説明

ボイラ燃料投入量の決定方法、ボイラ燃料制御装置及びプログラム

【課題】石炭等の単位熱量変動がある燃料の単位熱量の差異、及び、混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に対応して、ボイラへの燃料投入量を適切に補正できるボイラ燃料投入量の決定方法を提供すること。
【解決手段】複数種燃料混合燃焼ボイラで、単位熱量変動がありその単位熱量qaが連続的に測定されない第1燃料と、単位熱量qbが既知の第2燃料とを少なくとも1種類以上ずつ含む混合燃料を燃焼させる場合において、フィードバック制御後の値を補正するための燃料補正係数ΣKを、3要素(第1、2、3補正係数Ka、Kb、Kc)に細分化することで、混焼率Fpの変更期間中(燃料切替時)に、第1燃料の単位熱量qaの差異に応じて燃料投入量を補正できるとともに、混焼率Fpの変化に伴うボイラ熱効率の差異に応じて燃料投入量を補正できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ燃料投入量の決定方法に関し、特に、複数種燃料混合燃焼を行うボイラにおいて燃料投入量を適正に補正するためのボイラ燃料投入量の決定方法、ボイラ燃料制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ボイラ設備を使用して行われる発電は、ボイラ(火炉)に燃料(固体燃料、気体燃料、又は液体燃料)を供給して燃焼させ、その燃焼熱を熱交換器で吸収して蒸気(例えば水蒸気)を発生させ、この蒸気をタービンへ供給して回転駆動させ、当該タービンに連結された発電機にて発電するようになっている(例えば、特許文献1参照)。このとき、ボイラには、例えば、微粉炭機からの微粉化された石炭や、ガスホルダーからのガス(例えばコークス炉ガス)などが、ボイラ燃料として供給される。なお、ボイラへの燃料投入量は、要求負荷量(例えば、要求蒸気量)とボイラへの燃料投入量との関数に基づく、予め設定された関係式(以下に一般式を示す。)により決定される。
【0003】
Y=∫(k・X)
ここで、Yは燃料投入量、Xは要求負荷量、kはボイラ効率(ボイラ熱効率)及び単位の変換値によって決まる値である。
【0004】
しかし、このボイラの使用にあっては、例えば、ボイラ伝熱面の汚れ、燃料性状変化による燃料の単位熱量変化、及びその他の要因により、ボイラ効率が変動するため、前記した関係式のkに誤差が生じ、必要とする要求蒸気量を得ることができなかった。このため、例えば、発電機で発生する発電量、ボイラで発生する主蒸気圧力、及びボイラへの燃料供給流量は、目標値に対して変動していた。
【0005】
そこで、前記関係式を使用して求めた燃料投入量に対応してボイラに燃料を供給し、ボイラで発生した主蒸気圧力を測定して、その測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力からPID制御によってフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量を前記要求負荷量に加算して、ボイラへの燃料投入量を補正する方法が一般的に採られていた(特許文献1参照)。
【0006】
また、特許文献2には、石炭焚ボイラの発熱量自動補正装置において、ボイラ燃料として供給される石炭の単位熱量変化の自動補正として、主蒸気圧力偏差の積分値を逆符号に変化した値に補正ゲインを積算し、その値を積分した値を発熱量比Sとして、石炭流量の指令値を修正することが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−250734号公報
【特許文献2】特開平2004−190913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、使用するボイラの熱容量は大きいため、ボイラへの燃料投入量の調整から主蒸気圧力の変化発生に至るまでに長時間を要する。このため、上記特許文献1に記載のような従来の主蒸気圧力偏差に基づくフィードバック制御では、PIDゲイン(PIDの補正幅)を大きくして、主蒸気圧力変動に対する燃料投入量の追従性を向上させている。
【0009】
ところが、前記関係式を使用して求めたボイラへの燃料投入量と、実際に必要な燃料投入量とに差異がある場合、PIDゲインが大きなフィードバック制御による燃料投入量変更に対し、蒸気圧力変化の追従性はボイラの熱容量が大きいために遅く、燃料投入量変動と蒸気圧力変動とにハンチングが発生し、ボイラへの燃料過投入(燃料投入量の過多及び過少を含む。以下同じ。)が発生して、例えば、ボイラからの排ガス量や排ガス温度の増加など、ボイラ熱効率の低下を招いている(後述する図14(a)参照。)。
【0010】
更に、例えば石炭のように、燃料性状変化に伴う単位熱量(有効単位発熱量)変動があり、かつ、当該単位熱量(qa)が連続的に測定されない燃料を使用する場合、当該燃料の制御用の基準単位熱量と実際の単位熱量とに差異が発生すると、燃料系統及び蒸気系統等の制御性が悪化するという問題がある。
【0011】
また、上記単位熱量が変動する燃料(石炭等)を含む複数種類の燃料を混合燃焼させる場合(以下「複数種燃料混合燃焼」という。)は、ボイラ負荷一定時の混焼率の変更、或いは、ボイラ負荷変更時の混焼率の変化に伴い、燃料全体に占める石炭燃料の熱量比率が変化するため、石炭燃料の性状変化による単位熱量差異の影響比率が変化する。また、石炭以外の他燃料として熱効率が異なる燃料を使用して、混焼率を変更すると、ボイラ熱効率が更に変化してしまう。このため、ボイラへの燃料過投入や投入不足が発生するので、制御に外乱を与え、燃料系統及び蒸気系統等の制御性がさらに悪化するという問題がある。
【0012】
なお、上記特許文献2に記載のように、石炭燃料の性状変化による単位熱量変動を自動補正する従来方法では、主蒸気圧力偏差に基づき石炭の発熱量比S(実際の石炭の熱量/制御基準炭の熱量)を演算する自動補正回路11を設けているが、主蒸気圧力偏差の原因としては、石炭の発熱量変動のみならず、ボイラ伝熱面の汚れやガスエアーヒータ等の熱交換器劣化によるボイラ熱効率低下も含んでいるので、上記従来方法では、正確な発熱量比Sを把握することはできない。また、発熱量補正値である発熱量比Sを入力している場合、主蒸気圧力偏差によるフィードバック制御により既に発熱量補正が行われるため、主蒸気圧力偏差に現れるのは上記の発熱量補正値の誤差分しかないので、石炭の発熱量比は把握できない。さらに、複数種燃料混合燃焼の場合は、石炭の熱量と他燃料合計熱量との比率により、主蒸気圧力偏差に占める石炭の単位熱量差異比率が異なるため、石炭単独の発熱量比Sを把握することはできない。加えて、上記自動補正回路11では、主蒸気圧力偏差からの信号メモリ機能が無く、特許文献2の発明の解決課題である主蒸気圧力偏差ハンチング現象は解決されないため、自動補正回路11による補正係数も変動し安定しないので、主蒸気圧力偏差フィードバック制御に外乱を与える要因となってしまう。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、複数種燃料混合燃焼を行うボイラにおいて、混焼率の変化時であっても、石炭等の単位熱量変動がある燃料の単位熱量の差異、及び、混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に対応して、ボイラへの燃料投入量を適切に補正でき、燃料過投入を抑制して制御性を向上させることが可能な、新規かつ改良されたボイラ燃料投入量の決定方法、ボイラ燃料制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、単位熱量変動があり、かつ、当該単位熱量(qa)が連続的に測定されない第1燃料と、単位熱量(qb)が既知の第2燃料とを少なくとも含む複数種類の燃料を混合燃焼させたときの燃焼熱により蒸気を発生するボイラにおいて、入力要求負荷量に応じてボイラへの燃料投入量を求め、当該求めた燃料投入量に応じてボイラに複数種類の燃料をそれぞれ供給しつつ、ボイラで発生した蒸気圧力を測定し、当該測定蒸気圧力と設定蒸気圧力とに基づきフィードバック補正量を求め、当該フィードバック補正量に基づきボイラへの燃料投入量を補正する、ボイラ燃料投入量の決定方法が提供される。このボイラ燃料投入量の決定方法は、前記ボイラ要求負荷量および前記複数種類の燃料の混焼率(Fp)が不変の安定期間では、フィードバック補正後の値と前記フィードバック補正前の値との比又は差の値を逐次更新しつつ記憶し、当該記憶した複数の値から求めた第1燃料補正係数(Kipg)に基づいて、フィードバック補正後または補正前の値を補正する。一方、前記ボイラ要求負荷量または前記複数種類の燃料の混焼率の少なくともいずれかが変更される非安定期間では、前記ボイラに設けられた熱交換器の劣化に伴うボイラの熱効率低下を補正するための第1補正係数(Ka)と、第1燃料の単位熱量(qa)の実単位熱量との差異を補正するための第2補正係数(Kb)と、混焼率(Fp)によるボイラの熱効率の差異を補正するための第3補正係数(Kc)との積である第2燃料補正係数(ΣK)に基づいて、フィードバック補正後または補正前の値を補正する。そして、第3補正係数(Kc)は、混焼率(Fp)に基づき、予め設定された関係式に従い算出され、第2補正係数(Kb)については、前回の混焼率(Fp)の変更時における当該変更前後の第1燃料の流量(Ga)と、当該変更前後の前記第1燃料以外の燃料の流量(Gb)及び単位熱量(qb)と、当該変更前後に算出された第3補正係数(Kc)とに基づいて、第1燃料の単位熱量(qa)を算出することで、当該第1燃料の単位熱量(qa)と、前回の混焼率の変更後の混焼率(Fp)とに基づいて、第2補正係数(Kb)が算出され、第1補正係数(Ka)は、算出された第3補正係数(Kc)と、算出された第2補正係数(Kb)と、前回の混焼率の変更後の第1燃料補正係数(Kipg)とに基づいて算出される。
【0015】
かかる構成により、複数種燃料混合燃焼ボイラで、単位熱量が供給タイミングによって変動し単位熱量が連続的に測定されない第1燃料と、単位熱量が既知の第2燃料(単位熱量を連続測定可能な燃料、或いは、単位熱量変動が微小なため単位熱量の固定値を使用可能な燃料を含む。)とを少なくとも1種類以上ずつ含む混合燃料を燃焼させる場合において、燃料補正係数を3要素(第1、2、3補正係数Ka、Kb、Kc)に細分化することで、混焼率の変更期間中(燃料切替時)に、石炭等の第1燃料の単位熱量の差異に応じて燃料投入量を補正できるとともに、混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に応じて燃料投入量を補正できる。従って、ボイラへの燃料過投入を抑制でき、燃料系統及び蒸気系統等の制御性を向上させることができる。
【0016】
また、安定期間において、算出された第1補正係数(Ka)と、算出された第3補正係数(Kc)と、安定期間において連続的に更新される第1燃料補正係数(Kipg)とに基づいて、第1燃料の単位熱量(qa)を連続的に算出しておき、非安定期間において、非安定期間に移行する直前に算出された第1燃料の単位熱量(qa)と、混焼率(Fp)とに基づいて、第2補正係数(Kb)を算出するようにしてもよい。これにより、最新の単位熱量(qa)を用いて、第2補正係数(Kb)を算出できるので、制御性がより向上する。
【0017】
また、非安定期間は、混焼率(Fp)が変更開始された時点から、当該変更の終了後に所定時間経過した整定時点までの未整定期間であり、安定期間は、整定時点から、混焼率(Fp)が再び変更開始される時点までの整定期間であるようにしてもよい。これにより、混焼率の変更後、整定するまでの不安定な期間は、第2燃料補正係数を用いて、第1燃料の単位熱量及び実際の混焼率に応じて適切に補正することができる。
【0018】
また、第1補正係数(Ka)は、整定時点から所定時間経過後に算出され、次回の整定時点まで同一の値で維持されるようにしてもよい。第1燃料補正係数(Kipg)は整定時点から算出され始めるが、整定時点から上記所定時間経過後には第1燃料補正係数(Kipg)が安定しているので、この安定した第1燃料補正係数(Kipg)を用いることで、正確な第1補正係数(Ka)を求めることができる。また、ボイラ負荷が一定であれば、第1補正係数(Ka)は不変であるので、次回の整定時点まで同一値で維持することができ、これによって、第1燃料の単位熱量(qa)を連続的に算出可能となる。
【0019】
また、第1補正係数(Ka)は、ボイラの負荷率ごとにそれぞれ算出されて、記憶手段に記憶され、非安定期間では、記憶手段に記憶されている第1補正係数(Ka)に基づいて、ボイラの実際の負荷率に応じた第1補正係数(Ka)が算出されるようにしてもよい。
【0020】
また、フィードバック補正は、ボイラの入力要求負荷量に対して行われ、フィードバック補正前の値は、ボイラの入力要求負荷量であり、フィードバック補正後の値は、当該入力要求負荷量をフィードバック補正した後の要求負荷量であるようにしてもよい。
【0021】
また、フィードバック補正は、ボイラの入力要求負荷量から求めたボイラへの燃料投入量に対して行われ、フィードバック補正前の値は、ボイラの入力要求負荷量から求めた燃料投入量であり、フィードバック補正後の値は、当該燃料投入量をフィードバック補正した後の燃料投入量であるようにしてもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、単位熱量変動があり、かつ、当該単位熱量(qa)が連続的に測定されない第1燃料と、単位熱量(qb)が既知の第2燃料とを少なくとも含む複数種類の燃料を混合燃焼させたときの燃焼熱により蒸気を発生するボイラにおいて、ボイラへの燃料投入量を制御するボイラ燃料制御装置が提供される。このボイラ燃料制御装置は、入力要求負荷量に応じてボイラへの燃料投入量を求める燃料投入量演算部と、燃料投入量演算部により求められた燃料投入量に応じて、ボイラに複数種類の燃料をそれぞれ供給する燃料投入部と、ボイラで発生した蒸気圧力を測定する測定手段と、測定手段により測定された測定蒸気圧力と設定蒸気圧力とに基づきフィードバック補正量を求め、当該フィードバック補正量に基づきボイラへーの燃料投入量を補正するフィードバック制御手段と、フィードバック制御手段によるフィードバック補正後または補正前の値を補正する補正手段と、を備える。補正手段は、前記ボイラ要求負荷量および前記複数種類の燃料の混焼率(Fp)が不変の安定期間では、フィードバック補正後の値と当該フィードバック補正前の値との比又は差の値を逐次更新しつつ記憶し、当該記憶した複数の値から求めた第1燃料補正係数(Kipg)に基づいて、フィードバック補正後または補正前の値を補正する。また、補正手段は、前記ボイラ要求負荷量または前記複数種類の燃料の混焼率(Fp)の少なくともいずれかが変更される非安定期間では、ボイラに設けられた熱交換器の劣化に伴うボイラの熱効率低下を補正するための第1補正係数(Ka)と、第1燃料の単位熱量(qa)の実単位熱量との差異を補正するための第2補正係数(Kb)と、混焼率(Fp)によるボイラの熱効率の差異を補正するための第3補正係数(Kc)との積である第2燃料補正係数(ΣK)に基づいて、フィードバック補正後または補正前の値を補正する。さらに、補正手段は、混焼率(Fp)に基づき、予め設定された関係式に従い第3補正係数(Kc)を算出し、前回の混焼率(Fp)の変更時における当該変更前後の第1燃料の流量(Ga)と、当該変更前後の前記第1燃料以外の燃料の流量(Gb)及び単位熱量(qb)と、当該変更前後に算出された第3補正係数(Kc)とに基づいて、第1燃料の単位熱量(qa)を算出し、当該第1燃料の単位熱量(qa)と、前回の混焼率の変更後の混焼率(Fp)とに基づいて、第2補正係数(Kb)を算出し、算出された第3補正係数(Kc)と、算出された第2補正係数(Kb)と、前回の混焼率の変更後の第1燃料補正係数(Kipg)とに基づいて、第1補正係数(Ka)を算出する。
【0023】
かかる構成により、上記ボイラ燃料投入量の決定方法を好適に実行できるボイラ燃料制御装置を提供できる。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを上述したボイラ燃料制御装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、複数種燃料混合燃焼を行うボイラにおいて、混焼率の変化時であっても、石炭等の単位熱量変動がある燃料の単位熱量の差異、及び、混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に対応して、ボイラへの燃料投入量を適切に補正できる。従って、ボイラへの燃料過投入を抑制して制御性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
(本発明の関連技術)
以下に、本発明の実施の形態に係るボイラ燃料投入量の決定方法を説明するに先立ち、まず、本願発明者らが本発明に想到する基礎として開発した関連技術にかかるボイラ燃料投入量の決定方法について、図1〜図4を参照して説明する。なお、図1は、本発明の関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法の説明図、図2は、同ボイラ燃料投入量の決定方法を実行するボイラ燃料制御装置の構成を示すブロック図、図3は、同ボイラ燃料制御装置のプログラム演算手段14を詳細に示すブロック図、図4は、同プログラム演算手段14のプログラム演算部17の動作を示すフロー図である。
【0028】
本発明の関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法は、図1、図2に示すように、ボイラ設備10に適用されるものであり、ボイラの要求蒸気量(要求負荷量)に対応するボイラへの燃料(例えば、石炭)投入量の関係に基づく予め設定した燃料関数F1(以下、単に設定燃料関数F1ともいう。)を使用し、圧力補正前(フィードバック補正前)のボイラへの入力要求蒸気量A(入力要求負荷量)と、圧力補正後(フィードバック補正後)の要求蒸気量B(要求負荷量)との比又は差を逐次更新して、当該比又は差をボイラ燃料制御装置の具備するメモリ等の記憶手段(図示せず。)に記憶し、この記憶した複数の比又は差により燃料補正係数を求め、この燃料補正係数により燃料投入量を補正する方法である。以下、詳しく説明する。
【0029】
まず、本発明の関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法について、その概略を図1を参照しながら簡単に説明する。なお、この図1に示す決定方法の考え方は、本発明の実施形態にかかるボイラ燃料投入量の決定方法にも適用されるものである。
【0030】
本発明の関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法は、フィードバック補正量(補正前と後の値の差異)を基にして、ボイラ効率の変化に起因する設定燃料関数F1の変化を、現状のボイラ効率を考慮した適正な燃料関数F1’となるように(オンライン状態であたかも燃料関数F1を書換えしたように)、燃料補正係数によって逐次補正する方法である。この燃料関数F1の一般式は、前記したY=∫(k・X)で示され、このkがボイラ効率を示す。
【0031】
これにより、適正な燃料関数F1’と要求蒸気量から得られる燃料投入量FuBは、設定燃料関数F1と要求蒸気量から得られる燃料投入量FuAに、ボイラ効率kの変化に起因する燃料投入量の差異分ΔFu(フィードバック補正量)を加算した量となる。従って、適正な燃料関数F1’から得られる燃料投入量FuB(=FuA+ΔFu)の燃料をボイラへ供給することで、蒸気圧力偏差(フィードバック補正量)を生じさせることなく(極力抑制させて)、要求蒸気量を発生させることが可能である。
【0032】
なお、前記したように、燃料投入量がハンチングすることから、各フィードバック補正量のみで設定燃料関数F1を補正すると、ハンチングの変動幅の差を含むことになる。そこで、このハンチングの変動幅の差を排除するために、過去の複数のフィードバック補正量(補正前と後の値の差異)もメモリに記憶しておき、この過去の値を含めて、フィードバック補正量を移動平均、乗算、又は加算して使用する。なお、図1においては、説明の便宜上、要求蒸気量と燃料投入量との関係式を直線としているが、通常は、ボイラの特性に応じて、曲線の関係式となっている。
【0033】
以下、設定燃料関数F1で求めた燃料投入量を燃料補正係数により補正する方法について、詳細に説明する。
【0034】
図2、図3に示すように、常時は、必要となる発電量を発電機で出力するため、ボイラ設備10の操作部で、この発電機出力に相当するボイラ要求負荷量(指令)、即ち入力要求蒸気量Aを入力する。そして、燃料関数F1を設定入力している燃料投入量演算部20で、ボイラへの入力要求蒸気量Aと設定燃料関数F1により、ボイラに供給する燃料投入量が決定され、この燃料投入量の燃料がボイラ設備10のボイラへ供給される。次に、ボイラに設けられた測定手段、例えば圧力計により、ボイラで発生した蒸気の圧力が測定され、その測定主蒸気圧力が主蒸気圧力発信器Pに入力される。主蒸気圧力発信器Pに入力された測定主蒸気圧力に基づき、PID制御部11により主蒸気圧力補正操作量が設定される。
【0035】
PID制御部11においては、例えば、ボイラの状態(伝熱面の汚れ等)、燃料性状、及びその他の要因が維持された条件で得られる燃料関数F1であれば、設定値と実操業値との圧力差がほとんど無く、燃料関数F1のみを用いて、必要な主蒸気圧力と、当該主蒸気圧力に相当する必要な発電機出力が得られる。しかし、前述したように、例えば、ボイラ設備10のボイラ状態変化、燃料性状の変化、及びその他の要因変化に伴って、測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力とで圧力差(フィードバック補正量ともいう)が発生する。
【0036】
PID制御部11は、蒸気測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力との偏差からPID制御(比例・微分・積分制御)によってフィードバック補正量を求め、加算部12は、このフィードバック補正量を入力要求負荷量に加算する。PID制御部11において、ボイラへの燃料過不足により測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力との間で圧力差が発生すると、まず、加算部12により、当該主蒸気圧力の偏差(誤差量)をフィードバック制御量として、入力要求蒸気量Aに加算する。
【0037】
次に、除算部13にて、圧力補正前のボイラへの入力要求蒸気量A(MWi)を分母に、圧力補正後の要求蒸気量B(MWii)を分子にして、入力要求蒸気量A(MWi)と要求蒸気量B(MWii)との比、即ち係数基準値(Ki)を算出する。
(MWii)/(MWi)⇒(Ki)
【0038】
この算出された係数基準値(Ki)は、除算部13からプログラム演算手段14に入力される。なお、この除算部13の代わりに減算部を設けて、フィードバック補正後の値である例えば圧力補正後の要求蒸気量B(MWii)と、フィードバック補正前の値である例えば入力要求蒸気量A(MWi)との差(MWii−MWi)を算出して、以下の燃料補正係数を求めることもできる。
【0039】
そして、プログラム演算手段14においては、図3に示すように、一次遅れ補正部15にて、前記除算部13から入力された係数基準値(Ki)を使用して、例えば10秒間の一次遅れによる過渡的変動を抑えるため(ハンチングを抑制するため)、この係数基準値(Ki)を一次遅れ補正して係数基準値(Ki1)とする。これにより、係数基準値(Ki)に含まれるノイズをカットして、補正後の係数基準値(Ki1)の精度を向上できる。
(Ki)⇒(Ki1)
【0040】
更に、プログラム演算手段14の移動平均算出部16で、上記補正後の係数基準値(Ki1)を含めて、例えば30秒間の各係数基準値を移動平均して係数平均値(Kiε)を算出する。
(Ki1)⇒(Kiε)
【0041】
以上の方法で得られた係数平均値(Kiε)を、プログラム演算手段14のプログラム演算部(PRG演算部)17に入力する。なお、入力要求蒸気量A(MWi)も、プログラム演算部17に入力されている。
【0042】
このプログラム演算部17では、蒸気算出した係数平均値(Kiε)を使用して、変化率を制限した最終的な燃料補正係数(Kipgε)の前段階の燃料補正係数(Kipg)を算出する。なお、この燃料補正係数(Kipg)は、本発明の第1燃料補正係数に相当する。なお、プログラム演算部17では、係数のリセット及び演算開始・停止の設定も可能である(係数リセットトリガ、演算開始・停止トリガ)。
【0043】
ここで、図4を参照しながら、燃料補正係数(Kipg)の算出方法について説明する。まず、ステップS1で、ボイラの作業者は、ボイラ燃料制御装置の操作部(図示せず。)を使用して、プログラム演算部17に、ボイラの最大負荷(MWt:設定定数)、部分負荷(MWx:設定定数)、及び最低負荷(MWm:設定定数)をそれぞれ入力する。
【0044】
次に、予め入力されたボイラの入力要求蒸気量A(入力要求負荷量に相当)、最低負荷、及び部分負荷を、最大負荷でそれぞれ除算して、現在の負荷率、最低負荷率、及び部分負荷率を求める。なお、部分負荷率は、図示の1つの例に限定されず、複数設定可能である。
(MWi)/(MWt)=(MWr)⇒現在の負荷率
(MWm)/(MWt)=(MWmr)⇒最低負荷率
(MWx)/(MWt)=(MWxr)⇒部分負荷率
【0045】
そして、求めた現在の負荷率と、最低負荷率及び部分負荷率との差をそれぞれ求める。
(MWr)−(MWmr)
(MWr)−(MWxr)
なお、上記した現在の負荷率とプログラム演算部17に入力された定数1との差も求める。
(MWr)−1
この定数1は最大負荷率((MWtr)=(MWt)/(MWt)=1)である。
【0046】
また、ステップS2においては、圧力偏差の大小に応じて、入力された係数平均値(Kiε)を更新するか否かの判定基準の一方側(条件B)を定める。ここで、入力された係数平均値(Kiε)に圧力偏差が生じていなければ1.0であり、圧力偏差が小さい場合、例えば、係数平均値(Kiε)が0.99を超え1.01未満の許容範囲内である場合には、入力された係数平均値(Kiε)を使用しても問題ないため、この係数平均値(Kiε)を更新しない。一方、入力された係数平均値(Kiε)が、例えば、0.99≧Kiε、又は1.01≦Kiεであれば、大きな圧力偏差が生じていることを示すため、係数平均値の許容範囲を逸脱し、入力された係数平均値(Kiε)を新たな係数平均値で更新する必要がある。なお、係数平均値は、他の条件(オプション)によっても設定されるものであり、例えば、入力蒸気量(発電負荷)の変更時においては、係数平均値(Kiε)が0.99を超え1.01未満の許容範囲内であっても、その係数平均値の更新条件が成立する。
【0047】
前記したステップS1で求めた{(MWr)−(MWmr)}、{(MWr)−(MWxr)}、及び{(MWr)−1}は、以降略同様の処理がなされるため、ここでは{(MWr)−(MWxr)}についてのみ説明する。
まず、得られた{(MWr)−(MWxr)}の数値を、x2として設定する。設定したx2が、ステップS3′で、−r2≦x2≦+r2(r2=0.1)であれば、次のステップS4′へ進む。ここで、x2が上記した条件範囲を満足しなければ、この処理を終了(END)する。
【0048】
そして、ステップS4′において、ステップS3′の条件を満足した状態が安定して継続されなければ、即ちボイラに供給する燃料の反応時間(ここでは例えば5分)を経過しなければ、再びステップS3′へ戻る。一方、安定した状態が5分継続されて条件Aが成立し、且つ前記したようにKiεが許容値を逸脱したか、もしくはその他トリガリセット信号が成立して条件Bが成立した場合、入力セットしたy1〜y3のうちのy2のトリガ信号(デジタル指令)として、前記した係数平均値Kiε(新たに求めた値の比)をメモリ内既存係数Kiεx(予め求めた値の比)へ乗算し、更新保存する。ここで、反応時間は、ボイラへの燃料投入量の調整から主蒸気圧力の変化発生に至るまでに要する時間に基づいて決定する。
【0049】
なお、{(MWr)−(MWmr)}及び{(MWr)−1}についても、それぞれx1及びx3としてステップS3′と同様の処理であるステップS3及びステップS3″の処理(r1及びr3)がなされ、引き続きステップS4′と同様の処理であるステップS4及びステップS4″の処理がなされる。これにより、前記した条件A及び条件Bが成立したことを条件とし、{(MWr)−(MWmr)}をy1のトリガ信号(デジタル指令)とし、前記した係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiε1へ乗算し、更新保存する。同じく、{(MWr)−1}をy3のトリガ信号(デジタル指令)とし、前記した係数平均値Kiεをメモリ内既存係数(Kiε3)へ乗算し、更新保存する。
【0050】
ここで、部分負荷である(Kiεx)を考慮した場合、即ち(Kiε1)、(Kiεx)、及び(Kiε3)の3点以上を使用して燃料補正係数(Kipg)を算出することもできる。なお、前記した(Kiε1)、(Kiεx)、及び(Kiε3)の各初期値(イニシャライズ)は1である。
【0051】
これらの数値を使用して、ステップS5で係数算出演算を行い、燃料補正係数(Kipg)を算出する。ここで、部分負荷が無い場合には、(Kiε1)及び(Kiε3)の2点から、燃料補正係数(Kipg)を求めることができる。この2点を使用して燃料補正係数(Kipg)を算出する演算式を以下に示す。
{(Kiε3)−(Kiε1)}/{1−(MWmr)}・{(MWr)−(MWmr)}+(Kiε1)=(Kipg)
【0052】
また、部分負荷であるKiεxとして、例えば、Kiεx1、Kiεx2、及びKiεx3の3点を使用し、前記した(Kiε1)及び(Kiε3)を使用した合計5点から燃料補正係数(Kipg)を算出する演算式を以下に示す。なお、(Kiεx1)、(Kiεx2)、及び(Kiεx3)の部分負荷率を、それぞれ(MWxr1)、(MWxr2)、及び(MWxr3)とする。
【0053】
MWr<MWmrの場合:
(Kipg)=(Kiε1)
MWmr≦MWr<MWxr1の場合:
(Kipg)={(Kiεx1)−(Kiε1)}/{(MWxr1)−(MWmr)}・{(MWr)−(MWmr)}+(Kiε1)
MWxr1≦MWr<MWxr2の場合:
(Kipg)={(Kiεx2)−(Kiεx1)}/{(MWxr2)−(MWxr1)}・{(MWr)−(MWxr1)}+(Kiεx1)
MWxr2≦MWr<MWxr3の場合:
(Kipg)={(Kiεx3)−(Kiεx2)}/{(MWxr3)−(MWxr2)}・{(MWr)−(MWxr2)}+(Kiεx2)
MWxr3≦MWr<1.0の場合:
(Kipg)={(Kiε3)−(Kiεx3)}/{1.00−(MWxr3)}・{(MWr)−(MWxr3)}+(Kiεx3)
1.0≦MWrの場合:
(Kipg)=(Kiε3)
【0054】
上記の複合演算により、部分負荷の適正値を導き出す。なお、部分負荷(Kiεx)は、必要に応じて無限大に増やすことができる。これにより、部分負荷の適正値の精度を更に高めることができる。
以上のように、(Kiε)を使用して、現状のボイラ負荷に応じた燃料補正係数(Kipg)が得られる。
(Kiε)⇒(Kipg)
【0055】
ステップS5で得られた燃料補正係数(Kipg)は、図3に示すように、プログラム演算手段14の変化率制限部18で、ボイラ設備10での操業運転状態の急激な変動を考慮して、変化率の制限を設ける。例えば、上記フィードバック制御に応じて連続して算出される燃料補正係数(Kipg)が、所定の変化率(例えば0.02/分)以下でしか変化しないように制限する。これにより、ボイラ設備10での操業運転状態の急激な変動を防止して、安定性を確保できる。
【0056】
このようにして、変化率制限部18にて燃料補正係数(Kipg)の変化率を制限した燃料補正係数(Kipgε)が求められ、乗算部19に出力される。なお、変化率制限部18は必ずしも設けなくてもよく、燃料補正係数(Kipg)をそのまま乗算部19に出力してもよい。
(Kipg)⇒(Kipgε)
なお、システム異常(エラー)時及びイニシャライズ(初期設定)時には、乗算部19への出力を切り替える切替部21に、係数リセットトリガが入力され、燃料補正係数(Kipgε)の代わりに、定数1が使用される。
【0057】
次いで、乗算部19では、上記燃料投入量演算部20により設定燃料関数F1と圧力補正後の要求蒸気量Bから求めた補正後の燃料投入量(Fueli)に、燃料補正係数(Kipgε)を乗算して、必要な主蒸気圧力に対応する適正な燃料投入量、即ち補正後の燃料投入量(Fuelii)を求める。
(Kipgε)・(Fueli)=(Fuelii)
なお、算出された燃料補正係数(Kipgε)の代わりに定数1を使用する場合、補正後の燃料投入量(Fuelii)は、以下の式で決定される。
1・(Fueli)=(Fueli)=(Fuelii)
この求めた燃料投入量(Fuelii)だけ、ボイラに燃料を供給して、必要な主蒸気圧力を得て発電量を得る。なお、求めた燃料投入量(Fuelii)をボイラに投入した後は、ボイラの主蒸気圧力が測定され、この測定主蒸気圧力により、前記した手順を繰り返し行う。
【0058】
なお、前記した燃料補正係数は、前記した条件A及び条件Bが成立する毎に、即ち入力要求蒸気量の変更時、又は、係数平均値(Kiε)が許容範囲を逸脱する毎に、前記した方法により新たに求めた燃料補正係数で更新することが好ましい。このように、更新した燃料補正係数を使用して、燃料投入量を補正することにより、発電量のばらつきを更に抑制できる。
また、発電量の変更に伴う入力要求蒸気量Aの変更継続中は、燃料補正係数を更新することなくそのまま使用し、入力要求負荷量Aの変更終了後から燃料補正係数を更新することが好ましい。これにより、変動因子を増やすことなく、発電量のばらつきを更に抑制できる。
【0059】
以上、本発明の関連技術に係るボイラ燃料の決定方法について詳述した。かかるボイラ燃料の決定方法によれば、以下のような効果がある。単位熱量変動のある石炭等を燃料として用いた場合であっても、石炭の実際の単位熱量を把握することなく、ボイラ伝熱面の汚れやガスエアーヒータ等の熱交換器劣化によるボイラ熱効率低下や、石炭の単位熱量差異の影響を補正でき、主蒸気圧力偏差に伴うハンチング現象を抑制した安定制御が可能である。
【0060】
つまり、上記ボイラ燃料の決定方法では、フィードバック補正後と補正前における値(例えば要求蒸気量(要求負荷量))に基づき、燃料補正係数を求めるので、現状のボイラ熱効率の変化や石炭の単位熱量変動を考慮した補正を逐次行い、ボイラへの適正燃料投入量を決定できる。また、フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶するので、予め設定したボイラ効率の変化に対する差異を無くし、この差異によって生じる燃料投入量のハンチングの変動幅を、従来技術よりも抑制できる。これにより、ボイラへの燃料過投入を抑制して、例えば、ボイラからの排ガス量の増加又はボイラの熱効率の低下を抑制できる。
【0061】
特に、燃料補正係数に、フィードバック補正前後における値の比又は差を使用し、予め求めた値の比に更新する値の比を逐次乗算、又は予め求めた値の差に更新する値の差を逐次加算して記憶する場合には、多大なデータ量を管理する必要性がなく、例えば、データ記憶のための記憶手段の容量を小さくできる。また、燃料補正係数を、フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次移動平均して記憶させ、この記憶させた値から求める場合には、制御精度が良くなるので好ましい。
【0062】
また、ボイラ負荷変更時又は燃料性状変化に伴う単位熱量変化時における、入力要求負荷変更の追従遅れを解消でき、燃料投入量のハンチングの変動幅を従来よりも抑制できる。ここで、例えば、多種燃料配分及びカロリー変化により、燃料投入量が、予め設定した適正値を外れた場合においても、常に要求蒸気量と燃料投入量との関係を適正値に保つことができる。従って、主蒸気圧力偏差(操作量)による加算量を減少でき、安定した適正燃料の供給が可能になる。
また、このように、主蒸気圧力による補正値加算がほとんどなくなることにより、比例、微分、及び積分による修正加算動作、即ちPID制御部11による演算操作を減少でき、燃料過投入(燃料投入量の過多及び過少を含む。)が解消される。加えて、発電負荷の安定性も図れる。
【0063】
更に、燃料過投入の発生及び主蒸気圧力の偏差補正加算を解消できる。燃料余剰分による蒸気量への影響(その他の要因)、及び適正燃料の相違による無駄な蒸気変動が解消され、燃料過投入も解消されることとなるため、ボイラのランニングコストの低減に繋がる。加えて、常に主蒸気圧力偏差(操作量)は無に等しく、主たる燃料投入指令量は、主蒸気圧力の変動に左右されることなく、ボイラの主蒸気圧力の安定性向上及び燃焼効率の向上に繋がる。
【0064】
特に、ボイラ使用燃料の単位熱量(J/m、J/トン)を、適正な単位熱量(即ち、燃料関数F1のXに相当)に設定できていない燃料(例えば、石炭の単位熱量変動)でも、適正な燃料関数F1に補正できる。
従って、燃料投入量の過投入が解消されるに伴い、燃料の燃焼時に発生する排ガス量の低減に繋がるため、排出ガス規制の進む現在においては、環境保全に適した操業を実施できる。
【0065】
以上、本願発明の関連技術に係るボイラ燃料の決定方法と、その効果について詳述した。しかしながら、本願発明者らが鋭意研究したところ、上記関連技術には次のような技術的課題があることが判明した。
【0066】
即ち、上記関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法において算出される燃料補正係数Kipgは、以下の3要素の影響を受けて変化するものである。
要素1:ボイラ伝熱面の汚れやガスエアーヒータ等の熱交換器の劣化に伴うボイラ熱効率低下
要素2:単位熱量変動がある燃料(石炭等)の制御用の基準単位熱量と実際の単位熱量との差異
要素3:混焼率によるボイラ熱効率の差異
【0067】
なお、鉄鋼業などで生成される低カロリー副生ガス等は、窒素などの不燃ガス成分が多いため、この低カロリー副生ガスと石炭等の高カロリー燃料とをボイラ燃料として用いる場合に、ガス混焼率を増加させると、ボイラ熱効率が悪化する(要素3)。なお、既に「複数種燃料混合燃焼比率による熱効率変化補正」を行っているボイラの場合は、要素3の影響は除外される。この補正有無の確認は、ボイラの制御回路を確認するか、実機にて燃料混合燃焼比率を変えて単位熱量の変化状況で確認できる。
【0068】
上記関連技術によれば、複数種燃料混合燃焼するボイラの場合(例えば、単位熱量変動がある第1燃料(石炭等)と、単位熱量が既知の第2燃料(低カロリー副生ガス等)を混合燃焼するボイラの場合)であっても、石炭とガスの混焼率が変化しない安定期間では、上記3要素を一括した補正係数Kipgに基づき燃料投入量を補正することで、燃料投入量を適正に補正することができた。
【0069】
しかしながら、混焼率を変化させる期間(非安定期間)では、上記関連技術のように3要素を一括した補正係数Kipgに基づき燃料投入量を補正すると、ボイラ燃料投入量を適正に制御できず、ボイラの熱量過不足が生じるという問題があった(後述する図14(b)参照。)。つまり、石炭等の第1燃料とガス等の第2燃料の混焼率を変更する度に、当該第1燃料の流量比率が変更となり、該第1燃料の単位熱量差異の影響比率が変化するため、ボイラの必要熱量ΣQに対しボイラ投入熱量に差異(過多又は過少投入)が発生してしまう。このため、混焼率の変更(燃料切替)の都度、燃料補正係数Kipgは変化し、制御に外乱を与え、燃料系統及び蒸気系統等の制御性を悪化させてしまっていた。
【0070】
また、上記関連技術では、石炭等の第1燃料の単位熱量が変化した場合、当該第1燃料の単位熱量変化に応じたボイラ負荷別の補正係数(上記図4のKiε1、Kiεx、Kiε3)の補正を、要素2の変化した分のみの補正として、ボイラ負荷変更前に予め行うことができない。そのため、ボイラ負荷の変更期間では、第1燃料の単位熱量に応じた補正を行う前の燃料補正係数Kipgで制御を行うため、制御性が悪いという問題もあった。
【0071】
そこで、本願発明らは、上記関連技術の問題点を鑑みて、複数種燃料混合燃焼ボイラでの混焼率の変化時における制御性を向上させるべく、鋭意努力して本願発明に相当した。以下に、本発明の第1の実施形態にかかるボイラ燃料投入量の決定方法について詳述する。
【0072】
(本発明の第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかるボイラ燃料投入量の決定方法が適用されるボイラと、このボイラで使用される燃料について説明する。本実施形態にかかるボイラは、少なくとも第1燃料と第2燃料とを含む複数種類の燃料を混合燃焼させて、この燃焼熱により蒸気を発生させる設備である。
【0073】
第1燃料は、単位熱量が変動し、かつ、測定に時間やコストがかかるため単位熱量が連続的に測定されない燃料であり、例えば、石炭、廃棄物固形燃料RDF、汚濁水炭素固形燃料などである。以下では、この第1燃料(「燃料A」という場合もある。)として、石炭の例を挙げて説明するが、かかる例に限定されるものではない。
この第1燃料としての石炭は、例えば、微粉炭機で微細粒子に粉砕されてボイラに供給されるが、その際、石炭の単位熱量(有効単位発熱量:実際に投入する際の熱量(J/ton−wet))は、常に一定なわけではなく、供給タイミングによって変動する。この石炭の単位熱量の変動の理由としては、(1)自然界でできた石炭は成分(工業分析、元素分析)が不安定なこと、(2)石炭ヤード等での石炭貯蔵中に、自然発熱による石炭劣化が発生し発熱量が変化すること、(3)石炭付着水分は、石炭管理状況に応じて石炭ヤード飛散防止用の散水や、雨天降水量により変化すること、石炭ヤードからの積み出し箇所により石炭付着水分が大きく異なること、などが挙げられる。
【0074】
このように、石炭は単位熱量変動があるが、ボイラに供給される迄の過程では、一般的に、石炭の単位熱量が連続的に測定されない。この理由としては、(1)一般的な石炭発熱量の推定式(デュイロンの式、香坂の式)を用いた場合には、推定誤差が大きいこと、(2)石炭類の発熱量測定は、日本工業規格JIS M8814−1993による燃研式B形熱量計又は燃研式自動熱量計によって、石炭試料を燃焼させて発熱量を測定する(無水ベース又は気乾ベースの総発熱量をもって発熱量とする)方法はあるが、有効単位発熱量(低位発熱量/t−全水分)に補正する必要があること、などが原因で、石炭の単位熱量測定は困難であり、当該測定に時間やコストを要するからである。このようにボイラに供給される石炭の単位熱量変動を把握できないと、石炭の実際の単位熱量と制御用の基準単位熱量との差異により、ボイラの熱量過不足が生じる。本実施形態では、このように第1燃料の単位熱量が全く測定されない場合であっても、当該第1燃料の実際の単位熱量を的確に把握して、燃料投入量の正確な制御を可能ならしめるものである。
【0075】
一方、第2燃料は、その単位熱量が既知の燃料(単位熱量を連続測定可能な燃料、及び、単位熱量変動が微小なため単位熱量の固定値を使用可能な燃料)である。この第2燃料としては、例えば、鉄鋼業等で生成される副生ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)等のガス燃料や、重油等の液体燃料などが挙げられる。このうち鉄鋼業等で生成される副生ガスは、例えば、コークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)、転炉ガス(LDG)、或いはこれらの混合ガスなどである。以下では、この第2燃料(「燃料B」という場合もある。)として、上記副生ガス(以下、単に「ガス」という。)の例を挙げて説明するが、かかる例に限定されるものではない。
【0076】
この第2燃料としてのガスは、ガスホルダー等のガス供給源から供給配管を介してボイラに供給される。このガスは、その単位熱量を測定可能であり、その測定方法としては、例えば、ボイラへの供給配管の途中でガス抜きをして当該ガスの燃焼実験を行う方法や、ガスクロマトグラフィー等のガス成分測定器で測定する方法などがある。
【0077】
本実施形態にかかるボイラでは、以上説明したような第1燃料(石炭)と第2燃料(ガス)とを少なくとも1種類以上ずつ含む混合燃料を燃焼させる。以下では、主に、石炭とガスの2種類の燃料を混合燃焼させる場合について説明するが、3種類以上の燃料(例えば、第1燃料である石炭と、第2燃料であるコークス炉ガスや高炉ガス、第3燃料である重油やミックスガス、…など)を混合燃焼させることもできる。
【0078】
ところで、本実施形態では、上述した関連技術の問題点を解決するため、ボイラ燃料制御装置に石炭の単位燃料を検知する特別な検出器を追加することなく、制御性を向上させる手段として、上記関連技術に係る燃料補正係数Kipg(第1燃料補正係数)を、上述した燃料補正係数Kipgに影響を及ぼす3要素に対応する補正係数(第1、2、3補正係数Ka、Kb、Kc)に細分化して、各々の補正係数Ka、Kb、Kcを設定し、混焼率の変更期間中に、混焼率に応じた燃料投入量の補正を行うようにしている。
【0079】
即ち、混焼率の変更期間中(燃料切替に伴い混焼率が変化する不安定期間)においては、第1、2、3補正係数Ka、Kb、Kcの積である第2燃料補正係数ΣKに基づいて、燃料投入量を補正する。一方、混焼率が変化しない安定期間においては、上述した関連技術と同様にして第1燃料補正係数Kipgを順次更新しながら、この第1燃料補正係数Kipgに基づいて、燃料投入量を補正する。これにより、混焼率の変更期間中であっても、石炭等の第1燃料の単位熱量の差異に応じて燃料投入量を補正できるとともに、混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に応じて燃料投入量を補正できる。従って、ボイラへの燃料過投入を抑制でき、燃料系統及び蒸気系統等の制御性を向上させることができる。
【0080】
ここで、上記本実施形態にかかる特徴である第1、2、3補正係数Ka、Kb、Kcと、第2燃料補正係数ΣKについて詳細に説明する。次の式(1)に示すように、第2燃料補正係数ΣKは、第1補正係数Kaと、第2補正係数Kbと、第3補正係数Kcとの積で表される。
【0081】
ΣK=Ka×Kb×Kc ・・・・・式(1)
ΣK:第2燃料補正係数。上記3要素を全て含む総合補正係数である。
Ka:第1補正係数。ボイラに設けられた熱交換器の劣化(例えば、節炭器、水冷壁、過熱器等の熱交換器の伝熱面の汚れ、ガスエアーヒータ等の劣化)に伴うボイラの熱効率低下(上記要素1)を補正するための係数である。
Kb:第2補正係数。第1燃料(石炭等)の制御用基準単位熱量と、実際の単位熱量の差異(上記要素2)を補正するための係数である。
Kc:第3補正係数。混焼率によるボイラの熱効率の差異(上記要素3)を補正するための係数である。
【0082】
次の表1に示すように、第1補正係数Ka(以下、「補正係数Ka」又は「Ka」という。)は、ボイラ負荷に応じて変化するが、混焼率に応じて変化はしない(混焼率の影響は、Kcの補正に含める。)。一方、第2補正係数Kb(以下、「補正係数Kb」又は「Kb」)及び第3補正係数Kc(以下、「補正係数Kc」又は「Kc」という。)は、ボイラ負荷に応じて変化しないが、混焼率に応じて変化する。これは、混焼率が変化することにより燃料成分が変わるが、このため燃焼後の排ガスの流量が変わることから、ボイラ(熱交換器)の熱伝達率およびボイラから排出される排ガスの持ち出し顕熱が増減して、ボイラの熱効率が変わるためである。
【0083】
【表1】

【0084】
次に、上記補正係数Ka、Kb、Kcの算出方法について説明する。本実施形態では、現在の混焼率の変更時(非安定期間)に用いられる補正係数Ka、Kbについては、当該変更時より前の「前回の混焼率の変更時(前回の非安定期間)」の変更前後における下記各パラメータの値から算出される。以下に、当該算出に用いる各パラメータを定義する。なお、燃料Aは、石炭等の第1燃料を表し、燃料B、C、…は、ガス等の第2燃料を表す。
【0085】
Ga:燃料A(例:石炭)の流量指令値(実際の供給流量)
qa:燃料Aの実単位熱量(有効単位熱量)
Qa:Ga×qa
qs:燃料Aの制御用の基準単位熱量(固定値)
Gb:燃料B(例:ガス)の流量指令値(実際の供給流量)
qb:燃料Bの実際の単位熱量
Qb:Gb×qb
ΣQ:全燃料の合計熱量(=Qa+Qb+…)
Fp:燃料A以外の燃料B、C、…の混焼率(例:ガス混焼率)
1−Fp:燃料Aの混焼率(例:石炭混焼率)
Σkipg:第1燃料補正係数
ΣK:第1燃料補正係数
【0086】
なお、混焼率とは、2種以上の燃料を同時に燃焼させるときの燃料の全熱量に対する燃料種別ごとの熱量の割合(熱量比)である。例えば、石炭(燃料A)とガス(燃料B)を混合燃焼させる場合、ガス混焼率が20%であれば、石炭混焼率は80%である。以下の説明では、混焼率として、燃料A以外の燃料の混焼率(ガス混焼率Fp)を用いて説明するが、燃料Aの混焼率(石炭混焼率(1−Fp))を用いて、各種の係数を計算することも勿論可能である。
【0087】
また、以下では説明の便宜上、上記各パラメータに関し、混焼率の変更前の値を表す場合は、各パラメータに「前」を添字し、混焼率の変更後の値を表す場合は、各パラメータに「後」を添字する(例:「Ga前」、「Ga後」)。なお、混焼率の変更前後で変化しないパラメータについては、添字しない。なお、ここでいう「混焼率の変更前」とは、例えば、混焼率の変更開始時点であるが、かかる例に限定されず、混焼率の変更開始時点以前であれば任意の時点であってよい。また、「混焼率の変更後」とは、例えば、混焼率の変更終了から所定時間経過した時点(後述する「算出時点」)であるが、かかる例に限定されず、混焼率の変更終了時点以後であれば任意の時点であってよい。
【0088】
まず、補正係数Kcの算出方法について説明する。Kcは、混焼率が変化する期間(非安定期間)における実際の混焼率(Fp)に基づき、予め設定された関係式に従って算出される。具体的には、Kcは、ボイラでの実機運転あるいは性能試験により、混焼率とボイラ熱効率との関係式(2)を予め設定し、混焼率の変更時における実際のガス混焼率Fpを、当該関係式(2)に代入して算出される。
Kc=∫(Fp) ・・・・・式(2)
【0089】
なお、混焼率(熱量比)Fpによるボイラ熱効率の低下を補正するための補正係数Kcは、本来、ボイラ負荷Pと混焼率Fpとの関数式[Kc=∫(P、Fp)]で表されるが、上記燃料関数F1に、既にボイラ負荷によるボイラ熱効率低下の補正が含まれているため、本実施形態では、上記混焼率Fpのみの関係式(2)としている。
【0090】
ここで、図5を参照して、上記Kcを求めるための関係式(2)の設定方法の具体例について説明する。図5(a)の表に示すように、実際のボイラを用いて運転試験を行い、ボイラ負荷ごとに、石炭専焼時とガス専焼時におけるボイラ効率ζc、ζgをそれぞれ求め、さらに、ガス混焼率1%当たりの、石炭専焼時のボイラ効率に対するガス専焼時のボイラ効率低下度{(ζg/ζc)/Fp}を算出した。これをプロットしたのが、図5(b)のグラフである。図5(b)に示すように、ガス混焼率Fpと、上記ボイラ効率低下度{(ζg/ζc)/Fp}とは相関があり、両者の関係から、上記式(2)の具体例として式(3)を求めた。
【0091】
0.1≦Fp≦0.5のとき
1/Kc=Fp×(0.9228×Fp^-1.0334) ・・・・・式(3)
Fp<0.1のとき
1/Kc=1.0
なお、Fpが0.1未満のときには、上記式(3)に従うと、1/Kc<1.0となるため、0.1≦Fpの条件を加えた。また、ボイラの運転実績を考慮して、Fp≦0.5の条件を加えた。例えば、このようにして、式(2)、(3)に従い、混焼率Fpに応じた、混焼率Fpによるボイラ熱効率の差異を補正するための補正係数Kcを求めることができる。
【0092】
次に、補正係数Ka、Kbの算出方法について説明する。まず、混焼率の変更後に、次の式(4)に従い、当該変更前後の燃料Aの流量(Ga前、Ga後)と、当該変更前後の燃料Bの流量(Gb前、Gb後)及び単位熱量(qb前、qb後)(即ち、燃料Bの熱量Qb前、Qb後)と、上記式(2)で算出される補正係数(Kc前、Kc後)とに基づいて、燃料Aの実際の単位熱量(qa)を算出する。さらに、次の式(5)に従い、式(4)で求めた燃料Aの単位熱量(qa)と、上記変更後の混焼率(Fp後)とに基づいて、補正係数(Kb)を算出する。
【0093】
【数1】

・・・・・式(4)
【0094】
【数2】

・・・・・式(5)
【0095】
また、混焼率の変更後(後述する整定時点)では、ΣK後=Kipg後であるので、上記(1)式より、下記の式(6)が得られる。この式(6)に従い、上記式(2)で算出された補正係数(Kc後)と、上記式(5)で算出された補正係数(Kb後)と、上述した関連技術の手法で求まる第1燃料補正係数(Kipg後)とに基づいて、補正係数(Ka後)を算出する。なお、このKaは、ボイラ負荷別に求められ、ボイラ燃料制御装置のメモリにボイラ負荷ごとに記憶され、新たなKaが算出されるたびに随時更新される。
Ka後=Kipg後/(Kb後×Kc後) ・・・・・式(6)
【0096】
上記のようにして、補正係数Kaが求まると、燃料Aである石炭が同炭種の場合には、ボイラの熱交換器の劣化は生じ難いので、補正係数Kaの値を一定値に維持しても問題ないと考えられる。従って、次回の混焼率の変更時までの安定期間(該燃料Aの専焼時又は混焼率の一定時)には、上記式(6)で算出された補正係数(Ka後:固定値)と、上記式(2)で算出された補正係数(Kc後:固定値)と、上記安定期間において随時更新される第1燃料補正係数(Kipg後:変動値)とに基づいて、下記式(7)に従い、補正係数(Kb後)を連続的に算出して、更新しておくことができる。さらに、上記式(5)に従い、当該連続的に算出される補正係数(Kb後)に基づき、燃料Aの単位熱量(qa)も連続的に算出して、更新しておくことができる。
Kb後=Kipg後/(Ka後×Kc後) ・・・・・式(7)
【0097】
このようにして、混焼率が不変の安定期間でも連続的にqa、Kb後を算出して更新しておくことにより、次回の混焼率の変更時には、当該変更直前に求められたqa、Kb後を用いて、上記第2燃料補正係数(ΣK)を求めることができる。これにより、最新の燃料Aの単位熱量を考慮してボイラ投入量を補正できるので、制御性が更に向上する。
【0098】
なお、燃料Aの補正係数Kbを第2燃料補正係数ΣKから分離し、燃料Aの基準単位熱量qsを、求めた実際の単位熱量qaに置き換えることで、補正することもできる。しかし、この場合、燃料Aの単位熱量を直接補正するタイミングと、第2燃料補正係数ΣKからKbを除いた補正係数に移行する期間では、制御に外乱を与える要因となる。
【0099】
また、ボイラには、蒸気の吹きつけにより熱交換器の伝熱面に付着した燃焼灰を除去するスーツブロワ(図示せず。)が設けられているが、このスーツブロワの蒸気に、ボイラから発生した主蒸気を使用している場合は、主蒸気圧力に影響することから、スーツブロワ使用中(含むスーツブロワ配管の暖管中)には、該当箇所の伝熱面熱収支が定常と異なるため、上記補正係数の計算を行わない方が好ましい。
【0100】
以上のように、本実施形態では、上記第1燃料補正係数Kipgを3要素の補正係数Ka、Kb、Kcに分割し、燃料Aと燃料Bの混焼率を変更する度に、補正係数Ka、Kb、Kcと、燃料A(石炭等)の単位熱量qaとを算出して、次回の混焼率変更時(非安定期間)に、第2燃料補正係数ΣK(=Ka×Kb×Kc)を用いてボイラ燃料投入量を適正値に制御することができる。さらに、安定期間においてもKb、qaを継続的に算出することで、燃料Aの最新の単位熱量qaを反映した第2燃料補正係数ΣKを設定して、燃料投入量をより適正に制御できる。
【0101】
次に、図6〜図8を参照して、本実施形態にかかるボイラ燃料投入量の決定方法及び、これを実行するボイラ燃料制御装置について説明する。なお、図6は、本実施形態にかかるボイラ燃料制御装置の構成を示すブロック図であり、図7は、本実施形態にかかるボイラ燃料制御装置のプログラム演算手段114を詳細に示すブロック図であり、図8は、本実施形態にかかるボイラ燃料制御装置の燃料投入部130を詳細に示すブロック図である。
【0102】
図6及び図7に示すように、本実施形態にかかるボイラ燃料制御装置は、ボイラ設備110のボイラとタービン(図示せず。)とを接続する主蒸気管における主蒸気圧力を測定する主蒸気圧力発信器Rと、この測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力との圧力偏差をPID制御してフィードバック補正量を求めるPID制御部111と、入力要求蒸気量A(MWi)に上記フィードバック補正量を加算して要求蒸気量B(MWii)を出力する加算部112と、要求蒸気量Bを入力要求蒸気量Aで除算する除算部113と、除算部113の出力結果及び各種入力値に基づいて燃料補正係数を演算するプログラム演算手段114と、加算部112の出力した要求蒸気量B(MWii)から燃料関数F1に基づいて燃料投入量(Fueli)を算出する燃料投入量演算部120と、燃料投入量(Fueli)に燃料補正係数を乗算して補正後の燃料投入量(Fuelii)を出力する乗算部119と、補正後の燃料投入量(Fuelii)に応じて、各燃料A、B、…をボイラに投入する燃料投入部130とを備える。
【0103】
このうち、上記主蒸気圧力発信器Rは、ボイラ設備110のボイラで発生した主蒸気圧力を測定する測定手段の一例である。また、PID制御部111及び加算部112は、測定蒸気圧力と設定蒸気圧力とに基づきフィードバック補正量を求め、当該フィードバック補正量に基づき前記ボイラへーの燃料投入量を補正するフィードバック制御手段の一例である。また、加算部112、プログラム演算手段114及び乗算部119は、上記フィードバック制御手段によるフィードバック補正後の値(例えば、燃料投入量Fueli)を補正する補正手段の一例である。
【0104】
このような本実施形態にかかる主蒸気圧力発信器R、PID制御部111、加算部112、除算部113、乗算部119、燃料投入量演算部120は、上述した関連技術(図2〜図3参照)にかかる主蒸気圧力発信器P、PID制御部11、加算部12、除算部13、乗算部19、燃料投入量演算部20と同一の機能構成を有するので、その詳細説明は省略する。なお、除算部113は、フィードバック前後の値の差を求める減算部に代えることもできる、また、乗算部119は、燃料補正係数を燃料投入量Fueliに加算する加算部に代えることもできる。なお、燃料投入部130については後述する。
【0105】
また、図6に示すように、本実施形態にかかるプログラム演算手段114には、例えば、ボイラ最大負荷(MWt)、ボイラ部分負荷(MWx)、ボイラ最大負荷(MWm)、制御用燃料指定、演算開始・停止トリガ、リセットトリガ、燃料Aの流量指令Gaおよび基準単位熱量qs、燃料Bの流量指令Gbおよび単位熱量qb、…、などの各種パラメータが入力される。なお、図6中の(*番号)と図8中の(*番号)は対応する情報を表す。
【0106】
プログラム演算手段114は、フィードバック補正後の値(要求蒸気量B)と当該フィードバック補正前の値(入力要求蒸気量A)との比又は差の値を逐次更新しつつ、記憶手段としてのメモリ(図示せず。)に記憶し、当該メモリ記憶した複数の値と、入力された各パラメータから第1燃料補正係数Kipgと、第2燃料補正係数ΣKを求める。
【0107】
図7に示すように、プログラム演算手段114は、一次遅れ補正部115と、移動平均算出部116と、プログラム演算部117と、第1変化率制限部118−1と、第2変化率制限部118−2と、トランスファーリレー122と、スイッチ部121とを備える。このうち、一次遅れ補正部115、移動平均算出部116及びスイッチ部121は、上述した関連技術(図3参照)にかかる一次遅れ補正部15、移動平均算出部16及びスイッチ部21と略同一の機能構成を有するので、その詳細説明は省略する。
【0108】
プログラム演算部117は、上記関連技術に係るプログラム演算部17と同様にして、移動平均算出部116から入力された係数平均値Kiεに基づいて、第1燃料補正係数Kipgを演算して(図4等参照)、第1変化率制限部118−1に出力する。さらに、このプログラム演算部117は、上述した係数算出方法に従い、補正係数Ka、Kb、Kc、第1燃料の単位熱量qa、及び第2燃料補正係数ΣK等を算出して、第2燃料補正係数ΣKを第2変化率制限部118−2に出力する。
【0109】
第1変化率制限部118−1(変化率小)は、上記関連技術に係る変化率制限部18に対応する。この第1変化率制限部118−1は、例えば、上記プログラム演算部117により連続的に算出・出力される第1燃料補正係数Kipgが、所定の第1上限変化率(例えば0.02/分)以下でしか変化しないように変化率を制限する。これにより、ボイラ設備110での操業運転状態の急激な変動を防止して、安定性を確保できる。
【0110】
また、第2変化率制限部118−2(変化率大)は、上記第1変化率制限部118−1をバイパスするライン上に設けられ、上記第1変化率制限部118−1の第1上限変化率よりも大きな第2上限変化率が設定されている。この第2変化率制限部118−2は、例えば、上記プログラム演算部117により連続的に算出・出力される第2燃料補正係数ΣKが、所定の第2上限変化率(例えば0.10/分)以下でしか変化しないように変化率制限する。このように第2上限変化率を大きく設定することで、混焼率Fpの変化に伴って補正係数Kb、Kcが変化することで第2燃料補正係数ΣKも変化するとき、混焼率Fpの変化とほぼ同一速度で補正係数ΣKεを変化させて、追従性を向上させることができる。よって、混焼率の変化に応じて、燃料投入量の補正を迅速に実行できる。
【0111】
トランスファーリレー122は、出力切替手段の一例であって、第1変化率制限部118−1から出力される変化率が制限された第1燃料補正係数Kipgεと、第2変化率制限部118−2から出力される変化率が制限された第2燃料補正係数ΣKεとを切り替えて、スイッチ部121に出力する。このトランスファーリレー122は、混焼率が不変の安定期間(後述する整定期間)では、第1燃料補正係数Kipgεを出力し、一方、混焼率が変化する非安定期間(後述する未整定期間)では、第2燃料補正係数ΣKεを出力する。
【0112】
このトランスファーリレー122において、第1燃料補正係数Kipgεから第2燃料補正係数ΣKεへの切り替えのトリガは、例えば、「燃料Bの流量指令変更(混焼率の変更開始)」や、「ボイラ負荷指令変更」などである。また、第2燃料補正係数ΣKεから第1燃料補正係数Kipgεへの切り替えのトリガは、例えば、「混焼率の変更終了から所定時間経過後(後述の整定)」や、「第1変化率制限器118−1の出力(Kipgε)と第2変化率制限器118−2の出力(ΣKε)とがほぼ同一になったこと」などである。なお、例えば、遅延タイマーを設けて、燃料補正係数の切替時間を計測し、当該切替のタイムオーバー時は、警報、表示等によりオペレータに通知したり、燃料補正係数を適正値に固定(例えば、1.0にリセット)したりといった処置をとることもできる。
【0113】
乗算部119は、上記燃料投入量演算部120から出力された補正後の燃料投入量Fueliに、第1燃料補正係数Kipgεまたは第2燃料補正係数ΣKεを乗算して、必要な主蒸気圧力に対応する適正な燃料投入量Fueliiに補正し、この補正後の燃料投入量Fueliiを燃料投入部130に出力する。
【0114】
次に、図8を参照して、燃料投入部130の構成及び動作について説明する。図8に示すように、燃料投入部130は、上記補正後の燃料投入量Fueliiに応じて、ボイラ10に各燃料A、B、C、…をそれぞれ供給する。このとき、制御用燃料が、石炭等の第1燃料(燃料A)に設定されるか、ガス等の第2燃料(燃料B、C、…)に設定されるかで、制御フローが異なる。図8では、制御用燃料が燃料A(例えば石炭)に設定された場合と、燃料B(例えばコークス炉ガス)に設定された場合について示してある。なお、制御用燃料とは、ボイラの負荷を目標値に制御するために、ボイラへの投入量(供給流量)が増減される燃料であり、この制御用燃料以外の燃料は流量が指令値で設定される。
【0115】
まず、制御用燃料が燃料A(例えば石炭)に設定された場合について説明する(図8の上部を参照。)。この場合、燃料A以外の燃料B、C、D…の流量指令Gb、Gc、Gd…[m/H]は、一定である。燃料Bの流量制御装置131は、ガスホルダー等の燃料B供給源132から供給された燃料B(例えばコークス炉ガス)を、燃料Bの流量指令Gbに応じた流量でボイラ設備110に供給する。このとき、単位熱量計測部133により、燃料B供給源132から流量制御装置131に供給される燃料Bの単位熱量qb[J/m]が測定される。単位変換部134は、当該燃料Bの単位熱量qbと、燃料Aの基準単位熱量qsとに基づいて、燃料Bの流量指令Gbの単位を石炭換算の流量に変換して([m/H]→[ton/H])、加算部135に入力する。同様にして、他の燃料C、D…の流量Gc、Gd[ton/H]も、加算部135に入力される。加算部135は、これら燃料B、C、D…の流量Gb、Gc、Gdを合計した流量ΣFuel[ton/H]を減算部136に出力する。減算部136は、上記乗算部119から入力された補正後の燃料投入量Fuelii[ton/H]から、当該合計流量ΣFuelを減算した値を、燃料A(石炭)の流量指令Ga[ton/H]として、燃料Aの流量制御装置137に出力する。すると、燃料Aの流量制御装置137は、微粉炭機等の燃料A供給源138から供給された燃料A(石炭)を、燃料Aの流量指令Gaに応じた流量でボイラ設備110に供給する。
【0116】
次に、制御用燃料が燃料B(例えばコークス炉ガス)に設定された場合について説明する(図8の下部を参照。)。なお、コークス炉ガスは単位熱量が比較的高いので、制御用燃料として使用できる。この場合、燃料B以外の燃料A、C、D…の流量指令Ga、Gc、Gd…[m/H]は、一定である。燃料Aの流量制御装置137は、燃料A供給源138から供給された燃料A(例えば石炭)を、燃料Aの流量指令Ga[ton/H]に応じた流量でボイラ設備110に供給する。この燃料Aの流量指令Gaは、加算部135にも入力される。また、加算部135には、上記と同様にして、石炭換算された他の燃料C、D…の流量Gc、Gd[ton/H]も入力される。加算部135は、これら燃料A、C、D…の流量Ga、Gc、Gdを合計した流量ΣFuel[ton/H]を、減算部136に出力する。減算部136は、上記乗算部119から入力された補正後の燃料投入量Fuelii[ton/H]から、当該合計流量ΣFuelを減算した値を、単位換算部139に出力する。単位換算部139は、単位熱量計測部133により測定された燃料Bの単位熱量qb[J/m]と、燃料Aの基準単位熱量qsとに基づいて、上記減算部136の出力値の単位を体積換算の流量に変換して([ton/H]→[m/H])、燃料Bの流量指令Gbとして、燃料Bの流量制御装置131に出力する。すると、燃料Bの流量制御装置131は、燃料B供給源132から供給された燃料B(例えばコークス炉ガス)を、燃料Bの流量指令Gbに応じた流量[m/H]でボイラ設備110に供給する。
【0117】
以上のように、燃料投入部130は、上記乗算部119から入力された補正後の燃料投入量Fueliiに応じて、各燃料A、B、C、…を適切な流量でボイラに供給して混合燃焼させる。
【0118】
以上、本実施形態にかかるボイラ燃料制御装置の各部の構成及び動作について説明した。上記各部の機能を実行させるプログラムをコンピュータにインストールすることで、上記ボイラ燃料制御装置を好適に構築可能である。かかるプログラムも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0119】
次に、図9〜図11を参照して、本実施形態にかかるボイラ燃料投入量の決定方法、特に、燃料補正係数の算出フローについて、より詳細に説明する。図9は、本実施形態にかかるボイラ設備110において、混焼率変更およびボイラ負荷変更を伴う運転動作の具体例を示す説明図であり、図10は、上記関連技術にかかる燃料補正係数の算出フローを示すフロー図であり、図11は、本実施形態にかかる燃料補正係数の算出フローを示すフロー図である。なお、図9〜図11では、燃料A(石炭)と燃料B(ガス)の2種類の燃料を混合燃焼させ、制御用燃料が燃料Aである例を示している。
【0120】
図9に示すように、本実施形態にかかるボイラは、複数段階で負荷変更(例えば、負荷率で30%、50%、100%など)することができる。図9の例では、ボイラに対する負荷指令は、負荷率50%へ低下(〜T1)、50%維持(T1〜T9)、50%から100%へ増加(T9〜T10)、100%維持(T10〜T14)、100%から50%へ低下(T14〜T15)、50%維持(T15〜)と変化している。ボイラ負荷を増加させる期間(T9〜T10)では、負荷指令が徐々に増加し、それに伴い燃料Aの流量が追従して増加しており、この結果、ガス混焼率Fpは20%から10%に減少している。一方、ボイラ負荷を低下させる期間(T14〜T15)では、負荷指令が徐々に減少し、それに伴い燃料Aの流量が追従して減少しており、この結果、ガス混焼率Fpは15%から30%に増加している。なお、ボイラ負荷を変更する期間でも、上述した主蒸気圧力偏差に基づくフィードバック制御は、継続して実行されている。
【0121】
また、図9の例では、燃料Bの流量指令Gbの変更(T3、T5、T7、T12、T17)に伴い、燃料Bであるガスの混焼率Fpも変化(50%→40%→60%→20%、10%→15%、30%→50%)している。これに伴い、燃料Aである石炭の流量指令値Gaの変更がなされ、かつ、混焼率(1−Fp)も変化(50%→60%→40%→80%、90%→85%、70%→50%)している。
【0122】
このような、ボイラ負荷変更後や、燃料Bの流量変更(即ち、ガス混焼率の変更)後に、所定時間経過すると、ボイラは安定して定常運転できるようになる(即ち、整定する)。以下に、図9に示されている用語について定義する。
【0123】
「整定時点」とは、燃料Bの流量指令値が変更(又はボイラ負荷指令値が変更)された後に、再び当該指令値が一定となってから所定の設定時間経過した時点である。例えば、燃料Bの流量指令変更時は、変更後に流量指令値が一定となってから例えば5分後が整定時であり、また、ボイラ負荷指令変更時は、変更後に負荷指令値が一定となってから例えば15分後が整定時である。図9の例では、T2、T11、T16が、ボイラ負荷変更後の整定時点(■マーク)であり、T4、T6、T8、T13、T18が、混焼率変更後の整定時点(□マーク)である。
「整定期間」とは、上記整定時点から、燃料B流量指令(又はボイラ負荷指令)が変更開始される時点までの期間である(図9のT2〜T3、T4〜T5、T6〜T7、T8〜T9、T11〜T12、T13〜T14、T16〜T17)。
「未整定期間」とは、燃料Bの流量指令(又はボイラ負荷指令)が変更された時点(即ち、混焼率の変更開始時点)から、上記整定時点までの期間である(図9のT3〜T4、T5〜T6、T7〜T8、T9〜T11、T12〜T13、T14〜T16、T17〜T18)。
「算出時点(☆マーク)」とは、上記燃料Bの流量変更(即ち、ボイラ負荷一定、かつ、混焼率変更)後の整定時点(□マーク)から、所定の設定時間経過後(例えば5分後)である。この算出時点で、補正係数Ka、Kb、Kc等が算出される。なお、この算出時点は、上記ボイラ負荷変更後の整定時点(■マーク)後には、設けられない。
「負荷変更期間」とは、ボイラ負荷指令の変更開始時点から、上記負荷変更後の整定時点までの期間である(図9の〜T2、T9〜T11、T14〜T16)。また、「負荷不変期間」とは、上記負荷変更後の整定時点から、次のボイラ負荷指令の変更開始時点までの期間(T2〜T9、T11〜T14、T16〜)である。
【0124】
以上、図9を参照して、本実施形態にかかるボイラの運転動作例について説明した。次に、上記のようなボイラの運転動作において、燃料投入量を補正するための燃料補正係数の算出方法について説明する。以下では、本実施形態にかかる燃料補正係数の算出方法の特徴を明確にするために、まず、図10を参照して、上記関連技術にかかる燃料補正係数の算出フローについて説明する。
【0125】
図10に示すように、上記関連技術では、ボイラの運転中には継続的に、PID制御部11により、測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力との偏差に基づいてPID制御によりフィードバック補正量(蒸気量)を求め(ステップS10)、次いで、加算部12により、このフィードバック補正量を入力要求蒸気量(MWi)に加算し(ステップS11)、さらに、当該加算された要求蒸気量(MWii)に応じて燃料関数F1により燃料投入量Fueliを求めている(ステップS12)。
【0126】
このとき、除算部13により、上記フィードバック補正量が加算される前後の値を除算して((MWii)/(MWi))、係数基準値(Ki)を求める(ステップS13)。なお、このステップS13では、フィードバック補正量が加算される前後の値を減算して、((MWi)−(MWii))、係数基準値(Ki)を求めてもよい。次いで、一時遅れ補正部15により、係数基準値(Ki)を一次遅れ補正して係数基準値(Ki1)とし、さらに、移動平均算出部16により、所定期間内に求められる係数基準値(Ki1)を移動平均して、係数平均値(Kiε)を求める(ステップS14)。
【0127】
また、ボイラ運転中には、プログラム演算部17は、入力されるボイラ負荷指令MWiに基づき、ボイラ負荷指令変更の有無を常に判別しており(ステップS15)、ボイラ負荷変更がある場合(即ち、負荷変更期間中)には、ステップS16を行わずに、ステップS17のみを行う。一方、ボイラ負荷変更がない場合(即ち、負荷不変期間中)には、ステップS16及びステップS17の双方を行う。
【0128】
ステップS16では、ボイラの負荷不変期間中に、プログラム演算部17によって、上記ステップS14で新たに求められた係数平均値(Kiε)を、ボイラ負荷別(最低負荷、部分負荷又は最大負荷)にメモリに保存する(ステップS16)。このとき、ボイラ負荷指令MWiにより現在のボイラ負荷を判別し、当該現在のボイラ負荷に対応するメモリ内既存の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3のいずれか)に、上記新たに求めた係数平均値(Kiε)を乗算(又は加算)して、メモリ内既存の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)を更新保存する。
【0129】
その後、ステップ17では、ボイラの負荷不変期間中及び負荷変更期間中に、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)に基づいて、現在のボイラ負荷での第1燃料補正係数(Kipg)を演算する(ステップS17)。例えば、現在のボイラ負荷率(MWr)が最低負荷(MWmr)、部分負荷(MWmr)又は最大負荷(MWtr)のいずれかである場合には、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)のうち、当該現在負荷率に相当する補正係数をそのまま読み出して、第1燃料補正係数(Kipg)とする。また、例えば、現在のボイラ負荷率(MWr)が最低負荷率(MWmr)と部分負荷(MWxr)との間の場合には、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)のうち、最低負荷率(MWmr)の補正係数(Kiε1)と、部分負荷(MWxr)の補正係数(Kiεx)とを読み出し、次の式で、第1燃料補正係数(Kipg)を演算する。
Kipg={(Kiεx−Kiε1)/(MWxr−MWmr)}×(MWr−MWmr)+Kiε1
【0130】
さらに、このようにして得られた第1燃料補正係数(Kipg)は、変化率制限部18により変化率が制限され(ステップS18)。そして、この変化率が制限された第1燃料補正係数(Kipgε)は、スイッチ部21を介して出力され、上記乗算部119にて燃料投入量(Fueli)に乗算(又は加算)される。
【0131】
なお、ボイラ設備110の停止後の立上げや試運転等の特殊運転、燃料の種類変更、プログラム演算異常時などに応じて、必要なトリガを設定し、適宜、トリガ発信することも可能である(ステップS19)。例えば、演算開始・停止トリガにより、上記プログラム演算手段14での係数演算を開始・停止することができる。また、係数リセットトリガにより、メモリに記憶されている補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)や、出力される第1燃料補正係数(Kipg)をリセットして、その値を1.0にすることもできる。
【0132】
以上のように、関連技術にかかる燃料補正係数の算出フローでは、ボイラの負荷不変期間(T2〜T9、T11〜T14、T16〜)のみ、メモリ内の負荷ごとの係数平均値(Kiε1、Kiεx、Kiε3)を連続的に更新して、第1燃料補正係数Kipgを算出する。一方、ボイラの負荷変更期間(図9の〜T2、T9〜T11、T14〜T16)では、当該メモリ内の係数平均値の更新を行わずに、過去にメモリに保存された係数平均値(Kiε1、Kiεx、Kiε3)を読み出して、第1燃料補正係数Kipgを算出している。また、混焼率の変更に伴う未整定期間(図9のT3〜T4、T5〜T6、T7〜T8、T12〜T13、T17〜T18)であっても、整定期間と同様にして、第1燃料補正係数Kipgが算出される。このため、混焼率の変更期間やボイラの負荷変更期間での制御性が低下していた。
【0133】
次に、図11を参照して、本実施形態にかかる燃料補正係数の算出フローについて詳細説明する。
【0134】
図11に示すように、本実施形態では、上記関連技術と同様に、ボイラの運転中には継続的に、PID制御部111により、測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力との偏差に基づいてPID制御によりフィードバック補正量(蒸気量)を求め(ステップS20)、次いで、加算部112により、このフィードバック補正量を入力要求蒸気量(MWi)に加算し(ステップS21)、さらに、当該加算された要求蒸気量(MWii)に応じて燃料関数F1により燃料投入量(Fueli)を求めている(ステップS22)。
【0135】
このとき、除算部113により、上記フィードバック補正量が加算される前後の値を除算して((MWii)/(MWi))、係数基準値(Ki)を求める(ステップS23)。なお、このステップS23では、フィードバック補正量が加算される前後の値を減算して、((MWi)−(MWii))、係数基準値(Ki)を求めてもよい。次いで、一時遅れ補正部115により、係数基準値(Ki)を一次遅れ補正して係数基準値(Ki1)とし、さらに、移動平均算出部116により、所定期間内に求められる係数基準値(Ki1)を移動平均して、係数平均値(Kiε)を求める(ステップS24)。
【0136】
また、ボイラ運転中には常に、プログラム演算部117は、入力されるボイラ負荷指令(MWi)に基づき、ボイラ負荷指令変更の有無を判別しているとともに、燃料A及び燃料Bの流量指令(Ga、Gb)に基づき、燃料A、Bの流量変更の有無(即ち、混焼率の変更有無)を判別している(ステップS25)。この判別の結果、ボイラ負荷指令(MWi)及び燃料流量指令(Ga、Gb)の双方とも変更がない場合(整定期間)には、ステップS26に進む。一方、ボイラ負荷指令(MWi)または燃料流量指令(Ga、Gb)の少なくとも一方に変更がある場合(未整定期間)には、ステップS28に進む。
【0137】
ステップS26では、プログラム演算部117により、整定期間中(図9のT2〜T3、T4〜T5、T6〜T7、T8〜T9、T11〜T12、T13〜T14、T16〜T17)に、現在のボイラ負荷(MWi)に応じた第1燃料補正係数(Kipg)が算出される(ステップS26)。
【0138】
具体的には、ステップS26−1では、まず、整定期間の開始時(即ち、燃料Bの流量変更後の整定時点(図9のT4、T6、T8、T13、T18:□マーク)、或いは、ボイラ負荷変更後の整定時点(図9のT2、T11、T16:■マーク)、直前の未整定期間で求められた第2燃料補正係数(ΣKε)を、メモリ内の現在のボイラ負荷別(最低負荷、部分負荷又は最大負荷)の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3のいずれか)の初期値として保存する。上記第2燃料補正係数(ΣKε)は、後述のステップS32、S33により、当該整定直前の未整定期間の終了時点(即ち、整定時点)で求められた値である。このように未整定期間の終了時に求めた第2燃料補正係数(ΣKε)を、整定期間の開始時での初期値として使用することで、整定期間の開始直後の制御性が向上する。
【0139】
次いで、ステップS26−2では、上記ステップS24で整定期間中に随時求められた係数平均値(Kiε)を、ボイラ負荷別(最低負荷、部分負荷又は最大負荷)にメモリに保存する(ステップS26−2)。このとき、ボイラ負荷指令(MWi)により現在のボイラ負荷を判別し、当該現在のボイラ負荷に対応するメモリ内既存の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3のいずれか)に、上記求められた係数平均値(Kiε)を順次、乗算(又は加算)して、メモリ内既存の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)を更新保存する。
【0140】
さらに、ステップS26−3では、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)に基づいて、現在のボイラ負荷での第1燃料補正係数(Kipg)を演算する。例えば、現在のボイラ負荷率(MWr)が最低負荷(MWmr)、部分負荷(MWmr)又は最大負荷(MWtr)のいずれかである場合には、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)のうち、当該現在負荷率に相当する補正係数をそのまま読み出して、第1燃料補正係数(Kipg)とする。また、例えば、現在のボイラ負荷率(MWr)が最低負荷率(MWmr)と部分負荷(MWxr)との間の場合には、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3)のうち、最低負荷率(MWmr)の補正係数(Kiε1)と、部分負荷(MWxr)の補正係数(Kiεx)とを読み出し、次の式で、第1燃料補正係数(Kipg)を演算する。
Kipg={(Kiεx−Kiε1)/(MWxr−MWmr)}×(MWr−MWmr)+Kiε1
【0141】
以上のステップS26で第1燃料補正係数(Kipg)が得られると、ステップS27に進み、上記第1変化率制限部118−1により第1燃料補正係数(Kipg)の変化率が、所定の第1変化率以下に制限される(ステップS27)。このときの第1変化率は、ボイラ設備110での操業運転状態の急激な変動を防止できるような値(例えば0.02/分)に設定される。そして、この変化率が制限された第1燃料補正係数(Kipgε)を、トランスファーリレー122に出力して、ステップS34に進む。なお、このステップS27を省略して、第1燃料補正係数(Kipg)の変化率を制限せずに、そのまま出力することもできる。
【0142】
一方、上記ステップS25で、燃料流量指令値またはボイラ負荷指令値が変更されたと判断された場合には、ステップS28に進む。なお、これらの指令値が変更されれば、燃料A、Bの混焼率も変化するので、当該指令値の変更時は、混焼率の変更時に対応する。ステップS28では、表2に示すように燃料B流量指令又はボイラ負荷指令の変更時(即ち混焼率の変更時)における、変更直前、変更後の算出時点、変更後の指令値の各データをメモリに保存する。算出時点とは、上述したように、流量またはボイラ負荷の指令値の変更後に、当該指令値が一定となってから所定時間経過後の時点(図9の☆マーク参照)である。なお、Kipg後は、整定期間中の算出時点において、上記ステップS26で求められたものであり、整定時点後にKipgが何度か更新されて、ある程度安定したときの値である。
【0143】
【表2】

【0144】
上記ステップS28の後に、ボイラ負荷一定で混焼率が変更された場合(即ち、ボイラ負荷指令値の変更ではなく、燃料の流量指令値の変更があった場合)には、整定期間中に以下のステップS29、S30、S31の処理を行った後、未整定期間中の処理であるステップS32に進む。一方、ボイラ負荷変更があった場合には、ステップS29の処理を行うことなく、ステップS28から直接的にステップS32に進む。
【0145】
ステップS29では、上述した算出時点(☆マーク)で、上記ステップS28でメモリに保存されたデータや、入力された燃料Aの基準単位熱量qs、混焼率Fp等に基づき、補正係数Ka、Kb、Kc及び燃料Aの実際の単位熱量qaを算出して、ボイラ負荷別にKaをメモリに保存する。
【0146】
具体的には、まず、ステップS29−1では、燃料流量の変更直前および変更後の燃料混焼率(Fp前、Fp後)を算出する。燃料Bの混焼率(ガス混焼率)Fpは、以下の式(8)で求められる。このとき、燃料Aの熱量Qa’は、初期は、基準単位熱量qsを使用し、Qa’=Ga×qsから求められる。また、初期以降は、サブルーチンB(ステップS31)の最新値qaを使用し、Qa'=Ga×qaから求められる。
Fp=Qb/ΣQ=(Gb×qb)/(Qa’+Qb+…) ・・・・・式(8)
【0147】
次いで、ステップS29−2では、予め設定された関係式(2)に従い、補正係数(Kc前)、(Kc後)を算出する。さらに、ステップS29−3では、上述した式(4)に従って、燃料Aの単位熱量(qa後(=qa前))を算出し、メモリに記憶する。その後、ステップS29−4では、上述した式(5)に従い、補正係数(Kb後)を算出する。次いで、ステップS29−5では、上述した式(6)に従い、補正係数(Ka後(=Ka前))を算出する。
【0148】
その後、ステップS29−6では、ボイラ負荷指令MWiに基づき現在のボイラ負荷を把握した上で、上記算出した補正係数(Ka後)の値をそのまま、ボイラ負荷別の係数(Ka1、Kax、Ka3)のいずれかとしてメモリ内に保存する。例えば、現在のボイラ負荷率が最大負荷率(100%)である場合には、最大負荷に対応する(Ka3)として、上記求めた(Ka後)をメモリに記憶する。以上まで、ステップS29が終了する。
【0149】
次いで、ステップS30のサブルーチンAでは、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Ka1、Kax、Ka3)に基づいて、現在のボイラ負荷での補正係数(Kan)を演算する(ステップS30)。例えば、現在のボイラ負荷率(MWr)が最低負荷(MWmr)、部分負荷(MWmr)又は最大負荷(MWtr)のいずれかである場合には、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Ka1、Kax、Ka3)のうち、当該現在負荷率に相当する補正係数をそのまま読み出して、補正係数(Kan)とする。また、例えば、現在のボイラ負荷率(MWr)が最低負荷率(MWmr)と部分負荷(MWxr)との間の場合には、上記メモリに保存されているボイラ負荷別の補正係数(Ka1、Kax、Ka3)のうち、最低負荷率(MWmr)の補正係数(Ka1)と、部分負荷(MWxr)の補正係数(Kax)とを読み出し、次の式で、第1燃料補正係数(Kipg)を演算する。
Kan={(Kax−Ka1)/(MWxr−MWmr)}×(MWr−MWmr)+Ka1
【0150】
また、ステップS31のサブルーチンBでは、燃料流量変更後の整定期間において、整定後に随時、第1燃料補正係数(Kipg)を用いて、燃料Aの最新の単位熱量(qa)を連続的に算出して、メモリに保存・更新する(ステップS31)。
【0151】
具体的には、まず、上述した式(7)に従い、(Kb後)を連続的に算出する。このとき、(Kc後)は、上記式(2)に従い算出され、混焼率Fpが不変であるので固定値である。また、(Ka後)は、上記サブルーチンA(ステップS30)に従い算出され、ボイラ負荷が不変であるので固定値である。また、(Kipg後)は、整定期間中に上記ステップS26で連続的に算出されるものである。
Kb後=Kipg後/(Ka後×Kc後) ・・・・・式(7)
【0152】
次いで、このように求めた(Kb後)を用いて、上述した式(5)を変形した下記の式(9)に従い、燃料Aの最新の単位熱量(qa)を連続的に算出し、最新の(qa)をメモリに更新保存する。
qa=qs×(1−Fp)/(Kb後−Fp) ・・・・・式(9)
【0153】
次に、未整定期間の処理であるステップS32について説明する。ステップS32では、未整定期間において、燃料流量変更後又はボイラ負荷変更後の混焼率Fpを推定計算して、当該混焼率Fpに基づき補正係数Ka、Kb、Kcを随時算出し、第2燃料補正係数ΣKを連続的に算出する(ステップS32)。
【0154】
具体的には、まず、ステップS32−1では、上記算出された燃料Aの単位熱量qa(サブルーチンBにより得られる最新値qaが好ましい。)を用いて、燃料B流量指令又はボイラ負荷指令の変更による変更後の燃料A、Bの流量を算出し、当該変更後の混焼率(Fp(仮))を推定計算する。例えば、以下の各条件ごとに、以下の式(10)〜式(13)に従い、上記変更後の混焼率Fp(仮)を推定計算できる。なお、ここでは、全燃料の合計熱量ΣQが当該変更前後で不変である(ΣQ前=ΣQ後)と仮定して、混焼率Fp(仮)を求める。
【0155】
<ボイラ負荷が一定で、燃料B流量指令変更時>
・熱量Bが制御用燃料でない場合
Fp(仮)=(Gb指令値×qb前)/燃料変更前の合計熱量ΣQ
・・・・・式(10)
・熱量Bが制御用燃料である場合
Fp(仮)=(燃料変更前の合計熱量ΣQ−Ga指令値×qa)/燃料変更前の合計熱量ΣQ ・・・・・式(11)
【0156】
<ボイラ負荷指令変更時>
・熱量Bが制御用燃料でない場合
Fp(仮)=(Gb前×qb前)/(Ga指令値×qa+Gb前×qb前)
・・・・・式(12)
・熱量Bが制御用燃料である場合
Fp(仮)=(Gb指令値×qb前)/(Ga前×qa+Gb指令値×qb前)
・・・・・式(13)
【0157】
次いで、ステップS32−2では、上記推定算出されたFp(仮)に基づき、次の式(14)(上記式(2)に相当する。)に従い、上記変更後のKc(仮)を算出する。さらに、上記Fp(仮)と上記燃料Aの単位熱量qaとに基づき、次の式(15)(上記式(5)に相当する。)に従い、上記変更後のKb後(仮)を算出する。また、燃料変更後のKan(仮)は、上記サブルーチンA(ステップS30)により、算出される。
Kc(仮)=∫(Fp(仮)) ・・・・・式(14)
Kb(仮)=(qs/qa)×(1−Fp(仮))+Fp(仮) ・・・式(15)
【0158】
次いで、ステップS32−3では、以下の手順(a)〜(f)により第2燃料補正係数ΣKを収束計算する。
(a)上記ステップS32−2で算出された補正係数Ka、Kb、Kcを積算して、ΣKを算出する(ΣK=Kan×Kb×Kc)。
(b)当該算出したΣKにより合計熱量ΣQ後を、燃料変更後の合計熱量ΣQ後=ΣQ前×(ΣK/Kipg後)により再計算し、上記式(10)〜式(13)に従い、再度、混焼率Fpを算出する。
(c)再算出した混焼率Fpにより、上記式(2)に従い、変更後のKcを再算出する。
(d)この再算出したKcと上記単位熱量qaとを用いて、上記式(5)に従い、変更後のKbを再算出する。
(e)再算出したKb、Kcを用いてΣKを再算出する(ΣK=Kan×Kb×Kc)。
(f)上記(a)のΣKと上記(e)のΣKとの差が収束したときの結果、或いは、上記(a)〜(e)までの処理を所定の上限回数まで繰り返し計算したときの結果を、最終的なΣKとして決定する。
【0159】
以上のようなステップS32により、未整定期間において、混焼率Fpの変化に応じた適切なKc、Kbを随時求めて、第2燃料補正係数ΣKを連続的に算出する。
【0160】
次いで、ステップS33では、上記算出された第2燃料補正係数(ΣK)の変化率が、上記第2変化率制限部118−2により、所定の第2変化率以下に制限される(ステップS33)。このときの第2変化率は、混焼率Fpの変更に伴い補正係数Kb、Kcが変化するため、この混焼率変更とほぼ同一速度で第2燃料補正係数ΣKも変更することができるように、上記第1制限率よりも大きい変化率(例えば0.10/分)に設定される。そして、この変化率が制限された第2燃料補正係数(ΣKε)が、トランスファーリレー122に出力されて、ステップS34に進む。なお、このステップS33を省略して、第2燃料補正係数(ΣK)の変化率を制限せずに、そのまま出力することもできる。
【0161】
ステップS34では、トランスファーリレー122により、上記算出された第1燃料補正係数(Kipgε)または第2燃料補正係数(ΣKε)を切り替えて出力する。整定期間または未整定期間のいずれにおいても、プログラム演算手段114は、上述した(Kipgε)と(ΣKε)の双方を計算し続けており、トランスファーリレー122は、整定期間では(Kipgε)を出力し、非整定期間では(ΣKε)を出力する。例えば、トランスファーリレー122は、燃料B流量指令変更(又はボイラ負荷指令変更)をトリガとして、当該指令値変更から所定の設定時間経過後(例えば15秒後)に、燃料補正係数を(Kipgε)から(ΣKε)に切り替えて出力する。また、トランスファーリレー122は、整定をトリガとして、所定の設定時間経過後(例えば5分後)に、燃料補正係数を(ΣKε)から(Kipgε)に切り替えて出力する。
【0162】
なお、ボイラ設備110の停止後の立上げや試運転等の特殊運転、燃料の種類変更、プログラム演算異常時などに応じて、必要なトリガを設定して、適宜、トリガ発信することも可能である(ステップS35)。例えば、演算開始・停止トリガにより、上記プログラム演算手段114での係数演算を開始・停止することができる。また、係数リセットトリガにより、メモリに記憶されている補正係数(Kiε1、Kiεx、Kiε3、Ka1、Kax、Ka3)や、出力される燃料補正係数(Kipg、ΣK)をリセットして、その値を1.0にすることもできる。
【0163】
ここで、図12を参照して、本実施形態にかかる燃料補正係数の算出方法について、より具体的に説明する。図12は、本実施形態にかかる燃料補正係数の算出方法の具体例を示す説明図であり、上記図9の一部に対応している。
【0164】
図12に示すように、燃料Bの流量変更指令(T3)があり、ガス混焼率Fpが50%→40%に変更された場合(T3〜T4)、当該変更後の整定時点(T4)から、2回目の変更開始時点(T5)までは整定期間であり、Kipgが連続的に算出されて、Kipgにより、燃料投入量が補正される。この整定期間の途中で、上記1回目の変更後の整定(T4)から所定時間(例えば5分)経過した算出時点(T4’)で、当該変更直前(T3時点)と算出時点(T4’)のデータ(表2参照)を用いて、Ka(1)とqa(1)が算出される(図10のステップS29参照)。さらに、この算出時点以降の整定期間(T4’〜T5)では、上記図10のステップS31の処理により、qa(1)が随時更新される(qa(1)、qa(1)、qa(1)、…、qa(1))。なお、Ka(1)は、メモリに記憶されて一定値で保持される。
【0165】
次いで、2回目の燃料Bの流量変更指令(T5)があり、ガス混焼率Fpが40%→60%に変更される未整定期間(T5〜T6)では、当該2回目の変更開始(T5)直前に算出された最新のqa(1)と、実際の混焼率Fp(40%→60%で変化)とに基づいてKbが随時算出されるとともに、実際の混焼率Fp(40%→60%で変化)に基づいてKcが随時算出される。そして、この未整定期間(T5〜T6)では、このように随時算出されるKb及びKcと、上記算出時点(T4’)で算出されたKa(1)とを乗算して、ΣKが連続的に算出されて、このΣKにより燃料投入量が補正される。
【0166】
さらに、この2回目の混焼率の変更後の整定時点(T6)から、3回目の変更開始時点(T7)までの整定期間では、再びKipgが連続的に算出されて、このKipgにより、燃料投入量が補正される。このとき、整定時点(T6)直後のKipgの初期値として、整定時点(T6)直前の未整定期間中に算出されたΣK(=Ka(1)×Kb{qa(1)、Fp(60%)}×Kc{Fp(60%)})が用いられ、メモリに初期値として保存される。この初期値であるKipg(=ΣK)は、整定期間(T6〜T7)中に随時、Kiεにより更新される。なお、Kipgの初期値としては、変化率が制限されたΣKεを使用しても勿論よい。
【0167】
また、この整定期間(T6〜T7)の途中で、当該整定時点(T6)から所定時間(例えば5分)経過した算出時点(T6’)で、当該変更直前(T5時点)と算出時点(T6’)のデータを用いて、Ka(2)とqa(2)が算出される。さらに、この算出時点以降の整定期間(T6’〜T7)では、上記と同様に、qa(2)が随時更新される(qa(2)、qa(2)、qa(2)、…、qa(2))。なお、Ka(2)は、メモリに記憶されて一定値で保持される。
【0168】
その後、3回目の燃料Bの流量変更指令(T7)があり、ガス混焼率Fpが60%→20%に変更される未整定期間(T7〜T8)では、当該3回目の変更開始(T7)直前に算出された最新のqa(2)と、実際の混焼率Fp(60%→20%で変化)とに基づいてKbが随時算出されるとともに、実際の混焼率Fp(60%→20%で変化)に基づいてKcが随時算出される。そして、この未整定期間(T7〜T8)では、このように随時算出されるKb及びKcと、上記算出時点(T6’)で算出されたKa(2)とを乗算して、ΣKが連続的に算出されて、このΣKにより燃料投入量が補正される。
【0169】
なお、図9に示すように、ボイラ負荷変更(T9〜T10)後に初めて、ボイラ負荷一定で燃料Bの流量変更(T12)による混焼率変更が生じた場合の未整定期間(T12〜T13)では、同一のボイラ負荷率(100%)での前回の混焼率変更時に算出されてメモリに記憶されているKaと、ボイラ負荷変更前の整定期間(T8〜T9)に求められた最新のqa及び実際の混焼率Fpとから算出されるKbと、実際の混焼率Fpから算出されるKcと、を積算して、ΣKが求められる。
【0170】
以上、図9〜図12を参照して説明したように、本実施形態にかかる燃料補正係数の算出フローでは、燃料Bの流量変更による未整定期間(図9のT3〜T4、T5〜T6、T7〜T8、T9〜T11、T12〜T13、T14〜T16、T17〜T18)では、燃料補正係数を3つの補正係数Ka、Kb、Kcに分割し、混焼率Fpの変化に応じた適切なKb、Kcをリアルタイムで算出するとともに、実際のボイラ負荷率に応じた適切なKaを用いて、第2燃料補正係数ΣKを求め、燃料投入量を補正する。
【0171】
従って、本実施形態にかかるボイラ燃料投入量の決定方法によれば、上記関連技術にかかる作用効果に加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0172】
まず、本実施形態によれば、ボイラ設備100において、石炭等の第1燃料の単位熱量が全く測定されない場合であっても、上記手法により当該第1燃料の実際の単位熱量を的確に把握できる。このため、燃料切替による混焼率Fp変化期間中に、燃料A(例えば石炭)の単位熱量qaの差異に応じて燃料投入量Fueliiを適切に補正できるとともに、混焼率Fpの変化に伴うボイラ熱効率の差異に応じて燃料投入量Fueliiを適切に補正できる。従って、上記従来技術のみならず上記関連技術と比べても、ボイラへの燃料投入量を適切に制御して、ボイラへの燃料過投入を抑制でき、燃料系統及び蒸気系統等の制御性を向上させることができる。
【0173】
さらに、本実施形態によれば、ボイラ負荷の変更期間中においても、上記従来技術のみならず上記関連技術と比べても、燃料投入量の制御性を向上させることができる。例えば、上記関連技術の制御では、ボイラ負荷を最大負荷から最低負荷に変更するとき、燃料補正係数Kipgは、負荷低下に伴って、メモリ内に記憶された負荷別の補正係数Kiεnのうち最大負荷時のKiε3(最新のデータ)から、最低負荷のKiε1(過去のデータ)に近づいていく(図10参照)。しかし、このKiε1は、過去の燃料A(例えば石炭)の単位熱量qaおよび過去の混焼率Fpに基づくものであり、現在の単位熱量qaおよび混焼率Fpに基づくものではないので、燃料補正係数Kipgは適正値からのズレが発生する。
【0174】
これに対して、本実施形態にかかる制御では、補正係数Kb、Kcにより、燃料Aの最新の単位熱量qa及び実際の混焼率Fpに応じた補正が可能であるので、上記補正係数のズレは発生しないため、燃料投入量の過不足による外乱を抑制できる。また、石炭等の単位熱量qaの変化時点で、当該単位熱量qaの変化に応じて補正係数を事前に補正できる。このため、ボイラ負荷変化時は、当該単位熱量qaを補正後の補正係数で制御を行うことができるため、ボイラ負荷変化時の制御性が向上する。
【0175】
よって、複数種燃料混合燃焼を行うボイラにおいて、混焼率の変化時やボイラ負荷変化時であっても、石炭等の単位熱量変動がある燃料の単位熱量の差異、及び、混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に対応して、ボイラの要求負荷量に応じた適正な燃料投入量に補正でき、燃料過投入を抑制して、制御性を向上させることができる。従って、ボイラからの排ガス量を減少させ、ボイラの熱効率を向上できる。
【0176】
次に、本発明の実施形態の変形例に係るボイラ燃料投入量の決定方法について、図13を参照して説明する。
【0177】
図13に示すように、変更例に係るボイラ燃料制御装置では、燃料投入量演算部120の下流側で燃料投入部130の上流側に、フィードバック制御用の加算部112が配置されている。このようなボイラ燃料制御装置を用いたボイラ燃料投入量の決定方法では、まず、燃料投入量演算部120にて、ボイラへの入力要求蒸気量(入力要求負荷量)を燃料関数F1により燃料投入量Aに換算した後、上記加算部112にて、ボイラへの燃料投入量Aにフィードバック補正量を加算して、燃料投入量Bに補正する。なお、燃料補正係数の算出には、図13に示す圧力補正後の燃料投入量Bと補正前の燃料投入量Aとの比又は差を使用し、乗算部119(又は加算部)にて、求めた燃料補正係数Kipgε、ΣKεにより、圧力補正後における燃料投入量Bを補正する。
【実施例】
【0178】
次に、図14を参照して、本発明にかかるボイラ燃料投入量の決定方法の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。図14は、従来技術にかかる制御(a)と、上記関連技術にかかる制御(b)と、本発明の実施例にかかる制御(c)におけるボイラ燃料投入量(熱量)過不足の変動推移を示すグラフである。
【0179】
なお、(a)〜(c)いずれの場合においても、第1燃料(燃料A)として石炭、第2燃料(燃料B)としてガスを使用し、ガス流量の増減によりガス混焼率を0%→13%→50%→13%→0%の順で変動させ、石炭の単位熱量の差異(qa−qs)を−20%とし、ボイラ負荷は一定とした。また、従来技術の制御では、蒸気量PIDによるフィードバック制御のみを行っており、燃料補正係数による燃料投入量の補正は行っていない。また、関連技術の制御では、上記フィードバック制御と、第1燃料補正係数Kipgによる燃料投入量の補正を行っている。これに対し、本発明の実施例の制御では、上記フィードバック制御と、第1燃料補正係数Kipg及び第2燃料補正係数ΣKによる燃料投入量の補正を行っている。
【0180】
図14(a)に示すように、従来技術では、ガス混焼率の変更時には、燃料投入量(熱量)の過多又は過小が顕著に生じている。さらに、ガス混焼率の一定時であっても、燃料投入量が常に増減して追従性が悪く(大きなハンチングの発生)、ボイラへの燃料過不足が生じている。
【0181】
また、図14(b)に示すように、関連技術の制御では、従来技術の制御と比べて、ガス混焼率の一定時のハンチングは改善されているものの、ガス混焼率の変更時における燃料投入量(熱量)の過多又は過小は、依然として顕著である。例えば、ガス混焼率を13%から50%に増加させるとき、並びに、50%から30%に減少させるときには、約6%もの熱量過多、過少が生じている。また、ガス混焼率を0%から13%に増加させるとき、並びに、13%から0%に減少させるときにも、約2%もの熱量過多、過少が生じている。
【0182】
これに対して、図14(c)に示すように、本願発明の制御では、上記従来技術および関連技術の制御と比較して、ガス混焼率の一定時のハンチングが改善されているのみならず、ガス混焼率の変更時における燃料投入量(熱量)の過多又は過小も、大幅に改善されている。具体的には、ガス混焼率の変更時における燃料投入量の過不足は約0.5%未満であり、これは、従来技術および関連技術の過不足と比べて約12分の1である。以上のような結果によれば、本願発明のボイラ燃料投入量の決定方法により、ボイラへの燃料過投入を抑制して、燃料投入量の制御性を向上できることが実証されたといえる。
【0183】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0184】
例えば、上記実施形態では、燃料関数F1で求めた燃料投入量を燃料補正係数で補正した場合について説明したが、燃料関数F1を燃料補正係数で補正することも勿論可能である。また、上記実施形態では、ボイラの要求負荷量を要求蒸気量として説明したが、ボイラの蒸気量は発電量と略同様の推移を示すため、要求負荷量を要求発電量とすることも可能である。
【0185】
また、上記実施形態で設定した各種の数値(例えば、ガス混焼率、ボイラの部分負荷数、燃料補正係数の変化率など)は、上記数値例に限定されるものではない。例えば、本発明のボイラ燃料投入量の決定方法を適用する設備の規模及び操業条件により、この設備を安定に、更には経済的に操業できるならば、その操業範囲において種々変更することも勿論可能である。
【0186】
また、上記実施形態では、フィードバック補正後の値(当該補正後の要求蒸気量又は燃料投入量)と、フィードバック補正前の値(当該補正前の要求蒸気量又は燃料投入量)との比を使用して、係数平均値Kiε(新たに求めた値の比)をメモリ内既存の補正係数Kiεx(予め求めた値の比)へ逐次乗算して更新保存し、これから求めた燃料補正係数Kipgεを、乗算部119で燃料投入量Fueliに乗算したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、除算部113の代わりに減算部を設けて、燃料補正係数Kipgεの算出に、フィードバック補正後の値とフィードバック補正前の値との差を使用し、プログラム演算部117にて、係数平均値Kiεをメモリ内に既存の補正係数Kiεxへ逐次加算して更新保存し、そして、得られた燃料補正係数Kipgを、乗算部119の代わりの加算部により、フィードバック後の値に加算することもできる。
【0187】
また、上記実施形態では、乗算部119を燃料投入量演算部120と燃料投入部130との間に配置して、燃料投入量Fueliを燃料補正係数Kipg、ΣKで補正したが(図6、図7参照。)、本発明はかかる例に限定されず、最終的に燃料投入量に対して、燃料補正係数による補正の影響が及ぶのであれば、燃料補正係数Kipg、ΣKによる補正をどの段階で行ってもよい。例えば、乗算部119(又は加算部)を、加算部112と燃料投入量演算部120との間、或いは、加算部112の上流側に配置することで、要求蒸気燃料B或いは入力要求蒸気量Aに燃料補正係数Kipg、ΣKを乗算(又は加算)して、当該要求蒸気燃料B或いは入力要求蒸気量Aを補正してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図2】同関連技術に係るボイラ燃料投入量の決定方法を実行するボイラ燃料制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同関連技術に係るボイラ燃料制御装置のプログラム演算手段を詳細に示すブロック図である。
【図4】同関連技術に係るプログラム演算手段のプログラム演算部の動作を示すフロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る補正係数Kcを求めるための関係式の設定方法の具体例を示す説明図である。
【図6】同実施形態にかかるボイラ燃料制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】同実施形態にかかるボイラ燃料制御装置のプログラム演算手段を詳細に示すブロック図である。
【図8】同実施形態にかかるボイラ燃料制御装置の燃料投入部を詳細に示すブロック図である。
【図9】同実施形態にかかるボイラにおいて、混焼率変更およびボイラ負荷変更を伴う運転動作の具体例を示す説明図である。
【図10】上記関連技術にかかる燃料補正係数の算出フローを示すフロー図である。
【図11】同実施形態にかかる燃料補正係数の算出フローを示すフロー図である。
【図12】同実施形態にかかる燃料補正係数の算出方法の具体例を示す説明図である。
【図13】同実施形態の変更例にかかるボイラ燃料制御装置の構成を示すブロック図である。
【図14】従来技術にかかる制御(a)と、上記関連技術にかかる制御(b)と、本発明の実施例にかかる制御(c)におけるボイラ燃料投入量の過不足の変動推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0189】
110 ボイラ設備
111 PID制御部
112 加算部
113 除算部
114 プログラム演算手段
115 一次遅れ補正部
116 移動平均算出部
117 プログラム演算部
118−1 第1変化率制限部
118−2 第2変化率制限部
119 乗算部
120 燃料投入量演算部
121 スイッチ部
122 トランスファーリレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位熱量変動があり、かつ、当該単位熱量が連続的に測定されない第1燃料と、単位熱量が既知の第2燃料とを少なくとも含む複数種類の燃料を混合燃焼させたときの燃焼熱により蒸気を発生するボイラにおいて、入力要求負荷量に応じて前記ボイラへの燃料投入量を求め、当該求めた燃料投入量に応じて前記ボイラに前記複数種類の燃料をそれぞれ供給しつつ、前記ボイラで発生した蒸気圧力を測定し、当該測定蒸気圧力と設定蒸気圧力とに基づきフィードバック補正量を求め、当該フィードバック補正量に基づき前記ボイラへの燃料投入量を補正する、ボイラ燃料投入量の決定方法であって、
前記ボイラ要求負荷量および前記複数種類の燃料の混焼率が不変の安定期間では、
前記フィードバック補正後の値と前記フィードバック補正前の値との比又は差の値を逐次更新しつつ記憶し、当該記憶した複数の値から求めた第1燃料補正係数に基づいて、前記フィードバック補正後または補正前の値を補正し、
前記ボイラ要求負荷量または前記複数種類の燃料の混焼率の少なくともいずれかが変更される非安定期間では、
前記ボイラに設けられた熱交換器の劣化に伴う前記ボイラの熱効率低下を補正するための第1補正係数と、前記第1燃料の単位熱量の実単位熱量との差異を補正するための第2補正係数と、前記混焼率による前記ボイラの熱効率の差異を補正するための第3補正係数との積である第2燃料補正係数に基づいて、前記フィードバック補正後または補正前の値を補正し、
前記第3補正係数は、前記混焼率に基づき、予め設定された関係式に従い算出され、
前記第2補正係数については、前回の混焼率の変更時における当該変更前後の前記第1燃料の流量と、当該変更前後の前記第1燃料以外の燃料の流量及び単位熱量と、当該変更前後に算出された前記第3補正係数とに基づいて、前記第1燃料の単位熱量を算出することで、当該第1燃料の単位熱量と、前記前回の混焼率の変更後の混焼率とに基づいて、前記第2補正係数が算出され、
前記第1補正係数は、前記算出された第3補正係数と、前記算出された第2補正係数と、前記前回の混焼率の変更後の第1燃料補正係数とに基づいて算出されることを特徴とする、ボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項2】
前記安定期間において、
前記算出された第1補正係数と、前記算出された第3補正係数と、前記安定期間において連続的に更新される第1燃料補正係数とに基づいて、前記第1燃料の単位熱量を連続的に算出しておき、
前記非安定期間において、
前記非安定期間に移行する直前に算出された前記第1燃料の単位熱量と、前記混焼率とに基づいて、前記第2補正係数を算出することを特徴とする、請求項1に記載のボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項3】
前記非安定期間は、前記混焼率が変更開始された時点から、当該変更の終了後に所定時間経過した整定時点までの未整定期間であり、
前記安定期間は、前記整定時点から、前記混焼率が再び変更開始される時点までの整定期間であることを特徴とする、請求項1または2に記載のボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項4】
前記第1補正係数は、前記整定時点から所定時間経過後に算出され、次回の整定時点まで同一の値で維持されることを特徴とする、請求項3に記載のボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項5】
前記第1補正係数は、前記ボイラの負荷率ごとにそれぞれ算出されて、記憶手段に記憶され、
前記非安定期間では、前記記憶手段に記憶されている前記第1補正係数に基づいて、前記ボイラの実際の負荷率に応じた前記第1補正係数が算出されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項6】
前記フィードバック補正は、前記ボイラの入力要求負荷量に対して行われ、
前記フィードバック補正前の値は、前記ボイラの入力要求負荷量であり、
前記フィードバック補正後の値は、当該入力要求負荷量をフィードバック補正した後の要求負荷量であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項7】
前記フィードバック補正は、前記ボイラの入力要求負荷量から求めた前記ボイラへの燃料投入量に対して行われ、
前記フィードバック補正前の値は、前記ボイラの入力要求負荷量から求めた燃料投入量であり、
前記フィードバック補正後の値は、当該燃料投入量をフィードバック補正した後の燃料投入量であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のボイラ燃料投入量の決定方法。
【請求項8】
単位熱量変動があり、かつ、当該単位熱量が連続的に測定されない第1燃料と、単位熱量が既知の第2燃料とを少なくとも含む複数種類の燃料を混合燃焼させたときの燃焼熱により蒸気を発生するボイラにおいて、前記ボイラへの燃料投入量を制御するボイラ燃料制御装置であって、
入力要求負荷量に応じて前記ボイラへの燃料投入量を求める燃料投入量演算部と、
前記燃料投入量演算部により求められた燃料投入量に応じて、前記ボイラに前記複数種類の燃料をそれぞれ供給する燃料投入部と、
前記ボイラで発生した蒸気圧力を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された測定蒸気圧力と設定蒸気圧力とに基づきフィードバック補正量を求め、当該フィードバック補正量に基づき前記ボイラへーの燃料投入量を補正するフィードバック制御手段と、
前記フィードバック制御手段によるフィードバック補正後または補正前の値を補正する補正手段と、
を備え、
前記補正手段は、
前記ボイラ要求負荷量および前記複数種類の燃料の混焼率が不変の安定期間では、前記フィードバック補正後の値と当該フィードバック補正前の値との比又は差の値を逐次更新しつつ記憶し、当該記憶した複数の値から求めた第1燃料補正係数に基づいて、前記フィードバック補正後または補正前の値を補正し、
前記ボイラ要求負荷量または前記複数種類の燃料の混焼率の少なくともいずれかが変更される非安定期間では、前記ボイラに設けられた熱交換器の劣化に伴う前記ボイラの熱効率低下を補正するための第1補正係数と、前記第1燃料の単位熱量の実単位熱量との差異を補正するための第2補正係数と、前記混焼率による前記ボイラの熱効率の差異を補正するための第3補正係数との積である第2燃料補正係数に基づいて、前記フィードバック補正後または補正前の値を補正し、
前記補正手段は、
前記混焼率に基づき、予め設定された関係式に従い前記第3補正係数を算出し、
前回の混焼率の変更時における当該変更前後の前記第1燃料の流量と、当該変更前後の前記第1燃料以外の燃料の流量及び単位熱量と、当該変更前後に算出された前記第3補正係数とに基づいて、前記第1燃料の単位熱量を算出し、当該第1燃料の単位熱量と、前記前回の混焼率の変更後の混焼率とに基づいて、前記第2補正係数を算出し、
前記算出された第3補正係数と、前記算出された第2補正係数と、前記前回の混焼率の変更後の第1燃料補正係数とに基づいて、前記第1補正係数を算出することを特徴とする、ボイラ燃料制御装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項8に記載のボイラ燃料制御装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−8522(P2008−8522A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177314(P2006−177314)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(599030688)郵船商事株式会社 (8)
【Fターム(参考)】