説明

ボールねじ装置

【課題】ボールねじ装置に過大荷重や偏荷重が加わったことを検出する手段を提供する。
【解決手段】外周面に螺旋状の軸軌道溝3を形成したねじ軸2と、内周面に軸軌道溝3に対向するナット軌道溝8を形成したナット7と、軸軌道溝3とナット軌道溝8とを螺合させる複数のボール10とを備えたボールねじ装置1において、ナット7の端部に、センサボール16を保持する保持溝18が形成されたセンサ保持体15を設け、この保持溝18に保持されたセンサボール16を隙間Sを介して軸軌道溝3に対向させ、軸軌道溝3がセンサボール16に接触したときのセンサボール16の変位を隙間センサ27で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や産業機械、半導体製造装置、精密機械等の機械装置の移動台の駆動に用いるボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボールねじ装置は、ねじ軸の外周面に螺旋状に形成した軸軌道溝と、ナットの内周面に形成した軸軌道溝に対向するナット軌道溝とを複数のボールを介して螺合させ、対向配置されたナット軌道溝と軸軌道溝とにより形成される負荷路を転動するボールによりナットに加えられた荷重を支持し、ナットに設けたボール戻し路によりボールを循環させながらねじ軸の回転運動をナットの直線運動に変換している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−156767号公報(第7頁段落0025−第8頁段落0029、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、ナットに過大荷重や偏荷重が加わっていることに気付かずに使用すると、軸軌道溝やナット軌道溝に剥離や磨耗等による損傷が生じ、ボールねじ装置の寿命を低下させる場合があるという問題がある。
また、ボールねじ装置が損傷したことに気付かずに使用し続けると、ボールねじ装置を用いた機械装置の他の部位にもダメージを与え、機械装置の保守に多大な時間を要する虞があるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ボールねじ装置に過大荷重や偏荷重が加わったことを検出する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とを螺合させる複数のボールとを備えたボールねじ装置において、前記ナットに、前記ねじ軸に接触しないセンサボールと、該センサボールの変位を検出する変位検出手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
これにより、本発明は、ボールねじ装置に過大荷重や偏荷重が加わったときのねじ軸の過大な変形をセンサボールの変位により増幅して検出することができ、軸軌道溝やナット軌道溝の損傷を防止してボールねじ装置の寿命を向上させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明によるボールねじ装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1のボールねじ装置の設置状態の上面を示す説明図、図2は実施例1のボールねじ装置の断面を示す説明図、図3は実施例1のセンサ保持体の断面を示す説明図、図4は図3のA方向から見た矢視図を示す説明図である。
図1、図2において、1はボールねじ装置である。
2はボールねじ装置1のねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作され、両端部に同軸に取付部2aが設けられた長尺の段付軸状部材であって、その大径部の外周面には半円より小さい円弧状断面形状の軸軌道溝3が所定のリードで螺旋状に形成されている。
【0009】
取付部2aは、図1に示すようにねじ軸2の両端部を回転支持するため支持軸受4の内輪が嵌合する部位である。
また、一方の取付部2aの端部は、カップリング5を介してねじ軸2を回転させるためのモータ等の駆動装置6に接続されている。
7はボールねじ装置1のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には軸軌道溝3と対向する半円より小さい円弧状断面形状のナット軌道溝8が軸軌道溝3と同じリードで形成されている。
【0010】
9はフランジ部であり、ナット7の外周部の一方の端部に設けられ、このフランジ部9を用いてナット7が図示しない機械装置の移動台にボルト等で固定される。
10はボールねじ装置1の転動体としてのボールであり、合金鋼等の鋼材で製作された球体であって、対向配置された軸軌道溝3とナット軌道溝8とにより形成される負荷路に複数装填されてねじ軸2とナット7を螺合させる。
【0011】
11はリターンチューブであり、鋼材や樹脂材料等で製作され、ボール10が通過できる内径を有するU字形に曲折した管であって、ナット7の外周面に設けられたナット軌道溝8に達する穴にその端部が嵌合してナット軌道溝8を連通する。
これにより、負荷路の両端部はリターンチューブ11の内径として形成された連通路により連通され、ボール10が循環する循環路が形成される。
【0012】
この循環路には所定の量の潤滑剤、例えばグリースと複数のボール10が封入され、ねじ軸2を回転させることによって負荷路を転動するボール10がナット7に加えられた荷重を支持しながら循環路を循環し、ねじ軸2の回転運動がナット7の直線運動に変換され、ナット7がねじ軸2の長手方向に沿った直線往復移動可能に支持される。
図2において、15はセンサ保持体である。
【0013】
16はセンサボールであり、ボール10と同一の鋼球、または樹脂材料等で形成されたボール10と同じ直径を有する球体である。
17はセンサ保持体15の本体部であり、合金鋼等の鋼材や樹脂材料で形成された円環状部材であって、図3に示すように本体部17を直径に沿って2つに分割した本体片17a、17bを組合せて形成される。
【0014】
本体部17の内周面には、軸軌道溝3に対向させてセンサボール16を保持する半円より大きい円弧状断面形状、つまりセンサボール16の直径と同等(例えば中間嵌め程度)の直径を有し、センサボール16の直径より狭い開口を有するの保持溝18が軸軌道溝3と同じリードで1巻分形成されており、その保持溝18の両端部は、図4に示すように一方の本体片17aに形成された保持溝18と同じ断面形状を有する連結溝19により連結されている。
【0015】
他方の本体片17bの内周面には、本体片17aに形成された保持溝18に接続する保持溝18が形成されている。
保持溝18は、これに嵌合して保持されたセンサボール16が、所定の隙間Sを介してねじ軸2の軸軌道溝3と対向するように、その溝底の直径がナット軌道溝8を転動するボール10の外接円の直径より隙間Sの2倍分大きく形成され、連結溝19はねじ軸2の外周面を越えるときにその外周面に接触しないように形成され、保持溝18を連結溝19で連結した循環溝20は、そこに循環可能に保持されているセンサボール16がねじ軸2と接触しないように形成されている。
【0016】
本実施例の隙間Sは、ねじ軸2の剛性等を考慮してナット7に過大荷重や偏荷重が加わったときのナット7とねじ軸2との相対的な変形量に相当する隙間に設定され、例えば、10μm以上、100μm以下に設定される。
本体部17のナット7側の端面には、ナット7のフランジ部9の反対側の端面に形成された嵌合穴22に嵌合する嵌合部23が形成され、本体部17の円周方向には所定のピッチ円直径、所定の角度ピッチで形成されたボルト穴24が形成されており、ボルト穴24に挿通する取付ボルト25によりセンサ保持体15がナット7の端部に固定される。
【0017】
27は変位検出手段としての隙間センサであり、静電容量式や光学式等の検出対象物との間の距離を計測するセンサであって、保持溝18に保持されたセンサボール16にその検出面27aを対向させて、本体片17aのボルト穴24を避ける位置に半径方向に穿孔されたセンサ取付穴28に取付けられている。
隙間センサ27の出力信号は、リード線29を介して図1に示す計測装置30へ入力され、計測装置30により増幅された信号が出力される。
【0018】
なお、隙間センサ27の取付位置は、本体片17bであってもよく、ボルト穴24を避けて保持溝18に保持されたセンサボール16にその検出面27aを対向させることができる位置であればどのような位置であってもよい。
上記の構成の作用について説明する。
本実施例のセンサボール16は、上記したように正常な運転状態においては、ねじ軸2の外周面や軸軌道溝3に隙間Sを介して対向しているので、ねじ軸2に接触することはなく、隙間センサ27の出力が変化することもない。
【0019】
この場合に、ナット7に過大荷重や偏荷重が加えられると、ねじ軸2が弾性変形してねじ軸2がナット7に接近し、その変形量が隙間S以上になると、軸軌道溝3にセンサボール16が接触し、その接触による摩擦力によりセンサボール16が循環溝20に案内されて移動する。
このセンサボール16の移動による変位が僅かであったとしても、センサボール16が球体であるので、センサボール16の移動に伴う隙間センサ27の検出面27aとの間の距離が大きく変化し、ねじ軸2の過大な変形がセンサボール16により増幅されて検出される。
【0020】
このように、センサボール16を介してねじ軸2の過大な変形を感度よく検出するので、過大加重等が加わっていることを運転中に察知することが可能になり、軸軌道溝3やナット軌道溝8に生ずる損傷を防止することができ、ボールねじ装置1の寿命を向上させることができると共に、ボールねじ装置1を用いた機械装置の保守時間の短縮を図ることができる。
【0021】
また、瞬間的な接触の場合には、センサボール16が移動した位置で保持されるので、運転中に過大荷重等を経験したことを不可逆的に記録することができる。
更に、出荷検査時に隙間センサ27の出力を記録しておけば、ボールねじ装置1の輸送中に過大荷重が加わった場合には前記と同様にその履歴が不可逆的に記録されるので、受入検査時に隙間センサ27の出力をチェックして輸送時における異常を検出することが可能になる。
【0022】
以上説明したように、本実施例では、ナットの端部に取付けたセンサ保持体に、軸軌道溝に対向する保持溝を連結した循環溝を設け、この循環溝に所定の隙間Sを介して保持させたセンサボールと軸軌道溝との接触によるセンサボールの移動によりねじ軸の過大な変形を隙間センサを用いて検出するようにしたことによって、ボールねじ装置に過大荷重や偏荷重が加わったときのねじ軸の過大な変形をセンサボールの変位により増幅して検出することができ、軸軌道溝やナット軌道溝の損傷を防止してボールねじ装置の寿命を向上させることができる。
【0023】
なお、本実施例においては、センサボール16を半円より大きい円弧状断面形状を有する保持溝18に保持させるとして説明したが、図5に示すようにセンサ保持体15の本体部17を磁性材で形成し、その内周面の保持溝18を、半円より小さい円弧状断面形状を有し、ナット軌道溝8を転動するボール10の外接円の直径より隙間Sの2倍分大きい溝底の直径を有する溝とし、本体部17を保持溝18の溝筋に沿って2分割にし、それぞれの保持溝18を互いに反する極性に着磁して磁性材で形成したセンサボール16を磁力により吸着保持するようにしてもよい。
【0024】
このようにすれば、保持溝や連結溝を容易に形成することができると共に、センサボールの装着を容易にすることができる。
また、図5と同様の保持溝に比較的粘着力の強い粘着剤を塗布し、この粘着剤によりセンサボールを保持するようにしても、前記と同様の効果を得ることができる。
本実施例で説明したセンサ保持体15、つまり、本体部17の内周面に保持溝18を連結溝19で連結した循環溝20を設け、この循環溝20にセンサボール16を循環可能に保持させ、変位検出手段としての隙間センサ27の検出面27aを、保持溝18に保持されたセンサボール16に対向させて本体部17のセンサ取付穴28に取付けたセンサ保持体15を、同じねじ軸2を用いる各種のナット7の端部に取付けて、過大荷重や偏荷重が加わったときのねじ軸2の過大な変形をセンサボール10の変位により検出するボールねじ装置1の荷重検出装置として用いるようにしてもよい。
【実施例2】
【0025】
図6は実施例2のセンサボールの取付状態を示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図6において、35はセンサボールであり、磁性材でボール10と同じ直径に形成され、直径方向に着磁された球体である。
本実施例の本体部17の内周面、例えば本体片17aの内周面には、軸軌道溝3に対向させてセンサボール35を保持する半球より大きい球状凹面、つまりセンサボール35の直径と同等(例えば中間嵌め程度)の直径を有し、センサボール35の直径より小さい円形の開口を有するのポケット36が形成されており、そのポケット36に嵌合して保持されたセンサボール35が、所定の隙間Sを介してねじ軸2の軸軌道溝3と対向するように、ポケット36の底の半径位置は、ナット軌道溝8を転動するボール10の外接円の半径より隙間S分大きい半径位置に形成され、そこに保持されているセンサボール35がねじ軸2と接触しないように形成されている。
【0026】
本実施例の隙間Sは、上記実施例1と同様設定される。
37は変位検出手段としての磁気センサであり、検出対象物が発する磁力の強弱を計測するセンサであって、ポケット36に保持されたセンサボール35にその検出面37aを対向させて、本体片17aのセンサ取付穴28に取付けられている。
なお、センサボール35と磁気センサ37との組合せを取付ける位置は、一箇所に限らず、複数の位置に取付けるようにしてもよい。
【0027】
上記の構成の作用について説明する。
本実施例のセンサボール35は、上記実施例1と同様に正常な運転状態においては、ねじ軸2の軸軌道溝3に隙間Sを介して対向しているので、ねじ軸2に接触することはなく、磁気センサ37の出力が変化することもない。
この場合に、上記実施例1と同様にナット7に過大荷重や偏荷重が加えられ、その変形量が隙間S以上になると、軸軌道溝3にセンサボール35が接触し、その接触による摩擦力によりセンサボール35がポケット36内で自転する。
【0028】
このセンサボール35の回転による変位が僅かであったとしても、センサボール35が直径方向に着磁されているので、センサボール35の回転に伴う磁力の変化は大きくなり、ねじ軸2の過大な変形がセンサボール35により増幅されて検出される。
このように、センサボール35を介してねじ軸2の過大な変形を感度よく検出するので、過大加重等が加わっていることを運転中に察知することが可能になり、軸軌道溝3やナット軌道溝8の損傷を防止することができる。
【0029】
また、瞬間的な接触の場合には、センサボール35が回転した位置で保持されるので、運転中に過大荷重等を経験したことを不可逆的に記録することができる。
更に、出荷検査時に磁気センサ37の出力を記録しておけば、ボールねじ装置1の輸送中に過大荷重が加わった場合には前記と同様にその履歴が不可逆的に記録されるので、受入検査時に磁気センサ37の出力をチェックして輸送時における異常を検出することが可能になる。
【0030】
以上説明したように、本実施例では、ナットの端部に取付けたセンサ保持体に、軸軌道溝に対向するポケットを設け、このポケットに所定の隙間Sを介して保持させたセンサボールと軸軌道溝との接触によるセンサボールの自転によりねじ軸の過大な変形を磁気センサを用いて検出するようにしたことによっても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
本実施例で説明したセンサ保持体15、つまり、本体部17の内周面に軸軌道溝3に対向させて着磁されたセンサボール35を保持するポケット36を設け、変位検出手段としての磁気センサを、ポケット36に保持されたセンサボール35にその検出面37aを対向させて本体部17のセンサ取付穴28に取付けたセンサ保持体15を、同じねじ軸2を用いる各種のナット7の端部に取付けて、過大荷重や偏荷重が加わったときのねじ軸2の過大な変形をセンサボール35の自転による磁力の変化により検出するボールねじ装置1の荷重検出装置として用いるようにしてもよい。
【実施例3】
【0032】
図7は実施例3のボールねじ装置の設置状態の上面を示す説明図、図8は実施例3のボールねじ装置の断面を示す説明図、図9は実施例3のセンサボールと保持バネを示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例のナット7には、図7、図8に示すように、その端部にセンサ取付穴28が形成されており、そのセンサ取付穴28は、図8に示すようにナット7の外周面からナット軌道溝8に貫通するように形成され、そこに実施例1と同様の隙間センサ27が取付けられている。
【0033】
このセンサ取付穴28の隙間センサ27の検出面27a側の穴が開口するナット軌道溝8は、ボール10が転動するナット軌道溝8を除く、つまり負荷路を形成するナット軌道溝8を除くナット軌道溝8(無負荷軌道溝41という。)である。
図8において、42はセンサボールであり、合金鋼等の鋼材や樹脂材料で製作されたボール10の直径より隙間S分小さい直径を有する球体である。
【0034】
44は保持バネであり、バネ鋼等の弾性を有する細い帯状の薄板を円の一部を切り取った円弧状に曲げ加工して形成され、円周方向には所定のピッチで、センサボール42の直径より小さい直径を有する保持穴45が複数形成されている。
また、保持バネ44は、センサボール42をその保持穴45に保持してセンサ取付穴28が開口する無負荷軌道溝41に装着したときに、センサボール42が無負荷軌道溝41を押圧する方向に付勢力を発揮するよう形成されている。
【0035】
これにより、センサボール42が無負荷軌道溝41の略1巻(本実施例では3/4巻)に嵌め込まれて保持され、そのセンサボール42と軸軌道溝3との間には隙間Sが形成される。本実施例の隙間Sは上記実施例1と同様設定される。
上記の構成の作用について説明する。
本実施例のセンサボール42は、上記実施例1と同様に正常な運転状態においては、ねじ軸2の軸軌道溝3に隙間Sを介して対向しているので、ねじ軸2に接触することはなく、隙間センサ27の出力が変化することもない。
【0036】
この場合に、上記実施例1と同様にナット7に過大荷重や偏荷重が加えられ、その変形量が隙間S以上になると、複数のセンサボール42の内のいずれかが軸軌道溝3に接触し、その接触による摩擦力により保持バネ44の保持穴45に保持された全てのセンサボール42が無負荷軌道溝41に案内されて同時に公転しながら移動する。
このセンサボール42の移動による変位が僅かであったとしても、上記実施例1と同様にしてねじ軸2の過大な変形がセンサボール42により増幅されて検出されると共に、一つのセンサボール42が軸軌道溝3に接触すれば全てのセンサボール42が移動するので、ねじ軸2の過大な変形の検出を迅速に行うことが可能になる。
【0037】
このように、センサボール42を介してねじ軸2の過大な変形を迅速に検出するので、過大加重等が加わっていることを運転中に即座に察知することが可能になり、軸軌道溝3やナット軌道溝8の損傷を更に有効に防止することができる。
瞬間的な接触の場合、および輸送中の場合の作動は、上記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
以上説明したように、本実施例では、保持バネにより保持した小径のセンサボールをナットの無負荷軌道溝に嵌め込み、対向する軸軌道溝にとの間に所定の隙間Sを形成し、センサボールと軸軌道溝との接触によるセンサボールの移動による変位によりねじ軸の過大な変形を隙間センサを用いて検出するようにしたことによって、上記実施例1と同様の効果に加えて、一つのセンサボールが軸軌道溝に接触すれば全てのセンサボールを移動させることができ、ねじ軸の過大な変形を即座に検出することができる。
【0039】
なお、本実施例においては、ねじ軸2の過大荷重等の検出を、ナット7の端部に一体に組み込んだ保持バネ44に保持させた小径のセンサボール42と隙間センサ27とにより検出するとして説明したが、上記実施例1および実施例2と同様にセンサ保持体を別に設け、そのセンサ保持体の本体部の内周面に軸軌道溝3に対向させて1巻以上のナット軌道溝8を形成し、そのナット軌道溝8に保持バネ44に保持させた小径のセンサボール42を嵌め込み、これに変位検出手段としての隙間センサ27の検出面27aを対向させて、本体部に設けたセンサ取付穴28に取付け、これを同じねじ軸2を用いる各種のナット7の端部に取付けて、過大荷重や偏荷重が加わったときのねじ軸2の過大な変形をセンサボール42の変位により検出するボールねじ装置1の荷重検出装置として用いるようにしてもよい。
【0040】
上記各実施例においては、リターンチューブ用いて形成した連通路をボールが循環するチューブ式の循環方式を用いたボールねじ装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、連通路は前記に限らず、連通路をこま式やエンドキャップ式、エンドデフレクタ式等とした循環方式のボールねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
また、上記各実施例においては、変位検出手段である隙間センサや磁気センサを、ナットのフランジ部の反対側の端部に1箇所設けるとして説明したが、変位検出手段とセンサボールの組合せを設ける部位は、ナットのフランジ部側の端部であっても、こま式の場合はナットの軸方向の中央部であってもよく、これらを組合せて複数設けるようにしてもよい。
【0041】
この場合に、図10に示すダブルナット式のボールねじ装置1の場合は、一方のナット7のフランジ部9側の端部、2つのナット7の間、他方のナット7のフランジ部9の反対側の端部の少なくとも1箇所に変位検出手段とセンサボールの組合せを設けるようにしてもよい。
更に、上記各実施例においては、ボールねじ装置のねじ軸を回転させてナットを軸方向に移動させる場合を例に説明したが、ナットを回転させてねじ軸を軸方向に移動させる形式、またはナットが回転しながら固定されたねじ軸上を軸方向に移動する形式のボールねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0042】
この場合に、変位検出手段からの出力信号はスリップリング等を用いて計測装置に導くようにする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1のボールねじ装置の設置状態の上面を示す説明図
【図2】実施例1のボールねじ装置の断面を示す説明図
【図3】実施例1のセンサ保持体の断面を示す説明図
【図4】図3のA方向から見た矢視図を示す説明図
【図5】実施例1の保持溝の他の形態を示す説明図
【図6】実施例2のセンサボールの取付状態を示す説明図
【図7】実施例3のボールねじ装置の設置状態の上面を示す説明図
【図8】実施例3のボールねじ装置の断面を示す説明図
【図9】実施例3のセンサボールと保持バネを示す説明図
【図10】実施例のダブルナット式のボールねじ装置の設置状態の上面を示す説明図
【符号の説明】
【0044】
1 ボールねじ装置
2 ねじ軸
2a 取付部
3 軸軌道溝
4 支持軸受
5 カップリング
6 駆動装置
7 ナット
8 ナット軌道溝
9 フランジ部
10 ボール
11 リターンチューブ
15 センサ保持体
16、35、42 センサボール
17 本体部
17a、17b 本体片
18 保持溝
19 連結溝
20 循環溝
22 嵌合穴
23 嵌合部
24 ボルト穴
25 取付ボルト
27 隙間センサ
27a、37a 検出面
28 センサ取付穴
29 リード線
30 計測装置
36 ポケット
37 磁気センサ
41 無負荷軌道溝
44 保持バネ
45 保持穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とを螺合させる複数のボールとを備えたボールねじ装置において、
前記ナットに、前記ねじ軸に接触しないセンサボールと、該センサボールの変位を検出する変位検出手段とを設けたことを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記センサボールを循環させる循環溝が形成されたセンサ保持体を設け、
該センサ保持体の循環溝に、前記センサボールを保持し、前記変位検出手段により前記センサボールの移動を検出することを特徴とするボールねじ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記センサボールを保持するポケットが形成されたセンサ保持体を設け、
該ポケットに、着磁された前記センサボールを保持し、前記変位検出手段により前記センサボールの自転による磁力変化を検出することを特徴とするボールねじ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記センサボールを保持する保持バネを設け、
該保持バネにより保持したセンサボールを、前記ボールが転動する前記ナット軌道溝を除くナット軌道溝に保持し、前記変位検出手段により前記センサボールの移動を検出することを特徴とするボールねじ装置。
【請求項5】
外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とを螺合させる複数のボールとを備えたボールねじ装置に用いる荷重検出装置であって、
前記ねじ軸に接触しないセンサボールと、前記ナットの端部に取付けられ、内周面に前記センサボールを循環させる循環溝を形成した本体部と、該本体部の循環溝に保持された前記センサボールの変位を、該センサーボールの移動により検出する変位検出手段とを有することを特徴とするボールねじ装置に用いる荷重検出装置。
【請求項6】
外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とを螺合させる複数のボールとを備えたボールねじ装置に用いる荷重検出装置であって、
前記ねじ軸に接触せず、かつ着磁されたセンサボールと、前記ナットの端部に取付けられ、内周面に前記センサボールを保持するポケットを形成した本体部と、該本体部のポケットに保持された前記センサボールの変位を、該センサボールの自転による磁力変化により検出する変位検出手段とを有することを特徴とするボールねじ装置に用いる荷重検出装置。
【請求項7】
外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に前記軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、前記軸軌道溝とナット軌道溝とを螺合させる複数のボールとを備えたボールねじ装置に用いる荷重検出装置であって、
前記ねじ軸に接触しないセンサボールと、該センサボールを保持する保持バネと、前記ナットの端部に取付けられ、内周面に前記ナット軌道溝を形成した本体部と、該本体部のナット軌道溝に嵌め込まれ、前記保持バネに保持された前記センサボールの変位を、該センサーボールの移動により検出する変位検出手段とを有することを特徴とするボールねじ装置に用いる荷重検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−225024(P2007−225024A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46817(P2006−46817)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】