説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】パターン加工性に優れ、高温での熱処理後も矩形のパターン形状を維持することのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)ノボラック樹脂、(b)特定構造のポリイミド前駆体を主成分とする樹脂、(c)特定構造のナフトキノンジアジド化合物、(d)アルコキシメチル基含有化合物および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに適した、紫外線で露光した部分がアルカリ現像液に溶解するポジ型の感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱性樹脂は、優れた耐熱性、電気絶縁性を有することから、LSI(Large Scale Integration)などの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられている。近年、半導体素子の微細化に伴い、表面保護膜、層間絶縁膜などにも数μmの解像度が要求されている。このため、このような用途において、微細加工可能なポジ型の感光性ポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。
【0003】
また、これら耐熱性樹脂を用いて高いパターン加工性を有する感光性樹脂組成物を得る方法として、フォトレジスト用の樹脂として広く用いられているノボラック樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、耐熱性樹脂とノボラック樹脂を含有したポジ型感光性樹脂を用いて形成したパターンを熱処理すると、パターンが変形するという課題があった。
【0004】
ノボラックレジストのパターン形状と耐熱性を向上させる方法として、特定のキノンジアジド化合物を含有するノボラックレジストが提案されている(例えば、特許文献5参照)。また、ポリイミド前駆体などの耐熱性樹脂前駆体と、特定のキノンジアジド化合物を含有する感光性樹脂前駆体組成物が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、300℃以上の高温で熱処理を行うとパターンが変形する課題があった。
【特許文献1】特開2005−62764号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2005−250160号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2005−352004号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2006−285037号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平5−297582号公報(請求項1)
【特許文献6】特開2000−338666号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱性樹脂とノボラック樹脂を含む従来公知の感光性樹脂組成物は、高温で熱処理を行った場合にパターンの断面形状が矩形を維持できないという課題があった。本発明は、パターン加工性に優れ、高温での熱処理後も矩形のパターン形状を維持することのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)ノボラック樹脂、(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂、(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物、(d)アルコキシメチル基含有化合物および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の有機基を示す。nは10〜100,000の範囲、mおよびfは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。ただしp+q>0である。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(2)中、R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜10の1価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。また、Qは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基または水素を示す。ただし、Qの全てが水素になることはない。r、s、tおよびuは0〜4の整数を示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン加工性に優れ、高温での熱処理後も矩形のパターン形状を維持することのできるポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)ノボラック樹脂および(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂を含有する。
【0013】
(a)ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを公知の方法で重縮合することによって得られる。2種以上のノボラック樹脂を組み合わせて含有してもよい。上記フェノール類の好ましい例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等を挙げることができる。特に、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールおよび2,3,5−トリメチルフェノールが好ましい。これらのフェノール類を2種以上組み合わせて用いてもよい。アルカリ現像液に対する溶解性の観点から、m−クレゾールが好ましく、m−クレゾールおよびp−クレゾールの組み合わせもまた好ましい。すなわち、(a)ノボラック樹脂として、m−クレゾール残基、または、m−クレゾール残基とp−クレゾール残基を含むクレゾールノボラック樹脂を含むことが好ましい。このとき、クレゾールノボラック樹脂中のm−クレゾール残基とp−クレゾール残基のモル比(m−クレゾール残基/p−クレゾール残基、m/p)は1.8以上が好ましい。この範囲であればアルカリ現像液への適度な溶解性を示し、良好な感度が得られる。より好ましくは4以上である。
【0014】
また、上記アルデヒド類の好ましい例としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒド等を挙げることができる。これらのうち、ホルマリンが特に好ましい。これらのアルデヒド類を2種以上組み合わせて用いてもよい。このアルデヒド類の使用量は、フェノール類1モルに対し、0.6モル以上が好ましく、0.7モル以上がより好ましい。また、3モル以下が好ましく、1.5モル以下がより好ましい。
【0015】
フェノール類とアルデヒド類との重縮合の反応には、通常、酸性触媒が使用される。酸性触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの酸性触媒の使用量は、通常、フェノール類1モルに対し、1×10−5〜5×10−1モルである。重縮合の反応においては、通常、反応媒質として水が使用されるが、反応初期から不均一系になる場合は、反応媒質として親水性溶媒または親油性溶媒が用いられる。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が挙げられる。親油性溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類が挙げられる。これらの反応媒質の使用量は、通常、反応原料100重量部当り20〜1,000重量部である。
【0016】
重縮合の反応温度は、原料の反応性に応じて適宜調整することができるが、通常10〜200℃である。重縮合の反応方法としては、フェノール類、アルデヒド類、酸性触媒等を一括して仕込み、反応させる方法、または、酸性触媒の存在下にフェノール類、アルデヒド類等を反応の進行とともに加えていく方法等を適宜採用することができる。重縮合の反応終了後、系内に存在する未反応原料、酸性触媒、反応媒質等を除去するために、一般的には、反応温度を130〜230℃に上昇させ、減圧下で揮発分を除去し、ノボラック樹脂を回収する。
【0017】
本発明において、(a)ノボラック樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。また、20,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。この範囲であれば、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基材へ塗布する際の作業性、アルカリ現像液への溶解性に優れる。
【0018】
(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有する樹脂となり得るものである。ポリイミド前駆体のポリアミド酸またはポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドが好ましい。環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。これらのうち、2種以上の樹脂を組み合わせて含有してもよい。ここで、主成分とは、一般式(1)で表されるn個の構造単位を、樹脂の構造単位の50モル%以上有することを意味する。70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
上記一般式(1)中、Rは同じでも異なっていてもよく、炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示し、酸の構造成分を表している。Rが2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。Rが3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸、Rが4価となる酸としては、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基でエステル化したジエステル化合物、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基でエステル化したジエステル化合物を挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分は単独でも2種以上併用しても構わないが、テトラカルボン酸を1〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の観点から、水酸基を有する酸成分を50モル%以上用いることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0021】
は耐熱性の面から芳香族環を含有することが好ましく、炭素数6〜30の3価または4価の有機基がさらに好ましい。具体的には、一般式(1)のR(COOR(OH)が、一般式(5)で示される構造のものが好ましい。
【0022】
【化4】

【0023】
上記一般式(5)中、R37およびR39は炭素数2〜20の2価〜4価の有機基を示す。R38は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示す。R40およびR41はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の有機基を示す。oおよびxは0〜2の整数、wは1〜4の整数を示す。ただし、o+x≦2である。
【0024】
37およびR39は得られる樹脂の耐熱性の点から、芳香族環を含むものがさらに好ましく、特に好ましい構造としてトリメリット酸、トリメシン酸、ナフタレントリカルボン酸などの残基が挙げられる。
【0025】
また、R38は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示している。さらに、w個の水酸基はアミド結合と隣り合った位置にあることが好ましい。このような例として、フッ素原子を含んだ、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、フッ素原子を含まない、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼンのアミノ基が結合したものなどを挙げることができる。
【0026】
また、一般式(5)のR40およびR41はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の有機基を示している。水素または炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。炭素数を20以下とすることで、アルカリ現像液に対する適度な溶解性が得られる。oおよびxは0〜2の整数を示しているが、好ましくは1または2である。ただし、o+x≦2である。また、wは1〜4の整数を表している。この範囲であれば、良好なパターン加工性が得られる。
【0027】
一般式(5)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
【化5】

【0029】
一般式(1)中、Rは同じでも異なっていてもよく、炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示しており、ジアミンの構造成分を表している。この中で、得られる樹脂の耐熱性の点より、芳香族環を有するものが好ましい。ジアミン成分は単独でも2種以上併用しても構わない。ジアミンの具体的な例としてはフッ素原子を有した、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、フッ素原子を有さない、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホンあるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸などの化合物や、一般式(1)のR(COOR(OH)qが、一般式(6)〜(8)のいずれかで示される構造のものを挙げることができる。これらの中で、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の観点から、水酸基を有するジアミン成分を60モル%以上用いることが好ましい。
【0030】
【化6】

【0031】
一般式(6)のR42およびR44は炭素数2〜20の3価〜4価の有機基を示し、R43は炭素数2〜30の2価の有機基を示す。aaおよびbbは1または2を示す。一般式(7)のR45およびR47は炭素数2〜20の2価の有機基を示し、R46は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示す。ccは1〜4の整数を示す。一般式(8)のR48は炭素数2〜20の2価の有機基を示し、R49は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示す。ddは1〜4の整数を示す。
【0032】
一般式(6)において、R42およびR44は炭素数2〜20の3価〜4価の有機基を示しており、得られる樹脂の耐熱性の点より芳香族環を有するものが好ましい。−R44(OH)aa−および−R44(OH)bb−の例として、具体的には、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、ヒドロキシビフェニル基、ジヒドロキシビフェニル基、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン基、ヒドロキシジフェニルエーテル基、ジヒドロキシジフェニルエーテル基などが挙げられる。また、ヒドロキシシクロヘキシル基、ジヒドロキシシクロヘキシル基などの脂肪族の基も使用することができる。R43は炭素数2〜30の2価の有機基を表している。得られる樹脂の耐熱性の点より芳香族環を有する2価の基が好ましく、このような例としては、フェニル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルヘキサフルオロプロパン基、ジフェニルプロパン基、ジフェニルスルホン基などが挙げられるが、これ以外にも脂肪族のシクロヘキシル基なども使用することができる。
【0033】
一般式(7)において、R45およびR47は炭素数2〜20の2価の有機基を表している。得られる樹脂の耐熱性より芳香族環を有する2価の基が好ましい。このような例として、前述のR43の例として示した基が挙げられる。R46は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示しており、得られる樹脂の耐熱性より芳香族環を有するものが好ましい。−R46(OH)cc−の例として、前述の−R42(OH)aa−および−R44(OH)bb−の例として示した基が挙げられる。
【0034】
一般式(8)において、R48は炭素数2〜20の2価の有機基を表している。得られる樹脂の耐熱性から芳香族環を有する2価の基が好ましい。このような例として、前述のR43の例として示した基が挙げられる。R49は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示しており、得られる樹脂の耐熱性より芳香族環を有するものが好ましい。−R49(OH)dd−の例として、前述の−R42(OH)aa−および−R44(OH)bb−の例として示した基が挙げられる。
【0035】
一般式(6)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
【化7】

【0037】
一般式(7)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
【化8】

【0039】
一般式(8)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
【化9】

【0041】
一般式(1)のRおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示している。得られる感光性樹脂組成物溶液の溶液安定性の観点からは、RおよびRは有機基が好ましいが、アルカリ現像液に対する溶解性の観点からは、水素が好ましい。本発明においては、水素と有機基を混在させることができる。このRおよびRの水素と有機基の量を調整することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度が変化するので、この調整により適度な溶解速度を有した感光性樹脂組成物を得ることができる。好ましい範囲は、R、Rの各々10モル%〜90モル%が水素である。また、アルカリ現像液に対する溶解性の観点から、有機基の炭素数は20以下である。以上よりRおよびRは、炭素数1〜16の炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素であることが好ましい。
【0042】
また、一般式(1)のmおよびfはカルボキシル基の数を示しており、0〜2の整数を示している。より好ましくは1または2である。一般式(1)のpおよびqは0〜4の整数を示し、p+q>0である。一般式(1)のnは樹脂の構造単位の繰り返し数を示しており、10〜100,000の範囲である。nが10未満であると、樹脂のアルカリ現像液への溶解性が大きくなり過ぎ、露光部と未露光部のコントラストが得られず所望のパターンが形成できない場合がある。一方、nが100,000より大きいと、樹脂のアルカリ現像液への溶解性が小さくなり過ぎ、露光部が溶解せず、所望のパターンが形成できない。樹脂のアルカリ現像液への溶解性の面から、nは1,000以下が好ましく、100以下がより好ましい。また、伸度向上の面から、nは20以上が好ましい。
【0043】
一般式(1)のnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や光散乱法、X線小角散乱法などで重量平均分子量(Mw)を測定することで容易に算出できる。繰り返し単位の分子量をM、ポリマーの重量平均分子量をMwとすると、n=Mw/Mである。本発明における繰り返し数nは、最も簡便なポリスチレン換算によるGPC測定を用いて算出する値をいう。
【0044】
さらに、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲で一般式(1)のRおよび/またはRにシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0045】
また、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂の末端に末端封止剤を反応させることができる。樹脂の末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基およびアリル基からなる群より選ばれた少なくとも一種の官能基を有するモノアミンにより封止することで、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。また、樹脂の末端を前記の官能基を有した酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸で封止することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。モノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤の含有量は、全アミン成分に対して0.1〜60モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜50モル%である。このような範囲とすることで、樹脂組成物を塗布する際の溶液の粘性が適度で、かつ優れた膜物性を有した樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
樹脂中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるアミン成分と酸無水成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂を直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13CNMRスペクトル測定で検出することが可能である。
【0047】
(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、次の方法により合成される。ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの場合、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物、末端封止に用いるモノアミノ化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン化合物、モノアミノ化合物と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン化合物、モノアミノ化合物と反応させる方法などがある。ポリヒドロキシアミドの場合、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸、モノアミノ化合物を縮合反応させる製造方法によって得ることができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物、モノアミノ化合物を加える方法や、ピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物、モノアミノ化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下する方法などがある。
【0048】
(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、上記の方法で重合させた後、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
【0049】
(b)一般式(1)で表される構造を主成分とするポリマーの含有量は、(a)ノボラック樹脂100重量部に対し、30重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。30重量部以上であれば、パターン形状が良好となる。また、100重量部以下であれば、パターン加工性が良好となる。
【0050】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物を含有する。本発明のポジ型感光性樹脂組成物のように、ノボラック樹脂と、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体を含有するポジ型感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体を熱により閉環させ硬化させるために、熱処理を行う。特に、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などの用途においては、通常、硬化膜は後工程中180〜290℃の高温で処理される。このため、後処理工程中のガスの発生を防ぐために、樹脂組成物を硬化させる際には後処理工程中の熱処理温度よりも高い温度、すなわち300℃以上の熱処理を行う場合が多い。一般的に、(a)ノボラック樹脂と、(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂を含むポジ型感光性樹脂を用いて形成したパターンを、300℃以上の高温で熱処理すると、ノボラック樹脂の軟化点が低いため、パターンが変形する。本発明においては、一般式(3)で表されるナフトキノンジアジド化合物を用いることにより、ノボラック樹脂を含有する樹脂組成物であっても、300℃以上の熱処理においてもパターンの変形を抑制することができる。
【0051】
【化10】

【0052】
上記一般式(2)中、R〜Rは同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜10の1価の有機基を示す。有機基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基やアルケニル基などの等の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、もしくはt−ブチル基のような炭素数1〜4のアルキル基が、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、もしくはt−ブトキシ基のような炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基もしくはブテニル基のような炭素数2〜4のアルケニル基が好ましい。また、Rは2価の有機基を示し、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましい。
【0053】
前記一般式(2)において、Qは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基または水素を示す。ただし、Qの全てが水素になることはない。本発明において、前記Qにおけるナフトキノンジアジドスルホニル基と水素のモル比(ナフトキノンジアジドスルホニル基/水素)は3/5以上であるとパターン形状が良好となり好ましい。また、3以下であるとパターン加工性が向上するため好ましく、5/3以下がより好ましい。なお、ここでナフトキノンジアジドスルホニル基は、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基と4−ナフトキノンジアジドスルホニル基の総量を指す。
【0054】
(c)一般式(2)で表されるキノンジアジド化合物の分子量は2500以下が好ましく、1600以下が好ましい。分子量が2500以下であれば、パターン形成後の熱処理においてキノンジアジド化合物が十分に熱分解し、耐熱性、機械特性、接着性に優れた硬化膜を得ることができる。一方、800以上が好ましく、900以上がより好ましい。
【0055】
(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物は、対応するポリヒドロキシ化合物とナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル化することにより得ることができる。ポリヒドロキシ化合物は、例えば、特開昭49−250号公報記載の方法に従って合成することができ、酸触媒下で、α−(ヒドロキシフェニル)スチレン誘導体を多価フェノール化合物と反応させる方法などが挙げられる。本発明に好ましく用いられるポリヒドロキシ化合物として、具体的には、以下の化合物を挙げることができる。これらのポリヒドロキシ化合物を2種以上組み合わせてもよい。
【0056】
【化11】

【0057】
(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物は、例えば、前記ポリヒドロキシ化合物の水酸基の一部または全部を、1,2−ナフトキノンジアジド−5−(および/または−4−)スルホニルクロリドと、塩基性触媒の存在下で通常のエステル化反応を行うことにより得られる。すなわち、所定量のポリヒドロキシ化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−5−(および/または−4−)スルホニルクロリド、溶媒をフラスコ中に仕込み、塩基性触媒を滴下させて縮合する。溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン等を挙げることができる。反応温度は、通常−20℃〜60℃、好ましくは0℃〜40℃である。得られた生成物は、水洗後生成し乾燥することが一般的である。
【0058】
上記エステル化反応においては、エステル化数およびエステル化位置が種々異なる混合物が得られる。本発明で言うエステル化率(Qにおけるナフトキノンジアジドスルホニル基と水素のモル比)はこの混合物の平均値として定義される。このように定義されたエステル化率は、原料であるポリヒドロキシ化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−5−(および/または−4−)スルホニルクロリドとの混合比により調整できる。すなわち、添加された1,2−ナフトキノンジアジド−5−(および/または−4−)スルホニルクロリドは、実質上すべてエステル化反応を起こすので、所望のエステル化率の混合物を得るためには、原料のモル比を調整すればよい。具体的には、ポリヒドロキシ化合物モルに対して、キノンジアジド化合物は1モル以上が好ましく、1.5モル以上がより好ましい。また、3モル以下が好ましく、2.5モル以下がより好ましい。
【0059】
本発明において、キノンジアジドは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を得ることもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を併用することもできる。
【0060】
また、(c)キノンジアジド化合物の含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対し、パターン加工性の観点から好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。
【0061】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(d)アルコキシメチル基含有化合物を含有する。アルコキシメチル基は150℃以上の温度領域で架橋反応を生じるため、該化合物を含有することで、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体を熱により閉環させ硬化させる熱処理により架橋し、良好なパターン形状を得ることができる。(d)成分を使用しない場合、良好なパターン形状が得られない。(d)成分は架橋密度を上げるためにアルコキシメチル基を2個以上有する化合物が好ましく、架橋密度を上げ、耐薬品性をより向上させる点から、アルコキシメチル基を4個以上有する化合物がより好ましい。本発明において、アルコキシメチル基含有化合物は、一般式(3)で表される基を有する化合物または一般式(4)で表される化合物が好ましく、これらを併用してもよい。
【0062】
【化12】

【0063】
一般式(3)中、R10およびR11は炭素数1〜20のアルキル基を示す。樹脂組成物との溶解性の点から炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0064】
一般式(4)中、R12およびR13は、CHOR36(R36は炭素数1〜6のアルキル基)を示し、樹脂組成物との溶解性の点から炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。R14は水素、メチル基またはエチル基を示す。R15〜R35はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜20の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。jは1〜4の整数を示す。
【0065】
一般式(3)で表される基を含有する化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
【化13】

【0067】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
【化14】

【0069】
(d)アルコキシメチル基含有化合物の含有量は、架橋密度を上げ、パターン形状をより向上させる観点から、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して、5重量部以上が好ましい。さらに10重量部以上であるとより良好なパターン形状が得られる。また、パターン加工性の面からは50重量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましく、30重量部以下がさらに好ましい。
【0070】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(e)溶剤を含有する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。本発明においては、これらの溶剤を2種以上使用することができる。溶剤の含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、また、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは1,500重量部以下である。
【0071】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(f)シラン化合物を含有することができる。(f)シラン化合物を含有することにより、下地基板との接着性が向上する。(f)シラン化合物の具体例としては、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランや以下のシラン化合物を用いることができるがこれらに限定されない。
【0072】
【化15】

【0073】
上記の(f)シラン化合物は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対してそれぞれ0.001重量部以上含有することが好ましく、より好ましくは0.005重量部以上、さらに好ましくは0.01重量部以上である。また、30重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下である。この範囲内であれば、組成物の耐熱性を保ったまま接着助剤として十分な効果を得ることができる。
【0074】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じてフェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。フェノール性水酸基を有する化合物を含有することにより、得られるポジ型感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。このため、パターン加工性が向上する。特に好ましいフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、Bis−Z、TekP−4HPA、TRisP−HAP、TRisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−Fである。
【0075】
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。なお、本発明においては、フェノール性水酸基を有する化合物であってもキノンジアジドを有する場合は(c)キノンジアジド化合物に分類するものとする。
【0076】
また、必要に応じて上記、感光性組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有することもできる。
【0077】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法を例示する。例えば、(a)〜(e)成分、および必要によりその他成分をガラス製のフラスコやステンレス製の容器に入れてメカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。組成物の粘度は1〜10,000mPa・sが好ましい。また、異物を除去するために0.1μm〜5μmのポアサイズのフィルターで濾過してもよい。
【0078】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0079】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板はシリコンウエハー、セラミックス類、ガリウムヒ素、金属、ガラス、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素、ITOなどが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法はスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スリットダイコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが通常、乾燥後の膜厚が、0.1〜150μmになるように塗布される。
【0080】
次に、感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分〜数時間行うことが好ましい。
【0081】
次に、この感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0082】
感光性樹脂膜から耐熱性樹脂のパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去すればよい。現像液は、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0083】
現像後、200℃〜500℃の温度を加えて耐熱性樹脂被膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分〜5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より320℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0084】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0085】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の感光性樹脂組成物の評価は以下の方法で行った。
【0086】
(1)パターン加工性評価
感光性樹脂膜の作製
6インチシリコンウエハー上に、感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚T1=8.0μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置Mark−7)を用いて、120℃で3分プリベークすることにより、感光性樹脂膜を得た。
【0087】
膜厚の測定方法
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、プリベーク後および現像後の膜は、屈折率1.629で測定し、キュア膜は屈折率1.773で測定した。
【0088】
露光
露光機(GCA社製i線ステッパーDSW−8570i)に、パターンの切られたレチクルをセットし、365nmの強度で露光時間を変化させて感光性樹脂膜をi線で露光した。
【0089】
現像
東京エレクトロン(株)製Mark−7の現像装置を用い、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を10秒間、露光後の膜に噴霧した。この後、0回転で30秒間静置し、400回転で水にてリンス処理、3,000回転で10秒振り切り乾燥した。
【0090】
パターン加工性の算出
露光および現像後、50μmのライン・アンド・スペースパターン(1L/1S)が、1対1の幅に形成される露光時間(以下、これを最適露光時間という)Eopを求めた。Eopが400mJ/cm以下であればパターン加工性は良好であり、200mJ/cm以下がより好ましい。
【0091】
(2)熱硬化後パターン形状特性評価
熱硬化処理
前記の方法で現像し、作製された感光性樹脂前駆体膜を、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンCLH−21CDを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)150℃内に投入し、投入と同時に320℃まで30分で昇温し、320℃で30分熱処理をして耐熱性樹脂被膜(キュア膜)を作製した。
【0092】
パターン形状評価
熱硬化後、パターン断面を(株)日立ハイテクノロジーズ製FE−SEMを用いて観察を行った。評価基準はパターン断面が矩形に近いものを合格とし、角がなく円形に近いものを不合格とした。図1に熱硬化後パターン形状特性評価基準を示す。
【0093】
合成例1 ヒドロキシル基含有酸無水物(a)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をガンマブチロラクトン100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにガンマブチロラクトン50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0度を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1Lに投入してヒドロキシル基含有酸無水物(a)を得た。
【0094】
【化16】

【0095】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)の合成
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0096】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)を得た。得られた固体をそのまま反応に使用した。
【0097】
【化17】

【0098】
合成例3 ヒドロキシル基含有ジアミン(c)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール15.4g(0.1モル)をアセトン50mL、プロピレンオキシド30g(0.34モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここにイソフタル酸クロリド11.2g(0.055モル)をアセトン60mLに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。
【0099】
この沈殿をγ−ブチロラクトン(GBL)200mLに溶解させて、5%パラジウム−炭素3gを加えて、激しく攪拌した。ここに水素ガスを入れた風船を取り付け、室温で水素ガスの風船がこれ以上縮まない状態になるまで攪拌を続け、さらに2時間水素ガスの風船を取り付けた状態で攪拌した。攪拌終了後、ろ過でパラジウム化合物を除き、溶液をロータリーエバポレーターで半量になるまで濃縮した。ここにエタノールを加えて、再結晶を行い、ヒドロキシル基含有ジアミン(c)の結晶を得た。
【0100】
【化18】

【0101】
合成例4 ヒドロキシル基含有ジアミン(d)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール15.4g(0.1モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。この後、合成例2と同様にしてヒドロキシル基含有ジアミン(d)の結晶を得た。
【0102】
【化19】

【0103】
合成例5 キノンジアジド化合物(e)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド(NAC5)40.28g(0.15モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させた。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(e)を得た。
【0104】
【化20】

【0105】
合成例6 キノンジアジド化合物(f)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)、21.22g(0.05モル)とNAC5 26.86g(0.10モル)、4−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド13.43g(0.05モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン12.65gを用い、合成例5と同様にしてキノンジアジド化合物(f)を得た。
【0106】
【化21】

【0107】
合成例7 キノンジアジド化合物(g)の合成
TekP−4HBPA(商品名、本州化学工業(株)製):57.67g(0.1モル)、NAC5:26.87g(0.1モル)を2Lフラスコにいれ1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン10.12gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(g)を得た。
【0108】
【化22】

【0109】
合成例8 キノンジアジド化合物(h)の合成
TekP−4HBPA(商品名、本州化学工業(株)製):57.67g(0.1モル)、NAC5:40.30g(0.15モル)を2Lフラスコにいれ1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(h)を得た。
【0110】
【化23】

【0111】
合成例9 キノンジアジド化合物(i)の合成
TekP−4HBPA(商品名、本州化学工業(株)製):57.67g(0.1モル)、NAC5:53.74g(0.2モル)を2Lフラスコにいれ1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン20.24gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(i)を得た。
【0112】
【化24】

【0113】
合成例10 キノンジアジド化合物(j)の合成
TekP−4HBPA(商品名、本州化学工業(株)製):57.67g(0.1モル)、NAC5:67.17g(0.25モル)を2Lフラスコにいれ1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン25.30gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(j)を得た。
【0114】
【化25】

【0115】
合成例11 キノンジアジド化合物(k)の合成
TekP−4HBPA(商品名、本州化学工業(株)製):57.67g(0.1モル)、NAC5:80.60g(0.3モル)を2Lフラスコにいれ1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン30.36gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(k)を得た。
【0116】
【化26】

【0117】
合成例12 ノボラック樹脂Aの合成
乾燥窒素気流下、m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93モル)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005モル)、メチルイソブチルケトン264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後に、フラスコ内の圧力を40〜67hPaまで減圧し、揮発分を除去し、溶解している樹脂を室温まで冷却して、ノボラック樹脂Aのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は3,500であった。
【0118】
合成例13 ノボラック樹脂Bの合成
m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)の代わりに、m−クレゾール108g(1.00モル)を用いた他は合成例12と同様にして、ノボラック樹脂Bのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は4,000であった。
【0119】
合成例14 ノボラック樹脂Cの合成
m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)の代わりに、m−クレゾール86.4g(0.80モル)、p−クレゾール21.6g(0.20モル)を用いた他は合成例12と同様にして、ノボラック樹脂Cのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は5,000であった。
【0120】
合成例15 ノボラック樹脂Dの合成
m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)の代わりに、m−クレゾール54g(0.50モル)、p−クレゾール54g(0.50モル)を用いた他は合成例12と同様にして、ノボラック樹脂Dのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は3,500であった。
【0121】
合成例16 ポリマーAの合成
乾燥窒素気流下、4,4’−ジアミノフェニルエーテル(DAE)4.60g(0.023モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)1.24g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシ基含有酸無水物(a)21.4g(0.030モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで40℃で2時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーAを得た。
【0122】
合成例17 ポリマーBの合成
乾燥窒素気流下、合成例2で得られたヒドロキシル基含有ジアミン(b)13.90g(0.023モル)をNMP50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシ基含有酸無水物(a)17.5g(0.025モル)をピリジン30gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール7.35g(0.05モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーBを得た。
【0123】
合成例18 ポリマーCの合成
乾燥窒素気流下、合成例3で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(c)15.13g(0.040モル)、SiDA1.24g(0.005モル)をNMP50gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(ODPA)15.51g(0.05モル)をNMP21gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で1時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール13.2g(0.09モル)をNMP15gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーCを得た。
【0124】
合成例19 ポリマーDの合成
乾燥窒素気流下、合成例4で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(d)4.37g(0.018モル)とDAE4.51g(0.0225モル)とSiDA0.62g(0.0025モル)をNMP70gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(a)24.99g(0.035モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)4.41g(0.010モル)を室温でNMP25gとともに加え、そのまま室温で1時間、その後40℃で1時間攪拌した。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール13.09g(0.11モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーDを得た。
【0125】
合成例20 ポリマーEの合成
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸ジクロライド(DEDC)1モルと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール2モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体19.70g(0.040モル)とBAHF18.31g(0.050モル)をNMP200gに溶解させ、75℃で12時間攪拌し反応を終了した。反応終了後、溶液を水/メタノール=3/1の溶液3Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリマーEを得た。
【0126】
合成例21 ポリマーFの合成
乾燥窒素気流下、DAE4.40g(0.022モル)、SiDA1.24g(0.005モル)をNMP50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシ基含有酸無水物(a)21.4g(0.030モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−エチニルアニリン0.71g(0.006モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーFを得た。
【0127】
合成例22 ポリマーGの合成
乾燥窒素気流下、DAE48.1g、SiDA25.6gをNMP820gに溶解させ、ODPA105gを加え、液温が10℃以上30℃以下となるよう調節しながら8時間撹拌して、ポリイミド前駆体のポリマー溶液Gを得た。
【0128】
合成例23 ポリマーHの合成
乾燥窒素気流下、BAHF49.6gとSiDA3.74gをNMP400gに溶解させ、ODPA46.7gを加えて撹拌し、室温で5時間反応させて、ポリイミド前駆体のポリマー溶液Hを得た。
【0129】
合成例24 ポリマーIの合成
乾燥窒素気流下、SiDA198gをNMP600gに溶解させ、ODPA123.6g、無水マレイン酸78.2gを加え、液温が10℃以上30℃以下となるよう調節しながら8時間撹拌して、ポリイミド前駆体のポリマー溶液Iを得た。
【0130】
合成例25 ポリマーJの合成
乾燥窒素気流下、4,4’−ジアミノフェニルエーテル(DAE)4.40g(0.022モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)1.24g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシ基含有酸無水物(a)21.4g(0.030モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−エチニルアニリン0.71g(0.006モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーJを得た。
【0131】
各実施例および比較例に用いたアルコキシメチル基含有化合物の構造を以下に示す。
【0132】
【化27】

【0133】
実施例1
ノボラック樹脂Aを6g、ポリマーAの固体4g、キノンジアジド化合物(g)2g、ニカラックMX−270を2.5g、ビニルトリメトキシシランを0.3g測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0134】
実施例2
ノボラック樹脂B:6g、ポリマーB:4g、キノンジアジド化合物(h):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL25g+EL5gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0135】
実施例3
ノボラック樹脂C:6g、ポリマーC:4g、キノンジアジド化合物(i):2g、ニカラックMX−270:2.5g、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0136】
実施例4
ノボラック樹脂A:6g、ポリマーD:4g、キノンジアジド化合物(j):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをNMP30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0137】
実施例5
ノボラック樹脂A:6g、ポリマーA:4g、キノンジアジド化合物(k):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0138】
実施例6
ノボラック樹脂A:6g、ポリマーF:4g、キノンジアジド化合物(i):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0139】
実施例7
ノボラック樹脂C:6g、ポリマーC:4g、キノンジアジド化合物(i):2g、HMOM−TPHAP:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、GBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0140】
実施例8
ノボラック樹脂C:6g、ポリマーE:4g、キノンジアジド化合物(i):1.5g、ニカラックMX−290:1.5g、m−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0141】
実施例9
ノボラック樹脂A:4g、ポリマーF:6g、キノンジアジド化合物(i):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、GBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0142】
実施例10
ノボラック樹脂A:7g、ポリマーF:3g、キノンジアジド化合物(i):2.2g、ニカラックMX−270:1.0g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0143】
実施例11
ノボラック樹脂A:7g、ポリマーJ:3g、キノンジアジド化合物(g):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、GBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0144】
実施例12
ノボラック樹脂Aを7gの代わりにノボラック樹脂Bを7g用いた他は実施例11と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0145】
実施例13
ノボラック樹脂Aを7gの代わりにノボラック樹脂Cを7g用いた他は実施例11と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0146】
実施例14
ノボラック樹脂Aを7gの代わりにノボラック樹脂Dを7g用いた他は実施例11と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0147】
実施例15
ノボラック樹脂A:6g、ポリマーJ:4g、キノンジアジド化合物(g):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、GBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0148】
実施例16
キノンジアジド化合物(g)2gの代わりにキノンジアジド化合物(h)2gを用いた他は実施例15と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0149】
実施例17
キノンジアジド化合物(g)2gの代わりにキノンジアジド化合物(i)2gを用いた他は実施例15と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0150】
実施例18
キノンジアジド化合物(g)2gの代わりにキノンジアジド化合物(j)2gを用いた他は実施例15と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0151】
実施例19
キノンジアジド化合物(g)2gの代わりにキノンジアジド化合物(k)2gを用いた他は実施例15と同様にしてワニスを得、前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0152】
比較例1
ノボラック樹脂A:7g、キノンジアジド化合物(g):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、パターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0153】
比較例2
ノボラック樹脂B:6g、キノンジアジド化合物(h):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL25g+EL5gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0154】
比較例3
ポリマーC:10g、キノンジアジド化合物(i):2g、ニカラックMX−270:2.5g、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0155】
比較例4
ポリマーD:10g、キノンジアジド化合物(j):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをNMP30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0156】
比較例5
ノボラック樹脂C:6g、ポリマーC:4g、キノンジアジド化合物(e):2g、ニカラックMX−270:2.5g、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、GBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0157】
比較例6
ノボラック樹脂C:6g、ポリマーC:4g、キノンジアジド化合物(i):2g、ニカラックMX−270:2.5g、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、GBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0158】
比較例7
ノボラック樹脂A:6g、ポリマーG溶液:22.3g、キノンジアジド化合物(f):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをNMP30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0159】
比較例8
ノボラック樹脂A:6g、ポリマーH溶液:20g、キノンジアジド化合物(f):2g、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェニン)プロパン:2.0gを測りとり、それらをNMP30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0160】
比較例9
ノボラック樹脂A:6.5g、ポリマーI溶液:8.7g、キノンジアジド化合物(e):2g、ニカラックMX−270:2.5g、ビニルトリメトキシシラン:0.3gを測りとり、それらをNMP30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。その後、前記のようにパターン加工性評価、熱硬化後パターン形状評価を行った。
【0161】
実施例1〜19および比較例1〜9の組成を表1〜2に、評価結果を表3に示す。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】熱硬化後パターン形状特性評価基準を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ノボラック樹脂、(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂、(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物、(d)アルコキシメチル基含有化合物および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の有機基を示す。nは10〜100,000の範囲、mおよびfは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。ただしp+q>0である。)
【化2】

(一般式(2)中、R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜10の1価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。また、Qは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基または水素を示す。ただし、Qの全てが水素になることはない。r、s、tおよびuは0〜4の整数を示す。)
【請求項2】
(a)ノボラック樹脂100重量部に対し、(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂を30〜100重量部含有し、(a)ノボラック樹脂と(b)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂の総量100重量部に対し、(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物を1〜50重量部、(d)アルコキシメチル基含有化合物を5〜50重量部含有することを特徴とする請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(d)アルコキシメチル基含有化合物が、一般式(3)で表される基を有する化合物および/または一般式(4)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(一般式(3)中、R10およびR11は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)
【化4】

(一般式(4)中、R12およびR13は、CHOR36(R36は炭素数1〜6のアルキル基)を示す。R14は水素、メチル基またはエチル基を示す。R15〜R35はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜20の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。jは1〜4の整数を示す。)
【請求項4】
前記(c)一般式(2)で表されるナフトキノンジアジド化合物のQにおけるナフトキノンジアジドスルホニル基と水素のモル比(ナフトキノンジアジドスルホニル基/水素)が、3/5以上3以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(a)ノボラック樹脂が、m−クレゾール残基とp−クレゾール残基のモル比(m/p)が1.8以上であるクレゾールノボラック樹脂を含む請求項1〜4いずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−257210(P2008−257210A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51657(P2008−51657)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】