説明

ポリエステル樹脂製被破断部付きブロー容器及びその製造方法

【課題】 開封し易さの改善されたポリエステル樹脂製の被破断部付き容器、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 容器の材質がポリエステル樹脂であり、容器本体と連続した口部20と、該口部20の上方に被破断部30とを一体に備え、該口部20の開口端22と該被破断部30との境界部分を破断して開口する被破断構造を有する容器において、該口部20の開口端22と該被破断部30との境界部分の外表面に対して略垂直方向に溝40を形成し、該溝40周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度を、該溝40周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも小さくすることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂製被破断部付き容器及びその製造方法、特にポリエステル樹脂を原材料として用いた被破断部付き容器における開封し易さの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
被破断構造を備えたツイストオフ容器が、特開2002−321750号公報に開示されている。該公報に開示された発明は、本出願人が以前出願したものであり、該容器の材質としてはオレフィン樹脂が使用されている。オレフィン樹脂は、ヒートシール性能に優れていると共に、ツイストオフやスナップオフがし易く、破断跡が残り難いため、被破断部付き容器には最適な樹脂の1つである。
【0003】
一方、1991年9月に特定保健用食品制度が制定されたことから、これ以来、体調調節機能を発現することのできる機能性飲料と呼ばれる食物繊維を含んだ飲料やカルシウム飲料等が多数発売されている。そして、この様な機能性飲料、あるいは液状医薬品等を容器に詰める場合には、オレフィン樹脂製の容器よりもポリエステル樹脂製の容器の方が、樹脂の匂いが内容物に移らず、また、樹脂が内容物に対して不活性であり、さらに内容物の成分等が樹脂に吸着しない等といった利点を有することから、ポリエステル樹脂製の容器を使用することが望まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−321750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリエステル樹脂を用いて被破断部付き容器を製造した場合、ポリエステル樹脂はヒートシール性能に劣り、その上、ねばりを有するため、ツイストオフやスナップオフしたときに折れ難く、糸を引くような現象を起こしてしまうという問題があった。本発明は、上記の問題点を解決すべく行なわれたものであり、その目的は、開封し易さの改善されたポリエステル樹脂製の被破断部付き容器、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリエステル樹脂を用いた被破断部付き容器において、口部の開口端と被破断部との境界部分の外表面にレーザーを照射して溝を形成し、さらにその後急冷することによって、樹脂が該溝において薄肉化され、さらに該溝周辺部分の樹脂の極限粘度が低下することによりポリエステル樹脂が脆くなるため、開封し易さの著しく改善されたポリエステル樹脂製の被破断部付き容器が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器は、容器の材質がポリエステル樹脂であり、容器本体と連続した口部と、該口部の上方に位置する被破断部とを一体に備え、該口部の開口端と該被破断部との境界部分を破断して開口する被破断構造を有する容器において、該口部の開口端と該被破断部との境界部分の外表面に対して略垂直方向に溝が形成され、該溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が、該溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも小さいことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、前記溝の深さが、前記溝周辺部分の厚さの30〜90%であることが好適である。また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、前記溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が、該溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも10%以上低下していることが好適である。
【0009】
また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、前記ポリエステル樹脂が、酸成分として、アジピン酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸から選択された1種もしくは2種以上からなり、グリコール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、スピログリコールから選択された1種もしくは2種以上からなるホモポリエステル樹脂、または共重合ポリエステル樹脂であり、その極限粘度が0.8〜1.5dl/gのポリエステル樹脂であることが好適である。
【0010】
また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、底部と、直方体部分と口頸部分とからなる胴部と、該口頸部分と連続した口部と、該口部の上方に位置する球状部分と板状の摘み部分と薄肉部分とからなる被破断部を一体に備え、該口部の開口端が該球状部分により密閉されており、該摘み部分は薄肉部分を介して該口部と連続し、且つ該摘み部分は該口部に跨って口頸部分まで垂下し、該口部の開口端と該被破断部との境界部分を含む容器の軸方向に対して直交した水平な直線上に、両端の摘み部に亘って溝が形成されていることが好適である。
【0011】
また、本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法は、容器の材質がポリエステル樹脂であり、容器本体と連続した口部と、該口部の上方に位置する被破断部とを一体に備え、該口部の開口端と該被破断部との境界部分を破断して開口する被破断構造を有する容器の製造方法において、少なくとも該口部の開口端と該被破断部との境界部分の外表面に対して略垂直方向にレーザーを照射し、溝を形成する溝形成工程と、前記工程の後、該溝を放置冷却する急冷工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、前記溝形成工程は、出力1.0〜100W、レーザー光径0.1〜5.0mmのレーザー光を10〜500mm/secで移動して照射することが好適である。また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、急冷工程は、0〜50℃で0.1〜30秒間保持することが好適である。
【0013】
また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、前記ポリエステル樹脂が、酸成分として、アジピン酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸から選択された1種もしくは2種以上からなり、グリコール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、スピログリコールから選択された1種もしくは2種以上からなるホモポリエステル樹脂、または共重合ポリエステル樹脂であり、その極限粘度が0.8〜1.5dl/gのポリエステル樹脂であることが好適である。
【0014】
また、前記ポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、さらにポリエステル樹脂製の予備成形体を押し出し機から押し出す予備成形体押出工程と、該予備成形体を型により挟み込み底部を合掌させて密封し、開口端から圧力流体を流入させて該予備成形体の下部に胴部及び底部を形成する胴底部形成工程と、該予備成形体の開口端から該胴部内に内容物を充填する内容物充填工程と、該予備成形体を型により挟み込み上部を合掌させて、該予備成形体の上部に口部及び被破断部を形成する被破断構造形成工程と、を備えることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリエステル樹脂を用いた被破断部付き容器において、口部の開口端と被破断部との境界部分の外表面にレーザーを照射して溝を形成し、さらにその後急冷することによって、樹脂が該溝において薄肉化され、さらに該溝周辺部分の樹脂の極限粘度が低下することによりポリエステル樹脂が脆くなるため、開封し易さの著しく改善されたポリエステル樹脂製の被破断部付き容器が得られる。さらに、本発明のポリエステル樹脂製被破断部付き容器においては、該溝の周辺部分のポリエステル樹脂がレーザーによって加熱されることにより、加水分解して樹脂の分子量が低下してポリエステル樹脂が脆くなるため、開封し易さが改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器について、図1には正面図、図2には側面図、図3には平面図を、それぞれ示す。
【0017】
本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器10は、略長方形で平板状の底部12と、該底部12と連続した略角筒形の直方体部分14と略円筒形の口頸部分16とからなる胴部18と、該口頸部分16の上方に連続して口部20を備えている。そして、口部20の上方には、中空の球状部分32と板状の摘み部分34と薄肉部分36とからなる被破断部30を一体に備えている。該口部20の開口端22は該球状部分32により密閉されており、底部12、胴部14及び口部20により構成される容器本体の内部は中空状になっている。また、該口部20及び該球状部分32の周りには薄肉部分36が形成され、板状の摘み部分34へと連続しており、該摘み部分34は該口部20に跨って口頸部分16まで垂下している。なお、薄肉部36は、開封し易くするために、口部20の麓付近がスリットとなっていてもよく、口部20の開口端22と被破断部30(球状部分32)との境界部分まで形成されていればよい。そして、このポリエステル樹脂製被破断部付き容器10は、使用時に、該口部20の開口端22と該被破断部30(球状部分32)との境界部分を破断して開口することによって、容器内部に予め充填された機能性飲料や液状医薬品等の内容物を注出することができる。
【0018】
〈溝の形成〉
ここで、本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器10においては、口部の開口端22と被破断部30(球状部分32)との境界部分の外表面に対して、略垂直方向に両側から炭酸ガスレーザー光が照射され、溝40が形成されている。すなわち、レーザー光が照射された部分に存在するポリエステル樹脂は、融点以上の温度に達して昇華し、外表面にV字型断面の溝40が形成される。なお、該溝40は、口部の開口端22と被破断部30(球状部分32)との境界部分を含んだ、容器の軸と直交した水平な直線上に、両端の摘み部に亘って形成されている。そして、該境界部分の外表面に該溝40が形成されることにより、樹脂が溝40において薄肉化されているため、破断し易くなる。このため、前記摘み部分34を回転させたり折り曲げたりすると、口部の開口端22と被破断部30(球状部分32)との境界部分が難なく破断して開口部を形成することが可能となる。
【0019】
すなわち、本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器においては、口部の開口端と被破断部との境界部分の外表面に対して略垂直方向に溝が形成されていることを特徴とする。なお、該溝の深さとしては、特に限定されるものではないが、通常の場合、前記溝の深さが、前記溝周辺部分の厚さの30〜90%であることが好適である。容器の種類によっても異なるが、一般的な容器の場合、溝の深さが溝周辺部分厚さの30%未満であると溝の形成による効果が得られない場合があり、一方で、90%を超えると薄くなりすぎてしまい、運搬中等のわずかな衝撃によって開封してしまう恐れが生じる。なお、本実施形態においては、前記溝の深さは0.25mmであり、前記溝周辺部分の厚さ0.8mmの約31%であった。
【0020】
また、本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器10においては、口部の開口端22と被破断部30との境界部分の両脇の薄肉部36において、貫通孔42が形成されていてもよく、このような貫通孔42を形成することによって、より破断し易くなり、ツイストオフやスナップオフによる開封がさらに容易になる。
【0021】
〈溝周辺部分のポリエステル樹脂の極限粘度〉
本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器10において、上記のように炭酸ガスレーザーの照射によって溝40が形成された後、該溝40は急冷される。ここで、溝40の周辺部分において昇華せずに残ったポリエステル樹脂は、前記レーザー光の照射によって熔融されることによって、樹脂の極限粘度が低下している。そして、これによって、該溝の周辺部分においてポリエステル樹脂が脆くなり、破断され易くなる。
【0022】
このため、本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器においては、溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が、溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも小さいことを特徴とする。より具体的には、溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が、溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも10%以上低下していることが好適である。なお、本実施形態においては、溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が0.85dl/gであり、溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度1.0dl/gよりも約15%低下していた。
【0023】
また、本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器10において、溝40の周辺部分に存在するポリエステル樹脂は、前記レーザー光の照射によって熔融した後、空気中の水分を吸収して加水分解されることによって分子量が低下する。これによって、ポリエステル樹脂が脆くなり、破断され易くなる。
【0024】
〈ポリエステル樹脂〉
本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、容器の材質はポリエステル樹脂である。本発明に用いられるポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、好適な例としては、例えば、酸成分として、アジピン酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸から選択された1種もしくは2種以上からなり、グリコール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、スピログリコールから選択された1種もしくは2種以上からなるホモポリエステル樹脂、または共重合ポリエステル樹脂であり、その極限粘度が0.8〜1.5dl/g、好ましくは0.8〜1.3dl/gのポリエステル樹脂が挙げられる。
【0025】
なお、本発明に用いられるポリエステル樹脂の好適な具体例としては、例えば、酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分として、エチレングリコール96モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール又はビスフェノールAを4モル%添加したポリエステル樹脂が挙げられる。以上で得られるポリエステル樹脂は、極限粘度が約1.0dl/gであり、ダイレクトブロー成形の際にドローダウンすることがなく、融点が約235〜245℃であり、一般的なポリエステル樹脂よりも10〜30℃低く、低温に成形できるので急速な冷却が可能であり、さらに結晶化速度が遅いので成形性が良く、本発明に用いられるポリエステル樹脂としては好適である。
【0026】
〈製造方法〉
本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法は、口部の開口端と被破断部との境界部分の外表面に対して略垂直方向にレーザーを照射し、溝を形成する溝形成工程と、前記工程の後、該溝を放置冷却する急冷工程とを備えることを特徴とするものである。
本発明にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法は、上記工程を備えるものであれば、その他の工程については特に限定されるものではないが、ヒートシール成形を使用しなくてもよいという点で、ダイレクトブロー成形法が好適である。
【0027】
ダイレクトブロー成形法を用いた、本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法について、図4に(a)〜(f)の工程順に示す。
まず、図4(a)に示されるように、押し出し機50から押し出されたチューブ状の予備成形体(通常、パリソンと呼ばれる)52が所定の長さに達すると、ポリエステル樹脂製容器における底部12及び直方体部分14と口頸部分16とからなる胴部18の外面形状を内側に形成させた二つ割りの胴部金型54と、予備成形体52の外面に接する二つ割りの補助金型56が一斉に閉じて、予備成形体52を挟み込む。すると、図4(b)に示されるように、予備成形体52の底部が密封され、同時に予備成形体52の上部をカッター58が作動して切断する。
【0028】
予備成形体12が切断されると直ちに移動して、図4(c)に示されるように、補助金型56に導管付き蓋60が被せられ、導管から無菌状態で10atmの圧縮空気等の加圧流体が予備成形体52内部に吹き込まれ、胴部金型54によって、予備成形体52の下方が、底部12及び直方体部分14と口頸部分16とからなる胴部18に成形される。つづいて、導管付き蓋60が外されて、図4(d)に示されるように、胴部5が形成された予備成形体52内部に充填ノズル62が挿入され、機能性飲料や液状医薬品等の内容物が充填される。
【0029】
内容物の充填が完了すると、充填ノズル62が抜き出されるとともに、補助金型56が開き、図4(e)に示すように、口部20と、球状部分32と摘み部分34と薄肉部分36とからなる被破断部30の外面形状を内側に形成させた被破断部成形金型64が閉じて、胴部18の上方に被破断構造を形成させる。
【0030】
被破断構造が形成されたポリエステル樹脂製容器10は、図4(f)に示されるように、口部の開口端22と被破断部30との境界部分を含んだ、容器の軸と直交した水平な直線上に、両端の摘み部に亘って炭酸ガスレーザーが照射される。レーザー光の照射によって、レーザー光を照射された部分は融点以上の温度に達し、熔融して昇華し、表面がV字形断面の水平に延びる溝40となる。なお、このレーザー光の照射は、両側から照射され、少なくとも口部の開口端22と被破断部30との境界部分の外表面に照射されていればよい。また、この溝形成工程におけるレーザー光は、特に限定されるものではないが、例えば、出力1.0〜100W、レーザー光径0.1〜5.0mmのレーザー光を10〜500mm/secで移動して照射することが好適である。なお、本実施形態においては、出力30W,レーザー光径0.2mmのレーザー光を、20〜25mm/secで直線移動して照射している。
【0031】
また、本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器10においては、口部の開口端22と被破断部30との境界部分を含む水平線に沿って、上記の態様のレーザー光が照射されることによって、該境界部分の両脇の薄肉部において、貫通孔42が形成されている。そして、このような貫通孔42を形成することによって、より破断し易くなり、ツイストオフやスナップオフによる開封がさらに容易になる。なお、照射されるレーザー光は、口部の開口端22と被破断部30との境界部分のみにスポット照射してもよく、適宜変更することが可能である。
【0032】
以上のようにしてレーザー光の照射による溝40が形成された後、溝40は放置されることによって急冷される。なお、急冷工程においては、例えば、0〜50℃で0.1〜30秒間、好ましくは10〜20℃で5〜10秒間保持すればよい。
【0033】
以上のようにして製造される本発明のポリエステル樹脂製被破断部付き容器によれば、口部の開口端と被破断部との境界部分の外表面にレーザーを照射して溝を形成し、さらにその後急冷することによって、樹脂が該溝において薄肉化され、さらに該溝周辺部分の樹脂の極限粘度が低下することにより、該溝の周辺部分においてポリエステル樹脂が脆くなるため、開封し易さの著しく改善されたポリエステル樹脂製の被破断部付き容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法を工程順に示した図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ポリエステル樹脂製被破断部付き容器
12 底部
14 直方体部分
16 口頸部分
18 胴部
20 口部
22 開口端
30 被破断部
32 球状部分
34 摘み部分
36 薄肉部分
40 溝
42 貫通孔
50 押し出し機
52 予備成形体
54 胴部金型
56 補助金型
58 カッター
60 導管付き蓋
62 充填ノズル
64 被破断部成形金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の材質がポリエステル樹脂であり、容器本体と連続した口部と、該口部の上方に位置する被破断部とを一体に備え、該口部の開口端と該被破断部との境界部分を破断して開口する被破断構造を有する容器において、
該口部の開口端と該被破断部との境界部分の外表面に対して略垂直方向に溝が形成され、
該溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が、該溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも小さい
ことを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、
前記溝の深さが、前記溝周辺部分の厚さの30〜90%であることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、
前記溝周辺部分におけるポリエステル樹脂の極限粘度が、該溝周辺部分以外のポリエステル樹脂の極限粘度よりも10%以上低下していることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、
前記ポリエステル樹脂が、酸成分として、アジピン酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸から選択された1種もしくは2種以上からなり、グリコール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、スピログリコールから選択された1種もしくは2種以上からなるホモポリエステル樹脂、または共重合ポリエステル樹脂であり、その極限粘度が0.8〜1.5dl/gのポリエステル樹脂であることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器において、
底部と、直方体部分と口頸部分とからなる胴部と、該口頸部分と連続した口部と、該口部の上方に位置する球状部分と板状の摘み部分と薄肉部分とからなる被破断部を一体に備え、該口部の開口端が該球状部分により密閉されており、該摘み部分は薄肉部分を介して該口部と連続し、且つ該摘み部分は該口部に跨って口頸部分まで垂下し、該口部の開口端と該被破断部との境界部分を含む容器の軸方向に対して直交した水平な直線上に、両端の摘み部に亘って溝が形成されていることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器。
【請求項6】
容器の材質がポリエステル樹脂であり、容器本体と連続した口部と、該口部の上方に位置する被破断部とを一体に備え、該口部の開口端と該被破断部との境界部分を破断して開口する被破断構造を有する容器の製造方法において、少なくとも
該口部の開口端と該被破断部との境界部分の外表面に対して略垂直方向にレーザーを照射し、溝を形成する溝形成工程と、
前記工程の後、該溝を放置冷却する急冷工程と
を備えることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、
前記溝形成工程は、出力1.0〜100W、レーザー光径0.1〜5.0mmのレーザー光を10〜500mm/secで移動して照射することを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、急冷工程は、0〜50℃で0.1〜30秒間保持することを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、
前記ポリエステル樹脂が、酸成分として、アジピン酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸から選択された1種もしくは2種以上からなり、グリコール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、スピログリコールから選択された1種もしくは2種以上からなるホモポリエステル樹脂又は共重合ポリエステル樹脂であり、その極限粘度が0.8〜1.5dl/gのポリエステル樹脂であることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載のポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法において、さらに
ポリエステル樹脂製の予備成形体を押し出し機から押し出す予備成形体押出工程と、
該予備成形体を型により挟み込み底部を合掌させて密封し、開口端から圧力流体を流入させて該予備成形体の下部に胴部及び底部を形成する胴底部形成工程と、
該予備成形体の開口端から該胴部内に内容物を充填する内容物充填工程と、
該予備成形体を型により挟み込み上部を合掌させて、該予備成形体の上部に口部及び被破断部を形成する被破断構造形成工程と
を備えることを特徴とするポリエステル樹脂製被破断部付き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−216998(P2007−216998A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37709(P2006−37709)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】