説明

ポリイミド成形体及びその製造方法

【課題】 引張弾性率が大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にあり、耐熱性に優れた特定ポリイミドフィルムの複数枚積層したポリイミド成形体で、フィルム製造では容易に製造し難い厚さ(200μm〜1000μm程度)の大きいフィルムや板状体などのポリイミド成形体とその製造方法を提供する。
【解決手段】(a)層の特定熱可塑性樹脂の層と(b)層の熱硬化性ポリイミド樹脂の層とを積層した表層改質ポリイミドは、(b)層のポリイミドの有する高い引張弾性率と引張破断強度と特定範囲の低い線膨張係数とを保持し、かつ表面が(a)層の接着性に優れた熱可塑性樹脂の保有する物性となり両者の優れた点を具備する表層改質ポリイミドとなり、この表層改質ポリイミドを複数枚加熱積層することで厚さの大きいポリイミドフィルムや板状体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム製造では容易に製造し難い厚さ(200μm〜1000μm程度)の大きいフィルムや板状体などのポリイミド成形体であって、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にある、耐熱性に優れたポリイミドフィルムの基材フィルム(b)表面に特定熱可塑性樹脂層(a)を積層することで基材フィルム(b)の前記特性を保持し、表面物性を特定熱可塑性樹脂層(a)保有の接着性に優れた物性とした表層改質ポリイミド(フィルム又は薄葉体)を複数枚積層してなるポリイミド成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、−269℃〜300℃までの広い温度範囲での物性変化が極めて少ないために、電気及び電子分野での応用、用途が拡大している。電気分野では、例えば車両用モーターや産業用モーター等のコイル絶縁、航空機電線及び超導電線の絶縁等に使用されている。一方、電子分野では、例えばフレキシブルプリント基板や、半導体実装用フィルムキャリヤーのベースフィルム等に利用されている。このようにポリイミドフィルムは、種々の機能性ポリマーフィルムの中でも極めて信頼性の高いものとして、電気及び電子分野で広く利用されている。しかしながら、最近では電気及び電子分野等のファイン化にともなって大きな問題が顕在化してきている。例えば、銅を蒸着又はメッキ等によって銅張したポリイミドフィルム基材からなるプリント基板は、経時変化、環境変化によって銅層の密着力が低下し、更には剥離が発生する傾向にあった。
【0003】
また、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料として、従来、セラミックが用いられていた。セラミックからなる基材は耐熱性を有し、近年における情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得る。しかし、セラミックはフレキシブルでなく、薄くできないので使用できる分野が限定される。
そのため、有機材料からなるフィルムを電子部品の基材として用いる検討がなされ、ポリイミドからなるフィルム、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムが提案されている。ポリイミドからなるフィルムは耐熱性に優れ、また、強靭であるのでフィルムを薄くできるという長所を備えているが、高周波の信号への適用において、信号強度の低下や信号伝達の遅れなどといった問題が懸念され、引張破断強度、引張弾性率でまだ不十分であり、線膨張係数においても大きすぎるなどの課題を有している。ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムは、高周波にも対応し得るが、引張弾性率が低いのでフィルムを薄くできない点、表面への金属導体や抵抗体などとの接着性が悪いという点、線膨張係数が大きく温度変化による寸法変化が著しくて微細な配線をもつ回路の製造に適さない点等が問題となり、使用できる分野が限定される。このように、耐熱性、高機械的物性、フレキシブル性を具備した基材用として十分な物性のフィルムは未だ得られていない。
引張弾性率を高くしたポリイミドフィルムとして、ベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献1参照)。このポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを誘電層とするプリント配線板も提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
これらのベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、引張破断強度、引張弾性率で改良され、線膨張係数において満足し得る範囲のものとなっているが、その優れた機械的物性の反面でその表面特性が接着性において不十分であるなどの課題を有していた。
【0004】
優れた物性のポリイミドの接着性を改良するために種々の提案がなされている、例えば接着性を有しないポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を形成するもの(特許文献4参照)、ポリイミドフィルムとポリアミド系樹脂からなるフィルムとが積層される少なくとも2層フイルム(特許文献5参照)などである。
これらのポリイミドフィルム上に熱可塑性樹脂層を設けたものは、接着性の改良においては満足し得ても、これら熱可塑性樹脂の耐熱性の低さは折角のポリイミドフィルムの耐熱性を台無しにする傾向を有していた。
【特許文献1】特開平06−056992号公報
【特許文献2】特表平11−504369号公報
【特許文献3】特表平11−505184号公報
【特許文献4】特開平09−169088号公報
【特許文献5】特開平07−186350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にあり、耐熱性に優れた特定ポリイミドフィルムの優れた機械的特性を持ち、かつ接着性などの表面特性が改良された従来のポリイミドフィルムにない性能を保有した表層改質ポリイミド(フィルム)を複数枚積層することでフィルム製造では容易に製造し難い厚さの大きいフィルムや板状体などのポリイミド成形体とその製造方法を提供することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定構造を有するポリイミドフィルムに特定接着剤層を積層することによって、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にあり、耐熱性、フレキシブル性をより高いレベルで具備した表層改質ポリイミドフィルムを積層することで溶媒の除去などの点で困難であった厚さの大きいフィルムや成形体を得る製造方法と成形体を提供せんとするものである。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
1. 芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基及び/又はフェニレンジアミン残基を有するポリイミド(b)層表面に、その他のポリイミド(a)層が積層された表層改質ポリイミドが複数枚積層されたポリイミド成形体であって、厚さが50μm以上であることを特徴とするポリイミド成形体。
2. 引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上である前記1のポリイミド成形体。
3. 面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃である前記1又は2のいずれかのポリイミド成形体。
4. その他のポリイミド(a)が下記[化1]の構造のポリイミドであって、少なくともR1が化2から選択される芳香族テトラカルボン酸類の残基、R2が化3から選択される芳香族ジアミン類の残基を有するポリイミドであって、該ポリイミドがポリイミド成形体中に0.1モル%〜20モル%含まれてなる前記1〜3いずれかのポリイミド成形体。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

5. 下記(a)層と(b)層とが少なくとも積層されてなる構成の3−50μmの表層改質ポリイミドを複数枚加熱積層することにより成形する前記1〜4いずれかのポリイミド成形体の製造方法。
(a)化1の構造のポリイミドであって少なくともR1が化2から選択される芳香族テトラカルボン酸類の残基、R2が化3から選択される芳香族ジアミン類の残基を有するポリイミド、
(b)少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基及び/又はフェニレンジアミン残基を有するポリイミド。
【発明の効果】
【0010】
本発明の(a)層の特定熱可塑性樹脂の層と(b)層の熱硬化性ポリイミド樹脂の層とを積層した表層改質ポリイミドは、(b)層のポリイミドの有する高い引張弾性率と引張破断強度と特定範囲の低い線膨張係数とを保持し、かつ表面が(a)層の接着性に優れた熱可塑性樹脂の保有する物性となり両者の優れた点を具備する表層改質ポリイミドとなり、この表層改質ポリイミドを複数枚加熱積層することで厚さの大きいポリイミドフィルムや板状体などの成形体が容易に得られ、粉末ポリイミドなどの焼結成形(強度不足)や厚さの大きいフィルム製造(溶剤の除去の不完全さ)における課題を克服し得て、厚さの大きいフィルム例えば500μm厚さのフィルムも溶媒除去の困難さを伴うことなく容易に製造することができ、しかも高い引張弾性率と引張破断強度と特定範囲の低い線膨張係数と高耐熱性を保持した成形体とすることができ、金属層付き接着板状体、金属箔との接合積層体の基材板状体やフィルムなどに有効であり、例えばプリント基板など回路基板として極めて有用であり、その他耐熱性を要求される軽量耐熱性カバー、軽量耐熱性ベルト、軽量耐熱性構造材などの成形体としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における成形体の原料となる表層改質ポリイミドは、(a)層と(b)層とが少なくとも積層されてなる構成のものであり、(a)層としては熱可塑性のポリイミドが好ましく、中でも芳香族テトラカルボン酸類の残基として4,4’−オキシジフタル酸残基など(化2)、芳香族ジアミン類の残基として1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(化3)を有する熱可塑性ポリイミドであり、これらのポリイミドの層からなり、(b)層としては芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン及び/又はフェニレンジアミンを有するポリイミドであるところの表層改質ポリイミドであり、好ましい態様として(表層改質ポリイミド)フィルムである。
【0012】
本発明における(b)層のポリイミドは、少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン及び/又はフェニレンジアミンを有するポリイミドであり、好ましくは引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃である前記のポリイミド(フィルム)であり、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類特にピロメリット酸との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸との組み合わせ。
C.上記のA.B.の任意組成の組み合わせ。
本発明における(b)層のポリイミドはこれらのポリイミドから作製されるフィルムが好ましい形態であり、フィルムは、例えば芳香族テトラカルボン酸類(無水物、誘導体も含む)であるピロメリット酸とを芳香族ジアミン類であるベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン及び/又はフェニレンジアミンとを溶媒中で反応せしめそのポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を得て、該溶液を支持体上に流延し、乾燥してポリイミドの前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を得て、該前駆体フィルムをさらに熱処理してイミド化しポリイミドフィルムを得る方法で製造することができる。
本発明で使用するベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類(芳香族ジアミン、芳香族ジアミンのアミド結合性誘導体などを総称する、以下単に芳香族ジアミンともいう)として、下記の化合物が例示できる。
【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
【化14】

【0024】
【化15】

【0025】
【化16】

【0026】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記[化4]〜「化7」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明における、フェニレンジアミンは、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンなどが挙げられるが好ましくはp−フェニレンジアミンである。
本発明においては、芳香族テトラカルボン酸類(酸、無水物、アミド結合性誘導体を総称する、以下芳香族テトラカルボン酸ともいう)として、ピロメリット酸及びその二無水物(PMDA)ならびにそれらの低級アルコールエステルが使用される。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン及び/又はフェニレンジアミンをイミド構成の全ジアミンの70モル%以上、好ましくは85モル%以上使用することが好ましい。
また、本発明においては、芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸を全カルボン酸の70モル%以上、好ましくは85モル%以上使用することが好ましい。
【0027】
前記ジアミンに限定されず下記のジアミン類を全ジアミンの30モル%未満であれば使用することができる。これらのジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0028】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0029】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0030】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0031】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0032】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0033】
本発明における芳香族テトラカルボン酸類としてのピロメリット酸は、下記[化17]で示される。
【0034】
【化17】

【0035】
本発明においては、全カルボン酸類の30モル%未満であれば下記に例示される芳香族テトラカルボン酸類を使用してもよい。
【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

【0038】
【化20】

【0039】
【化21】

【0040】
【化22】

【0041】
本発明においては、全カルボン酸類の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、適宜併用してもよい。
非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0042】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0043】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマー及び生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。
重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の濃度は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが、引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸度を向上するために3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましい。
【0044】
本発明における(b)層においては、そのポリイミド中に滑剤を添加・含有せしめて、層(フィルム)表面に微細な凹凸を付与し層(フィルム)の接着性などを改善することが好ましい。滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
これらの微粒子はフィルムに対して好ましくは、0.20〜2.0質量%の範囲で含有させることが必要である。微粒子の含有量が0.20質量%未満であるときは、接着性の向上がそれほどなく好ましくない。一方2.0質量%を超えると表面凹凸が大きくなり過ぎ接着性の向上が見られても平滑性の低下を招くなどによる課題を残し好ましくない。これらの滑剤の添加・含有は(a)層においても同様に摘要してもよい。
【0045】
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミド層(フィルム)を形成する方法としては、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥するなどによりグリーンフィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にする、あるいは梨地状に加工することができる。またポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどの高分子フィルムを支持体として用いることも可能である。
支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形して前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を得て、これをイミド化して、(b)層であるポリイミドフィルムを得る。その具体的なイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒及び脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒及び脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができるが、ポリイミドフィルム表裏面の表面面配向度の差が小さいポリイミドフィルムを得るためには、熱閉環法が好ましい。
【0046】
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃が例示され、好ましくは200〜480℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0047】
本発明における(a)層の最も好ましい例としての、芳香族テトラカルボン酸類の残基として4,4’−オキシジフタル酸残基、芳香族ジアミン類の残基として1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを有するポリイミドは、前記の(b)層のポリイミド作製と同様にしてポリアミド酸を作製しそれをイミド化することで得ることができる。
【0048】
本発明における(b)層ポリイミドの表面に薄く(a)層のポリイミド層を形成した表層改質ポリイミド(フィルム)は、(b)層ポリイミドフィルムの持つ高引張破断強度、高引張弾性率、低線膨張係数をほぼそのまま維持して、かつ表面が接着性を改良されたものであり、得られた表層改質ポリイミドフィルムは、好ましい態様として、引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上であり、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃である優れた性能の表層改質ポリイミドフィルムである。
この表層改質ポリイミド(フィルム)を使用し、複数枚を加熱積層することで得られる本願発明のポリイミド成形体は、引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上であり、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃である優れた性能のものとなる。
本願発明のポリイミド成形体の引張破断強度、引張弾性率の上限は特に無いが、上限が特に無いが生産性やコストを考えれば、引張破断強度1500MPa以下、引張弾性率25GPa以下が好ましい。
【0049】
本発明の表層改質ポリイミドフィルムは、構成が二層構造である(a)/(b)でもよいが、三層構造(a)/(b)/(a)であることがより好ましく、(a)/(b)の厚さの比(この厚さの比における(a)層の厚さは、(a)/(b)/(a)の場合は両(a)層の合計を示す)は、0.001〜0.3より好ましくは0.01〜0.2であり、(b)層の厚さが3〜50μmである表層改質ポリイミドフィルムが好ましい。この比が0.001に満たない時は(a)層による接着性改良の効果が極めて低く、また0.3を超える場合には(b)層の折角の高引張破断強度、高引張弾性率及び低線膨張係数の保持が損なわれてしまう。
表層改質ポリイミドはフィルム状態が好ましい形態であるが、湾曲した形状でもよく、これらの表層改質ポリイミドを積層加熱することで本発明のポリイミド成形体が得られる、この表層改質ポリイミドの厚さはとくに限定されないが3〜50μmが好ましく、得られるポリイミド成形体は50μm以上の厚さを有するものであり、好ましくはこの厚さは100μm以上、さらに好ましくは200μm以上のものであり、上限が特に無いが生産性やコストを考えれば5mm程度である。
【0050】
かかる表層改質ポリイミドフィルムの物性を得るためには、(b)層のポリイミドフィルムの引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃であることが必須であり、(a)層との積層による表層改質ポリイミドフィルムが前記物性を保有することになる。
表層改質ポリイミドフィルムの面方向での線膨張係数がこの範囲を超えると得られるポリイミ度成形体の寸法安定性が低下し、かつ例えばこのポリイミ度成形体に金属層を接着積層した場合に、金属層を構成する銅などの金属の線膨張係数との乖離が大きくなり、反りや剥離などの問題が発生し易くなる。
*本発明の表層改質ポリイミド(フィルム)の多層化(積層)方法は、両層の密着に問題が生じなければ、特に限定されるものではなく、例えば、共押し出しによる方法、一方の層である(b)層のポリイミドフィルム上に他方の(a)層のポリイミドのポリアミド酸溶液を流延してこれをイミド化する方法、一方の層である(b)層のポリイミドフィルムの前駆体フィルム上に他方の(a)層ポリイミドの前駆体フィルムを積層し共にイミド化する方法、(b)層上に(a)のポリイミドのポリアミド酸溶液をスプレーコートなどで塗布してイミド化する方法などが挙げられるが、特に好ましい製造方法は、(a)層と(b)層とを、両者の残留揮発成分率が共に10%以上の状態で、200℃以下で積層する方法である。
【0051】
本発明における面方向での線膨張係数(CTE)の測定は下記による。
<(b)層のフィルム及び表層改質ポリイミドフィルムの面方向での線膨張係数>
測定対象のフィルムについて、下記条件にてMD方向及びTD方向の伸縮率を測定し、90℃〜100℃、100℃〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。MD方向、TD方向の意味は、流れ方向(MD方向;長尺フィルムの長さ方向)及び幅方向(TD方向;長尺フィルムの幅方向)を示すものである。
面方向の線膨張係数はMD方向、TD方向の値の平均値である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 10mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0052】
引張破断強度、引張弾性率の測定は下記による。
<ポリイミドフィルム及び表層改質ポリイミドフィルムの引張破断強度、引張弾性率の測定>
測定対象のフィルムを、MD方向及びTD方向にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(商品名)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は前記した以外は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.層の厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0054】
〔ポリアミド酸の重合(1)〕
<ベンゾオキサゾール構造を有するジアミンからなるポリアミド酸の重合>
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500質量部を仕込んだ。次いで、N−メチル−2−ピロリドン5000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物485質量部を加え,25℃の反応温度で48時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(1)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.2dl/gであった。
【0055】
〔ポリアミド酸の重合(2)〕
<4,4’−オキシジフタル酸無水物からなるポリアミド酸の重合>
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン930質量部を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド15000質量部を導入し、均一になるようによく攪拌した後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,この溶液を0度まで冷やし、4,4’−オキシジフタル酸無水物990質量部を添加、17時間攪拌した。薄黄色で粘調なポリアミド酸溶液(2)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは3.1dl/gであった。
【0056】
〔ポリアミド酸の重合(3)〕
<ピロメリット酸二無水物及びフェニレンジアミン構造を有するポリアミド酸の重合>
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、パラフェニレンジアミン310質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド5000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物構造338質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(3)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.8dl/gであった。
【0057】
(実施例1)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、20μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(1)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、400μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、20μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで、(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.05/1/0.05である。得られた表層改質ポリイミドフィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが200μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の端部より、引き剥がしを試みたが、フィルム間の接着力が強く、剥離することはできなかった。表層改質ポリイミドフィルムの構成などを表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。(以下、各実施例、比較例も同じ)
【0058】
(実施例2)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、4μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(1)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、400μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、4μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで、(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.01/1/0.01である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、5枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが100μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の端部より、引き剥がしを試みたが、フィルム間の接着力が強く、剥離することはできなかった。
【0059】
(実施例3)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、15μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(1)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、200μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、15μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで、(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ9.5μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.075/1/0.075である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが95μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の端部より、引き剥がしを試みたが、フィルム間の接着力が強く、剥離することはできなかった。
【0060】
(実施例4)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、40μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(1)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、800μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、40μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.05/1/0.05である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、15枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが600μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の端部より、引き剥がしを試みたが、フィルム間の接着力が強く、剥離することはできなかった。
【0061】
(実施例5)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、20μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(3)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、400μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、20μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで、の(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.05/1/0.05である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが200μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の端部より、引き剥がしを試みたが、フィルム間の接着力が強く、剥離することはできなかった。
【0062】
(実施例6)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、8μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(1)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、800μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、8μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ40μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.01/1/0.01である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂の包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが400μmのポリイミド成形体を得た。
【0063】
(比較例1)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、440μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥することで、厚さが40μmの(a)層のみから構成されるポリアミド酸フィルムを得た。
得られたポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、32%であった。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目400℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmのポリイミドフィルムを得た。
上記のポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが200μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の物性を表2に示す。引張弾性率が低くかつCTEが高いものであり、高温での加工性には優れるものの、高温での寸法安定性が低い成形体であった。
【0064】
(比較例2)
上記のポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、100μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(1)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、200μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。
得られたポリアミド酸フィルムを再度製膜機の巻きだし部に取り付け、上記のポリアミド酸溶液(2)を、コンマコーターを用いてポリアミド酸フィルム面にコーティングし(ギャップは、100μm、塗工幅700mm)、110℃にて5分間乾燥することで、(a)/(b)/(a)3層構成のポリアミド酸フィルムを得た。
得られた多層ポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記の多層ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmの表層改質ポリイミドフィルムを得た。

この表層改質ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)/(a)の厚さの比は、0.5/1/0.5である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂の包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し透過型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さ比率は塗布厚から求めた厚さ比率とほぼ一致していた。 上記の表層改質ポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱融着させることで、厚さが200μmのポリイミド成形体を得た。得られた成形体の物性を表2に示す。引張弾性率が低くかつCTEが高いものであり、高温での加工性には優れるものの、高温での寸法安定性が低い成形体であった。
【0065】
(比較例3)
上記のポリアミド酸溶液(1)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、420μm、塗工幅700mm)、110℃にて20分間乾燥することで、厚さが40μmの(b)層のみから構成されるポリアミド酸フィルムを得た。
得られたポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、33%であった。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ20μmのポリイミドフィルムを得た。
上記のポリイミドフィルムを20cm四方に切り出し、10枚を重ねて、熱プレス機にて300℃、20MPaで1hr熱プレスしたが、上記ポリイミドフィルムは熱融着性を示さず、容易に剥がれてしまい、成形体は得られなかった。
【0066】
(比較例4)
上記のポリアミド酸溶液(1)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、2100μm、塗工幅700mm)、110℃にて120分間乾燥することで、厚さが200μmの(b)層のみから構成されるポリアミド酸フィルムを得た。
得られたポリアミド酸フィルムの残留揮発性分量は、43%であった。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×4分、2段目220℃×4分、3段目475℃×8分間の熱処理を行い、厚さ100μmのポリイミドフィルムの作製を試みたが、ポリイミドフィルムは、非常に脆く、炉内にてフィルムの破断がおこり、ロールとして巻き取ることができなかった。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の(a)層の特定熱可塑性樹脂の層と(b)層の熱硬化性ポリイミド樹脂の層とを積層した表層改質ポリイミドは、(b)層のポリイミドの有する高い引張弾性率と引張破断強度と特定範囲の低い線膨張係数とを保持し、かつ表面が(a)層の接着性に優れた熱可塑性樹脂の保有する物性となり両者の優れた点を具備する表層改質ポリイミドとなり、この表層改質ポリイミドを複数枚加熱積層することで厚さの大きいポリイミドフィルムや板状体などの成形体が容易に得られ、粉末ポリイミドなどの焼結成形(強度不足)や厚さの大きいフィルム製造(溶剤の除去の不完全さ)における課題を克服し得て、厚さの大きいフィルム例えば200μm〜1000μm厚さのフィルムや板状体も溶媒除去の困難さを伴うことなく容易に製造することができ、しかも高い引張弾性率と引張破断強度と特定範囲の低い線膨張係数と高耐熱性を保持した成形体とすることができ、金属層付き接着板状体、金属箔との接合積層体の基材板状体やフィルムなどに有効であり、例えばプリント基板など回路基板として極めて有用であり、その他耐熱性を要求される軽量耐熱性カバー(工業用高熱機器の保護カバー、エンジンカバー、家庭用暖房機器の断熱カバーなど)、軽量耐熱性ベルト、軽量耐熱性構造材などの成形体としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基及び/又はフェニレンジアミン残基を有するポリイミド(b)層表面に、その他のポリイミド(a)層が積層された表層改質ポリイミドが複数枚積層されたポリイミド成形体であって、厚さが50μm以上であることを特徴とするポリイミド成形体。
【請求項2】
引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上である請求項1に記載のポリイミド成形体。
【請求項3】
面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃である請求項1又は2のいずれかに記載のポリイミド成形体。
【請求項4】
その他のポリイミド(a)が下記[化1]の構造のポリイミドであって、少なくともR1が[化2]から選択される芳香族テトラカルボン酸類の残基、R2が[化3]から選択される芳香族ジアミン類の残基を有するポリイミドであって、該ポリイミドがポリイミド成形体中に0.1〜20モル%含まれてなる請求項1〜3いずれかに記載のポリイミド成形体。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項5】
下記(a)層と(b)層とが少なくとも積層されてなる構成の3−50μmの表層改質ポリイミドを複数枚加熱積層することにより成形する請求項1〜4いずれかに記載のポリイミド成形体の製造方法。
(a)[化1]の構造のポリイミドであって少なくともR1が[化2]から選択される芳香族テトラカルボン酸類の残基、R2が化3から選択される芳香族ジアミン類の残基を有するポリイミド、
(b)少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基及び/又はフェニレンジアミン残基を有するポリイミド。

【公開番号】特開2008−94015(P2008−94015A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279664(P2006−279664)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】