説明

ボイスコイルモータ駆動回路および磁気ディスク記憶装置

【課題】 トラッキング時における磁気ヘッドの位置決め制御の高精度化とシーク時間の短縮によるアクセスの高速化を同時に達成可能にするボイスコイルモータの駆動制御技術を提供する。
【解決手段】 磁気ヘッドを移動させるボイスコイルモータ(108)と、該ボイスコイルモータの駆動電流をPWM方式で駆動しコイルの電流を検出してフィードバック制御することにより上記磁気ヘッドの位置決め制御を行なうボイスコイルモータ駆動回路(110)とを有する磁気ディスク記憶装置において、上記ボイスコイルモータのコイル電流を検出するアンプ(113)の出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプ(114)に供給する。また、PWM駆動時にボイスコイルモータのコイルの端子に印加される駆動電圧のスルーレートを制御する回路(PWMコンパレータ)を設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク記憶装置の制御技術、さらには、回転駆動される磁気記憶ディスク上の記憶トラックに対して情報のリード/ライトを行なう磁気ヘッドを移動させるボイスコイルモータの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク記憶装置は、回転駆動される磁気記憶ディスク上の記憶トラックに対して情報のリード/ライトを行なう磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを上記ディスク上にて移動させるボイスコイルモータと、上記磁気ヘッドのリード状態を監視しながら上記ボイスコイルモータの駆動電流を制御することにより上記磁気ヘッドの位置決めを行なうボイスコイルモータ駆動制御装置を有する。
【0003】
磁気ディスク記憶装置の情報記憶密度は年々高められているが、これに伴って磁気ヘッドの位置決め制御も非常に高精度が要求されるようになってきた。そこで、上記ボイスコイルモータの駆動電流を当該駆動電流の検出値に基づいてフィードバック制御することにより上記磁気ヘッドの位置決めを行なう。そして、その磁気ヘッドを移動させるボイスコイルモータの駆動には、一般に、ボイスコイルモータの駆動電流量を連続的に変化させるリニア駆動方式が採用されていた。
【0004】
しかしながら、磁気ディスク記憶装置では記憶の高密度化とともにアクセスの高速化も要求されている。高速アクセスを実現するためには磁気ヘッドを所定の記憶トラックまで移動させる時間いわゆるシーク時間を短縮させなければならないが、そのためにはボイスコイルモータの駆動電流を増大させる必要がある。しかし、ボイスコイルモータ駆動電流を増大させると、その駆動電流をリニアに制御するための電力損失が増大し、これに伴って発熱量が増大する。このシーク時の発熱は磁気ヘッドや磁気記憶ディスクの動作や特性等に悪影響を及ぼし、これにより、例えばリード/ライトエラーが生じやすくなるなどの弊害が生じる。
【0005】
そこで、上記ボイスコイルモータ駆動電流の量を連続的に変化させる代わりに、駆動電流の通電/非通電時間比を変化させるパルス幅変調制御(以下、PWM制御と呼ぶ)を行なうパルス駆動方式を適用したボイスコイルモータ駆動装置に関する発明が提案されている(特許文献1)。また、このPWM駆動方式において用いられる電流検出用アンプの持つCMRR(同相入力電圧除去比)が有限の値であるため、負荷であるコイルの端子に印加される駆動電圧が上下に変動する際に電流検出用アンプの出力にノイズが発生するという課題がある。そこで、この課題を改善するため、PWM駆動の1周期の中間点でコイルに流れる電流をサンプル・ホールドして電流検出を行なうようにした発明が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかし、PWM駆動方式は電力損失の低減による発熱量抑制に有効であるが、サンプル・ホールドして電流検出を行なうようにしたとしても、リニア駆動方式に比べて磁気ヘッドの移動量が小さいトラッキング時での磁気ヘッドの位置決め精度を十分に保証することが難しいという課題がある。そこで、位置決め制御精度が気にならないシーク動作時にはPWM駆動を行ない、高い位置決め精度が要求されるトラッキング時にはボイスコイルモータをリニア制御で駆動するようにした発明が提案されている(特許文献3)。
【0007】
また、PWM駆動方式には、駆動電圧をパルス制御することに伴って生じるEMI(電磁干渉)ノイズが磁気ヘッドや配線に飛び込むなどして、位置情報のリードエラーを誘発しトラッキングミスが生じるおそれが高くなるという不具合がある。これを改善するため、シーク時にPWM駆動を行なう際に、コイルの一方の端子をPWM駆動し、他方の端子をリニア駆動することで、EMIノイズの低減を図るようにした発明も提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】米国特許第5917720号
【特許文献2】米国特許第6061258号
【特許文献3】特開2002−358742号公報
【特許文献4】特開2003−052194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載の発明も特許文献4に記載の発明も、電流検出にサンプル・ホールド方式を用いているため、サンプリングタイミングのずれによる電流検出誤差が発生するという不具合がある。また、ボイスコイルモータ駆動回路とPWM駆動方式のスピンドルモータ駆動回路とが同一の半導体チップ上に形成されるような場合、ボイスコイルモータ駆動回路におけるPWM駆動のサンプリングの際にスピンドルモータ駆動回路のノイズを拾って電流検出誤差が発生してしまい、位置決め精度の低下を招く。
【0009】
具体的には、図10に符号T2で示されているように、サンプリングクロックSCKのタイミングと例えばスピンドルモータ駆動回路のU相の立ち上がりのタイミングが一致すると、ホールド後の電流センスアンプの出力が高くなってしまう。その結果、ボイスコイルモータのコイル電流Ivcmが、図10(E)のように不定期変動を起こす。図10の場合、タイミングT1では、サンプリングクロックSCKのタイミングとU相の立ち上がり、立ち下がりのタイミングが一致していないため、Ivcmは不定期変動を起こさない。
【0010】
さらに、サンプリングタイミングの遅延によって、図11(A)のように、PWM駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性とリニア駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性とがずれてしまう。図11(A)において、符号AはPWM駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性、符号Bはリニア駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性である。図11(A)より、PWM駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性は、35kHz付近にゲインピークを有することが分かる。このような周波数特性のずれがあると、シーク時のPWM駆動からトラッキング時のリニア駆動に切り替える際のセトリングタイムが長くなるという不具合がある。
【0011】
本発明の目的は、PWM駆動によるヘッド移動時における磁気ヘッドの位置決め制御の高精度化を可能にするボイスコイルモータの駆動制御技術を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、ボイスコイルモータ駆動回路とスピンドルモータ駆動回路とが同一の半導体チップ上に形成されるような場合にも、磁気ヘッドの位置決め制御の高精度化を可能にするボイスコイルモータの駆動制御技術を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、シーク時にPWM駆動を行ないトラッキング時にリニア駆動を行なう場合に、駆動モードを切り替える際のセトリングタイムが長くならないようにすることが可能なボイスコイルモータの駆動制御技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と特徴は、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、磁気ヘッドを移動させるボイスコイルモータと、該ボイスコイルモータの駆動電流をPWM方式で駆動しコイルの電流を検出してフィードバック制御することにより上記磁気ヘッドの位置決め制御を行なうボイスコイルモータ駆動回路とを有する磁気ディスク記憶装置において、上記ボイスコイルモータのコイル電流を検出するアンプの出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプに供給する。また、PWM駆動時にボイスコイルモータのコイルの端子に印加される駆動電圧のスルーレートを制御するスルーレート制御回路を設けるようにした。
【0015】
上記した手段によれば、コイル電流を検出するアンプの出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプに供給するため、サンプリングタイミングのずれによる電流検出誤差が発生するおそれがない。また、ボイスコイルモータ駆動回路とPWM駆動方式のスピンドルモータ駆動回路とが同一の半導体チップ上に形成されるような場合にも、ボイスコイルモータ駆動回路におけるPWM駆動のサンプリングの際にスピンドルモータ駆動回路のノイズを拾ってホールドすることが無いので電流検出誤差が発生することもない。そのため、磁気ヘッドの位置決め制御精度を向上させることができる。一方、サンプル・ホールドしないことにより、PWM駆動時にコイル端子電圧のスイングによって電流検出用アンプの出力に変動が生じ、その変動によって制御精度が低下するおそれがあるが、これは、スルーレート制御によって抑制することができる。
【0016】
ここで、望ましくは、ボイスコイルモータのコイルの一方の端子をPWM制御で駆動し他方の端子をリニア制御で駆動する第2の駆動モードを設け、この第2の駆動モードでは前記コイルの2つの端子のうち電流検出用抵抗に近い側の端子をリニア駆動する。これにより、2つの端子の両方をリニア駆動する場合よりも少ない電力損失でヘッドを高速で移動させることができるとともに、2つの端子の両方をPWM制御で駆動する場合よりもノイズの発生を抑えつつヘッドを移動させることができる。また、コイルの2つの端子のうち電流検出用抵抗に近い側の端子をリニア駆動するため、逆の場合よりもPWM駆動時にコイル端子電圧がスイングされることによって生じる電流検出用アンプの出力の変動を減らし、ヘッドの位置決め制御精度を向上させることができる。
【0017】
また、ボイスコイルモータのコイルの両端をPWM制御で駆動する駆動モードを有する磁気ディスク記憶装置において、コイル電流を検出するアンプの出力と電流指令値とに基づいてコイルに流す電流を制御する電圧を生成する誤差アンプの後段に直列の抵抗と容量とからなる位相補償回路を設ける。そして、この位相補償回路の前記直列の抵抗および容量と並列に第2の容量を接続する。これにより、PWM駆動でコイル電流検出用アンプの出力に生じるノイズによって誤差アンプの出力に現われる変動を抑制し、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0018】
さらに、望ましくは、ボイスコイルモータのコイルの両端をパルス幅制御で駆動するモード(第1の駆動モード)と、上記コイルの両端をリニア制御で駆動するモード(第2の駆動モード)とを設け、ボイスコイルモータのコイル電流を検出するアンプの出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプに供給するとともに、磁気ヘッドのシーク動作は第1の駆動モードで行ない、トラッキング動作は第2の駆動モードで行なうようにする。
【0019】
上記した手段によれば、コイル電流を検出するアンプの出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプに供給するため、サンプリングタイミングの遅延により、PWM駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性とリニア駆動時の電流検出用アンプのゲイン周波数特性とがずれてしまうようなことがない。これにより、シーク時のPWM駆動からトラッキング時のリニア駆動に切り替える際のセトリングタイムが長くなるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、PWM駆動によるヘッド移動時における磁気ヘッドの位置決め制御の高精度化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施態様を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の技術が適用された磁気ディスク記憶装置の概要を示す。
同図に示す磁気ディスク記憶装置は、磁気記憶ディスク100、該磁気記憶ディスク100を回転駆動させるスピンドルモータ102、上記磁気記憶ディスク100上の記憶トラックに対して情報のリード/ライトを行なう磁気ヘッド106、この磁気ヘッド106を上記ディスク100上にて径方向へ移動させるボイスコイルモータ108を有する。さらに、磁気ディスク記憶装置は、上記ボイスコイルモータ108を駆動するモータ駆動回路110、上記磁気ヘッド106の読出信号から位置情報を読み取る信号処理回路(信号処理IC)230、この信号処理回路230が読み出した位置情報に基づいて上記モータ駆動回路110に駆動電流指令値CRNTを送るコントローラ260などを有する。特に制限されるものでないが、この実施例では、モータ駆動回路110は1個の半導体チップ上に半導体集積回路として構成されている。
【0022】
ここで、コントローラ260は、磁気ディスク記憶装置全体の動作を制御するマイクロコンピュータ(CPU)261と、このマイクロコンピュータ261からの位置指令(目標トラック位置情報)と上記信号処理回路230からのヘッド位置情報とに基づいて駆動電流指令値CRNTを生成する補償回路262を有する。この補償回路262が生成した駆動電流指令値CRNTは、上述したように、上記モータ駆動回路110へ送られる。
【0023】
モータ駆動回路110は、図2に示されているように、コントローラ260との間でシリアルにデータの送受信ないしは入出力を行なうシリアルポート111と、PWM駆動に必要な三角波を生成する三角波生成回路112を有する。ボイスコイルモータ108は、コイルのインダクタンスLと内部抵抗RLとにより等価回路として表わされている。
【0024】
また、モータ駆動回路110は、ボイスコイルモータ108のコイルLvcmに流される電流を検出する電流検出回路113と、コントローラ260から送られてくる駆動電流指令値CRNTに応じた入力電圧VCMINとPWM動作中において連続的に検出される電流検出回路113の検出電圧Soutとの差分を比較して電位差に応じた電圧を出力する誤差アンプ114を有する。駆動電流指令値CRNTがアナログ信号である場合、CRNT=VCMINであり、CRNTがディジタル信号である場合、VCMINはCRNTをD/A変換した値を用いる。
【0025】
電流検出回路113は、差動アンプ(以下、電流センスアンプと称する)AMP0と入力抵抗R3,R5、帰還抵抗R6などからなり、コイルLvcmと直列に設けられたセンス抵抗Rsの両端子の電圧を入力とし、端子間電圧を検出することにより電流に比例した検出電圧Soutを出力する。この検出電圧Soutは、図に示されている矢印方向(VCMPからVCMNへ向かう方向)に電流が流れているときにVrefを基準とする負電圧となり、矢印と逆方向(VCMNからVCMPへ向かう方向)に電流が流れているときに正電圧となるようにされている。これにより、抵抗R1,R2を介して入力電圧VCMINと加算されたとき、VCMINとSoutとの差分が誤差アンプ114に入力され、Vrefと比較される。
【0026】
さらに、モータ駆動回路110は、上記誤差アンプ114の出力と三角波生成回路112により生成された三角波TRWとを比較してPWMパルス駆動のための電流を出力するパルス制御回路115と、上記誤差アンプ114の出力とパルス制御回路115の出力電流に従ってボイスコイルモータ108に駆動電流を流すVCMドライバ116を有する。
【0027】
また、モータ駆動回路110には、上記の他に、コントローラ260からシリアルポート111に送られて来た制御コードに基づいて生成されたモード制御信号MODEをラッチするフリップフロップ117が設けられている。さらに、該モード制御信号MODEと片側PWM駆動を行なうか否か示す第2モード制御信号SGLPWMとを入力とするANDゲート118、誤差アンプ114の後段に接続された位相補償回路119などが設けられている。位相補償回路119は、直列の抵抗Rxと容量Cxおよびこれらと並列に設けられた容量Cx2とからなり、これらの素子には外付け素子が用いられている。
【0028】
なお、コントローラ260から上記駆動電流指令値がディジタル信号として送られてくる場合、モータ駆動回路110にはディジタル駆動電流指令値をアナログ駆動電流指令値に変換するD/A変換器が設けられる。また、モータ駆動回路110は、ボイスコイルモータ108のコイルに誘起される逆起電圧を検出する逆起電圧検出回路や、該逆起電圧検出回路により検出された逆起電圧をA/D変換するA/D変換回路、上記VCMドライバ116が必要とする基準電圧Vrefを発生する基準電圧発生回路が内蔵される場合もある。A/D変換回路でディジタルデータに変換された逆起電圧は、シリアルポート111を介してコントローラ260へ送り、コントローラ260は受信した逆起電圧からヘッドの移動速度を認識するように構成することができる。
【0029】
特に制限されるものでないが、コントローラ260は移動速度に応じた駆動モードをモータ駆動回路110に指令し、上記VCMドライバ116は、指定された駆動モードに従ってボイスコイルモータ108を駆動する。具体的には、上記磁気ヘッド106の移動量が小さいトラッキング時にはボイスコイルモータ108の駆動電流をリニア制御する「リニア駆動モード」が指定されてVCMドライバ116によりコイルが駆動される。
【0030】
また、上記磁気ヘッド106の移動量が大きいシーク時には、ボイスコイルモータ108のコイルの端子を双方向からPWM駆動する「両側PWM駆動モード」またはコイルの一方の端子をPWM駆動し他方の端子をリニア駆動する「片側PWM駆動モード」が指定される。VCMドライバ116は指定されたモードに応じてコイルを駆動するように構成されている。「両側PWM駆動モード」を使用するか「片側PWM駆動モード」を使用するかは適用するシステムに応じて決定され、コントローラ260がモードを示す情報を出力する。
【0031】
上記各モードの内容については後に詳しく説明する。シリアルポート111には、上記モードを指定する制御コード等を設定するためのレジスタREGが設けられており、コントローラ260がこのレジスタREGにモード指定コードを設定することにより、いずれかのモードが選択できるように構成されている。また、シリアルポート111は、コントローラ260からのロードイネーブル信号Dloadが有効レベルである期間に、シリアルクロックSCKに同期してデータDATAを取り込むように構成されている。
【0032】
モータ駆動回路110が上述のような構成を備えることにより、磁気ヘッド106の移動量が小さいトラッキング時には、ボイスコイルモータの駆動電流がリニア制御されることにより高い位置決め精度を得ることができる。一方、磁気ヘッド106の移動量が大きいシーク時には、「両側PWM駆動モード」が選択されていると、ボイスコイルモータの駆動電流がコイルの両端子からPWM制御されることにより、大きな電力損失を伴うことなく磁気ヘッド106を高速で移動させることができる。また、「片側PWM駆動モード」が選択されていると、ボイスコイルモータの駆動電流がコイルの一方の端子からはPWM制御されるとともに他方の端子からはリニア制御される。これにより、「リニア駆動モード」と「パルス駆動モード」の中間の電力損失でヘッドが高速移動され、ある程度電力損失を抑えつつ高速で磁気ヘッド106を移動させることができる。
【0033】
これにより、リード/ライトエラーを誘発する発熱やEMIを効果的に低減させながら、トラッキング時における磁気ヘッドの位置決め制御の高精度化とシーク時間の短縮によるアクセスの高速化を共に達成することが可能となる。すなわち、上記磁気ヘッド駆動システムにおいては、磁気ヘッド106が所定の記憶トラックをリード/ライト状態でトレースするトラッキング時に「リニア駆動モード」が実行され、上記磁気ヘッド106が記憶トラックを跨いで移動するシーク時に「両側PWM駆動モード」または「片側PWM駆動モード」が実行される。これにより、トラッキング時における磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図りつつ、シーク時におけるアクセスの高速化とEMIノイズの抑制をシステムに応じて最適化させることができる。
【0034】
パルス制御回路115は、基準電圧Vrefを基準に誤差アンプ114の出力VCTLを反転して−VCTLを出力する反転回路150を有する。ここで、反転回路150の出力である−VCTLは、基準電圧Vrefを基準にしてVCTLに対して負極性という意味で「−」が付けられている。例えば、基準電圧Vrefが2Vで、VCTLが2.5Vであれば、−VCTL=1.5Vとなる。パルス制御回路115は、さらに誤差アンプ114の出力VCTLと三角波生成回路112により生成された三角波TRWとを比較してVCMP端子をPWM駆動するための電流を出力する第1PWMコンパレータ151と、反転回路150の出力−VCTLと三角波TRWとを比較してVCMN端子をPWM駆動するための電流を出力する第2PWMコンパレータ152とを有する。
【0035】
第1PWMコンパレータ151および第2PWMコンパレータ152は、非反転入力端子の電位の方が反転入力端子の電位よりも高いときにソース電流を出力し、非反転入力端子の電位の方が反転入力端子の電位よりも低いときにシンク電流(引込み電流)を出力する。このように反転回路150とPWMコンパレータ151,152を設けることにより、一方の出力アンプ161の出力VCMPと他方の出力アンプ162の出力VCMNの位相を180度ずらして、ボイスコイルモータのコイルLvcmを両方の端子から駆動できる。
【0036】
VCMドライバ116は、誤差アンプ114の出力VCTLと第1PWMコンパレータ151の出力を入力とする第1出力アンプ161と、誤差アンプ114の出力VCTLと第2PWMコンパレータ152の出力を入力とする第2出力アンプ162とを有する。この実施例では、上記PWMコンパレータ151と152の出力電流がシリアルポート111内のレジスタREGに設定された値に応じて段階的に変化されることにより、コイルの各端子VCMP,VCMNの駆動電圧のスルーレートが制御可能に構成されている。
【0037】
図3には上記PWMコンパレータ151と152のより具体的な構成が、また、図4には上記VCMドライバ116を構成する出力アンプ161と162のより具体的な構成が示されている。PWMコンパレータ151と152は同一構成、出力アンプ161と162も同一の構成であるので、以下、一方の回路151と161について説明する。
【0038】
図3に示されているように、上記PWMコンパレータ151は、シリアルポート111内のレジスタREGに設定されたNビット(Nは2以上の整数)のスルーレート設定値SRをアナログ電流Idに変換するD/A変換器DAC1を有する。また、PWMコンパレータ151は、D/A変換器DAC1の出力電流Idを電圧に変換するダイオード接続のPチャネルMOSトランジスタM1と、M1とカレントミラー接続されたMOSトランジスタM2,M3を有する。MOSトランジスタM1〜M3はそれぞれ同一サイズとされ、M2,M3にはM1のドレイン電流Idと同一の電流が流されるようになっている。
【0039】
また、PWMコンパレータ151は、上記MOSトランジスタM2と直列に接続されM2からの電流Idを電圧に変換するダイオード接続のNチャネルMOSトランジスタM5と、M5とカレントミラー接続されたMOSトランジスタM6を有する。MOSトランジスタM5とM6はゲート幅が1:2のようなサイズ比となるように形成され、M6にはM5のドレイン電流Idの2倍の電流2Idが流されるようになっている。
【0040】
さらに、PWMコンパレータ151には、上記MOSトランジスタM5と並列に接続されたMOSトランジスタM4と、電圧入力−電圧出力型のコンパレータCMP1が設けられている。前記誤差アンプ114の出力VCTLまたはその反転信号−VCTLがコンパレータCMP1の非反転入力端子に、また三角波生成回路112により生成された三角波TRWがコンパレータCMP1の反転入力端子にそれぞれ入力されている。そして、このコンパレータCMP1の出力が上記MOSトランジスタM4のゲート端子に印加され、M4はコンパレータCMP1の出力に応じてオン状態またはオフ状態にされるように構成されている。
【0041】
これにより、図3のPWMコンパレータ151は、コンパレータCMP1の出力がロウレベルのときはMOSトランジスタM4がオフ状態にされて、M5にM2からの電流Idがそのまま流され、M6にその倍の電流2Idが流される。そのため、トランジスタM3の電流Idとの差分Id−2Id=−Idに相当する電流IpwmPを、M3とM6との接続ノードに結合された出力端子より出力する。
【0042】
ここで、マイナスの電流を出力するということは、電流を引き込むということである。一方、コンパレータCMP1の出力がハイレベルのときはMOSトランジスタM4がオン状態にされてM2からの電流IdがM4に流され、M5およびM6には電流が流れないようにされるため、M3の電流Idとの差分Id−0=Idに相当する電流IpwmPを出力端子へ向かって流す。
【0043】
上記のように、スルーレート設定値SRに応じてよってMOSトランジスタM1に流れる電流Idが段階的に変化されることにより、出力電流IpwmPが段階的に変化可能に構成されている。そして、この出力電流IpwmPが段階的に変化されることにより、PWM駆動の際に出力電圧波形の傾きが制御可能とされ、スルーレートを小さくすることにより電流検出回路113の出力に乗るノイズを低減させることができる。ただし、スルーレートを小さくすると出力MOSトランジスタにおける電力損失が多くなるので、最適なスルーレートはノイズと電力損失のトレードオフにより決定される。そして、その最適な値は、適用されるシステムによって異なる。
【0044】
図4に示されているように、出力アンプ161は、前記誤差アンプ114の出力VCTLと基準電圧VCMREFとの電位差を抵抗R7,R8(図2参照)の比で分圧した電圧Vin(+)と、基準電圧VCMREFとコイル端子VCMPの電圧との電位差を抵抗R9,R10(図2参照)の比で分圧した電圧Vin(-)とを入力とする初段差動アンプAMP1を備える。初段差動アンプAMP1は、Vin(+)とVin(-)の電位差に応じた電流を出力する。
【0045】
また、出力アンプ161は、前記ANDゲート118の出力であるモード制御信号PWM/LINによって制御され、上記初段差動アンプAMP1の出力またはPWMコンパレータ151から出力され出力アンプ161に入力される電流IpwmPのいずれかを選択する切替えスイッチSW1を備える。ここで、切替えスイッチSW1が初段差動アンプAMP1の出力を選択するようにされると、出力アンプ161はリニア駆動を行なう。また、切替えスイッチSW1がPWMコンパレータ151の出力IpwmPを選択するようにされると、出力アンプ161はPWM駆動を行なうこととなる。
【0046】
図4において、M11,M12はボイスコイルモータのコイルの端子をそれぞれ駆動する出力トランジスタで、それぞれNチャネル型MOSFETにより構成されている。この2つの出力トランジスタM11,M12は正側の電源端子と負側の電源端子との間に、チャネルが直列をなすように接続されており、その中間接続点(ノード)から出力(VCMP)を取り出すプッシュプル方式の出力回路(最終段)を構成する。
【0047】
上記切替えスイッチSW1の固定側端子には、エミッタ接地型増幅回路を形成するバイポーラトランジスタQ1のベースが接続されている。このバイポーラトランジスタQ1は、エミッタが抵抗R13を介して接地されるとともに、コレクタが定電流源I1に接続されて、いわゆるエミッタ接地型増幅回路を形成する。また、ベース・コレクタ間には容量C1が接続されている。この容量C1は位相補償を行う積分容量として作用する。
【0048】
スイッチSW1を介して初段差動アンプAMP1の出力電流がトランジスタQ1のベースに入力されると、トランジスタQ1と容量C1によるミラー積分回路によってコレクタ電圧V1が決定される。コレクタ電圧V1は、入力電流の変化に応じてリニアに変化する。つまり、トランジスタQ1は、初段差動アンプAMP1の比較的小信号の出力電流をリニア増幅して電圧信号で出力する。
【0049】
一方、スイッチSW1を介してPWMコンパレータ151の出力電流IpwmPがトランジスタQ1のベースに入力されると、トランジスタQ1と容量C1によるミラー積分回路によってコレクタ電圧V1が決定される。電流IpwmPは、一定値である為、トランジスタQ1のコレクタに現れる電圧V1は、図5に示すように、電源電圧Vccに達するまでほぼ一定の傾き(=Ipwmp/C1 [V/s])で上昇する。そして、このQ1のコレクタ電圧V1は、差動アンプAMP2の非反転入力端子(+)に入力される。
【0050】
差動アンプAMP2は差動電圧入力端子(非反転と反転)と2相電流出力端子(正相と負相)を有するアンプである。この差動アンプAMP2は、Q1のコレクタ電圧V1の変化に応じてほぼ直線的に出力電流が変化するように特性が設定されている。つまり、リニア動作するように構成されている。この差動アンプAMP2の反転入力端子(−)には、回路の出力端子OUTの電圧すなわちコイルの駆動電圧VCMPが抵抗R15を介してフィードバックされている。この差動アンプAMP2とその後段に接続されたアンプAMP3,AMP4および出力トランジスタM1,M2を含めた回路全体は、入力電圧であるコレクタ電圧V1を利得(=1+R15/R14)で増幅し、V1の変化に比例して変化する駆動電圧VCMPを出力するように構成されている。
【0051】
これにより、スイッチSW1がPWMコンパレータからの電流IpwmPを出力アンプに入力させるように切り替えがなされるPWM駆動モードにおいては、前述したようにコンパレータの出力電流IpwmPの電流値がスルーレート設定値SRによってある値に設定されていると、出力電圧VCMPもそのスルーレートに応じた傾きで変化されるようになる。しかも、この実施例では、図3のPWMコンパレータの構成から分かるように、出力電圧VCMPの立ち上がりのスルーレートが変化されると、それに応じて立ち下がりのスルーレートも同じように変化される。これによって、PWM駆動の出力変化時に後述の電流アンプの出力Soutにのるノイズ(図7(B)参照)も、正側と負側で高さがほぼ同一にされ、誤差アンプ114の出力に接続されている外付け容量Cx2によって正側と負側が均一に平滑化される。これは、あるCx2の値に対して平滑後のノイズの大きさを最小にできることを意味している。即ち、駆動電流においてPWM駆動のパルスに同期したノイズの拡大を抑制できる。
【0052】
次に、図4において上記差動アンプAMP2と出力トランジスタM11,M12との間に設けられているバッファ・アンプAMP3,AMP4を含む回路部分について説明する。
図4に示されているように、差動アンプAMP2の正相出力(+)はバッファ・アンプAMP3の非反転入力端子に入力される。このバッファ・アンプAMP3の出力電圧は出力トランジスタM11のゲートに印加される。バッファ・アンプAMP3は、その出力電圧が自分の反転入力端子にフィードバックされることにより、ボルテージフォロワとして動作する。このようなバッファ・アンプを設けているのは、出力トランジスタM11はそのサイズが大きいのでゲート容量も大きく、所望の特性を保持したまま差動アンプAMP2の出力でM11を直接駆動するには駆動力が足りなくなるためである。
【0053】
また、この実施例においては、差動アンプAMP2の正相側出力端子とボイスコイルモータのコイルが接続される出力端子OUTとの間、つまりバッファ・アンプAMP3の入力と出力端子OUTとの間に、抵抗R11とMOSトランジスタM15が直列に接続されている。そして、MOSトランジスタM15のソース側が出力端子OUTに接続され、ドレイン側は抵抗R11を直列に介してバッファ・アンプAMP3の入力に接続され、ゲートはバッファ・アンプAMP3の入力に接続されている。
【0054】
バッファ・アンプAMP3はボルテージフォロワとして動作するので、MOSトランジスタM15のゲートと出力トランジスタM11のゲートに印加される電圧は同一となる。これにより、M11とM15はカレントミラー回路を構成する。従って、MOSトランジスタM11とM15のサイズ比をNとすると、出力トランジスタM11はM15のドレイン電流のN倍の電流を流すように駆動される。
【0055】
同様にして、差動アンプAMP2の負相出力(−)がバッファ・アンプAMP4の非反転入力端子に入力され、このアンプAMP4の出力電圧が出力トランジスタM12のゲートに印加されるようになっている。バッファ・アンプAMP4はその出力電圧が自分の反転入力端子にフィードバックされることにより、ボルテージフォロワとして動作する。このバッファ・アンプAMP4の入力と出力端子OUTとの間にも、抵抗R12とMOSトランジスタM16が直列に接続されている。MOSトランジスタM16のソース側は接地点に接続され、ドレイン側は抵抗R12を直列に介してバッファ・アンプAMP4の入力に接続され、ゲートはバッファ・アンプAMP4の入力に接続されている。
【0056】
ここで、MOSトランジスタM16のゲートと出力トランジスタM12のゲートに印加される電圧は同一であり、上記の場合と同様、M12とM16はカレントミラー回路を構成している。従って、出力トランジスタM12は、M16のドレイン電流のMOSトランジスタM12とM16のサイズ比をNとすると、N倍の電流を流すように駆動される。
【0057】
トランジスタM15,M16と直列に設けられている抵抗R11とR12は、パルス駆動モードでPWMコンパレータ151から大きな電流IpwmPが入力されてトランジスタM15,M16に大きな電流が流されるようになると、トランジスタM15,M16のゲート・ソース間電圧の上昇速度がダイオード接続によって制限されるのを、M15とM16をON抵抗動作させることによって、防ぐために挿入されている。上記のような作用により、出力アンプ161(162)は、大振幅動作するパルス駆動モード時には比較的高スルーレートで動作する一方、小振幅動作する出力リニア駆動モード時は比較的低スルーレートで動作する。
【0058】
さらに、図4の実施例の回路においては、上記抵抗R11およびトランジスタM15と直列にスイッチSW3と定電流源I2が、また抵抗R12およびトランジスタM16と直列にスイッチSW4と定電流源I3が設けられている。そして、上記スイッチSW3,SW4は、例えばモード切替え信号PWM/LINによってオン、オフされ、リニア駆動モードでヘッドを停止状態に保持するアイドリングの時に電流源I2,I3の電流を抵抗R13,R14へ向かって流すように制御される。リニア駆動モードでは、この電流源I2,I3のN倍電流がパワーMOSM11とM12のアイドリング電流(貫通電流)となり、出力OUTのゼロクロス歪みを低減している。即ち、アンプAMP3, AMP4はAB級動作する。尚、アイドリング電流値は比較的小さな値で良い。
PWM駆動モードでは、アイドリング電流を流さないように、SW3とSW4をオープンにしている。このとき、アンプAMP3,AMP4はB級動作する。
【0059】
この実施例では、リニア駆動モード時のアンプAMP3, AMP4はAB級動作させられることにより、出力回路のスイッチングノイズを回避して、ボイスコイルモータの駆動電流を高精度かつ高安定に制御することができる。したがって、ヘッド位置を細かく精密制御するトラッキング移動も高精度かつ高安定に行わせることができる。
PWM駆動モードでは、アンプAMP3, AMP4はB級動作させられることにより、大振幅、高スルーレートでの貫通電流を回避することができる。
【0060】
本実施例のモータ駆動回路110は、第1モード制御信号MODEと第2モード制御信号SGLPWMに基づいて、コイルの両端子をPWM駆動する「両側PWM駆動モード」、コイルの一方の端子をPWM駆動し他方をリニア駆動する「片側PWM駆動モード」およびコイルの両端子をリニア駆動する「リニア駆動モード」のいずれかが設定される。図6には、各モードが設定された場合のモータ駆動回路110内の要部の信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。このうち、「両側PWM駆動モード」と「片側PWM駆動モード」はヘッドのシーク時に使用され、「リニア駆動モード」はトラッキング時に使用される。
【0061】
図6には、3つの駆動モードが示されているが、一般には、「両側PWM駆動モード」と「リニア駆動モード」との組合せ、あるいは「片側PWM駆動モード」と「リニア駆動モード」の組合せによって、シーク動作からトラッキング動作に移行するように制御すれば充分である。ただし、図6のような順番で3つの駆動モードを切り替えるようにすることも可能である。
【0062】
ところで、上記「片側PWM駆動モード」であっても、図2の"VCMP"側の端子をPWM駆動し他方の端子(VCMN)をリニア駆動する方式と、"VCMP"側の端子をリニア駆動し他方の端子(VCMN)をPWM駆動する方式とが考えられる。
【0063】
本実施例のボイスコイルモータ駆動回路においては、図6のタイミングチャートの片側PWM駆動の期間に示されているように、後者すなわち"VCMP"側の端子をリニア駆動し"VCMN"側の端子をPWM駆動するようにしている。これは、どちらの方式も、電力損失を抑えつつある程度高速で磁気ヘッドを移動させるという点では同じであるが、電流検出回路113の差動アンプ(電流センスアンプ)AMP0の出力にのるノイズの点では、本実施例のように、センス抵抗Rsが接続されている"VCMP"側の端子をリニア駆動し、反対の"VCMN"側の端子をPWM駆動する方が望ましい結果が得られるためである。
【0064】
具体的には、"VCMP"側の端子をPWM駆動すると、コイルの両端子電圧はPWMパルスの立ち下がり立ち上がりに連動して大きくスイングされる。この電圧が電流センスアンプに入力されると、電流センスアンプは差動アンプであり同相成分を除去することができるので、理想的な差動アンプであれば出力への影響はないはずであるが、実際の差動アンプは有限のCMRRを持つため、電流センスアンプの出力にノイズがのってしまい、これが制御精度を低下させる原因となる。
【0065】
本実施例では、センス抵抗Rsが接続されている"VCMP"側の端子をリニア駆動するようにしているため、上記のようなPWMパルスの立ち下がり立ち上がり時に電流センスアンプのコモンモード電圧は固定され、電流センスアンプの出力にのるノイズを減らすことができる。
【0066】
また、図2の実施例のボイスコイルモータ駆動回路においては、電流センスアンプの出力と駆動電流指令VCMINとの差分を増幅する誤差アンプ114の出力側に設けられている位相補償回路119が、直列の抵抗Rxと容量Cxおよびこれらと並列に設けられた容量Cx2とから構成されている。これにより、PWM駆動時における誤差アンプ114の出力のノイズを有効に抑えることができる。
【0067】
図7には、両側PWM駆動時におけるコイル駆動電圧VCMP,VCMNと、電流センスアンプ113の出力Soutと、誤差アンプ114の出力VCTL、コイルに流れる電流Ivcmの変化の様子が示されている。図7(A),(B)より、コイル駆動電圧VCMP,VCMNの立ち上がりと立ち下がりに応じて電流センスアンプ113の出力Soutにノイズが現れる様子が分かる。このノイズは、コイル駆動電圧VCMP,VCMNのスルーレートに比例しており、本実施例のようなスルーレート制御をしない場合における電流センスアンプ113の出力Soutには、図7(B)に破線で示すように比較的大きなノイズが現われ、その結果、誤差アンプ114の出力VCTLにノイズがのってしまう。
【0068】
これに対し、本実施例を適用してスルーレート制御を行なった場合には、図7(B)に実線で示すようにノイズが低減される。電流センスアンプ113の出力Soutにノイズがのると、本来なら誤差アンプ114の出力VCTLにそのままノイズが現われてしまう。これに対し、本実施例においては、直列の抵抗Rxと容量Cxおよびこれらと並列に設けられた容量Cx2とから構成された位相補償回路119が、誤差アンプ114の出力側に設けられているため、図7(C)に実線で示すように誤差アンプ114の出力のノイズを有効に抑えることができる。
【0069】
図7(C)には、位相補償回路119に容量Cx2がない場合、つまり位相補償回路119が直列の抵抗Rxと容量Cxからなる場合の誤差アンプ114の出力波形を破線で示す。前述の特許文献3に記載の発明では、誤差アンプ114の出力側に設けられている位相補償回路119は直列の抵抗Rxと容量Cxのみから構成され、並列の容量Cx2が設けられていなかった。従って、図7(C)の破線は、特許文献3に記載の発明における誤差アンプの出力波形を表わしているとみなすことができる。図7(C)の実線と破線を比較すると、位相補償回路119に並列の容量Cx2を設けるだけで、誤差アンプ114の出力のノイズを有効に抑えることができることが分かる。
【0070】
図8には、位相補償回路119の周波数特性を示す。横軸が周波数、縦軸はゲインである。図8において、実線は直列の抵抗Rxと容量Cxおよびこれらと並列に設けられた容量Cx2とから構成された本実施例の位相補償回路119の周波数特性、破線は並列の容量Cx2を持たず直列の抵抗Rxと容量Cxのみから構成された位相補償回路の周波数特性である。
【0071】
図8より、並列容量Cx2を持たない場合には破線のような特性であるものが、並列容量Cx2を設けることで、新たに、f2=1/2π・Cx2・Rxに極を有する実線のような特性を有するようになることが分かる。この極の周波数f2が、PWMの駆動周波数よりも低くなるように、Cx2,Rxの値を設定してやれば、PWM駆動によって電流センスアンプ113を通して誤差アンプ114の出力にのるノイズを低減することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施例のボイスコイルモータ駆動回路においては、ボイスコイルモータのコイル電流を検出する電流センスアンプ113の出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプ114に供給するようにしている。これにより、サンプリングタイミングのずれによって電流検出誤差が発生するようなことがない。また、電流センスアンプの出力をサンプル・ホールドしないため、ボイスコイルモータ駆動回路がPWM駆動方式のスピンドルモータ駆動回路と同一の半導体チップ上に形成されるような場合、ボイスコイルモータ駆動回路におけるPWM駆動のサンプリングの際にスピンドルモータ駆動回路のノイズを拾って電流検出誤差が発生して、制御精度が低下してしまうようなことがない。
【0073】
具体的には、電流センスアンプの出力をサンプル・ホールドするようにしたモータ駆動回路においては、図10に符号T2で示されているように、サンプリングクロックSCKのタイミングと例えばスピンドルモータ駆動回路のU相の立ち上がりのタイミングが一致すると、ホールド後の電流センスアンプ出力が高くなってしまう。その結果、ボイスコイルモータのコイル電流Ivcmが、図10(E)のように不定期変動を起こすことがある。
【0074】
これに対し、本実施例のボイスコイルモータ駆動回路においては、電流センスアンプの出力をサンプル・ホールドせずに誤差アンプに供給するため、スピンドルモータ駆動端の急峻な変化による結合ノイズをサンプル・ホールド回路がホールドすることがない。これにより、図9に示すように、ボイスコイルモータのコイル電流Ivcmは不定期変動を起こさないようになるという利点がある。そのため、磁気ヘッドの位置決め制御精度が向上されるようになる。
【0075】
また、本実施例のボイスコイルモータ駆動回路においては、PWM駆動時にボイスコイルモータのコイルの端子に印加される駆動電圧のスルーレートを制御するスルーレート制御回路を設けるようにしている。サンプル・ホールドしないことにより、PWM駆動時にコイル端子電圧のスイングによって電流検出用アンプの出力に変動が生じ、その変動によって制御精度が低下するおそれがあるが、本実施例のようにコイルの端子に印加される駆動電圧のスルーレートを制御することによって、変動の発生を抑制できる。その結果、ヘッドの位置決め制御精度を向上させることができる。
【0076】
さらに、電流センスアンプの出力をサンプル・ホールドするようにしたボイスコイルモータ駆動回路においては、サンプリングタイミングの遅延によって、図11(A)のように、PWM駆動時の電流センスアンプのゲイン周波数特性Aがゲインピークを有し、リニア駆動時の電流センスアンプのゲイン周波数特性Bと大きくずれてしまう。これに対し、本実施例のボイスコイルモータ駆動回路においては、図11(B)のように、PWM駆動時の電流センスアンプのゲイン周波数特性はゲインピークを有することがなく、PWM駆動時の電流センスアンプのゲイン周波数特性Aとリニア駆動時の電流センスアンプのゲイン周波数特性Bとがほぼ一致する。その結果、シーク時のPWM駆動からトラッキング時のリニア駆動に切り替える際のセトリングタイムが短くなるという利点がある。
【0077】
ところで、本実施例のボイスコイルモータ駆動回路のように、複数の駆動モードを有する回路において、モードを切り替えた際にコイル電流Ivcmが変化するとヘッドの位置がずれ、正しい位置に修正するまでの時間が長くなるおそれがある。そこで、このような位置ずれを防止するために、以下のような制御を行なうのが望ましい。図12に、本実施例のボイスコイルモータ駆動回路において、両側PWM駆動モードとリニア駆動モード間で生じるVCMコイルの駆動電流の差ΔIvcmをVCMコイルの駆動電流の最大指示値Ivcmmaxで正規化した値を、VCMコイルの駆動電流の指示値Ivcmを横軸にとって示す。
【0078】
図12より、コイル電流Ivcmが−0.2mA〜0.4mAの範囲で誤差電流ΔIvcmがゼロに近くなっていることが分かる。また、駆動モードを変更するタイミングは、絶対値が同じポイントである方が、設計が容易である。これより、駆動モードを変更するタイミングは、コイル電流Ivcmが−0.2mA,0.2mAのポイントである。図1のコントローラ260は、ボイスコイルモータ駆動回路110に対して電流指令値として上記のような値を与えるときに、モード制御信号MODEを変化させるようにすれば良い。
【0079】
ここで、PWM駆動モードとして片側PWM駆動モードを使用し、片側PWM駆動モードからリニア駆動モードへ移行させるようにすれば、電流センスアンプのコモンモード電圧の変動が抑制されコイル駆動電流の差ΔIvcmをほぼ無くすことができるので、この点でより有効な効果が期待できる。従って、片側PWM駆動モードとリニア駆動モードの併用は有効である。ただし、現在、ハードディスク記憶装置では、トラッキング時の電流制御は±60μAであり、リニア駆動モードでは可能であるが、両側PWM駆動モードはもちろん片側PWM駆動モードでもこの要求を満たすことはできない一方、片側PWM駆動モードでの消費電力低減の効果は両側PWM駆動モードの場合の半分である。
【0080】
よって、PWM駆動モードとして片側PWM駆動モードを使用するか、両側PWM駆動モードを使用するかは適用するシステムに応じて使い分けるのが良い。例えば、低消費電力優先のシステムでは両側PWM駆動モードとリニア駆動モードの併用を適用し、より高密度の記録が必要なシステムでは、駆動モード変更時のコイル電流誤差の小さな片側PWM駆動モードとリニア駆動モードの併用を適用するようにすれば良い。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を実施態様にもとづき具体的に説明したが、本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記実施例においては、3つの駆動モードを使用する場合、シーク動作を「両側PWM駆動モード」と「片側PWM駆動モード」により行ない、トラッキング動作を「リニア駆動モード」で行なうと説明した。これに限定されず、シーク動作からトラッキング動作へ移行する際は、「両側PWM駆動モード」→「片側PWM駆動モード」→「リニア駆動モード」の順に駆動モードを変更し、逆にトラッキング動作からシーク動作へ移行する際は、「リニア駆動モード」→「両側PWM駆動モード」の順に駆動モードを変更させるように構成してもよい。トラッキング動作からシーク動作へ移行する際には、逆の場合よりも高い精度は要求されないためである。
【0082】
また、実施例では、コントローラ260との間でデータの入出力を行なうポートとしてシリアルポート111を設けているが、データをパラレルに入出力するポートを設けても良い。ただし、シリアルポートとすることにより外部端子数を減らすことができる。さらに、実施例では、シリアルポート111を介して受けるデータの例として、モードを指定するデータと駆動電圧のスルーレートを制御するデータ、誤差アンプ114に供給される電流指令値等を挙げたが、これら以外のデータを送受信できるように構成しても良い。また、このポートは双方向でなく、コントローラ260からボイスコイルモータ駆動回路110へ送られてくるデータを受ける一方向のみのポート(入力ポート)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野であるハードディスクを記憶媒体とする磁気ディスク記憶装置に適用した場合について説明したが、本発明にそれに限定されるものでなく、フレキシブルディスクを記憶媒体とする磁気ディスク記憶装置などボイスコイルモータを使用する装置一般に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明が適用される磁気ディスク記憶装置の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用される磁気ディスク記憶装置を構成するボイスコイルモータ駆動回路の実施例を示す回路構成図である。
【図3】図2の実施例のボイスコイルモータ駆動回路を構成するPWMコンパレータの実施例を示す回路構成図である。
【図4】図2の実施例のボイスコイルモータ駆動回路を構成する出力アンプの実施例を示す回路構成図である。
【図5】図4に示したVCMドライバを構成する出力アンプのPWM駆動モードにおける各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図6】図4に示したVCMドライバにおいて「PWM駆動モード」から「リニア駆動モード」に切り替わる際の要部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図7】図2の実施例のボイスコイルモータ駆動回路における両側PWM駆動モード時の要部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図8】図2の実施例のボイスコイルモータ駆動回路を構成する位相補償回路の周波数特性を示す特性図である。
【図9】図2の実施例のボイスコイルモータ駆動回路とスピンドルモータ駆動回路とを内蔵した半導体集積回路におけるスピンドルモータのコイル端子電圧とボイスコイルモータ駆動回路内の電流センスアンプ出力とコイル電流との関係を示す特性図である。
【図10】サンプリングホールド回路を持たないボイスコイルモータ駆動回路とスピンドルモータ駆動回路とを内蔵した半導体集積回路におけるスピンドルモータのコイル端子電圧とボイスコイルモータ駆動回路内の電流センスアンプ出力とコイル電流との関係を示す特性図である。
【図11】図11(A)はサンプリングホールド回路を持たないボイスコイルモータ駆動回路におけるPWM駆動時の入出力ゲイン周波数特性とリニア駆動時の入出力ゲイン周波数特性を示す特性図、図11(B)は実施例のボイスコイルモータ駆動回路におけるPWM駆動時の入出力ゲイン周波数特性とリニア駆動時の入出力ゲイン周波数特性を示す特性図である。
【図12】本実施例のボイスコイルモータ駆動回路において、両側PWM駆動モードとリニア駆動モード間で生じる誤差電流ΔIvcmをコイルの最大駆動電流Ivcmmaxで正規化した値を、コイル電流Ivcmを横軸にとって示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
100 磁気記憶ディスク
102 スピンドルモータ
106 磁気ヘッド
108 ボイスコイルモータ
110 ボイスコイルモータ駆動回路
111 シリアルポート
112 三角波発生回路
113 電流検出回路(電流センスアンプ)
114 誤差アンプ
115 パルス制御回路
116 VCMドライバ
119 位相補償回路
150 反転アンプ
151,152 PWMコンパレータ
161,162 出力アンプ
230 信号処理回路(信号処理IC)
260 コントローラ
261 マイクロコンピュータ
262 補償回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイスコイルモータのコイルの両端子に印加する駆動電圧を生成する出力回路と、
前記コイルと直列に接続された電流検出用抵抗の端子間電圧を検出して前記コイルに流れる電流の大きさを検出する電流検出回路と、
PWM動作中、連続信号を出力する該電流検出回路の出力と制御装置からの電流指令値との電位差に応じた電圧を生成する誤差アンプとを備えたボイスコイルモータ駆動回路であって、
前記誤差アンプの出力に応じて前記出力回路により前記コイルの端子を前記PWM制御で駆動して電流を流すモードを有し、
前記コイルの駆動電圧のスルーレートがプログラミング可能に構成されており、前記PWM駆動によって発生する前記電流検出回路の出力変動が制御可能に構成されていることを特徴とするボイスコイルモータ駆動回路。
【請求項2】
請求項1において、前記電流検出用抵抗の一方に接続された第1端子と、前記コイルの一方に接続された第2端子と、前記第1及び第2端子を前記PWM制御で駆動する第1モードと、前記第1端子をリニア制御で駆動し前期第2端子を前記PMW制御で駆動する第2モードとを有し、
前記電流検出用抵抗の他方と前記コイルの他方が接続されることを特徴とするボイスコイルモータ駆動回路。
【請求項3】
請求項2において、前記誤差アンプの出力を反転する反転回路と、前記誤差アンプの出力と所定の周波数の波形信号とを比較してソース電流またはシンク電流を出力する第1コンパレータと、前記反転回路の出力と所定の周波数の波形信号とを比較してソース電流またはシンク電流を出力する第2コンパレータとを備え、前記出力回路は前記第1コンパレータおよび第2コンパレータの出力電流に応じて、前記第1及び第2端子または前記第1端子に印加される駆動電圧を生成することを特徴とするボイスコイルモータ駆動回路。
【請求項4】
ボイスコイルモータのコイルの両端子に印加する駆動電圧を生成する出力回路と、
前記コイルと直列に接続された電流検出用抵抗の端子間電圧を検出して前記コイルに流れる電流の大きさを検出する電流検出回路と、
PWM動作中、連続信号を出力する該電流検出回路の出力と制御装置からの電流指令値との電位差に応じた電圧を生成する誤差アンプとを備え、
前記誤差アンプの出力に応じて前記出力回路により前記コイルの端子をPWM制御で駆動して電流を流すことが可能なボイスコイルモータ駆動回路であって、
前記誤差アンプの出力端子と基準電位点との間には、直列接続の抵抗および第1の容量を有する位相補償回路が設けられ、前記直列接続の抵抗および第1の容量と並列に第2の容量が接続されており、前記第2の容量に前記PWM駆動によって発生する前記電流検出回路の変動信号が流れることを特徴とするボイスコイルモータ駆動回路。
【請求項5】
請求項4において、前記電流検出用抵抗の一方に接続された第1端子と、前記コイルの一方に接続された第2端子と、前記第1及び第2端子を前記PWM制御で駆動する第1モードと、前記第1端子をリニア制御で駆動し前記第2端子を前記PMW制御で駆動する第2モードとを有し、
前記電流検出用抵抗の他方と前記コイルの他方が接続されることを特徴とするボイスコイルモータ駆動回路。
【請求項6】
ボイスコイルモータのコイルの両端子に印加する駆動電圧を生成する出力回路と、
前記コイルと直列に接続された電流検出用抵抗の両端子間電圧を検出して前記コイルに流れる電流の大きさを検出する電流検出回路と、
PWM動作中、連続信号を出力する該電流検出回路の出力と制御装置からの電流指令値との電位差に応じた電圧を生成する誤差アンプとを備え、
前記誤差アンプの出力に応じて前記出力回路により前記コイルの端子をPWM制御で駆動して電流を流すことが可能なボイスコイルモータ駆動回路であって、
前記電流検出用抵抗の一方に接続された第1端子と、前記コイルの一方に接続された第2端子と、前記第1及び第2端子を前記PWM制御する第1モードと、前記第1端子をリニア制御で駆動し前期第2端子を前記PMW制御で駆動する第2モードと、前記第1及び第2端子を前記リニア制御で駆動する第3モードとを有し、前記電流検出用抵抗の他方と前記コイルの他方が接続され、前記制御装置から供給されるモードを指示する情報に応じて前記第1〜第3モードのいずれかが選択されることを特徴とするボイスコイルモータ駆動回路。
【請求項7】
回転駆動される磁気記憶ディスク上の記憶トラックに対して情報のリードを行なう磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを上記ディスク上にて移動させるボイスコイルモータと、前記ボイスコイルモータのコイルに流れる電流を監視しながら前記コイルの駆動電流をフィードバック制御することにより上記磁気ヘッドの移動を行なう一つの半導体基板上に形成されたボイスコイルモータ駆動回路とを有する磁気ディスク記憶装置であって、
前記ボイスコイルモータ駆動回路は、前記コイルと直列に接続された電流検出用抵抗の端子間電圧を検出して前記コイルに流れる電流の大きさを検出する電流検出回路と、PWM動作中、連続信号を出力する該電流検出回路の出力と制御装置からの電流指令値との電位差に応じた電圧を生成する誤差アンプと、前記ボイスコイルモータのコイルの両端子をPWM制御で駆動する第1モードと、前記コイルの両端子をそれぞれリニア制御で駆動する第2モードとを備え、前記磁気ヘッドが記憶トラックを跨いで移動するシーク時に前記第1モードが実行され、前記磁気ヘッドが隣接する記憶トラックを順次走査するトラッキング時に前記第2モードが実行されることを特徴とする磁気ディスク記憶装置。
【請求項8】
請求項7において、前記電流検出用抵抗の一方に接続された第1端子と、前記コイルの一方に接続された第2端子と、前記第1端子をリニア制御で駆動し前期第2端子を前記PMW制御で駆動する第3モードとを有し、
前記電流検出用抵抗の他方と前記コイルの他方が接続され、前記第1モードにおいて前記第1及び第2端子を前記PWM制御で駆動し、前記第2モードにおいて前記第1及び第2端子を前記リニア制御で駆動することを特徴とする磁気ディスク記憶装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記ボイスコイルモータ駆動回路は、前記誤差アンプの出力を反転する反転回路と、前記誤差アンプの出力と所定の周波数の三角波とを比較してソース電流またはシンク電流を出力する第1コンパレータと、前記反転回路の出力と所定の周波数の三角波とを比較してソース電流またはシンク電流を出力する第2コンパレータとを備え、
前記出力回路は前記第1コンパレータおよび第2コンパレータの出力電流に応じて、前記第1及び第2端子または前記第1端子に印加される駆動電圧を生成することを特徴とする磁気ディスク記憶装置。
【請求項10】
請求項7において、前記誤差アンプの出力端子と基準電位点との間には、直列接続の抵抗および第1の容量からなる位相補償回路が設けられ、前記直列接続の抵抗および第1の容量と並列に第2の容量が接続されており、前記第2の容量に前記PWM駆動によって発生する前記電流検出回路の変動信号が流れることを特徴とする磁気ディスク記憶装置。
【請求項11】
請求項7において、前記上位の制御装置との間でデータの送受信を行なう入出力ポートを備え、該入出力ポートには前記制御装置から供給されるモードを指示する情報を保持するレジスタが設けられていることを特徴とする磁気ディスク記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−74835(P2007−74835A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260063(P2005−260063)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】