説明

ポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法およびポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体

【課題】高発泡倍率で、耐熱性、低温脆性、均一な厚みのポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を提供する。
【解決手段】下記の条件のポリエチレン系樹脂(I)20重量%〜100重量%と物理発泡剤とを溶融混練して押出した発泡パリソンをブロー成形する。(A)密度0.935g/cm以上、(B)190℃の溶融張力1cN以上、(C)190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレイト1g/10分以上、(D)DSC法により、23℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱後、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却し、再び10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱して得られるDSC曲線における全融解熱量の1/4の熱量と、23℃から10℃/分の昇温速度で160℃まで加熱し、160℃で3分保持後、結晶化温度+3℃の温度まで50℃/分の降温速度で冷却した時のDSC曲線の等温結晶化熱量とが等しくなる等温結晶化時間が、45秒以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体(以下、これを単に「成形体」または「発泡ブロー成形体」ということがある。)およびその製造方法に関し、詳しくは、高密度のポリエチレン系樹脂を含む、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体およびその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、物理発泡剤を含有する発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形して、発泡ブロー成形体を得ることは、一般的に知られている。
例えば、特許文献1には、物理発泡剤を含有する発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形し、発泡ブロー成形体を得るに際して、高密度ポリエチレン系樹脂と低密度ポリエチレン系樹脂とを特定の比率で配合した基材樹脂を使用することにより発泡ブロー成形体が得られたことが開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、高密度ポリエチレンを使用した発泡倍率が1.3倍程度の低発泡倍率の発泡ブロー成形体が開示されている。
また、近年、発泡性、発泡体の物性等を改良したポリエチレン系樹脂が、特許文献3や特許文献4に提案されている。特許文献3には、高密度ポリエチレンに特定数の長鎖分岐を導入し、溶融張力を高めたポリエチレン系樹脂を用いることにより、良好な発泡成形体が得られることが開示されている。特許文献4には、160℃における溶融張力が80mN以上の無架橋の高密度ポリエチレン系樹脂を用い、発泡剤として炭酸ガスを使用し、押出時の樹脂温度を樹脂の融点より−9〜−7℃の範囲で押出し、断熱性が高く、耐熱性、低温脆性およびリサイクル性を備えた高密度ポリエチレン系樹脂発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4084209号公報
【特許文献2】特表2001−527106号公報
【特許文献3】特開2006−96910号公報
【特許文献4】特開2008−222818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにポリエチレン系樹脂の成形性を改良して発泡体を得る種々の手段が報告されている。
しかし、一般的に、高密度ポリエチレン系樹脂を使用して発泡成形を行う場合には、高密度ポリエチレン系樹脂の結晶化度が高く、僅かな温度変化により樹脂の溶融張力が大きく変化し、成形可能な温度範囲が非常に狭くなるため、成形性に劣るという問題がある。このような高密度ポリエチレン系樹脂の成形性を解決するものとして、前記の特許文献3、4の技術が開示されている。しかし、高密度ポリエチレン系樹脂を発泡ブロー成形する場合においては、単に押出発泡により発泡体を得るだけではなく、ドローダウン、セルの潰れ等を考慮しながら、発泡パリソンを軟化状態でブロー成形しなければならない。このため、外観、断熱性、成形性等が不十分なものとなり易く、また発泡倍率、厚み、気泡のセル径等を広範囲に調整することも困難である。従って、発泡ブロー成形においては、高密度ポリエチレン系樹脂を含有する発泡ブロー成形体を得ることは、押出発泡による発泡体を得るのに比べて更に困難となる。
また、高密度ポリエチレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と比較して、融解熱量が大きい。このため、発泡ブロー成形においては、結晶化の影響を大きく受け、単に樹脂の溶融張力や流動性を改良しただけでは、発泡ブロー成形を制御できず、高発泡倍率の発泡ブロー成形体を得ることはできなかった。
【0006】
したがって、高密度ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得るためには、低密度ポリエチレンを相当量配合することにより、成形性を向上させる必要があった。特許文献1は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを特定比率で配合して、発泡ブロー成形体を得ることはできるが、高発泡倍率で薄肉な発泡ブロー成形体を得るには課題を残すものであった。また、得られた発泡ブロー成形体においては、耐熱性や剛性の点で課題を残すものであった。
また、特許文献2には高密度ポリエチレンのみを使用した発泡ブロー成形体が記載されているが、発泡ブロー成形体を得る際のドローダウン、セルの潰れ等を考慮しながら発泡パリソンのブロー成形しなければならない等の点から低発泡倍率の発泡ブロー成形体しか得ることはできず、実用に供する高発泡倍率の発泡ブロー成形体を得ることは困難であった。
一方、特許文献3、4には、発泡性を改良したポリエチレン系樹脂を用いて、棒状の発泡体等を得ることは開示されているが、発泡ブロー成形体は得られていない。前記特許文献3あるいは4に開示された技術を発泡ブロー成形体の製造に適用しても、発泡ブロー成形体を得る際の上述の問題から、良好な発泡ブロー成形体を得ることは困難であり、耐熱性を有し、且つ高発泡倍率の高密度ポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることは、殆ど不可能に近かった。
【0007】
耐熱性を有する発泡ブロー成形体としては、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂としたものにより得ることが可能である。しかし、ポリプロピレン系樹脂の発泡ブロー成形体では、ポリエチレン系樹脂に比べて低温脆性に欠けるといった課題があった。
このように、従来は、耐熱性を有し、且つ高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることは困難であった。
【0008】
本発明による製造方法は、上記の課題を解決すべく為されたものであり、密度の高いポリエチレン系樹脂を発泡層としても、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることができ、さらには薄肉で厚みの均一なポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることができる製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、高密度ポリエチレン系樹脂を発泡層とし、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体、さらには耐熱性、断熱性、低温脆性や軽量性を有し、薄肉で厚みの均一なポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、原料のポリエチレン系樹脂や発泡ブロー成形体を形成している樹脂について種々の検討を行い、本発明を為すに至った。
すなわち、本発明は、以下に示すポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法およびそれによる発泡ブロー成形体に関る。
【0010】
[1]下記(A)〜(D)の条件の全てを満足するポリエチレン系樹脂(I)20重量%〜100重量%を含むポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを溶融混練してなる発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形することを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(A)密度が0.935g/cm以上、
(B)190℃における溶融張力が1cN以上、
(C)190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレイトが1g/10分以上、
(D)熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により、前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱して得られる融解熱量測定時のDSC曲線における全融解熱量の1/4の熱量と、
前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で160℃まで加熱し、160℃で3分保持後、前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化温度+3℃の温度まで50℃/分の降温速度で冷却し、前記結晶化温度+3℃の温度条件下で等温結晶化させた時に得られる等温結晶化を示すDSC曲線における等温結晶化熱量とが等しくなるまでの等温結晶化時間が、45秒以上。
【0011】
[2]物理発泡剤を含有する発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形して得た発泡ブロー成形体において、
該発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂は、密度が0.935g/cm以上のポリエチレン系樹脂であり、該発泡ブロー成形体の発泡層の見かけ密度が0.1g/cm以上0.7g/cm未満であり、JIS K 6767(1999)に準拠した120℃の条件下における加熱寸法変化測定において該発泡ブロー成形体の加熱寸法変化率が5%以下であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体。
【0012】
[3]前記発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の全融解熱量が160〜220J/gであることを特徴とする前記[2]に記載のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体。を要旨とするものである。
【0013】
本発明において、前記(A)〜(D)の条件の全てを満足するポリエチレン系樹脂を「ポリエチレン系樹脂(I)」と記すことがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡ブロー成形体の製造方法により、密度0.935g/cm以上のポリエチレン系樹脂を発泡層とする高発泡倍率の発泡ブロー成形体を得ることができ、さらには薄肉で厚みの均一な発泡ブロー成形体を得ることが可能となる。
また、本発明の発泡ブロー成形体は、耐熱性を有し、且つ高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体である。さらには、断熱性、低温脆性や軽量性を有し、機械的物性の良好な発泡ブロー成形体である。本発明の発泡ブロー成形体は、特に、自動車の空調用のダクトとして有用であり、また保温、保冷容器、電化製品部材、自動車部材、緩衝部材、フロート等にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の発泡パリソンを説明する図面。
【図2】本発明の(A)〜(D)の条件を満たすポリエチレン系樹脂(I)のメルトテンション(MT)とメルトフローレイト(MFR)との関係を示すグラフ。
【図3】熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により得られた、前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱して得られる融解熱量測定時のDSC曲線を示す。
【図4】熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により、前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で160℃まで加熱し、160℃で3分保持後、前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化温度+3℃の温度まで50℃/分の降温速度で冷却し、前記結晶化温度+3℃の温度条件下で等温結晶化させた時に得られる等温結晶化を示すDSC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、原料樹脂として前記の(A)〜(D)の条件の全てを満足するポリエチレン系樹脂(I)を20重量%〜100重量%含むポリエチレン系樹脂が用いられる。前記の(A)〜(D)の条件を満たすポリエチレン系樹脂(I)の配合量が少なすぎる場合には、発泡ブロー成形に適する発泡パリソンを得ることができず、発泡ブロー成形体を得ることができない。上記ポリエチレン系樹脂(I)の配合量は、好ましくは、30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%超である。
本発明において使用する前記ポリエチレン系樹脂(I)が、(A)〜(D)の条件を全て満足することによって、発泡ブロー成形に適する発泡性樹脂溶融物が得られ、成形性の良好な発泡パリソンが得られる。
【0017】
尚、本発明の目的効果が達成されることを前提条件として、前記ポリエチレン系樹脂(I)に対して、他の重合体80重量%〜0重量%を混合したポリエチレン系樹脂を使用して本発明の発泡ブロー成形体とすることができる。他の重合体の配合量は、好ましくは、70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは30重量%未満である。
他の重合体としては、前記ポリエチレン系樹脂(I)以外の他の樹脂、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状超低密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂等のポリエチレン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。これらの他の重合体としてはリサイクルの観点から、前記ポリエチレン系樹脂(I)以外のポリエチレン系樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
特に、低密度ポリエチレン系樹脂を配合する場合、耐熱性を必要とする用途には、ポリエチレン系樹脂中の低密度ポリエチレン系樹脂の配合量が30重量%未満、さらには15重量%以下、特に10重量%以下であることが好ましい。低密度ポリエチレン系樹脂の配合量が増加するほど、発泡ブロー成形体の加熱寸法変化率は増加し、耐熱性が得られ難くなる。
【0019】
本発明において、前記ポリエチレン系樹脂(I)としては、エチレン単独重合体またはエチレン成分単位が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上のエチレン系共重合体、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
前記ポリエチレン系樹脂(I)としては、例えば、東ソー株式会社製ポリエチレン(グレード名:06S55A、08S55A)、日本ポリエチレン株式会社製ポリエチレン(「ノバテックHD」グレード名:HJ362N、HS451)などを用いることができる。
【0020】
また、本発明における前記ポリエチレン系樹脂(I)として、リサイクルした再生ポリエチレン系樹脂を使用することもできる。具体的には、前記ポリエチレン系樹脂(I)を含有する発泡成形体などを粉砕、脱泡した後、再ペレット化して再生樹脂としたものを用いる。
【0021】
本発明において、前記ポリエチレン系樹脂(I)の密度は、0.935g/cm以上である。密度が0.935g/cm未満では、所謂高密度ポリエチレン系樹脂としての特性である耐熱性、低温脆性、剛性を発現することができず、本発明の所期の目的とする耐熱性に優れたポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることが困難となる。前記ポリエチレン系樹脂(I)の密度は、好ましくは0.938g/cm〜0.980g/cm、さらに好ましくは0.940g/cm〜0.970g/cmである。
【0022】
前記ポリエチレン系樹脂(I)のメルトテンション(MT)は、1cN以上であり、MTは1〜10cNであることが好ましい。MTが上記範囲である場合には、発泡ブロー成形時にドローダウンが発生せず、気泡の変形、破泡等が生じ難くなる。上限は発泡ブロー成形体を得ることが可能な値であることを要することから概ね16cN程度であることが望ましい。
【0023】
また、前記ポリエチレン系樹脂(I)のメルトフローレイト(MFR)は、1g/10分以上である。MFRが大き過ぎると発泡ブロー成形時にドローダウンが発生する虞があることから、MFRの上限は概ね10g/10分以下であることが望ましい。さらには、MFRは2〜9g/10分であることがより好ましい。
MFRが上記範囲にある場合には、発泡ブロー成形に好適な溶融樹脂の流動性を有し、良好な成形性を有する発泡パリソンが得られる。MFRが小さすぎる場合には、押出温度を高くしなければ樹脂溶融物の押出しが困難となり、押出温度を高温にすると発泡剤が逃散して、目的とする高発泡倍率の発泡ブロー成形体を得ることが困難となる虞がある。
【0024】
さらに、前記ポリエチレン系樹脂(I)のメルトテンション(MT)とメルトフローレイト(MFR)は、以下の関係式を満たすことが好ましい。発泡ブロー成形では、発泡パリソンを押出方向に延伸することが制限されるため、発泡パリソンを一定の形状に維持するには、溶融張力を表すMTと溶融時の流動性を表すMFRとの下記関係式において、log(MT)の下限としては、式(1)、より好ましくは式(2)を満たすことが好ましい。
(数1)
log(MT)> ―0.1 × MFR + 0.5 (1)
(数2)
log(MT)> ―0.1 × MFR + 0.9 (2)
また、log(MT)の上限としては、式(3)を満たすことが好ましい。
(数3)
log(MT)< ―0.1 × MFR + 1.5 (3)
前記(1)〜(3)式は、図2に基づくものであり、X軸にMFRをプロットし、Y軸にlog(MT)をプロットした場合に、該プロットが上記特定範囲に存在する場合に、発泡ブロー成形体を得るために好適な発泡パリソンが得られ、発泡ブロー成形性が向上することを示すものである。
【0025】
前記メルトテンション(MT)は、株式会社東洋精機製作所製のメルトテンションテスターII型によって測定することができる。具体的には、孔径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから樹脂温度190℃、押出ピストン速度10mm/分の条件で樹脂を紐状に押出し、該紐状物を直径45mmの張力検出プーリーに掛けた後、5rpm/秒の程度の割合で捲取り速度を徐々に増加させて行きながら直径50mmの捲取りローラーで捲取り、張力検出用プーリーと連結された検出器により検出されるMTの値である。
【0026】
本発明において上記MFRの値は、JIS K7210(1976)に基づいて、温度190℃、荷重2.16kgの条件にて測定した値である。
【0027】
なお、発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂のメルトテンション(MT)及びメルトフローレイト(MFR)を測定する場合には、発泡ブロー成形体の発泡層から採取したサンプル片を200℃の真空オーブン中にて15分程度加熱溶融して脱泡した試料を、前述の方法によって測定する。
【0028】
本発明の前記ポリエチレン系樹脂(I)は、熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により、前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱した時に得られる融解ピークのDSC曲線における全融解熱量の1/4の熱量と、前記ポリエチレン系樹脂(I)2±0.2mgを窒素雰囲気下で23℃から10℃/分の昇温速度で160℃まで加熱し、160℃で3分保持後、前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化温度+3℃の温度まで50℃/分の降温速度で冷却し、前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化温度+3℃の温度条件下で等温結晶化させた時に得られる等温結晶化を示すDSC曲線における等温結晶化熱量とが等しくなるまでの等温結晶化時間(1/4等温結晶化時間)が、45秒以上である。
【0029】
前記ポリエチレン系樹脂(I)における前記1/4等温結晶化時間が上記範囲であれば、発泡パリソン内部に空気等の気体を吹き込んで賦形する際に、賦形が終了する前に、固化することがなく、ブロー成形に好適な発泡パリソンが得られる。1/4等温結晶化時間の下限は、55秒以上であることが好ましい。また、等温結晶化熱量が前記全融解熱量の1/4の熱量に達しない場合や、前記1/4等温結晶化時間が300秒を超える場合には、発泡ブロー成形時の前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化度が低くなり、前記発泡ブロー成形体の発泡層を形成する樹脂が気泡を維持し難くなることから、1/4等温結晶化時間の上限は300秒以下、さらには200秒以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の前記ポリエチレン系樹脂(I)において、融解熱量の測定は、以下のようにして行なった。前記ポリエチレン系樹脂(I)の融解ピーク及び融解熱量はJIS K7122(1987)に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる。即ち、試料約2〜10mgを窒素雰囲気下で、熱流束示差走査熱量計によって23℃から200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱して得られる、融解熱量測定時のDSC曲線から求められる。融解ピークは樹脂の融解熱に由来する吸熱曲線ピークであり、該融解ピークの熱量は該融解ピークの面積に相当するものであり、全ての融解ピークの熱量の和を全融解熱量とした。具体的には、上記によりJIS K7122(1987)に基づき得られたDSC曲線上の試料の融解開始温度を60℃(点α)とし、試料の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。融解熱量はDSC曲線と線分(α−β)とによって囲まれる部分(図3斜線部分)の面積に相当する。尚、上記融解終了温度Tとは、最も高温側の融解ピークの高温側におけるDSC曲線とベースラインとの交点の温度をいう。
【0031】
また、本発明の前記ポリエチレン系樹脂(I)において、前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化温度は、前記ポリエチレン系樹脂(I)約2〜10mgを窒素雰囲気下で、熱流束示差走査熱量計によって23℃から200℃まで加熱した後、200℃から10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したときに得られる、JIS K7121に基づくDSC曲線に現れる発熱曲線ピークの頂点温度のことである。
【0032】
本発明において、前記ポリエチレン系樹脂(I)や発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の1/4等温結晶化時間は、以下のように測定したものである。
熱流束示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、熱流束示差走査熱量計DSC Q1000)を用いて、測定用試料2±0.2mgを、室温から昇温速度10℃/分で160℃まで加熱し、160℃で3分間保持後、測定樹脂の結晶化温度+3℃まで50℃/分の降温速度で冷却し、測定樹脂の結晶化温度+3℃の等温条件下で結晶化させ、等温結晶化時における等温結晶化に伴う発熱量Q(J/g)と、結晶化時間(秒)を測定した。なお、結晶化時間のゼロ点は、等温結晶化による発熱が開始した点Oとし、終了した点をPとした。前記測定により、発熱量を縦軸にし、結晶化時間を横軸にプロットした等温結晶化を示すDSC曲線が得られる(図4)。
別途、上述の方法により得られた測定樹脂の全融解熱量から、その1/4の熱量を算出する。そして、前記全融解熱量の1/4の熱量と、等温結晶化の熱量とが等しくなった時間を、1/4等温結晶化時間(秒)とした。
なお、等温結晶化条件である結晶化温度+3℃という測定温度は、押出された発泡パリソンを金型で賦形する直前の発泡パリソンの温度から決定したものである。
【0033】
本発明による前記ポリエチレン系樹脂(I)は、熱流束示差走査熱量測定による全融解熱量が160〜220J/gであることが好ましい。上記範囲内であれば、耐熱性を有すると共に、発泡温度や、金型内での冷却時間の管理が容易となる。さらには、全融解熱量は、170〜220J/gであることが好ましい。
【0034】
本発明における前記ポリエチレン系樹脂(I)の融点は123℃以上であることが望ましく、124〜133℃であることが好ましく、さらには125〜133℃であることがより好ましい。上記範囲内であれば、耐熱性に優れたポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることができる。なお、融点は、JIS K7121(1987)に基づいて熱流束示差走査型熱量測定による昇温測定で得られる吸熱曲線(DSC)の最大面積の融解ピークの頂点温度である。
【0035】
本発明で使用される発泡剤は、物理発泡剤が使用される。物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、沸点が押出温度以下の各種アルコール類、エーテル類等、二酸化炭素、窒素、水等が挙げられる。これらの発泡剤のうち、特に二酸化炭素が好ましい。またこれらの発泡剤は1種に限らず、2種以上の混合物として使用することもできる。
【0036】
本発明において発泡剤としては、二酸化炭素の割合が20〜100モル%であることが、発泡パリソンを金型間に挟んで成形する際の冷却時間や、成形後の発泡ブロー成形体の寸法安定性、物性の安定性、養生時間の短縮が図れるなどの点から好ましい。特に、二酸化炭素が70〜100モル%であることがより好ましい。発泡剤の使用量は所望する発泡倍率(見かけ密度)により適宜の量が使用されるが、ポリエチレン系樹脂1kg当たり、0.1〜0.8モル程度が好ましい。
【0037】
本発明の発泡ブロー成形体を得るに際して、通常、シリカ、タルク、クエン酸ナトリウム、重曹等の気泡調整剤がポリエチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部程度添加される。その他に所望に応じて、種々の添加剤を用いることができる。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、難燃剤、流動性向上剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、着色剤、抗菌剤、防黴剤、無機充填材等が例示される。
【0038】
本発明の発泡ブロー成形体は、前記ポリエチレン系樹脂(I)20重量%〜100重量%を含むポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを溶融混練してなる発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形することにより得ることができる。なお、本発明において発泡パリソンや発泡ブロー成形体は、発泡層のみからなるものの他に、発泡層の外面側及び/又は内面側に樹脂層を有するものであってもよく、前記発泡層の外面側及び/又は内面側に形成される樹脂層は共押出法により形成することができる。
【0039】
また、発泡パリソンを所望の形状に賦形するとき、発泡パリソン内の中空部に空気等の気体を吹き込み、さらに複数のブローピンを発泡パリソン内部へ挿入して、発泡パリソン外側表面(金型側表面)と金型面との間の空気を排出しながら、少なくとも一箇所のブローピンから気体(ブローエア)を供給して発泡パリソンをブロー成形し、賦形が完了した時点で、一方のブローピンから冷却用気体を供給しつつ他方のブローピンから冷却用気体を排出することにより発泡ブロー成形体内部を十分に冷却する方法を使用することもできる。
さらに、必要に応じて金型に設けられた吸気孔から発泡パリソン外側表面を吸引することもでき、発泡ブロー成形体を成形金型の形状に、より則した形状とすることができる。
金型内で発泡パリソンの中空部に気体を吹き込み成形する際には、気体の吹き込み時に、発泡パリソンの中空部最大温度および内圧を、一定の範囲内に維持することが望ましい。
【0040】
上記発泡パリソンの中空部最大温度は、70〜120℃であることが望ましい。中空部の温度が上記範囲内であれば、良好な発泡ブロー成形体を得ることが可能となる。発泡パリソンの中空部最大温度が高過ぎると発泡ブロー成形体の気泡が破泡したり、気泡が不均一になったり、吹き込む気体により気泡が押し潰される虞がある。一方、中空部内の温度が低すぎると十分な発泡が進行しないうちに固化し、所定の見掛け密度の発泡ブロー成形体が得られない虞がある。上記中空部最大温度は、気体吹き込み圧力や、吹き込む気体の温度を管理することにより、適宜変更することができる。中空部最大温度は発泡パリソン中空部の長さ方向における中央部分に温度測定具(具体的には温度計)を差込み、気体吹込み開始から終了までの間、発泡パリソンの中空部内の温度を測定した時の最高温度である。
【0041】
また、気体吹き込み圧力は0.15〜0.45MPaであることが望ましい。上記範囲内であれば、発泡ブロー成形体の内側の気泡が押し潰されことが少なく、均一な気泡径を有する発泡ブロー成形体が得られる。
【0042】
発泡ブロー成形時の発泡パリソンの内外温度差、すなわち、発泡パリソン内部側(中空部側)の温度と発泡パリソンの外側(金型面側)の温度との温度差は、発泡成形性、成形体の肉厚等に影響するので、近似していることが望ましく、0〜7℃、更に好ましくは0〜5℃の範囲とすることが好ましい。
【0043】
上記発泡パリソンの内外温度差は、ダイスリップから金型側に10cmの部分の発泡パリソン表面を、レーザー温度計にて5秒間照射し測定した。外側温度は発泡パリソンの外周の円周方向に等間隔で4箇所の温度を測定し、その平均値を外側温度とした。内面側を測定する場合は、内面を照射するように、発泡パリソンの一部を剥がして発泡パリソンの円周方向に等間隔で4箇所の温度を測定しその平均値を内面側温度とした。この内面側温度の平均値と外面側温度の平均値との差を内外温度差とした。
【0044】
本発明において、発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂は、密度0.935g/cm以上のポリエチレン系樹脂である。前記密度が0.935g/cm未満では、所謂高密度ポリエチレン系樹脂としての特性である耐熱性、低温脆性、剛性を発現することができず、本発明の所期の目的とする耐熱性に優れたポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることが困難となる。本発明において発泡ブロー成形体の発泡層を形成しているポリエチレン系樹脂の密度は、好ましくは0.938g/cm〜0.980g/cm、さらに好ましくは0.940g/cm〜0.970g/cmである。
【0045】
本発明により得られる発泡ブロー成形体の発泡層の見かけ密度は0.1g/cm以上0.7g/cm未満である。見かけ密度が小さすぎる場合には、用途によっては、曲げ強度、圧縮強度等の機械的物性が低下し実用に耐えないものとなる虞がある。見かけ密度が大きすぎる場合には、発泡倍率が低くなりすぎて発泡体としての断熱性や、軽量性を得ることができなくなる虞がある。発泡ブロー成形体の発泡層の見かけ密度は好ましくは0.1〜0.5g/cm、さらに好ましくは0.1〜0.4g/cmである。
【0046】
本発明の発泡ブロー成形体においては、JIS K6767(1999)に準拠した120℃の条件下における加熱寸法変化測定において、該発泡ブロー成形体の加熱寸法変化率が5%以下である。加熱寸法変化率が大きすぎる場合には、本願発明の目的である耐熱性を有する発泡ブロー成形体を得ることができない。従来の高密度ポリエチレン系樹脂を使用した発泡ブロー成形体では、低密度ポリエチレンを相当量含有していたため、低密度ポリエチレンの融点以上である120℃まで加熱すると、低密度ポリエチレンが軟化して発泡ブロー成形体の寸法に変化が見られ、上記範囲の加熱寸法変化率の発泡ブロー成形体を得ることは困難であった。特に、耐熱性を有するためには、加熱寸法変化率が4%以下であること好ましい。
特に、本発明の製造方法によれば、ポリエチレン系樹脂(I)を用いることによって、発泡ブロー成形体を形成している樹脂の密度を高くしても発泡ブロー成形体を得ることができ、120℃における加熱寸法変化率を5%以下とすることが可能となる。
【0047】
加熱寸法変化率は、JIS K6767(1999)の高温時の寸法安定性B法に準拠して測定され、測定用試料の発泡ブロー成形体を加熱用乾燥機内で、120℃の条件下において24時間加熱保持した後、23℃まで冷却し、発泡ブロー成形体の長手方向最大長さ部分における同一箇所の加熱前と加熱後の長さを測定し、次式により求められる値である。
加熱寸法変化率(%)=[(加熱前の発泡ブロー成形体の長手方向最大長さ−加熱後の発泡ブロー成形体の長手方向最大長さ)×100]÷[加熱前の発泡ブロー成形体の長手方向最大長さ]
なお、長手方向最大長さとは、発泡ブロー成形体の周方向及び厚み方向に直交する方向に向けて、発泡ブロー成形体の外表面に沿って長さを測定した時の最大値をいう。
なお、得られた発泡ブロー成形体の加熱寸法変化率の評価について、表4に示した。
【0048】
本発明における発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂は、下記(a)〜(c)の条件の全てを満足することが好ましい。下記(a)〜(c)の条件の全てを満足する場合には、発泡ブロー成形に適する発泡パリソンが得られ、本発明の発泡ブロー成形体を得ることができる。
(a)190℃における溶融張力が0.7cN以上、
(b)190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレイトが1g/10分以上、
(c)熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により、前記発泡層を形成している樹脂を23℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱して得られる融解熱量測定時のDSC曲線における全融解熱量の1/4の熱量と、前記発泡層を形成している樹脂を23℃から10℃/分の昇温速度で160℃まで加熱し、160℃で3分保持後、前記樹脂の結晶化温度+3℃の温度まで50℃/分の降温速度で冷却し、前記結晶化温度+3℃の温度条件下で等温結晶化させた時に得られる等温結晶化を示すDSC曲線における等温結晶化熱量とが等しくなるまでの等温結晶化時間(1/4等温結晶化時間)が40秒以上。
(なお、前記(a)〜(c)の条件は、発泡層の原料樹脂である前記ポリエチレン系樹脂(I)にほぼ対応している。しかし、押出機内での溶融混錬工程や、配合される樹脂等の影響により、MFR,MT,発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の1/4等温結晶化時間は、前記ポリエチレン系樹脂(I)とは異なっている場合がある。)
【0049】
前記発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の1/4等温結晶化時間は、50〜250秒であることが好ましい。上記範囲内であれば、発泡パリソン内部に空気等の気体を吹き込んで賦形する際に、賦形が終了する前に、固化することがなく、ブロー成形に好適な発泡パリソンが得られる。
前記1/4等温結晶化時間は、本発明の所期の目的を阻害しない範囲内で、前記ポリエチレン系樹脂(I)に対して他の樹脂を配合することによって、適宜調整することができる。特に、低密度ポリエチレン系樹脂を配合した場合には、1/4等温結晶化時間が長くなる傾向にあることから、成形性を向上させることもできる。
【0050】
前記発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の熱流束示差走査熱量測定による全融解熱量は160〜220J/gであることが好ましい。上記範囲内であれば、耐熱性を有すると共に、発泡温度や、金型内での冷却時間の管理が容易となる。さらには、全融解熱量は、170〜220J/gであることが好ましい。
【0051】
本発明においては、低密度ポリエチレンを混合して成形性を向上させることなく、発泡ブロー成形体を得ることができるので、発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の全融解熱量を高くすることができるため、120℃における加熱寸法変化率が5%以下の発泡ブロー成形体を得ることが可能となる。前記全融解熱量を高くする方法としては、前記ポリエチレン系樹脂に配合する低密度ポリエチレン系樹脂の配合量を減らすこと等が挙げられる。
【0052】
なお、発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の結晶化温度、結晶化熱量、全融解熱量等を測定する場合には、発泡ブロー成形体の発泡層から採取したサンプル片を、前述の方法と同様にして行なうことができる。
【0053】
本発明の発泡ブロー成形体は、概ね平均厚み0.5〜20mmである。発泡ブロー成形体の平均厚みは、0.5〜10mmであることが好ましく、特に薄肉の発泡ブロー成形体を対象とする場合は0.5〜5mmであることが好ましい。特に薄肉の発泡ブロー成形体においては、平均厚みの制御が困難となるため、均一な厚みの発泡ブロー成形体を得ることが難しくなる。
【0054】
本発明における発泡ブロー成形体の平均厚みとは以下の方法により測定される値である。発泡ブロー成形体の長手方向中央部および長手方向両端部付近とそれらの中間部分の計5箇所の長手方向に直交する垂直断面に対して、各垂直断面の周方向において等間隔に8箇所の垂直断面の厚みの測定を行い、得られた40箇所の厚みの算術平均値を発泡ブロー成形体の平均厚みとする。
【0055】
本発明の発泡ブロー成形体の厚み方向の平均気泡径aは、0.05〜1.0mmであることが望ましく、さらには0.05〜0.9mmであることが好ましい。
【0056】
本発明の発泡ブロー成形体において、気泡変形率a/b、及びa/cがそれぞれ0.2〜1.3であることが好ましい(但し、発泡ブロー成形体において、aは成形体厚み方向の平均気泡径、bは成形体長手方向の平均気泡径、cは成形体周方向の平均気泡径である。)。気泡変形率a/b、及びa/cは発泡パリソンのドローダウン量やブロー比、成形時の気体吹き込み圧力により影響を受ける。上記範囲内であれば、気泡が扁平となることなく、良好な機械的物性を維持することができる。このような観点から、気泡変形率a/b、a/cは、それぞれ0.3〜1.0が好ましい。
【0057】
平均気泡径aの測定は、ポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の長手方向に直交する垂直断面を対象に、対になって存在する対向する発泡ブロー成形体の壁の垂直断面の各々の中央部及び両端部付近(計6箇所)を拡大投影し、投影画像上の厚み方向に全厚みに相当する長さx(mm)の線分を引き、その線分と交差する気泡数をカウントし、気泡径(mm)=x/(気泡数)により求めた値を各垂直断面の気泡径とし、この操作により求めた計6箇所の垂直断面の気泡径の算術平均値を平均気泡径aとする。
【0058】
平均気泡径bの測定は、ポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の周方向および厚み方向と直交する方向(長手方向)に該発泡ブロー成形体を二等分して得られる垂直断面を対象に、対になって存在する対向する発泡ブロー成形体の壁の垂直断面の各々の中央部及び両端部付近(計6箇所)を拡大投影し、投影画像上にて該発泡ブロー成形体の厚みを二等分する位置であって、且つ、該発泡ブロー成形体の長手方向に拡大前の実際の長さ30mmに相当する長さの線分を引き、その線分と交差する気泡数をカウントし、気泡径(mm)=30/(気泡数−1)により求めた値を各垂直断面の気泡径とし、この操作により求めた計6箇所の垂直断面の気泡径の算術平均値を平均気泡径bとする。
【0059】
また、平均気泡径cの測定は、ポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の中央部及び両端部付近の周方向断面(計3箇所)を拡大投影した投影画像上にて、該発泡ブロー成形体の厚みを二等分する位置であって、且つ、該発泡ブロー成形体の周方向に拡大前の実際の長さ60mmに相当する長さの線分(曲線の場合もある)を引き、その線分と交差する気泡数をカウントし、気泡径(mm)=60/(気泡数−1)により求めた値を各周方向断面の気泡径とし、この操作により求めた計3箇所の周方向断面の気泡径の算術平均値を平均気泡径cとする。
但し、平均気泡径の測定箇所としては、気泡が大きく変形していない部分(気泡が潰された部分や大きく引伸ばされたところが殆どない部分を意味する)とする。
【0060】
本発明の発泡ブロー成形体の発泡層は、独立気泡率が60%以上であることが好ましい。独立気泡率が低すぎる場合は、優れた断熱性、機械的物性のものを得ることができない虞がある。かかる観点からは、本発明の発泡ブロー成形体の発泡層の独立気泡率は、70%以上であることが好ましい。
特に、本発明においては、高発泡倍率であり、且つ平均厚みの薄い発泡ブロー成形体であっても、独立気泡率の高い優れた発泡ブロー成形体を得ることができる。
【実施例】
【0061】
以下に本発明の実施例、比較例を記載する。なお、本発明は実施例の記載に限定されるものでない。
【0062】
実施例1
ポリエチレン系樹脂(I)として東ソー株式会社製ポリエチレン系樹脂、グレード名:06S55A(密度:0.950g/cm、MFR:4.5g/10分、MT:4.5cN、他の物性は表1に示した。)100重量部、気泡調整剤マスターバッチ(ポリエチレン樹脂80重量部に対してタルク20重量部を配合した気泡調整剤マスターバッチ)3重量部を、口径65mmの押出機内にて加熱下に溶融混練した樹脂溶融物に、押出機の発泡剤注入口から発泡剤として二酸化炭素を樹脂1kg当たり表1の圧入量で供給、混練し、発泡性樹脂溶融物とした。該発泡性樹脂溶融物を押出機に連結したアキュームレータに充填し、アキュームレータの先端に配置した環状ダイより、該発泡性樹脂溶融物を表1に示す押出温度および吐出速度で押出して発泡パリソンを形成した。該発泡パリソンの内外温度差は2℃であった。次いで発泡パリソンを軟化状態で、環状ダイ直下に配置された金型間に配置して金型を型締めし、金型の空気導入口から発泡パリソンの内部に空気を吹き込み、表1の圧力条件でブロー成形した。賦形するに際して複数のブローピンを発泡パリソンに挿入し、一箇所のブローピンから気体(ブローエア)を供給して発泡パリソンをブロー成形して賦形し、賦形が完了した時点で、一方のブローピンから冷却用気体を供給しつつ他方のブローピンから冷却用気体を排出することにより成形体内部を十分に冷却した。このブロー成形時に、表1に示す中空部の最大温度を記録した。尚金型は中空ダクト成形体用の金型を用いた。得られた成形体の物性は表2、表3に示した。
【0063】
実施例2
実施例1で得た発泡ブロー成形体の粉砕物を、脱泡した後、再度ペレット化して再生ポリエチレン系樹脂を調製した。この再生ポリエチレン系樹脂は、密度:0.950g/cm、MFR:5.9g/10分、MT:2.2cN、結晶化温度:118.3℃、1/4結晶化時間:84秒であった。
この再生ポリエチレン系樹脂80重量部と、実施例1で使用したポリエチレン系樹脂(東ソー株式会社製ポリエチレン系樹脂、グレード名:06S55A)20重量部とを混合した樹脂を前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示した。
【0064】
実施例3
前記ポリエチレン系樹脂(I)として日本ポリエチレン株式会社製ポリエチレン系樹脂「ノバテックHD」、グレード名:HJ362N(密度:0.953g/cm、MFR:5.0g/10分、MT:2.0cN、その他物性は表1に示す)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示した。
【0065】
実施例4
実施例3で得た発泡ブロー成形体の粉砕物を、脱泡した後再度ペレット化して再生ポリエチレン系樹脂を調製した。この再生ポリエチレン系樹脂は、密度:0.953g/cm、MFR:5.4g/10分、MT:1.8cN、結晶化温度:119.3℃、1/4結晶化時間:89秒であった。
この再生ポリエチレン系樹脂80重量%と、実施例3で使用したポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」、グレード名:HJ362N)20重量%とを混合した樹脂を、前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示した。
【0066】
実施例5
東ソー株式会社製ポリエチレン系樹脂、グレード名:08S55A(密度0.952g/cm、MFR:3.6g/10分、MT:9.1cN、その他物性は表1に示す)を、前記ポリエチレン系樹脂(I)として用いた以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示した。
【0067】
実施例6
実施例5で得た発泡ブロー成形体を粉砕、脱泡した後再度ペレット化し再生ポリエチレン系樹脂を調製した。
この再生ポリエチレン系樹脂は、密度:0.952g/cm、MFR:4.2g/10分、MT:8.4cN、結晶化温度:115.5℃、1/4結晶化時間:90秒であった。この再生ポリエチレン系樹脂80重量%と、実施例5に使用したポリエチレン樹脂(東ソー株式会社製ポリエチレン、グレード名:08S55A)20重量%とを混合した樹脂を、前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示した。
【0068】
実施例7
実施例6で使用した再生ポリエチレン系樹脂を、前記ポリエチレン系樹脂(I)として用いた以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0069】
実施例8
実施例6で使用した再生ポリエチレン系樹脂を前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用し、該再生ポリエチレン系樹脂90重量%と、低密度ポリエチレン樹脂(日本ユニカー株式会社製ポリエチレン、グレード名:NUC8008、密度:0.917g/cm、MFR:4.7g/10分、MT:6.2cN、融点:107℃)10重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0070】
実施例9
実施例6で使用した再生ポリエチレン系樹脂を前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用し、該再生ポリエチレン系樹脂90重量%と、低密度ポリエチレン系樹脂(住友化学株式会社製ポリエチレン、密度:0.922g/cm、MFR:0.3g/10分、MT:13.4cN、融点:109℃)10重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡成形体の物性を表2、表3に示す。
【0071】
実施例10
実施例6で使用した再生ポリエチレン系樹脂を前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用し、該再生ポリエチレン系樹脂85重量%と、実施例9に使用した低密度ポリエチレン樹脂15重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0072】
実施例11
実施例6で使用した再生ポリエチレン系樹脂を前記ポリエチレン系樹脂(I)として使用し、該再生ポリエチレン系樹脂90重量%と、高密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」、グレード名:HJ560、密度:0.964g/cm、MFR:8.0g/10分、MT:1.2cN、1/4結晶化時間:43秒)10重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0073】
実施例12
前記ポリエチレン系樹脂(I)として東ソー株式会社製ポリエチレン系樹脂、グレード名:08S55A 70重量%と、実施例9に使用した低密度ポリエチレン樹脂30重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
(この記載をこの実施例だけに記載する理由が不明。不要と思いますので削除)
【0074】
実施例13
前記ポリエチレン系樹脂(I)として東ソー株式会社製ポリエチレン系樹脂、グレード名:08S55A 30重量%と、実施例11で使用したポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」グレード名:HJ560、)70重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0075】
実施例14
実施例3で使用したポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」、グレード名:HJ362N)を使用し、ブロー成形時における中空部の最大温度および空気吹き込み圧力を表1に示す条件で成形した以外は、実施例3と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0076】
実施例15
実施例3で使用したポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」、グレード名:HJ362N)を使用し、ブロー成形時における中空部の最大温度および空気吹き込み圧力を表1に示す条件に変更して成形した以外は、実施例3と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0077】
実施例16
実施例3で使用したポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」、グレード名:HJ362N)を使用し、ブロー成形時における中空部の最大温度を表1に示す条件に変更して成形した。なお、型締め後、金型の空気導入口から空気を吹き込み、発泡ブロー成形体を成形する際に実施例1のような気体の排出は行なわず、吹き込みのみ行なった。上記以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0078】
実施例17
日本ポリエチレン株式会社製ポリエチレン系樹脂「ノバテックHD」、グレード名:HS451(密度0.954g/cm、MFR=3.0g/10分、MT=3.0cN、融点134℃)を、前記ポリエチレン系樹脂(I)として用いた以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0079】
実施例18
実施例16で得た発泡ブロー成形体を粉砕、脱泡した後、再度ペレット化して、再生ポリエチレン系樹脂を調製した。この再生ポリエチレン系樹脂は、密度0.953g/cm、MFR=4.3g/10分、MT=2.2cN、融点131℃、結晶化温度:119.5℃、1/4結晶化時間:60秒であった。この再生ポリエチレン系樹脂80重量%と、実施例17に使用した日本ポリエチレン株式会社製ポリエチレン系樹脂「ノバテックHD」、グレード名:HS451 20重量%とを混合した樹脂を、前記ポリエチレン系樹脂(I)として用いた以外は、実施例1と同様にして発泡ブロー成形体を得た。得られた発泡ブロー成形体の物性を表2、表3に示す。
【0080】
比較例1
高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」、グレード名:HB333RE、密度0.951g/cm、MFR:0.3g/10分、MT:8.3cN、その他物性は表1に示す。)を前記ポリエチレン系樹脂(I)に替え、使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂溶融物をダイから押出した。しかし、発泡ブロー成形体を得ることはできなかった。押出後の樹脂の物性を表2に示した。
【0081】
比較例2
高密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」グレード名:HJ560)を前記ポリエチレン系樹脂(I)に替え、使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂溶融物をダイから押出した。しかし、発泡ブロー成形体を得ることはできなかった。押出後の樹脂の物性を表2に示した。
【0082】
比較例3
高密度ポリエチレン樹脂(株式会社製プライムポリマー製「ハイゼックス」、グレード名:1108J、密度0.961g/cm、MFR:8.0g/10分、MT:0.8cN、表1に示す1/4結晶化時間を有する。)を前記ポリエチレン系樹脂(I)に替え、使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂溶融物をダイから押出した。しかし、発泡ブロー成形体を得ることはできなかった。押出後の樹脂の物性を表2に示した。
【0083】
比較例4
前記ポリエチレン系樹脂(I)として東ソー株式会社製ポリエチレン系樹脂、グレード名:08S55A 10重量%と、ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD」グレード名:HJ560、密度:0.964g/cm、MFR:8.0g/10分、MT:1.2cN、1/4結晶化時間:43秒)90重量%とを混合した樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂溶融物をダイから押出した。しかし、発泡ブロー成形体を得ることはできなかった。押出後の樹脂の物性を表2に示した。
【0084】
発泡ブロー成形体の「断熱性」、「肉厚変動係数(肉厚のバラツキ性)」、「独立気泡率」を下記により評価した。評価結果を表3、表4に示した。
【0085】
(断熱性評価方法)
雰囲気温度30℃、80%RH下で、温度5℃、風速8m/秒の冷風をダクト(長さ1m)内に30分間流した。30分間経った時点での入口と出口の温度を測定し評価した。
○:入口と出口の冷風の温度差が7℃未満である。
×:入口と出口の冷風の温度差が7℃以上である。
【0086】
(変動係数)
変動係数Cv(%)は、発泡ブロー成形体の厚さの標準偏差(mm)/発泡ブロー成形体厚さの平均値(mm)×100で求められる値であり、平均値のバラツキ度合いを現わす指標である。なお、成形体の厚さの標準偏差(V)は次式(4)により求められる。
(数4)
V={Σ(Ti−Tav)/(n−1)}1/2 (4)
式(4)において、Tiは18箇所の個々の厚さの測定値を、Tavは平均厚さを、nは測定定数(具体的には18である)をそれぞれ表し、Σは個々の測定値について算出した(Ti−Tav)を全て加えて算出する。平均厚さTavについては、前記した厚さの平均値である。
変動係数(Cv)は(4)式を用いて、次式(5)によって求められる。
(数5)
Cv(%)=(V/Tav)×100 (5)
本発明の発泡ブロー成形体においては肉厚の変動係数(Cv)が60%以下であることが好ましい。上記範囲内である場合には、厚さのバラツキが小さい発泡ブロー成形体を得ることができ、肉厚が均一であるため、発泡ブロー成形体の断熱性が均一となると共に、圧縮強度等の機械的強度が向上する。好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは35%未満である。
【0087】
(独立気泡率)
発泡ブロー成形体の発泡層の独立気泡率は、発泡ブロー成形体の中央部及び両端部付近について計3箇所の独立気泡率を下記の手順にて測定し、それらの算術平均値とする。
独立気泡率は、発泡ブロー成形体の発泡層から試験片を採取し、ASTM D2856−70(1976再認定)の(手順C)によりVxを求め、下記(6)式により算出する。但し、試験片としては、気泡が大きく変形していない部分(気泡が潰された部分や大きく引伸ばされたところが殆どない部分を意味する。)から切り出したものを使用する。また、規定の体積の試験片が切り出せない場合は、複数の試験片を重ね合わせることにより規定の体積とする。
【0088】
(数6)
独立気泡率(%)=[Vx−Va(ρf/ρs)]×100/[Va−Va(ρf/ρs)](6)
Vx;試験片の実容積
(独立気泡部分の容積と樹脂部分の容積との和)(cm
Va;試験片の外形寸法から求められる見掛けの容積(cm
ρf;試験片の見掛け密度(g/cm
ρs;試験片の樹脂の密度(g/cm
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明による発泡ブロー成形体は自動車の空調用のダクトとして特に有用で有り、また保温容器、保冷容器、電化製品部材、自動車部材、緩衝部材、フロート等に有用である。
【符号の説明】
【0094】
α DSC曲線上の融解開始温度に相当する点。
β DSC曲線上の融解終了温度に相当する点。
T 融解終了温度。
O 発熱開始時間に相当する点。
P 発熱終了時間に相当する点。
Q 発熱量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)の条件の全てを満足するポリエチレン系樹脂(I)20重量%〜100重量%を含むポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを溶融混練してなる発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形することを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(A)密度が0.935g/cm以上、
(B)190℃における溶融張力が1cN以上、
(C)190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレイトが1g/10分以上、
(D)熱流束示差走査熱量測定(DSC)法により、前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱して得られる融解熱量測定時のDSC曲線における全融解熱量の1/4の熱量と、前記ポリエチレン系樹脂(I)を23℃から10℃/分の昇温速度で160℃まで加熱し、160℃で3分保持後、前記ポリエチレン系樹脂(I)の結晶化温度+3℃の温度まで50℃/分の降温速度で冷却し、前記結晶化温度+3℃の温度条件下で等温結晶化させた時に得られる等温結晶化を示すDSC曲線における等温結晶化熱量とが等しくなるまでの等温結晶化時間が、45秒以上。
【請求項2】
物理発泡剤を含有する発泡性樹脂溶融物をダイより押出して発泡パリソンを形成した後、該発泡パリソンを金型間に挟んでブロー成形して得た発泡ブロー成形体において、該発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂は、密度が0.935g/cm以上のポリエチレン系樹脂であり、該発泡ブロー成形体の発泡層の見かけ密度が0.1g/cm以上0.7g/cm未満であり、JIS K 6767(1999)に準拠した120℃の条件下における加熱寸法変化測定において該発泡ブロー成形体の加熱寸法変化率が5%以下であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体。
【請求項3】
前記発泡ブロー成形体の発泡層を形成している樹脂の全融解熱量が160〜220J/gであることを特徴とする請求項2に記載のポリエチレン系樹脂発泡ブロー成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260229(P2010−260229A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111947(P2009−111947)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】