説明

ボロシロキサン組成物、ボロシロキサン接着剤、塗装基板及び積層基板

1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するボロシロキサンと、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と、ヒドロシリル化触媒とを含むボロシロキサン組成物;少なくとも1つのボロシロキサンの硬化生成物を含むボロシロキサン接着剤;ボロシロキサン接着剤をそれぞれ含む塗装基板及び積層基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2008年3月4日に出願された米国仮特許出願第61/033444号の利益を主張する。米国仮特許出願第61/033444号は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、ボロシロキサン組成物に関し、より詳細には、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するボロシロキサンと、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と、ヒドロシリル化触媒とを含むボロシロキサン組成物に関する。また、本発明は、少なくとも1つのボロシロキサンの硬化生成物を含むボロシロキサン接着剤に関する。さらに、本発明は、ボロシロキサン接着剤をそれぞれ含む塗装基板及び積層基板に関する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
シリコーン接着剤は、高熱安定性、良好な耐湿性、優れた柔軟性、高イオン純度、低α粒子放出、様々な基板に対する良好な接着性などの特性の独特な組合せの理由のため、様々な用途において有用である。例えば、シリコーン接着剤は、自動車産業、電子産業、建設業、家電産業(appliance industry)及び航空宇宙産業において広く使用されている。
【0004】
しかしながら、従来のシリコーン接着剤は、高温(例えば、直火と直に接接することによって直面する温度)に曝される場合、接着剤が分解してチャー(炭化物)、典型的には非接着性粉末を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の観点から、硬化して、接着剤の分解温度よりも高い温度に曝される間及び曝された後に高チャー収率(char yield)及び高接着性を有する接着剤を形成するシリコーン含有組成物に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の概要]
本発明は、
(A)(i)式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、(ii)式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物、及び(iii)(A)(i)及び(A)(ii)を含む混合物(式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であり;ただし、ボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)から選択されるボロシロキサンと、
(B)前記ボロシロキサンを硬化するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と
を含むボロシロキサン組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、
ボロシロキサンの硬化生成物を含むボロシロキサン接着剤であって、前記ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択され、式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であるボロシロキサン接着剤に関する。
【0008】
さらに、本発明は、
基板と、
前記基板の表面の少なくとも一部上のボロシロキサン接着剤塗膜であって、前記接着剤塗膜はボロシロキサンの硬化生成物を含み、前記硬化生成物は上記した通りであるボロシロキサン接着剤塗膜と
を含む塗装基板に関する。
【0009】
さらにまた、本発明は、
第1基板と、
前記第1基板を覆う少なくとも1つの追加基板と、
各基板の少なくとも1つの表面の少なくとも一部上のボロシロキサン接着剤塗膜であって、ただし、前記接着剤塗膜の少なくとも一部は、隣接する基板の反対面の間にあると共に当該反対面と直に接しており、前記接着剤塗膜は、ボロシロキサンの硬化生成物を含み、前記硬化生成物は上記した通りであるボロシロキサン接着剤塗膜と
を含む積層基板に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボロシロキサン接着剤は、高耐湿性、高透明度、及び様々な基板に対する優れた接着性を有する。さらに、ボロシロキサン接着剤は、接着剤の分解温度よりも高い温度に曝される間及び曝された後に接着性が高く、可燃性が低く(低発熱速度からも明らかなように)、そしてチャー収率が高い。
【0011】
本発明のボロシロキサン接着剤は、高耐湿性、高温での高接着性、低可燃性、及び高透明度を有する接着剤を要求する用途において有用である。例えば、この接着剤は、耐火窓(fire rated windows)及びガラス防火壁の製造において、ガラスパネルを接着するのに有用である。
【0012】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利益は、以下の記載、添付の特許請求の範囲及び添付の図面を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による1つの実施形態の積層基板の断面図を示す。
【図2】第2基板上に第2ボロシロキサン接着剤塗膜、及び第1基板の第2反対面上に第3ボロシロキサン接着剤塗膜をさらに含む、前の実施形態の積層基板の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の詳細な説明]
本明細書で使用される場合、(BO(3-v)/2)(OH)v及び(R1BO(2-w)/2)(OH)wという表記は、それぞれ3つの酸素原子及び2つの酸素原子に結合したホウ素を有する単位の平均式を意味する。ここで、各酸素原子はまた、他の原子(すなわち、Si又はH)に結合される。例えば、式(BO(3-v)/2)(OH)v(式中、v=0である)を有する単一の単位は、次の構造式によって表すことができる。
【0015】
【化1】

【0016】
同様に、式(R1BO(2-w)/2)(OH)w(式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり、w=0である)を有する単一の単位は、次の構造式によって表すことができる。
【0017】
【化2】

【0018】
さらに、式R12BO1/2(式中、各R1は独立して、C1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルである)を有する単位は、次の式を有する。
【0019】
【化3】

【0020】
上記の式の各々において、酸素原子に繋がる線部分(line segments)は、自由原子価(すなわち、他の原子への接着点)を表す。
【0021】
本発明によるボロシロキサン組成物は、
(A)(i)式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、(ii)式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物、及び(iii)(A)(i)及び(A)(ii)を含む混合物(式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であり;ただし、ボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)から選択されるボロシロキサンと、
(B)前記ボロシロキサンを硬化するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と
を含む。
【0022】
成分(A)は、(i)式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、(ii)式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物、及び(iii)(A)(i)及び(A)(ii)を含む混合物から選択されるボロシロキサンである。式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であり;ただし、ボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する。
【0023】
ボロシロキサン(A)(i)は、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンである。式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;ただし、ポリボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する。
【0024】
ポリボロシロキサンは、式[(BO(3-v)/2)(OH)v]を有する単位及び/又は式[(R1BO(2-w)/2)(OH)w]を有する単位を、次の:式[(R12SiO(2-x)/2)(OH)x]を有する単位、式[(R1SiO(3-y)/2)(OH)y]を有する単位、及び式[(SiO(4-z)/2)(OH)z]を有する単位と組み合わせて含有する。式中、R1、v、w、x、y及びzは、下記で定義及び例示する通りである。
【0025】
1により表されるヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、1〜10個の炭素原子、或いは1〜6個の炭素原子、或いは1〜4個の炭素原子を典型的に有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐状又は非分岐状構造を有し得る。R1により表されるヒドロカルビル基の例としては、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルなど);シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル及びメチルシクロヘキシルなど);アリール(例えば、フェニル及びナフチルなど);アルカリール(例えば、トリル及びキシリルなど);アラルキル(例えば、ベンジル及びフェネチルなど);アルケニル(例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル及びオクテニルなど);アリールアルケニル(例えば、スチリル及びシンナミルなど);並びにアルキニル(例えば、エチニル及びプロピニルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。R1により表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、及び2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
1つの実施形態において、ポリボロシロキサンの式(I)中のR1により表されるヒドロカルビル基はフェニルではない。
【0027】
ポリボロシロキサンの式(I)において、下付記号l、m、n、p、q、r及びsはモル分率である。下付記号l、m、n、p、q、r及びsはモル分率である。下付記号lは、0〜0.2、或いは0〜0.1、或いは0〜0.05の値を典型的に有し;下付記号mは、0〜0.5、或いは0.1〜0.4、或いは0.15〜0.3の値を典型的に有し;下付記号nは、0〜0.6、或いは0〜0.4、或いは0.1〜0.2の値を典型的に有し;下付記号pは、0〜0.7、或いは0〜0.5、或いは0〜0.2の値を典型的に有し;下付記号qは、0〜0.9、或いは0〜0.7、或いは0〜0.5の値を典型的に有し;下付記号rは、0〜0.999、或いは0〜0.8、或いは0.1〜0.4の値を典型的に有し;下付記号sは、0〜0.5、或いは0〜0.35、或いは0.05〜0.2の値を典型的に有する。また、m+nの合計は、典型的に0.001〜0.58、或いは0.01〜0.4、或いは0.1〜0.3であり;q+r+sの合計は、典型的に0.42〜0.999、或いは0.45〜0.9、或いは0.6〜0.8であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)の比は、典型的に1.01〜1000、或いは1.2〜100、或いは1.5〜10である。
【0028】
また、ポリボロシロキサンの式(I)において、下付記号v、w、x、y及びzは、式中の様々な単位と関連するヒドロキシ基の平均数を表す。下付記号vは、0〜0.05、或いは0〜0.04、或いは0〜0.03の値を典型的に有し;下付記号wは、0〜0.05、或いは0.01〜0.04、或いは0.01〜0.02の値を典型的に有し;下付記号xは、0〜0.45、或いは0.01〜0.35、或いは0.05〜0.25の値を典型的に有し;下付記号yは、0〜0.63、或いは0.01〜0.4、或いは0.05〜0.25の値を典型的に有し;下付記号zは、0〜0.25、或いは0.01〜0.15、或いは0.01〜0.05の値を典型的に有する。
【0029】
さらに、ポリボロシロキサンの式(I)において、l+m+n+p+q+r+sの合計は約1(1におおよそ等しい)である。これは、上記式(I)で示される平均式を有する単位に加えて、ポリシロキサンが、残りの量(例えば、5モル%以下)の、以下の平均式:(BO(3-v’)/2)(OR2v’、(R1BO(2-w’)/2)(OR2w’、(R12SiO(2-x’)/2)(X)x’,(R1SiO(3-y’)/2)(X)y’及び(SiO(4-z’)/2)(X)z’を有する1つ以上の単位を含有してもよいことを意味する。式中、R1は、上記で定義及び例示した通りであり、R2はC1〜C8のアルキルであり、Xは−Cl又は−Brであり、v’は0〜0.04の平均値を有し;w’は0〜0.02の平均値を有し;x’は0〜0.03の平均値を有し;y’は0〜0.03の平均値を有し;z’は0〜0.03の平均値を有する。
【0030】
2により表されるアルキル基は、1〜8個の炭素原子、或いは1〜6個の炭素原子、或いは1〜4個の炭素原子を典型的に有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式アルキル基は、分岐状又は非分岐状構造を有し得る。R2により表されるアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチル、並びにシクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル及びメチルシクロヘキシルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
ポリボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する。R1により表されるアルケニル基は、ホウ素原子、ケイ素原子、又はホウ素原子及びケイ素原子の両方に結合され得る。典型的に、ポリボロシロキサン中のR1基の、少なくとも10モル%、或いは少なくとも25モル%、或いは少なくとも50モル%がアルケニルである。本明細書で使用される場合、「ポリボロシロキサン中のR1基のモル%がアルケニルである」という用語は、ポリボロシロキサン中のR1基の全モル数に対するポリボロシロキサン中のケイ素結合アルケニル基及びホウ素結合アルケニル基のモル数の比に100を乗じたものとして定義される。
【0032】
ポリボロシロキサンは、500〜1,000,000、或いは500〜500,000、或いは10,000〜500,000、或いは10,000〜50,000の数平均分子量(Mn)を典型的に有する。ここで、当該分子量は、屈折率検出器及びシリコーン樹脂(MQ)標準物質を用いるゲル浸透クロマトグラフィによって測定される。
【0033】
ポリボロシロキサンは、25℃で、0.5〜10,000Pa・s、或いは1〜1,000Pa・s、或いは2〜100Pa・sの粘度を典型的に有する。
【0034】
ポリボロシロキサンは、29Si NMRにより測定される場合に、20重量%未満、或いは15重量%未満、或いは10重量%未満のケイ素結合ヒドロキシ基を典型的に含有する。
【0035】
また、ポリボロシロキサンは、5モル%未満、或いは4モル%未満、或いは3モル%未満のホウ素結合ヒドロキシ基を典型的に含有する。ここで、ホウ素結合ヒドロキシ基のモル%は、ポリボロシロキサン中のSi原子及びB原子のモル数の合計に対するポリボロシロキサン中のホウ素結合ヒドロキシ基のモル数の比に100を乗じたものとして定義される。さらに、ホウ素結合ヒドロキシ基のモル%は、関係D=νBC/Aから見積もることができる。ここで、Dはホウ素結合ヒドロキシ基のモル%であり;νは比例定数であり(これは、1の値を有すると見なされる);Aは、ポリボロシロキサンのFTIRスペクトル中の約3400cm-1に中心があるSi−OH吸収の面積であり;Bは、ポリボロシロキサンのFTIRスペクトル中の約3230cm-1に中心があるB−OH吸収の面積であり;Cは、29Si NMRにより測定されるような、ポリボロシロキサン中のケイ素結合ヒドロキシ基のモル%である。
【0036】
式(I)を有するポリボロシロキサンの例としては、以下の式:
(ViMe2SiO1/20.7(BO3/20.25(SiO4/20.05
(BO3/20.15(Me2SiO2/20.55(PhSiO3/20.30
(BO3/20.1(PhBO2/20.25(ViMe2SiO1/20.25(MeSiO3/20.4
(BO3/20.25(BO2/2(OH))0.05(Me2SiO2/20.6(Me2SiO1/2(OH))0.1
(PhBO2/20.15(PhBO1/2(OH))0.03(PhSiO3/20.31(PhSiO2/2(OH))0.51
(ViMeBO1/20.05(BO3/20.2(ViMe2SiO1/20.1(MeSiO3/20.65
(BO3/20.01(Me2SiO2/20.4(Me2SiO1/2(OH))0.05(PhSiO2/2(OH))0.54、及び
(PhBO2/20.3(MeSiO3/20.6(ViMe2SiO1/20.1
を有するポリボロシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、括弧外の下付数値はモル分率である。また、上記式において、単位の順序は特定されない。
【0037】
ボロシロキサン(A)(i)は、上記の式(I)をそれぞれ有すると共に、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する、単一のポリボロシロキサン又は2つ以上の異なるポリボロシロキサンを含む混合物であり得る。
【0038】
式(I)を有するポリボロシロキサンは、(I)(a)(i)式B(OR23を有する少なくとも1つのトリアルコキシボラン、(ii)式R1B(OR22を有する少なくとも1つのジアルコキシボラン、(iii)(a)(i)と(a)(ii)とを含む混合物、並びに(iv)式R12BOR2を有するモノアルコキシボランと、(a)(i)及び(a)(ii)の少なくとも1つとを含む混合物から選択されるアルコキシボランを、ルイス酸触媒の存在下で、(b)(i)式R1SiX3を有する少なくとも1つのトリハロシラン、(ii)式R12SiX2を有する少なくとも1つのジハロシラン、(iii)式SiX4を有する少なくとも1つのテトラハロシラン、(iv)(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも2つを含む混合物、並びに(v)式R13SiXを有するモノハロシランと、(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも1つとを含む混合物から選択されるハロシランと反応させてポリボロシラン中間体を形成する工程であって、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり、R2はC1〜C8のアルキルであり、Xは−Cl又は−Brであり、前記アルコキシボラン(a)及び前記ハロシラン(b)のモル数の合計に対する(a)(i)及び(a)(ii)のモル数の合計の比が0.001〜0.58であり、前記アルコキシボラン(a)及び前記ハロシラン(b)のモル数の合計に対する(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)のモル数の合計の比が0.42〜0.999であり、前記アルコキシボラン(a)のモル数に対する前記ハロシラン(b)のモル数の比が0.724〜999であり、前記アルコキシボラン(a)中の−OR2基のモル数に対する前記ハロシラン(b)中の−X基のモル数の比が少なくとも1.01である工程と、(II)前記ポリボロシロキサン中間体、及び任意に、式R1nSiX4-nを有する少なくとも1つのハロシランを、水と反応させて水不溶性加水分解生成物を形成する工程であって、R1及びXは上記で定義した通りであり、nは0、1、2又は3であり、ただし、過量の水が使用される場合、方法は前記加水分解生成物を前記水から分離することをさらに含む工程と、(III)前記加水分解生成物を蒸留して縮合水を除去する工程とにより調製されることができ、ただし、ポリボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を含有する。
【0039】
ポリボロシロキサンの調製方法の工程(I)において、(a)(i)式B(OR23を有する少なくとも1つのトリアルコキシボラン、(ii)式R1B(OR22を有する少なくとも1つのジアルコキシボラン、(iii)(a)(i)と(a)(ii)とを含む混合物、並びに(iv)式R12BOR2を有するモノアルコキシボランと、(a)(i)及び(a)(ii)の少なくとも1つとを含む混合物から選択されるアルコキシボランを、ルイス酸触媒の存在下で、(b)(i)式R1SiX3を有する少なくとも1つのトリハロシラン、(ii)式R12SiX2を有する少なくとも1つのジハロシラン、(iii)式SiX4を有する少なくとも1つのテトラハロシラン、(iv)(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも2つを含む混合物、並びに(v)式R13SiXを有するモノハロシランと、(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも1つとを含む混合物から選択されるハロシランと反応させてポリボロシラン中間体を形成する。ここで、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり、R2はC1〜C8のアルキルであり、Xは−Cl又は−Brであり、前記アルコキシボラン(a)及び前記ハロシラン(b)のモル数の合計に対する(a)(i)及び(a)(ii)のモル数の合計の比が0.001〜0.58であり、前記アルコキシボラン(a)及び前記ハロシラン(b)のモル数の合計に対する(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)のモル数の合計の比が0.42〜0.999であり、前記アルコキシボラン(a)のモル数に対する前記ハロシラン(b)のモル数の比が0.724〜999であり、前記アルコキシボラン(a)中の−OR2基のモル数に対する前記ハロシラン(b)中の−X基のモル数の比が少なくとも1.01である。
【0040】
アルコキシボラン(a)は、(i)式B(OR23を有する少なくとも1つのトリアルコキシボラン、(ii)式R1B(OR22を有する少なくとも1つのジアルコキシボラン、(iii)(a)(i)と(a)(ii)とを含む混合物、並びに(iv)式R12BOR2を有するモノアルコキシボランと、(a)(i)及び(a)(ii)の少なくとも1つとを含む混合物から選択される。ここで、R1及びR2は、上記で定義及び例示した通りである。
【0041】
アルコキシボラン(a)(i)は、式B(OR23を有する少なくとも1つのトリアルコキシボランであり、R2は上記で記載及び例示した通りである。トリアルコキシボランの例としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル及びホウ酸トリオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
アルコキシボラン(a)(i)は、式B(OR23をそれぞれ有する、単一のトリアルコキシボラン又は2つ以上の異なるトリアルコキシボランを含む混合物であり得る。式中、R2は、上記で定義及び例示した通りである。トリアルコキシボランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0043】
アルコキシボラン(a)(ii)は、式R1B(OR22を有する少なくとも1つのジアルコキシボランであり、R1及びR2は、上記で定義及び例示した通りである。ジアルコキシボランの例としては、フェニルジメトキシボラン、メチルジメトキシボラン、フェニルジエトキシボラン、メチルジエトキシボラン及びn−ブチルジメトキシボランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
アルコキシボラン(a)(ii)は、式R1B(OR22をそれぞれ有する、単一のジアルコキシボラン又は2つ以上の異なるジアルコキシボランを含む混合物であり得る。式中、R1及びR2は、上記で定義及び例示した通りである。ジアルコキシボランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0045】
アルコキシボラン(a)(iii)は、それぞれ上記したような(a)(i)及び(a)(ii)を含む混合物である。
【0046】
アルコキシボラン(a)(iv)は、式R12BOR2を有するモノアルコキシボランと、(a)(i)及び(a)(ii)の少なくとも1つとを含む混合物であり、R1及びR2は、上記で定義及び例示した通りである。モノアルコキシボランの例としては、メチルフェニルメトキシボラン及びジメチルメトキシボランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
モノアルコキシボランは、式R12BOR2をそれぞれ有する、単一のモノアルコキシボラン又は2つ以上の異なるモノアルコキシボランを含む混合物であり得る。式中、R1及びR2は、上記で定義及び例示した通りである。モノアルコキシボランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0048】
ハロシラン(b)は、(i)式R1SiX3を有する少なくとも1つのトリハロシラン、(ii)式R12SiX2を有する少なくとも1つのジハロシラン、(iii)式SiX4を有する少なくとも1つのテトラハロシラン、(iv)(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも2つを含む混合物、並びに(v)式R13SiXを有するモノハロシランと、(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも1つとを含む混合物から選択される。ここで、R1はC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは−Cl又は−Brである。
【0049】
ハロシラン(b)(i)は、式R1SiX3を有する少なくとも1つのトリハロシランであり、R1及びXは、上記で記載及び例示した通りである。トリハロシランの例としては、次の式:MeSiCl3、EtSiCl3、MeSiBr3、EtSiBr3、PhSiCl3、n−BuSiCl3及びi−PrSiCl3(式中、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルであり、n−Buはノルマルブチルであり、i−Prはイソプロピルである)を有するシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ハロシラン(b)(i)は、式R1SiX3をそれぞれ有する、単一のトリハロシラン又は2つ以上の異なるトリハロシランを含む混合物であり得る。式中、R1及びXは、上記で定義及び例示した通りである。トリハロシランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0051】
ハロシラン(b)(ii)は、式R12SiX2を有する少なくとも1つのジハロシランであり、R1及びXは、上記で定義及び例示した通りである。ジハロシランの例としては、次の式:Me2SiCl2、Et2SiCl2、Me2SiBr2、Et2SiBr2、PhMeSiCl2、ViMeSiCl2及びPh2SiCl2(式中、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである)を有するシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
ハロシラン(b)(ii)は、式R12SiX2をそれぞれ有する、単一のジハロシラン又は2つ以上の異なるジハロシランを含む混合物であり得る。式中、R1及びXは、上記で定義及び例示した通りである。ジハロシランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0053】
ハロシラン(b)(iii)は、式SiX4を有する少なくとも1つのテトラハロシランであり、Xは−Cl又は−Brである。テトラハロシランの例としては、SiCl4及びSiBr4が挙げられる。
【0054】
ハロシラン(b)(iii)は、式SiX4をそれぞれ有する、単一のテトラハロシラン又は2つ以上の異なるテトラハロシランを含む混合物であり得る。式中、Xは、上記で定義及び例示した通りである。テトラハロシランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0055】
ハロシラン(b)(iv)は、それぞれ上記したような(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも2つを含む混合物である。
【0056】
ハロシラン(b)(v)は、式R13SiXを有するモノハロシランと、(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)の少なくとも1つとを含む混合物であり、R1及びXは、上記で定義及び例示した通りである。モノハロシランの例としては、次の式:ViMe2SiCl、ViPhMeSiCl、Me3SiBr、PhMe2SiCl、Vi2MeSiBr及びPh2MeSiCl(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルである)を有するシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
モノハロシランは、式R13SiXをそれぞれ有する、単一のモノハロシラン又は2つ以上の異なるモノハロシランを含む混合物であり得る。式中、R1及びXは、上記で定義及び例示した通りである。モノハロシランの調製方法は、当該技術分野において周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。
【0058】
ルイス酸触媒は、アルコキシボラン(a)中のホウ素結合基−OR2と、ハロシラン(b)中のケイ素結合基−Xとの間の縮合反応を促進し得る少なくとも1つのルイス酸触媒である。ルイス酸触媒の例としては、次の式:AlCl3、FeCl3、BCl3及びZnCl2を有する触媒が挙げられるが、これらに限定されない。ルイス酸触媒は、単一のルイス酸触媒、又は2つ以上の異なるルイス酸触媒を含む混合物であり得る。
【0059】
ポリボロシロキサン中間体を生成させるためのアルコキシボランとハロシランとの反応は、例えば、ハロシランをアルコキシボランと接触させるのに適した任意の標準的な反応器内で行われ得る。適切な反応器としては、ガラス反応器、及びテフロン(登録商標)裏地付ガラス反応器が挙げられる。好ましくは、攪拌器(stirring)などの攪拌手段が反応器に備えられる。また、好ましくは、不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)中、水分の不存在下で反応が行われる。
【0060】
アルコキシボラン(a)は、ハロシラン(b)及びルイス酸触媒の混合物に典型的に添加される。また、逆の添加(すなわち、ルイス酸の存在下でアルコキシボランにハロシランを添加すること)も可能である。しかし、逆の添加は、多分散性がより高いポリボロシロキサンに繋がることがあり、いくつかのケースではゲル形成を引き起こすことがある。
【0061】
ハロシラン(b)及びルイス酸触媒の混合物に対するアルコキシボラン(a)の添加速度は、攪拌の効率的な手段を備えた1000mL反応容器に関して、典型的に0.1〜2mL/分である。添加速度が遅すぎる場合、反応時間が不必要に長くなる。添加速度が速すぎる場合、反応混合物がゲルを形成することがある。
【0062】
アルコキシボラン(a)とハロシラン(b)との反応は、25〜150℃、或いは30〜90℃、或いは40〜80℃の温度で典型的に行われる。当該温度が25℃未満であると、反応速度が典型的に非常に遅くなる。当該温度が150℃を超えると、反応の過度の揮発が起こる。
【0063】
反応時間は、様々な因子(例えば、アルコキシボラン(a)及びハロシラン(b)の構造や、温度など)に依存する。反応は、アルコキシボランに本来存在する−OR2基の少なくとも95モル%を−O−Si結合に変換するのに十分な時間の間、典型的に行われる。例えば、反応時間は、40〜80℃の温度で、典型的に1〜24時間、或いは1〜8時間、或いは2〜5時間である。最適の反応時間は、下記の実施例の欄に記載された方法を用いる日常的な実験によって決定され得る。
【0064】
アルコキシボラン(a)及びハロシラン(b)のモル数の合計に対する(a)(i)及び(a)(ii)のモル数の合計の比は、典型的に0.001〜0.58、或いは0.01〜0.4、或いは0.1〜0.35である。
【0065】
アルコキシボラン(a)及びハロシラン(b)のモル数の合計に対する(b)(i)、(b)(ii)及び(b)(iii)のモル数の合計の比は、典型的に0.42〜0.999、或いは0.5〜0.9、或いは0.6〜0.8である。
【0066】
アルコキシボラン(a)のモル数に対するハロシラン(b)のモル数の比は、典型的に0.724〜999、或いは1.2〜99、或いは1.5〜9である。
【0067】
アルコキシボラン(a)中の−OR2基のモル数に対するハロシラン(b)中の−X基のモル数の比は、典型的に少なくとも1.01である。例えば、アルコキシボラン(a)中の−OR2基のモル数に対するハロシラン(b)中の−X基のモル数の比は、典型的に1.01〜1,000、或いは1.2〜100、或いは1.5〜10である。
【0068】
ルイス酸触媒の濃度は、アルコキシボラン(a)とハロシラン(b)との反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的に、ルイス酸触媒の濃度は、アルコキシボラン及びハロシランの合計重量を基準として、0.1〜3重量%、或いは0.5〜1重量%である。
【0069】
ポリボロシランの調製方法の工程(II)において、ポリボロシロキサン中間体、及び任意に、式R1nSiX4-nを有する少なくとも1つのハロシランを水と反応させて水不溶性加水分解生成物を形成する。ここで、R1及びXは上記で定義した通りであり、nは0、1、2又は3であり、ただし、過量の水が使用される場合、方法は加水分解生成物を水から分離することをさらに含む。
【0070】
工程(II)の任意のハロシランは、式R1nSiX4-n(式中、R1及びXは上記で定義及び例示した通りであり、nは0、1、2又は3である)を有する少なくとも1つのハロシランである。従って、ハロシランは、式R13SiXを有するモノハロシラン、式R12SiX2を有するジハロシラン、式R1SiX3を有するトリハロシラン、又は式SiX4を有するテトラハロシラン(式中、R1及びXは上記で定義及び例示した通りである)であり得る。モノハロシラン、ジハロシラン、トリハロシラン及びテトラハロシランの例は、本方法の工程(I)のために上記した通りである。さらに、任意のハロシランは、式R1nSiX4-nをそれぞれ有する、単一のハロシラン、は2つ以上の異なるハロシランを含む混合物であり得る。式中、R1及びXは、上記で定義及び例示した通りである。
【0071】
ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランは、当該中間体を水に添加することによって水と典型的に混合される。また、逆の添加(すなわち、ポリボロシロキサンに水を添加すること)も可能である。
【0072】
ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランの水への添加速度は、攪拌の効率的な手段を備えた1000mL反応容器に関して、典型的に2mL/分〜1,000mL/分である。添加速度が遅すぎる場合、反応時間が不必要に長くなる。添加速度が速すぎる場合、反応混合物がゲルを形成することがある。
【0073】
ボロシロキサン中間体と水との反応は、0〜50℃、或いは0〜30℃、或いは2〜10℃の温度で典型的に行われる。当該温度が0℃未満であると、反応速度が典型的に非常に遅くなる。当該温度が50℃を超えると、反応混合物がゲルを形成することがある。
【0074】
反応時間は、いくつかの因子(例えば、ポリボロシロキサン中間体の構造や温度など)に依存する。反応は、ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランの加水分解を生じさせるのに十分な時間の間、典型的に行われる。本明細書中で使用される場合、「加水分解」という用語は、ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシラン中に本来存在するケイ素結合基−Xの少なくとも95モル%が、ケイ素結合ヒドロキシ基に変換されることを意味する。例えば、反応時間は、2〜10℃の温度で、典型的に15〜300分、或いは15〜100分、或いは30〜50分である。最適の反応時間は、下記の実施例の欄に記載された方法を用いる日常的な実験によって決定され得る。
【0075】
反応混合物中の水の濃度は、典型的にポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランの加水分解を生じさせるのに十分な濃度である。例えば、水の濃度は、典型的にポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシロキサン中のケイ素結合基−Xのモル数の合計に対する水のモル数の比が0.5〜10、或いは1〜8、或いは4〜6となるような濃度である。
【0076】
ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランと水との反応は、有機溶媒の存在下で行われてもよい。有機溶媒は、本方法の条件下でポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランと反応せず、且つポリボロシロキサン中間体及び加水分解生成物と混和性である任意の非プロトン性有機溶媒又は双極性(dipolar)プロトン性有機溶媒であり得る。有機溶媒は、典型的に水と非混和性である。本明細書中で使用される場合、「非混和性」という用語は、溶媒における水の溶解度が、25℃において100gの溶媒に対して約0.1g未満であることを意味する。
【0077】
有機溶媒の例としては、n−ペンタン、ヘキサン、n−へプタン、イソオクタン及びドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンなどの環状エーテル;メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン;トリクロロエタンなどのハロゲン化アルカン;並びにブロモベンゼン及びクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
有機溶媒は、上記でそれぞれ記載及び例示したような、単一の有機溶媒又は2つ以上の異なる有機溶媒を含む混合物であり得る。
【0079】
存在する場合、有機溶媒の濃度は、反応混合物の合計重量を基準として、典型的に1〜80重量%、或いは5〜60重量%、或いは30〜50重量%である。
【0080】
ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシランが過量の水と反応される場合、方法は、典型的に下記の工程(III)を開始する前に加水分解生成物を水から分離することをさらに含む。本明細書中で使用される場合、「過量の水」という用語は、ポリボロシロキサン中間体及び任意のハロシラン中のケイ素結合基−Xのモル数の合計に対する水のモル数の比が、典型的に1よりも大きい(例えば、1〜8、或いは4〜6)ような水の濃度であることを意味する。
【0081】
加水分解生成物は、混合物の攪拌をやめ、2つの層(有機相及び水相)に混合物を分離させ、加水分解生成物を含有する有機相を除去することによって水から分離され得る。有機相は、水で典型的に洗浄される。水は、洗浄の際に水と有機相との間のエマルションの形成を最小限にするために、塩化ナトリウムなどの中性無機塩をさらに含み得る。水中の中性無機塩の濃度は、飽和に至るまでであり得る。有機相は、水と混合し、2つの層に混合物を分離させ、水層を除去することによって洗浄され得る。有機相は、別個の部分の水を用いて1〜5回典型的に洗浄される。洗浄1回あたりの水の量は、典型的に有機相の量の0.5〜2倍である。混合は、従来の方法(例えば、攪拌又は振とうなど)により行われ得る。
【0082】
ポリボロシロキサンの調製方法の工程(III)において、加水分解生成物を蒸留して縮合水(すなわち、加熱中に加水分解生成物中のケイ素結合ヒドロキシ基の縮合により形成された水)を除去する。蒸留は、大気圧又は大気圧以下の圧力(subatmospheric pressure)で行われ得る。蒸留は、100kPaにおいて、80〜150℃、或いは90〜110℃の温度で典型的に行われる。蒸留は、500〜1,000,000の数平均分子量を有するポリボロシロキサンを生じるのに十分な時間の間、典型的に継続される。例えば、加水分解生成物は、0.5〜24時間の間に80〜149℃の温度、或いは1〜12時間の間に90〜120℃の温度、或いは3〜8時間の間に100〜115℃の温度で典型的に加熱される。蒸留が、下記の縮合触媒の存在下で行われる場合、ポリボロシロキサンは、より低温及び/又は短時間で典型的に形成され得る。
【0083】
ポリボロシロキサンが比較的高い粘度(例えば、25℃で100Pa・sよりも高い粘度)を有する場合、水の除去は、水と最小限の共沸混合物(minimum boiling azeotrope)を形成する水非混和性有機溶媒の存在下で加水分解生成物の蒸留を行うことによって容易になされる。この場合、蒸留は、水を集めて溶媒を蒸留容器に戻すディーンスタークトラップを用いて便利に行われ得る。
【0084】
また、加水分解生成物は、縮合触媒の存在下で蒸留され得る。縮合触媒は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進してSi−O−Si結合を形成するのに典型的に使用される任意の縮合触媒であり得る。縮合触媒の例としては、ジラウリン酸スズ、ジオクチル酸スズ及びテトラブチルスズなどのスズ(II)及びスズ(III)化合物;オクチル酸亜鉛などの亜鉛化合物;並びにチタンテトラブトキシドなどのチタン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。縮合触媒は、単一の縮合触媒、又は2つ以上の異なる縮合触媒を含む混合物であり得る。
【0085】
存在する場合、縮合触媒の濃度は、本方法の工程(I)に用いられるアルコキシボラン及びハロシランの混合重量を基準として、典型的に0.1〜10重量%、或いは0.5〜5重量%、或いは1〜3重量%である。
【0086】
縮合触媒は、加水分解生成物の蒸留後、ポリボロシロキサン及び縮合触媒の混合物を濾過することによって容易に除去し得る。
【0087】
ポリボロシロキサンの調製方法の1つの実施形態によると、アルコキシボラン(a)、ハロシラン(b)及び任意のハロシラン(工程II)は、フェニル基を含有しない。
【0088】
本方法の他の実施形態によると、混合されるアルコキシボラン(a)、ハロシラン(b)及び任意のハロシラン(工程II)中のR1により表される基の少なくとも10モル%、或いは少なくとも25モル%、或いは少なくとも50モル%は、アルケニルである。
【0089】
ボロシロキサン(A)(ii)は、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物である。式中、R1及びaは上記で定義及び例示した通りであり、ただし、ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する。
【0090】
式(II)を有するボロシロキサン化合物の例としては、(ViMe2SiO)3B、(ViMe2SiO)2BMe、(ViMe2SiO)2BPh、(ViPhMeSiO)3B、((CH2=CHCH2)PhMeSiO)3B、及びVi2MeSiOBPh2(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
ボロシロキサン(A)(ii)は、式(II)をそれぞれ有する、単一のボロシロキサン化合物又は2つ以上の異なるボロシロキサン化合物を含む混合物であり得る。
【0092】
式(II)を有するボロシロキサン化合物は、式B(OR23を有するトリアルコキシボラン、式R1B(OR22を有するジアルコキシボラン、式R12BOR2を有するモノアルコキシボランから選択されるアルコキシボランを、ルイス酸触媒の存在下で、式R13SiXを有するモノハロシランと反応させてボロシロキサン化合物を生成することにより調製し得る。式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;R2はC1〜C8のアルキルであり;Xは−Cl又は−Brであり;アルコキシボラン中の−OR2基のモル数に対するモノハロシラン中の−X基のモル数の比が、少なくとも1であり;ただし、ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する。
【0093】
式(II)を有するボロシロキサン化合物の上記調製方法において、トリアルコキシボラン、ジアルコキシボラン、モノアルコキシボラン、モノハロシラン及びルイス酸触媒は、式(I)を有するポリボロシロキサンの調製方法の工程(I)において、上記で記載及び例示した通りである。
【0094】
ボロシロキサン化合物を調製する反応は、アルコキシボラン中の−OR2基のモル数に対するモノハロシラン中の−X基のモル数の比が少なくとも1であることを除き、ポリボロシロキサンの調製方法の工程(I)において上記した方法で行い得る。例えば、アルコキシボラン中の−OR2基のモル数に対するモノハロシラン中の−X基のモル数の比は、典型的に1〜3、或いは1.05〜2、或いは1.1〜1.5である。さらに、ボロシロキサン化合物は、真空蒸留によって反応混合物から回収され得る。
【0095】
ボロシロキサン(A)(iii)は、それぞれ上記で記載及び例示したような(A)(i)及び(A)(ii)を含む混合物である。
【0096】
成分(B)は、成分(A)のボロシロキサンを硬化するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物である。
【0097】
有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子、或いは1分子あたり平均少なくとも3つのケイ素結合水素原子を有する。成分(A)における1分子あたりのアルケニル基の平均数と、成分(B)における1分子あたりのケイ素結合水素原子の平均数との合計が4よりも大きい場合に、架橋が起こると一般に理解される。
【0098】
有機ケイ素化合物は、オルガノハイドロジェンシラン又はオルガノハイドロジェンシロキサンであり得る。オルガノハイドロジェンシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン又はポリシランであり得る。同様に、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン又はポリシロキサンであり得る。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖状、分岐状、環状又は樹脂状(resinous)であり得る。シクロシラン及びシクロシロキサンは、3〜12個のケイ素原子、或いは3〜10個のケイ素原子、或いは3〜4個のケイ素原子を典型的に有する。非環式ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端、ペンダント位、又は末端及びペンダント位の両方に位置し得る。
【0099】
オルガノハイドロジェンシランの例としては、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、及びポリ(メチルシリレン)メチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
また、オルガノハイドロジェンシランは、式HR12Si−R3−SiR12Hを有し得る。式中、各R1は、脂肪族不飽和を含有しない、C1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;R3は、脂肪族不飽和を含有せず、以下から選択される式を有するヒドロカルビレン基である。
【0101】
【化4】

【0102】
式中、gは1〜6である。R1により表されるヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂のために上記で定義及び例示した通りである。
【0103】
式HR12Si−R3−SiR12H(式中、R1及びR3は上記で記載及び例示した通りである)を有するオルガノハイドロジェンシランの例としては、以下の式を有するシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
【化5】

【0105】
オルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、並びにHMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的に成る樹脂(式中、Meはメチルである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
成分(B)は、それぞれ上記したような、単一の有機ケイ素化合物又は2つ以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であり得る。例えば、成分(B)は、単一のオルガノハイドロジェンシラン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシランの混合物、単一のオルガノハイドロジェンシロキサン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物、又はオルガノハイドロジェンシランとオルガノハイドロジェンシロキサンとの混合物であり得る。
【0107】
成分(B)の濃度は、成分(A)のボロシロキサンを硬化(架橋)するのに十分な濃度である。成分(B)の正確な量は、所望の硬化の程度次第であり、成分(A)中のアルケニル基のモル数に対する成分(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比が増加するにつれ一般に増大する。成分(B)の濃度は、典型的に、成分(A)中のアルケニル基1モルあたり、0.5〜100モルのケイ素結合水素原子、或いは1〜10モルのケイ素結合水素原子、或いは1.1〜6モルのケイ素結合水素原子を与えるのに十分な濃度である。
【0108】
ケイ素結合水素原子を含有する有機ケイ素化合物の調製方法は、当該技術分野において周知である。例えば、オルガノハイドロジェンシランは、グリニャール試薬とハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリールとの反応によって調製し得る。特に、式HR12Si−R3−SiR12Hを有するオルガノハイドロジェンシランは、式R32を有するジハロゲン化アリールをエーテル中でマグネシウムを用いて処理し、対応するグリニャール試薬を生成させた後、このグリニャール試薬を式HR12SiClを有するクロロシランで処理することによって調製し得る。式中、R1及びR3は、上記で記載及び例示した通りである。
【0109】
オルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法(例えば、オルガノハロシランの加水分解や縮合)もまた、当該技術分野において周知である。
【0110】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の成分(C)は、成分(A)と成分(B)との付加反応を促進させる、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒である。ヒドロシリル化触媒は、白金族金属を含む周知のヒドロシリル化触媒、白金族金属を含有する化合物、又はマイクロカプセル化された白金族金属含有触媒のいずれかであり得る。白金族金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが挙げられる。好ましくは、白金族金属は、ヒドロシリル化反応のその高い活性に基づいて、白金である。
【0111】
好ましいヒドロシリル化触媒としては、米国特許第3,419,593号においてウィリング(Willing)により開示された、塩化白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が挙げられる。この米国特許は参照により本願明細書に援用される。この種類の好ましい触媒は、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。
【0112】
また、ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性樹脂中にカプセル化された白金族金属を含む、マイクロカプセル化された白金族金属含有触媒であってもよい。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒を含有する組成物は、周囲条件下で長期間(典型的には、数ヵ月以上)の間安定であるが、なお熱可塑性樹脂の融点又は軟化点よりも高い温度で比較的急速に硬化する。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びそれらの調製方法は、米国特許第4,766,176号及びその中の引用文献、並びに米国特許第5,017,654号に例示されている通り、当該技術分野において周知である。
【0113】
成分(C)は、単一のヒドロシリル化触媒、又は少なくとも1つの特性(例えば、構造、形態、白金族金属、錯体を形成する配位子及び熱可塑性樹脂)において異なる2つ以上の異なる触媒を含む混合物であり得る。
【0114】
成分(C)の濃度は、成分(A)と成分(B)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、成分(C)の濃度は、成分(A)及び成分(B)の合計重量を基準として、0.1〜1000ppmの白金族金属、好ましくは1〜500ppmの白金族金属、より好ましくは5〜150ppmの白金族金属を与えるのに十分な濃度である。硬化速度は、0.1ppm未満の白金族金属の下では非常に遅い。1000ppmより多い白金族金属の使用は、硬化速度の顕著な増大をもたらさず、従って不経済である。
【0115】
ボロシロキサン組成物は追加の成分を含むことができるが、ただし、ボロシロキサン組成物のボロシロキサンが硬化して下記で記載する本発明のボロシロキサン接着剤を形成することを阻害しない場合に限る。追加の成分の例としては、ヒドロシリル化触媒抑制剤(例えば、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサン及びトリフェニルホスフィン)、接着促進剤(例えば、米国特許第4,087,585号及び同第5,194,649号で教示される接着促進剤)、染料、色素、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、流動調整剤、充填材(例えば、補強材及び増量材(extending filler))、並びに希釈剤(例えば、有機溶媒及び反応希釈剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
ボロシロキサン組成物は、有機溶媒を典型的に含有しない。しかしながら、この組成物は、組成物の粘度を低減するため、及び基板上への組成物の適用を用意にするために、有機溶媒をさらに含み得る。
【0117】
ボロシロキサン組成物は、主成分及びあらゆる任意成分を上記の割合で、有機溶媒を用いて又は用いずに周囲温度で混合することによって典型的に調製される。ボロシロキサン組成物が直ぐに使用されるなら、種々の成分の添加順序は重要ではないが、当該組成物の早過ぎる硬化を避けるために、約30℃未満の温度でヒドロシリル化触媒を最後に添加することが好ましい。
【0118】
混合(mixing)は、練り(milling)、混合(blending)及び攪拌(stirring)などの当技術分野で公知の任意の技術で成し遂げることができ、バッチ法であっても連続法であってもよい。具体的な装置は、成分の粘度および最終的なボロシロキサン組成物の粘度によって決定される。
【0119】
本発明によるボロシロキサン接着剤は、ボロシロキサンの硬化生成物を含む。ここで、ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択される。式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2である。
【0120】
ボロシロキサン接着剤は、ボロシロキサンの硬化生成物を含む。ここで、ボロシロキサンは、アルケニル基を含有しても含有してなくてもよい、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均すくなくとも2つのアルケニル基を有する)、及び式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択される。ポリボロシロキサン及びボロシロキサン化合物は、ボロシロキサン組成物のために上記で記載及び例示した通りである。本明細書中で使用される場合、「ボロシロキサンの硬化生成物」という用語は、三次元網目構造を有する架橋ボロシロキサンのことを言う。
【0121】
ボロシロキサン接着剤は、高透明度を典型的に有する。接着剤の透明度は、多くの因子(例えば、接着剤の組成及び厚さ)に依存する。例えば、50μmの厚さを有するボロシロキサン接着剤フィルムは、電磁スペクトルの可視領域(約400〜約700nm)の光に対して、少なくとも80%、或いは少なくとも90%の%透過率を典型的に有する。
【0122】
ボロシロキサン接着剤が、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するボロシロキサンの硬化生成物を含む場合、接着剤は、上記のボロシロキサン組成物のボロシロキサンを硬化することによって調製され得る。例えば、ボロシロキサンは、大気圧下、50〜200℃、或いは80〜200℃、或いは100〜150℃の温度にボロシロキサン組成物を曝すことによって硬化され得る。ボロシロキサン組成物は、ボロシロキサンを硬化(架橋)するのに十分な長さの時間、一般に加熱される。例えば、組成物は、0.15〜1時間の間、100〜150℃の温度で典型的に加熱される。
【0123】
或いは、ボロシロキサン接着剤は、ポリボロシロキサンがアルケニル基を含有するか否かに関らず、上記の式(I)を有するポリボロシロキサンを硬化することによって調製され得る。例えば、ポリボロシロキサンは、0.5〜24時間の間、50〜300℃の温度でポリボロシロキサンを加熱することによって硬化され得る。
【0124】
さらに、本発明は、
基板と、
前記基板の表面の少なくとも一部上のボロシロキサン接着剤塗膜であって、前記接着剤塗膜はボロシロキサンの硬化生成物を含み、前記ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択され、式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であるボロシロキサン接着剤塗膜と
を含む塗装基板に関する。
【0125】
基板は、平面形状、複雑形状(complex contour)又は不規則形状を有する任意の剛性材料又は可撓性材料であり得る。基板は、電磁スペクトルの可視領域(約400〜約700nm)における光に対して透過性又は非透過性であり得る。また、基板は、導体、半導体又は不導体であり得る。基板の例としては、シリコン、二酸化ケイ素の表層を有するシリコン、炭化ケイ素、リン化インジウム及びガリウムヒ素などの半導体;石英;石英ガラス;酸化アルミニウム;セラミック;ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリ鉛ガラス(lead-alkali glass)、ホウ酸塩ガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウ酸鉛ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス(sodium borosilicate glass)、アルミノケイ酸リチウムガラス、カルコゲニドガラス、リン酸塩ガラス及びケイ酸アルカリバリウムガラス(alkali-barium silicate glass)などのガラス;金属箔;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレートなどのポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニルフルオライドなどのフルオロカーボンポリマー;ナイロンなどのポリアミド;ポリイミド;ポリ(メチルメタクリレート)などのポリエステル;エポキシ樹脂;ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスルホン;並びにポリエーテルスルホンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
さらに、基板は、シリコーン樹脂を含む硬化性シリコーン組成物中に繊維強化材を含浸させ、含浸させた繊維強化材を加熱してシリコーン樹脂を硬化することによって調製された強化シリコーン樹脂フィルムであり得る。様々な種類の硬化性シリコーン組成物から調製された強化シリコーン樹脂フィルムは、次の国際特許出願公報:国際公開第2006/088645号、国際公開第2006/088646号、国際公開第2007/092032号及び国際公開第2007/018756号に例示されている通り、当該技術分野において公知である。
【0127】
塗装基板は、基板の表面の少なくとも一部上に、ボロシロキサン接着剤塗膜を含む。ボロシロキサン接着剤塗膜は、基板の1つ以上の表面の一部、又は1つ以上の表面の全てに存在し得る。例えば、基板が平面パネルである場合、ボロシロキサン接着剤塗膜は、基板の一面上、両面上、又は両面及び縁の両方に存在し得る。
【0128】
ボロシロキサン接着剤塗膜は、ボロシロキサンの硬化生成物を含む。ここで、硬化生成物は、本発明のボロシロキサン接着剤のために上記し且つ例示した通りである。
【0129】
ボロシロキサン接着剤塗膜は、1つのボロシロキサン接着剤の1つの層を含む単層塗膜、又は少なくとも2つの異なるボロシロキサン接着剤の2つ以上の層を含む多層塗膜(ここで、直接隣接する層は、異なる硬化生成物を含む(すなわち、硬化生成物は、異なる組成及び/又は特性を有する))であり得る。多層塗膜は、2〜7層、或いは2〜5層、或いは2〜3層を典型的に含む。
【0130】
単層のボロシロキサン接着剤塗膜は、0.03〜300μm、或いは0.1〜100μm、或いは0.1〜50μmの厚さを典型的に有する。多層の塗膜は、0.06〜300μm、或いは0.2〜100μm、或いは0.2〜50μmの厚さを典型的に有する。ボロシロキサン接着剤塗膜の厚さが0.03μm未満であると、塗膜が不連続になることがある。ボロシロキサン接着剤塗膜の厚さが300μmを超えると、塗膜は、接着性が低下し、及び/又はクラックが生じることがある。
【0131】
塗装基板は、基板上にボロシロキサン接着剤塗膜を形成することによって調製され得る。ここで、接着剤塗膜及び基板は、上記で定義及び例示された通りである。例えば、単層のボロシロキサン接着剤塗膜を含む塗装基板は、(i)上記したボロシロキサン組成物を基板上に適用してフィルムを形成し、(ii)フィルムのボロシロキサンを硬化させることによって調製され得る。ボロシロキサン組成物は、スピンコーティング、浸漬コーティング、噴霧コーティング、流し塗り、スクリーン印刷、及びロールコーティングなどの従来の方法を用いて基板上に適用され得る。存在する場合、フィルムが加熱される前に、塗装基板から溶媒が典型的に蒸発され得る。単純な空気乾燥、真空の適用、又は加熱(50℃以下)などの蒸発のためのあらゆる適切な手段が使用され得る。
【0132】
フィルムのボロシロキサンは、本発明のボロシロキサン接着剤の調製方法において上記した条件の下で硬化され得る。
【0133】
塗膜が単層の接着剤塗膜を含む塗装基板の調製方法は、ボロシロキサン組成物が基板よりも硬化接着剤フィルム上に適用され、各適用のために同じボロシロキサン組成物が使用されることを除き、塗膜の厚さを増加させるために工程(i)及び(ii)を繰り返すことをさらに含み得る。
【0134】
多層のボロシロキサン接着剤塗膜を含む塗装基板は、単層の塗膜の調製に使用される方法と同様の方法で調製されることができ、塗膜の隣接する層のみが、異なる組成を有するボロシロキサン組成物を用いて調製され、典型的に、各フィルムは、次の層のボロシロキサン組成物を適用する前に少なくとも部分的に硬化される。例えば、2つの層を有するボロシロキサン接着剤塗膜を含む塗装基板は、(i)上記のボロシロキサン組成物を基板上に適用して第1フィルムを形成し、(ii)第1フィルムのボロシロキサンを少なくとも部分的に硬化させ、(iii)(i)の組成物とは異なるボロシロキサン組成物を、部分的に硬化した第1フィルム上に適用して第2フィルムを形成し、(iv)第2フィルムのボロシロキサンを硬化させることによって調製され得る。
【0135】
本発明による積層基板は、
第1基板と、
前記第1基板を覆う少なくとも1つの追加基板と、
各基板の少なくとも1つの表面の少なくとも一部上のボロシロキサン接着剤塗膜であって、ただし、前記接着剤塗膜の少なくとも一部は、隣接する基板の反対面の間にあると共に当該反対面と直に接しており、前記接着剤塗膜は、ボロシロキサンの硬化生成物を含み、前記ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択され、式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であるボロシロキサン接着剤塗膜と
を含む。
【0136】
本明細書で使用される場合、追加基板に関連して用いられる「覆う」という用語は、各追加基板が、第1基板及び任意の中間基板(複数可)の上方の位置(しかし、これらの基板とは直接接しない)を占めることを意味する。
【0137】
積層基板の基板及びボロシロキサン接着剤塗膜は、本発明の塗装基板のために上記し且つ例示した通りである。積層基板は、第1基板及び少なくとも1つの追加基板を含む。積層基板は、1〜20の追加基板、或いは1〜10の追加基板、或いは1〜4の追加基板を典型的に含有する。積層基板が積層ガラス基板である場合、少なくとも1つの基板はガラスであり、そして任意に、少なくとも1つの基板が、上記した強化シリコーン樹脂フィルムである。
【0138】
積層基板は、各基板の少なくとも1つの表面の少なくとも一部上にボロシロキサン接着剤塗膜を含む。接着剤塗膜は、各基板の1つ以上の表面の一部上、又は各基板の1つ以上の表面の全てに存在し得る。例えば、積層基板が、ガラス枠(glass panes)を含む積層ガラスである場合、ボロシロキサン接着剤塗膜は、各枠の一面上、両面上、又は両面及び縁の両方に存在し得る。
【0139】
図1に示されるように、本発明による1つの実施形態の積層基板は、第1反対面100A及び第2反対面100Bを有する第1基板100;第1基板100の第1反対面100A上の第1ボロシロキサン接着剤塗膜102であって、ボロシロキサンの硬化生成物を含む第1ボロシロキサン接着剤塗膜102;並びに第1ボロシロキサン接着剤塗膜102上の第2基板104を含む。
【0140】
図2に示されるように、前の実施形態の積層基板は、第2基板104上の第2ボロシロキサン接着剤塗膜106、及び第1基板100の第2反対面100B上の第3ボロシロキサン接着剤塗膜108をさらに含み、第2及び第3接着剤塗膜はそれぞれ、ボロシロキサンの硬化生成物を含む。
【0141】
積層基板の適切な調製方法は、図1に示された積層基板のために、ここで説明される。積層基板は、(i)上記のボロシロキサン組成物を基板の第1表面上に適用して第1接着剤フィルムを形成し、(ii)第1接着剤フィルム上に第2基板を適用し、(iii)第1接着剤フィルムのボロシロキサンを硬化させることによって調製され得る。追加のボロシロキサン接着剤塗膜及び基板を含む積層基板は、同様の方法で調製され得る。積層基板が、少なくとも1つの多層のボロシロキサン接着剤塗膜を含む場合、塗膜の各層は、典型的に、次の層が形成される前に少なくとも部分的に硬化される。
【0142】
本発明のボロシロキサン接着剤は、高耐湿性、高透明度、及び様々な基板に対する優れた接着性を有する。さらに、このボロシロキサン接着剤は、接着剤の分解温度よりも高い温度に曝される間及び曝された後に接着性が高く、可燃性が低く(低発熱速度からも明らかなように)、そしてチャー収率が高い。
【0143】
本発明のボロシロキサン接着剤は、高耐湿性、高温での高接着性、低可燃性、及び高透明度を有する接着剤を要求する用途において有用である。例えば、このボロシロキサン接着剤は、耐火窓及びガラス防火壁の製造において、ガラスパネルを接着するのに有用である。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は、本発明のボロシロキサン組成物及び積層基板を、より良好に説明するために提示されるが、添付の特許請求の範囲で記述される本発明を限定するものではない。別記しない限り、実施例で説明される部及びパーセントは全て重量に基づく。以下の材料を実施例において使用した。
【0145】
帝人デュポンフィルム株式会社(バージニア州ホープウェル)により販売されているメリネックス(登録商標)は、滑り用の離型剤で一面上が前処理され、125μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0146】
ガラス織物は、平織及び37.5μmの厚さを有する106型電気ガラス織物(style106 electrical glass fabric)を575℃で6時間加熱することによって調製された熱処理ガラス織物である。未処理ガラス織物は、JPSガラス(サウスカロライナ州スレーター)から得た。
【0147】
シリコーンベース:82%の、式(PhSiO3/20.75(ViMe2SiO1/20.25を有するシリコーン樹脂(ここで、当該樹脂は、約1700の重量平均分子量、約1440の数平均分子量を有し、約1モル%のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する)、及び18%の1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを含有する混合物。1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン中のケイ素結合水素原子と、シリコーン樹脂中のケイ素結合ビニル基とのモル比は、29Si NMR及び13C NMRにより決定される場合に、1.1:1である。
【0148】
白金触媒は、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金(0)錯体をトルエン中に含有し、1000ppmの白金濃度を有する混合物である。
【0149】
(実施例1)
塩化鉄(III)を少量の塩化チオニルの上方で一晩乾燥させた。窒素下、50℃において、0.4gのFeCl3と60gのジメチルジクロロシランとの攪拌混合物に、ホウ酸トリメチルを滴下して(drop-wise)添加した。添加の間、揮発性生成物を蒸留によって除去した。ホウ酸トリメチルの添加が完了した後、混合物を50℃でさらに1時間攪拌した。次に、温度を80℃に上昇させ、この温度で1時間保持した。加熱をやめ、混合物を室温まで冷却し、ポリボロシロキサン中間体を生じさせた。
【0150】
(実施例2)
実施例1のポリボロシロキサン中間体(5g)を、5gのジメチルジクロロシラン及び10gのトルエンと混合した。混合物を50gの脱イオン水に注ぎ、得られた2相混合物を精力的に振とうした。攪拌をやめ、有機相及び水相を分離させた。上方の有機相を集め、20g部の脱イオン水で数回洗浄した。ディーンスタークトラップ及び温度計を備えたフラスコに混合物を移動し、89〜115℃で蒸留して水を除去した。集められた水の量が一定に維持されたとき、混合物を室温まで冷却し、ポリボロシロキサンを生じさせた。ポリボロシロキサンの試料をアルミニウム皿に配置し、空気循環式オーブン内で1時間、200℃で加熱し、室温に冷却した際に、透明固体として得られる硬化ポリボロシロキサンを生じさせた。周囲条件下で4時間保存した後、硬化ポリボロシロキサンは透明を維持した。一晩の保存の後、硬化ポリボロシロキサンは僅かに濁った。さらなる保存は、透明度のさらなる変化を生じさせなかった。
【0151】
(実施例3)
実施例1のポリボロシロキサン中間体(15g)を、30gのジメチルジクロロシラン、8gのビニルジメチルクロロシラン及び40gのp−キシレンと混合した。混合物を40gの脱イオン水に注ぎ、得られた2相混合物を精力的に振とうした。攪拌をやめ、有機相及び水相を分離させた。上方の有機相を集め、40g部の脱イオン水で数回洗浄し、5gの硫酸マグネシウムの上方で乾燥させた後、濾過した。濾液を、ポリボロシロキサンの理論的収量を基準として、0.2重量%のオクチル酸亜鉛で処理し、ディーンスタークトラップ及び温度計を備えたフラスコ内で混合物を加熱し、120℃で2時間蒸留して水を除去した。混合物を室温まで冷却し、次に濾過した。濾液を、ロータリーエバポレーターを用い、減圧(5mmHg、667Pa)下、80℃で濃縮し、粘性液体としてのポリボロシロキサンを生じさせた。
【0152】
(実施例4)
実施例3のポリボロシロキサンを、2gの、式Me3SiO(HMeSiO)nSiMe3(式中、Meはメチルであり、nは67の平均値を有する)を有するポリ(メチルハイドロジェン)シロキサン、及び0.035gの白金触媒と混合した。混合物をアルミニウム皿に配置し、150℃で1時間加熱した。室温に冷却した際に、透明固体として硬化ポリボロシロキサンを得た。
【0153】
(実施例5)
塩化チオニルの上方で予め乾燥させた、ホウ酸トリメチル(230.8g)、50gのクロロジメチルビニルシラン及び1.4gの塩化鉄(III)を、窒素下、スターラー、凝縮器、ディーンスタークトラップ、温度計、マントルヒーター及び温度調節器を備えた500mL3口フラスコ内で混合した。混合物を50℃に加熱し、揮発性生成物を蒸留によって除去した。濃縮MeClの回収を止めた際、混合物を82℃よりも高く加熱して過剰のクロロジメチルビニルシランを除去した。温度が100℃に到達した際、クロロジメチルビニルシランの回収を止め、混合物を40℃未満に冷却し、次に100gのトルエン及び50gの冷水で連続して処理した。混合物を2分間攪拌し、水相と有機相との分離が観察されるまで静置した。上方の有機相を回収し、次にトルエン及び残留水分を、ロータリーエバポレーターを用いて80℃及び2mmHgの終圧で除去し、式(ViMe2SiO)3B(式中、Meはメチルである)を有するボロシロキサン化合物を液体として生じさせた。
【0154】
上記のボロシロキサン化合物(5g)を、8gの1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、2gの、200±25m2/gの表面積(BET)を有するヒュームドシリカ、0.15gのビニルトリメトキシシラン、及び0.075gの白金触媒と混合した。混合物を、空気循環式オーブン内で1時間、150℃で加熱した。室温に冷却した際に、透明固体として硬化ボロシロキサンを得た。周囲条件下で3ヶ月保存した後、硬化ポリボロシロキサンは僅かに濁った。
【0155】
(実施例6)
シリコーンベースを、当該ベースの重量を基準として0.5重量%の白金触媒と混合した。得られた組成物を、メリネックス(登録商標)516PETフィルム(8インチ×11インチ(20.32cm×27.94cm))の離型剤処理された表面上に適用し、シリコーンフィルムを形成した。PETフィルムと同じ寸法を有するガラス織物を、シリコーンフィルム上に慎重に置き、当該組成物に当該織物を完全に濡らすのに十分な時間を与えた。次に、埋め込まれた織物に上記のシリコーン組成物を均一に適用した。同一のPETフィルムを、シリコーン組成物と接触する離型処理された面をもつ塗膜の上に配置した。次に、300μmの距離を離された2つのステンレス鋼バー(bar)の間に積層物を通過させた。積層物を、150℃で10分間、オーブン内で加熱した。オーブンを止め、オーブン内で積層物を室温まで冷却した。上部のPETフィルムを強化シリコーン樹脂フィルムから分離し(剥がし)、次に、シリコーン樹脂フィルムを下部のPETフィルムから分離した。透明な強化シリコーン樹脂フィルムは、約125μmの厚さを有していた。
【0156】
(実施例7)
2つの平面フロートガラスプレート(6インチ×6インチ×1/8インチ(15.24cm×15.24cm×0.32cm))を水中の洗剤の温溶液で洗浄し、脱イオン水で十分にすすぎ、大気中で乾燥させた。約2gの、実施例5のシリコーン組成物を、各ガラスプレートの一面上に適用した。ガラスプレートと同じ寸法を有する実施例6の強化シリコーン樹脂フィルムを、1つのガラスプレートの塗装表面上に配置し、次に、他のガラスプレートの塗装表面を強化シリコーン樹脂フィルムの露出した表面上に配置した。積層物を、室温で2時間、真空(2500Pa)下で保持した。複合体を、オーブン内で、3℃/分の速度で150℃まで加熱し、その温度で積層物を2時間保持した。オーブンを止め、積層ガラスをオーブン内で室温まで冷却した。
【0157】
次に、積層ガラスをオーブン内に配置し、3℃/分の速度で500℃まで加熱し、500℃で5時間保持し、3℃/分で60℃まで加熱し、次に室温まで冷却した。熱処理後、残存した積層物中のガラスプレートを強化シリコーン樹脂フィルムに接着した。
【0158】
(比較例1)
当該技術分野において周知の方法(例えば、米国特許第5,112,779号を参照)に従い、ポリボロシロキサンを調製した。1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン(0.125モル)、1.5モルの脱イオン水、及び0.1gのトリフルオロメタンスルホン酸を、温度計、凝縮器、機械的攪拌器及びマントルヒーターを備えた3口フラスコ内で混合した。0.25モルのトリメトキシフェニルシラン、0.25モルのジメチルジメトキシシラン、及び0.25モルのホウ酸トリメチルの混合物を、室温で攪拌しながらフラスコに滴下して加えた。添加が完了した後、混合物を60℃に加熱し、この温度で1時間保持した。次に、混合物の温度をゆっくりと上昇させ、メタノール副生成物の蒸留を行った。混合物の温度が85℃に至ったとき、加熱をやめ、混合物を室温まで冷却した。次に、混合物を1gの炭酸カルシウムで処理し、1時間攪拌した。混合物を、濾紙(5μmの細孔径)を通して濾過した。濾液をトルエンで希釈し、次に、ポリボロシロキサンの理論的収量を基準として0.03重量%の水酸化カリウムで処理した。ディーンスタークトラップ及び温度計を備えたフラスコに混合物を移動し、110℃で蒸留して水を除去した。集められた水の量が一定に維持されたとき、混合物を室温まで冷却した。混合物の試料をアルミニウム皿に配置し、空気循環式オーブン内で1時間、150℃で加熱し、室温に冷却した際に、高粘性透明液体を生じさせた。
【0159】
液体生成物(50g)を、8.5gの1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン及び0.293gの白金触媒と混合した。混合物を、窒素下、150℃で1時間加熱した。室温まで冷却した際、透明無色固体として硬化ポリボロシロキサンを得た。この固体は、周囲条件下で2日間保存した後、白く、不透明になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、(ii)式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物、及び(iii)(A)(i)及び(A)(ii)を含む混合物(式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であり;ただし、ボロシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)から選択されるボロシロキサンと、
(B)前記ボロシロキサンを硬化するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と
を含むボロシロキサン組成物。
【請求項2】
成分(A)は(A)(i)である請求項1に記載のボロシロキサン組成物。
【請求項3】
成分(A)は(A)(ii)である請求項1に記載のボロシロキサン組成物。
【請求項4】
ボロシロキサンの硬化生成物を含むボロシロキサン接着剤であって、前記ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択され、式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であるボロシロキサン接着剤。
【請求項5】
前記ボロシロキサンは、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンである請求項4に記載のボロシロキサン接着剤。
【請求項6】
前記ボロシロキサンは、式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)である請求項4に記載のボロシロキサン接着剤。
【請求項7】
基板と、
前記基板の表面の少なくとも一部上のボロシロキサン接着剤塗膜であって、前記接着剤塗膜はボロシロキサンの硬化生成物を含み、前記ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択され、式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であるボロシロキサン接着剤塗膜と
を含む塗装基板。
【請求項8】
前記ボロシロキサンは、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンである請求項7に記載の塗装基板。
【請求項9】
前記ボロシロキサンは、式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)である請求項7に記載の塗装基板。
【請求項10】
前記基板は、ガラス及び強化シリコーン樹脂フィルムから選択される請求項7に記載の塗装基板。
【請求項11】
第1基板と、
前記第1基板を覆う少なくとも1つの追加基板と、
各基板の少なくとも1つの表面の少なくとも一部上のボロシロキサン接着剤塗膜であって、ただし、前記接着剤塗膜の少なくとも一部は、隣接する基板の反対面の間にあると共に当該反対面と直に接しており、前記接着剤塗膜は、ボロシロキサンの硬化生成物を含み、前記ボロシロキサンは、式(R12BO1/2l[(BO(3-v)/2)(OH)vm[(R1BO(2-w)/2)(OH)wn(R13SiO1/2p[(R12SiO(2-x)/2)(OH)xq[(R1SiO(3-y)/2)(OH)yr[(SiO(4-z)/2)(OH)zs (I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサン、式R1aB(OSiR133-a (II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンと式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物とを含む混合物(ただし、前記混合物中の前記ポリボロシロキサン及び前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基をそれぞれ有する)から選択され、式中、各R1は独立してC1〜C10のヒドロカルビル又はC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビルであり;lは0〜0.2であり;mは0〜0.5であり;nは0〜0.6であり;pは0〜0.7であり;qは0〜0.9であり;rは0〜0.999であり;sは0〜0.5であり;vは0〜0.05であり;wは0〜0.05であり;xは0〜0.45であり;yは0〜0.63であり;zは0〜0.25であり;m+nは0.001〜0.58であり;q+r+sは0.42〜0.999であり;(p+2q+3r+4s)/(3m+2n)は1.01〜1000であり;l+m+n+p+q+r+sは約1であり;aは0、1又は2であるボロシロキサン接着剤塗膜と
を含む積層基板。
【請求項12】
前記ボロシロキサンは、式(I)を有する少なくとも1つのポリボロシロキサンである請求項11に記載の積層基板。
【請求項13】
前記ボロシロキサンは、式(II)を有する少なくとも1つのボロシロキサン化合物(ただし、前記ボロシロキサン化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有する)である請求項11に記載の積層基板。
【請求項14】
前記基板の少なくとも1つはガラスである請求項11に記載の積層基板。
【請求項15】
前記基板の少なくとも1つは強化シリコーン樹脂フィルムである請求項11に記載の積層基板。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−518893(P2011−518893A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549714(P2010−549714)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/034828
【国際公開番号】WO2009/111193
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】