説明

ボール弁

【課題】 内部の点検が可能でかつ安全な点検作業を保証することができるボール弁を提供する。
【解決手段】 ボール弁1は、流体の流入口21aと流体の流出口21bを含む流路を有する弁箱2と、流出口21bに設けられた弁座3と、弁座3に当接する円板部41を有しかつ円板部41は流路の中心軸を通る直線Sに対して偏心した中心線Yを有する弁体4と、弁体4を回転させる弁棒5と、弁棒5を駆動するエアーシリンダー6と、弁箱2の外周に設けられた点検口20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水と合流する下水を高速で処理するろ過装置などに使用されるボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
大都市では、汚水と雨水が合流して、最初沈殿池と反応槽と最終沈殿池とからなる地下水処理場に流入させる合流式下水道が採用されているが、雨天時に多くの下水が未処理または簡易処理のままで河川や海に放水されるので、環境汚染の原因となる。そこで、雨天時における放流水の汚濁物量を減少させるために、最初沈殿池の代わりにろ材が充填されたろ過槽を設置し、ろ過槽の底部から設計水量の数倍の処理水を流入させ、高速で処理させることが提案されている。
【0003】
上記のろ過槽においては、ろ過が進行するに従いろ材に浮遊物(SS)や夾雑物が付着・堆積し、ろ過機能が低下するので、ろ過槽の下部に設けられた排水弁を開弁することにより、ろ材に付着した浮遊物や夾雑物を洗い流すことが必要となる。この種排水弁としては、高い気密性を有しかつ小さなトルクで急速開閉を行えるようにするために、ソフトシートからなる弁座を有する弁箱内で球状の弁体を回転させる形式のボール弁を使用することが考えられる。例えば特許文献1には、ゴム製シートリングの表面に、ウレタン樹脂中に固体潤滑剤を分散させた被膜を設けたシートリング(弁座)を使用し、さらに弁体の回転軸がシートリングに当接するシール面の曲率中心から偏心して回転する部分球状面状の弁体を備えたボール弁が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−325472号公報(第3−4頁、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のボール弁によれば、長期に亘って良好なシール性が得られ、しかも弁の開閉操作が容易であるという利点を有するが、次の点で改善が望まれる。すなわち、このようなボール弁であっても、長期間使用すると、弁箱の内部に夾雑物が堆積して、弁体の回転が阻害される、あるいはシールが破損して水漏れが発生するおそれがあるので、望ましくは定期的に弁箱の内部を点検し、あるいは内部に堆積した異物を除去することが必要となる。しかしながら、従来のボール弁には、付属の配管が接続されているので、保守点検を行うためには、配管の取り外しが必要となり、また配管がボール弁に固定されている場合には、ボール弁全体を装置から取り外すことが必要で、保守点検に手間が掛かるという問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は上記の問題点を解消して、内部の点検が容易でかつ安全に保守・点検を行うことができるボール弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のボール弁は、流体の流入口と流体の流出口を含む流路を有する弁箱と、前記流出口の周囲に設けられた弁座と、前記弁座に当接する部分を有しかつ前記流路の中心軸を通る直線に対して偏心した中心軸を有する弁体と、前記弁体を前記中心軸の周りに回転させる弁棒と、前記弁棒を駆動する流体圧発生手段と、前記弁箱の外周に設けられた点検口とを有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、前記点検口は着脱自在なフランジ部材で封止されると共に、前記フランジ部材に、前記流体圧発生手段に供給される流体が流動する管路が設けられることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記流体圧発生手段として、エアーシリンダーを使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁箱に点検口が設けられているので、弁箱の内部に異物が堆積しているか否かを容易に確認することができる。また点検口を密閉するフランジ部材に、流体圧発生手段に供給される流体が流動する管路が設けられているので、保守点検を行う際には、フランジ部材の取り外しに伴い必然的に流体の供給が遮断されるので、安全な点検作業を保証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の詳細を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係わるボール弁の断面図、図2は図1をA方向から見た場合の一部を破断した矢視図、図3は図2をB方向から見た矢視図、図4は図3をC方向から見た矢視図である。
【0012】
図1に示すボール弁1は、流体の流入口21aと流体の流出口21bを有する弁箱2と、弁箱2の流出口21bの周囲に装着された弁座3と、弁箱2の内部に配置された弁体4と、弁体4を回転させる弁棒5と、弁棒5の駆動手段である流体圧発生装置(以下エアーシリンダーという)6と、弁箱2の外周に形成された点検口20と、そこを密閉するフランジ部材7を備えている。弁棒5は、平行キー61を介してエアーシリンダー6に連結されている。図1において、Xは弁箱2の内部に形成された流路の中心を示し、Yは弁体4の回転軸を示す。ボール弁1の各部の詳細は次の通りである。
【0013】
弁箱2の外周には、ブッシュ23が内装された中間上フランジ22が形成され、そこにブッシュ52を介して弁棒5を支持する円筒状のフタ51がボルト53により固定されている。また、弁箱2の外周で中間上フランジ22と対称の位置に、中間下フランジ24が形成され、そこにブッシュ26を介して、弁体4に連結されるピン25を支持する有底円筒状のキャップ27がボルト28により固定されている。ピン25の外周はOリング29でシールされている。
【0014】
弁箱2の下流側(流出口21b)の内周面には、弁体4に当接する弁座3が設けられている。弁座3は、弁体4が当接するシートリング31と、シートリング31の端面に当接する円環状のリテーナ32と、シートリング31及びリテーナ32を支持するインサート33と、インサート33にねじ込まれてリテーナ32をシートリング31に押し付ける止めネジ34a、34bと、インサート33を弁箱2に固定するボルト35を有する。弁座3からの流体の漏出を防止するために、シートリング31とリテーナ32はOリング36aでシールされ、またリテーナ32とインサート33はOリング36bでシールされ、さらにリテーナ32と弁箱2はOリング36cでシールされている。
【0015】
弁体4は、流出口21bを密閉する円板部41と、その上部及び下部から各々延出する上アーム42及び下アーム43を有する。上アーム42は止めネジ44aにより、弁棒5の端部に固定され、下アーム43は止めネジ44bにより、ピン25の端部に固定されている。図2に示すように、弁体4の中心線Y(弁棒5の軸心とピン25の軸心を結ぶ直線)は、流路の中心Xを通る直線Sから所定距離eだけ離れた位置に存在するので、弁体4は、上記直線Sに対して偏心した状態で回転する。弁体4が偏心した状態で回転することにより、閉弁時に、弁体4は弁座3に強く押し付けられるので、良好なシール性を確保することができる。
【0016】
図2に示すように、弁箱2の外周面に設けられた点検口20に、円板状のフランジ部材7がボルト71により着脱自在に装着されている。図3及び図4に示すように、フランジ部材7には、エアーシリンダー6に供給されるエアーの供給口81を有する連結管8が取着され、連結管8は、ニップル82を介して、エアーシリンダー6に連通する供給管60に着脱自在に接続されている。供給管60は、連結管8の着脱操作を容易に行うために、可撓性を有する材料(例えば銅管)で形成されることが好ましい。
【0017】
本発明において、各部を構成する材料はその目的に応じて適宜選定されるが、例えば主要部は次のような材料で形成することができる。弁箱2は鋼材で形成され、弁体5は耐食性を付与するために鋼材の表面に樹脂被覆を施して形成される。弁棒4は、耐食性を有する金属材料(例えばオーステナイト系ステンレス鋼)で形成される。ブッシュ23、26、52は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼の表面に自己潤滑性を有する材料(例えばフッ素樹脂(PTFE等))を被覆して形成される。シートリング31は、弁体4との摺動抵抗を低減して、流出口の開閉を速やかに行えるようにするために、摩擦係数の少ない材料(例えばフッ素樹脂)で形成される。弁体4が偏心した状態で回転すると、開弁時に弁体4の回転トルクが上昇するが、その場合でも、シートリング31を例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成することにより、円滑な開弁動作を保証することができる。各Oリングは、例えばニトリルゴム(NBR)で形成される。フランジ部材7は、流体圧に耐えるために、剛性の大なる材料、例えば鉄鋼材料で形成することができる。特に、フランジ部材7を繊維強化ガラスのような半透明な材料で形成することにより、弁箱に装着した状態で、その内部を透視できるので、点検作業を速やかに行えるという利点がある。
【0018】
上記ボール弁1の開閉操作は、次のようにして行うことができる。開弁時には、エアーシリンダー6を駆動して、例えば数秒間で弁体4を図1に示す状態から所定方向に1/4回転させることにより、流出口21bから流体が排出される。この開弁状態を一定時間(例えば1分間)維持することにより、逆洗(ろ過装置の洗浄)が行われる。一方、弁箱2の内部を点検する場合は、エアーシリンダー6を駆動することにより、上記とは逆方向に弁体4を回転させて図1に示す閉弁状態とする。しかる後、連結管8を供給管60から分離し次いでフランジ7を弁箱2から取り外すことにより、エアーシリンダー6へのエアーの供給が停止され、弁体4は静止しているので、弁箱2の内部の堆積物を安全に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係わるボール弁の断面図である。
【図2】図1をA方向から見た場合の一部を破断した矢視図である。
【図3】図2をB方向から見た矢視図である。
【図4】図3をC方向から見た矢視図である。
【符号の説明】
【0020】
1:ボール弁、
2:弁箱、20:点検口、21a:流入口、21b:流出口、22:中間上フランジ、23、26:ブッシュ、24:中間下フランジ、25:ピン、27:キャップ、28:ボルト、29:Oリング
3:弁座、31:シートリング、32:リテーナ、33:インサート、34a、34b:止めネジ、35:ボルト、36a、36b、36c:Oリング
4:弁体、41:円板部、42:上アーム、43:下アーム、44a、44b:止めネジ、
5:弁棒、51:フタ、52:ブッシュ、53:ボルト、
6:エアーシリンダー、60:供給管、61:平行キー
7:フランジ部材、71:ボルト
8:連結管、81:供給口、82:ニップル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口と流体の流出口を含む流路を有する弁箱と、前記流出口の周囲に設けられた弁座と、前記弁座に当接する部分を有しかつ前記流路の中心軸を通る直線に対して偏心した中心軸を有する弁体と、前記弁体を前記中心軸の周りに回転させる弁棒と、前記弁棒を駆動する流体圧発生手段と、前記弁箱の外周に設けられた点検口とを有することを特徴とするボール弁。
【請求項2】
前記点検口は着脱自在なフランジ部材で封止されると共に、前記フランジ部材は、前記流体圧発生手段に供給される流体が流動する管路を有することを特徴とする請求項1記載のボール弁。
【請求項3】
前記流体圧発生手段はエアーシリンダーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のボール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−9855(P2006−9855A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184882(P2004−184882)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000233114)日立バルブ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】