説明

ポリイミド積層体の製造方法、ポリイミド積層体

【課題】 本発明では、ポリイミドフィルムに接着剤層を介して、ポリイミドフィルムなどの絶縁フィルムや銅などの金属箔を積層する場合に、接着強度や密着強度の安定したポリイミドフィルム積層体を製造することを目的とする。
【解決手段】 ポリイミドフィルムの表面がシリコーンと接触し、そのシリコーンと接触した表面に接着層を形成するポリイミド積層体の製造方法であり、
シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面に、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付け、その後シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面に接着層を形成することを特徴とするポリイミド積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABテープ、配線基板、導電板等の電子部品・部材の素材として用いられる、ポリイミドフィルム表面に接着剤層を介して金属層や絶縁層などの多層の積層体を形成することができる、接着強度の安定したポリイミドフィルムを用いた積層体の製造方法、およびこれらの製法より得られるポリイミドフィルム積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリイミドは耐熱性、寸法安定性、力学特性、電気的性質、耐環境特性、難燃性などの各種物性に優れ、しかも柔軟性を有しているため、半導体集積回路を実装する際に用いられる、フレキシブルプリント基板やテープ・オートメイティド・ボンディング用基板として広く用いられている。これらの分野においては、ポリイミドフィルムは接着剤、熱融着若しくはメタライジング法などの化学気相成長法により銅などの金属層を積層した積層体の絶縁支持体として使用されている。
【0003】
フィルム表面を洗浄する方法として、特許文献1、特許文献2には、常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材を、光透過性フィルムの少なくとも一方の面に吹き付け、前記少なくとも一方の面を洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、特定のポリイミドフィルムにシリコンロールを接触させて、デュポン(株)製「パイララックス」を用いて銅箔(三井金属鉱業(株)製電解銅箔3EC、厚さ35μm厚)とラミネートした例が開示されている。
【特許文献1】特開2006−309158号公報
【特許文献2】特開2006−316146号公報
【特許文献3】特開2004−160897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリイミドフィルムの製造時や搬送時、ポリイミド金属積層体の回路加工や実装時に、シリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂などのシリコーン製品と接触する場合がある。また、回路加工・実装工程においても、実装部材の保護として使用される保護フィルム、基板搬送時に用いるキャリア材、ラミネート装置等のガイドロール、ラミネート時の緩衝材、装置の潤滑油や半田浴表面に存在するオイル成分などにさらには、ソルダーレジストや接着剤に含まれるシロキサン成分がキュア工程で飛散し、表面に付着する場合も考えられる。
ポリイミドフィルムに接着剤層を介して絶縁フィルムや金属箔などの積層体を製造する場合に、ポリイミドフィルムの表面やポリイミド金属積層体のポリイミドの表面がシリコーンゴムなどのシリコーン製品と接触した部分に接着剤層を積層すると、接着強度が低く品質が安定しないことがある。
さらに、回路加工や実装工程で上記のような要因でポリイミドフィルム表面がシリコーンで汚染した場合、カバーレイや接着剤との接着強度が変動してしまうことが考えられる。
本発明では、ポリイミドフィルムに接着剤層を介して、ポリイミドフィルムなどの絶縁フィルムや銅などの金属箔を積層する場合に、接着強度や密着強度の安定したポリイミドフィルム積層体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一は、ポリイミドフィルムの表面がシリコーンと接触し、そのシリコーンと接触した表面に接着層を形成するポリイミド積層体の製造方法であり、
シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面に、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付け、その後シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面に接着層を形成することを特徴とするポリイミド積層体の製造方法に関する。
本発明の第二は、上記のポリイミド積層体の製造方法より製造されるポリイミド積層体に関する。
本発明では、シリコーンと接触したポリイミドフィルム表面が、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を用いて洗浄することにより、ポリイミドフィルム表面の表面処理層を傷つけることなく、フィルム表面に付着したシリコーン成分のみを除去するために、ブラスト材で洗浄したフィルム表面に、エポキシ等の接着剤を用いて、ICチップ、カバーレイ、金属箔などを積層しても、接着性の低下しない接着強度の安定した積層フィルムを製造することが出来る。さらにフィルムの一部がシリコーンで汚染し、その部分の接着性が低下しても、歩留まりの低下、製品製造上の管理の問題など、大きな問題となる、しかし本発明によりこれらを未然に防ぐことが出来る。
また、ブラスト材として常温常圧下で気体となる冷却固体化した粒子を用いることにより、フィルム表面にブラスト材の残存を防ぐことが出来る。
本発明の製法は、得られるポリイミドフィルムにブラスト材が残存しない方法であり、砥粒、無機塩、有機洗浄剤などのブラスト材を用いていないためポリイミドフィルム表面を全く若しくは殆ど傷つけない方法であり、配線基板などの精密化に対応できる方法である。
特に表面に表面処理剤若しくは表面処理剤の金属酸化物を有しない、表面処理剤により処理されていないポリイミドフィルムに適用することが出来る。
シリコーンとは、オルガノポリシロキサン類の総称で、油、ゴム、樹脂などの種々の性状をもつものがあり、それぞれシリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂などである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、フィルムの製造又は搬送途中、さらにはフィルムの回路加工や実装工程などで、フィルムの表面がシリコーンと接触して、その部分に接着剤層を張り合わせても、そのシリコーンと接触した部分で接着強度が小さくなることがなく、接着強度の安定又は向上した接着剤層などを積層したポリイミドフィルム、若しくは回路基板などの部分的に導体層や絶縁層を形成されたフィルムを製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第一及び第二の好ましい態様を以下に示し、これら態様は複数組み合わせることが出来る。
1)ブラスト材は、二酸化炭素の粒子であること。
2)ポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含む酸性分と、ジアミン成分とを重合して得られるポリイミドフィルムであること、さらに好ましくはポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類及びピロメリット酸二無水物から選ばれる成分を含む酸性分と、p−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる成分を含むジアミン成分とを重合して得られるポリイミドフィルムであること。
3)シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面は、表面処理剤で処理されていないこと、さらに好ましくはシリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面は、シランカップリング剤で処理されていないポリイミドフィルムに適用できる。
4)ポリイミド積層体が、ポリイミドフィルムのシリコーンと接触した表面に、接着層を介して、絶縁層及び金属層から選ばれた層を形成された積層体であること。
5)接着層を介して導電層又は絶縁層を形成する場合、ポリイミドフィルムと導電層又は絶縁層との90°剥離強度が、1.2N/mm以上、好ましくは1.3N/mm以上であること。
【0009】
常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材としては、公知の常温常圧下で気体となる冷却固体化した粒子を用いることが出来、例えば、二酸化炭素を冷却して固体化した粒子、例えばドライアイスの粒子を用いることができる。
ブラスト材の形状や粒径は、フィルムの素材や形状に合わせて適宜選択することが出来、ポリイミドフィルムの表面に達した時にミクロン又はサブミクロンの粒子であればよく、例えば粒径0.005〜20μm、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜7μm、さらに好ましくは0.1〜5μm程度のものを用いることが好ましい。ポリイミドフィルムに吹き付けられたブラスト材は、常温常圧下でガス化するため、通常の砥粒を使用したブラスト法のように、砥粒がポリイミドフィルム表面に残存することがなく、さらに樹脂表面を全く若しくは殆ど傷つけることがないため好ましい。
【0010】
ポリイミドフィルムとしては、電子用、電気用などの基板、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのベース基材などに用いることが出来、さらに樹脂表面に金属層などの導電層が形成可能な、好ましくは耐熱性を有するポリイミドフィルムを用いることができる。
【0011】
ポリイミド積層体の製造方法において、ポリイミド積層体は、
1)ポリイミドフィルムのシリコーンと接触し、その接触した部分を常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付けて洗浄し、そのブラストした部分を含むフィルム表面に接着剤層を有するもの、さらに接着層のポリイミドフィルムとは反対側の表面に、導体層、これら導体層の回路や配線、ICチップなどの成形物、カバーレイやポリイミドフィルムなどの絶縁層を積層したものなどを挙げることが出来る。
導体層としては、銅、アルミ、金、銀、酸化錫などの金属や金属酸化物、金属化合物などを含む又はからなる層を挙げることが出来、形状は箔、シートなどを挙げることが出来る。
絶縁層は、エポキシ樹脂やポリイミドなどのカバーレイ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエステルなどの絶縁フィルムなどを挙げることが出来る。
【0012】
ポリイミド積層体の製造方法において常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付ける工程は、ポリイミドフィルムそのもの、又は回路や配線などの導体層、ICチップなどの成形物、接着剤層、ポリイミドフィルムなどの絶縁層などをポリイミドフィルムの表面に有するものが、該ポリイミドフィルムの表面がシリコーンと接触し、そのシリコーンと接触した部分、若しくはシリコーンと接触した部分を含む部分に、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付け、ポリイミドフィルムのシリコーンと接触した部分若しくはシリコーンと接触した部分を含む部分を洗浄することである。
ポリイミドフィルムの表面に、導体層の回路や配線などを形成させる方法としては公知の方法を用いることが出来、例えば、エッチングなどにより導体層の一部を除去する方法や、CVDなどの部分的に導体層を形成するなど方法などを挙げることが出来る。
【0013】
ポリイミドフィルムは無機粒子を含むことが出来る。
無機粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
無機粒子は、ポリイミドフィルム内又はポリイミドフィルム表面上で、シランカップリング剤を加熱、酸化又は還元などの手段を用いてシランカップリング剤の一部又は全部が金属(合金を含む)、金属酸化物、或いは金属化合物などに変化させたもの、特にポリイミドフィルム内又はフィルム表面上で、表面処理剤を加熱、酸化又は還元などの手段を用いて表面処理剤の一部又は全部が金属(合金を含む)、金属酸化物、或いは金属化合物などに変化させたものを含まない。
【0014】
本発明において、ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム内又はポリイミドフィルム表面上で、シランカップリング剤を加熱、酸化又は還元などの手段を用いてシランカップリング剤の一部又は全部が金属(合金を含む)、金属酸化物、或いは金属化合物などに変化させたものを含まないフィルム、特にポリイミドフィルム内又はフィルム表面上で、表面処理剤を加熱、酸化又は還元などの手段を用いて表面処理剤の一部又は全部が金属(合金を含む)、金属酸化物、或いは金属化合物などに変化させたものを含まないフィルムを用いることが、優れた効果をえることができる。
【0015】
表面処理剤としては、シランカップリング剤、ボランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アルミニウム系キレート剤、チタネート系カップリング剤、鉄カップリング剤、銅カップリング剤などの各種カップリング剤やキレート剤などを挙げることが出来る。
【0016】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤などより選ばれる少なくとも1成分を用いることができる。
シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(アミノカルボニル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−[β−(フェニルアミノ)−エチル]−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤が好ましい。また、加水分解しやすいので、アルコキシ基としてメトキシ基を含むシランカップリング剤が好ましい。カップリング剤としては、特にN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0017】
ポリイミドフィルムの表面がシリコーンと接触するとは、ポリイミドフィルム表面とシリコーンの接触はどのような状況であってもよく、ロールとの接触、キャリアシートとの接触、保護フィルムとの接触、オイルの飛散による接触、樹脂成分から揮発するなどの接触を挙げることが出来る。
【0018】
ポリイミドフィルムの一例である、ポリイミドフィルムについて説明する。
ポリイミドは主に芳香族テトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミンなどのジアミン成分を反応させて得ることが出来る。
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを直接、又は溶媒を用いて合成する方法、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とからポリアミック酸を合成し、その後熱イミド化や化学イミド化する方法、など公知の方法で得ることが出来る。
【0019】
ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸成分としては、下記一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化1】

(但し、一般式(3)において、Xは一般式(4)で示す群から選択された4価の基を示す。)
【化2】

(但し、一般式(4)において、Rは、一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。)
【化3】

中でも、好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、下記一般式(3’)で表されるものが挙げられる。
【化4】

(但し、一般式(3’)において、Xは一般式(4’)で示す群から選択された4価の基を示す。)
【化5】

【0020】
テトラカルボン酸二無水物は、一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物、好ましくは一般式(3’)に示すテトラカルボン酸二無水物が主成分として用いられ、本発明の特性を損なわない範囲で一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物以外の公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物として、一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものを用いることが好ましい。
【0021】
テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるテトラカルボン酸二無水物は、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0022】
ポリイミドの原料であるジアミンとしては、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【化6】

(但し、一般式(1)において、Yは一般式(2)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【化7】

(但し、一般式(2)において、R、R、R及びRは、単結合、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−CH−,−C(CH−及び−C(CF−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−H,−F,−Cl,−Br,−I,−CN,−OCH,−OH,−COOH,−CH,−Cまたは−CFを示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
中でも、好ましいジアミンとしては、下記一般式(1’)で表されるものが挙げられ、さらに好ましいジアミンとしては、下記一般式(1”)で表されるものが挙げられる。
【化8】

(但し、一般式(1’)において、Yは一般式(2’)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【化9】

(但し、一般式(2’)において、Rは、単結合、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
及びRは、−O−または−S−を示し、
は、単結合、−O−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−Hまたは−CHを示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
【化10】

(但し、一般式(1”)において、Yは一般式(2”)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【化11】

(但し、一般式(2”)において、Rは、単結合、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
〜M及びM’〜M’は、−H、−OCH、−CHまたは−Clを示す。
は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M及びM’〜M’は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
【0023】
ジアミンは、一般式(1)に示すジアミン、好ましくは一般式(1’)に示すジアミン、さらに好ましくは一般式(1”)に示すジアミンが主成分として用いられ、一般式(1)に示すジアミン、好ましくは一般式(1’)に示すジアミン、さらに好ましくは一般式(1”)に示すジアミンを50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものを用いることが好ましい。
【0024】
ジアミンの具体例として、
1)1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン、
などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0025】
ポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含む酸性分と、ジアミン成分とを重合して得られるポリイミドフィルム、さらに3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類及びピロメリット酸二無水物から選ばれる成分を含む酸性分と、p−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる成分を含むジアミン成分とを重合して得られるポリイミドフィルムを好ましく用いることが出来る。
【0026】
ポリイミドは、公知の方法で合成することができ、ランダム重合、ブロック重合、或いはあらかじめ複数のポリイミド前駆体溶液或いはポリイミド溶液を合成しておき、その複数の溶液を混合後反応条件下で混合して均一溶液とする、いずれの方法によっても達成される。
【0027】
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、有機溶媒中、約100℃以下、さらに80℃以下、さらに0〜60℃の温度で、特に20〜60℃の温度で、約0.2〜60時間反応させてポリアミック酸の溶液とし、このポリアミック酸溶液をドープ液として使用し、そのドープ液の薄膜を形成し、その薄膜から溶媒を蒸発させ除去すると共にポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。またポリアミック酸溶液に、イミド化反応触媒として各種塩基性化合物を添加することも好適に行われる。
また溶解性に優れるポリイミドでは、ポリアミック酸溶液を150〜250℃に加熱するか、またはイミド化剤を添加して150℃以下、特に15〜50℃の温度で反応させて、イミド環化した後溶媒を蒸発させる、もしくは貧溶媒中に析出させて粉末とした後、該粉末を有機溶液に溶解してポリイミドの有機溶媒溶液を得ることができる。
【0028】
ポリアミック酸溶液の重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマ−の濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、有機極性溶媒中の全モノマ−の濃度が、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは6〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%であることが好ましく、
【0029】
ポリアミック酸溶液の重合反応を実施するに際して、溶液粘度は、使用する目的(塗布、流延など)や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、ポリアミック(ポリイミド前駆体)酸溶液は、30℃で測定した回転粘度が、約0.1〜10000ポイズ、特に0.5〜5000ポイズ、さらに好ましくは1〜2000ポイズ程度のものであることが、このポリアミック酸溶液を取り扱う作業性の面から好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが望ましい。
【0030】
ポリイミドは、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の略等モル量、ジアミン成分が少し過剰な量或いは酸成分が少し過剰な量を、有機溶媒中で反応させてポリアミック酸の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)を得ることができる。
ポリイミドは、アミン末端を封止するためにジカルボン酸無水物、例えば、無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体など、特に、無水フタル酸を添加して合成することができる。
ポリイミドは、有機溶媒中、ジアミン(アミノ基のモル数として)の使用量が酸無水物の全モル数(テトラ酸二無水物とジカルボン酸無水物の酸無水物基としての総モルとして)に対する比として、0.95〜1.05、特に0.98〜1.02、そのなかでも特に0.99〜1.01であることが好ましい。ジカルボン酸無水物を使用する場合の使用量はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基モル量に対する比として、0.05以下であるような割合の各成分を反応させることができる。
【0031】
ポリアミック酸のゲル化を制限する目的でリン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマー)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
また、イミド化促進の目的で、ドープ液中に塩基性有機化合物を添加することができる。例えば、イミダゾール、2−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどをポリアミック酸に対して0.05〜10重量%、特に0.1〜2重量%の割合で使用することができる。これらは比較的低温でポリイミドフィルムを形成するため、イミド化が不十分となることを避けるために使用することができる。
【0032】
ポリアミック酸製造に使用する有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、クレゾール類などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリイミドフィルムの製造において、ポリアミック酸溶液を押出法によって、支持体上にキャストしてこれをステンレス鏡面、ベルト面等の支持体面上に流延塗布し、加熱および/または化学イミド化し、必要に応じてさらに100〜200℃で乾燥し、自己支持性フィルムとすることが好ましい。
次いで必要に応じて、有機溶媒などを自己支持性フィルムのAir面又は支持体面に塗布し、加熱処理してポリイミドフィルムを得ることができる。
加熱処理は、最初に約100〜400℃の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。特に、この加熱処理は段階的に、約100〜170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170〜220℃の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220〜400℃の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理することが好ましい。必要であれば、400〜550℃の高い温度で第四次高温加熱処理してもよい。また、250℃以上の連続加熱処理においては、ピンテンタ、クリップ、枠などで、少なくとも長尺の固化フィルムの長手方向に直角の方向の両端縁を固定して加熱処理を行うことが好ましい。特に薄い厚みのフィルムを製造する場合には、加熱処理時間は短くてもよい。
【0034】
ポリイミドフィルムの表面は、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付けた後、接着層を積層することができる。
ポリイミドフィルムの表面は、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付けた後、接着剤層を介して導電層や絶縁層などを形成してもよい。
ポリイミドフィルムの表面は、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付けた後、コロナ放電処理、低温プラズマ放電処理あるいは常圧プラズマ放電処理、化学エッチングなどによる表面処理をした後、接着層を介して導電層や絶縁層などを形成してもよい。
【0035】
ポリイミドフィルムの表面に、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付けた後、接着剤層を介して、ラミネート法にて金属箔をはり合わせ、導電層積層ポリイミドフィルムを製造することができる。
導電層積層ポリイミドフィルムは、例えば、ポリイミドフィルムなどのポリイミドフィルムと金属箔を、或いはポリイミドフィルムなどのポリイミドフィルムと接着剤層と金属箔とを、少なくとも一対の加圧部材で連続的に加圧、又は加熱・加圧して製造することができる。
前記の加圧部材としては、一対の圧着金属ロール(圧着部は金属製、セラミック溶射金属製のいずれでもよい)、ダブルベルトプレスおよびホットプレスが挙げられ、特に加圧下に熱圧着および冷却できるものであって、その中でも特に液圧式のダブルベルトプレスが好ましい。
【0036】
接着剤としては、電子分野で使用されている耐熱性接着剤であれば特に制限はなく、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ変性ポリイミド系接着剤、フェノール樹脂変性エポキシ樹脂接着剤、エポキシ変性アクリル樹脂系接着剤、エポキシ変性ポリアミド系接着剤などが挙げられる。この接着剤はそれ自体電子分野で実施されている任意の方法で設けることができ、例えばポリイミドフィルムなどのポリイミドフィルムに、接着剤溶液を塗布・乾燥してもよく、別途に形成したフィルム状接着剤と貼り合わせてもよい。
【0037】
金属箔としては、単一金属あるいは合金、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、ステンレスの金属箔、好適には圧延銅箔、電解銅箔などの銅箔が挙げられる。金属箔の厚さは特に制限はないが、好ましくは0.1μm〜10mm、より好ましくは1〜35μm、さらに好ましくは5〜18μmが好ましい。
厚さ1〜10μmの極薄銅箔を基材として使用する場合は、取り扱い性の良いキャリア付銅箔を好適に用いることができる。キャリア付銅箔のキャリア層としては、特に制限はないが、厚さ5μm〜150μmの圧延銅箔や電解銅箔が好ましい。キャリア層は極薄銅箔から容易に力学的に剥離できることが好ましく、剥離強度が0.01〜0.3N/mmであることが好ましい。
【0038】
本発明のポリイミドフィルムは、以下の特性を有することが好ましい。
1)引張弾性率(MD)が3GPa以上、好ましくは6GPa以上、さらに好ましくは12GPa以下。
2)線膨張係数(50〜200℃)は、積層する金属層の線膨張係数に対して(−30〜+30)ppmの範囲、好ましくは(−25〜+25)ppmの範囲、より好ましくは(−20〜+20)ppmの範囲、さらに好ましくは(−15〜+15)ppmの範囲、特に好ましくは(−10〜+10)ppmの範囲であること。
積層する金属が銅箔の場合、ポリイミドフィルムの線膨張係数は、1〜30×10−6cm/cm/℃、好ましくは3〜25×10−6cm/cm/℃、さらに好ましくは10〜20×10−6cm/cm/℃であることが、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープ等の電子部品や電子機器類の素材として用いる場合、好ましい。
【0039】
本発明に用いるポリイミドフィルムの厚みは、目的に応じて適宜選択すればよく特に限定されるものではないが、厚さが150μm以下、好ましくは5〜120μm、さらに好ましくは7〜80μm、特に好ましくは8〜50μmとすることが出来る。
【0040】
本発明のポリイミド積層体の製造方法を用いることにより、電子用、電気用などの基板、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのベース基材などに用いるポリイミド積層体を製造することが出来、さらに接着剤層を介して金属層などの導電層が形成可能なポリイミドフィルムを製造することが出来る。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
線膨張係数(50〜200℃):300℃で30分間加熱して応力緩和したサンプルをTMA装置(引張りモード、2g荷重、試料長10mm、20℃/分)で測定した。
引張弾性率:ASTM・D882に従って測定した(MD)。
【0043】
(実施例1、比較例1)
反応容器にN、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、撹拌及び窒素流通下、パラフェニレンジアミン(PPD)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)を添加し、40℃に保温し1時間攪拌した。この溶液にジアミン成分とジカルボン酸成分とが略等モル量となる割合の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BP)とピロメリット酸二無水物(PMDA)とを発熱に注意しながら数回に分けて添加し、添加終了後40℃を保ったまま3時間反応を続けて、モノマ−濃度18質量%のポリイミド前駆体溶液(黄色粘調液体)を得た。ポリイミド前駆体の各成分の組成モル比は、(s−BP/PMDA/PPD/DADE=30/70/15/85)である。
得られたポリイミド前駆体溶液を、イミド化後の厚みが38μmになるようにガラス板上に流延し、120℃で15分加熱しガラス板から剥離させて自己支持性のゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムを四方テンターへ把持し、150℃から段階的に温度を上げて450℃で2分保持して、表面処理剤で表面されていない厚み38μmのポリイミドフィルムAを得た。
【0044】
(フィルムのシリコーンゴムとの接触)
ポリイミドフィルムAの一部を切り出し、ポリイミドフィルムAの表面にシリコーンゴムローラーを約5kgf/30cmで押し付け、0.3m/分の速度でフィルム表面を往復30回移動させて、試料フィルム(A)を得た。
【0045】
(ドライアイスによる洗浄方法)
試料フィルム(A)のシリコーンゴムローラーを接触させた表面(50×50mmエリア)を、COジェットクリナー(AST社製)により洗浄し、試料フィルム(B)を得た。洗浄条件は、COガス圧:0.5MPa、試料までの距離:50mm、洗浄時間:30秒で行った。
【0046】
(密着性評価:接着層)
エピコート1009(ジャパンエポキシレジン社製)をトルエン・メチルエチルケトンの混合溶媒へ溶解させ、潜在硬化剤HX3942HP(旭化成社製)、シランカップリング剤KBM−403(信越化学工業社製)を加えて原料ドープを作製した。
作製したドープを離型フィルムへ塗布し、80℃で5分乾燥させてエポキシ系のボンディングシートを得た。
上記試料フィルム(A)及び試料フィルム(B)を用い、COジェットクリナーで洗浄した表面に、銅箔(BHY−13H−T、18μm厚み、日鉱金属社製)を上記エポキシ系ボンディングシートを介して、170℃、30kgf/cm、5分間圧着した。得られた2種類のサンプルの90°ピール評価を行った。
【0047】
(比較例2)
実施例1及び比較例1において、フィルムに接触させるゴムローラとしてNBR素材を用いて行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1及び比較例1より、シリコーンと接触した表面をブラスト材で洗浄することにより、剥離強度が向上した。
比較例2では、シリコーンと異なる一般的なNBRゴムを用いた例であるが、シリコーンのようにブラスト材で洗浄の有無に係わらず剥離強度の低下はほとんど認められない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの表面がシリコーンと接触し、そのシリコーンと接触した表面に接着層を形成するポリイミド積層体の製造方法であり、
シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面に、常温常圧下で気体となる冷却固体化したブラスト材を吹き付け、その後シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面に接着層を形成することを特徴とするポリイミド積層体の製造方法。
【請求項2】
ブラスト材は、二酸化炭素の粒子であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド積層体の製造方法。
【請求項3】
ポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含む酸性分と、ジアミン成分とを重合して得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリイミド積層体の製造方法。
【請求項4】
ポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類及びピロメリット酸二無水物から選ばれる成分を含む酸性分と、p−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる成分を含むジアミン成分とを重合して得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリイミド積層体の製造方法。
【請求項5】
シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面は、シランカップリング剤で処理されていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド積層体の製造方法。
【請求項6】
シリコーンと接触したポリイミドフィルムの表面は、表面処理剤で処理されていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド積層体の製造方法。
【請求項7】
ポリイミド積層体が、ポリイミドフィルムのシリコーンと接触した表面に、接着層を介して、絶縁層及び金属層から選ばれた層を形成された積層体であることを特徴とするポリイミド積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法により製造されるポリイミド積層体。

【公開番号】特開2009−29935(P2009−29935A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195339(P2007−195339)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】