説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】200℃以下の低温焼成時において、低反りかつリフローによるパターン埋まりが起こらない高解像度の硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物および(c)光酸発生剤を含有し、(a)アルカリ可溶性ポリイミド100重量部に対し(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物の含有量が10〜50重量部であるポジ型感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに好適に用いられるポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜等には、耐熱性や機械特性等に優れたポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が広く使用されていた。ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体の塗膜を熱的に脱水閉環させて耐熱性、機械特性に優れた薄膜を得る場合、通常350℃前後の高温焼成を必要とする。
【0003】
しかし近年、デバイスへの熱負荷の低減や低反り化などの要求により、約250℃以下、さらに望ましくは200℃以下の低温での焼成で硬化可能なポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が求められている。
【0004】
低温硬化可能な樹脂組成物としては、閉環させたポリイミド、光酸発生剤、メチロール基を含有する熱架橋剤を用いた感光性樹脂組成物が挙げられる(特許文献1)。しかし、弾性率が高く、キュア時の収縮性も高いため、反りが大きい問題があった。
【0005】
また、脂肪族を導入したポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤を用いた感光性樹脂組成物は、低弾性率化は可能であったが、脱水閉環による膜収縮がともなうため、反りは大きい結果となっている(特許文献2)。
【0006】
環状オレフィン樹脂、光酸発生剤、及びエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物については低温硬化が可能であり、低反り化が可能であるが、解像度に乏しい問題があった(特許文献3参照)。
【0007】
閉環させた可溶性ポリイミドと不飽和性重合化合物、エポキシ基を含有する化合物、光重合を含有する樹脂組成物(特許文献4, 5)については、機械特性に優れ、低反りの材料であるが、露光部が残膜するネガ型であるため解像度に乏しい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−313237号公報
【特許文献2】特開2008−224984号公報
【特許文献3】特開2007−78781号公報
【特許文献4】特開2009−258471号公報
【特許文献5】特開2011−17198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、200℃以下の低温焼成時において、低反りかつリフローによるパターン埋まりが起こらない高解像度の硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は下記の構成からなる。すなわち、(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物および(c)光酸発生剤を含有し、(a)アルカリ可溶性ポリイミド100重量部に対し(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物の含有量が10〜50重量部であるポジ型感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、200℃以下の低温焼成時において、低反りかつリフローによるパターン埋まりが起こらない高解像度の硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物および(c)光酸発生剤を含有し、(a)アルカリ可溶性ポリイミド100重量部に対し(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物の含有量が10〜50重量部であるポジ型感光性樹脂組成物である。本発明に用いられる(a)成分は、2種以上含有してもよい。
【0013】
また本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物が、ポリエチレンオキサイド基を有することが好ましい。
【0014】
また本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドが、ポリエチレンオキサイド基を有することが好ましい。
【0015】
また本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、さらに(d)熱架橋性化合物を含有することが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる(a)アルカリ可溶性ポリイミドは、ポリアミド酸、テトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどとジアミン、対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンを反応させて得たポリアミド酸を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。一部が閉環していなくとも、閉環率が85%以上であればよい。閉環率の測定方法としては、(a)成分をシリコンウェハー上に塗布し、赤外吸収スペクトルによってキュア前後の1377cm−1付近のピーク強度を比較してイミド化率を計算することにより、求めることができる。
【0017】
本発明においては、(a)アルカリ可溶性ポリイミドが、ポリエチレンオキサイド基を有することが好ましい。ポリエチレンオキサイド基は、下記一般式(1)において、aが2以上の整数であるものを意味し、2〜15であることが好ましい。
【0018】
また本発明の(a)アルカリ可溶性ポリイミドはジアミン残基と酸無水物残基を有するが、ポリエチレンオキサイド基をジアミン残基が有することが好ましい。さらに全ジアミン残基中ポリエチレンオキサイド基を有するジアミン残基が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。これにより、より反りを少なくすることができる。また上限としては、全ジアミン残基中の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。これにより、より耐熱性を高めることができる。
【0019】
【化1】

【0020】
ポリエチレンオキサイド基を含有するジアミンとしては、ジェファーミンKH−511,ジェファーミンED−600,ジェファーミンED−900,ジェファーミンED−2003,ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンEDR−176 (以上商品名、HUNTSMAN(株)製)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
【化2】

【0022】
(a) アルカリ可溶性ポリイミドは、ポリエチレンオキサイド基を含有するジアミンに加えて、他のジアミン残基を有してもよい。他のジアミン残基を構成するジアミンとしては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミンのD−200,D−400,D−2000,D−4000(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3−スルホン酸−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1〜10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミンなどを挙げることができる。これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。耐熱性が要求される用途では、芳香族ジアミンをジアミン全体の50モル%以上使用することが好ましい。
【0023】
(a)アルカリ可溶性ポリイミドは、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などを含むことができる。フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基を適度に有する樹脂を用いることで、適度なアルカリ可溶性を有するポジ型感光性樹脂組成物となる。特にフェノール性水酸基は、エポキシ基や熱架橋性化合物との反応性が高いためより好ましい。
【0024】
また、(a)成分の構造単位中にフッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子により、アルカリ現像の際に膜の表面に撥水性が付与され、表面からのしみこみなどを抑えることができる。(a)成分中のフッ素原子含有量は、界面のしみこみ防止効果を充分得るために10重量%以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20重量%以下が好ましい。
【0025】
また、耐熱性を低下させない範囲で、シロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよく、基板との接着性を向上させることができる。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1〜15モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0026】
本発明の(a)アルカリ可溶性ポリイミドの、酸無水物残基を構成する酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物, 2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(3,3−カルボキシルフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0027】
また、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、(a)成分の樹脂は主鎖末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。末端封止剤として用いられるモノアミンの導入割合は、全アミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物の導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0028】
モノアミンとしては、M−600,M−1000,M−2005,M−2070(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)、アニリン、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。この中でも、M−600,M−1000,M−2005,M−2070は、ポリエチレンオキサイド基を含有するため、低反りにおいて優れている点で好ましい。
【0029】
酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0030】
また、(a)成分の樹脂に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を、酸性溶液に溶解し、構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、本発明に使用の末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂成分を直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C−NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出可能である。
【0031】
本発明における(a)アルカリ可溶性ポリイミドは、重量平均分子量10,000以上30,000以下であることが好ましい。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算で10,000以上とすることにより、
硬化後の耐折れ性を向上させることができる。一方、重量平均分子量を30,000以下
とすることにより、アルカリ水溶液による現像性を向上させることができる。機械特性を得るため、20,000以上がより好ましい。また、アルカリ可溶性ポリイミドを2種以上含有する場合、少なくとも1種の重量平均分子量が上記範囲であればよい。
【0032】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物を用いる。エポキシ基は、200℃以下でポリマーと熱架橋し、架橋による脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくく、このため、低温硬化、低反り化に効果的である。
【0033】
(b)成分がエポキシ基を2以上有するため、(a)アルカリ可溶性ポリイミドとの熱架橋による高分子量化が可能となり、機械特性に優れた硬化膜が得ることができる。
【0034】
本発明の(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物はポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、またより低反り化することができる。また柔軟性が高いため、伸度等にも優れたポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。ポリエチレンオキサイド基は、前記一般式(1)において、aが2以上の整数であるものを意味し、2〜15であることが好ましい。
【0035】
(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物しては、例えば、ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールF 型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリメチル( グリシジロキシプロピル) シロキサン等のエポキシ基含有、シリコーンなどを挙げることができるが、本発明は何らこれらに限定されない。具体的には、エピクロン850−S, エピクロンHP−4032, エピクロンHP−7200, エピクロンHP−820, エピクロンHP−4700, エピクロンEXA−4710, エピクロンHP−4770, エピクロンEXA−859CRP,エピクロンEXA−1514, エピクロンEXA−4880, エピクロンEXA−4850−150, エピクロンEXA−4850−1000, エピクロンEXA−4816, エピクロンEXA−4822(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、リカレジンBEO−60E(以下商品名、新日本理化株式会社)、EP−4003S, EP−4000S ((株)アデカ)などが挙げられる。この中でも、エピクロンEXA−4880, エピクロンEXA−4822, リカレジンBEO−60Eは、ポリエチレンオキサイド基を含有するので低反り、耐熱性に優れる点で好ましい。
【0036】
(b)成分の含有量は、前記(a)アルカリ可溶性ポリイミド100重量部に対し、10 〜50重量部であり、10〜40 重量部であることが好ましい。配合量が、10重量部未満だとポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜が低反り化できず、50 重量部を超えるとキュア時のリフローによるパターン埋まりが起こり、解像度が大幅に低下する。
【0037】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(c)光酸発生剤を含有する。(c)光酸発生剤を含有することにより、紫外線露光部に酸が発生し、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するため、ポジ型感光性樹脂組成物として用いることができる。
【0038】
本発明に用いられる(c)光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。中でも優れた溶解抑止効果を発現し、高感度かつ低膜減りのポジ型感光性樹脂組成物を得られるという点から、キノンジアジド化合物が好ましく用いられる。また、(c)光酸発生剤を2種以上含有してもよい。これにより、露光部と未露光部の溶解速度の比をより大きくすることができ、高感度なポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくても良いが、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)により反応するポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
本発明において、キノンジアジド化合物は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。同一分子中にこれらの基を両方有する化合物を用いてもよいし、異なる基を用いた化合物を併用してもよい。
【0041】
本発明に用いられるキノンジアジド化合物は、特定のフェノール化合物から、次の方法により合成される。例えば5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール化合物をトリエチルアミン存在下で反応させる方法が挙げられる。フェノール化合物の合成方法は、酸触媒下で、α−(ヒドロキシフェニル)スチレン誘導体を多価フェノール化合物と反応させる方法などが挙げられる。
【0042】
(c)光酸発生剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは3〜40重量部である。(c)光酸発生剤の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができる。さらに増感剤などを必要に応じて含有してもよい。
【0043】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、さらに(b)成分とは別に(d)熱架橋性化合物を含有してもよい。具体的には、アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物が好ましい。これらの基を少なくとも2つ有することで、樹脂および同種分子と縮合反応して架橋構造体とすることができる。(b)成分と併用することで、感度や硬化膜の機械特性の向上のためにより幅広い設計が可能になる。
【0044】
このような化合物の好ましい例としては、例えば、DML−PC、DML−PEP、DML−OC、DML−OEP、DML−34X、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−OCHP、DML−PFP、DML−PSBP、DML−POP、DML−MBOC、DML−MBPC、DML−MTrisPC、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BPC、DML−BisOC−P、DMOM−PC、DMOM−PTBP、DMOM−MBPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−HQ、TML−BP、TML−pp−BPF、TML−BPE、TML−BPA、TML−BPAF、TML−BPAP、TMOM−BP、TMOM−BPE、TMOM−BPA、TMOM−BPAF、TMOM−BPAP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標) MX−290、NIKALAC MX−280、NIKALAC MX−270、NIKALAC MX−279、NIKALAC MW−100LM、NIKALAC MX−750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。この中でも、HMOM−TPHAP、MW−100LMを添加した場合、キュア時のリフローによるパターン埋まりが起こりにくくなり、解像度が向上するためより好ましい。
【0045】
【化3】

【0046】
アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物の含有量は、(a)成分100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましい。この範囲内であれば感度や硬化膜の機械特性の向上のために幅広い設計がより適切に行うことができる。
【0047】
また、必要に応じて、キュア後の収縮残膜率を小さくしない範囲でフェノール性水酸基を有する低分子化合物を含有してもよい。これにより、現像時間を短縮することができる。
【0048】
これらの化合物としては、例えば、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0049】
フェノール性水酸基を有する低分子化合物の含有量は、(a)成分100重量部に対して、1〜40重量部含有することが好ましい。
【0050】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。溶媒の含有量は、(a)成分100重量部に対して、100〜1500重量部含有することが好ましい。
【0051】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ−テル類を含有してもよい。
【0052】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は無機粒子を含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら無機粒子の一次粒子径は100nm以下、より好ましくは60nm以下が好ましい。
【0053】
また、基板との接着性を高めるために、保存安定性を損なわない範囲で本発明のポジ型感光性樹脂組成物にシリコン成分として、トリメトキシアミノプロピルシラン、トリメトキシエポキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシチオールプロピルシランなどのシランカップリング剤を含有してもよい。好ましい含有量は、(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0054】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)成分以外に他のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。具体的には、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール、アクリル酸を共重合したアクリルポリマー、ノボラック樹脂、シロキサン樹脂などが挙げられる。このような樹脂は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリの水溶液に溶解するものである。これらのアルカリ可溶性樹脂を含有することにより、硬化膜の密着性や優れた感度を保ちながら、各アルカリ可溶性樹脂の特性を付与することができる。
【0055】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の粘度は、2〜5000mPa・sが好ましい。粘度が2mPa・s以上となるように固形分濃度を調整することにより、所望の膜厚を得ることが容易になる。一方粘度が5000mPa・s以下であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。このような粘度を有するポジ型感光性樹脂組成物は、例えば固形分濃度を5〜60重量%にすることで容易に得ることができる。
【0056】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0057】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基板に塗布する。基板としてはシリコンウェハー、セラミックス類、ガリウムヒ素などが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布される。
【0058】
シリコンウェハーなどの基板とポジ型感光性樹脂組成物との接着性を高めるために、基板を前述のシランカップリング剤で前処理することもできる。例えば、シランカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20重量%溶解させた溶液を、スピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などにより表面処理をする。場合によっては、その後50℃〜300℃までの熱処理を行い、基板とシランカップリング剤との反応を進行させる。
【0059】
次にポジ型感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、ポジ型感光性樹脂組成物被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分間〜数時間行うことが好ましい。
【0060】
次に、このポジ型感光性樹脂組成物被膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)を用いることが好ましい。
【0061】
耐熱性樹脂のパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0062】
現像後、100℃〜200℃の温度を加えて熱架橋反応を進行させ、耐熱性および耐薬品性を向上させる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間〜5時間実施する。一例としては、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する。本発明においてのキュア条件としては150℃以上250℃以下が好ましいが、本発明は特に低温硬化性において優れた硬化膜を提供するものであるため、150℃以上200℃以下がより好ましい。
【0063】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜などの用途に好適に用いられる。本発明のポジ型感光性樹脂組成物を使用して得られる表面保護膜や層間絶縁膜等を有する電子デバイスとしては、例えば、耐熱性の低いMRAMが好ましい。すなわち、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、MRAMの表面保護膜用として好適である。また、MRAM以外にも次世代メモリとして有望なポリマーメモリ(PolymerFerroelectric RAM:PFRAM)や相変化メモリ(Phase Change RAM:PCRAM、あるいはOvonics Unified Memory:OUM)も、従来のメモリに比べて耐熱性の低い新材料を用いる可能性が高い。したがって、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、これらの表面保護膜用としても好適である。また、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、LCD、ECD、ELD、有機電界発光素子を用いた表示装置(有機電界発光装置)などの絶縁層に用いることができる。特に、近年の半導体素子の電極や多層配線、回路基板の配線は、構造のさらなる微細化に伴い、銅電極、銅配線が主流となっており、本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜をそのような電極、配線の保護膜として用いると、下地の銅電極や銅配線を腐食することなく高解像度でパターン形成できるため、特に好ましく用いられる。また、封止樹脂と半導体チップの間に生じるストレスが小さくなることで、配線のスライド、パッシベーションクラックが起こりにくいため、さらに好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。評価には、あらかじめ1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過したポジ型感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)を用いた。
【0065】
(1)重量平均分子量測定
(a)成分の樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置Waters2690−996(日本ウォーターズ(株)製)を用い、展開溶媒をN−メチル−2−ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)として測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を計算した。
【0066】
(2)イミド化率測定
(a)成分の樹脂のイミド化率は、次の方法で測定した。まず、各実施例の方法で得られた(a)成分の粉体を35重量%の濃度でγ−ブチロラクトン(以降GBLと呼ぶ)に溶解させ、6インチのシリコンウェハー上に塗布現像装置Mark−7(東京エレクトロン(株)製)を用いて120℃で3分間のベーク後の膜厚が5μmになるように塗膜を作製した。この塗膜の赤外吸収スペクトルをFT−720((株)堀場製作所製)を用いて測定した。次に塗膜を作製したウェハーを300℃のホットプレート(Mark−7)を用いて5分間のキュアを行ない、同様の方法でキュア膜の赤外吸収スペクトルを測定した。キュア前後の1377cm−1付近のピーク強度を比較することによって、イミド化率を求めた。
【0067】
(3)膜厚測定
膜厚は光干渉式膜厚測定装置ラムダエースSTM−602(大日本スクリーン製造(株)製)を使用して、屈折率1.629で測定した。
【0068】
(4)解像度の評価
ワニスを、6インチのシリコンウェハー上に120℃で3分間のベーク後の膜厚が5μmになるように、塗布現像装置Mark−7(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行なった。露光機i線ステッパーDSW−8000(GCA社製)にパターンの切られたレチクルをセットし、500mJ/cmの露光量で露光した。露光後、Mark−7の現像装置を用いて、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(以下TMAH、多摩化学工業(株)製)を用いてパドル法で現像液の吐出時間10秒、パドル時間40秒の現像を2回繰り返し、その後純水でリンス後、振り切り乾燥し、ポジ型のパターンを得た。イナートオーブンCLH−21CD−S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で200℃まで昇温し、200℃で1時間加熱処理を行なった。温度が50℃以下になったところでウェハーを取り出し、パターンをFDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)製)の倍率20倍で観察し、ラインアンドスペースが解像している寸法を解像度とした。
【0069】
(5)反り応力の測定
6インチのシリコンウェハーの反り応力を、ストレス装置FLX2908(KLA Tencor社製)を用いて測定した。次にワニスを120℃で3分間のプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布現像装置Mark−7を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークした後、イナートオーブンCLH−21CD−S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で200℃まで昇温し、200℃で1時間加熱処理を行なった。温度が50℃以下になったところでシリコンウェハーを取り出し、シリコンウェハー上の硬化膜の膜厚を測定後、硬化膜の反り応力を上記のストレス装置を用いて測定した。
【0070】
(6)5%重量減少温度の測定
(4)で得られたシリコンウェハー上の硬化膜をフッ酸によって剥離することで、フィルムを得た。膜の単膜フィルム10mgをAlクランプセルに詰めてTGA測定サンプルを作成し、TGA−50(島津製作所製)で測定を行った。窒素雰囲気下で、200℃から5%重量減少した温度について、320℃未満であるものを不十分、320℃以上350℃未満であるものを良好(△)、350℃以上であるものをより良好とした(○)。
【0071】
合成例1 キノンジアジド化合物の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.10モル)、4−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド13.43g(0.05モル)を1,4−ジオキサン50gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(C)を得た。
【0072】
【化4】

【0073】
実施例1
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)29.30g(0.08モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、4−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をN−メチル−2−ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)80gに溶解させた。ここにビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(以降ODPAと呼ぶ、マナック(株)製)31.2g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥しアルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A−1)の粉末を得た。上記の方法で評価した結果、樹脂(A−1)の重量平均分子量は26000、イミド化率は92%だった。
【0074】
得られた樹脂(A−1)10gに(b)成分としてEP−4003S((株)アデカ製)を3.0g、(c)成分として合成例1で得られたキノンジアジド化合物(C)2.0g、溶剤としてγ−ブチロラクトン(以降GBLと呼ぶ)を10g加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0075】
実施例2
(b)成分としてBEO−60E(新日本理化株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0076】
実施例3
乾燥窒素気流下、BAHF22.00g(0.06モル)、D−400(HUNTSMAN(株)製) 8.00g(0.02モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、4−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.2g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥しアルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A−2)の粉末を得た。上記の方法で評価した結果、樹脂(A−2)の重量平均分子量は23000、イミド化率は90%だった。
【0077】
得られた樹脂(A−2)10gに(b)成分としてBEO−60Eを3.0g、(c)成分として合成例1で得られたキノンジアジド化合物(C)2.0g、溶剤としてGBLを10g加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0078】
実施例4
(b)成分としてエピクロンEXA−4880(大日本インキ化学工業(株)製)を用いた以外は実施例3と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0079】
実施例5
(b)成分としてエピクロンEXA−4822(大日本インキ化学工業(株)製)を用いた以外は実施例3と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0080】
実施例6
乾燥窒素気流下、BAHF22.00g(0.06モル)、ED−600(HUNTSMAN(株)製) 12.00g(0.02モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、4−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.2g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥しアルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A−3)の粉末を得た。上記の方法で評価した結果、樹脂(A−3)の重量平均分子量は26000、イミド化率は95%だった。
【0081】
得られた樹脂(A−3)10gに(b)成分としてEXA−4822を3.0g、(c)成分として合成例1で得られたキノンジアジド化合物(C)2.0g、溶剤としてGBLを10g加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0082】
実施例7
乾燥窒素気流下、BAHF22.00g(0.06モル)、ED−900(HUNTSMAN(株)製) 18.00g(0.02モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、4−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.2g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥しアルカリ可溶性ポリイミド樹脂(A−4)の粉末を得た。上記の方法で評価した結果、樹脂(A−4)の重量平均分子量は25000、イミド化率は89%だった。
【0083】
得られた樹脂(A−4)10gに(b)成分としてEXA−4822を3.0g、(c)成分として合成例1で得られたキノンジアジド化合物(C)2.0g、溶剤としてGBLを10g加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0084】
実施例8
さらに(d)成分としてMW−100LM((株)三和ケミカル製)0.3gを用いた以外は実施例7と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0085】
実施例9
(b)成分としてEXA−4880を用い、さらに(d)成分としてHMOM−TPHAP(本州化学工業(株)製)0.3gを用いた以外は実施例7と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0086】
比較例1
(b)成分を用いず、また(d)成分としてMW−100LM 1.0gを用いた以外は実施例7と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0087】
比較例2
(b)成分を用いず、また(d)成分としてHMOM−TPHAP1.0gを用いた以外は実施例7と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0088】
比較例3
(b)成分としてBEO−60E(新日本理化株式会社製)6.0gを用いた以外は実施例7と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0089】
比較例4
(b)成分としてEP−4003S 6.0gを用いた以外は実施例7と同様にしてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0090】
上記の評価ワニスの組成を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
上記の評価結果を表2に示す。
【0093】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルカリ可溶性ポリイミド、(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物および(c)光酸発生剤を含有し、(a)アルカリ可溶性ポリイミド100重量部に対し(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物の含有量が10〜50重量部であるポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(b)少なくとも一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物がポリエチレンオキサイド基を有することを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(a)アルカリ可溶性ポリイミドがポリエチレンオキサイド基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(d)熱架橋性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−208360(P2012−208360A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74648(P2011−74648)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】