説明

ポリエステル組成物

【課題】高温多湿下で保存した後の加工安定性に優れたポリエステル組成物の提供。
【解決手段】次の(A)、(B)、(C)の各成分を含有することを特徴とするポリエステル組成物。(A)ポリエステル、(B)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン又はジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン構造を有する環状亜リン酸エステル類、(C)下記式(II)で示される化合物及び中和剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分


(式中、Rはアルキル基を示し、nは1〜4の整数を示す。X’はn価のアルコール残基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルからなるポリエステル成形体はリレー、コネクターなどの電子部品の筐体や、フィルムなどとして広く用いられており、一般的には加熱されて溶融状態にあるポリエステルを成形する方法により製造されている。
【0003】
しかし、ポリエステルは高温環境下で熱劣化しやすく、高温環境下でポリエステルを保存した後、該ポリエステルを成形加工するとMFR(Melt Flow Rate)が増大し、加工安定性が十分ではないという問題があった。
【0004】
そこで、高温環境下で保存した後でも加工安定性に優れたポリエステル組成物として、ポリエステルと亜リン酸エステル類とを含むポリエステル組成物が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-329887号公報
【特許文献2】特開2002-138188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記提案されたポリエステル組成物を高温多湿下で保存すると、必ずしも十分な加工安定性を与えない場合があり、高温多湿下で保存した後の加工安定性に優れたポリエステル組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況下、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明に係るポリエステル組成物は、次の(A)、(B)及び(C)の各成分を含有することを特徴とする。
(A)ポリエステル、
(B)下記式(I)で示される亜リン酸エステル類、
【化1】

〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Xは単結合、硫黄原子又は一般式(I−1)
【化2】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)で示される2価の残基を示し、Aは炭素数2〜8のアルキレン基または一般式(I−2)
【化3】

(式中、Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は酸素原子側に結合していることを示す。)で示される2価の基を示し、Y、Zはいずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕
(C)下記式(II)で示される化合物及び中和剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、nは、1〜4の整数を示す。X’は、途中にヘテロ原子及び/又は環状構造を含んでもよい炭素数1〜18のn価のアルコール残基を示す。)
【0008】
ここで、式(I)で示される亜リン酸エステル類の含有量は、前記ポリエステル100重量部に対して0.005〜3重量部の範囲が好ましい。
【0009】
また、式(II)で示される化合物と中和剤の含有量合計は、前記ポリエステル100重量部に対して0.005〜3重量部の範囲が好ましい。さらには、(C)成分が、式(II)で示される化合物及び中和剤の両方を含むことが好ましい。
【0010】
そしてまた、式(I)で示される亜リン酸エステル類と式(II)で示される化合物との含有割合は、重量比で1:0.1〜1:10の範囲が好ましい。
【0011】
前記ポリエステルとしてはポリ乳酸が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル組成物は、高温多湿下で保存した後でも、加工安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明で使用する各成分について順に説明する。まず成分(A)のポリエステルは、主鎖中に下記式(III)で示される残基を有する高分子である。
【0014】
【化5】

【0015】
本発明で使用されるポリエステルは、例えば、ジカルボン酸類とグリコール類とを縮重合させて得られるポリエステル等を挙げることができる。
ここでジカルボン酸類としては、ジカルボン酸、ジカルボン酸のアルキルエステル、ジカルボン酸の酸ハライド化物が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば上記ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、n−ペンチルエステルなどが挙げられる。ジカルボン酸の酸ハライド化物としては、例えば上記ジカルボン酸の塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられる。
【0016】
グリコール類としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、1,12−ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族グリコール、p−キシレングリコール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールジヒドロキシプロピルエーテルなどの芳香族グリコールなどが挙げられる。
【0017】
かかるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などが挙げられる。ポリエステルは、ソフトセグメントとハードセグメントとからなるエラストマーであってもよい。また、ガラス繊維などの充填剤を含有していてもよい。
【0018】
本発明で使用されるポリエステルとしては、液晶性ポリエステル(LCP)も挙げられる。LCPとしては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸類と、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステル、芳香族ジカルボン酸の酸ハライド化物又は芳香族ジカルボン酸の酸無水物と、芳香族グリコール又は脂肪族グリコールとを縮重合させて製造されるポリエステルなどが挙げられる。
【0019】
本発明で使用されるポリエステルとしては、不飽和ポリエステルも例示される。不飽和ポリエステルとしては、例えば、不飽和ジカルボン酸類、ジカルボン酸及びグリコール類を縮重合させて得られるポリエステル等を挙げることができる。ここで不飽和ジカルボン酸類としては、例えば不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸の酸ハライド化物又は不飽和ジカルボン酸の酸無水物などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば上記ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、n−ペンチルエステルなどが挙げられる。不飽和酸ハライド化物としては、例えば上記不飽和ジカルボン酸の塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられる。
【0020】
不飽和ポリエステルは、ビニルモノマーに溶解された状態であってもよい。ビニルモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、メタクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0021】
本発明で使用されるポリエステルとしては、ポリ3−ヒドロシキシブチレート、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸との共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレン(サクシネート−アジペート)共重合体、ポリブチレン(サクシネート−カーボネート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレン(サクシネート−テレフタレート)共重合体などの生分解性ポリエステルも例示される。
【0022】
本発明で使用されるポリエステルとしては、ラクトン類を開環重合して得られるポリエステルも挙げられる。ラクトン類としては、例えばピバロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。かかるラクトン類を開環重合することにより、ポリピバロラクトン、ポリ(ε−カプロラクトン)などを得ることができる。
【0023】
好ましいポリエステルとしては、例えば、PET、PBT、PEN、PBN、PCT、LCP、ポリ乳酸等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0024】
次に、成分(B)としての、一般式(I)で示される亜リン酸エステル類(以下、単に「亜リン酸エステル類」と記すことがある)について説明する。一般式(I)で示される亜リン酸エステル類において、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示すが、ここで炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基,t−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
【0025】
炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えばベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α−ジメチルベンジル基などが挙げられる。
【0026】
、R、Rは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基などであることが好ましい。R、Rはt−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基などのt−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基などであることがさらに好ましい。Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などがさらに好ましい。Rは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
【0027】
はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示すが、炭素数1〜8のアルキル基としては、R、R、R、Rにおいて前記したものと同様の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。Rは水素原子又はRにおいて前記したものと同様の炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基などがさらに好ましい。
【0028】
Xは単結合、硫黄原子又は一般式(I−1)で示される2価の基を示す。一般式(I−1)で示される2価の残基においてRは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示すが、ここで炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、R、R、R及びRにおいて前記したものと同様のアルキル基及びシクロアルキル基がそれぞれ例示される。Rは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。Xは単結合、一般式(I−1)で示される2価の基が好ましく、単結合がさらに好ましい。
【0029】
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基又は一般式(I−2)で示される2価の基を示すが、炭素数2〜8のアルキレン基が好ましく、かかるアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられ、プロピレン基がさらに好ましい。一般式(I−2)で示される2価の基は酸素原子とベンゼン核とに結合しているが、*は酸素原子と結合していることを示している。Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示すが、ここで炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられる。かかるRとしては単結合、エチレン基などが好ましい。
【0030】
Y、Zはいずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としてはR、R、R及びRとして前記したものと同様のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、t−ペントキシ基、i−オクトキシ基、t−オクトキシ基、2−エチルヘキトキシ基などが挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えばベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α、α−ジメチルベンジルオキシ基などが挙げられる。Y、Zは、Yがヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、Zが水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であってもよいし、Zがヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、Yが水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であってもよい。
【0031】
かかる一般式(I)で示される亜リン酸エステル類の中でも、R及びRがt−アルキル基、シクロヘキシル又は1−メチルシクロヘキシル基であり、Rが炭素数1〜5のアルキル基であり、Rが水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、Rが水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、Xが単結合であり、Aが炭素数2〜8のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0032】
かかる亜リン酸エステル類(I)としては、例えば2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン〔「スミライザーGP」(住友化学(株)製)として市販されている。〕、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジエチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[2,2−ジメチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
【0033】
かかる亜リン酸エステル類は、例えば特開平10−273494号公報に記載の方法で製造することができる。
【0034】
本発明のポリエステル組成物における亜リン酸エステル類の含有量は、ポリエステル100重量部あたり通常、0.005重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.02重量部以上である。0.005重量部以上であると、ポリエステル組成物を高温下で保存した後の着色が低減される傾向があることから好ましい。また、3重量部を超えて使用してもそれに見合うだけの効果が現れず経済的に不利であるから、亜リン酸エステル類の含有量は、通常、3重量部以下、好ましくは1重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。
【0035】
次に、成分(C)の一種である一般式(II)で示される化合物(以下、化合物(II)と記すことがある)について説明する。化合物(II)におけるX’は、途中にヘテロ原子及び/又は環状構造を含んでもよい炭素数1〜18のn価のアルコール残基を示す。残基とは、水酸基から水素原子が脱離した基をいい、アルコール残基とは、アルコール(ROH)の水酸基から水素原子が脱離した基、すなわち、RO−をいう。化合物(II)におけるX’としては、トリエチレングリコールの残基、ペンタエリスリトールの残基、又は3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンの残基などが好ましく、特にペンタエリスリトールの残基、又は3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンの残基が好ましい。
【0036】
化合物(II)におけるRは、炭素数1〜8のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基、シクロへキシル基などが好ましい。また、化合物(II)におけるnは1〜4の整数であって、2又は4である場合が好ましい。
【0037】
化合物(II)としては、例えば、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、ビス{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸}トリエチレングリコリル エステル、テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸}ペンタエリスリチルエステルなどが挙げられる。
【0038】
化合物(II)の配合量は、ポリエステル100重量部に対して、通常、0.005〜2重量部、好ましくは、0.01〜1重量部であり、より好ましくは、0.02〜0.5重量部である。0.005重量部以上であると熱劣化に対して安定であり、また、亜リン酸エステル類の加水分解が低減される傾向があることから好ましい。
【0039】
成分(C)の他の一種としては中和剤である。中和剤とは、カルボン酸を中和し得る化合物を意味する。具体的には、金属石鹸、脂肪族アミド、ハイドロタルサイト類、ポリカルボジイミド、アルカリ土類金属の酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物などが例示され、好ましくは金属石鹸、ハイドロタルサイト類、ポリカルボジイミドである。これらの1種又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
金属石鹸とは、水酸基が置換されていてもよい脂肪酸と1〜3価の金属との塩である。前記脂肪酸の炭素数は4〜18、好ましくは炭素数10〜18である。このような脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。また、前記金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム族金属、鉄族金属、亜鉛などが挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどが挙げられる。好適に使用できる金属石鹸としては、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムが挙げられ、中でも市販のステアリン酸カルシウム(通常、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムの混合物)がより好ましい。
【0041】
脂肪酸アミド類としては、高級脂肪酸のアミド類が好ましく、より好ましくは炭素数12〜24の飽和又は不飽和の高級脂肪酸アミド類である。このような高級脂肪酸アミド類としては、例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド等のモノアミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等のビスアミド等が挙げられる。中でもメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドのようなビスアミドが好ましい。
【0042】
ハイドロタルサイトとは式(a)で表される複水酸化物である。
[M2+1−x3+(OHx+[Aq−x/q・pHO]x− (a)
式(a)中、M2+は、Mg2+、Fe2+、Ca2+、Zn2+、Co2+、Ni2+から選ばれる少なくとも1種の2価の金属を示し、M3+はAl3+、B3+、Bi3+、Fe3+、Mn3+から選ばれる少なくとも1種の3価の金属を示し、qはAq−の価数を表し、xは0<x≦0.33を表し、pは0〜2を表す。但し、pは脱水条件によって任意に変更される。
【0043】
ここで、Aq−で示される価数qのアニオンの具体例としては、例えば、OH、Cl、Br、I、ClO、HCO、CCOO、CO2−、SO2−OOCCOO、(CHOHCOO)2−、C(COO)2−、(CHCOO)2−、CHCHOHCOO、SiO2−、SiO4−、Fe(CN)4−、BO3−、PO3−、HPO2−等が挙げられる。
【0044】
ハイドロタルサイト類としては、天然に産出する粘土鉱物や合成ハイドロタルサイトなどが挙げられる。ここで代表的な天然に産出する粘土鉱物であるハイドロタルク石の一例を式(a)で表すと、M2+=Mg2+、M3+=Al3+、x=0.25、Aq−=CO2−、p=0.5であり、この式を簡単な比で表すと、式(a−1)で表すことができる。
[MgAl(OH)162+[CO・4HO]2− ・・・(a−1)
【0045】
ハイドロタルサイト類としては、例えば、M2+=Mg2+、M3+=Al3+、xは約0.3、Aq−=CO2−、pは約0.54などで表される合成ハイドロタルサイトが好ましい。これを簡単な比で表すと、例えば、式(a−2)で表すことができ、かかる合成ハイドロタルサイトは協和化学工業から「DHT−4A」の商品名で市販されている。
[Mg4.5Al(OH)132+[CO・3.5HO]2− (a−2)
【0046】
アルカリ土類金属の酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物とは、周期表第II族の金属原子の酸化物又は水酸化物であり、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。この中でも水酸化カルシウムが好ましい。
【0047】
ポリカルボジイミドとは、分子内に、−N=C=N−基を有するポリマーであり、例えば有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応により容易に製造することができる(米国特許第2,941,956号明細書;特公昭47−33279号公報;J. Org. Chem., 28, 2069-2075 (1963);Chemical Review 1981, Vol. 81, No. 4, 619-621参照)。また、ポリカルボジイミドは、カルボライトの登録商標で日清紡績株式会社から入手することができる。
【0048】
中和剤の配合量は、ポリエステル100重量部に対して、通常、0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは、0.02〜0.5重量部である。中和剤の配合量が0.005重量部以上であると溶融混練に用いる機器の腐食性を低減する傾向があり、配合量が2重量部以下であると耐加水分解性が向上する傾向があるからである。
【0049】
成分(C)としての化合物(II)及び中和剤の含有量合計は、例えば、ポリエステル100重量部に対して0.005〜3重量部の範囲などを挙げることができる。好ましくは0.01〜1重量部の範囲などが挙げられる。
【0050】
成分(C)として化合物(II)を含有する場合、一般式(I)で示される亜リン酸エステル類と化合物(II)との重量割合は、例えば、1:0.1〜1:10の範囲などを挙げることができる。好ましくは、1:0.2〜1:5の範囲などが挙げられる。
また、成分(C)として中和剤を含有する場合、一般式(I)で示される亜リン酸エステル類と中和剤との重量割合は、例えば、1:0.1〜1:10の範囲などを挙げることができる。好ましくは、1:0.2〜1:5の範囲などが挙げられる。成分(C)としては、化合物(II)及び中和剤のいずれか一方又は両方が用いられるが、好ましくは、化合物(II)及び中和剤の両方であることが好ましい。両方を用いる場合、一般式(I)で示される亜リン酸エステル類と成分(C)の合計との重量割合は、通常、1:0.1〜1:10の範囲が好ましく、より好ましくは、1:0.2〜1:5の範囲である。
【0051】
本発明のポリエステル組成物は、例えばポリエステルと、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とを混合することにより製造される。具体的には、ポリエステルの溶融温度以下の温度でポリエステルの粉末と、亜リン酸エステル類、化合物(II)及び/又は中和剤の粉末とを混合する。混合は、ヘンシェルミキサーなどのミキサーを用いて行うことができる。かくして本発明のポリエステル組成物を、ポリエステルの粉末と、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤との混合物として得ることができる。
【0052】
なお、ポリエステルの溶融温度以上の温度で、ポリエステルと、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とを混練してもよく、具体的には、ポリエステルの溶融温度よりも低い温度で、ポリエステルと、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とを混合した後、ポリエステルの溶融温度以上の温度に加熱し、混練してもよい。混練には一軸混練機、二軸混練機などの混練機が用いられる。かくして溶融状態にあるポリエステルに、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とが均一に分散したポリエステル組成物が得られる。
【0053】
また、ポリエステルを縮重合により製造する際に、原料であるジカルボン酸類やグリコール類を、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤との存在下に縮重合させてもよい。亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤との存在下に縮重合させることにより、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤が、ポリエステル中に均一に分散したポリエステル組成物が得られる。
【0054】
カルボン酸類やグリコール類とを縮重合させる際や、ラクトン類を開環重合してポリエステルを製造する際に、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤を加えることにより、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤が、ポリエステル中に均一に分散したポリエステル組成物を得ることもできる。
【0055】
このようにしてポリエステルと、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とを混合することにより、本発明のポリエステル組成物は、高温環境下で保存した後の加工安定性に優れるとともに、高温多湿下で保存した後であっても、加工安定性に優れる。また、本発明のポリエステル組成物は、高温環境下で保存した後、及び、高温多湿下で保存した後でも着色が低減される傾向があることから好ましい。
【0056】
本発明のポリエステルは、以上説明した成分(A)〜(C)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来公知の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、一般式(I)以外の亜リン酸エステル類、一般式(II)以外のフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、高級脂肪族アミドなどの滑剤、ミネラルオイル、シリコンオイルなどの可塑剤、難燃剤、高級脂肪酸などの離型剤、帯電防止剤、顔料、染料、発泡剤などが挙げられる。さらには、米国特許第4325853号明細書、米国特許第4338244号明細書、米国特許第5175312号明細書、米国特許第5216053号明細書、米国特許第5252643号明細書明細書、ドイツ公開公報DE−A−4316611号、ドイツ特許第4316622号、ドイツ特許第4316876号明細書、欧州特許公開公報EP−A−589839号公報、欧州特許第591102号明細書、カナダ特許第CA−2132132号明細書などに記載のベンゾフラノン類、インドリン類などの添加剤を含有していてもよい。
【0057】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクダデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデシル−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデシル−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシル−1’−イル)フェノール及びそれらの混合物などのアルキル化モノフェノール;2,4−ジオクチルチオメチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,6−ジドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール及びそれらの混合物などのアルキルチオメチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル ステアレート、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル) アジペート及びそれらの混合物などのヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン;
【0058】
α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール及びそれらの混合物などのトコフェロール;2,2’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−t−アミルフェノール)、4,4’−(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィドなどのヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール)]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−イソブチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコール ビス[3,3−ビス−3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−t−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ペンチル−6−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]フェニル アクリレート及びそれらの混合物などのアルキリデンビスフェノール及びその誘導体;
【0059】
3,5,3’,5’−テトラ−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート及びそれらの混合物などのO−ベンジル誘導体、N−ベンジル誘導体及びS−ベンジル誘導体;ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)マロネート、ジオクタデシル−2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート及びそれらの混合物などのヒドロキシベンジル化マロネート誘導体;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール及びそれらの混合物などの芳香族ヒドロキシベンジル誘導体;
【0060】
2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−n−オクチルチオ−4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−n−オクチルチオ−4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−フェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシシンナモイルオキシ)エチル]イソシアヌレート及びそれらの混合物などのトリアジン誘導体;ジメチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルベンジルホスホネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエステルのカルシウム塩及びそれらの混合物などのベンジルホスホネート誘導体、4−ヒドロキシラウリル酸アニリド、4−ヒドロキシステアリン酸アニリド、オクチル−N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバネート及びそれらの混合物などのアシルアミノフェノール誘導体;
【0061】
β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタン及びそれらの混合物などの一価アルコール又は多価アルコールとのエステル;β−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と、メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタン及びそれらの混合物などの一価アルコール又は多価アルコールとのエステル;β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタン及びそれらの混合物などの一価アルコール又は多価アルコールとのエステル;
【0062】
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸と、メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタン及びそれらの混合物などの一価アルコール又は多価アルコールとのエステル;
【0063】
N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]トリメチレンジアミン及びそれらの混合物などのβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミドなどが挙げられる。
【0064】
以上例示したフェノール系酸化防止剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3’−チオジプロピオネート、トリデシル 3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ラウリル ステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリル ペンタエリスリトール ジホスファイト、ジイソデシル ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシル ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル) フルオロ ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル) エチル ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル) メチル ホスファイト、2−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル) ホスファイト及びそれらの混合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニル サリシレート、4−t−ブチルフェニル サリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−オクチルフェニル サリシレート、ビス(4−t−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、ヘシサデシル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート及びそれらの混合物などのサリシレート誘導体;
【0068】
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン及びそれらの混合物などの2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体;
【0069】
2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−s−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−[3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールの混合物、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−t−ブチル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、ポリ(3〜11)(エチレングリコール)と2−[3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールとの縮合物、ポリ(3〜11)(エチレングリコール)とメチル 3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとの縮合物、2−エチルヘキシル 3−[3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート、オクチル 3−[3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート、メチル 3−[3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート、3−[3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸及びそれらの混合物などの2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
以上例示した添加剤のうち好ましく用いられるものは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤などである。添加剤は、予めポリエステルと混合されていてもよいし、亜リン酸エステル類、化合物(II)や中和剤と混合されていてもよい。あるいは、ポリエステルと、亜リン酸エステル類、化合物(II)及び/又は中和剤とを混合する際にこれらと同時に混合されてもよい。
【0071】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル以外の他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)などが挙げられる。
【0072】
本発明のポリエステル組成物を、通常のポリエステルと同様に加熱し溶融状態として成形することにより、ポリエステル成形体が得られる。本発明のポリエステル組成物は耐加水分解性が十分に図られているので、長期間倉庫で保存した後、成形加工してもMFRの変化が小さく、容易に成形してポリエステル成形体とすることができる。
【0073】
本発明のポリエステル組成物が、ポリエステルのペレットと、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤との混合物である場合や、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とがポリエステル中に均一に分散したポリエステル組成物である場合には、これを加熱して溶融状態として成形すればよい。また、ポリエステルの溶融温度以上の温度で、ポリエステルと、亜リン酸エステル類と、化合物(II)及び/又は中和剤とを混練して本発明のポリエステル組成物を得た場合には、得られたポリエステル組成物を冷却することなく溶融状態のまま成形機に供給して成形してもよい。成形方法は特に限定されるものではなく、例えば射出成形法、押出成形法、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法などの従来公知の成形方法を用いることができる。
【0074】
成形後、冷却することにより、本発明のポリエステル組成物からなるポリエステル成形体が得られる。得られるポリエステル成形体としては、例えばコイルボビン、コネクター、スイッチ、抵抗器部品、ソケット、リレー、コンデンサーケース、ヒューズ、モーター、オーブンレンジ、プリント基盤、IC製造装置、ランプなどの電子部品、エアーアウトレットガーニッシュ、フードベント、ディストリビューターキャップ、排ガスコントロールバルブなどの自動車部品、ギア、カムなどの機械部品、地板などの時計部品、底蓋、鏡胴、レバーなどのカメラ部品、リールなどのレジャー用品の部品、家電機器ハウジング、照明配線器具、フィルム、ボトル、繊維、浄化槽、便槽、バスタブ、ユニットバス、水タンク、船舶、薬品タンク、パイプ、波板、平板、塗料、化粧版、電気部品封入材、レジンコンクリートなどが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0076】
なお、ポリエステル及びポリエステル組成物のメルトフローレート(MFR)は、メルトインデクサーを用いて190℃、荷重2160g、滞留時間5分の条件で測定した。
【0077】
実施例1
ポリエステルとしてのポリ乳酸(PLA)〔テラマック(TE-2000)、ユニチカ社製、MFRは10g/10分〕を100重量部、亜リン酸エステル類としての、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(以下、「亜リン酸エステル化合物」と記す。)を0.15重量部、式(II)で示される化合物としての、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン(以下、「化合物1」と記す。)を0.15重量部、乾式混合し、得られた混合物を直径30mmの一軸押出機を用いて250℃で溶融混練した後、ペレットとして冷却して、ポリエステル組成物のペレットを得た。
そして、得られたポリエステル組成物のペレットを40℃80%RH条件下で7日間保存し、保存終了後にMFRを測定した結果、22.7g/10分であった。また、上記高温多湿条件下で保存終了後の、ポリエステル組成物のペレットに着色は認められなかった。
【0078】
実施例2
化合物1に代えて、テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸}ペンタエリスリチル エステル(以下、「化合物2」と記す。)を使用した以外は、実施例1と同様の操作をした。高温多湿条件下で保存後のMFRは、22.9g/10分であった。また、上記高温多湿条件下で保存終了後の、ポリエステル組成物のペレットに着色は認められなかった。
【0079】
比較例1
化合物1を用いず、また亜リン酸エステル化合物の配合量をPLA100重量部に対して0.3重量部とした以外は、実施例1と同様に操作してポリエステル組成物のペレットを得、上記高温多湿条件下で保存した後、MFRを測定した結果、24.1g/10分であった。
【0080】
比較例2
亜リン酸エステル化合物を用いず、化合物2の配合量をPLA100重量部に対して0.3重量部とした以外は、実施例2と同様に操作してポリエステル組成物のペレットを得、上記高温多湿条件下で保存した後、MFRを測定した結果、24.9g/10分であった。
【0081】
実施例3
さらに中和剤(ハイドロタルサイト、DHT−4A、協和化学工業社製)を、PLA100重量部に対して0.1重量部配合した以外は、実施例1と同様に操作して、ポリエステル組成物のペレットを得、上記高温多湿条件下で保存した後、MFRを測定した結果、20.8g/10分であった。また、上記高温多湿条件下で保存終了後の、ポリエステル組成物のペレットに着色は認められなかった。
【0082】
実施例4
化合物1を用いず、亜リン酸エステル化合物の配合量をPLA100重量部に対して0.3重量部とした以外は、実施例3と同様に操作してポリエステル組成物のペレットを得、上記高温多湿条件下で保存した後、MFRを測定した結果、22.2g/10分であった。また、上記高温多湿条件下で保存終了後の、ポリエステル組成物のペレットに着色は認められなかった。
【0083】
比較例3
亜リン酸エステル化合物を用いず、化合物1の配合量をPLA100重量部に対して0.3重量部とした以外は、実施例3と同様に操作してポリエステル組成物のペレットを得、上記高温多湿条件下で保存した後、MFRを測定した結果、24.3g/10分であった。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例5〜実施例8
ポリエステルとしてのポリ乳酸(PLA)〔テラマック(TE-2000C N)、ユニチカ社製、MFRは10g/10分〕、亜リン酸エステル類として実施例1で用いた亜リン酸エステル化合物、式(II)で示される化合物として化合物1、さらに中和剤としてハイドロタルサイトを、表2に示す配合量で乾式混合し、得られた混合物を直径30mmの一軸押出機を用いて250℃で溶融混練した後、ペレットとして冷却して、ポリエステル組成物のペレットを得た。
そして、得られたポリエステル組成物のペレットを40℃80%RH条件下で7日間保存し、保存終了後にMFRを測定した。結果を表2に示す。なお、上記高温多湿条件下で保存終了後の、ポリエステル組成物のペレットにも着色は認められなかった。
【0086】
比較例4〜比較例6
各成分の配合量を表2に示す量に変えた以外は実施例5〜実施例8と同様にし、MFRを測定した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリエステル組成物は、高温多湿下で保存した後でも、加工安定性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)及び(C)の各成分を含有することを特徴とするポリエステル組成物。
(A)ポリエステル、
(B)下記式(I)で示される亜リン酸エステル類、
【化1】

〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Xは単結合、硫黄原子又は一般式(I−1)
【化2】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)で示される2価の基を示し、Aは炭素数2〜8のアルキレン基または一般式(I−2)
【化3】

(式中、Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は酸素原子側に結合していることを示す。)で示される2価の基を示し、Y、Zはいずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕
(C)下記式(II)で示される化合物及び中和剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、nは、1〜4の整数を示す。X’は、途中にヘテロ原子及び/又は環状構造を含んでもよい炭素数1〜18のn価のアルコール残基を示す。)
【請求項2】
式(I)で示される亜リン酸エステル類の含有量が、前記ポリエステル100重量部に対して0.005〜3重量部である請求項1記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
式(II)で示される化合物及び中和剤の含有量合計が、前記ポリエステル100重量部に対して0.005〜3重量部であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
(C)成分が、式(II)で示される化合物及び中和剤の両方を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
式(I)で示される亜リン酸エステル類と式(II)で示される化合物との重量比が、1:0.1〜1:10の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のポリエステル組成物。

【公開番号】特開2010−31251(P2010−31251A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147303(P2009−147303)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】