説明

ポリアリルオキシ化合物の製造方法及びポリグリシジルオキシ化合物の製造方法

【課題】塩素の含有量が極めて少なく、電子材料原料として有用なポリグリシジルオキシ化合物を製造する方法、及びその製造原料として有用な中間体である、塩素の含有量が極めて少ない精製ポリアリルオキシ化合物を、高価で分離が困難な触媒を使用せずに安価に製造できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物と、粗アリルクロライドとを反応させて、少なくとも2個のアリルオキシ基を有するポリアリルオキシ化合物を主成分とする精製ポリアリルオキシ化合物を得る工程を含むポリアリルオキシ化合物の製造方法において、粗アリルクロライド中の塩素原子を2個含む分子量152の化合物の含有量と、塩素原子を3個含む分子量228の化合物の含有量の和が0.005重量%以下であるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高い信頼性が要求される電気・電子部品分野、特に半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ配線板、ソルダーレジスト等の原料として有用な高純度なポリグリシジルオキシ化合物の製造方法及びその中間体であるポリアリルオキシ化合物物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族や環状脂肪族の2個以上の水酸基にグリシドールが縮合したポリグリシジルオキシ化合物、例えば、フェノールやナフトール類、ビスフェノールAにグリシジルオキシ基が縮合した化合物は、耐熱性、接着性、耐薬品性、電気特性、機械特性等に優れるため、硬化剤により架橋硬化させ接着剤、成型材、封止剤、塗料等の多くの用途を有する工業材料である。中でも、電子材料用途、例えば半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ配線板、ソルダーレジストなどの分野では、その高集積化に伴い上記ポリグリシジルオキシ化合物の高純度化が要求されている。また、低環境負荷の観点からも、電子材料用途に限らず、広い用途分野で低塩素化が望まれている。
【0003】
通常、これらのポリグリシジルオキシ化合物は、フェノール、ナフトール、ビスフェノール等の活性水酸基とエピクロロヒドリンを、塩基存在下で反応させて製造されているが、エピクロルヒドリンに由来する塩素原子が化合物に化学的に結合した形として不純物として混入することが避けがたい。このうち1,2−クロロヒドリン基の形で存在する不純物は塩基処理にてかなりのレベルまで低減されるが、それ以外のものは、含塩素有機化合物として残存する。
【0004】
一般的に、エピクロルヒドリンを用いたこの方法でポリグリシジルオキシ化合物を合成すると、ポリグリシジルオキシ化合物が塩素を1000ppm以上含んでおり、この様なポリグリシジルオキシ化合物(エポキシモノマー)を原料として用いたエポキシ樹脂をIC封止材に使用した場合には、高集積化による回路の微細化により配線の腐食、断線がおきやすくなるという問題があった。
【0005】
かかる問題に対し、含有塩素量の少ないポリグリシジルオキシ化合物を合成する方法として、フェノール、ナフトールやアルコール類とエピクロルヒドリンを反応させる際に、非プロトン性極性溶媒を用いる方法や余剰のエピクロルヒドリンを共沸留去する方法等が提案されている(例えば、特許文献1、又は特許文献2)。
また、エポキシ樹脂を、ケトン類若しくは芳香族炭化水素類、一価アルコール及び相関移動触媒の存在下、アルカリ金属水酸化物で処理することが提案されている(例えば特許文献3)。
【0006】
一方、含塩素化合物を副生せずにエポキシ化合物を製造する方法として、遷移金属触媒、錯化剤及び塩基の存在下で、ヒドロキシ基含有化合物をアリルカルボキシレート基含有化合物と反応させてアリルオキシ化合物を製造し、更にエポキシ化する方法が提案されている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−31517号公報
【特許文献2】特開平1−66224号公報
【特許文献3】特開平10−36484号公報
【特許文献4】特表平10−511721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エピクロルヒドリンを原料として使用する上記の技術では得られるグリシジルオキシ化合物(エポキシ化合物)の塩素含有量は通常200〜400重量ppm程度であり、依然として多量の塩素を含有するため、近年の電子材料の更なる高集積化に伴い、更なる高純度化が望まれる。
又、エポキシ樹脂を相関移動触媒の存在下、アルカリ金属水酸化物で処理する特許文献
3でも、全塩素濃度は280重量ppmに留まる。
【0009】
一方、アリルカルボキシレート基含有化合物を使用する特許文献4の方法では、塩素を含有する反応剤を使用していないため、塩素含有量の少ないエポキシ化合物が得られるが、高価な触媒を必要としたり、触媒の分離が煩雑であったり、触媒を完全に除去することが困難な結果、アリルオキシ化合物中に触媒が微量に残存し、次の酸化(エポキシ化)工程で酸化剤を分解することが懸念される。
【0010】
即ち、本発明は、塩素の含有量が極めて少なく、例えば電子材料原料として有用なポリグリシジルオキシ化合物を製造する方法を提供することを課題とする。又、本発明は、上記ポリグリシジルオキシ化合物の製造原料として有用な中間体である、塩素の含有量が極めて少ないポリアリルオキシ化合物を、高価で分離が困難な触媒を使用せずに安価に製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる状況において、本発明者らは、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水素添加された基、脂肪族基のいずれかの基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物を原料とし、反応剤としてアリルクロライドを用いて塩素の含有量の少ない精製ポリアリルオキシ化合物を製造する方法を検討した。しかしこの方法によって得られた精製ポリアリルオキシ化合物を用いた際、十分な精製処理をおこない、主要な不純物を十分に除去しても、塩素含有量を下げることが困難であることがわかった。
【0012】
鋭意検討の結果、本発明者らは、反応剤としてアリルクロライドを用いてポリアリルオキシ化合物を製造する際に、高度に精製されたアリルクロライドを用いることにより、目的の純度の精製ポリアリルオキシ化合物を得ることができることを見出した。具体的には、反応に用いるアリルクロライド中に含まれる微少な特定の不純物が存在することにより、精製ポリアリルオキシ化合物、又は精製ポリグリシジルオキシ化合物の塩素含有量に影響を与えることを見出し、この特定の不純物を除去した上でアリル化反応を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基のいずれかの基に少なくとも2個の水酸基を有する化合物に、アリルクロライドを反応させてポリアリルオキシ化合物を主成分とする精製ポリアリルオキシ化合物を得る工程を含むポリアリルオキシ化合物の製造方法であって、原料として、粗アリルクロライドの中でも特定の不純物の含有量が少ないものを用いることにより、好ましくは、更に反応溶媒を選択すること、更に、得られた化合物を精製することにより、塩素の含有量が極めて少ない高純度のポリアリルオキシ化合物を得ることが可能であること、更に、該高純度の精製ポリアリルオキシ化合物を非塩素系の酸化剤で酸化することにより、塩素の含有量が極めて少ない高純度の精製ポリグリシジルオキシ化合物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有する環状炭化水素系化合物と、粗アリルクロライドとを反応させて、少なくとも2個のアリルオキシ基を有するポリアリルオキシ化合物を主成分とする精製ポリアリルオキシ化合物を得る工程を含むポリアリルオキシ化合物の製造方法であって、粗アリルクロライド中の塩素原子を2個含む分子量152の化合物と、塩素原子を3個含む分子量228の化合物含有量の和が0.005重量%以下であることを特徴とするポリアリル化合物の製造方法、に存する。
【0015】
他の要旨は、上記方法で得られた精製ポリアリルオキシ化合物を、非塩素系酸化剤を用いて酸化することを特徴とする、芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基に少なくとも2個のグリシジルオキシ基を有するポリグリシジルオキシ化合物の製造方法、に存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、塩素の含有量が極めて少ない高純度の精製ポリアリルオキシ化合物を、高価かつ完全分離が困難な触媒を使用することなく製造することが可能である。又、本発明の方法で得られた高純度の精製ポリアリルオキシ化合物を非ハロゲン系酸化剤を用いて酸化することにより、塩素の含有量が少ない極めて高純度の精製ポリグリシジルオキシ化合物を製造することが可能であるとの効果を有する。
【0017】
尚、本発明の方法で得られた精製ポリグリシジルオキシ化合物は、塩素の含有量が極めて少ないため、これを半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ配線板、ソルダーレジスト等の原料として使用した場合、得られる電子部品中へ塩素の混入を抑制することができ、その結果、更に高精度が要求される配線等における腐食や断線の問題を解消することができるとの効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、以下に記載する説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明は請求項に記載の要旨を超えない限り、これらの内容に特定されるものではない。
本発明のポリアリルオキシ化合物の製造方法では、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物と、粗アリルクロライドとを反応させて、少なくとも2個のアリルオキシ基を有する環状炭化水素系化合物を製造する際、用いる粗アリルクロライド中の塩素原子を2個含む分子量152の化合物の含有量と、塩素原子を3個含む分子量228の化合物の含有量の和が0.005重量%以下とすることにより、塩素含有量の少ないポリアリルオキシ化合物を得る。
【0019】
<1.原料:芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物>
本発明における芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有する化合物(以下、「ポリヒドロキシ化合物」と略することがある)は、これをアリルクロライドと反応させてポリアリルオキシ化合物とし、更に酸化することでポリグリシジルオキシ化合物とするが、ポリグリシジルオキシ化合物は、グリシジルオキシ基の反応性に起因して、各種電子材料用途に使用できる。
【0020】
この観点から、ポリヒドロキシ化合物は、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物である限り、塩素原子以外の任意の置換基を有していてもよく、特に限定されるものではない。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が挙げられ、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基としては、上記芳香族炭化水素基の一部が水添された不飽和環式炭化水素基及び飽和の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0021】
脂肪族基としては、対応するポリヒドロキシ化合物が、脂肪族ジオール、脂肪族多価アルコールとなるものであれば特に制限されるものではなく、直鎖状、分岐状、環状構造のいずれでもよく、水酸基以外に、アリル化反応に影響を与えない置換基を有していてもよい。具体的には炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数2〜12の脂肪族ポリオール、酸素、窒素等のヘテロ原子を環の構成原子として有していてもよい炭素数3〜20の環状構造を有するジオール、また一部の水酸基が保護されていてもよい糖類や、アルカノールアミン類等が挙げられる。
【0022】
芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物としては、より具体的には、下記一般式[I]〜[III]で表される化合物が挙げられる。
なお、脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物である場合は、下記一般式[I]が好ましい。
【0023】

(A)−(OR)m1 [I]
(式中、AはOR基以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は脂肪族基を表し、Rは水素原子を表し、m1は2以上の整数を表す。)

(RO)m2−(A21)−[X−(A22) ] n2−X−(A21)−(OR)m2 [II]

(式中、A21はOR基以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基を表し、A22は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基を表し、Xは、直接結合又は置換基を有していてもよい2価の連結基を表し、Rは水素原子を表し、m2は1以上の整数を表し、n2は0又は1以上の整数を表すが、Xを介して連結する隣接するA21とA22、又は複数のA22は、その置換基が更に連結して環を形成していてもよい。)

H− [(A(OR)m3)―X]n3−H [III]

(式中、Aは、OR基以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基を表し、Xは、直接結合、置換基を有していてもよい。アルキレン基又は−R31−フェニレン−R32−を表し、ここでR31及びR32は、夫々独立にアルキレン基を表し、Rは水素原子を表し、m3は1以上の整数を表し、n3は2以上の整数を表す。)
上記一般式に[I]において、Rは水素原子を表す。Aで表される芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基としては、フェニル基、ナフチル環、アントラセニル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びその少なくともその一部が水添された環基(シクロヘキシル基等)が挙げられ、芳香族炭化水素基及びその少なくともその一部が水添された基の炭素数は、好ましくは6〜10、更に好ましくは6である。
【0024】
脂肪族基としては、対応するポリヒドロキシ化合物、即ちRが水素原子であるものがジエチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリビニルアルコール等の直鎖脂肪酸多価アルコール;ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、2、2−ジメチルプロパンジオール等の分岐置換基を有する直鎖多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のエーテル基を分子鎖に有する多価アルコール;エタンジオールカーボネート、ブタンジオールカーボネート、エタンジオールポリカーボネート、ブタンジオールポリカーボネート等のカーボネートポリオール、シクロペンタンジオール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタンジエタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、アダマンタンジオール等の脂環式ジオール類;エリスリタン、イソソルビド、1,4−ジオキサン−2,5−ジメタノール等の環構造にエーテル基を有する多価アルコール;一部の水酸基が保護されていてもよいグリコシド、マンニトール、ソルビトール等の糖類;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;が挙げられる。
【0025】
で表される芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は脂肪族基が有していてもよいOR基以外の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等の炭素数1〜4のアルキルオキシ基;ニトロ基等が挙げられる。OR基以外の置換基を有する場合、その数の上限は、Aで表される基が有しうる置換基数の上限であるが、通常4以下、好ましく3以下である。
【0026】
m1は2以上の整数を表し、Aで表される環基上の置換可能な水素原子の数によってその上限は決まるが、通常4以下であり、特に好ましくは2である。
一般式[I]で表される化合物の具体例としては、一般式(1)で示すものが挙げられ、ベンゼン環上には置換基を有していても良い。また、芳香族環の一部あるいは全部が還元された核水添体でも良い。また脂肪族のポリヒドロキシ化合物としては、イソソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,3−ノルボルナンジオールが挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
上記一般式[II]において、Rは水素原子を表す。
21で表される2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基としては、一般式に[I]におけるAと同様の基に由来する2価の基が挙げられ、その炭素数も同様である。A21で表される基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等の炭素数1〜4のアルキルオキシ基;ニトロ基等が挙げられ、中でもアルキル基が好ましい。
【0029】
21がOR基以外の置換基を有する場合、その数の上限は、A21で表される基が有し得る置換基数の上限であるが、通常4以下、好ましく3以下である。A22で表される置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基としては、A21に記載のものと同様のものが挙げられる。尚、A22で表される基は、置換基として、OR基を有していても、有していなくてもよく、OR基を有する場合、その数は、通常2以下、好ましくは1である。
【0030】
は、直接結合又は置換基を有していてもよい2価の連結基を表し、2価の連結基としては、メチレン基、ジメチルメチレン基、ジトリフルオロメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、2,2−プロピレン基、―C(CH)=CH−、および環状構造で置換されたメチレン基、以下の一般式(2)で示す化合物等の炭素数1〜8、好ましくは1〜6の飽和又は不飽和の2価のアルキレン基;エチレン基等の炭素数2〜6、好ましくは2〜4、特に好ましくは2〜3のアルキリデン基;−CO-;−O−;−S−;−SO2−;−SO−;−COO−;−C=C−;、−C−O−C−;−CH(CN)−;−N=CH−フェニレン−CH=N−等のフェニルジイミノ基;−CO−O―フェニレン−−O―CO−等のフェニルジオキシカルボニル基;テトラヒドロジシクロペンタジエン等の架橋縮合環構造を有する炭素数7〜10の脂環式炭化水素等が挙げられる。尚、2価の連結基は任意の置換基を有していても良い。好ましい置換基としては、一般式[II]における(RO)m2−(A21)に相当する基(但し、R、A21、m2及びその好ましい基は、一般式[II]における基と同じ)が挙げられ、かかる置換基は、Xがアルキレン基である場合の置換基であるのが好ましい。
【0031】
上記の中でも、直接結合、炭素数1〜4の2価アルキレン基(但し、少なくとも1個の
水酸基で置換されたアリール基で置換されていてもよく、アリール基の炭素数は、好まし
くは6〜10である)、及び架橋縮合環構造を有する炭素数7〜10の脂環式炭化水素が
好ましく、特に、直接結合、炭素数1〜2のアルキレン基(但し、少なくとも1個の水酸
基で置換されたアリール基で置換されていてもよく、アリール基の炭素数は、好ましくは
6〜8である)が好ましい。
【0032】
【化2】

【0033】
m2は1以上の整数を表し、その上限はA21で表される基の置換可能な水素原子の数によって決まるが、通常4以下であり、好ましくは2以下である。n2は0又は1以上の整数を表すが、その上限は、通常、5であり、好ましくは2である。尚、Xを介して連結する隣接するA21とA22、又は複数のA22は、その置換基が結合部位のオルト位で更に連結して環を形成していてもよく、形成される環構造としては、5〜6員の炭化水素環又は酸素原子を介して連結する6員環等が挙げられる。
【0034】
一般式[II]で表される化合物の具体例としては、下記一般式(3)で示されるもの、およびこれらの芳香族環の一部あるいは全部が還元された核水添体が挙げられる。また、ベンゼン環上には置換基を有していても良い。
【0035】
【化3】

【0036】
上記一般式[III]において、Rは水素原子を表す。Aで表されるOR基以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基としては、一般式に(I)におけるAと同様の基に由来する2価の基が挙げられ、その炭素数も同様である。
【0037】
は、直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基又は−R31−フェニレン−R32−を表し、ここでR31及びR32は、夫々独立にアルキレン基を表す。Xで表される置換基を有していてもよいアルキレン基としては、一般式(II)におけるXと同様のものが挙げられるが、中でも炭素数1〜4、好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基が挙げられ、−R31−フェニレン−R32−としては、R31及びR32が独立に炭素数1〜4、好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である基が挙げられる。
【0038】
m3は1以上の整数を表し、その上限はAで表される基の置換可能な水素原子の数によって決まるが、通常4以下であり、好ましくは2以下である。n3は2以上の整数を表すが、その上限は、通常、20であり、好ましくは10である。
一般式[III]で表される化合物の具体例としては、以下の一般式(4)で示されるものおよびこれらの芳香族環の一部あるいは全部が還元された核水添体が挙げられる。また、ベンゼン環上には置換基を有していても良い。
【0039】
【化4】

【0040】
<2.原料:粗アリルクロライド>
本発明の製造方法に用いられる粗アリルクロライドは、粗アリルクロライド中に含まれる塩素を2個含む分子量152の化合物の含有量と、塩素を3個含む分子量228の化合物の含有量との和が0.005重量%以下であることが必要である。
【0041】
前記上限値超過では、反応の結果得られる精製ポリアリルオキシ化合物中の塩素含有量を減らすことが困難になるためである。これらの不純物は通常、粗アリルクロライド中の含有量としては微量であるが、精製ポリアリルオキシ化合物、更には精製ポリグリシジルオキシ化合物中の塩素含有量を低減させるためには、反応剤として用いるアリルクロライドの段階での含有量を低減させておくことが必要である。
【0042】
これらの不純物が存在すると、引き続く工程で精製をしても塩素含有量を低減した高純度の精製ポリアリルオキシ化合物、又は精製ポリグリシジルオキシ化合物を得ることができない。
粗アリルクロライド中の、塩素を2個有する分子量152の化合物(少なくとも構造異性体と推定される2化合物が検出されることを発明者は確認している、以下「化合物152」と称することがある)の含有量塩素を3個有する分子量228の化合物(少なくとも構造異性体と推定される2種類の化合物が検出されることを発明者は確認している、以下「化合物228」と称することがある)の含有量の合計は、0.005重量%以下であり、好ましくは0.003重量%以下、さらに好ましくは0.001重量%以下である。また、上記化合物152及び化合物228の含有量の割合は、特に制限はない。
【0043】
上記粗アリルクロライドは、試薬、工業品、合成品のいずれのものも用いることができ、粗アリルクロライドの調製法は、特に限定されるものではないが、工業的には、通常、プロピレンと塩素を反応させて、これを蒸留精製することにより得られる。
さらに、かくして得られる粗アリルクロライドが、本発明の方法に用いられるか否かの判断は、上記化合物152及び化合物228の含有量を、既知の方法で測定し、上記規定の含有量以下であることを確認することにより行う。
【0044】
具体的には、例えば粗アリルクロライドをGC(FID)で分析し、得られる分子量152及び228のピーク面積の、アリルクロライドのピーク面積を100としたときの割合の値をそれぞれ化合物152及び化合物228の重量%とする方法が挙げられる。
アリルクロライド製造メーカーが製造するアリルクロライド中には、複数の不純物が含まれており、その種類や含有量はメーカーにより異なること及び多種、微量であるため、純度が高くなる程、その不純物を定量することは困難になるが、共通して含まれる不純物としては、アリルクロライドと沸点の近い2−クロロプロパン、1−クロロプロパン、クロロアセトアルデヒド、ヘキサン、ヘキセン、1,5-ヘキサジエン、3-クロロ-2-メチルエタノール等が挙げられる。この中でも、1−クロロプロパン、1,5−ヘキサジエンの含有量は、メーカーにより異なるが、0.1〜0.4%と含有量が多い。
【0045】
これらの不純物の構造は、下記ガスクロマトグラフィー(GC)、GC−Mass、NMR分析により構造を推定し、更に、標品と照合することにより構造を特定することができる。GCの検出器としては、FID(水素炎イオン検出器)の他、AED(原子発光検出器)を用いても良い。標品は、市販の試薬でも、合成品でもよい。
また、通常の粗アリルクロライド中には、アリルクロライドより沸点の高い不純物(以下、高沸点不純物と省略記載することがある)が存在する。高沸点不純物は、下記ガスクロマトグラフィー(GC)、GC−Massにより分子量と含有量を特定することができる。
【0046】
かくして特定した各不純物は、分子量152、228、304(少なくとも構造異性体と推定される3種類の化合物が検出)、380(少なくとも構造異性体と推定される3種類の化合物が検出)などのアリルクロライドの分子量(76)の2〜5の整数倍の分子量を有する含塩素化合物や、分子量152、228の化合物の水素原子一つが更に塩素原子に置換した分子量186、262の化合物、分子量152の化合物より不飽和結合が一つ多いと推定される分子量150の化合物等が挙げられる。具体的な主な高沸点不純物の推定構造としては、下記一般式(5)に例示するような分子内に不飽和結合を一つ以上、塩素原子を二つ以上有する化合物等が挙げられる。なお塩素原子の置換位置、二重結合の位置は、下記に限定されるものではない。
【0047】
【化5】

【0048】
上記の不純物は、製造時に副生したものが蒸留精製時に完全に分離しきれずに混入するものと推定される。これらの不純物を含んだ粗アリルクロライドを反応に用いた場合、精製ポリアリルオキシ化合物中に不純物が残存したり、不純物同士が反応した化合物、不純物とアリルクロライドが反応した化合物、不純物と基質、即ち、2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物が反応した化合物、不純物と溶媒が反応した化合物等の、反応時に生成した新たな不純物が、精製ポリアリルオキシ化合物中に含有される(比較例11参照)。
【0049】
例えば、粗アリルクロライド中に存在する化合物228は、アリル化反応後も系内に残存する(比較例11参照)。また、アリルクロライドと同等あるいはそれ以上の反応性を有する化合物は、ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基と縮合したり、ポリヒドロキシ化合物が芳香族環を有する場合には、芳香族環部分と反応した、下記一般式(6)で示されるような反応物を生成する。
【0050】
【化6】

(nは整数を表す。塩素の置換位置、二重結合の位置は上記に限定されるものではない。)
【0051】
例えば、精製ポリアリルオキシ化合物の不純物としては、主成分であるポリアリルオキシ化合物より分子量が152大きい化合物が検出され、これらは上記構造式で表される高沸点不純物由来であることが示唆される。従って、不純物の少ない高純度のアリルクロライドを反応に用いた場合は、総じて、反応生成物中の含塩素有機物の含有量は低減する傾向にある。
【0052】
すなわち本発明は、一般に入手可能な粗アリルクロライドに共通して含まれている不純物のうち、化合物152、化合物228の合計の含有量が、アリルクロライドの使用の可否の判断指標にできることを見出した。
上記の不純物は、不純物同士が反応した化合物、不純物とアリルクロライドが反応した化合物、不純物と基質即ち、フェノール類等の少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物が反応したもの、アリルクロライドが重合した化合物等であり、これら不純物の一部は含塩素有機物であるが、これら不純物は、製造時に副生したものが蒸留精製時に完全に分離しきれずに混入するものと推定される。上記不純物の一部は塩素不含有の有機化合物であり、精製ポリアリルオキシ化合物の塩素含有量に影響を与えないものもあるが、不純物の少ない高純度のアリルクロライドは、総じて、含塩素有機物の含有量は低減する傾向にある。
【0053】
本発明では、上記の通り、粗アリルクロライド中の特定化合物の含有量を少なくすることで、精製ポリアリルオキシ化合物中の含塩素有機物の含有量を実質的に少なくすることができ、これを酸化して得られる精製ポリグリシジルオキシ化合物の含塩素有機物の含有量を少なくすることが可能である。その結果、精製ポリグリシジルオキシ化合物を電子材料として使用した場合の、含塩素有機物不純物に起因する電子材料における不具合を低減することができる。
【0054】
本発明の製造方法に用いられる粗アリルクロライド中に含まれる1−クロロプロパン含有量は、特に限定されるものではないが、アリルクロライドに対し、通常0.3重量%以下であり、好ましくは、0.25重量%以下であり、より好ましくは0.22重量%以下である。下限としては特に限定されるものではないが、精製の限界や工業的な入手の容易さ等から、通常、0.001重量%以上であり、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上である。
【0055】
また粗アリルクロライド中に含まれる1,5−ヘキサジエンの含有量は、特に限定されるものではないが、アリルクロライドに対し通常0.2重量%以下であり、好ましくは0.18重量%以下、更に好ましくは、0.15重量%以下である。これら化合物の含有量は少ないほど高純度であることから好ましい。下限としては、精製の限界や工業的な入手の容易さ等から、通常、0.001重量%以上であり、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上である。
【0056】
尚、これらの不純物の構造は、下記ガスクロマトグラフィー(GC)、GC−Mass、NMR分析により構造を推定し、更に、標品と照合することにより構造を特定することができる。GCの検出器としては、FID(水素炎イオン検出器)の他、AED(原子発光検出器)を用いても良い。標品は、市販の試薬でも、合成品でもよい。
これらの不純物の含有量は、後述の実施例に記載の条件で、GC(FID)または1H-NMRにより測定を行なう。尚、1−クロロプロパンは、1−クロロプロパンときわめて沸点の近い他の不純物(分子式:C2H3OCl)と後述のGC分析条件下では完全に分離することが困難であるため、NMRのプロトン比で定量するのが好ましい。又、1,5-ヘキサジエンは、高沸の不純物が共存する場合には、NMRのプロトンのピークのシフト値が近く、分離が困難であるため、GC分析により定量するのが好ましく、その場合には、常法に従って、ピーク面積値から、検出感度を補正して定量する。高沸の不純物はGCで分析を行う。ここで、高沸の不純物はアリルクロライドと分子の構成成分比がほぼ同じで、重量あたりの感度は同じと見なせるため、感度補正は行なわず、面積%=重量%とする。GC、NMR分析の際、内部標準物質を用いて定量してもよい。
【0057】
1−クロロプロパン、1,5-ヘキサジエン及び上記高沸の不純物の種類や含有量は、製造法や製造時の精製の条件の影響の他、保管状態の影響も受け、保管中に光や熱の影響でアリルクロライドが重合し、重合物を生成する場合がある。本発明で規定する要件を満足する粗アリルクロライドとしては、例えば、鹿島ケミカル社より購入することができる。
【0058】
<3.精製ポリアリルオキシ化合物の製造方法>
本発明において、ポリアリルオキシ化合物は、上記の通り、ポリヒドロキシ化合物と粗アリルクロライドを反応させて、対応するポリアリルオキシ化合物とすることにより得る(以下、「アリル化反応」と略することがある)。
特に、本発明では、従来のエピクロルヒドリンとの反応ではなく、該アリル化反応を経ること、その際、粗アリルクロライドの中でも不純物含有量の少ない粗アリルクロライドを使用すること、及び、必要により、後述の精製等の工夫で、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個のアリルオキシ基を有するポリアリルオキシ化合物を製造することが可能となるため、アリル化反応を経ることが重要である。
【0059】
アリル化反応における、ポリヒドロキシ化合物に対する粗アリルクロライドの使用割合は、特に限定されるものではないが、ポリヒドロキシ化合物の活性水酸基基準で、アリルクロライドとして、通常、0.8〜2モル倍、好ましくは0.9〜1.2モル倍である。少なすぎると未反応の上記環状炭化水素系化合物が増え、未反応物の分離の負荷が増す傾向があり、一方、多すぎると含有塩素量が増加する傾向がある。
【0060】
アリル化反応の温度は、特に限定されるものではないが、通常、40℃以上、好ましくは、45℃以上であり、一方、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。
アリル化反応の圧力は、特に限定されるものではなく、常圧でも可能であるが、アリルクロライドは沸点が低いため(沸点45℃)、封じ込めで反応を行うのが好ましい。封じ込めで反応を行った場合は、系内が加圧状態となるが、通常内圧が1MPa以下常圧以上、好ましくは0.3MPa以下で行う。
【0061】
アリル化反応は、無溶媒または溶媒中で、通常、塩基類存在下に行われる。溶媒として
は、特に限定されないが、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等の非プロトン性溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、水等があげられる。これらの溶媒は、単独で用いても良いが、コストの面から、安価な溶媒と混合して用いることもできる。
【0062】
中でも、原料のポリヒドロキシ化合物が、ナフトールや多置換フェノール、ビフェノール類などの反応性に富む芳香族を母核に有する化合物の場合、非プロトン性極性溶媒を用いると、核へのアリル化が低減し、目的とするポリアリルオキシ化合物の選択性が向上し、同様に不純物の核への反応も同様に抑制されるため、塩素含有量の少ない高純度のポリアリルオキシ化合物が得られる傾向があり、好ましい(比較例7)。非プロトン性極性溶媒の中でも、誘電率が20以上のもの、更に好ましくは30以上であるのが好ましく、これらに該当するものとしては、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホン、テトラメチルウレア、ヘキサメチルスルホアミド、テトラメチレンスルホン等、またはこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、N,N’−ジメチルホルムアミド(誘電率38)、N−メチルピロリドン(誘電率32)、ジメチルスルホキシド(誘電率47)等が挙げられ、更にはN,N’−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。また、コストの面から、これらの溶媒を安価な極性溶媒と混合して用いることも可能であり、例えばN,N’−ジメチルホルムアミドはアセトン(誘電率20)と混合して用いることもできる。
【0063】
アリル化反応は、通常、塩基の存在下行なわれるが、塩基としては、特に限定されるものではないが、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水素化ナトリウム、金属ナトリウム、金属カリウム等の無機塩基、及び、トリエチルアミン、トリメチルアミン等のアミン類、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアニリン類等の有機塩基が挙げられる。尚、溶媒の種類によっては、塩基により分解するものもあるため、溶媒との組み合わせを考慮して用いる。例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトンを用いる場合には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。また、反応を密閉系で行う場合には、反応の進行によりガスの発生を伴わないものが好ましい。
【0064】
上記反応工程を経て得られたポリアリルオキシ化合物を含む反応液は、これを下記の方法で精製することにより精製ポリアリルオキシ化合物を製造することができる。
ポリアリルオキシ化合物の精製方法としては、ポリアリルオキシ化合物が固体の場合は晶析、懸洗、分液、吸着、昇華等が挙げられ、ポリアリルオキシ化合物が液体の場合は分液、吸着、蒸留が挙げられる。
【0065】
分液による精製は、水と水に不溶または難溶な有機溶媒を組み合わせる場合と、お互いに混合しない複数の有機溶媒同士を組み合わせる場合がある。水と水に不溶または難溶な有機溶媒の組み合わせとしては、例えば酢酸エチル、トルエン、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、n−へキサン等の有機溶媒と水の組み合わせが挙げられる。お互いに混合しない複数の有機溶媒同士の組合せとしては例えばN,N’−ジメチルホルムアミドとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、ジイソプロピルエーテル、キシレンのうち少なくともひとつとの組合せ、ジメチルスルホキシドとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、キシレンのうち少なくともひとつとの組合せ、アセトニトリルとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、シクロへキサン、シクロペンタンのうち少なくともひとつとの組合せ、メタノールとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタンのうち少なくともひとつとの組合せがある。
【0066】
晶析による精製には、アリル化反応終了後、水洗、ろ過などの方法により系内の無機塩を除去した後、溶媒を減圧留去する、または留去することなしに、冷却して晶析させる方法、化合物の溶解度の低い溶媒、いわゆる貧溶媒を加え析出する方法、化合物の溶解度の高い溶媒、いわゆる易溶媒と貧溶媒を組み合わせて析出する方法、反応終了後、無機塩を除去することなく水を加えて晶析させる方法等のいずれでも良い。溶媒としては有機溶媒、水、またはその混合物、有機溶媒同士を組み合わせる等、いずれでも良く、化合物の溶解度により適切なものを選択する。有機溶媒としては、酢酸エチル等のエステル類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなど脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等の非プロトン性溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0067】
また、水や有機溶媒を加えて晶析させる際に、未反応のアリルクロライド類、副生する低沸化合物を減圧留去しながら、晶析を行っても良い。
懸洗による精製には、化合物の溶解度の低い溶媒、いわゆる貧溶媒を用いる。好ましい貧溶媒は化合物により異なるが、メタノールなどのアルコール類などの極性の高いものや、逆にヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなど極性の低い脂肪族炭化水素が上げられる。水溶性の溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、N,N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等が挙げられ、これらは水と混和して用いることができる。溶媒量は少なすぎる場合は精製効果が十分ではなく、多すぎる場合には、回収率の低下につながる。懸洗終了後、固形物をろ過回収し、乾燥することによって目的物を得ることができる。
【0068】
吸着による精製は、含塩素系不純物と吸着剤として、活性炭、活性白土、モレキュラーシーブス、アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂等が挙げられる。
上記精製法の中でも、操作法の点からは、ポリアリルオキシ化合物の性状に関わらず分液法、吸着法が好ましい。ポリアリルオキシ化合物が固体の場合は晶析法が有効である。
かくして得られた精製ポリアリルオキシ化合物は、一般的に(1)ポリグリシジルオキシ化合物よりも、酸、塩基、熱に対し安定であるため、精製処理が容易であり、又、(2)ポリグリシジルオキシ化合物よりも極性が低い傾向があり、有機溶媒に対し高い溶解度を有しており、後述の精製工程のうち分液、抽出、吸着などの処理が容易である。従って、精製ポリアリルオキシ化合物を酸化することで、後述のエポキシ化反応後の精製より簡便に高純度の精製ポリグリシジルオキシ化合物を得ることができる。
<4.精製ポリアリルオキシ化合物>
上記の方法で得られる精製ポリアリルオキシ化合物は、塩素含有量が100重量ppm以下であり、好ましくは50重量ppm以下であり、より好ましくは30重量ppm以下である。この値が大きすぎると、これを用いて合成される精製ポリグリシジルオキシ化合物中の塩素含有量が大きくなり、配線等における腐食や断線の問題となり好ましくない。尚、塩素含有量は少ないほど好ましいが、精製の限界等の関係及び用途の特性から、下限は通常0.1重量ppm程度、更には、1重量ppm程度である。尚、塩素の形態は、無機化合物と有機物のいずれでもよい。
【0069】
精製ポリアリルオキシ化合物中に含まれる不純物としては、粗アリルクロライド中の不純物がそのまま反応せずに残ったもの、不純物がポリヒドロキシ化合物と反応した化合物、不純物とアリルクロライドが反応した化合物、不純物同士が反応した化合物、不純物と溶媒が反応した化合物などが挙げられるが、これらのうち、塩素原子を含む化合物の含有量は少ないことが好ましい。
【0070】
本発明における精製ポリアリルオキシ化合物は、不純物が少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物と反応した化合物と推定される、ポリアリルオキシ化合物よりも分子量が152大きい含塩素化合物の含有量が、0.02重量%以下であることが好ましい。これら 不純物含有量の定量は、ポリアリルオキシ化合物の性質に応じ、LC分析、又はGC分析により行なう。アリルオキシ基が芳香族環に直結している化合物等は、GCの注入口で熱分解を起こし、GC分析できない場合がある。その場合は、芳香族環の吸収波長でLC分析にて定量する。それ以外の場合には、GC分析にて定量することが好ましい。分析条件は、化合物の性質により異なるが、主成分のポリアリルオキシ化合物と不純物が、それぞれ単独のピークとして検出できる条件で行う。定量は、GCおよびLC分析によって得られた面積%を感度補正することによって得られるが、面積%で近似値を得ることもできる。不純物の含有量は、主成分のポリアリルオキシ化合物を100%とした場合の%値とする。
【0071】
前記上限超過では、得られた精製ポリアリルオキシ化合物を用いて、ポリグリシジルオキシ化合物を製造した際に、後述する精製ポリグリシジルオキシ化合物中の塩素量が低減されないためである。
ポリアリルオキシ化合物よりも分子量が152大きい含塩素化合物等の不純物量及び構造は、前述の化合物152及び化合物228と同様に測定、確認することができる。
【0072】
また、精製ポリアリルオキシ化合物の塩素含有量は、試料を燃焼し、吸収液に吸収させた後、イオンクロマトグラフにて測定することにより、無機および有機を合わせた全塩素量として測定することができる。具体的には、燃焼装置として三菱化学(株)製AQF−100を、イオンクロマトグラフ装置としてDIONEX製 DX-500を用いた。イオンクロマトグラフは、カラムにDIONEX製、Ion Pac AS12Aを用い、電気伝導度で検出を行った。
【0073】
又、本発明の製造方法で得られる精製ポリアリルオキシ化合物の主成分であるポリアリルオキシ化合物の分子量は、特に限定されずその用途に応じて原料の分子量に応じて適宜決定されるが、通常、238以上であり、一方、768以下である。
尚、ポリアリルオキシ化合物の具体的化合物としては、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として前述した式[I]〜[III]において、Rがアリル基である化合物であり、好ましい化合物もこれに準じる。
【0074】
<5.精製ポリグリシジルオキシ化合物の製造方法>
本発明では、上記の方法で得られた塩素含有量の少ない高純度の精製ポリアリルオキシ化合物を酸化することにより高純度の精製ポリグリシジルオキシ化合物を得る(以下、該酸化を「エポキシ化」と略することがある)。
エポキシ化の方法としては、非塩素系(塩素を含有しない)酸化剤を用いることが好ましく、有機過酸を用いる方法、および、触媒存在下過酸化水素を反応させる方法が挙げられる。有機過酸としては過酢酸、過安息香酸、TBHPなどが挙げられ、その中でも調製、後処理の容易な過酢酸が好ましい。有機過酸を用いる場合には、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基を系内に添加することにより、系内の酸性度の調整を行ってもよい。
【0075】
触媒存在下、過酸化水素を反応させる方法としては、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸などのタングステン酸と四級アンモニウム塩の存在下、過酸化水素を作用させる方法が挙げられる。四級アンモニウム塩としては、硫酸メチルトリオクチルアンモニウム、りん酸メチルトリオクチルアンモニウム等が挙げられ、りん酸、硫酸等の酸、あるいは、水酸化ナトリウムなどの塩基を適宜加えることにより、系内の酸性度の調整を行う。その他にも、過酸化水素を用いる際の触媒としては、レニウム、ルテニウム、白金、ニッケル、コバルト、モリブデン、クロム、鉄、亜鉛、チタン、マンガンなどの酸化物、TS−1(ケイ酸チタン)、ハイドロキシアパタイト、ゼオライトなどの固体酸、サレン錯体、N−ヒドロキシフタルイミド、有機レニウムなどが挙げられる。
【0076】
エポキシ化の温度は、0〜100℃、好ましくは40〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。又、エポキシ化は、安全上の観点から、常圧、窒素気流下で行うことが好
ましい。エポキシ化に用いられる溶媒としては、塩素原子を含むことなく、エポキシ化条件において酸化されないものから選択される。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒が上げられる。
【0077】
<6.精製ポリグリシジルオキシ化合物>
上記の方法で得られる精製ポリグリシジルオキシ化合物は、特に限定されるものではないが、塩素含有量が通常150重量ppm以下であり、好ましくは100重量ppm以下であり、より好ましくは、50重量ppm以下であり、更に好ましくは30重量ppm以下である。この値が大きすぎると配線等における腐食や断線の問題となる場合があることから、含有量は小さければ小さい程好ましいが、原料の精製の限界などから、下限は通常0.1重量ppm程度、更には、1重量ppm程度である。尚、塩素の形態は有機物、無機物のいずれでもよく、塩素含有量は、上述の方法で測定される。
【0078】
本発明の精製ポリグリシジルオキシ化合物の主成分であるポリグリシジルオキシ化合物の分子量は、その用途に応じて原料のポリアリルオキシ化合物の分子量に応じて適宜決定されるが、通常、260以上であり、一方、800以下である。又、エポキシ価(g/エポキシ基eq)は通常、130以上、好ましく140以上であり、一方、400以下、好ましくは、300以下、更に好ましくは200以下である。
【0079】
尚、ポリグリシジルオキシ化合物の具体的化合物としては、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として前述した式[I]〜[III]において、Rがグリシジル基である化合物であり、好ましい化合物もこれに準じる。
本発明のポリグリシジルオキシ化合物の精製方法としては、公知の精製方法を用いることができ、例えば前記のポリアリルオキシ化合物の精製方法と同様の方法を用いることができる。このうちポリグリシジルオキシ化合物は、通常比較的熱安定性が低いため、ポリグリシジルオキシ化合物が固体の場合は晶析、懸洗、分液、吸着等が好ましく、液体の場合は分液、吸着が好ましい。
【0080】
本発明の高純度ポリグリシジルオキシ化合物は、公知のエポキシ化合物に順じて、これを硬化剤、その他任意の添加剤と配合して、これを半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ配線板、ソルダーレジスト等の電子部品材料として用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何
等限定されるものではない。
[参考例1]
原料として用いる各種の粗アリルクロライドの不純物の分析を行った。
原料の粗アリルクロライドは、GC、GC−Mass、1H-NMRにより分析を行った。GCの検出器としては、FID(水素炎イオン検出器)の他、AED(原子発光検出器)を用いた。この内、1−クロロプロパンと1,5−ヘキサジエンは標品(市販、東京化成社品)を用い、1−クロロプロパンはH-NMRにより、1,5−ヘキサジエンはGC(FID検出)により定量した。高沸不純物は、GC−Massにより分子量および分子式を特定し、GC(FID検出)により定量した。
【0082】
GC分析で内標を用いる場合は、低沸不純物の定量の際には、ジクロロプロパン(東京化成社品)を、高沸不純物の定量の際には、1,8−ジクロロへキサン(東京化成社品)を用いた。 GC分析の場合には検出感度を補正して定量した。具体的には、検出感度は、鹿島ケミカル社(以下A社)製アリルクロライドと1,5−ヘキサジエン(東京化成社品)および内標物質の混合液をGC分析し、その正味の重量の近似値(重量×GC面積%÷100)とピーク面積値の比より補正を行なった。高沸不純物、化合物152及び化合物228はアリルクロライドと分子の構成成分比が同じであるため、重量あたりの感度はアリルクロライドと同じと見なせるため、感度補正は行なわずに、面積%=重量%として算出した。
【0083】
H−NMR分析条件>
装置 :BRUKER社 AVANCE 400, 400MHz
積算回数 :2048回
溶媒 :0.03体積%トリメチルシラン含有重クロロホルム
<GC分析条件>
装置 :GC−17A (島津製作所社製)
カラム :HEWLETT PACKARD社製 HP−1(30mx0.53mmφ、2.6
5μm)
検出器 :水素炎イオン検出器 (FID)
スプリット比:20
キャリヤーガス(窒素流量):105ml/min
(測定条件1):50℃で10分間保持後、10℃/minで250℃まで昇温
(測定条件2):50℃より、10℃/minで280℃まで昇温、窒素流量 105ml/min

尚、測定条件1は、低沸不純物の定量、測定条件2は、高沸不純物の定量に用いた。又、不純物の同定及びピークが単一物か否かの検討は、GC/AED、GC/Massにより、以下の条件で行なった。
【0084】
<GC/AED分析条件>
装置 :GC7890A(Agilent)−jas2390AA(JAS)
カラム :DB-1(25mx0.32mmφ、0.52μm)
検出波長 H :486nm、C:496nm、Cl:479nm
<GC/Mass分析条件>
装置 :GC6890(Agilent)−JMS600H(JEOL)
カラム :ZB-1(30mx0.25mmφ、0.25μm)
イオン化法 :EI

以下に分析方法の詳細を記す。塩素含有量(重量ppm)は、無機および有機を合わせた全塩素量を以下の方法で測定した。試料を燃焼し、吸収液に吸収させた後、イオンクロマトグラフにて測定を行った。燃焼装置は三菱化学社製AQF−100を、イオンクロマトグラフ装置はDIONEX社製 DX-500を用いた。イオンクロマトグラフは、カラムにDIONEX社製 Ion Pac AS12Aを用い、電気伝導度で検出を行った。塩素量が20ppm以下の微量な場合(実施例3)は、条件2で測定したが、それ以外は条件1により、測定した。以降、塩素分析条件は、断りのない限り、条件1を指す。
【0085】
<LC分析条件>
LC:島津製作所製
温度 :35℃
検出器 :UV 254mm、
溶離液 :0.5ml/min
条件1:
カラム :Inertsil ODS-3V、5μm 4.6X150mm(GLサイエンス製)
検出器 :UV 280mm、
溶離液 :CH3CN/0.1%トリフルオロ酢酸含有水=90/10(vol%)、0.5ml/min
条件2:
カラム :Mightysil RP-18 GP aqua 150-4.6 (5μm) (関東化学製)
検出器 :UV 254mm
CH3CN/0.1%トリフルオロ酢酸含有水=75/25(vol%)→10min, 100/0(vol%)(20min)
条件3:
カラム :Mightysil RP-18 GP aqua 150-4.6 (5μm) (関東化学製)
検出器 :UV 254mm CH3CN/0.1%トリフルオロ酢酸含有水=60/40(vol%)→20min, 100/0(vol%)(20min)
化合物(1b)中に含まれる含塩素不純物の分析は、LC条件2を用い、化合物(1b) 50ppm溶液を、1μLおよび5μL注入して分析を行い、化合物(1b)に約1%含まれる分子量602(塩素を含まない)の不純物を内標として、定量を行った。
【0086】
<LC−Mass分析条件>
LC:Waters Acquity
カラム:UPLC BEH C18 2.1X100mm 1.7μm
温度:40℃
検出器 :UV 254mm、
溶離液 :A=0.1%ギ酸含有水 B=メタノール 0min, 75%B →6min, 100% B (7min), 0.25ml/min
MS:Waters LCT Premier XE
イオン化法:APCI(+)
<GC分析条件3>
装置 :GC-1700(島津製作所社製)
カラム : ZB-5(30mx0.25mmφ、0.25μm)
検出器 :水素炎イオン検出器(FID)
スプリット比:40
キャリヤーガス(窒素流量):68ml/min、
昇温条件:100℃から10℃/minで270℃まで昇温、10分間保持

かくして得られた各粗アリルクロライドの組成を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
〔実施例1〕
【0089】
【化7】

【0090】
攪拌子を入れたガラス内筒オートクレーブ中に、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール(1a:上記構造式)5g(21mmol 純度84%)、アセトン5ml, ジメチルホルムアミド10ml、炭酸カリウム 7.2g(52mmol), 粗アリルクロライド3.3g(上記表1A社品 43mmol)を仕込み、密閉後、内温65℃で8時間反応した。尚、反応の終了は、前述のLC分析(条件1)により確認した。反応終了後、トルエン50ml, 水20mlを添加し、30min攪拌した。水層を分離した後、有機層を7.5mlの水で8回洗浄した。有機層をエバポレーションにて減圧濃縮し、得られた固体を3時間減圧乾燥することで精製3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1’-ビフェニル(1b:上記構造式)(粗体)を5.4g(16mmol)得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−2に示す。また、不純物の含有量を、前述のLC分析(条件2)で測定した。結果を表−2に示す。
【0091】
不純物の構造解析は、下記参考例により合成した不純物を多く含むアリルオキシ体を合成し、これを下記GC、LC/Mass、LC分析(条件2)により分析することにより行った。
【0092】
〔参考例2〕(不純物の同定および構造決定)
粗アリルクロライド(B社製) 149gを300mlのナスフラスコに仕込み、26cmのウィットマー精留塔を用いて、55〜70℃のオイルバスで加温して アリルクロライドを留去した。釜残約13gのGC分析を行ったところ、不純物が濃縮され、分子量152である化合物が0.2重量%、分子量228の化合物が0.35%含まれていることが確認できた。このアリルクロライドの釜残を用い、実施例1同様に反応及び全塩素含有量の分析を行った。
【0093】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして反応を行なった。反応終了後、水20mlを添加し析出した固体を濾
取し、3時間減圧乾燥することで精製3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1’-ビフェニル(結晶)を5.2g(17mmol)得た。これを上記の塩素分析方法で全塩素の含有量と不純物含有量を測定した。結果を表−2に示す。
【0094】
〔比較例1〕
実施例1と同様に、上記表1記載のB社品の粗アリルクロライドを用いて、同様に反応し、得られた精製化合物(1b)(粗体)の全塩素含有量と不純物含有量の分析を行った。結果を表−2に示す。
【0095】
〔比較例2〕
実施例1と同様に、上記表1記載のC社品の粗アリルクロライドを用いて、同様に反応し、得られた精製化合物(1b)(粗体)の全塩素含有量の分析を行った。結果を表−2に示す。
【0096】
〔比較例3〕
比較例2の方法で得られた精製3,3,5,5-テトラメチル-4,4-ビス(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1-ビフェニル(1b) 81gに、メチルエチルケトン324ml, イソプロピルエーテル32ml, 20% 水酸化カリウム水溶液211ml、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.1gを加えて、60℃で7時間加温した。水層を除去した後、水200mlで洗浄し、トルエン100mlを加え、さらに水200mlで3回洗浄した。得られた有機層に活性炭8.5gを加えて1時間攪拌した後、ろ過、濃縮、結晶化し精製3,3,5,5-テトラメチル-4,4-ビス(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1-ビフェニル(1b)(精製体)65gを回収率 80%で得た。これを上記の塩素分析方法で全塩素の含有量と不純物の含有量を測定した。結果を表−2に示す。
【0097】
[比較例4]
攪拌子を入れたガラス試験管中に、精製3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール(1a)3g(10mmol、純度84%)、トルエン6ml, イソプロピルアルコール3ml, 20%水酸化ナトリウム水溶液 10ml、テトラブチルアンモニウムヨージド0.025g, 粗アリルクロライド3.3g(前記表1記載のC社品、43mmol)を仕込み、内温45℃で12時間反応した。反応終了後、有機層を10mlの水で3回洗浄し、有機層をエバポレーションした。得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、主生成物2.2gを得た。この生成物をNMRにて構造解析したところ、2つのアリル基のうちの1つがベンゼン環に導入された2-(2-プロペン-1-イル)-3,3’,5,5’-テトラメチル-4’- (2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1-ビフェニルが主成分であった。
【0098】
【表2】

【0099】
表2から明らかなように、原料粗アリルクロライド中の化合物152及び化合物228含有量の合計が0.005重量%以下であれば、精製3,3,5,5-テトラメチル-4,4-ビス(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1-ビフェニル(1b)を精製処理することで、全塩素量、不純物量を共に低減することができるが、化合物152及び化合物228含有量の合計がそれ以上の場合は、全塩素量、不純物量ともに少なくすることができないことがわかる。
〔実施例3〕
【0100】
【化8】

【0101】
実施例2で得られた精製3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,1’-ビフェニル(1b)(精製)2.0g(6.2mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物52mg、8.5%(重量/体積)りん酸水溶液0.061ml, メチルトリメチルアンモニウム硫酸水素塩 72mg, トルエン1mlの混合液を70℃に加温した。窒素気流下、この溶液に35%過酸化水素3.6mlを加えた後、75℃にて9時間反応した。尚、反応の終了は、上記実施例1と同様のLC分析により確認した。反応終了後、水層を分離し、水2ml、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液2ml、水2mlで順次洗浄し、濃縮し、油状物(1c)(粗体)を得た。この油状物を前述の塩素分析で全塩素含有量を測定した。更にこの油状物にメタノールを加え結晶化し、この結晶を濾取、乾燥し、精製3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル(結晶)1.9g(4.3mmol)を得た。これを前述の塩素分析方法(条件1および条件2)で全塩素の含有量を測定した。結果を表−3に示す。
【0102】
[比較例5]
比較例3で得られた 精製化合物(1b)(粗体)81gを、実施例3と同様の方法でエポキシ化を行い、化合物(1c)81gを得た。これを上記の塩素分析方法で全塩素の含有量を測定した。結果を表−3に示す。更に得られた化合物(1c) 57.5gを酢酸エチル600mlに溶解し、活性炭10gを加えて2時間攪拌した後、ろ過、濃縮、結晶化した。結晶にメタノール200mlを加え、1時間懸洗したのち、結晶を濾取し、精製化合物(1c) (結晶)36gを得た。回収率 63% これを上記の塩素分析方法で全塩素の含有量を測定した。結果を表−3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
表3から明らかなように、原料粗アリルクロライド中の化合物152及び化合物228含有量の合計が0.005重量%以下のものを使用してポリアリルオキシ化合物を製造したものでなければ、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル(1c)を精製処理しても、全塩素量を低減させることができないことがわかる。
[実施例4]
【0105】
【化9】

【0106】
攪拌子を入れたガラス内筒オートクレーブ中に、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(2a, Bis-A) 5.0g(22mmol)、アセトン5ml, ジメチルホルムアミド10ml、炭酸カリウム 7.2g(55mmol), 粗アリルクロライド3.7g(表1のA社品、48mmol)を仕込み、密閉後、内温65℃で3時間、更に内温70℃で4時間反応した。反応の終了は、LC分析(条件1)により確認した。反応終了後、トルエン50ml、水20mlを添加し、30min攪拌した。水層を分離した後、有機層を7.5mlの水で8回洗浄した。有機層を濃縮し、得られた油状物を3時間減圧乾燥することで精製1,1’-(1-メチリデン)ビス[4-(2-プロペン-1-イルオキシ)-ベンゼン(2b)を6.4g(21mmol)得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−4に示す。
【0107】
[比較例6]
実施例4と同様に、表1のB社品の粗アリルクロライドを用いて、同様に反応及び全塩素含有量の分析を行った。結果を表−4に示す。
[実施例5]
【0108】
【化10】

【0109】
実施例4で得られた1,1’-(1-メチリデン)ビス[4-(2-プロペン-1-イルオキシ)-ベンゼン(2b) 2.0g(6.5mmol)に、タングステン酸ナトリウム二水和物210mg、1%りん酸水溶液4ml, メチルトリメチルアンモニウム硫酸水素塩140mg, トルエン1mlを加え、その混合液を70℃に加温した。窒素気流下、この溶液に40%過酸化水素3.6mlを、温度および転化率を分析しながら、分割添加し、75℃にて計9時間反応した。反応の終了は、LC分析(条件1)により確認した。反応終了後、水層を分離後、水2ml、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液2ml、水2mlで順次洗浄し、濃縮し、得られた油状物を減圧乾燥することにより、精製3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル(2c) 2.1g(6.2mmol)を得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−4に示す。
[比較例7]
実施例5と同様に、比較例6で得られた (2b)の反応及び全塩素含有量の分析を行った。結果を表−4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
[実施例6]
【0112】
【化11】

【0113】
攪拌子を入れたガラス内筒オートクレーブ中に、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(3a) 5.0g(21mmol)、テトラヒドロフラン50ml, t−ブトキシカリウム 9.3g(83mmol), 粗粗アリルクロライド4.8g(表1のA社品、62mmol)を仕込み、密閉後、内温46-48℃で10時間反応した。反応内容物をGC (条件3)で分析したところ、未反応の(3a)および反応中間体のモノアリルオキシ体が残っていたため、更に、t−ブトキシカリウム9.3g(83mmol), 粗アリルクロライド4.77g(A社品、62mmol)を追加した後、内温46-48℃で14時間反応した。GC分析(条件3)により反応の終了を確認した後、ヘキサン50ml、水50mlを添加し、30min攪拌した。水層を分離した後、有機層を順次50mlの水で2回、メタノール50mlと水50mlの混合溶液で1回、50mlの水で1回洗浄した。有機層を濃縮し、得られた油状物を減圧乾燥することで精製1,1’-(1-メチリデン)ビス[4-(2-プロペン-1-イルオキシ)-シクロヘキサン(3b)を4.9g(15mmol)得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−5に示す。
【0114】
[比較例8]
実施例6と同様に、表1のB社品の粗アリルクロライドを用いて、精製(3b)を合成し、全塩素含有量の分析を行った。結果を表−5に示す。
【0115】
[実施例7]
攪拌子を入れたガラス内筒オートクレーブ中に、化合物 3aを5.0g(21mmol)、水酸化カリウム(純度85%) 5.5g(83mmol)、水5.5ml, トルエン 5.5ml, 0.5mol/Lノルマルブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 0.5ml、粗アリルクロライド4.8g(表1のA社品、62mmol)を仕込み、密閉後、内温46-48℃で8時間反応した。反応内容物をGC (条件3)で分析したところ、未反応の(3b)および反応中間体のモノエポキシ化合物が残っていたため、更に水酸化カリウム(純度85%) 5.5g(83mmol)、粗アリルクロライド4.77g(表1のA社品62mmol)を追加し、密閉後、内温46-48℃で8時間反応した。反応の終了を、GC分析条件3により確認した後、酢酸エチル50ml、水30mlを添加し、30min攪拌した。水層を分離した後、有機層を順次50mlの水で2回、メタノール50mlと水50mlの混合溶液で1回、50mlの水で1回洗浄した。有機層を濃縮し、得られた油状物を3時間減圧乾燥することで、精製化合物 3bを5.0g(15.6mmol)得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−5に示す。これを更に精製することなく実施例8に用いた。
【0116】
[比較例9]
実施例7と同様に、表1のB社品の粗アリルクロライドを用いて精製(3b)を合成し、全塩素含有量の分析を行った。結果を表−5に示す。
[実施例8]
【0117】
【化12】

【0118】
実施例7で得られた精製1,1’-(1-メチリデン)ビス[4-(2-プロペン-1-イルオキシ)-シクロヘキサン (3b) 2.0g(6.5mmol)にトルエン16ml、酢酸ナトリウム3水和物を0.51g(3.7mmol)加え、内温を65℃に加温した後、30%過酢酸溶液3.8ml(16.5mmol)を分割しながら1時間かけて加えた。内温65-66℃で2時間反応させた後、水8mlを加えて攪拌後、水層を分離した。反応内容物をGC (条件3)で分析したところ、未反応の(3b)および反応中間体のモノエポキシ化合物が残っていたため、有機層に、再度、酢酸ナトリウム3水和物を0.51g(3.7mmol)加え、内温を65℃に加温した後、30%過酢酸溶液3.8ml(16.5mmol)を分割しながら1時間かけて加えた。内温65-66℃で2時間反応させた。反応の終了を、GC分析条件3により確認した。反応終了後、水8mlを加えて攪拌後、水層を分離した。有機層を水10mlで2回洗浄した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液10mlを加えて30分間攪拌し、過酸化物の残存がないことをヨウ化カリウム澱粉紙で確認後、水10mlで洗浄し、有機層を濃縮し、得られた油状物を減圧乾燥することにより、精製2,2’-[ (1-メチルエチリデン)ビス(4,1-シクロヘキサンジイルオキシメチレン)]ビス-オキシラン(3c)を1.5g(4.3mmol)得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−5に示す。
[比較例10]
実施例7と同様に、比較例9で得られた精製(3a)より精製(3b)を合成し、全塩素含有量の分析を行った。結果を表−5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
表5より明らかなように、2,2’-[ (1-メチルエチリデン)ビス(4,1-シクロヘキサンジイルオキシメチレン)]ビス-オキシラン(3c)を製造する際に、原料粗アリルクロライド中の化合物152及び化合物228含有量の合計が0.005重量%以下のものを使用してポリアリルオキシ化合物を用いない場合、(3c)中の全塩素量を低減することはできないことがわかる。
[実施例9]
【0121】
【化13】



【0122】
イソソルビド(4a、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール)5.0g(34mmol)を攪拌子を入れたガラス内筒オートクレーブ中に、テトラヒドロフラン50ml, t−ブトキシカリウム 11.5g(103mmol), 粗アリルクロライド6.55g(86mmol、表1のA社品)を仕込み、密閉後、内温59-60℃で11時間反応した。GC分析条件3により(4a)の消失を確認した。反応終了後、ヘキサン50ml、水50mlを添加し、30min攪拌した。水層を分離した後、有機層を順次50mlの水で2回洗浄した。有機層を濃縮し、得られた油状物を3時間減圧乾燥することで精製1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5-ジ−O−2−プロペン−1−イル−D−グルシトール (4b)を6.3g(28mmol)得た。これを前述の塩素分析方法で全塩素含有量を測定した。結果を表−6に示す。
【0123】
[比較例11]
実施例7と同様に、表1のB社品の粗アリルクロライドを用いて精製(4b)を合成し、全塩素含有量の分析を行った。結果を表−5に示す。
【0124】
[実施例10]
イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール)7.3g(50mmol)を攪拌子を入れたガラス内筒オートクレーブ中に、水酸化カリウム(純度85%) 13.2g(200mmol)、水13ml, 0.5mol/Lノルマルブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 0.2ml、粗アリルクロライド11.47g(150mmol、表1のA社品)を仕込み、密閉後、内温46-48℃で8時間反応した。(4a)の消失は、GC分析条件3により確認した。反応終了後、ヘキサン50ml、酢酸エチル50ml、水50mlを添加し、30min攪拌した。水層を分離した後、有機層を順次35mlの水で5回洗浄した。有機層を濃縮し、得られた油状物を3時間減圧乾燥することで精製1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5-ジ−O−2−プロペン−1−イル−D−グルシトール (4b)を6.0g(26mmol)得た。
【0125】
【表6】

【0126】
不純物のGC area%は、重量%を近似しているものと推定される。
[実施例11]
【0127】
【化14】

【0128】
実施例10で得られた精製化合物(4b) 1.0g(4.4mmol)にトルエン10ml、酢酸ナトリウム3水和物を0.72g(5.3mmol)加え、内温を65℃に加温した後、30%過酢酸溶液5.9ml(23mmol)を分割しながら1時間かけて加えた。内温65-66℃で3時間反応させた後、水層を分離した。有機層に、再度、酢酸ナトリウム3水和物を0.72g(5.3mmol)加え、内温を65℃に加温した後、30%過酢酸溶液5.9ml(23mmol)を分割しながら1時間かけて加えた。内温65-66℃で3時間反応させた。反応後、水層を分離し、有機層を水10mlで2回洗浄した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液10mlを加えて30分間攪拌し、過酸化物の残存がないことをヨウ化カリウム澱粉紙で確認後、水10mlで洗浄し、有機層を濃縮し、得られた油状物を減圧乾燥することで精製1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5-ビス−O−(2−オキシラニルメチル)−D−グルシトール (4c)を含む粗体0.45gを得た。(GC収率40%)
【0129】
<化合物のNMRデータ>
1H-NMR(400MHz、CDCl3)δ値
化合物 (1b): 2.32(12H,s), 4.34 (4H,dt), 5.27(2H,ddd), 5.44(2H,ddd), 6.13(2H,m), 7.18(4H,s)
化合物 (1c):2.34(12H,s), 2.82(4H,dd), 3.38(2H,m), 3.93(4H,dd), 7.18(4H,s)
化合物 (2b): 1.62(6H,s), 4.50(4H,dt), 5.23(2H,dd), 5.39(2H,dd), 6.04(2H,m), 6.70(4H,dd), 7.13(4H,dd)
化合物 (2c): 1.63(6H,s), 2.81(4H,ddd), 3.33(2H,m), 4.05(4H,ddd), 6.80(4H,dd), 7.13(4H,dd)
化合物(3b)(立体異性体混合物): 0.73-0.74(total 6H,s), 1.02(2H,m), 1.15-2.13(total 16H), 3.19-3.6(2H,m), 3.95+4.01(4H,m), 5.14(2H,m), 5.26(2H,m), 5.92(2H,m)
化合物 (3c) (立体異性体混合物): 0.70-0.80(total 6H,s), 1.03(2H,m), 1.1-2.15(total 16H), 2.6-2.7(4H,m), 3.2-3.3(4H,m), 3.45-3.75(4H,m)
化合物 (4b):3.60(1H,t), 3.92(1H,t), 3.97-4.10(7H,m), 4.22(1H,m), 4.52(1H,d), 4.64(1H,t), 5.20(2H,m), 5.29(2H,m), 5.84-6.0(2H,m)
化合物 (4c):2.70(4H,m), 3.19(2H,m), 3.50(4H,m), 3.4-4.2(8,m), 4.42(1H,d), 4.67(1H,t)
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の方法で得られた高純度精製グリシジルオキシ基含有環状炭化水素系化合物は、公知のエポキシ化合物に順じて、これを硬化剤、その他任意の添加剤と配合して、これを半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ配線板、ソルダーレジスト等の電子部品材料として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水素添加された基、又は脂肪族基のいずれかの基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物と、粗アリルクロライドとを反応させて、少なくとも2個のアリルオキシ基を有するポリアリルオキシ化合物を主成分とする精製ポリアリルオキシ化合物を得る工程を含むポリアリルオキシ化合物の製造方法であって、粗アリルクロライド中の塩素原子を2個含む分子量152の化合物の含有量と、塩素原子を3個含む分子量228の化合物の含有量の和が0.005重量%以下であることを特徴とするポリアリルオキシ化合物の製造方法。
【請求項2】
更に粗アリルクロライド中の1−クロロプロパン含有量が、アリルクロライドに対し0.3重量%以下であり、1,5-ヘキサジエンの含有量が、アリルクロライドに対し0.2重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリルオキシ化合物の製造方法。
【請求項3】
前記精製ポリアリルオキシ化合物中の塩素含有量が、100重量ppm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアリルオキシ化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の製造法において、芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の一部が水添された基、又は脂肪族基に少なくとも2個の水酸基を有する環状炭化水素系化合物と粗アリルクロライドとを反応させる際に、反応を非プロトン性極性溶媒の存在下行なうことを特徴とする、ポリアリルオキシ化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の製造法において、得られた精製ポリアリルオキシ化合物を、更に精製して塩素含有量を100重量ppm以下とすることを特徴とするポリアリルオキシ化合物の製造方法。
【請求項6】
前記精製ポリアリルオキシ化合物に含まれる、主成分であるポリアリルオキシ化合物よりも152大きい分子量を有する化合物の含有量が、0.02重量%以下であることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリアリルオキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水素添加された基、又は脂肪族基のいずれかの基に少なくとも2個の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物が、下記一般式[I]〜[III] のいずれかで表される化合物であり、ポリアリルオキシ化合物が、下記一般式[I]〜[III]におけるRがアリル基である化合物である、請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリアリルオキシ化合物の製造方法。

(A)−(OR)m1 [I]

(式中、AはOR基以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は脂肪族基を表し、Rは水素原子を表し、m1は2以上の整数を表す。)

(RO)m2−(A21)−[X−(A22) ] n2−X−(A21)−(OR)m2 [II]

(式中、A21はOR基以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族炭化水素基を表し、A22 は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基を表し、Xは、直接結合又は置換基を有していてもよい2価の連結基を表し、Rは水素原子を表し、m2は1以上の整数を表し、n2は0又は1以上の整数を表すが、Xを介して連結する隣接するA21とA22、又は複数のA22は、その置換基が更に連結して環を形成していてもよい。)

H− [(A(OR)m3)―X]n3−H [III]

(式中、Aは、OR基以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基の少なくともその一部が水添された基、又は2価の脂肪族基を表し、Xは、直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基又は−R31−フェニレン−R32−を表し、ここでR31及びR32は、夫々独立にアルキレン基を表し、Rは水素原子を表し、m3は1以上の整数を表し、n3は2以上の整数を表す。)
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の製造法で得られるポリアリルオキシ化合物を、非塩素系酸化剤を用いて酸化することを特徴とする、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくとも一部が水素添加された基、脂肪族基のいずれかの基に少なくとも2個のグリシジルオキシ基を有するポリグリシジルオキシ化合物の製造方法。
【請求項9】
前記精製ポリグリシジル化合物中に含まれる塩素含有量が150重量ppm以下であることを特徴とする、請求項8に記載のポリグリシジルオキシ化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−213716(P2011−213716A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55429(P2011−55429)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】