説明

ポリアミン架橋されたポリシロキサンを含有する防汚物質

ポリアミン架橋されたポリシロキサン、例えばポリアルキレンポリアミンで架橋された官能基化されたポリシロキサンを、本明細書において記載する。ポリアミン架橋されたポリシロキサンは、海洋環境における生物学的汚れを防ぐために、防汚組成物中で使用してもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、下記特許出願の優先権を主張するものであり:(1)米国特許仮出願第60/679,129号、2005年5月9日出願、名称「防汚物質」、(2)米国特許仮出願第60/743,044号、2005年12月15日出願、名称「陽イオン性ポリシロキサン」、および、(3)米国特許仮出願第60/751,720号、2005年12月17日出願、名称「陽イオン性ポリシロキサン」、これらは全て明白にそれらの全体が本明細書に参照として組入れられている。
【背景技術】
【0002】
背景
水生環境に曝された表面の汚れは、重大な問題点である。例えば、船体のような船の表面、オイルリングのような沖合海洋構造物、海岸プラントのための海水導管システム、ブイ、熱交換器、冷却塔、海水淡水化装置、濾過膜、ドックなどの表面は全て、継続して水に曝される場合、ある程度の汚れを受ける。船の場合、汚れは、船舶性能および能力を損う可能性がある。例えば汚れは、燃料消費を実質的に増大することがあり、および大規模かつより頻繁な保守管理を必要とすることがあり、これらは全て操作の全般的経費を上昇させる。汚れは、船の速度、機動性、および航行距離(range)も低下することがあり、このことは性能を妨げる。別のレベルで、世界中を横断する船への地域的に特異性のある水生生物の付着は、土着していない港湾へのこれらの生物の望ましくない侵入および来襲につながり得る。場合によっては、このことは、地域の水界生態系に重大な有害作用を有し得る。
【0003】
何年にもわたり、水生環境に露出された構造物への汚れの作用を最小化するために、多くの試みがなされている。例えばそのような構造物上の水生生物の付着および/または成長を妨げるコーティング(例えば塗料など)が開発されている。従来、下記のコーティング研究のふたつの平行する系列が支配的である:殺生物剤含有するコーティング、および低表面エネルギーの「非粘着性」の汚れ剥離コーティング。
【0004】
船の船体上の海洋汚染を制御する最も一般的方法には、防汚コーティングを作製するための、分解性ポリマーマトリックス内の酸化銅粒子の分散が関連している。酸化銅は、海洋生物の定着を阻止する殺生物剤として役立つ。この酸化銅は、ポリマーマトリックスに化学的に結合していないので、これは次第にコーティング表面から除去される。水生環境中のポリマーマトリックスの緩徐な分解は、殺生物活性を維持するための、コーティング表面の酸化銅の補充を可能にする。約3年間運航(service)した後のコーティングの分解の程度は、船を乾ドックに入れ新たなコーティング層を塗布しなければならない程深刻である。この方法は効果的であるが、酸化銅の海洋環境への放出および頻繁に乾ドックに入る必要性のために、これは望ましくない。
【0005】
現在はるかに少ない度合いで使用される第二の方法は、コーティング上に定着した海洋生物の容易な剥離を可能にする、無毒の非分解性コーティングの塗布に関連している。これらのコーティングは、通常汚れ-剥離コーティングと称され、典型的にはその接着強度が比較的低くおよび生物が水噴射または高速での水中の船の移動により容易に除去され得るような、低い表面エネルギーを有するシリコーンエラストマーである。この方法の主な欠点は、船の船体の頻繁なクリーニングが必要であること、およびコーティングが、それらの低いモジュラスのために容易に損傷されることである。
【0006】
従って、汚れを阻止する際に、より環境に優しくおよび/またはより効果的である、改善された防汚コーティング(すなわち、殺生物特性および/または汚れ-剥離特性を有するコーティング)を提供することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本出願は、防汚活性および/または抗微生物活性を有し、ならびに殺生物活性および/または汚れ剥離活性を示すポリマーを含む、高分子材料に関する。この高分子材料は、典型的には第四級アミン官能基を含む架橋されたポリシロキサン材料のような、架橋された高分子材料である。
【0008】
防汚物質は、第四級アミノ官能基を含む共有結合されたポリマーのネットワークを提供するよう、ポリマーおよび/またはコポリマーを架橋することにより調製することができる。ひとつの態様において、ポリマーネットワークは、少なくとも1つのポリシロキサンセグメントを含んでよい。別の態様において、ポリマーネットワークは、イオネン橋を用い一緒に架橋されたポリシロキサンポリマーを含んでよい。このポリマーネットワークは、多くの汚れ阻害部分または他の官能基、例えば殺生物部分、汚れ剥離部分、および/または粘着防止部分(texturizing moieties)などを含んでもよい。
【0009】
式I、II、およびIIIは、ポリマーネットワークを調製するために使用することができる様々なポリマーの例証的態様を示している。一般的用語において、式I、II、およびIIIは、イオネン橋を用い架橋された2つのポリマーまたはコポリマーのセグメントを含む防汚物質を作製するために使用することができる。イオネン橋の使用は、多くの観点から望ましいことがある。例えば、イオネン橋の第四級アミンを形成するために使用される反応は、剪断応力下(例えば、水の中を通って移動する船、加圧洗浄機など)で可逆性であってよい。四級化反応は可逆的であるので、この防汚物質使用するコーティングは、コーティングの外側層をゆっくり放出し、従ってコーティングの表面上の汚れを防ぐことができる。更に第四級および第三級アミンは、汚れを生じる生物にとって毒性がある。従って脱四級化(dequaternization)反応において形成されたイオネン橋および第三級アミンの殺生物特性も、汚れを減少することができる。ひとつの態様において、ハライドで官能基化されたポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリアミン化合物を用いて架橋されてもよい。しかし別の態様において、ジハライド化合物は、アミン官能基化されたポリマーおよび/またはコポリマーと反応し、イオネン橋化された高分子材料を提供することは理解されなければならない。
【0010】
式IおよびIIIは、様々な主鎖を有することができる、様々なポリマーおよび/またはコポリマーを示す。例えばひとつの態様において、ポリマー主鎖の少なくとも1つは、ポリシロキサンポリマーセグメントを含む。例えばポリマー主鎖は、ポリジアルキルシロキサン、ポリアルキルヒドロシロキサンなどの、ポリシロキサンセグメント、およびポリアクリレートセグメントなどの、炭素ポリマーセグメントを含んでもよい。別の例において、このポリマー主鎖は、全体的にポリシロキサンポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)-コ-ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS))で構成されてよい。この防汚物質は、イオネンを用い架橋することができる複数のポリマーを含んでもよい。ポリマー主鎖におけるポリシロキサンの使用は、その防汚物質に対しゴム状特性を提供するために望ましいことがある。
【0011】
式I、II、およびIIIに示されるように、ポリシロキサン/ポリアクリレート(すなわち、ポリシロキサンおよび/もしくはポリアクリレートベースのポリマーおよび/もしくはコポリマー)主鎖、イオネン橋、ならびに/またはグラフトポリマーは、様々な追加部分を含むことができる。好適な部分は、例えば以下を含む:殺生物部分(例えば、トリクロサン、第四級アンモニウム、ピリジニウム、これらの基を含むポリメタクリレートのようなポリマーおよびコポリマーなど);粘着防止または汚れ剥離部分(例えば、ポリエーテル基などの親水基、ペルフルオロアルキル基などの疎水基、ジュウテロベンゼン基のような液晶基、自己組織化基(self-organizing group)、アルコキシアルキルなどのアルコキシアルキル基のような切断可能な基、ならびにこれらの基を含むポリメタクリレートのようなポリマーおよびコポリマーなど)、または架橋部分(例えば、エポキシ、オレフィン、アミン、酸、アルデヒド、エステルなど)。ひとつの態様において、これらの部分は、ポリシロキサン/ポリアクリレート主鎖またはイオネン橋へ直接カップリングされてもよい。しかし別の態様において、これらの部分は、ポリマー主鎖および/またはイオネン橋の一部であるかまたはそれらにグラフトすることができる、ポリメタクリレートのような、ポリマーおよび/またはコポリマーへカップリングされてもよい。
【0012】
式IVは、式I、II、およびIIIに示された材料を使用し調製することができる防汚物質の例を示す。図I、II、およびIIIに示された材料は、多種多様な防汚物質を提供するために多くの方法で修飾することができることは理解されるべきである。例えば、四級化反応の外側で生じる架橋を制限することが望ましいことがある。従って式I、IIおよびIIIに示されたポリマーおよび/またはコポリマーについて提供された架橋部分の数は、全て一緒に低下または削除することができる。同様に、殺生物部分および/または組織構造(textural)部分の量ならびに数を同様の様式で制限することも望ましいことがある。ひとつの態様において、イオネン連結されたポリシロキサン/ポリアクリレート物質は、約0.2%〜3%、望ましくは約0.4%〜2%、または好適には約0.6%〜1%の窒素含量(質量%)を有することができる。
【0013】
ひとつの態様において、架橋された物質を生成するために使用されるポリシロキサン/ポリアクリレートは、分子量約4000〜25000を有してもよい。
【0014】
このポリアミンは、多くの好適な化合物のいずれかであってよい。例えばひとつの好適なジアミンは、式VIIIを有することができ:
R=R2N-A-NR2
式VIII
式中、「A」は、シロキサン、アルキル、エーテル、エステル、ポリエーテル、フェニル、アリール、複素環式、ポリ芳香族、ポリペプチド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスルホン、またはポリウレタン基からなる、スペーサー基または連結基である。一般に本明細書において使用される「連結基」は、2種の他の原子を一緒に連結するために使用され、かつ12原子未満を有する基を意味する。「R」は、好適なアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルのいずれかであってよい。当然、トリアミンおよび他のより高次のアミンも使用することができることは理解されるべきである。
【0015】


【0016】
別の態様において、防汚物質は、ポリアミンまたはポリハライドで官能基化された物質を用い、コポリマー(ランダムまたはブロック)を架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーは下記式を有し:

式中、xは、0〜100、1〜50、または2〜10の整数であり;
yは、0〜100、1〜25、または2〜10の整数であり;
zは、0〜100、1〜50、または2〜10の整数であり;
tは、0〜100、1〜25、または2〜10の整数であり;
uは、0〜100、1〜50、または2〜10の整数であり;
x+y+z+t+uは、少なくとも5、10、50、100、または25〜250、もしくは50〜200の間であり;
nは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
mは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
pは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
aは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
bは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
cは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
dは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
eは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
fは、0〜50、5〜40、または10〜30の整数であり;
Xは、ハライド、アミノ基(Xがハライドである場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリアミンであるか、またはXがアミノ基である場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリハライドである)、または末端キャップ基であり;
Yは、ハライド、アミノ基(Yがハライドである場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリアミンであるか、またはYがアミノ基である場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリハライドである)、または末端キャップ基であり;
Zは、ハライド、アミノ基(Zがハライドである場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリアミンであるか、またはZがアミノ基である場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリハライドである)、または末端キャップ基であり;
L1、L2、およびL3は、連結基であり;
R1、R2、R3、およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R6、R8、およびR9は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せを含む。
【0017】
典型的には、n、m、p、a、b、c、d、e、またはfの少なくとも1つは、0ではない。例えば、本高分子材料は好適には、n+m+pが5未満でなく(例えば、10〜30);a+b+cが5未満でなく(例えば、10〜30);および/または、d+e+fが5未満でない(例えば、10〜30)であるものを含む。
【0018】
この態様において、ポリシロキサン主鎖は、ランダムまたはブロックコポリマーであってよい。同じくポリシロキサン主鎖にグラフトされるポリメタクリレートベースのポリマーも、ランダムまたはブロックコポリマーであってよい。従って、本明細書に示された式は、特定されたモノマー単位を任意の順番で有するブロックまたはランダムコポリマーのいずれかを意味することは理解されなければならない。
【0019】
別の態様において、防汚物質は、ポリアミンまたはポリハライドで官能基化された物質を用い、コポリマー(ランダムまたはブロック)を架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーは下記式を有し:

式中、シロキサンベースのポリマーは、末端のひとつが取り除かれた、先の態様由来のシロキサンポリマーであることができ(例えば、先の態様由来のシロキサンポリマーは、取り除かれた最も左側のケイ素基を有し、これは次に本態様で示されたケイ素基にその点でカップリングされるであろう);
x1は、0〜100、1〜50、または2〜10の整数であり;
y1は、0〜100、1〜50、または2〜10の整数であり;
z1は、0〜100、1〜50、または2〜10の整数であり;
gは、0または1であり;
hは、0または1であり;
x1、y1、またはz1の少なくとも1つは、0ではなく;
Qは、ハライド、アミノ基(Qがハライドである場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリアミンであるか、またはQがアミノ基である場合、コポリマーを架橋するために使用される物質は、ポリハライドである)、または末端キャップ基であり;
L4 およびL5は、連結基であり;
R11およびR12は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R13は、Hおよび/またはC1-C10アルキル、典型的にはMeであり;
R11およびR12は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せを含む。
【0020】
防汚物質としてまたはその中での使用に適した多くの化合物が、本明細書において明らかにされている。一般に防汚物質は、単独で使用されるかまたは他の材料もしくは物質と併用した場合に、殺生物特性および/または汚れ剥離特性を提供することができる生成物、薬剤または組成物を意味する。本明細書に説明された防汚物質は、殺生物特性および/または汚れ剥離特性を提供する多くの好適なコポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマーなど)の1つまたは複数を含むことができる。
【0021】
ひとつの態様において、コポリマーは、イオネン橋を使用し、ふたつのコポリマーを架橋することにより調製することができる。イオネン橋は、ジアミンなどのポリアミンを、コポリマー上のハライドと反応させることにより形成することができる。このコポリマーは、様々なポリシロキサン(例えば、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリジメチルシロキサンなど)を、単独でまたは他の炭素ベースのポリマー、例えばポリアクリレートベースのポリマー(例えばポリメタクリレート)と組合せて含んでよい。コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーとして調製することができる。加えて他のポリマーまたは官能基は、コポリマー主鎖に結合されてよい(例えば、ポリアクリレートベースのコポリマーは、このコポリマー主鎖にグラフトされてよい)。様々な汚れを阻害する部分は、このコポリマー主鎖へ直接、コポリマー主鎖にグラフトされたポリマーへ、またはコポリマーの架橋に使用されるイオネン橋へ結合される。汚れを阻害する部分は、殺生物基、汚れ剥離基(コポリマーを切断除去することが可能である基)、および/または粘着防止基(ゴム状稠度を提供する基か、または汚れ生物の防汚物質に付着する傾向を低下する基)を含むことができる。
【0022】
イオネン架橋されたコポリマーは、ジハライドとジ-tert-アミンの間で、メンシュトキン反応を用いて調製することができる。ひとつの態様において、塩素または臭素などのハライドは、ポリアミンと反応するコポリマーへ(主鎖またはペンダント基もしくはグラフトポリマーのいずれかへ直接)結合し、コポリマー間にイオネン橋を形成することができる。イオネン橋は、隣接コポリマーと一緒にカップリングする第四級アミンを含む。第四級アミンを形成する反応は、剪断応力下で(例えば、水中を通って移動する船、高圧噴霧器の使用など)、可逆性であることができ、その結果架橋されたコポリマーは、汚れ剥離特性を有することができる。この架橋されたコポリマーは、アミン官能基化されたコポリマーおよびハライドで官能基化された架橋基を用いて調製することもできる。
【0023】
多くの好適な方法を使用し、説明された防汚物質を提供することができることは、理解されるべきである。例えば多くの好適なポリアミンのいずれかを使用し、これらのコポリマーを架橋し、コポリマー間にイオネン橋を形成することができる。ひとつの態様において、コポリマーを架橋するために、ジアミンが使用される。
【0024】
防汚物質は、汚れを防止することが望ましい表面(例えば、船の船体の表面など)へ、コーティングとして塗布することができる。ひとつの態様において、ハライドで官能基化されたコポリマーおよびポリアミンは、コーティングが保護されるべき表面へ塗布される直前または同時に結合させることができる。
【0025】
官能基化されたポリシロキサンおよび/またはそれらの塩を含む高分子材料が、本明細書において説明されている。官能基化されたポリシロキサンは、1個または複数のポリアミンサブユニットを含むことができる。ポリアミン官能基化されたポリシロキサンは、最終物質の望ましい特性に応じ、任意の適当な量または種類のポリアミンサブユニットを含み得ることが、理解されるべきである。ひとつの態様において、官能基化されたポリシロキサンは、ポリエチレンポリアミンサブユニットまたはポリプロピレンポリアミンサブユニットのような、ポリアルキレンポリアミンサブユニットを含む。この高分子材料は、約5〜35質量%のポリアミンサブユニット、場合によっては約8〜25質量%のポリアミンサブユニット、および別の場合には約10〜15質量%のポリアミンサブユニットを含み得る。同じくこのポリアミンサブユニットは、少なくとも約500g/molの分子量を有し得る。別の態様において、官能基化されたポリシロキサンは、1、2、3またはそれよりも多い異なる種類のポリアミンサブユニット(例えば、複数のポリアルキレンポリアミンサブユニット)を含み得る。更に官能基化されたポリシロキサンの塩は、1個もしくは複数の第四級アンモニウム基および/または1個もしくは複数のプロトン化されたアンモニウム基を含み得る。
【0026】
官能基化されたポリシロキサンは、殺生物特性および/または汚れ剥離特性を有し得る。例えば、ポリアミンサブユニット内のアミン基は、殺生物剤として作用することができる。特に第四級アンモニウム基および/またはプロトン化されたアンモニウム基は、特に殺生物剤として機能することができる。アミン基は、高分子材料において共有結合され、このことはアミン基の環境への過度の分解を防止するために役立つ。官能基化されたポリシロキサンは、トリクロサンのような、追加の共有結合された殺生物基も含むことができる。典型的には、殺生物基は、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある。ひとつの態様において、第二の殺生物基(例えば、トリクロサン)は、エポキシ官能基化された殺生物基が、ポリアミンサブユニット上のアミン基と反応することにより、官能基化されたポリシロキサンへ導入することができる。別の態様において、第二の殺生物基は、官能基化されたポリシロキサンを、エピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)およびトリクロサンと反応することにより、ポリシロキサンへ導入することができる。
【0027】
この高分子材料は、防汚組成物中に含有することができる。この防汚組成物は、船の船体のような、汚れ易い表面をコーティングするために使用することができる。この高分子材料の殺生物特性および/または汚れ剥離特性は、船の船体または他の基材の汚れを防止することができる。典型的には、防汚組成物は、反応混合物として基材上にコーティングされ、その後これは引き続き硬化する。硬化の一部は、この混合物の粘度が、コーティング塗布が基材上に残存するものであるように、防汚組成物がコーティングされる前に行うことができることは理解されなければならない。この高分子材料は、医療機器などの、多くの他の適用のいずれかにおいても使用することができる。
【0028】
官能基化されたポリシロキサンは、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンおよびシラノールを末端とするポリシロキサンを含有する混合物を反応させることにより調製することができる。ひとつの態様において、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンは、1個または複数のジアルコキシアルキルシリルアルキル基および/またはトリアルコキシシリルアルキル基を含むことができる。例えば、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンは、1個または複数のジメトキシメチルシリルプロピル基および/またはトリメトキシシリルプロピル基を含むことができる。別の態様において、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンは、アルコキシシリル官能基化されたポリアルキレンポリアミン、例えばトリメトキシシリルプロピル官能基化されたポリエチレンイミンおよび/またはジメトキシメチルシリルプロピル官能基化されたポリエチレンイミンを含む。シラノールを末端とするポリシロキサンは、任意の適当なシラノールを末端とするポリシロキサンであってよい。ひとつの態様において、シラノールを末端とするポリシロキサンは、平均分子量約10,000g/mol〜100,000g/mol、または約15,000g/mol〜75,000g/molを有する。アルコキシシランのような架橋剤および/またはヒュームドシリカのような他の物質を、この混合物へ添加し、官能基化されたポリシロキサンを生成するために使用することができる。
【0029】
説明
一般に、本明細書に説明された防汚物質は、殺生物活性および/または汚れ剥離活性を示すポリマーを含有する。防汚物質に関する様々な態様および説明は、水生環境(例えば、海洋環境、淡水環境など)に曝された構造物およびその他の表面が汚れるのを防ぐために、独立して(例えば、単独のコーティング層として)または他の物質(例えば、塗料顔料など)と組合せて使用することができる。多くの状況において、コーティング物質の組成物は、硬化剤、架橋開始剤などの、他の化合物を含む。
【0030】
式IおよびIIIに示されたポリマーおよび/またはコポリマーのような、ハライドで官能基化された高分子材料を架橋するために使用することができる好適なポリアミンは、1,4-ジアミノブタン;ビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン;1,3-ジピリジルプロパン;1,3-ビス(N,N-ジメチルアミノ)-ブタン;1,n-ビス(N,N-ジアルキルアミノ)-アルカン、ここでN,N-ジアルキル基は、エチルおよび/またはメチルであり、および1,n-置換されたアルカン主鎖は、典型的には2〜10個の炭素原子を有する;ビス(アミノアルキル)-ベンゼン、例えば1,4-ビス(N,N-ジメチルアミノメチル)-ベンゼンまたは1,3-ジ-(アミノエチル)-ベンゼンなど;1,n-ビス(N,N-ジアルキルアミノ)-シクロアルカン、例えば1,4-ビス(N,N-ジメチルアミノ)-シクロヘキサンまたは1,4-ビス(N,N-ジメチルアミノメチル)-シクロヘキサンなど;1,n-ジピリジルアルカン、例えば1,3-ジピリジルブタンまたは1,6-ジピリジルヘキサンなど;1,n-ジピリジルシクロアルカン、例えば1,4-ジピリジルシクロヘキサンなど;ポリアルキレンポリアミン、例えばN,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、またはN,N,N',N'-テトラメチルプロピレンジアミンなど;N,N,N',N'-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N,N'N'-テトラメチル-エチレンジアミン;N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン;N,N,N',N’-テトラメチルベンジジン;N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン;2,2'-ジピリジル;および、4,4'-ジピリジルを含む。
【0031】
別の態様において、コポリマーを架橋するために使用されるポリアミンは、1個または複数の第二級アミンまたは第一級アミンを含み、これはコポリマー上のハライドと反応することができる。ポリアミンがコポリマーへカップリングされた後、アミノ基は、例えばアルキル化剤との反応により四級化され、2種のコポリマー間にイオネン橋を形成することができる。
【0032】
この汚れ剥離部分は、多くの好適な汚れ-剥離部分のいずれかであってよい。例えば、好適な汚れ剥離部分は、式Vを有する基を含むことができ:
R=-A-J
式V
式中、「A」は、アルキル、エーテル、エステル、ポリエーテル、フェニル、アリール、複素環式、ポリ芳香族、ポリペプチド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスルホン、またはポリウレタン基からなるスペーサーである。「J」は、ペルフルオロアルキルなどの、本明細書に説明されたような汚れ剥離作用を増強するために、ポリシロキサンの物理特性に影響を及ぼす末端官能性である。「J」の好適な例は、以下を含む。

【0033】
式I、IIおよびIIIに示された物質は、ペンダント殺生物部分を含むことができる。そのような殺生物部分の好適な例は、式VIを有する基を含み:
R=-A-G
式VI
式中、「A」は、アルキル、エーテル、エステル、ポリエーテル、フェニル、アリール、複素環式、ポリ芳香族、ポリペプチド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスルホン、またはポリウレタン基からなるスペーサーである。「G」は、水生生物への殺生物剤である末端官能性であり、例えばひとつの態様において、テトラサイクリン、トリクロサン、およびフロキサシンであり、または別の態様において、アンモニウム塩およびピリジニウム塩である。スペーサー「A」は、それが加水分解するように選択することができ、その結果殺生物剤基「G」は、コポリマーから切断され得る。場合によっては、基「G」は、ポリマー主鎖からの切断後にのみ、殺生物活性を示すことができる。同じくスペーサー「A」は、加水分解を受けないように選択することができ、その結果殺生物剤基「G」は、ポリマー主鎖から切断可能ではない。ひとつの態様において、ポリマー主鎖は、切断可能および切断不可能な殺生物剤基の両方を含む、ポリシロキサンおよび/またはポリメタクリレートを含むことができる。別の態様において、ポリシロキサンのひとつの種類は、切断可能な殺生物剤基を含み、ならびに他のポリシロキサンへ架橋されており、その少なくとも1つは、切断不可能な殺生物剤基を含む。殺生物剤基の適当な例は、各々以下に示された、トリクロサンおよびピリジニウム基を含む。

【0034】
式I、IIおよびIIIに示された物質は、ペンダント架橋部分を含むことができる。そのような架橋部分の好適な例は、式VIIを有する基を含み:
R=-A-E
式VII
式中、「A」は、アルキル、エーテル、エステル、ポリエーテル、フェニル、アリール、複素環式、ポリ芳香族、ポリペプチド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスルホン、またはポリウレタン基からなるスペーサーである。「E」は、硬化剤と接触する時に、更なる反応を受けることが可能である、エポキシ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、エステルからなる末端官能性である。このコポリマーは、2個のビニル基を有するもの(例えば、ジビニルPDMS、ジビニルベンゼンなど)のような多くの架橋剤のいずれかを用い、架橋することができる。
【0035】
防汚物質は、海洋生物による汚れに曝される表面に塗布されるコーティング(色素などの他の構成成分を含有するかまたはしない)として提供することができる。コーティングは、式IおよびIIIに示されたコポリマーを、式IIに示されたポリアミンと結合することにより調製することができる。これらの物質が結合された後、コーティングは、表面へ塗布され、硬化させられる。
【0036】
本組成物は、殺生物活性および/または汚れ剥離活性を有する防汚コーティングとして使用することができる。これらのコーティングは、コーティングされた表面上の生物学的実体の定着/成長/増殖を阻害する点で、多かれ少なかれ効果がある。官能基化されたポリシロキサン組成物は、防汚コーティング中で使用するための配合を含有するように、他の物質と併用することができる。この配合は、多くの用途において防汚コーティングとして役立つよう使用することができることは予想される。特に先に記されたように、本組成物は、船の船体、熱交換機、冷却塔、海水淡水化装置、濾過膜、ドック、沖合オイルリング、および他の海面下の上部構造物、更には水生環境中で汚れに曝される構造もしくは表面のコーティングに有用であり得る。
【0037】
官能基化されたポリシロキサンおよび/またはそれらの塩を含有する高分子材料が、本明細書において説明されている。この高分子材料は、多種多様な状況において有用であり得る。例えばこの高分子材料は、海洋もしくは水生環境中または水への曝露が汚れを生じ得るような任意の他の場所での汚れを防ぐために使用することができる。この高分子材料は、船体のような船の表面、オイルリングのような沖合海洋構造物、海岸プラントのための海水導管システム、ブイ、熱交換器、冷却塔、海水淡水化装置、濾過膜、ドックなどの表面に塗布されるコーティング中に含まれてよい。高分子材料は、手術時にヒトまたは動物に移植される医療機器(例えば、心ペースメーカー、心除細動器など)をコーティングするために使用されるものなどの、その他のコーティング中に含まれてもよい。この高分子材料は任意の適した適用において使用することができることは理解されなければならない。
【0038】
この高分子材料は、1個または複数のポリアミンサブユニット(例えばポリアミンで官能基化されたポリシロキサン)を含むことができる。ポリアミンで官能基化されたポリシロキサンは、最終物質の望ましい特性に応じ、任意の適した量または種類のポリアミンサブユニットを含有することができることは理解されなければならない。ひとつの態様において、ポリアミン官能基化されたポリシロキサンは、ポリアルキレンポリアミンサブユニットを含むことができる。ポリアルキレンポリアミンサブユニットは、2〜6個の炭素原子を有するポリアルキレン基を含むことができる。例えば、ポリアルキレンポリアミンサブユニットは、ポリエチレンポリアミンサブユニット、ポリプロピレンポリアミンサブユニットなどを含むことができる。ポリアミンサブユニットは、少なくとも5個のアミン基、少なくとも10個のアミン基、または好適には少なくとも15個のアミン基を含むことができる。ポリアミンサブユニットは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基などの好適な連結基のいずれかを用い、ポリシロキサンへ連結することができる。ひとつの態様において、官能基化されたポリシロキサンの塩は、第四級アミン基および/またはプロトン化されたアミン基を含むことができる。ポリアミンサブユニットは、ブロックまたはランダムポリマーサブユニットであってよいことも理解されるべきである。好ましいポリアミンサブユニットは、ランダムポリマーサブユニットである。
【0039】
この高分子材料は、任意の適量のポリアミンサブユニットを含むことができる。例えば高分子材料は、約5〜35質量%のポリアミンサブユニット、約8〜25質量%のポリアミンサブユニット、または好適には、約10〜15質量%のポリアミンサブユニットを含むことができる。ポリアミンサブユニットは、任意の適当な分子量を有してもよい。例えばポリアミンサブユニットは、平均分子量少なくとも約500g/mol、少なくとも約1000g/mol、または好適には少なくとも約2000g/molを有することができる。別の態様において、ポリアミンサブユニットは、平均分子量約2000〜4000g/molを有することができる。更に別の態様において、高分子材料中のポリアミンサブユニットは、約7500g/molを超えないまたは約5000g/molを超えない平均分子量を有することができる。この高分子材料は、1、2、3またはそれよりも多い異なる種類のポリアミンサブユニット(例えば、複数のポリアルキレンポリアミンサブユニット、例えばポリエチレンポリアミンおよびポリプロピレンポリアミン)を含んでよいことは理解されなければならない。
【0040】
この高分子材料は、アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンおよびシラノールをを末端とするポリシロキサンを含有する混合物を、アルコール副産物(例えば、アルコキシシリル基に応じてメタノール、エタノールなど)を生成する縮合反応により反応させることにより調製することができる。任意の適当なアルコキシシリルで官能基化されたポリアミンを使用することができる。例えばある態様において、アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、1つまたは複数のジアルコキシアルキルシリルアルキル基、例えばジメトキシメチルシリルエチル基、ジエトキシエチルシリルエチル基、ジメトキシメチルシリルプロピル基、ジエトキシエチルシリルプロピル基、ジメトキシメチルシリルブチル基、ジエトキシエチルシリルブチル基など、および/またはトリアルコキシシリルアルキル基、例えばトリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、トリメトキシシリルブチル基、トリエトキシシリルブチル基、トリメトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルエチル基などを含むことができる。別の態様において、アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、1つまたは複数のジメトキシメチルシリルアルキル基、ジエトキシエチルシリルアルキル基、トリメトキシシリルアルキル基、および/またはトリエトキシシリルアルキル基を含むことができる。
【0041】
アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、アルコキシシリルで官能基化されたポリアルキレンポリアミン、例えばジアルコキシアルキルシリルアルキルで官能基化されたポリエチレンポリアミンおよび/またはトリアルコキシシリルアルキルで官能基化されたポリエチレンポリアミンを含むことができる。好適なアルコキシシリルで官能基化されたポリアルキレンポリアミンは、トリメトキシシリルアルキル(例えば、トリメトキシシリルプロピル、トリメトキシシリルエチル、トリメトキシシリルブチルなど)で官能基化されたポリエチレンイミン、トリエトキシシリルアルキル(例えば、トリエトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルエチル、トリエトキシシリルブチルなど)で官能基化されたポリエチレンイミン、ジメトキシメチルシリルアルキル(例えば、ジメトキシメチルシリルプロピル、ジメトキシメチルシリルエチル、ジメトキシメチルシリルブチルなど)で官能基化されたポリエチレンイミン、および/またはジエトキシエチルシリルアルキル(例えば、ジエトキシエチルシリルプロピル、ジエトキシエチルシリルエチル、ジエトキシエチルシリルブチルなど)で官能基化されたポリエチレンイミンを含む。
【0042】
ひとつの態様において、アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、下記式(ブロックまたはランダムポリマーとして)を有する化合物を含み:

式中、xは、少なくとも約10、少なくとも約20、0〜125、約40〜100、および/または約200を超えない整数であり;zは、少なくとも1、少なくとも5、0〜25、約10〜20、および/または約50を超えない整数であり;x+zは、少なくとも2、少なくとも5、約10〜200、約25〜100、および/または約500を超えず;EC1およびEC2は、末端キャップ基であり、これらはアルコキシシリル官能基を含んでよく;EC1およびEC2は、H、トリアルコキシシリルアルキル、またはジアルコキシアルキルシリルアルキルであってもよく;L1は、連結基であり、これは、2〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキレン(例えば、エチレン、プロピレンなど)であってよく;Rは、2〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキレン(例えば、エチレン、プロピレンなど)であってよく;R1は、アルコキシであり;ならびに、R2およびR3は、独立して、1〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルコキシまたはアルキルなどの、アルコキシまたはアルキルであってよい。しかしxおよび/またはzは、任意の適当な数であってよいことは理解されるべきである。同じくひとつの態様において、zは、0であり、ならびにEC1およびEC2の少なくとも1つは、トリアルコキシシリルアルキル(例えば、トリメトキシシリルプロピル)またはジアルコキシアルキルシリルアルキル(例えば、ジメトキシメチルシリルプロピル)であってよい。この態様において、xは、1または2であってよい。
【0043】
別の態様において、アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、下記式(ブロックまたはランダムポリマーとして)を有する化合物を含むことができ:

式中、xは、0〜125、少なくとも約10、少なくとも約20、約40〜100、および/または約200を超えない整数であり;zは、少なくとも1、少なくとも5、0〜25、約10〜20、および/または約50を超えない整数であり;x+zは、少なくとも2、少なくとも5、約10〜200、約25〜100、および/または約500を超えず;EC1およびEC2は、末端キャップ基であり、これはアルコキシシリル官能基を含んでよく;EC1およびEC2は、同じく、H、トリアルコキシシリルアルキル、またはジアルコキシアルキルシリルアルキルであってよく;L1は、連結基であり、これは、2〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキレン(例えば、エチレン、プロピレンなど)であってよく;Rは、2〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキレン(例えば、エチレン、プロピレンなど)であってよく;R1は、アルコキシであり;ならびに、R2およびR3は、独立して、1〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルコキシまたはアルキルなどの、アルコキシまたはアルキルであってよい。しかしxおよび/またはzは、任意の適当な数であってよく;および、R4は、水素、アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであることは理解されるべきである。同じくひとつの態様において、zは、0であり、ならびにEC1およびEC2の少なくとも1つは、トリアルコキシシリルアルキル(例えば、トリメトキシシリルプロピル)またはジアルコキシアルキルシリルアルキル(例えば、ジメトキシメチルシリルプロピル)である。この態様において、xは、1または2であってよい。
【0044】
アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、少なくとも約500g/mol、または好適には少なくとも約1000g/molの平均分子量を有することができる。別の態様において、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンは、約2000〜4000g/molまたは約5000g/molを超えない平均分子量を有することができる。アルコキシシリルで官能基化されたポリアミンは、任意の適当な分子量を有することができることは理解されるべきである。
【0045】
シラノールを末端とするポリシロキサンは、任意の適当なシラノールを末端とするポリシロキサンであってよい。ひとつの態様において、シラノールを末端とするポリシロキサンは、少なくとも約5,000g/molの平均分子量を有する。別の態様において、シラノールを末端とするポリシロキサンは、約10,000g/mol〜100,000g/mol、または好適には約15,000g/mol〜75,000g/molの平均分子量を有する。更に別の態様において、シラノールを末端とするポリシロキサンは、約150,000g/molを超えない平均分子量を有することができる。しかしシラノールを末端とするポリシロキサンは、任意の適当な分子量を有し、本明細書において説明された任意の特定の分子量または分子量範囲に限定されないことは理解されるべきである。
【0046】
シラノールを末端とするポリシロキサンは、アルコキシまたはアセトキシを末端とするポリシロキサンの加水分解により、混合物において生成することができることは理解されるべきである。従って、シラノールを末端とするポリシロキサンは、形成された後、比較的迅速に反応するので、この混合物は、比較的少量のシラノールを末端とするポリシロキサンを含有することができる。ひとつの態様において、シラノールを末端とするポリシロキサンを生成するために使用することができる好適なアルコキシシリルを末端とするポリシロキサンは、下記式(ランダムまたはブロックポリマーとして)を有する化合物を含むことができ:

式中、R6、R7、R8およびR9は、アルキル、例えば1〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキルであり;Aは、アミノ含有ペンダント基であり;nは、0〜約200、少なくとも約10、少なくとも約20、約40〜100、および/または約200を超えない整数であり;mは、0〜約50、少なくとも5、約10〜25、および/または約50を超えない整数であり;n+mは、少なくとも約10、約15〜45、および/または約200を超えない。nおよびmは、任意の適当な数であり、および本明細書に説明された数値または数値範囲に限定されないことは理解されるべきである。
【0047】
ひとつの態様において、上記式のアミノ含有ペンダント基「A」は、下記式を有する化合物を含むことができ:

式中、R10およびR11は、独立して、アルキレン、例えば2〜6個の炭素原子を有する線状または分枝したアルキレン(例えば、エチレンおよび/またはプロピレン)であり;ならびに、yは、正の整数である。更なる態様において、yは、約5〜50または1であってよい。yは、任意の適当な整数であることは理解されなければならない。
【0048】
シラノールを末端とするポリシロキサン(シラノールを末端とするポリシロキサンとして添加されるか、または混合物中で生成されるかのいずれか)は、下記式(ランダムまたはブロックコポリマーのいずれかとして)を有することができ:

式中、R7、R8、およびR9は、独立してアルキルであり;Aは、アミノ含有ペンダント基であり;nは、0〜約6000、少なくとも約50、約100〜1500、約200〜1000、および/または約5000を超えない整数であり;mは、0〜約2000、少なくとも30、約60〜600、約90〜450、および/または約1500を超えない整数であり;および、n+mは、少なくとも約10、少なくとも100、約150〜750、および/または約7500を超えない。nおよびmは、任意の適当な数であってよく、および本明細書に説明された数値または数値範囲に限定されないことは理解されるべきである。ひとつの態様において、nは少なくとも1であり、mは少なくとも1であり、およびシラノールを末端とするポリシロキサンは、ランダムポリマーである。この式に示されたアミノ含有基「A」は、前段に示されたものと同じであってよい。
【0049】
この混合物は、広範な量のアルコキシシリル官能基化されたポリシロキサンを含有することができる。例えばこの混合物は、約5〜35質量%アルコキシシリル官能基化されたポリシロキサン、約8〜25質量%アルコキシシリル官能基化されたポリシロキサン、または好適には10〜15質量%アルコキシシリル官能基化されたポリシロキサンを含有することができる。混合物は、架橋剤および/またはヒュームドシリカのようなその他の物質も含有することができる。架橋剤は、1つまたは複数のアルコキシシラン、例えばアルキルトリアルコキシシランおよび/またはジアルキルジアルコキシシランを含んでよい。
【0050】
この高分子材料は典型的には、殺生物特性(例えば、水生環境中で汚れを生じる生物に対する毒性)および/または汚れ剥離特性を有し、このことはそれを防汚物質として有用にしている。これらの特性は、存在する第四級アンモニウム基および/またはプロトン化されたアンモニウム基から生じ得る。しかしいくつかの初期の物質とは異なり、殺生物特性および/または汚れ剥離特性を提供する基は、高分子材料において共有結合され、このことは、環境への被害を生じ得る、この高分子材料の過度の分解を防止するために役立つ。
【0051】
官能基化されたポリシロキサンは、追加の共有結合された殺生物基、例えばトリクロサンを含んでもよい。ひとつの態様において、第二の殺生物基(例えばトリクロサン)も、エポキシ官能基化された殺生物基を、アミン基と反応することにより、官能基化されたポリシロキサンへ導入することができる。別の態様において、第二の殺生物基は、ポリシロキサンを、エピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)およびトリクロサンと反応することにより、ポリシロキサンへ導入することができる。
【0052】
ひとつの態様において、高分子材料は、既に先に言及された防汚組成物中に含まれてよい。防汚組成物は、船の船体のような汚れを受けやすい表面をコーティングするために使用することができる。この高分子材料の殺生物特性および/または汚れ剥離特性は、船の船体または他の基材の汚れを防止することができる。
【0053】
この防汚組成物および/または高分子材料は、引き続き硬化(例えば湿気硬化)する反応混合物で基材をコーティングすることにより使用することができる。硬化の一部は、防汚組成物が基材上にコーティングされる以前に行うことができ、その結果この混合物の粘度は、コーティング塗布が基材上に残存するものであるようにすることは理解されるべきである。
【0054】
追加の具体的態様
下記例証的態様は、本ポリマー、組成物および方法を例証し、かつ当業者がこれらを作製および使用することを補助するために提示されている。これらの実施例は、いかなる意味においても、それ以外に本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0055】
ひとつの態様において、高分子材料は、ポリアミンを用い、ランダムまたはブロックコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含む。ランダムまたはブロックコポリマーは、下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、1〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
x+y+zは、少なくとも5であり;
nは、0〜50の整数であり;
mは、0〜50の整数であり;
pは、0〜50の整数であり;
Xは、ハライドであり;
L1は、連結基であり;
R1、R2、R3およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R6、 R8、およびR9は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せである。n、m、またはpの少なくとも1つは、0ではない。殺生物基は、トリクロサン部分を含むことができる。
【0056】
このような架橋されたコポリマーにおいて、R4およびR10は、典型的にはメチルである。ポリシロキサンコポリマーは、通常ランダムコポリマーであり、ポリシロキサンコポリマー上にグラフトされているグラフトポリメタクリレート(コ)ポリマー鎖は、典型的にはブロック(コ)ポリマーである。R6、R8、およびR9の少なくとも1つは、典型的には、メトキシエチル基またはポリアルコキシアルキル基のようなアルコキシアルキル基を含む。R6、R8、およびR9の1つまたは複数は、殺生物基を含んでよい。R6、R8およびR9の少なくとも1つは、下記式であってよく:
(F3C)-(CF2)V-L2
式中、vは、1〜25の整数であり;および、L2は、連結基である。L2リンカーは、エチレン基、メチレン基またはそれらの組合せであってよい。Xは、通常Cl、Brまたはそれらの組合せである。ポリアミンは、ジアミン、例えば1,4-ジアミノブタン、ビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン、1,3-ジピリジルプロパン、1,3-ビス(N,N-ジメチルアミノ)-ブタン、またはそれらの組合せであってよい。N,N,N'N",N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミンのようなその他のポリアミンも使用することができる。
【0057】
別の態様において、高分子材料は、ポリアミンを用い、ランダムまたはブロックコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、ここでランダムまたはブロックコポリマーは下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、1〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
x+y+zは、少なくとも5であり;
aは、0または1であり;
bは、0または1であり;
Xは、ハライドであり;
ECは、末端キャップ基であり;
L5およびL3は、連結基であり;
R1、R2、R3、R5およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R6は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;ならびに
R7は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物部分を含む基、汚れ剥離基、粘着防止基、またはそれらの組合せであってよい。
【0058】
R5は、典型的にはメチルであり、およびR7は、殺生物基、例えばトリクロサン部分を含むことができる。L3リンカーは、一般にアルキレン基であり、ここでアルキレン基は好適には、2〜10個の炭素原子を有する。L3-Xは、2-クロロエチル基または3-ブロモプロピル基のような、ハロアルキル基であってよい。L1リンカーは、一般に、下記構造により表されるような基であり:

式中、R9およびR10は、独立して、水素または低級アルキルであり、ならびにmは、2〜6である。この種の高分子材料において、R7基は、下記により表されてよく:

式中、cは、0または1であり、およびアルキレンは、2〜20個の炭素原子を有する。架橋剤として使用されるポリアミンは、ジアミン、例えば1,4-ジアミノブタン、ビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン、1,3-ジピリジルプロパンおよび/または1,3-ビス(N,N-ジメチルアミノ)-ブタンであってよい。ポリアミンは、他のアミン類、例えばN,N,N',N",N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミンも含む。
【0059】
別の態様において、イオネン橋を用い第二ポリマーと架橋された第一のポリマーを含有する防汚物質が提供される。第一のポリマーおよび/または第二のポリマーは、ポリシロキサンポリマーセグメントを含む。第一および第二のポリマーの少なくとも一方は、粘着防止基、汚れ剥離基、殺生物基、またはそれらの混合物で構成される群より選択されたペンダント基を含む。このペンダント基は、第一のポリマー、第二のポリマー、および/またはイオネン橋へカップリングされたフルオロカーボンを含むことができる。
【0060】
更に別の態様において、ポリアミン架橋されたポリシロキサンは、ポリアミン(polymine)を用いコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、ここでコポリマーは下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、1〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
x+y+zは、少なくとも10であり;
nは、1〜50の整数であり;
aは、1、2または3であり;
bは、1〜15の整数であり;
Xは、Clおよび/またはBrであり;
L1は、連結基であり;
R1、R2、R3、およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;ならびに
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基である。
【0061】
実施例
下記実施例は、本発明を例証し、かつ当業者がこれらを作製および使用することを補助するために提示されている。これらの実施例は、いかなる意味においても、それ以外に本発明の範囲を限定することは意図されていない。特に記さない限り、全ての百分率は、質量%である。表1に示された材料を、実施例1-5において使用し、これらは示された供給業者から供給された。
【0062】
【表1】

【0063】
50mMフッ化テトラブチルアンモニウム触媒溶液(以後「触媒A」と記す)は、1.0Mフッ化テトラブチルアンモニウム1.25mLを、25mL容量フラスコに入れ混合しながら、4-メチル-2-ペンタノンで容積を合わせることにより調製した。
【0064】
実施例1
表2に示した配合を有するポリマー性防汚組成物の試料1-10を、下記手順に従い調製した。表2に示した材料の量を、ボルテックスすることにより完全に混合し、改良した24ウェルポリスチレンプレートに沈積させた。試料を、50℃で一晩硬化した。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例2
表2の試料1-6の防汚性能を、防汚組成物の細菌バイオフィルム形成を阻害または最小化する能力を判定することにより、評価した。24ウェルプレートへ注いだこれらの配合に、〜107個細胞/mLで最小栄養増殖培地に再浮遊した細菌の定常期(〜24時間)培養物を接種した。その後プレートを、28℃の培養器中に18時間(サイトファガ・リチカ(C.lytica)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(P. atlantica))または48時間(ハロモナス・パシフィカ(H. pacifica)、H.マリナ(H. marina)、大腸菌(E. coli))配置し、細菌の付着、それに続くコロニー形成を促進した。次にプレートを、脱イオン水1.0mLで3回すすぎ、浮遊型細胞または緩く付着した細胞を除去した。その後コーティング表面上に残存する接着したバイオフィルムの量を、バイオマス指標色素クリスタルバイオレットで染色した。一旦乾燥した後、33質量%氷酢酸0.5mLを添加することにより、クリスタルバイオレット染料をバイオフィルムから抽出し、得られる抽出液を、吸光度600nmで測定した。得られた測定された吸光度値は、コーティング表面に接着したバイオフィルムの量に正比例している。
【0067】
4種の海洋細菌(すなわち、H.マリナ、H.パシフィカ、C.リチカ、およびP.アトランティカ)および1種の医学関連細菌(大腸菌)について行った試験の結果を、図1にまとめた。図1は、Y-軸上にDC 3140対照と比較したバイオフィルム保持の低下率(%)、およびX-軸上に試料番号を示すチャートである。図1に示されたように、試料5および6は、試験した全ての細菌に対し非常に良好な防汚性能を示した。
【0068】
実施例3
表2の試料1-6の機械特性を、示差走査熱量測定(DSC)および動的機械的熱分析(DMTA)を用い、決定した。DSCは、TA Instruments Q1000-0235において、下記パラメータで実行した:加熱−冷却−加熱(5℃/分、-90℃から100℃)。DMTAは、TA Instrument Q800-0295において、単独の片持クランプ(cantilever clamp)(5℃/分、-150℃から20℃)で行った。表3は、DSCおよびDMTAを用い得られた融点、ならびにDMTAを用い得られたガラス転移温度を示している。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例4
対照および表2の試料7-9の防汚性能を、実施例2に説明した方法を用い評価した。しかし本実施例においては、単独の細菌C.リチカのみを使用した。同じくプレートは、28℃で18時間インキュベーションした。表4は、DC 3140対照と比較したバイオフィルム減少の割合を示している。
【0071】
【表4】

【0072】
図2は、クリスタル染色した試料のデジタル画像を示している。図2および表4から、試料9は、DC 3140対照および他の試料と比べた場合に、バイオフィルム増殖および保持を有意に低下したことが、明らかに示されている。図2の最左欄は、各試料に関するアッセイ対照(栄養培地のみ接種)であることには留意しなければならない。
【0073】
実施例5
本実施例において、表2の試料8-10の機械特性を決定した。モジュラス、工学強度、および靭性について、500N負荷細胞を伴うInstron 5542を使用した。ASTM法D412に従い、および試料は、ダイBを用い調製した。表5は、試料8-10の機械特性を示している。
【0074】
【表5】

【0075】
実施例6−グラフトコポリマーの一般的合成戦略の例証
PMHS-コ-PDMS-g-ポリメタクリレート(PMA)エステルの合成
PMHS-コ-PDMS-g-ポリメタクリレートは、下記スキーム1に示したように合成することができる。最初に、PMHS-コ-PDMS(例えば、Gelest, Inc.(11 East Steel Road, Morrisville, PA 19067)から製品番号HMS-501(50〜55質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、10〜15cs、分子量900〜1200)またはHMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs、分子量5000〜7000)で市販されているもの)および臭化アリルイソブチリルを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加した。カルステッド(Karstedt)触媒を、この混合物へ添加し、その温度を90℃に上昇した。反応を、この温度で8〜10時間継続させた。その後反応混合物を冷却し、バルク量の溶媒を蒸発させた。
【0076】

【0077】
このグラフトコポリマーを形成するために、イソブチリル官能基化されたポリシロキサンを、窒素掃流下でシュレンクチューブに添加し、引き続き無水THFを添加した。所望のグラフトポリ(メタ)アクリレートコポリマー側鎖を作製するために必要な適当な(メタ)アクリレートエステルを添加した。臭化銅(I)のような触媒およびN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミンのような対応するリガンドを、この混合物へ添加し、これに、複数回(例えば、3回以上)の凍結−解凍ポンプサイクルを供した。凍結−解凍ポンプサイクルの後、反応混合物の温度を、約60〜90℃に上昇し、重合反応を、約8〜72時間継続させた。重合が完了した後、ポリマーは、メタノールへの沈殿および濾過により回収することができる。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、触媒を除去し、引き続きメタノールに沈殿し、濾過し、乾燥することができる。
【0078】
実施例7
ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)-コ-ポリジメチルシロキサン(PDMS)-g-ポリトリクロサンメタクリレート(PTMA)を、下記スキーム2に示したように合成した。最初に、Gelest, Inc.(11 East Steel Road, Morrisville, PA 19067)から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させ、イソブチリル官能基化されたポリシロキサンを、シュレンクチューブへ窒素掃流下で添加し、引き続き無水THFを添加した。このフラスコへ、触媒である臭化銅、リガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミンおよびメタクリレート官能基化されたトリクロサン19.8gを添加し、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供した。凍結−解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上昇し、重合を48時間継続した。重合の後、ポリマーは、メタノールへの沈殿およびその後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。
【0079】

xが4〜6を変動し、yが10〜15を変動する場合
【0080】
PMHS-コ-PDMS-g-PTMAを使用し、スキーム3に示した様式で、イオネンコーティングを調製した。前記ポリマー1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.03gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で12時間硬化させた。コーティング中のポリマーネットワークの構造を、以下に示した。
【0081】

xが4〜6を変動し、yが10〜15を変動する場合
【0082】
実施例8
PDMS-コ-PMHS-g-ポリヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(PHDFMA)を、下記のように合成した。最初に、Gelest, Inc.から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させた。イソブチリル官能基化されたポリシロキサン20gを、窒素掃流下のシュレンクフラスコ内で無水THFの150mlに溶解した。このフラスコへ、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート7.4mlを添加し、引き続き臭化銅(I)0.32g、およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミン0.46mlを添加した。この混合物に、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供し、その後90℃で8時間重合させた。このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。その数平均分子量は、14000である。
【0083】

ここで、nは10〜20を変動し、およびxは4〜6を変動する。
【0084】
PMHS-コ-PDMS-g-PHDFMAを使用し、イオネンコーティングを調製した。PMHS-コ-PDMS-g-PHDFMAの1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.03gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0085】
実施例9
PDMS-コ-PMHS-g-ポリメトキシエチルメタクリレート(PMEMA)を、下記のように合成した。最初に、Gelest, Inc.から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させた。イソブチリル官能基化されたポリシロキサン20gを、窒素掃流下のシュレンクフラスコ内で無水THFの150mlに溶解した。このフラスコへ、メトキシエチルメタクリレート8.3mlを添加し、引き続き臭化銅(I)0.41g、およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミン0.6mlを添加した。この混合物に、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供し、その後90℃で72時間重合させた。重合後、このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。その数平均分子量は、15500である。
【0086】

ここで、nは10〜20を変動し、およびxは4〜6を変動する。
【0087】
PDMS-コ-PMHS-g-PMEMAを使用し、イオネンコーティングを調製した。PDMS-コ-PMHS-g-PMEMAの1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.05gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0088】
実施例10
PDMS-コ-PMHS-g-PMEMA-b-PTMAを、下記のように合成した。最初に、Gelest, Inc.から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させた。イソブチリル官能基化されたポリシロキサン20gを、窒素掃流下のシュレンクフラスコ内で無水THFの150mlに溶解した。このフラスコへ、メトキシエチルメタクリレート6.4mlを添加し、引き続き臭化銅(I)0.32g、およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミン0.46mlを添加した。この混合物に、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供し、その後90℃で72時間重合させた。72時間後、メタクリレート官能基化されたトリクロサン(殺生物剤)15.7gを、窒素掃流下でこの反応混合物へ添加し、重合を90℃で更に72時間継続した。重合後、このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。その数平均分子量は、21000である。
【0089】

ここで、nは10〜20を変動し、mは15〜20を変動し、およびxは4〜6を変動する。
【0090】
PDMS-コ-PMHS-g-PMEMA-b-PTMAを使用し、イオネンコーティングを調製した。PDMS-コ-PMHS-g-PMEMA-b-PTMAの1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.03gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0091】
実施例11
PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA-b-PTMAを、下記のように合成した。最初に、Gelest, Inc.から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させた。イソブチリル官能基化されたポリシロキサン20gを、窒素掃流下のシュレンクフラスコ内で無水THFの150mlに溶解した。このフラスコへ、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート7.4mlを添加し、引き続き臭化銅(I)0.32g、およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミン0.46mlを添加した。この混合物に、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供し、その後90℃で8時間重合させた。8時間後、メタクリレート官能基化されたトリクロサン(殺生物剤)15.7gを、窒素掃流下でこの反応混合物へ添加し、重合を90℃で更に72時間継続した。重合後、このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、銅触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。その数平均分子量は、20000である。
【0092】

ここで、nは10〜20を変動し、mは15〜20を変動し、およびxは4〜6を変動する。
【0093】
PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA-b-PTMAを使用し、イオネンコーティングを調製した。PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA-b-PTMAの1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.06gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0094】
実施例12
PDMS-コ-PMHS-g-PMEMA-b-PHDFMAを、下記のように合成した。最初に、Gelest, Inc.から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させた。イソブチリル官能基化されたポリシロキサン10gを、窒素掃流下のシュレンクフラスコ内で無水THFの100mlに溶解した。このフラスコへ、メトキシエチルメタクリレート3.2mlを添加し、引き続き臭化銅(I)0.08g、およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミン0.11mlを添加した。この混合物に、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供し、その後90℃で72時間重合させた。72時間後、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート3.7mlを、窒素掃流下でこの反応混合物へ添加し、重合を90℃で更に24時間継続した。重合後、このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、銅触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。その数平均分子量は、21000である。
【0095】

ここで、nは10〜20を変動し、mは10〜15を変動し、およびxは4〜6を変動する。
【0096】
PDMS-コ-PMHS-g-PMEMA-b-PHDFMAを使用し、イオネンコーティングを調製した。PDMS-コ-PMHS-g-PMEMA-b-PHDFMAの1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.05gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0097】
実施例13
PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA-b-PMEMAを、下記のように合成した。最初に、Gelest, Inc.から製品番号HMS-082(7〜8質量%メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン末端、110〜150cs)で入手できるPMHS-コ-PDMSの20gおよび臭化アリルイソブチリル4gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加し、ならびにこの混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させた。イソブチリル官能基化されたポリシロキサン10gを、窒素掃流下のシュレンクフラスコ内で無水THFの100mlに溶解した。このフラスコへ、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート3.7mlを添加し、引き続き臭化銅(I)0.08g、およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミン0.11mlを添加した。この混合物に、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供し、その後90℃で8時間重合させた。8時間後、メトキシエチルメタクリレート3.2mlを、窒素掃流下でこの反応混合物へ添加し、重合を90℃で更に72時間継続した。重合後、このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、銅触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。その数平均分子量は、21000である。
【0098】

ここで、nは15〜20を変動し、mは10〜15を変動し、およびxは4〜6を変動する。
【0099】
PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA-b-PMEMAを使用し、イオネンコーティングを調製した。PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA-b-PMEMAの1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.05gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0100】
実施例14
ヒドリドを末端とするポリジメチルシロキサン(PDMS)10gおよび臭化アリルイソブチリル0.5gを、窒素掃流下のフラスコ内の無水トルエンに添加した。この混合物へ、カルステッド触媒を添加した。その温度を90℃に上昇し、反応を8時間継続した。反応後、溶媒を蒸発させ、イソブチリル官能基化されたPDMSを、窒素掃流下のシュレンクチューブへ添加し、引き続き無水THFを添加した。アクリレート官能基化された1,3ジクロロプロパノール8gを、触媒の臭化銅およびリガンドN,N,N',N',N"-ペンタメチル-ジエチレントリアミンと、フラスコ内で結合させ、3回凍結−解凍ポンプサイクルを供した。凍結−解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上昇し、重合を48時間継続した。重合後、このポリマーを、メタノールへの沈殿、その後の濾過により回収した。このポリマーを、トルエン中に溶解し、中性アルミナカラムを通し、触媒を除去し、メタノールに沈殿し、濾過し、乾燥した。
【0101】

ここで、nは20〜30を変動し、およびmは10〜15を変動する。
【0102】
このジハライド官能基化されたポリマーを使用し、イオネンコーティングを調製した。ジハライド官能基化されたポリマー1gおよびビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシラン0.1gを、トルエンに溶解し、マイクロタイタープレートウェルに沈積させた。イオネンポリマーを、周囲温度で8時間硬化し、更に50℃で24時間硬化させた。
【0103】
実施例15
バイオアッセイを、Katherine Merritt、Anita GaindおよびJames M. Andersonの論文「Detection of Bacterial Adherence on Biomedical Polymers」Journal of Biomedical Material Research, 1998, 39, 415-422に説明された手順に従い実行し、この論文はその全体が本明細書に参照として組入れられている。一般にこの手順は、色素溶出技術を使用し、生物のポリマーへの接着を測定する。この技術は、生物(例えば細菌)のコーティング表面上での増殖、クリスタルバイオレットによる染色、エタノールによる色素の溶出、ならびに96-ウェルプレートおよび540nmフィルターを備える酵素免疫吸着アッセイリーダーを用いる溶液中の光学濃度の測定が関与している。
【0104】
図3について、この写真は、クリスタルバイオレットで染色後の多くのコーティングを示している。これらの試験で使用した生物は、細菌ハロモナス・パシフィカである。一般に、より暗い染色は、より明るい染色よりも、より多くの細菌が特定のコーティングに接着したことを示している。
【0105】
一番上を横切る試料列は、その中に配置した生物を有さない対照試料を表している。左側の2個の垂直列は、Dow CorningによりDC 3140シリコン接着剤として販売されている市販のコーティングを試験するために使用した。中央の2個の列は、前記実施例8に従い調製したイオネンコーティングを試験するために使用した。右側の2個の垂直列は、ポリメチルメタクリレートを試験するために使用した。図3に示されたように、前記実施例8に従い調製したコーティングは、他の2種の試験したコーティングよりも極めて優れていた。
【0106】
図4に示したコーティングは、細菌ハロモナス・パシフィカを使用し、この方法に従い試験した。各コーティングに関して、溶出した色素液の吸光度を測定し、結果を図4に示した。一般に、最低の光吸光を示すコーティングは、生物による接着に最も抵抗性があるコーティングである。
【0107】
これらのコーティングは、以下である:
Intersleek+Tieコーティング=Intersleek 425、International Paint Ltd.から入手可能
PMMA=ポリメチルメタクリレート
DC 3140=シリコン接着剤、Dow Corningから入手可能
HMS-IN=前記実施例8に従い調製したコーティング
Ref=PDMS
65=PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA、Mn=25000、THF溶媒中ジビニルシロキサンで架橋
79=PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA、Mn=12000、THF溶媒中ジビニルシロキサンで架橋
80=PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA、Mn=15000、THF溶媒中ジビニルシロキサンで架橋
81=PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA、Mn=20000、THF溶媒中ジビニルシロキサンで架橋
81-F=PDMS-コ-PMHS-g-PHDFMA、Mn=20000、フッ素化された溶媒中ジビニルシロキサンで架橋
【0108】
図4は、その他のコーティングよりもより大きい程度コーティング上の生物の増殖および/または接着を阻害するイオネンコーティングを示す。
【0109】
図5は、図3に示されたものと同じコーティングを、サイトファガ・リチカ細菌を使用して試験した、別の写真を示す。サイトファガ・リチカは、先行するコーティング上にマクロ汚れを誘導することがわかっている。図5も、前記実施例8に従い調製されたコーティングは、コーティングの表面上の生物の増殖および/または接着を阻害したことを示している。
【0110】
本発明は、様々な特定かつ具体的な態様および技術を参照し説明されている。しかし、本発明の精神および範囲内である限りは、多くの変更および修正をおこなうことができることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、様々な防汚組成物のバイオフィルム保持の低下率(%)を、DC 3140対照と比較して示すチャートである。
【図2】図2は、表2の試料1由来の高分子材料の表面の走査型電子顕微鏡画像である。
【図3】図3は、接着したハロモナス・パシフィカ菌を示すために、クリスタルバイオレットで染色した後の多くのコーティングの写真である。
【図4】図4は、様々なコーティングの汚れ抵抗特性を示すチャートである。
【図5】図5は、接着したサイトファガ・リチカ菌を示すために、クリスタルバイオレットで染色した後の多くのコーティングの別の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンおよび/またはその塩を含有する高分子材料を含む防汚コーティングを、その表面に有する基材。
【請求項2】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、ポリアルキレンポリアミンサブユニットを含み、これが平均分子量少なくとも約500g/molを有する、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項3】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンおよびシラノールを末端とするポリシロキサンを含有する混合物を反応させることにより調製される、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項4】
高分子材料が、シラノールを末端とするポリシロキサン;および、下記式を有するポリアルキレンポリアミンを含有する混合物を反応させることにより調製され:

式中、xは、0〜125の整数であり;
zは、0〜25の整数であり;
x+zは、少なくとも3であり;
EC1およびEC2は、末端キャップ基であり;
L1は、連結基であり;
Rは、アルキレンであり;
R1は、アルコキシであり;
R2およびR3は、独立してアルコキシまたはアルキルである、請求項3記載のコーティングされた基材。
【請求項5】
Rは、エチレンまたはプロピレンであり;R1およびR2は、メトキシであり;EC1およびEC2の少なくとも1つは、-SiR1R2R3であり;ならびに、ポリアルキレンポリアミンは、少なくとも約500g/molの平均分子量を有する、請求項4記載のコーティングされた基材。
【請求項6】
シラノールを末端とするポリシロキサンが、下記式を有し:

式中、R7、R8およびR9は、独立してアルキルであり;
Aは、アミノ含有ペンダント基であり;
nは、0〜5000であり;
mは、0〜2000であり;ならびに
n+mは、少なくとも10である、請求項3記載のコーティングされた基材。
【請求項7】
シラノールを末端とするポリシロキサンが、1つまたは複数の共有結合した、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基を含み;R7、R8、およびR9がメチルであり;ならびに、シラノールを末端とするポリシロキサンがランダムコポリマーである、請求項6記載の防汚組成物。
【請求項8】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、ポリアミンを用いコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーが下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、1〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
x+y+zは、少なくとも10であり;
nは、1〜50の整数であり;
aは、1、2または3であり;
bは、1〜15の整数であり;
Xは、Clおよび/またはBrであり;
L1は、連結基であり;
R1、R2、R3およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;ならびに
コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーである、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項9】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、ポリアミンを用いコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーが下記式を有し:

式中、xは、2〜100の整数であり;
yは、1〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
x+y+zは、少なくとも5であり;
aは、0または1であり;
bは、0または1であり;
Xは、ハライドであり;
ECは、末端キャップ基であり;
L5およびL3は、連結基であり;
R1、R2、R3、R5およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R6は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;および
R7は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物部分を含む基、汚れ剥離基、粘着防止基(texturizing group)、またはそれらの組合せである、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項10】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、ポリアミンを用いコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーが下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、0〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
tは、0〜100の整数であり;
uは、0〜100の整数であり;
x+y+z+t+uは、少なくとも5であり;
u、xおよびzの少なくとも1つは、0ではなく;
nは、0〜50の整数であり;
mは、0〜50の整数であり;
pは、0〜50の整数であり;
aは、0〜50の整数であり;
bは、0〜50の整数であり;
cは、0〜50の整数であり;
dは、0〜50の整数であり;
eは、0〜50の整数であり;
fは、0〜50の整数であり;
n、m、p、a、b、c、d、eおよびfの少なくとも1つは、0ではなく;
Xは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
Yは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
Zは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
L1、L2、およびL3は、連結基であり;
R1、R2、R3およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R6、R8、およびR9は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せである 、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項11】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、ポリアミンを用いコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーが下記式を有し:

x1は、0〜100の整数であり;
y1は、0〜100の整数であり;
z1は、0〜100の整数であり;
gは、0または1であり;
hは、0または1であり;
x1、y1またはz1の少なくとも1つは、0ではなく;
Qは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
L4およびL5は、連結基であり;
R11およびR12は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルもしくはフェニルまたは架橋基であり;
R13は、Hおよび/またはC1-C10アルキルであり;
R11およびR12は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せである、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項12】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンが、ポリアミンを用いコポリマーを架橋することにより調製される架橋されたコポリマーを含み、コポリマーが下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、1〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
x+y+zは、少なくとも5であり;
nは、0〜50の整数であり;
mは、0〜50の整数であり;
pは、0〜50の整数であり;
Xは、ハライドであり;
L1は、連結基であり;
R1、R2、R3およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R6、R8、およびR9は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せである、請求項1記載のコーティングされた基材。
【請求項13】
mが0であり;pが0であり;R1、R2、R3、R5およびR10が、メチルであり;R4が、水素またはメチルであり;R7が、水素またはメチルであり;ならびに、R6が式

で表される基を含み、ならびにポリアミンが、ビス(ジメチルアミノ)-ジメチルシランを含む、請求項12記載のコーティングされた基材。
【請求項14】
ポリアミン架橋剤およびポリシロキサンを含有する混合物を、基材へ塗布する工程を含み、ポリシロキサンが、アミノ基と反応させることが可能である官能基を含む、基材をコーティングする方法。
【請求項15】
混合物が、アルコキシシリル官能基化されたポリアミンおよびシラノールを末端とするポリシロキサンを含有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ポリアミンを用いコポリマーを架橋することにより調製されるポリアミン架橋されたポリシロキサンであって、コポリマーが下記式を有し:

式中、xは、0〜100の整数であり;
yは、0〜100の整数であり;
zは、0〜100の整数であり;
tは、0〜100の整数であり;
uは、0〜100の整数であり;
x+y+z+t+uは、少なくとも5であり;
u、xおよびzの少なくとも1つは、0ではなく;
nは、0〜50の整数であり;
mは、0〜50の整数であり;
pは、0〜50の整数であり;
aは、0〜50の整数であり;
bは、0〜50の整数であり;
cは、0〜50の整数であり;
dは、0〜50の整数であり;
eは、0〜50の整数であり;
fは、0〜50の整数であり;
n、m、p、a、b、c、d、eおよびfの少なくとも1つは、0ではなく;
Xは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
Yは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
Zは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
L1、L2、およびL3は、連結基であり;
R1、R2、R3、およびR10は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R7は、水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、または架橋基であり;
R6、R8、およびR9は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せである、ポリアミン架橋されたポリシロキサン。
【請求項17】
ポリアミノ官能基化された材料を用いコポリマーを架橋することにより調製される、ポリアミン架橋されたポリシロキサンであり、コポリマーが下記式を有し:

x1は、0〜100の整数であり;
y1は、0〜100の整数であり;
z1は、0〜100の整数であり;
gは、0または1であり;
hは、0または1であり;
x1、y1またはz1の少なくとも1つは、0ではなく;
Qは、ハライドまたは末端キャップ基であり;
L4およびL5は、連結基であり;
R11およびR12は、独立して、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R5は、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルもしくはフェニルまたは架橋基であり;
R13は、Hおよび/またはC1-C10アルキルであり;
R11およびR12は、独立して、水生環境において汚れを生じる生物に対し毒性がある殺生物基;汚れ剥離基;粘着防止基;または、それらの組合せである、ポリアミン架橋されたポリシロキサン。
【請求項18】
アルコキシシリル官能基化されたポリアミンおよびシラノールを末端とするポリシロキサンを含有する混合物を反応させることにより調製され、少なくとも約500g/molの分子量を有するポリアルキレンポリアミンサブユニットを含む、高分子材料。
【請求項19】
アルコキシシリル官能基化されたポリアミンが、下記式により表され:

式中、xは、0〜125の整数であり;
zは、0〜25の整数であり;
x+zは、少なくとも3であり;
EC1およびEC2は、末端キャップ基であり;
L1は、連結基であり;
Rは、アルキレンであり;
R1は、アルコキシであり;
R2およびR3は、独立して、アルコキシまたはアルキルであり;ならびに
シラノールを末端とするポリシロキサンは、下記式により表され:

式中、R7、R8、およびR9は、独立して、アルキルであり;
Aは、アミノ含有ペンダント基であり;
nは、0〜5000であり;
mは、0〜2000であり;ならびに
n+mは、少なくとも10である、請求項18記載の高分子材料。
【請求項20】
ポリアミン架橋されたポリシロキサンおよび/またはそれらの塩を含有する、抗菌ポリマーコーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−543602(P2008−543602A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511209(P2008−511209)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017550
【国際公開番号】WO2006/121937
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507342249)エヌディーエスユー リサーチ ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】