説明

ボタン

【課題】本発明は、耐油性、多数個取りして製造した場合の低反り性、及び耐磨耗性に優れたボタンを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、(A)ポリアセタール樹脂100質量部、(B)脂肪酸エステル0.01〜0.9質量部、及び(C)酸化チタン0.3〜3質量部とからなる樹脂組成物(I)と、(D)ポリアセタール樹脂100質量部、(E)脂肪酸エステル0.01〜0.9質量部、及び(F)顔料0.01〜3質量部とからなる樹脂組成物(II)と、が一体に成形された、表面に2色以上の領域を有するボタンを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を用いて多色成形された操作ボタン、特にゲーム機用コントローラーに好適に用いられる操作ボタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲーム機、携帯電話等の各種機械装置の操作には広く押しボタンが用いられている。これらの押しボタンの表面には、押しボタンの機能や分類を表示するために、文字、数字、記号、絵等が付されることがあり、そのために押しボタンを異なる樹脂素材で2色成形する方法が知られている。
【0003】
2色成形を行うために用いられる樹脂として、ポリアセタール樹脂が知られている。ポリアセタール樹脂は機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、且つその加工が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品及びその他の機構部品を中心に広範囲に亘って用いられている。
例えば、特開2000−76954号公報(特許文献1)には、材質の異なる表示側ノブと軸受側ノブとがそれぞれ2色成形され、軸受側ノブがポリアセタールからなる照光式ノブが記載されている。また、特開2001−011196号公報(特許文献2)では、ポリアセタール樹脂を電子機器の操作ボタンのキートップに使用することが開示されている。この種の押しボタンの成形品に対し、塗料で塗装したり、インクで印刷したり、レーザー加工したり、金属メッキ等で表面加飾する方法も知られている。
【0004】
しかしながら、従来の押しボタンでは、指が押しボタンと接触するにもかかわらず、耐油性が考慮されていなかった。そのため、ワセリンを含むハンドクリーム等が付着した指でボタンを触るとボタンの質量や寸法が変化し、ボタンとボタンの支持部とがこすれるようになり、ボタンの動作がぎこちなくなったり、異音が発生したりする場合がある。
【0005】
また、押しボタンの製造においては、生産性を高めるため射出成形時に多数個取りすることが通常になりつつある。しかし、多数個取りして製造されたボタンは、ボタン成形品の理想形状に対する反りが大きくなり、ボタンの寸法が変化しやすいため、ボタンとボタンの支持部とこすれるようになり、ボタンの動作がぎこちなくなったり、異音が発生したりする場合がある。さらに2色成形の場合、2材質の反りが大きくなり、2材質の合わせ面がずれる、ボタン表面に段差が生じ指に違和感があるなどの不具合があった。
【0006】
また、従来のボタンは、繰り返し使用する場合の耐久性、特に耐磨耗性が問題になっていた。ボタンは手指、ボタン支持部、ボタン根本部などさまざまな部位で他部品に接触する。特に最近はゲーム機のコントローラーなどに使用されているボタンは繰り返し押され、磨耗が激しくボタンとして機能しなくなる不具合があった。
【0007】
また、ポリアセタールを2色成形のキートップに用いた特開平7−88884号公報(特許文献3)では、ポリアセタールを光透過性樹脂として用い、また光遮断性樹脂部分に光の透過性の無いポリカーボネイトやABS樹脂等を使用することが記載されているが、この技術では2色成形の材質が異なり、片方が必ずポリアセタールでなくなる。したがって、耐油性が不十分であり、多数個取りして製造した場合の低反り性や、耐磨耗性にも劣っていた。
【特許文献1】特開2000−76954号公報
【特許文献2】特開2001−011196号公報
【特許文献3】特開平7−88884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、耐油性、多数個取りして製造した場合の低反り性、及び耐磨耗性に優れた操作ボタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、酸化チタンを含むポリアセタール樹脂と、顔料を含むポリアセタール樹脂を用いて2色成形を行うことにより、耐油性、低反り性、耐磨耗性に優れた操作ボタンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕少なくとも、(A)ポリアセタール樹脂100質量部、(B)脂肪酸エステル0.01質量部〜0.9質量部、及び(C)酸化チタン0.3質量部〜3.0質量部を含む樹脂組成物(I)と、(D)ポリアセタール樹脂100質量部、(E)脂肪酸エステル0.01質量部〜0.9質量部、及び(F)顔料を含む樹脂組成物(II)と、が一体に成形された、表面に2色以上の領域を有するボタン;
〔2〕前記(C)酸化チタンが、0.5質量部〜2.0質量部である、上記〔1〕に記載のボタン;
〔3〕前記(C)酸化チタンが、ポリエチレンのマトリクス中に分散している、上記〔1〕または〔2〕に記載のボタン;
〔4〕前記樹脂組成物(II)の一部が表面に露出し、他の部分が前記樹脂組成物(I)によって覆われている、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のボタン;
〔5〕前記樹脂組成物(II)を覆う前記樹脂組成物(I)の厚みが1mm以下である、上記〔4〕に記載のボタン;
〔6〕表面粗さが10μm以下である、上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載のボタン;
〔7〕前記樹脂組成物(I)と前記樹脂組成物(II)とが、金型温度70℃以上で成
形された、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のボタン;
〔8〕ゲーム機用の操作ボタンである、上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載のボタン、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐油性及び耐磨耗性に優れ、多数個取りしても反りが生じ難い操作ボタンを得ることができる。かかるボタンは、ゲーム機をはじめとする電子機器製品に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳しく説明する。
本発明の樹脂組成物(I)に含まれる(A)ポリアセタール樹脂、及び樹脂組成物(II)に含まれる(B)ポリアセタール樹脂としては、それぞれ、ホルムアルデヒド単量体、またはその3量体(トリオキサン)もしくは4量体(テトラオキサン)等の環状オリゴマーを原料として製造された、実質的にオキシメチレン単位からなるオキシメチレンホモポリマーに末端安定化を行って得られたポリオキシメチレンホモポリマー、ならびに上記原料と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオール、グリコールのホルマール、ジグリコールのホルマール等の環状ホルマール等のコモノマーから製造された、炭素数2〜8のオキシアルキレン単位を0.1〜20重量%含有するオキシメチレン−オキシアルキレンコポリマーに末端安定化処理を行って得られたポリオキシメチレンコポリマーを挙げることができる。
【0012】
また、(A)ポリアセタール樹脂及び(D)ポリアセタール樹脂は、それぞれ、分岐した構造の分子鎖よりなるオキシメチレン−オキシアルキレンコポリマーでもよいし、またポリオキシメチレン(POM)ブロックを50重量%以上と、オキシメチレンの繰り返し単位を50重量%以上含むPOMとは異なるポリマーブロックとからなるオキシメチレン系ブロックコポリマーであってもよい。好ましくは、コモノマーに1,3−ジオキソランを使用して製造されたオキシメチレン−オキシアルキレンからなる、ポリオキシメチレンコポリマーである。このようなコポリマーを(A)ポリアセタール樹脂及び(D)ポリアセタール樹脂として用いると、良好な寸法安定性が得られるとともに、耐摩耗性にも優れたものとなるが、寸法安定性と耐磨耗性の観点からは、特にポリオキシメチレンコポリマーが好ましい。
【0013】
(A)ポリアセタール樹脂及び(D)ポリアセタール樹脂は、本発明の目的を達成する限り、同一であっても異なる樹脂であってもよいが、樹脂組成物(I)及び樹脂組成物(II)に異なる反りが生じ、2材質の合わせ面がずれるのを防止するため、同一の樹脂であることが好ましい。
【0014】
本発明において用いることができるポリアセタール樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば米国特許第2998409号公報に記載された方法など、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、共重合の場合には、トリオキサン及びコモノマーである環状エーテルを共重合し、得られたポリマーを2軸押し出し機等によって処理し、末端安定化することで得ることができる。
【0015】
重合方法は塊状重合で行われ、バッチ式、連続式の何れの方法によっても可能である。バッチ式重合装置としては、一般に攪拌機付きの反応槽を使用できる。また連続式としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出し混練機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型混合機を使用できる。重合条件は、常圧下で60℃〜200℃の温度範囲で行われる。
【0016】
重合触媒は、一般に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物及び酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が用いられ、ガス状または適当な有機溶剤の溶液として使用される。得られたポリマーは活性な重合触媒を含有しているため、重合触媒の失活を行うことが望ましい。
【0017】
重合触媒の失活方法は、塩基性物質を含む水溶液中または有機溶媒中で行われる。その他の失活方法としては、塩基性物質を末端安定化前のポリアセタール樹脂に添加し、押し出し機を用いて溶融状態で失活する方法も使用可能である。失活に使用される塩基性物質としては、ヒンダードアミン、アンモニア、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等の窒素化合物などが挙げられる。
【0018】
重合触媒失活後のポリマーの末端安定化処理方法は、例えば(1)溶融状態のポリマーに塩基性物質を注入し、ついで混練する工程、及び(2)注入された上記塩基性物質の蒸気及び遊離のホルムアルデヒドを開放する工程、という少なくとも2段階の工程からなる末端安定化のための操作を連続的に実施できる2軸スクリュー押し出し機等によって、溶融したポリアセタール樹脂から揮発成分を除去することによって、末端安定化する方法を挙げることができる。上記の塩基性物質としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の窒素化合物が挙げられる。また、塩基性物質と共に水が共存してもよい。
【0019】
末端安定化処理においては、重合終了後の不安定末端熱処理が重要である。この操作には触媒として特定の第4級アンモニウム化合物を用いるのが好適である。本発明に用いる第4級アンモニウム化合物は、下記一般式(1)で表わされるものが良い。
[R1234+n-n (1)
(式中、R1、R2、R3、R4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、またはアミド基である。また上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0020】
この内、一般式(1)におけるR1、R2、R3、およびR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。
一般式(1)で表される第4級アンモニウム化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1、6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクタデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウムなどの、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩などが挙げられる。中でも、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4-、SO42-)、炭酸(HCO3-、CO32-)、ホウ酸(B(OH)4-)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、従来から公知の不安定末端部の分解剤であるアンモニアやトリエチルアミンなどのアミン類などを併用しても良い。第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリオキシメチレンコポリマーおよび第4アンモニウム化合物の合計重量に対して、下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05〜50重量ppmである。
P×14/Q (2)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレンコポリマーおよび第4アンモニウム化合物の合計重量に対する量(重量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
【0021】
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05重量ppm未満であると不安定末端部の分解速度が低下し、50重量ppmを超えると不安定末端部の分解後のポリオキシメチレンコポリマーの色調が悪化する。好ましい熱処理は、該コポリマーの融点以上260℃以下の樹脂温度で押し出し機、ニーダーなどを用いて行う。260℃を超えると着色の問題、およびポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。分解で発生したホルムアルデヒドは、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法は、特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、コポリマーパウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、コポリマーを熱処理する工程で添加されていれば良く、押し出し機の中に注入したり、押し出し機などを用いてフィラーやピグメントの配合を行う場合であれば、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端の分解を実施してもよい。不安定末端の分解は、重合で得られたポリオキシメチレンコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行なうことも可能である。重合触媒の失活は、アミン類などの塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、オキシメチレンコポリマーの融点以下の温度で、不活性ガス雰囲気下で加熱し、重合触媒を揮発低減した後に、本発明の不安定末端の分解を行なっても良い。
【0022】
本発明の樹脂組成物(I)に含まれる(B)脂肪酸エステル、及び樹脂組成物(II)に含まれる(E)脂肪酸エステルは、脂肪酸と多価アルコ−ルのエステルであり、一般に炭素数10〜22の脂肪酸と多価アルコールとのエステルである。具体的には、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジオールの中からの選ばれる1種以上のアルコール成分と4〜8個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の中から選ばれる1種以上からなるエステルである。脂肪族ジオールとしては、特にエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールが好ましい。また、脂肪族カルボン酸としてはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イワシ酸、リシノール酸、エレオステアリン酸が好ましい。脂肪酸エステルの中でも、炭素数12〜22の脂肪酸からなるエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。
(B)脂肪酸エステル及び(E)脂肪酸エステルは、それぞれ上記脂肪酸エステル1種類からなるものであってもよく、2種以上からなるものであってもよい。
まら、(B)脂肪酸エステルと(E)脂肪酸エステルは、本発明の目的を達成する限り、同一であっても異なる樹脂であってもよいが、樹脂組成物(I)及び樹脂組成物(II)に異なる反りが生じ、両者の合わせ面がずれるのを防止するため、同一の樹脂であることが好ましい。
【0023】
脂肪酸エステルの添加量としては、樹脂組成物(I)及び(II)のそれぞれにおいて、ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜0.9質量部であり、好ましくは0.01〜0.5質量部であり、より好ましくは0.01〜0.2質量部である。
脂肪酸エステルの添加量がポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜0.9質量部の範囲だと耐油性が向上し、多数個取りして製造した場合の低反り性も良好になる。また、脂肪酸エステルの添加量がポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01質量部以上では、耐久試験後の摩耗量も減少する。
【0024】
本発明の樹脂組成物(I)に含まれる(C)酸化チタンは、二酸化チタンのことであり、組成式TiO2、式量79.9のチタン金属酸化物である。ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンがある。この酸化チタンは酸化チタン単体であってもよいし、ポリエチレンのマトリクス中に高濃度で分散している状態の酸化チタンでもよい。ポリアセタール樹脂への酸化チタンの均一分散の観点から、ポリエチレンのマトリクス中に高濃度で分散している状態の酸化チタンが好ましい。この酸化チタンとポリエチレンの重量比は10/90〜80/20が好ましい。ポリアセタール樹脂への酸化チタンの均一分散の観点から、酸化チタンとポリエチレンの重量比は50/50〜80/20がより好ましい。
ポリエチレンのマトリクス中に高濃度で分散している状態の酸化チタンとは、例えば、例えばBASF社製Sicovasal White 002201を使用することができる。これは、ポリエチレンのマトリクス中に高濃度で分散している状態の酸化チタンで、酸化チタンとポリエチレンの重量比は60/40である。
【0025】
(C)酸化チタンのトータル添加量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.3〜3.0質量部である。3.0質量部以下の場合は、ポリアセタール樹脂の熱安定性を損なわないので、射出成形に適する。0.3〜3.0質量部の場合は、多数個取りして製造した場合の反り性を小さくすることができる。多数個取りした場合の反り性を小さくすること、及びポリアセタール樹脂の熱安定性の観点から酸化チタンのトータル添加量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.5〜2.0質量部が好ましい。0.6〜2.0質量部がさらに好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物(II)に含まれる(F)顔料としては、ポリアセタール樹脂に通常用いられる顔料を用いることができ、例えば、無機系顔料、有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料の具体例は、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタン、酸化鉄、群青、カーボンブラック、チタンイエロー、硫化亜鉛、塩素性炭素鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、金属硫化物等であり、有機系顔料としては、アゾ系、アゾメチン系、メチン系、インダンスロン系、アントラキノン系、ピランスロン系、フラバンスロン系、ベンゼンスロン系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キナクリドン系、ピルールピロール系、キノフタロン系の有機顔料等が挙げられる。
本発明においては、(F)顔料は、上記の顔料の1種又は2種以上を併用して用いる事ができるが、必要とする色調を得るため通常は2種以上の顔料を併用する。
【0027】
(F)顔料のトータル添加量は、通常の範囲内であり、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01〜3.0質量部であることが好ましい。3.0質量部以下の場合は、ポリアセタール樹脂の熱安定性が損なわれないので、射出成形に適する。また、有彩色の色目を出すためには、0.01質量部以上が好ましい。尚、樹脂組成物(II)にも、色によって酸化チタンを加えてもよい。必要とする有彩色の色目を出すこと、及びポリアセタール樹脂の熱安定性の観点から酸化チタン以外の顔料のトータル添加量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.02〜3.0質量部がより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物(I)及び樹脂組成物(II)には、所望に応じてポリアセタール樹脂に通常用いられる添加剤を、本願の目的を妨げない範囲で添加することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、光安定剤、離型剤、充填剤等が挙げられる。添加剤の使用量は添加物の種類によっても異なるが、概略でポリアセタール樹脂100重量部に対して、各々の添加剤を0.001〜1重量部である。
【0029】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の1種又は2種以上を用いることができる。具体的には、例えばn−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N′−ビス−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N′−テトラメチレン−ビス−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N′−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N′−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N′−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びテトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
【0030】
ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤の例としては、(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、およびカルボン酸塩等が挙げられる。(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミノ置換トリアジン化合物と、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物と、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物を挙げることができる。
【0031】
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、例えば、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N’−ジフェニルメラミン、N,N’−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N’,N’’−テトラシアノエチルベンゾグアナミンを挙げることができる。
【0032】
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミンを挙げることができる。
【0033】
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。
【0034】
これらのアミノ置換トリアジン類化合物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、1種で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、およびカルボン酸塩としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、および脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)であり、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が好ましい。これらのホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0036】
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系及びシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の1種以上を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。シュウ酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0037】
また、ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネイト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β′,β′−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、前述のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤と組み合わせてもよい。
【0038】
離型剤の例としては、ポリアルキレングリコール、アミド基を有する脂肪族化合物から選ばれる1種以上を挙げることができる。ポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールを用いることができる。
【化1】

(式中、R5は水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換アルキル基、置換アリル基より選ばれ、各R5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、Pは2〜6、Qは1000〜20000を表す。)
このポリアルキレングリコールは、アルキレンオキシドの開環重合によって得ることができる。アルキレンオキシドの具体的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3、3ービス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、オキセパンを挙げることができる。これらのポリアルキレングリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0039】
アミド基を有する脂肪族化合物としては、下記一般式(4)で表される脂肪族化合物である。
【化2】

(式中、R6及びR8は、C9〜C35のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。R7は、C1〜C6のアルキレン基を示す。)
具体的な例としては、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等、及びエチレン(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)アミド、エチレン(モノステアリン酸・モノヘプタデシル酸)アミド等を挙げることができる。これらのアミド基を有する脂肪族化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0040】
充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ウォラストナイト、炭素繊維、タルク、マイカ、チタンウイスカー等の各種補強剤、及び窒化ホウ素等に代表される核剤が挙げられる。
【0041】
これら、本発明の必須成分の化合物を含む添加剤の添加形態は、粉体であっても溶融状態であっても構わない。また、添加剤単独若しくは、添加剤とポリアセタール樹脂を、溶融・混練する前に予め混合することが本発明の効果に対して好ましく、その予め混合する方法は、公知の手法で適宣選択すれば良く、特に制限するものではない。
【0042】
ポリアセタール樹脂に上記の添加剤を配合する方法は、特に制限されるものではない。一般的には、押し出し機を用い、ポリアセタール樹脂とここで規定された任意成分である添加剤とを溶融・混練することで、本発明のポリアセタール樹脂組成物を製造することができる。この時の押し出し機は、1軸であっても2軸であっても構わない。また、ポリアセタール樹脂の重合時に添加剤を加えても構わない。押し出し機の温度は、通常170℃〜240℃の範囲で適宜選択すれば良く、特に制限するものではない。
【0043】
本発明のボタンを成形する方法については特に制限はなく、押し出し成形、射出成形、圧縮成形、吹き出し成形、発泡成形、ガスインジェクション等の公知の成形方法のいずれかによって、成形することができる。その中でも生産効率、2色成形等の観点から射出成形、圧縮成形が好ましい。
【0044】
本発明のボタンが樹脂組成物(I)及び樹脂組成物(II)のみから形成される場合
、その製造においては、(A)+(B)+(C)からなる樹脂組成物(I)が、(D)+(E)+(F)からなる樹脂組成物(II)の一部を残し他の部分を覆うように2色成形する方法が取られる。
本発明のボタンにおいては、(A)+(B)+(C)からなる樹脂組成物(I)が、(D)+(E)+(F)からなる樹脂組成物(II)を覆う厚みは、1mm以下であることが好ましい。1mm以下の場合、多数個取りして製造した場合の低反り性に優れたゲーム機用ボタンを提供することができる。また、樹脂組成物(II)の色によっては、樹脂組成物(I)を通して樹脂組成物(II)の色が透けないよう、厚さを適宜調整するとよい。
本発明のボタンにおいては、表面粗さが10μm以下である事が好ましく、本発明の樹脂組成物(I)と樹脂組成物(II)とを一体に成形すれば、このような表面粗さのボタンを得ることができる。表面粗さがこの範囲であれば、手指に違和感無くボタンを押すことができる。
また、本発明のボタンは、樹脂組成物(I)及び樹脂組成物(II)に加え、1種類以上のさらなる樹脂組成物を用いて製造することもできる。その場合、当業者であれば、樹脂の数によって、3色成形法等、公知の方法またはそれに準ずる方法を適宜用いて製造することが可能である。
【0045】
本発明のボタンを射出成形により成形する場合、多数個取りした場合の低反り性を上げるために、射出成形工程の金型温度を70℃以上とすることが好ましい。より低反り性を上げるために、金型温度は80℃以上が好ましい。寸法安定性を上げるために90℃以上がさらに好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例及び比較例、測定法を挙げ、本発明を詳細に説明する。
【0047】
[実施例1]
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整し、12kg/Hrのトリオキサンと、コモノマーとしてアセトアルデヒド含有量100ppmの1,3−ジオキソラン148g/Hr(トリオキサン1モルに対して0.015モル)と、分子量調節剤としてメチラール7.1g/Hr(トリオキサン1モルに対して0.7×10-3モル)とを連続的に添加した。さらに、重合触媒として、三フッ化ホウ素が、トリオキサン1モルに対して1.5×10-5モルになるように、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラート1重量%のシクロヘキサン溶液39.6g/Hrを連続的に添加し重合を行った。
混合機から排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ろ過後のポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1重量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は窒素の量に換算して20ppmとした。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
乾燥後のポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して、酸化防止剤として、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を0.3重量部添加し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100重量部に対して水0.5重量部を添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間5分で不安定末端部の分解を行った。不安定末端部の分解されたオキシメチレン共重合体は、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、(A)ポリアセタール樹脂がペレタイズされた。
このペレット100重量部に対し、ジステアリン酸カルシウムを0.1重量部、ジパルミチン酸カルシウムを0.05重量部、ナイロン66を0.05重量部、(B)脂肪酸エステルとして、エチレングリコールジステアレートを0.025重量部、エチレングリコールジパルミテートを0.005重量部混合し、ベント付き単軸押出機で溶融混錬することにより、ポリオキシメチレンコポリマーペレットを得た。
さらに(C)酸化チタン(BASF社製Sicovasal White 002201)を0.9重量部混合しベント付き単軸押出機で溶融混錬することにより、樹脂組成物(I)に該当する最終のポリオキシメチレンコポリマーペレットを得た。
また、(C)酸化チタンの代わりに、(F)キナクリドン系顔料(DIC社製Fastgen Super Red YE)を0.2重量部混合し、ベント付き単軸押出機で溶融混錬することにより、樹脂組成物(II)に該当する最終のポリオキシメチレンコポリマーペレットを得た。
樹脂組成物(I)及び(II)を用いて、5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用し、シリンダー温度:200℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件で、図1に示す形状の操作ボタン1を2色成形した。尚、多数個取りした場合の低反り性を測定する場合には、8個取り2色成形した。
図2に操作ボタン1のA−A’線に沿って切断した断面図を示す。
図示されるように、顔料により着色された樹脂組成物(II)のからなる部材2の一部がボタン上面10に露出し、四角い記号12を表示している。一方、樹脂組成物(II)からなる部材2の残りの部分は、樹脂組成物(I)からなる部材3に覆われている。部材2を覆う樹脂組成物(I)からなる部材3の厚みは約0.8mmである。
得られた操作ボタン1について、以下の方法で耐油性、低反り性、耐摩耗性を測定した。
<耐油性>
操作ボタン1を70℃環境下でニベアクリーム(花王製)中に完全浸漬させ、成形品の重量経時変化及び寸法変化(下式参照)を測定した。
※寸法変化
試験片の厚みと幅の経時変化を測定し、下記の計算式に従って、寸法変化量を算出した。
寸法変化=(厚み+幅)/2 〔μm〕
注)花王製ニベアクリーム成分:ラウリルアルコール、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール、トコフェノール、安息香酸塩、香料
<多数個取りした場合の低反り性>
操作ボタン1のA−A’線に沿って、操作ボタン1の端B、Cを直線に結んだラインより、どれだけ上下に中央部14がずれているか、マイクロゲージで長さを測定した。結んだラインより出ている場合はマイナス、へこんでいる場合はプラスとした。
<耐摩耗性>
図3に示すように、操作ボタン1のE−E’ライン上で、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製 AFT−15MS型)を用いて荷重100g、線速度100mm/sec、往復距離20mm、および環境温度23℃の条件で50,000回往復し、耐久試験後の摩耗量を測定した(図3)。相手材料としては、SUS304試験片(直径5mmの球)4を用い、下向きの矢印の方向に荷重をかけた。
【0048】
[実施例2〜12および比較例1〜7]
実施例2〜12および比較例1〜7は表1に記載の組成物、金型温度、表面粗さを変えて実施例1と同様の試験を行なった。結果を実施例1と合わせて表1にまとめて示した。
尚、実施例、比較例のいずれにおいても、(A)ポリアセタール樹脂、(B)脂肪酸エステル、(C)酸化チタン、(F)顔料としては以下の物質を使用し、(D)ポリアセタール樹脂は(A)ポリアセタール樹脂と、(E)脂肪酸エステル及び(B)脂肪酸エステルは同一のものを用いた。
(A)ポリアセタール樹脂:(イ)実施例1に記載のPOM、(ロ)ポリオキシメチレンホモポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製テナック7010)、(ハ)ポリオキシメチレ
ンホモポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製テナック4010)、(ニ)ポリオキシメチレ
ンホモポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製テナック3010)、(ホ)ポリオキシメチレ
ンコポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製テナック-C 7520)
(B)脂肪酸エステル:(イ)エチレングリコールジステアレート、(ロ)エチレングリコールジパルミテート、(ハ)ブタンジオールブタンジオール
(C)酸化チタン:(イ)ポリエチレンのマトリクス中に高濃度で分散している状態の酸化チタンで、酸化チタンとポリエチレンの重量比は60/40、(ロ)酸化チタン単体
(F)顔料:(イ)キナクリドン系顔料(DIC社製Fastgen Super Red YE)、(ロ)チタンイエロー(アサヒ化成社製アサヒイエロー5−121)、(ハ)カーボンブラック(電気化学社製Acetylen Black)
以上の実施例および比較例から、ポリアセタール樹脂100重量部、脂肪酸エステル0.01〜0.9重量部、酸化チタン0.3〜3重量部を含む樹脂組成物(I)と、ポリアセタール樹脂100重量部、脂肪酸エステル0.01〜0.9重量部、顔料0.01〜3重量部を含む樹脂組成物(II)を2色成形してなるボタンは、耐油性に優れ、多数個取りした場合の低反り性に優れ、耐摩耗性に優れることが明らかである。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のボタンの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のボタンのA−A線に沿った断面図である。
【図3】耐久試験(耐摩耗性)の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1…操作ボタン、12…記号、14…中央部、2…樹脂組成物(II)からなる部材、3、3’…樹脂組成物(I)からなる部材、4…試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)ポリアセタール樹脂100質量部、(B)脂肪酸エステル0.01質量部〜0.9質量部、及び(C)酸化チタン0.3質量部〜3.0質量部を含む樹脂組成物(I)と、(D)ポリアセタール樹脂100質量部、(E)脂肪酸エステル0.01質量部〜0.9質量部、及び(F)顔料を含む樹脂組成物(II)と、が一体に成形された、表面に2色以上の領域を有するボタン。
【請求項2】
前記(C)酸化チタンが、0.5質量部〜2.0質量部である、請求項1に記載のボタン。
【請求項3】
前記(C)酸化チタンが、ポリエチレンのマトリクス中に分散している、請求項1または2に記載のボタン。
【請求項4】
前記樹脂組成物(II)の一部が表面に露出し、他の部分が前記樹脂組成物(I)によって覆われている、請求項1から3のいずれか1項に記載のボタン。
【請求項5】
前記樹脂組成物(II)を覆う前記樹脂組成物(I)の厚みが1mm以下である、請求項4に記載のボタン。
【請求項6】
表面粗さが10μm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載のボタン。
【請求項7】
前記樹脂組成物(I)と前記樹脂組成物(II)とが、金型温度70℃以上で成形さ
れた、請求項1から6のいずれか1項に記載のボタン。
【請求項8】
ゲーム機用の操作ボタンである、請求項1から7のいずれか1項に記載のボタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−280397(P2008−280397A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124360(P2007−124360)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】