方向検出ホールIC5bのホール素子15b)を貫通する磁束密度が図6に示す大きさΔBに対応する分だけ遅れてシュミット・トリガ回路13a、17bのプラス極性側の閾値に対応する大きさL1に到達する。このとき、各ホール素子に接続されるシュミット・トリガ回路13a、17a(あるいは、13b、17b)の動作の順序が確定して、各方向検出ホールIC5a、5bの方向検出回路18により方向検出が行われ、検出結果が方向検出端子9a、9bから出力される。上述のように、方向検出リセット工程S12、S22において、各方向検出ホールIC5a、5bの方向検出端子9a、9bの出力は、当該方向検出特性検査において出力が期待される電位レベルと逆の電位レベルに設定されている。このため、検出動作の異常の有無を確実に判定することができる。
【0069】
以上、本実施形態の検査装置を用いた検査工程では、方向検出ホールIC5a、5bに対する、互いに異なる方向の方向検出特性検査と、方向検出ホールIC5cに対する磁界検出特性検査を同時に実施可能できることを説明したが、各検査位置P1、P2、P3における上述の各検査が完了した後の、搬送ライン62の上述の1ステップの移動と、移動後に各検査位置P1、P2、P3にある各方向検出ホールICに対する上述の各検査とを繰り返し実施することで、1個の方向検出ホールICに対して2種の方向検出特性検査および磁界検出特性検査の全てを実施することができる。
【0070】
図9は、検査位置P1、P2、P3に設置される検査対象の各方向検出ホールICと、検査サイクルとの関係を示す模式図である。第1の検査サイクルC1では、3つの方向検出ホールIC(a、b、c)が搬送ライン62によりそれぞれ検査位置P1、P3、P2に設置され、それぞれの位置に対応する検査が実施される。第1の検査サイクルC1が完了すると、第2の検査サイクルC2では、搬送ライン62の移動により、新たな方向検出ホールIC(d)が検査位置P1に設置され、方向検出ホールIC(a)が検査位置P3に設置され、ホールIC(b)が検査位置P2に設置されて、それぞれの検査位置に対応する検査が実施される。さらに、第2の検査サイクルC2が完了すると、第3の検査サイクルC3では、搬送ライン62の移動により、新たな方向検出ホールIC(e)が検査位置P1に設置され、方向検出ホールIC(d)が検査位置P3に設置され、ホールIC(a)が検査位置P2に設置されて、それぞれの検査位置に対応する検査が実施される。このように、各方向検査ホールIC(例えば、a)に対し、3回の検査サイクルC1、C2、C3を経ることで全ての検査が行われることが理解できる。したがって、検査位置P1における第1の方向検出特性検査、検査位置P2における磁界検出特性検査、検査位置P3における第2の方向検出特性検査の各検査結果を合成して良否判定を実施することで、各方向検査ホールICの良否判定を行うことができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の検査装置を使用した検査工程は、単一の環状ヘルムホルツ・コイル30の内部に3個の方向検出ホールICを設置することで、単一の磁束密度スイープ期間に、各方向検出ホールICに対し種類の異なる検査(磁界検出特性検査、互いに方向が異なる方向検出特性検査)を同時に実施することができる。そのため、従来と比較して方向検出ホールICの検査工程の生産性を向上させることができる。方向検出ホールICの生産コストを低減することができる。なお、上述の検査装置では、方向検出の機能を有しないホールICであっても、検査位置P3において磁界検出特性検査を実施することができ、検査設備を共用することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1および第2の実施形態に比べて、検査工程のスループットをより向上させることができる検査装置の構成について説明する。
【0073】
図10は、本発明の第3の実施形態による方向検出ホールICの検査工程で使用される検査装置の要部を模式的に示す平面図であり、図11は当該検査装置の要部を模式的に示す断面図と、当該断面図に対応する磁束密度強度分布を示す図である。なお、図11(a)、図11(b)は、図10に示すB−B線における断面に対応している。なお、本実施形態の検査装置は、ヘルムホルツ・コイルの形状と搬送ラインの形状が第2の実施形態と大きく相違するが測定原理は第2の実施形態と同様である。
【0074】
図10および図11(a)に示すように、本実施形態の検査装置が備えるヘルムホルツ・コイル100は、全てが同一サイズを有する2つの正方形の環状コイル100a、100bにより構成されている。各環状コイル100a、100bは、正方形(矩形)の対角線の交点で定義される正方形の中心点102aを通る、正方形を含む面に垂直な中心軸102が同軸に配置されるとともに正方形の各頂点が重なる状態で配置される。各環状コイル100a、100bは、正方形の1辺の1/2に相当する距離をおいて対向して平行に配置されている。当該2つの環状コイル100a、100bは同一方向の磁場を形成する状態で直列に接続されており、電流を印加すると両コイル100a、100b間の中心部の広い範囲にわたって均一な磁束密度を有する磁場を発生できるという特徴を有している。ここで、中心部とは、図10に示すように中心軸102を中心点とするほぼ正方形で近似される領域103である。
【0075】
ヘルムホルツ・コイル100に駆動電流を印加すると、環状コイル100a、100b間においてその間隔の1/2距離にある平面102bにおける磁束密度の強度分布は図11(b)に示す磁束密度強度分布104のようになる。なお、図11(b)に示す磁束密度強度分布104は、環状コイル100a、100bが、環状コイル100aからコイル100bに向かう方向に磁界を発生させた場合について示している。また、このような磁束密度の分布はB−B線方向だけでなく環状コイル100a、100bの一辺を平行な任意の直線方向に沿っても同様な分布になっている。
【0076】
図10、図11(a)に示すように、この検査装置の搬送ライン105は、第1および第2の実施形態と同様である。すなわち、対向する2つの環状コイル100a、100bの間で、両者に平行に、かつ中心軸102と交差する状態で配置されている。また、搬送ライン105は、第1および第2の実施形態と同様、透磁率が1に近いセラミック等からなり、図10(a)に示す矢印の方向に1ステップずつ移動して、複数の方向検出ホールICの各検査位置へ連続して搬送する。
【0077】
また、搬送ライン105は、第2の実施形態と同様に、検査位置P3(中心領域)および検査位置P1、P2(周辺領域)に検査対象の方向検出ホールICをその外形で位置を規制する等間隔で設けられた窪みを有している。そして上記第2の実施形態の搬送ライン62と大きく相違する点は、検査位置P1、P2、P3にそれぞれにおいて、所定数の方向検出ホールIC群を収容する窪みを有している点である。図10、図11(a)の例では、6個の方向検出ホールICからなる群を収容する6個の窪みが、検査位置P1、P2、P3に対応して搬送ライン105上に等間隔で設けられている。なお、各方向検出ホールICは、各窪みに対して所定の方向を向いて格納される点は、第1および第2の実施形態と同様である。図10(a)では、複数の方向検出ホールIC群として、方向検出ホールIC群10a、10b、10cのみを示している。各方向検出ホールIC群に属する方向検出ホールIC上に設けられたホール素子は、それぞれ図1や図5のホール素子11、15と同様の特性を有している。
【0078】
また、図11(a)に示すように、上記検査装置は、検査対象の方向検出ホールIC群10a、10b、10cの特性を測定するための検査プローブ134、135、161を備える。検査プローブ134、135、161は、透磁率が1に近い銅等からなる。各検査プローブ134、135、161は、第2の実施形態で説明した検査プローブ34、35、61が、方向検出ホールIC群に属する方向検出ホールIC数および配置に応じて複数配列された構成を有している。特に限定されないが、本実施形態でも、検査プローブ134、135、161は上下方向に移動することにより、方向検出ホールICの各端子との接離を実現している。
【0079】
さて、本実施形態の検査装置は、ヘルムホルツ・コイル100が環状の正方形の形状を有するため、ヘルムホルツ・コイル100内の中心領域(検査位置P3)に形成される磁束密度が均一な領域103の面積を円形コイルの場合よりも拡大することができる。また、方向検出特性検査を実施するための周辺領域(検査位置P1、P2)において、磁束密度が搬送ライン105の移動方向B−B線に対して一定の勾配を有する領域を、搬送ライン105の移動方向と垂直な方向の正方形の一辺に沿って拡大することができる。したがって、搬送ライン105上に被検査ホールICを複数個からなる群として搭載し、各検査位置において、複数個の方向検出ホールICの検査を同時に行うことができる。
【0080】
この検査装置を用いる検査方法は上記第2の実施形態において、図6に示す方向検出ホールIC5a、5b、5cを複数個の方向検出ホールICからなる方向検出ホールIC群10a、10b、10cに置き換えたものと実質的に同一であるので、ここでの説明を省略する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の検査装置を使用した検査工程は、複数個の方向検出ホールICからなる複数の方向検出ホールIC群に対し、単一の磁束密度スイープ期間に、種類の異なる検査(磁界検出特性検査、互いに方向が異なる方向検出特性検査)を同時に実施することができる。そのため、第2の実施形態と比較して方向検出ホールICの検査工程の生産性をさらに向上させることができる。したがって、方向検出ホールICを生産コストをより低減することができる。なお、上述の検査装置では、方向検出の機能を有しないホールICであっても、検査位置P3において磁界検出特性検査を実施することができ、検査設備を共用することができる。
【0082】
本発明は、ヘルムホルツ・コイルにより形成される磁束密度勾配を有する磁場を利用して方向検出特性検査を実施することで、従来に比べて、方向検出ホールICの検査工程における搬送回数を削減でき、搬送機構とシーケンスを簡素化することができる。その結果、設備費用を低減できるとともに、検査時間を短く抑えることで生産性を向上させることができ、ホールICの生産コストを低減することができる。
【0083】
なお、以上で説明した実施形態は、本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載した以外でも、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形や応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、磁界の方向検出機能を有するホールICの生産性向上と設備費用削減という効果を奏し、ホールICの製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】方向検出ホールICの構成を示すブロック図
【図2】方向検出ホールICの動作を説明するための概念図
【図3】本発明の第1の実施形態における検査工程で使用される検査装置の要部構成を模式的に示す平面図
【図4】本発明の第1の実施形態における検査工程で使用される検査装置の要部構成を模式的に示す断面図
【図5】改良した方向検出ホールICの構成を示すブロック図
【図6】本発明の第2の実施形態における検査工程で使用される検査装置の要部構成を模式的に示す断面図
【図7】本発明の第2の実施形態における検査フローを示すフロー図
【図8】ヘルムホルツ・コイルの発生磁束密度スイープを説明する模式図
【図9】各検査位置に設置される方向検出ホールICと検査サイクルとの関係を示す模式図
【図10】本発明の第3の実施形態における検査工程で使用される検査装置の要部構成を模式的に示す平面図
【図11】本発明の第3の実施形態における検査工程で使用される検査装置の要部構成を模式的に示す断面図
【図12】従来のホールIC検査装置を模式的に示す要部断面図
【符号の説明】
【0086】
1、1a、1b 方向検出ホールIC
4 磁界検出端子
5、5a、5b、5c 方向検出ホールIC
9 方向検出端子
10a、10b、10c 方向検出ホールIC群
11、15 ホール素子
12、16 増幅器
13、17 シュミット・トリガ回路
14、19 スイッチ回路
18 方向検出回路
20 回転体
24 磁力線
25 回転軸
30 ヘルムホルツ・コイル
30a、30b ヘルムホルツ・コイルを構成するコイル
32、102 コイルの中心軸
33、62、105 搬送ライン
34、35、61、134、135、161 検査プローブ
51 シリアル制御端子
100 正方形のヘルムホルツ・コイル
101a、101b 正方形のヘルムホルツ・コイルを構成するコイル
103 均一磁束密度領域
121 ホールIC
122 鉄心
123 巻線
124 電流源
125 エアギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状の2個の環状コイルを、各環状コイルが含まれる面を対向させて構成されたヘルムホルツ・コイルが発生する磁界内に、一方向に並べられた少なくとも2個のホール素子を有するホールICを設置し、前記ホールICの特性を検査する検査工程を含むホールICの製造方法であって、
前記ヘルムホルツ・コイルが、前記環状コイル間に挟まれた空間内の周辺領域において、前記空間の中央領域から離れるにしたがって磁束密度が減少する磁束密度勾配を有する磁界を通電により発生させるとともに、前記ホールICが、磁束密度の大きい磁力線集中領域が前記2個のホール素子のうちの一方側から他方側へ移動する際に、前記一方側のホール素子における磁束密度が先に増加したことを検知して、前記磁力線集中領域の移動方向を検出する方向検出機能を有し、
前記検査工程が、
少なくとも2個の前記ホールICを前記空間内の周辺領域に設置する第1工程と、
前記ヘルムホルツ・コイルに通電して前記空間内に磁界を発生させるとともに当該磁界による磁束密度を変動させて、前記少なくとも2個の前記ホールICの方向検出特性を測定する第2工程と
を含むことを特徴とするホールICの製造方法。
【請求項2】
前記2個のホールICは、前記少なくとも2個のホール素子が並べられた方向に前記磁束密度勾配が生じ、かつ前記環状コイル間の空間の中央領域に含まれる所定の点に対して対称な位置に設置されることを特徴とする請求項1記載のホールICの製造方法。
【請求項3】
前記検査工程が、
前記第2工程の後、前記2個のホールICのうちの一方を、他方のホールICが設置されていた位置に設置するとともに、前記一方のホールICが設置されていた位置に新たなホールICを設置する第3工程と、
前記第3工程の後、前記ヘルムホルツ・コイルに通電して前記空間内に磁界を発生させるとともに当該磁界による磁束密度を変動させて、前記一方のホールICと前記新たなホールICの方向検出特性を測定する第4工程と、
をさらに含み、
前記第3工程と第4工程とを繰り返し実施することによって、複数のホールICを順次検査することを特徴とする請求項1または2記載のホールICの製造方法。
【請求項4】
前記ホールICが、当該ホールICが有するホール素子を貫通する所定の大きさの磁束密度を検知する磁界検出機能をさらに有し、
前記第1工程において、少なくとも2個のホールICの間の、前記空間の中央領域に少なくとも1個のホールICがさらに設置され、前記第2工程において、前記空間の中央領域に設置されたホールICの磁界検出特性が前記方向検出特性と同時に測定されることを特徴とする請求項1、2記載のホールICの製造方法。
【請求項5】
前記検査工程が、
前記第2工程の後、前記周辺領域の2個のホールICのうちの一方を、前記中央領域のホールICが設置されていた位置に設置し、かつ前記中央領域に設置されていたホールICを周辺領域の他方のホールICが設置されていた位置に設置し、前記一方のホールICが設置されていた位置に新たなホールICを設置する第3工程と、
前記第3工程の後、前記ヘルムホルツ・コイルに通電して前記空間内に磁界を発生させるとともに当該磁界による磁束密度を変動させて、前記中央領域に設置されていたホールICと前記新たなホールICの方向検出特性を測定するとともに、前記一方のホールICの磁界検出特性を測定する第4工程と、
をさらに含み、
前記第3工程と第4工程とを繰り返し実施することによって、複数のホールICを順次検査することを特徴とする請求項4記載のホールICの製造方法。
【請求項6】
前記ホールICが、検出した前記磁力線集中領域の移動方向に応じて互いに異なる2種の信号のいずれかを出力する構成であり、
前記第2工程において方向検出特性が測定されるホールICに対して、当該第2工程の直前に、当該第2工程において当該ホールICに対して期待される出力信号とは異なる信号を出力する状態に当該ホールICを設定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のホールICの製造方法。
【請求項7】
前記ホールICの各設置位置に、複数のホールICからなるホールIC群が設置され、当該ホールIC群に属する各ホールICに、それぞれの設置位置に対応する検査が実施されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のホールICの製造方法。
【請求項8】
前記ヘルムホルツ・コイルを構成する環状コイルの外形が正方形であることを特徴とする請求項7記載のホールICの製造方法。
【請求項9】
同一のホールICに対する異なる位置での測定結果に基づいて、当該ホールICの良否判定を行うことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のホールICの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−216860(P2010−216860A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61397(P2009−61397)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】