説明

ポリオルガノシロキサン硬化物及び発光装置の製造方法

【課題】劣化が起こりにくく、硬化ムラの無いポリオルガノシロキサン硬化物を実現する。
【解決手段】気体状態の触媒とポリオルガノシロキサンとを、例えば蓋付きガラス容器の中で接触させてポリオルガノシロキサン硬化物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法、及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化性組成物は組成物中に触媒を混在させ、硬化させ硬化物を得ていた。硬化型シリコーンと言われるポリオルガノシロキサン組成物も、通常は組成物中に触媒を混在させ、硬化させてポリオルガノシロキサン硬化物を得ていた。
ポリオルガノシロキサン組成物は耐紫外線性、耐熱性等が従来のエポキシ組成物と比べ優れているため、発光装置に用いて好適であり、特には青色発光ダイオード、近紫外線発光ダイオードなどを備える発光装置に用いられる部材として特に好ましい(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−221308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリオルガノシロキサン硬化物を製造する際、組成物中に触媒を混在させることで硬化させる従来の製造方法では、触媒濃度が場所ごとに不均一になったり、触媒の濃度勾配が不連続になったりしやすかった。これは、原料であるポリオルガノシロキサン組成物に触媒を混合する時に、触媒の分散が十分に行われていないことが一因であったと考えられる。また、混合当初は十分に触媒が分散され、触媒濃度が均一であったり、触媒の濃度勾配が場所ごとに連続であったりしても、混合後、硬化完了するまでの間に触媒の凝集、沈降、析出などが生じ、触媒濃度の不均一化、及び場所ごとの濃度勾配の不連続化等が起こることがあったためと考えられる。なお、混合後、硬化完了するまでの間とは、例えば、保存時間;輸送やポッティング等のハンドリング時間;硬化時間等がある。
【0004】
前記の触媒濃度の不均一や濃度勾配の不連続は触媒として固体触媒又は蒸気圧の高い液体触媒を使用した場合に顕著であった。中でも、触媒とポリオルガノシロキサン組成物との親和性が低かったり密度が異なったりする場合は、触媒の十分な分散が特に困難であったり、分散後の不均一化等が特に起こりやすかったりした。
【0005】
このような触媒濃度の不均一や濃度勾配の不連続が生じると、ポリオルガノシロキサン硬化物中に触媒が高濃度で存在した部分が生じる。このような触媒が高濃度に存在する部分は、周辺部材を劣化させる傾向がある。
例えばスズ化合物触媒は、金属部材を腐蝕させる。したがって、例えば発光ダイオード等の金属部材を有する発光装置に従来のポリオルガノシロキサン硬化物を適用した場合、電極の腐蝕による電気抵抗の増大及び断線、反射部材の腐蝕による光取り出し効率の低下、光吸収による色調の変化、反射板の光エネルギー吸収による発熱などが生じることがあった。また、金属部材及び硬化物への添加剤等がスズ化合物触媒により原子化又はイオン化等を生じ、生成した物質がポリオルガノシロキサン硬化物中をマイグレーションし、その結果、絶縁性の低下及び着色などを生じることもあった。さらに、高濃度のスズ化合物触媒は、ポリオルガノシロキサン硬化物の熱分解及び光分解を促進させ、ポリオルガノシロキサン硬化物の着色及び気泡の発生等の原因となることもあった。
また、例えば白金系触媒は、硬化後の光照射及び加熱などにより黒色物質をポリオルガノシロキサン硬化物中に生成することがある。これは、白金系触媒が還元されることにより、黒色の白金又は白金化合物の微粒子が生成するためと推定される。このような黒色物質は、特に半導体発光装置等の発光装置に用いられる光学部材としてポリオルガノシロキサン硬化物を用いた場合に課題となる。
【0006】
一方、ポリオルガノシロキサン硬化物中で触媒濃度が低い部分が生じると、この部分では十分な硬化が行われないため、触媒濃度が高濃度である部分と低濃度である部分との間で光学特性及び電気的特性に分布を生じることがある。
【0007】
また、固体触媒又は液体触媒の中には揮発性のものがあるが、これら揮発性の触媒は、通常はポリオルガノシロキサン組成物の硬化が完了する前に表面より揮発し、反応系の外に排出されていた。このため、従来は揮発性の触媒を用いても十分な硬化が行われず、光学特性及び電気的特性に分布を生じることがあった。
【0008】
ところで、国際公開第00/078769号パンフレットには、触媒を含有させたポリオルガノシロキサンのアンモニアによる熱処理は提案されている。しかし、この技術ではポリオルガノシロキサン中に高濃度に触媒を含有させるため、上述したような触媒の不均一化が起こりやすい。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、劣化が起こりにくく、硬化ムラの無いポリオルガノシロキサン硬化物及び当該硬化物を備えた発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ポリオルガノシロキサン組成物に触媒を気体状態で接触させることにより、劣化し難く硬化ムラの無いポリオルガノシロキサン硬化物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、気体状態の触媒と液体状の硬化性ポリオルガノシロキサンとを接触させることを特徴とする、ポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法に存する。
このとき、前記ポリオルガノシロキサンとして、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとヒドロキシシリル基を有するポリオルガノシロキサンとを用いることが好ましい。
また、前記触媒として、ヒドロキシルアミノ基を有する化合物を用いることが好ましい。
さらに、前記ポリオルガノシロキサンとして、重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンを用いることも好ましい。
【0012】
本発明の別の要旨は、ポリオルガノシロキサン硬化物を含有する発光装置の製造方法であって、該ポリオルガノシロキサン硬化物を、前記の製造方法により製造することを特徴とする、発光装置の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法によれば、劣化が起こりにくく、硬化ムラの無いポリオルガノシロキサン硬化物を製造できる。
また、本発明の発光装置の製造方法によれば、劣化が起こりにくく、硬化ムラの無いポリオルガノシロキサン硬化物を備えた発光装置を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0015】
[1.概要]
本発明のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法では、少なくとも、気体状態の触媒(以下、適宜「硬化触媒」という)と、液体状の硬化性ポリオルガノシロキサン(以下適宜、単に「ポリオルガノシロキサン」という。)とを接触させて、ポリオルガノシロキサンを硬化させる。通常、ポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシロキサンを含む組成物(ポリオルガノシロキサン組成物)として用意され、このポリオルガノシロキサン組成物と硬化触媒とが接触させられるようになっている。
【0016】
[2.硬化触媒]
触媒とは、反応を促進する物質を指す。本発明に係る硬化触媒とは、特にポリオルガノシロキサンの硬化を促進させる物質を指す。
本発明に係る硬化触媒の例を挙げると、塩基性物質、酸性物質、中性物質、金属化合物などが挙げられる。
【0017】
塩基性物質としては、例えば、アンモニア;1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類等のアミン類;ヒドロキシルアミン類が挙げられる。
1級アミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等が挙げられる。
2級アミン類としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、サッカリン、ピペリジン等が挙げられる。
3級アミン類としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ジエチルトルイジン、エチルメチルプロピルアミン、イミダゾール、コリンアセテート、トリフェニルホスフェンアナリン、トリメチルシリルイミダゾール、エチレンジアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、トリエチレンジアミン、n−メチルピロリドン等が挙げられる。
ヒドロキシルアミン類はヒドロキシルアミノ基を有する化合物であり、例えば、ヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン、N−エチルヒドロキシルアミン、N−tert−ブチルヒドロキシルアミン、N−シクロヘキシルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジ−tert−ブチルヒドロキシルアミン、N−メチル,N−エチルヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
この中でもヒドロキシルアミン類が好ましく、特にN,N−ジメチルヒドロキシルアミン及びN,N−ジエチルヒドロキシルアミンが取り扱いの点で好ましい。
【0018】
酸性物質としては、例えば、有機酸、無機酸等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられる。
この中でも、酢酸が経済性及び取り扱いの点で好ましい。
【0019】
中性物質としては、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル等のホウ素化合物などが挙げられる。
【0020】
金属化合物としては、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族触媒;鉛系触媒、スズ系触媒、亜鉛系触媒、鉄系触媒、チタン系触媒、ジルコニア系触媒、ビスマス系触媒などが挙げられる。
白金系触媒としては、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等が挙げられる。
スズ系触媒としては、例えば、ジオクチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ等が挙げられる。
亜鉛系触媒としては、例えば、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
この中でも白金系触媒が好ましく、特に塩化白金酸が沸点及び取り扱いの点で好ましい。
【0021】
上述した硬化触媒の中でも、特に、ヒドロキシルアミン類が好ましい。ヒドロキシルアミン類は沸点及び分子量、並びに硬化触媒としての作用力が適切であるため、ポリオルガノシロキサンの分解を誘起するほどの高温やポリオルガノシロキサン自体が揮発するような減圧条件としなくても気化させることが容易であり、気相中の濃度や硬化温度を操作することによりポリオルガノシロキサンの硬化速度を容易に制御可能であり、さらには硬化後において開放条件下でポリオルガノシロキサン硬化物を加熱することにより不要となった硬化触媒の除去が容易である。
なお、硬化触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0022】
また、本発明に係る硬化触媒は、気体状態でポリオルガノシロキサンと接触させる。ここで気体状態とは、ポリオルガノシロキサンと接触する条件において気体の状態であることを意味する。したがって、本発明に係る硬化触媒は、保存時等の通常の状態(例えば、25℃1気圧での状態)では必ずしも気体でなくてもよく、固体状態、液体状態、気体状態及び超臨界状態等、その状態を問わない。
【0023】
気体状態の硬化触媒は、ポリオルガノシロキサンに接触すると、ポリオルガノシロキサンの硬化反応を促進させる。さらに、硬化触媒によってはポリオルガノシロキサンの内部を移動することもでき、ポリオルガノシロキサンと気相との界面だけでなく、内部に渡り硬化触媒効果を発揮してポリオルガノシロキサンの硬化反応を促進することができる。また、内部にまで移動することができない硬化触媒であっても、硬化触媒とポリオルガノシロキサンとの界面での硬化反応に起因する連鎖反応等により、内部まで硬化反応を促進できるものもある。なお、これらの触媒作用は、ポリオルガノシロキサンが純物質として存在している場合だけでなく、ポリオルガノシロキサン組成物として存在している場合にも同様に発揮される。
【0024】
さらに、気体状態の硬化触媒の比重、極性、構造等を制御することにより、ポリオルガノシロキサンと硬化触媒との接触状態、並びに、ポリオルガノシロキサン内部での硬化触媒の拡散状態等を制御することができる。具体的には、硬化触媒の比重は硬化触媒の分子量及び官能基等を変化させることにより制御でき、硬化触媒の極性は硬化触媒の分子構造及び官能基等を変化させることによって制御できる。
【0025】
また、気化し易い硬化触媒を用いた場合は、硬化反応終了後にポリオルガノシロキサン硬化物を常温、常圧の状態に戻したときに、硬化触媒がポリオルガノシロキサン硬化物から揮散するため、硬化触媒を含まないか又は非常に低濃度でしか含まないポリオルガノシロキサン硬化物を得ることができる。
【0026】
なお、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、硬化触媒として気体状態以外の状態のものを、気体状態の硬化触媒と併用してもよい。例えば、使用時においてポリオルガノシロキサン硬化物の劣化の少ない一般用途に用いる場合、残留する触媒がポリオルガノシロキサン硬化物及び塗布対象物(即ち、ポリオルガノシロキサンを塗布した物)に劣化や品質低下をもたらさない場合、並びに、硬化後に触媒をポリオルガノシロキサン硬化物から除去可能な場合などには、ポリオルガノシロキサンに対し、通常2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下であれば、気体状態以外の硬化触媒を併用してもよい。中でも、本発明のポリオルガノシロキサン硬化物を電気・電子用部材に用いる場合には残留触媒は熱、光、電流等によりポリオルガノシロキサン硬化物、電極、半導体素子等に劣化や品質低下を与えやすいので、通常100ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下、特に好ましくは0.1ppm以下であれば、気体状態以外の硬化触媒を併用することができる。このように、例えば発光装置用のポリオルガノシロキサン硬化物を製造する場合、発光装置の寿命を短縮させない範囲で気体状態以外の硬化触媒を併用してもよい。ただし、本発明の効果を確実に発揮させるためには、気体状態の硬化触媒以外には硬化触媒を用いないことが好ましい。またポリオルガノシロキサンを合成する過程で使用した触媒は、硬化触媒としての機能の有無にかかわらず発光装置の寿命を短縮させない範囲であれば、上記と同様の濃度範囲で気体状態の触媒による硬化時に残留していても良い。
【0027】
[3.ポリオルガノシロキサン組成物]
硬化触媒と接触させるポリオルガノシロキサンは、1種類のポリオルガノシロキサンからなる純物質として用意してもよいが、通常は、例えば2種以上のポリオルガノシロキサンを含む組成物、又は、ポリオルガノシロキサンと必要に応じて使用される他の成分とを含む組成物などのポリオルガノシロキサン組成物として用意され、このポリオルガノシロキサン組成物と硬化触媒とが接触させられる。これにより、ポリオルガノシロキサン組成物中のポリオルガノシロキサンの硬化反応が進行し、ポリオルガノシロキサンが硬化し、ひいてはポリオルガノシロキサン組成物も硬化する。このように、前記のポリオルガノシロキサン組成物は硬化触媒により硬化するため、ポリオルガノシロキサン硬化性組成物ともいう。
【0028】
[3−1.ポリオルガノシロキサン]
ポリオルガノシロキサンとしては、通常、液体状の、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体を用いる。その例を挙げると、下記組成式(1)で表される化合物が挙げられる。
(R11R12R13SiO1/2)M(R14R15SiO2/2)D(R16SiO3/2)T(SiO4/2)Q(1)
【0029】
組成式(1)において、R11〜R16は、有機官能基、水酸基(ヒドロキシル基)及び水素原子(ヒドリド基)からなる群から選択されるものを表す。なお、R11〜R16は、同じであっても異なってもよい。
また、組成式(1)において、M、D、T及びQは、M+D+T+Q=1、0<M<1、0<D<1及び0≦T<1を満足する数である。
なお、ポリオルガノシロキサンは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0030】
ポリオルガノシロキサンを硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのポリオルガノシロキサンが挙げられる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型ポリオルガノシロキサン)、縮合硬化タイプ(縮合型ポリオルガノシロキサン)、及び脱水素縮合タイプ(脱水素縮合型ポリオルガノシロキサン)が好適である。以下、付加型ポリオルガノシロキサン、縮合型ポリオルガノシロキサン、及び脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンについて説明する。
【0031】
[3−1−1.付加型ポリオルガノシロキサン]
付加型ポリオルガノシロキサンとは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えば、(A)アルケニル基を有するケイ素化合物と(B)ヒドロシリル基を含有するケイ素化合物とを、総ヒドロシリル基量がアルケニル基に対して0.5倍以上、2.0倍以下となる量比で、(C)触媒(付加反応触媒)を用いて反応させて得られる、Si−C−C−Si結合を架橋点に有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0032】
(A)アルケニル基を有するケイ素化合物としては、下記組成式(2)で示される、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。
21SiO〔(4−n)/2〕 (2)
(式(2)において、R21は置換又は非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基又は水酸基を表す。nは1≦n<3を満たす正の数を表す。なお、2個以上あるR21は、それぞれ同種でもよく異種でもよい。)
【0033】
式(2)において、R21は1価炭化水素基、アルコキシ基又は水酸基を表す。ただし、組成式(2)で表されるポリオルガノシロキサンは、その分子中に、アルケニル基を2個以上有している。また、これらの炭化水素基及びアルコキシ基は、置換されていてもよい。
21において、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの、炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられる。
また、R21がアルケニル基以外の炭化水素基である場合、その例としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基等のアリール基;などの、炭素数1〜20の1価の炭化水素基が挙げられる。中でも好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。中でも、耐紫外線性(耐UV性)が要求される場合には、R21のうち80%以上はメチル基であることが好ましい。
21において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。ただし、アルコキシ基及び水酸基の含有率は、(A)アルケニル基を有するケイ素化合物の重量の3%以下であることが好ましい。アルコキシ基及び水酸基は縮合重合基であるため、含有率が3%を超えると硬化時の収縮率が大きくなる可能性がある。この場合、ポリオルガノシロキサン硬化物の内部応力が増大し、使用時の剥離やポリオルガノシロキサン硬化物の反り、電気・電子部品封止時の断線など、ポリオルガノシロキサン硬化物を使用した製品の信頼性を損なうこととなるためである。
なお、R21は1分子中に2個以上存在するが、R21同士はそれぞれ同種でもよく異種でもよい。
【0034】
また、式(2)において、nは1≦n<3を満たす正の数を表す。この値が3以上であると十分な強度が得られなくなる可能性があり、1未満であるとこのポリオルガノシロキサンの合成が困難になる傾向がある。
【0035】
(A)アルケニル基を有するケイ素化合物の具体例を挙げると、ビニルシラン、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンなどを挙げることができる。中でも、分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0036】
分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンの例を商品名で挙げると、
Gelest社製の両末端ビニルポリジメチルシロキサンとしてDMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35、DMS−V41、DMS−V42、DMS−V46、DMS−V52等が挙げられ、
両末端ビニルジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーとしてPDV−0325、PDV−0331、PDV−0341、PDV−0346、PDV−0525、PDV−0541、PDV−1625、PDV−1631、PDV−1635、PDV−1641、PDV−2331、PDV−2335等が挙げられ、
両末端ビニルフェニルメチルシロキサンとしてPMV−9925等が挙げられ、
トリメチルシリル基封鎖ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーとしてVDT−123、VDT−127、VDT−131、VDT−153、VDT−431、VDT−731、VDT−954等が挙げられ、
ビニルT−構造ポリマーとしてVTT−106、MTV−124等が挙げられる。
なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0037】
一方、(B)ヒドロシリル基を有するケイ素化合物としては、例えば、ヒドロシラン、ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンなどを挙げることができる。上記の中でも分子内に2個以上のヒドロシリル基(−SH基)を有するヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0038】
分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの例を商品名で挙げると、
Gelest社製の両末端ヒドロシリルポリジメチルシロキサンとしてDMS−H03、DMS−H11、DMS−H21、DMS−H25、DMS−H31、DMS−H41等が挙げられ、
両末端トリメチルシリル封鎖メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーとしてHMS−013、HMS−031、HMS−064、HMS−071、HMS−082、HMS−151、HMS−301、HMS−501等が挙げられる。
なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0039】
(A)アルケニル基を有するケイ素化合物と(B)ヒドロシリル基を含有するケイ素化合物とを反応させて付加型ポリオルガノシロキサンを得る場合、(B)ヒドロシリル基を含有するケイ素化合物の使用量は、(A)アルケニル基を有するケイ素化合物1molに対して、通常0.5mol以上、好ましくは0.7mol以上、より好ましくは0.8mol以上であり、通常2.0mol以下、好ましくは1.8mol以下、より好ましくは1.5mol以下である。これにより、硬化後の未反応末端基の残存量を低減することができる。したがって、本発明のポリオルガノシロキサン硬化物を半導体発光装置用等の発光装置用の部材(発光装置用部材)として用いた場合、点灯使用時の着色や剥離等の経時変化を抑制できる。
【0040】
(C)付加反応触媒は、(A)アルケニル基を有するケイ素化合物中のアルケニル基と(B)ヒドロシリル基を含有するケイ素化合物中のヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒である。その例を挙げると、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族触媒が挙げられる。この中でも白金系触媒が好ましい。白金系触媒としては、例えば、白金黒、酸化白金、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、白金とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等が挙げられる。中でも、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールの反応物、白金とオレフィン類との錯体が、取り扱いの点で特に好ましい。なお、これらの(C)付加反応触媒を気化させることにより、本発明に係る硬化触媒として使用できる。
【0041】
なお、(C)付加反応触媒は気体状態のものに限定されず、触媒活性を示す任意の状態の付加反応触媒を用いることができるが、気体状態の付加反応触媒を使用することが好ましい。また、例えば(C)付加反応触媒として気体状態以外のものを使用した結果、ポリオルガノシロキサン硬化物中に(C)付加反応触媒が残留してポリオルガノシロキサン硬化物に前述したような課題が残るような場合には、気体状態以外の(C)付加反応触媒の使用量を前述した課題が発生しない程度の少量に抑えることが好ましい。この場合、必要に応じて気体状態の付加反応触媒を併用すれば、十分な触媒作用を得て反応を速やかに進行させることが可能であり、さらに、通常は硬化が起こり得ない低濃度の触媒量で硬化物を得る事が可能である。
【0042】
硬化前の付加型ポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常500以上、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、通常100000以下、好ましくは80000以下、より好ましくは50000以下である。前記範囲の下限を下回ると硬化収縮が発生したり、硬化物の耐熱性が低下したり、硬化に時間を要したりする可能性がある。また、前記範囲の上限を上回ると、粘度が高すぎて取り扱いにくくなったり、貯蔵安定性が低くなったり、硬化前の脱泡やフィラー混合作業が困難になったりする可能性がある。
【0043】
なお、付加型ポリオルガノシロキサンは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0044】
[3−1−2.縮合型ポリオルガノシロキサン]
縮合型ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、アルキルアルコキシシランを加水分解及び重縮合して得られる、Si−O−Si結合を架橋点に有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。具体例を挙げると、下記一般式(3)及び/若しくは(4)で表わされる化合物、並びに/又は、そのオリゴマーを、触媒(加水分解・重縮合触媒)を用いて加水分解及び重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0045】
m+31m−n (3)
(式(3)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは加水分解性基を表わし、Y31は1価の有機基を表わし、mはMの価数を表わす1以上の整数を表わし、nはX基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0046】
(Ms+41s−t−142 (4)
(式(4)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは加水分解性基を表わし、Y41は1価の有機基を表わし、Y42はu価の有機基を表わし、sはMの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは1以上s−1以下の整数を表わし、uは2以上の整数を表わす。)
【0047】
また、加水分解・重縮合触媒としては、例えば、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ヒドロキシルアミン類、鉛系触媒、スズ系触媒、亜鉛系触媒、鉄系触媒、チタン系触媒、ジルコニア系触媒、ビスマス系触媒などが挙げられる。これらの具体例としては、本発明に係る硬化触媒の例として挙げたのと同様のものが挙げられるが、中でも、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジルコニウムアセチルアセトネート等が好ましく、さらにはN,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン類が取り扱いの点でより好ましい。なお、これらの加水分解・重縮合触媒は、気化させれば、本発明に係る硬化触媒として使用できる。
【0048】
なお、加水分解・重縮合触媒は気体状態のものに限定されず、触媒活性を示す任意の状態の加水分解・重縮合触媒を用いることができるが、気体状態の加水分解・重縮合触媒を使用することが好ましい。また、例えば加水分解・重縮合触媒として気体状態以外のものを使用した結果、ポリオルガノシロキサン硬化物中に加水分解・重縮合触媒が残留してポリオルガノシロキサン硬化物に前述したような課題が残るような場合には、気体状態以外の加水分解・重縮合触媒の使用量を前述した課題が発生しない程度の少量に抑えることが好ましい。この場合、必要に応じて気体状態の加水分解・重縮合触媒を併用すれば、十分な触媒作用を得て反応を速やかに進行させることが可能であり、さらに、通常は硬化が起こり得ない低濃度の触媒量で硬化物を得る事が可能である。
【0049】
縮合型ポリオルガノシロキサンの例を挙げると、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、又は国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材より触媒を除いたもの、若しくは触媒含有量の少ないものが挙げられる。具体的には、触媒含有量が通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.001重量%以下のものが挙げられる。
【0050】
硬化前の縮合型ポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常500以上、好ましくは900以上、より好ましくは3000以上であり、通常400000以下、好ましくは70000以下、より好ましくは50000以下である。重量平均分子量が小さすぎると硬化時に気泡が発生したり、硬化収縮が大きくなる傾向があり、大きすぎると縮合型ポリオルガノシロキサンが低温でも経時的に増粘したりハンドリングが悪くなる傾向がある。
【0051】
なお、縮合型ポリオルガノシロキサンは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0052】
[3−1−3.脱水素縮合型ポリオルガノシロキサン]
縮合型ポリオルガノシロキサンの中には、縮合の際に水素を脱離する脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンがある。脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンとしては、通常、ヒドロシリル基(SiH基)を有するポリオルガノシロキサンと、ヒドロキシシシリル基(SiOH基)を有するポリオルガノシロキサンとを組み合わせて用いる。その例を挙げると、例えば、下記一般式(5)で表されるポリオルガノシロキサン化合物(以下、適宜「ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物」という。)と、下記組成式(6)で表され、且つ水酸基を一分子中に2個以上含有するポリオルガノシロキサン化合物(以下、適宜「ヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物」という。)とが挙げられる。下記一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物と、下記組成式(6)で表され、且つ水酸基を一分子中に2個以上含有するヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物とは、通常は混合して用いられ、硬化時には両者が脱水素縮合することにより硬化反応が進行してポリオルガノシロキサン硬化物が生成するようになっている。
【0053】
【化1】

【0054】
一般式(5)中、R51〜R53およびR55〜R58は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、およびR100101102Siからなる群より選ばれる基を示す。R54、R59及びR100〜R102は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基及びアリール基からなる群より選ばれる基を示す。lは、2以上の整数を示す。mは、0以上の整数を示す。
【0055】
(R61SiO3/2p(R62R63SiO2/2q(R64R65R66SiO1/2r (6)
組成式(6)中、R61〜R66は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、およびアリール基から選ばれる基を示す。p、q、およびrは、それぞれ0以上の整数を示し、p+q+r≧1である。
【0056】
以下、上記の脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンにつき説明する。
[3−1−3−1.ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物]
まず、下記一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物について説明する。一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物は、ヒドロシリル基をシロキサン骨格内に有していることにより、架橋密度のチューニングを容易に行うことができる。
【0057】
【化2】

【0058】
51〜R53及びR55〜R58は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、およびR100101102Siからなる群より選ばれる基を示す。これらのうち、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びR100101102Siは、さらにハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0059】
前記R51〜R53及びR55〜R58において好ましいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロプロピル基が挙げられる。
前記R51〜R53及びR55〜R58において好ましいアルケニル基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。
前記R51〜R53及びR55〜R58において好ましいアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
これらの中でも、好ましいものとしては、フェニル基、メチル基等が挙げられる。
なお、R51〜R53及びR55〜R58は、それぞれ同じものでもよく、異なっていてもよい。また、R52、R56及びR57はそれぞれ1分子中に2個以上存在することがありえるが、R52同士、R56同士及びR57同士は同種でもよく異種でもよい。
【0060】
54、R59及びR100〜R102は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基及びアリール基からなる群より選ばれる基を示す。これらのうち、アルキル基、アルケニル基及びアリール基は、さらにハロゲン原子に置換されていてもよい。
アルキル基、アルケニル基及びアリール基の例としては、前記R51〜R53及びR55〜R58と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、好ましいものとしては、フェニル基、メチル基等が挙げられる。
なお、R54、R59及びR100〜R102は、同じものでもよく、異なっていてもよい。
【0061】
さらに、一般式(5)において、lは2以上の整数を示し、mは0以上の整数を示す。
【0062】
一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物の具体例を挙げると、Hydride terminated Polydimethylsiloxanes(水素基末端ポリジメチルシロキサン)、Polymethylhydrosiloxanes trimethylsilyl terminated(トリメチルシリル基末端ポリメチルヒドロシロキサン)などが挙げられる。
これらは市販品を使用することも可能であり、例えば、信越化学工業製KF−99、KF−9901;東レダウコーニング社製SH 1107シリーズ;Momentive Performance Materials社製 TSF484、TSL9586;旭化成ワッカー社製 H−Siloxane;Gelest社製HMS シリーズ、DMSシリーズなどが挙げられる。
【0063】
一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物においては、ポリスチレン換算の重量平均分子量を調整することが好ましく、通常160以上、好ましくは500以上である。このうち、本発明のポリオルガノシロキサン硬化物の気温200℃以上における収縮を抑制するためには、重量平均分子量は5000以上であることがより好ましく、ポリオルガノシロキサンの硬化を容易とするためには、27000以上であることが特に好ましい。また、重量平均分子量は、通常700000以下、好ましくは100000以下であり、粘度を下げてハンドリングをよくするためには、90000以下であることがより好ましい。
【0064】
なお、一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0065】
[3−1−3−2.ヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物]
次に、組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物について説明する。組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物は、水酸基を一分子中に2個以上含有することにより、直線的に、また三官能分子と反応して架橋しながら三次元的に、その分子量を高分子化することが可能となる。
(R61SiO3/2p(R62R63SiO2/2q(R64R65R66SiO1/2r (6)
【0066】
61〜R66は、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基及びアリール基からなる群より選ばれる基を示す。これらのうち、アルキル基、アルケニル基及びアリール基は、さらにハロゲン原子に置換されていてもよい。
アルキル基、アルケニル基及びアリール基の例としては、前記R51〜R53及びR55〜R58と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、好ましいものとしては、フェニル基、メチル基等が挙げられる。
なお、R61〜R66は、同じものでもよく、異なっていてもよい。また、R61〜R66はそれぞれ1分子中に2個以上存在することがありえるが、R61同士、R62同士、R63同士、R64同士、R65同士及びR66同士は同種でもよく異種でもよい。
【0067】
ただし、組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物においては、硬化時の粘度上昇を適度に抑制する観点から、分子中の水素原子の量を多すぎないようにすることが好ましい。即ち、R61〜R66の数全体に対する、R61〜R66自体が水素原子となっているものの割合は、通常99.9%以下、好ましくは99.5%以下、更に好ましくは99%以下であり、通常1%以上、好ましくは1.5%以上、更に好ましくは2%以上である。水素原子量が多すぎると粘度上昇率が大きすぎるためハンドリングが良くなくなる可能性があり、水素原子量が少なすぎると反応の進行が遅くなるか、不十分になる可能性がある。
【0068】
また、p、q及びrは、それぞれ0以上の整数を示す。ただし、p+q+r≧1を満たすものである。
【0069】
組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物の具体例としては、例えば、Silanol terminated polydimethylsiloxanes(ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン)などが挙げられる。
これらは市販品を使用することも可能であり、例えば、Momentive Performance Materials社製ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンでは、XC96−723、XF3905、YF3057、YF3800、YF3802、YF3807、YF3897などが挙げられる。
【0070】
組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常160以上、好ましくは400以上、さらに好ましくは500以上、また、通常700000以下、好ましくは50000以下、さらに好ましくは30000以下である。この範囲を下回ると、ポリオルガノシロキサン硬化物が固く脆くなるという可能性があり、この範囲を上回ると、ポリオルガノシロキサンが硬化しづらくなる可能性がある。
【0071】
なお、組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物は、1種類を用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0072】
[2−1−3−3.ポリオルガノシロキサン化合物の混合物]
脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンとして一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物及び組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物を用いる場合、通常は、両者を混合してポリオルガノシロキサン組成物を用意し、このポリオルガノシロキサン組成物を硬化させるようにする。この際、両者の配合量は、Si−H(ヒドロシリル基)とSi−OH(ヒドロキシシリル基)のモル比(ヒドロシリル基/ヒドロキシシリル基)で、通常1/100以上、好ましくは1/20以上、より好ましくは1/10以上であり、通常100/1以下、好ましくは20/1以下、より好ましくは10/1以下である。一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物が多すぎても、組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物が多すぎても、硬化が不十分となる傾向がある。
【0073】
また、前記のように混合した場合、一般式(5)で表されるヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物及び組成式(6)で表されるヒドロキシシリル基含有ポリオルガノシロキサン化合物の基R51〜R59、R61〜R66、及びR100〜R102は、水素原子及び水酸基を除く基の通常95mol%以上、好ましくは98mol%以上、更に好ましくは99mol%以上がアルキル基であることが好ましい。なお、前記のアルキル基の割合の上限は通常100mol%以下である。アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられるが、安定性の観点からメチル基が好ましい。
即ち、水素原子及び水酸基は硬化反応に必須の基であるため含有されている必要があるが、それ以外の基はポリオルガノシロキサン硬化物の光安定性及び熱的安定性の観点から、アルキル基を多く含むものが好ましい。アルキル基が少なすぎると前期の安定性が劣る可能性がある。
【0074】
[3−1−4.特に好ましいポリオルガノシロキサン]
上述したポリオルガノシロキサンの中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。ポリオルガノシロキサンは、一般に、例えば半導体発光装置等の発光装置用部材に用いた場合、発光素子並びに当該素子を配置する基板及びパッケージ等との接着性が弱いことがある。したがって、これらと密着性が高いポリオルガノシロキサン硬化物を得るためには、以下の(1)〜(3)のうち1つ以上の特性を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
(1)ケイ素含有率が20重量%以上である。
(2)測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
(3)シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0075】
本発明においては、上記の特徴(1)〜(3)のうち、特性(1)を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。さらには、上記の特性(1)及び(2)を有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。特に、上記の特性(1)〜(3)を全て有するポリオルガノシロキサンが特に好ましい。また、上記の特性を有するポリオルガノシロキサンの中でも、大型素子や紫外発光素子に用いる場合には、製造されるポリオルガノシロキサン硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましく、更には脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンが特に好ましい。
【0076】
また、分子構造に着目すると、本発明に係るポリオルガノシロキサンとしては、重合性官能基を有するものが好ましい。重合性官能基とは、重合性を有する官能基のことをいい、好ましくは重合後に、炭素−炭素単結合、炭素−ケイ素単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合等の化学結合を生じうる官能基のことをいう。このような重合性官能基を有することによりポリオルガノシロキサンの硬化反応を確実に進行させることができる。
【0077】
重合性官能基の例を挙げると、ビニル基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、γ−グリシドキシプロピル基、メタクリル基、γ−メタクリロキシプロピル基、アミノ基、N−フェニルアミノ基、γ−アミノプロピル基、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピル基、N−フェニル−γ−アミノプロピル基、γ−クロロプロピル基、メルカプト基、γ−メルカプトプロピル基、イソシアネート基、3−イソシアネートプロピル基、イソシアヌレート基、アクリル基、3−アクリロキシプロピル基、カルバメート基等が挙げられる。この中でもビニル基及びアクリル基が、経済性及び幅広い化合物が容易に入手できるという点で好ましい。
なお、本発明に係るポリオルガノシロキサンは、重合性官能基を1種類だけ有していてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
【0078】
[3−1−5.ポリオルガノシロキサンの硬化性]
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、気体状態の硬化触媒中で、雰囲気温度150℃にて10時間以内に硬化することが好ましい。即ち、本発明に係るポリオルガノシロキサンは比較的硬化時間が短いため、経済的に優れ、また、フィラーと混練した際に、そのフィラーが沈降したりしないという技術的意義がある。また、150℃という比較的低温において硬化が可能であることで、半導体発光装置等の発光装置の構成要素(例えば半導体発光素子や蛍光体)の熱による性能低下を抑制することもできる。また、例えポリオルガノシロキサンの純物質が前記の条件で硬化できないものであっても、ポリオルガノシロキサン組成物とした場合に前記条件で硬化できるのであれば、同様の技術的意義及び効果を発揮できる。
【0079】
ここで、ポリオルガノシロキサンの「硬化」とは、流動性を示す状態から、流動性を示さない状態に変化することをいう。例えば、対象物を水平より45°傾けた状態で30分間静置しても全く流動性があるかないかで、それぞれ未硬化状態か硬化状態かを判断することができる。
【0080】
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシロキサンの純物質又はポリオルガノシロキサン組成物が雰囲気温度150℃で硬化する時間として、好ましくは10時間以内であり、更に好ましくは6時間以内である。また、通常0.2時間以上、好ましくは0.5時間以上である。硬化時間が長すぎるとポリオルガノシロキサンとフィラーとを混練した際にフィラーが沈降したりする可能性がある上、長時間の硬化処理が必要となりコスト高になる傾向がある。逆に短すぎると、ハンドリングが難しくなる傾向があり、例えば基板表面に平坦なポリオルガノシロキサン硬化物の膜を形成しようとした場合にレベリング前に硬化して形成面にムラができる場合がある。
【0081】
また、本発明に係るポリオルガノシロキサンから膜状のポリオルガノシロキサン硬化物を製造する場合に、膜厚が比較的薄い膜を製造できるという利点がある。これは、発泡が少なく、均一な膜を作製しうる点で、優れた技術的意義を有する。
即ち、本発明に係るポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシロキサンの純物質又はポリオルガノシロキサン組成物をサンプル液として下記の硬化試験を行った場合に、高さの平均値が、通常0.12cm以下、好ましくは0.118cm以下、更に好ましくは0.115cm以下であり、通常0.09cm以上、好ましくは0.1cm以上である。高さの平均値が大きくなることは通常は泡や空気をかみこんでいるということを表すため、高さの平均値が大きすぎると発泡しやすくなっている可能性がある。また、高さの平均値が小さすぎると固形分(即ち、液体状のポリオルガノシロキサンを硬化した際のポリオルガノシロキサン硬化物の重量歩留まり)が少ないか、硬化収縮を起こしやすくなっている可能性がある。
【0082】
〔硬化試験〕
(1)サンプル液2gを、底面直径5cm、高さ1cmのポリテトラフルオロエチレン製容器内にて、気体状態の硬化触媒を含有する気相雰囲気中で、雰囲気温度150℃にて6時間静置する。
(2)前記(1)の処理の後、前記ポリテトラフルオロエチレン製容器内を45°傾けた状態で30分間静置しても全く流動性が無いこと(即ち、硬化したこと)を確認する。
(3)容器内底からポリオルガノシロキサン硬化物の上面までの高さの平均値を測定する。
【0083】
なお、前記(3)における高さの平均値は、具体的には、例えば以下の(4)〜(6)の手順で測定される。
(4)前記サンプル液を硬化させた後(即ち、前記(2)の処理後)のポリテトラフルオロエチレン製容器に水を入れる。
(5)入れた水の体積を測定し、これを底面積5cmで除したものを「水の高さの平均値」とする。
(6)下式により算出する。
{高さの平均値(cm)}={容器高さ(1cm)}−{水の高さの平均値(cm)}
【0084】
[3−2.他の成分]
ポリオルガノシロキサンは、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、必要に応じて他の成分と混合してポリオルガノシロキサン組成物として用意してもよい。この場合、ポリオルガノシロキサンと他の成分との混合は各成分が組成物内で均質に分散する程度に攪拌されていなくてもよいが、硬化ムラを無くす観点からは均質に分散されていることが好ましい。なお、その他の成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
その他の成分としては、例えば、溶剤、添加剤などが挙げられる。
【0085】
[3−2−1.溶剤]
溶剤としては、ポリオルガノシロキサンを分散又は溶解させることが可能なものを用いることができる。その例としては、炭素数1〜3の低級アルコール類;炭素数6〜10の炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤などを挙げることができる。この中でも、不飽和結合を含む沸点150℃以下の溶剤が、硬化時の発泡や点灯時の着色を抑制できる点から好ましい。
なお、溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0086】
ポリオルガノシロキサン組成物に溶媒を含む場合、その量は0重量%より大きく、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。ポリオルガノシロキサン組成物中に溶剤を含有することにより、当該組成物の粘度を調整したり、保存時の反応性を制御したりすることができる。
【0087】
[3−2−2.添加剤]
ポリオルガノシロキサン組成物が含有していてもよい添加剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の硬化性の制御に用いる硬化性制御剤が挙げられる。硬化性制御剤を、気体状態の硬化触媒との接触より前にポリオルガノシロキサン組成物中に含有させておくことによって、硬化反応を精密に制御できる。
【0088】
硬化性制御剤としては、硬化調整剤と拡散調整剤とが挙げられる。硬化調整剤としては、硬化速度を下げる硬化抑制剤と、硬化速度を上げる硬化促進剤とが挙げられる。また、拡散調整剤としては、気体状態の硬化触媒の拡散性を向上させる拡散向上剤と、遅くする拡散抑制剤とが挙げられる。
【0089】
硬化促進剤としては、例えば、[2.硬化触媒]の項で前述した硬化触媒と同様のもののうち、適切なものを、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。ただし、製造されるポリオルガノシロキサン硬化物中に硬化促進剤が残留してポリオルガノシロキサン硬化物に前述したような課題が生じる場合は、課題が発生しない程度の少量に抑えることが好ましい。
【0090】
硬化抑制剤としては、例えば、その硬化機構に応じて硬化触媒やポリオルガノシロキサンの反応性末端に作用する酸、塩基等が用いられる。酸としては塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸;塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基;アミン類、ヒドロキシルアミン類等の有機塩基などがそれぞれ挙げられる。ポリオルガノシロキサンの硬化機構が脱水や脱アルコール縮合型である場合には、上記の中でも弱酸、弱塩基が、それ自体強い触媒作用を持たず、シラノールへの配位や触媒への配位により硬化抑制作用を発現しやすく好ましい。また、ポリオルガノシロキサンの硬化機構が付加型である場合には、上記硬化抑制剤の他、硬化を抑制しポットライフを与えるための付加反応制御剤、直鎖あるいは環状のアルケニル基を含有する付加反応遅延剤などを本発明の効果を損なわない範囲で含有させても良い。
【0091】
拡散向上剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサン硬化物中で、硬化性を有さず可塑剤として挙動する低分子や高分子のオイル成分等が挙げられる。
【0092】
拡散抑制材としては、例えば、触媒が酸である場合には塩基性物質等が挙げられ、塩基である場合には酸性物質等が挙げられる。さらに、例えば無機や有機のフィラーを含有させることにより、触媒の拡散を抑制することもできる。
【0093】
前記の硬化性制御剤の具体的な種類は、気体状態の硬化触媒の種類や、行いたい反応系によって異なるため、これらの条件に合わせて適切なものを選択すればよい。これらの硬化性制御剤は、通常、硬化反応の際に気体状態の硬化触媒と相乗的に作用してよりすぐれた効果を発揮する。
なお、硬化性制御剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0094】
ポリオルガノシロキサン組成物が含有していてもよい添加剤の他の例としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、熱硬化性樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記熱硬化性樹脂の含有量は、通常、ポリオルガノシロキサンに対して、通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下である。熱硬化性樹脂をこのような量で含有させることにより、ポリオルガノシロキサン硬化物の樹脂基材への接着性を向上させたり、機械的特性を向上させたりできる。
【0095】
ポリオルガノシロキサン組成物が含有していてもよい添加剤の更に他の例としては、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、耐光性安定化剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、色素、蛍光体、無機粒子、金属不活性化剤、光拡散材、フィラー、物性調整剤などが挙げられる。なお、これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0096】
このうちカップリング剤としては、例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、分子中に有機基に対する反応性を有する官能基と加水分解性のケイ素基とを各々少なくとも1個有する化合物が挙げられる。ここで、有機基に対する反応性を有する基としては、取扱い性の点から、例えばエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基等が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基及びアクリル基が特に好ましい。一方、加水分解性のケイ素基としては、取扱い性の点から、例えばアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点から、例えばメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。なお、有機基に対する反応性を有する基、及び、加水分解性を有するケイ素機は、それぞれ、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0097】
好ましいシランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基或いはアクリル基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。
【0098】
[3−3.組成物中におけるポリオルガノシロキサンの使用量]
ポリオルガノシロキサンを他の成分と混合してポリオルガノシロキサン組成物として用意する場合、当該ポリオルガノシロキサン組成物中のポリオルガノシロキサンの割合は、通常40重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、通常90重量%以下、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0099】
ポリオルガノシロキサンの量は、ポリオルガノシロキサン硬化物の色度、並びに、ポリオルガノシロキサン硬化物を含む発光装置の演色性及び発光効率等を良好なものとするためには、前記の範囲内に収めることが好ましい。また、ポリオルガノシロキサンが少なすぎると、ポリオルガノシロキサン組成物の流動性が小さくなり取り扱い難くなる可能性がある。
【0100】
[4.ポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法]
本発明のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法では、上述した気体状態の硬化触媒とポリオルガノシロキサンとを接触させる工程を行う。以下、本発明のポリオルガノシロキサン硬化物を実施するのに好適な製造装置及び条件について説明する。なお、以下の説明ではポリオルガノシロキサンはポリオルガノシロキサン組成物として用意されているものとして説明するが、ポリオルガノシロキサンの純物質として用意された場合も同様の製造装置を用いて同様の条件で製造できる。
【0101】
[4−1.製造装置]
製造装置は気体状態の硬化触媒とポリオルガノシロキサン組成物とを接触させることができるものであれば制限はない。この製造装置で気体状態の硬化触媒とポリオルガノシロキサン組成物とを接触させることにより、ポリオルガノシロキサン組成物の硬化が促進される。
ここで、硬化性を支配する条件としては、温度、硬化触媒濃度、硬化触媒流速、硬化触媒との接触時間等が考えられる。硬化性を支配するこれらの条件の制御には、温度制御、硬化触媒の供給制御、排気制御等が挙げられる。
【0102】
[4−2.温度制御]
硬化反応において温度は、硬化反応速度、硬化触媒の活性、ポリオルガノシロキサン組成物中の硬化触媒の移動、ポリオルガノシロキサン組成物からの硬化触媒の脱離等に影響を与えると考えられる。温度制御方法は、定温方式、ステップアップ昇温方式、ステップダウン降温方式、定率昇温方式、定率降温方式などがあり、これらを単独又は組み合わせて温度を制御することができる。
【0103】
具体的な温度範囲は、通常35℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。温度が低すぎると硬化が進行しなかったり硬化の進行が非常に遅くなる可能性があり、温度が高すぎると、ポリオルガノシロキサン組成物を他の部材(発光装置の構成部材等)と共に加熱する際に他の部材が劣化する可能性がある。なお、必要に応じて減圧することにより、常圧では触媒の気化に高温を要する場合でも上記範囲の温度で硬化反応に供することが出来る。
【0104】
[4−3.気体状態の硬化触媒雰囲気の制御]
本発明の製造方法では、気体状態の硬化触媒雰囲気を制御することが好ましい。硬化触媒雰囲気の制御の例としては濃度制御、分布制御などがある。
【0105】
まず濃度制御について説明する。
ポリオルガノシロキサン組成物の硬化は、気体状態の硬化触媒が硬化触媒とポリオルガノシロキサン組成物との界面と接触し、場合によっては内部まで拡散することによって起こる。界面との接触で硬化が起こる場合には、硬化触媒の濃度は硬化反応速度の重要な要因となる。また、硬化触媒が内部にまで拡散する場合には、拡散速度についても硬化反応速度の重要な要因となるが、拡散速度はフィックの法則で表されるため、この拡散速度も触媒濃度に影響される。したがって、硬化触媒の濃度を制御することにより、硬化反応の速度を制御することができる。
また、ポリオルガノシロキサン硬化物の内部に硬化触媒を残留させたくない場合は、気体状態の硬化触媒の濃度を下げることにより、硬化触媒の拡散をポリオルガノシロキサン硬化物の内部より外部に向かって進行させ、硬化触媒を除くこともできる。
【0106】
具体的な硬化触媒の濃度は、触媒の種類にもよるため一概には言えないが、例えば通常10時間以内、好ましくは6時間以内、さらに好ましくは3時間以内にポリオルガノシロキサン硬化物が均一に硬化し、硬度(ショアA又はショアD)が目標硬度に達する濃度である。硬化触媒の濃度が低すぎると硬化に時間がかかり生産性が低くなる可能性があり、高すぎるとポリオルガノシロキサン硬化物の表面が波打ったり、ポリオルガノシロキサン硬化物と接触している塗布対象物が劣化したり、ポリオルガノシロキサン硬化物が発泡したりする可能性がある。
【0107】
次に、分布制御について説明する。分布制御とは硬化触媒の製造装置内での分布を制御することをいう。
気体状態の硬化触媒の対流、硬化触媒の比重などにより、気体状態の硬化触媒が偏在し、ポリオルガノシロキサン組成物の周囲に有効な触媒濃度が確保されないことが起こりうる。高価な硬化触媒を用いた場合は、前記の偏在により生じる反応に寄与しない硬化触媒の量を減らすことが好ましい。したがって、気体状態の硬化触媒の分布の制御を行うことは好ましい。
なお、具体的な分布制御は、ポリオルガノシロキサン組成物と硬化触媒との境界部分における硬化触媒の濃度が前記の範囲となるように分布を制御することが好ましい。
【0108】
また、硬化触媒の濃度及び分布は時間と共に変化させることができる。例えば、前述したように硬化後に硬化触媒を除きたい場合に、硬化後に硬化触媒の濃度を下げる等の方法が考えられる。
【0109】
[4−3−1.触媒の供給制御]
気体状態の硬化触媒の供給方法の例を挙げると、気体として供給する方法、液体として雰囲気中に噴霧等の方法で供給し雰囲気中で気化させて供給する方法、固体として散布等の方法で雰囲気中に供給し雰囲気中で昇華させて供給する方法、超臨界状態で供給する方法等が挙げられる。また、液体状態及び/又は固体状態で製造装置内に硬化触媒を置き、そこからの自然気化させることによって供給する方法も挙げられる。ただし、液体又は固体を噴霧又は散布等の方法で雰囲気中に供給する方法では、気化及び昇華させやすくするために、液体は微小液滴で供給することが好ましく、固体は微粉で供給することが好ましい。このようにして供給された硬化触媒は、雰囲気中で気体状態になり、ポリオルガノシロキサンと接触し触媒作用を発揮する。
【0110】
[4−3−2.排気制御]
硬化反応は、密閉系で行うようにしてもよく、開放系で行なうようにしてもよい。開放系で行う場合、反応系からの排気を制御することにより、硬化触媒の濃度及び分布を制御することができる。特に、硬化反応が平衡反応である場合には、反応により発生する物質を排気により除去するようにすれば、反応の進行を促進できる。また、脱水素縮合型ポリオルガノシロキサンを硬化させる場合には、硬化反応により水素が発生するため、保安上も排気を行うことが好ましい。
【0111】
[4−4.他の工程]
本発明の製造方法では、気体状態の硬化触媒とポリオルガノシロキサンとを接触させる工程以外に、その他の工程を行なうようにしてもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサンの硬化後に熟成を行う熟成工程を行うことができる。熟成工程は、硬化後に新たな硬化触媒を加えることなく、さらに所定の制御された温度条件下に所望の時間だけポリオルガノシロキサン硬化物を晒す工程である。使用した硬化触媒がポリオルガノシロキサン硬化物に残留しやすいものであっても、熟成工程を行うことにより、高温気相雰囲気下で硬化触媒を揮発させて除去できる。例えばポリオルガノシロキサン硬化物の使用環境において、残留した硬化触媒がポリオルガノシロキサン硬化物の劣化や着色などを生じさせる可能性がある場合には、熟成工程を行うことにより、硬化触媒のポリオルガノシロキサン硬化物内部への残留を低減させることが可能となる。例えばポリオルガノシロキサン硬化物を発光装置用の光学部材として使用する場合、発光装置の輝度の低下を抑えるためには、ポリオルガノシロキサン硬化物中の触媒濃度は、2000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、100ppm以下が特に好ましい。
【0112】
熟成工程の具体的条件に制限は無いが、熟成温度は通常35℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。また、熟成時間は通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、通常50時間以下、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下である。このような熟成を行った場合には硬化後に触媒残留濃度の低いポリオルガノシロキサン硬化物を得ることができ、電気・電子用部材として使用時に触媒由来のポリオルガノシロキサン硬化物の劣化や着色、電極の腐食などを低減することができる。なお、熟成条件は必要に応じ、減圧条件とし、熟成温度を低くしたり時間を短縮したりすることがでこる。
【0113】
また、例えば、ポリオルガノシロキサン硬化物に対して各種の後処理を施す後処理工程を行なってもよい。後処理の種類は用途に応じて様々であり、例えばポリオルガノシロキサン硬化物を発光装置用の封止材として使用する場合には、モールド部との密着性の改善のための表面処理、反射防止膜の作製処理、光取り出し効率向上のための微細凹凸面の作製処理等が挙げられる。
【0114】
[5.ポリオルガノシロキサン硬化物]
本発明の製造方法で製造されるポリオルガノシロキサン硬化物は、劣化し難く硬化ムラが無いという優れた性質を有する。このような優れた利点が得られる理由は定かではないが、発明者らの検討によれば、以下の通りと推察される。
即ち、気体状態の硬化触媒を用いて硬化反応を行うようにしたため、製造されるポリオルガノシロキサン硬化物中に残留する触媒量が非常に少ない。これにより、本発明の製造方法で製造されるポリオルガノシロキサン硬化物は残留した硬化触媒の影響を受け難いため、劣化し難いものと推察される。
また、気体状態の硬化触媒は固体状態や液体状態のものと比較して分散しやすく低密度であるため、触媒濃度が位置により大きく異なることが無い。このため、気体状態の硬化触媒は触媒濃度の不均一及び濃度勾配の不連続が生じ難い。さらに、気体状態であれば硬化触媒はポリオルガノシロキサン組成物の内部にも浸入しやすい。これにより、本発明の製造方法で製造されるポリオルガノシロキサン硬化物は従来よりも硬化ムラが生じ難くなっているものと推察される。
【0115】
本発明の製造方法で製造されるポリオルガノシロキサン硬化物は、その物性、寸法などはその用途に応じて適切に設定すればよい。以下、本発明の製造方法で製造されるポリオルガノシロキサン硬化物の好ましい物性、寸法等について説明する。
【0116】
[5−1.屈折率]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、ポリオルガノシロキサン硬化物の温度が20℃である場合、波長589nmの光の屈折率が、通常1.42以下、好ましくは1.419以下、更に好ましくは1.418以下であり、通常1.35以上、好ましくは1.40以上である。光学部材に適用する場合、一般的な光学部材の屈折率が約2.5以下であるが、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物では光安定性の観点から比較的屈折率の低いものを選択することが好ましい。例えば発光素子を備える発光装置用の光学部材(例えば封止材)としてポリオルガノシロキサン硬化物を用いた場合、前記の屈折率が大きすぎて発光素子の屈折率を上回ると光取り出し効率が向上しない可能性がある。また、屈折率が小さすぎると例えば光取り出し効率が既存の発光装置用の光学部材と比較して向上しない可能性がある。
【0117】
なお、ポリオルガノシロキサン硬化物の屈折率は、通常、屈折計により測定することができる。具体的には、例えば膜厚1mm以上に成形した平滑な表面の単独・独立硬化物膜をサンプルとして、Abbe屈折計(ナトリウムD線(589nm)使用)を用いて測定することができる。
【0118】
[5−2.光透過率]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、膜厚1mmとした時の400nm以上800nm以下の全ての波長における光透過率が、通常80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0119】
なお、ポリオルガノシロキサン硬化物の光透過率は、例えば以下の手法により測定できる。
〔光透過率の測定〕
ポリオルガノシロキサン硬化物の、傷や凹凸による散乱の無い膜厚1mmの平滑な表面の単独硬化物膜を用いて、紫外分光光度計(島津製作所製 UV−3100)を使用し、波長200nm〜800nmにおいて透過度測定を行なう。
【0120】
[5−3.UV透過率]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を半導体発光装置用の光学部材(例えば、封止材等の透明部材)に用いる場合には、膜厚1mmでの半導体発光装置の発光波長における光透過率が、通常80%以上、中でも85%以上、更には90%以上であることが好ましい。半導体発光装置は各種の技術によりその光取り出し効率が高められているが、半導体発光素子を封止したり蛍光体を保持したりする光学部材の透明度が低いと、これを用いた半導体発光装置の輝度が低減するため、高輝度な半導体発光装置を得にくくなる傾向にある。
【0121】
ここで「半導体発光装置の発光波長」とは、半導体発光装置の種類に応じて異なる値であるが、一般的には、通常300nm以上、好ましくは350nm以上、また、通常900nm以下、好ましくは500nm以下の範囲の波長を指す。この範囲の波長における光透過率が低いと、光学部材が光を吸収してしまい、光取り出し効率が低下して、高輝度の半導体発光装置を得ることができなくなる可能性がある。さらに、光取り出し効率が低下した分のエネルギーは熱に変わり、半導体発光装置の熱劣化の原因となる可能性がある。
【0122】
紫外〜青色領域(波長300nm〜500nm)においては光学部材が光劣化しやすい。したがって、この波長領域に発光波長を有する半導体発光装置に、耐久性に優れた本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を適用すれば、その効果が大きくなるので好ましい。
【0123】
なお、ポリオルガノシロキサン硬化物のUV透過率は、例えば上述した光透過率の測定方法により、膜厚1mmに成形した平滑な表面の単独硬化物膜のサンプルを用いて、紫外分光光度計により測定することができる。
【0124】
ただし、半導体発光装置の形状は様々であり、光学部材を備える場合でも大多数は0.1mmを超える厚膜状態での使用であるが、LEDチップ(発光素子)から離れた位置に薄膜状の蛍光体層(例えばナノ蛍光体粒子や蛍光イオンを含む厚さ数μmの層)を光学部材として設ける場合や、LEDチップの直上に薄膜状に高屈折光取り出し膜を光学部材として設ける場合等、薄膜使用の用途もある。このような場合、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、この膜厚において80%以上の透過率を示すことが好ましい。前記の薄膜状の適用形態においても、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、通常、後述するように優れた耐光性及び耐熱性を示し、封止性能に優れ、クラック等を生じることなく安定して成膜できる。
【0125】
[5−4.耐熱性]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、耐熱性に優れていることが好ましい。即ち、高温条件下に放置した場合でも、所定の波長を有する光における光透過率が変動しにくい性質を有することが好ましい。具体的には、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、200℃に500時間放置した前後において、波長400nmの光に対する光透過率の維持率が、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、また、通常110%以下、好ましくは105%以下、より好ましくは100%以下である。
なお、前記の変動比は、紫外/可視分光光度計による透過率測定により、[5−2.光透過率]で前述した光透過率の測定方法と同様にして測定することができる。
【0126】
[5−5.耐UV性]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、耐光性に優れていることが好ましい。特に、UV(紫外光)を照射した場合でも、所定の波長を有する光に対する透過率が変動しにくい性質を有することが好ましい。具体的には、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、中心波長380nm、放射強度0.4kW/mの光を72時間照射した前後において、波長400nmの光における透過率の維持率が、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、また、通常110%以下、好ましくは105%以下、より好ましくは100%以下である。
なお、前記の変動比は、紫外/可視分光光度計による透過率測定により、[5−2.光透過率]で前述した光透過率の測定方法と同様にして測定することができる。
【0127】
[5−6.硬度]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、エラストマー状を呈することが好ましい。一般に半導体発光装置等を構成する部材としては熱膨張係数の異なる部材を複数使用することが多いが、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物がエラストマー状を呈することにより、半導体発光装置等を構成する部材の伸縮による応力を緩和することができる。したがって、使用中に剥離、クラック、断線などを起こしにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れる半導体発光装置を実現できる。
【0128】
具体的には、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、デュロメータタイプAによる硬度測定値(ショアA)が、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上であり、また、通常90以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。上記範囲の硬度測定値を有することにより、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、クラックが発生しにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れるという利点を得ることができる。
【0129】
また、例えば平板上のパッケージを使用するチップオンボード形式の半導体発光装置や、一括封止後にダイシングによりパッケージを個片化する工程を経て製造される半導体発光装置等の封止材として本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を適用する場合には、ポリオルガノシロキサン硬化物は外力によるワイヤ切断やチップ破損を防止するに足りる機械的強度を有することが好ましい。この場合、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、デュロメータタイプDによる硬度測定値(ショアD)が、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、また、通常80以下、好ましくは70以下、より好ましくは60以下である。
ただし、このような高硬度のポリオルガノシロキサン硬化物は前述の低硬度の部材と比較すると耐リフロー性や耐温度サイクル性に劣る場合があるので、この半導体発光装置は、チップや配線の近傍に低硬度の部材、外周部に高硬度の部材をそれぞれ設けて積層構造としても良い。本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は接着性に優れるため、積層構造としても層間剥離することなく長期にわたり使用することができる。
【0130】
なお、硬度測定値(ショアA及びショアD)は、JIS K6253に記載の方法により測定することができる。具体的には、古里精機製作所製のA型又はD型のゴム硬度計を用いて測定を行なうことができる。
またリフローとは、はんだペーストを基板に印刷し、その上に部品を搭載して加熱、接合するはんだ付け工法のことをいう。そして、耐リフロー性とは、最高温度260℃、10秒間の熱衝撃に耐え得る性質のことを指す。
【0131】
[5−7.電気的特性]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、電気的特性の劣化が少ないことも、利点の一つである。
通常、ポリオルガノシロキサン硬化物には付加重合用触媒の白金系化合物や縮合重合用触媒の酸、アルカリ、金属キレート触媒などが微量残留する。従来、ポリオルガノシロキサン硬化物の用途が電気・電子用の封止材である場合には、残留する触媒が原因となり、封止材の絶縁性が不良となったり、封止材が変性したり、電極腐食や電極金属のマイグレーションなどが生じる場合があった。特に発光装置用途では、電極部分の反射率を高めるために電極表面に銀メッキされていることが多く、銀メッキ部分の腐食やマイグレーションによる着色により発光装置の輝度が低下したり、電極や封止材変性部分を基点に封止材の剥離などが起きたりすることがあった。これに対し、本発明に係るポリオルガノシロキサンは気相触媒により硬化し、硬化後に触媒を除去、あるいは触媒濃度を低減することが可能であるために、硬化物中に硬化触媒の残留が少ないポリオルガノシロキサン硬化物を提供することが可能である。この結果、ポリオルガノシロキサン硬化物を電気・電子用途に用いた場合、電気的特性の劣化が少ない製品を提供することが出来る。
【0132】
[5−8.クラック]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、半導体発光装置に封止材として使用した場合、長期間にわたってクラックや剥離を生じることなく半導体発光装置を封止できるものが好ましい。具体的には、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を用いて半導体発光装置を封止し、当該半導体発光装置に、通常20mA以上、好ましくは350mA以上の駆動電流を通電して温度85℃相対湿度85%にて連続点灯を行った場合に、通常500時間以上、好ましくは1000時間以上、より好ましくは2000時間以上経過後の輝度が、点灯直後の輝度と比較して低下しないことが好ましい。
【0133】
[5−9.形状及び寸法]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物の形状及び寸法に制限は無く任意である。例えば、ポリオルガノシロキサン硬化物が何らかの半導体発光装置の容器内を充填する封止材として使用される場合には、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物の形状及び寸法は、その半導体発光装置の容器の形状及び寸法に応じて決定される。また、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物が何らかの基板の表面に形成される場合は、通常は膜状に形成されることが多く、その寸法は用途に応じて任意に設定される。本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を導光板や航空宇宙産業用部材に用いる場合にも、その適用する部位に合わせて、任意に形状を用いることができる。
【0134】
ただし、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、膜状に形成する場合、厚膜に形成することができるものが好ましい。具体的範囲を挙げると、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物の厚みは、通常0.1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上である。なお、上限に制限は無いが、通常10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下である。ここで、膜の厚みが一定でない場合には、膜の厚みとは、その膜の最大の厚み部分の厚さのことを指すものとする。
【0135】
[5−10.他の部材との組み合わせ]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は単独で用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよい。
例えば本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は半導体発光装置等において封止材として使用可能であるが、この際、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は単独で封止材として用いても良く、他の封止材と組み合わせて用いてもよい。具体例を挙げると、例えば有機蛍光体、酸素や水分により劣化しやすい蛍光体、半導体発光装置等を封止する場合などでは、封止材には、より厳密に酸素や水分からの遮断を要求される。このような用途においては、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物により蛍光体の保持や半導体発光装置の封止及び光取り出しを実施し、さらにその外側に、例えば金属、ガラス、エポキシ樹脂等の高気密樹脂など高気密素材による気密封止又は真空封止を実施しても良い。この場合の半導体発光装置の形状に制限は無く、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物による封止材が実質的に高気密素材により外界から保護遮断されて、酸素や水分の流通が無い状態になっていれば良い。
【0136】
[5−11.ポリオルガノシロキサン硬化物の用途]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物の用途に制限は無いが、その優れた光学的性質を活かす観点からは、例えば半導体発光装置等の発光装置用の光学部材として用いることが好ましい。特に、劣化し難く硬化ムラが無い点を活用するため、LED素子封止用、特に青色LED及び紫外LED等の素子封止用の封止材として用いることが好ましい。この場合、素子を封止するための適切な位置の塗布面にポリオルガノシロキサンを塗布し、その塗布物を硬化させ、封止体としてポリオルガノシロキサン硬化物を形成すればよい。
また、封止材として使用する場合、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物に金属粒子等の無機粒子を含有させて、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物の屈折率を調整してもよい。
【0137】
また、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は蛍光体保持材として用いることもできる。例えば、青色発光素子又は紫外発光素子等を励起光源とし、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物中に例えば蛍光体を含有させれば、蛍光体により波長変換した光を発する白色LED及び電球色LEDなどの高出力照明光源を構成することができる。
【0138】
また、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、半導体発光装置用の接着剤として用いることもできる。半導体発光装置を構成する際において、半導体素子とパッケージとを接着する場合、半導体素子とサブマウントとを接着する場合、パッケージ構成要素同士を接着する場合、半導体発光装置と外部の光学部材とを接着する場合などには接着剤を用いることがある。この際、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を塗布、印刷、ポッティングなどすることにより接着剤として用いることができる。特に本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物の耐光性及び耐熱性を高めておけば、長時間高温や紫外光にさらされる高出力の半導体発光装置用の接着剤として用いた場合、長期使用に耐え高い信頼性を有する半導体発光装置を提供することができる。
【0139】
さらに、その他にも、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物は、その優れた耐熱性、耐紫外線性、透明性等の特性から、下記のディスプレイ材料等の用途に用いることができる。
ディスプレイ材料としては、例えば、液晶ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶表示装置周辺材料、次世代フラットパネルディスプレイであるカラープラズマディスプレイ(PDP)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材・前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着材等、プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等、フィールドエミッションディスプレイ(FED)の各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。
【0140】
ところで、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を他の部材と組み合わせて用いる場合、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物及び/又は他の部材の表面には、密着性を高めるために密着性改善のための表面処理を行なっても良い。このような表面処理としては、例えばプライマーやシランカップリング剤を用いた密着改善層の形成、酸やアルカリなどの薬品を用いた化学的表面処理、プラズマ照射やイオン照射・電子線照射を用いた物理的表面処理、サンドブラストやエッチング・微粒子塗布などによる粗面化処理などが挙げられる。また、例えば、特開平5−25300号公報、稲垣訓宏著「表面化学」Vol.18 No.9、pp21−26、黒崎和夫著「表面化学」Vol.19 No.2、pp44−51(1998)等に開示される公知の表面処理方法を行なってもよい。
【0141】
[6.発光装置]
本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を光学部材として用いれば発光装置を構成することができる。この際、発光装置としては半導体発光装置の光学部材として本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を用いることが好ましい。以下、この半導体発光装置について実施形態を示して説明する。ただし、発光装置及び半導体発光装置の構成は以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、以下の実施形態の説明において、半導体発光装置を構成する光学部材は、適宜「半導体発光装置用部材」と呼ぶ。
【0142】
〔実施形態の一例〕
図1に本発明の一実施形態としての半導体発光装置の模式的な断面図を示す。図1に示すように、本実施形態の発光装置1は、プリント配線2が施された絶縁基板3上に発光素子4が表面実装されている。この発光素子4は発光層部5のp形半導体層(図示せず)及びn形半導体層(図示せず)それぞれが、導電ワイヤ6,6を介してプリント配線2,2に電気的に接続されている。なお、導電ワイヤ6,6は、発光素子4から放射される光を妨げないように、断面積の小さいものが用いられている。
【0143】
発光素子4としては、紫外〜赤外域までどのような波長の光を発するものを用いてもよいが、ここでは、窒化ガリウム系のLEDチップを用いているものとする。また、この発光素子4は、図1における下面側にn形半導体層(図示せず)、上面側にp形半導体層(図示せず)が形成されており、p形半導体層側から光出力を取り出すようになっている。
【0144】
また、絶縁基板3上には発光素子4を囲む枠状の枠材7が固着されている。なお、絶縁基板3と枠材7を合わせて、またはこれらが一体となっているものを「パッケージ」ということがある。この枠材7の内側には発光素子4を封止及び保護する封止部8を設けてある。この封止部8は、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物を封止材として用いて形成されたものであって、本発明に係るポリオルガノシロキサン硬化物からなる半導体発光装置用部材に該当する。
【0145】
このような半導体発光装置1を製造する場合、封止部8をポリオルガノシロキサン硬化物で形成するに当たって、本発明のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法により製造するようにすればよい。製造方法の具体例を挙げると、ポリオルガノシロキサン組成物を枠材7の内側に塗布し、これを気体状態の硬化触媒と接触させて硬化させてポリオルガノシロキサン硬化物からなる封止部8を製造するようにすればよい。この際、封止部8には蛍光体を含有させずに透明部材としてもよいが、蛍光体を含有させて蛍光部材としていても良い。
【0146】
ポリオルガノシロキサン組成物を塗布する場合、その具体的な塗布方法に制限は無い。例えば、スキージ等を用いたスクリーン印刷法、ディスペンサー等を用いたポッティング法、ディピング法、スピンコーター等を用いたスピンコート法などにより塗布することができる。
【0147】
上述した構成の半導体発光装置をはじめ、ポリオルガノシロキサン硬化物を備える発光装置を製造する際に本発明のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法を用いることにより、従来に比べて発光装置の光色むらや光色ばらつきを少なくすることができるとともに、外部への光の取り出し効率を高めることができる。上記の実施形態に関していえば、ポリオルガノシロキサン硬化物からなる封止部8を、曇りや濁りがなく透明性が高いものとすることができる。このため、反抗装置1は、光色の均一性に優れ、発光装置1間の光色ばらつきもほとんどなく、発光素子4の光の外部への取り出し効率を従来に比べて高めることができる。また、蛍光体や発光素子等の発光物質の耐候性を高めることができ、従来に比べて発光装置1の長寿命化を図ることが可能となる。
【0148】
[7.発光装置の用途]
発光装置は、単独で、又は複数個を組み合わせることにより、例えば、照明ランプ、液晶パネル用等のバックライト、超薄型照明等の種々の照明装置、画像表示装置として使用することができる。
なお、発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターと併用してもよい。
【実施例】
【0149】
以下に実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0150】
[実施例1]
ポリオルガノシロキサン組成物としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 両末端水酸基ポリジメチルシロキサン YF−3057 5.254gと信越化学工業社製 側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイル KF−9901 0.184gとを混合したものを用意し、ここから30μLずつを、直径8mm、深さ1mmの表面が銀製の容器に注入したものを6個用意した。一方、気体状態の硬化触媒の原料として、東京化成社製 N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(EtNOH)を直径14mm、深さ20mmのガラス容器に0.5g入れたものを1個用意した。これらを、直径55mm、深さ28mmの蓋付きガラス容器内に入れ、蓋を閉じた。その状態を図2に模式的に示す。
【0151】
この容器を60℃にて1時間保持した後、150℃にて3時間加熱保持し、ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させた。6個の銀製の容器内のポリオルガノシロキサン組成物はこの時点で全て硬化していた。
【0152】
その後、これら6個の銀製の容器をガラス容器から取り出し、硬化触媒の存在しない大気下(開放系)で150℃にて3時間熟成させ、ポリオルガノシロキサン硬化物を得た。
この無色透明の硬化物の硬度はショアーAで25であった。
【0153】
[実施例2]
実施例1のポリオルガノシロキサン組成物5.436gに、日本アエロジル社製アエロジルRX200を0.430g、青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu。以下「BAM」という。)を0.466g、緑色蛍光体(BaSrSiO:Eu。以下「BSS」という。)を0.062g、及び、赤色蛍光体(CaAlSiO:Eu。以下「CASON」という。)を0.262g混練し、蛍光体含有半導体用封止材(以下、単に「封止材」という。)を調製した。
【0154】
調整した封止材を、半導体発光素子及び導電ワイヤが実装されている銀表面を有する直径8mm、深さ1mmの円筒型半導体発光装置用パッケージにディスペンサーを用いてポッティングし、直径55mm、深さ28mmの蓋付きガラス容器内に、実施例1と同様の気体状態の硬化触媒の原料と共に入れ、実施例1と同じ温度条件で硬化、熟成を行い、半導体発光装置を得た。なお、半導体発光素子の発光波長は405nmである。
【0155】
[比較例1]
実施例1のポリオルガノシロキサン組成物5.440gとN,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.011gとを予め混合し、直径55mm、深さ28mmのガラス容器内に、実施例1と同様の気体状態の硬化触媒の原料と共に入れ、蓋をせずに、実施例1と同様の温度条件で硬化、熟成を行った。蓋をしていないため、気体状態の硬化触媒はポリオルガノシロキサン組成物と接触することなく反応系外に排出され、硬化はポリオルガノシロキサン硬化物と混合したN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを触媒として進行した。得られたものは、内部はきちんと硬化していたが、表面の薄層が未硬化であった。これは、表面付近のN,N−ジエチルヒドロキシルアミンが揮発したことが一因であると考えられる。
【0156】
[比較例2]
実施例1のポリオルガノシロキサン組成物5.432gとN,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.054gとを予め混合し、直径55mm、深さ28mmのガラス容器内に、実施例1と同様の気体状態の硬化触媒の原料と共に入れ、蓋をせずに、実施例1と同様の温度条件で硬化、熟成を行った。蓋をしていないため、気体状態の硬化触媒はポリオルガノシロキサン組成物と接触することなく反応系外に排出され、硬化はポリオルガノシロキサン硬化物と混合したN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを触媒として進行した。内部及び表面ともに硬化はしたが、内部にいくつかの発生水素由来と思われる小泡が残った。この無色透明の硬化物の硬度はショアーAで20であった。
【0157】
[比較例3]
N,N−ジエチルヒドロキシルアミンの代わりにジオクチルスズジラウレートを0.011g用いた他は、実施例2と同様の方法で比較例3の半導体発光装置を得た。
【0158】
[点灯寿命試験]
実施例2で製造した半導体発光装置と比較例3で製造した半導体発光装置の点灯寿命試験を、以下の方法で実施した。
〔点灯寿命試験方法〕
点灯寿命試験は以下の条件で行った。
・点灯電源装置 :旭製作所社製
・通電 :350mA連続通電
・環境試験器 :エスペック社製 小型環境試験器SH−221
・試験環境 :25℃ 55%RH
【0159】
〔輝度維持率評価方法〕
前述の〔点灯寿命試験方法〕の条件にて300時間点灯寿命試験を行った後の半導体発光装置について、オプトシリウス社製の分光測定装置を用いて光束を測定し、点灯寿命試験初期の光束で除したものの百分率を輝度維持率とした。
なお、光束測定条件は以下の通りである。
・積分球 :Sphere Optics 4inchi積分球(10cm)
・ディテクター :Ocean Optics HR2000
【0160】
前記の点灯寿命試験の結果を図3に示す。図3から、比較例3と比べて実施例2の半導体発光装置の方が高い輝度維持率(寿命)を示していることがわかる。
【0161】
また効果ムラの点では、比較例1では触媒が表層から揮発したために、表層の硬化が不良になっている。また、比較例2では硬化を促進させるために内添の触媒を増量したが、下層の硬化が早すぎて発泡が生じ硬化物に泡が残留した一方、全体としては硬化不足であり硬度の低い硬化物となっている。これに対し、実施例ではこのような硬化ムラは起きず、発泡も無く、目標硬度にて均一硬化している。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明は、主に半導体分野、特に半導体発光装置分野において、封止材の製造方法として好適に用いることができる。例えば、照明装置、画像表示装置、薄型テレビ等の液晶バックライト用光源などの広範な分野において好適に使用することができる。本発明の製造方法を用いて製造されたポリオルガノシロキサン硬化物は、耐UV性に優れるため、従来適切な封止材の無かった近紫外光・紫外光を発する半導体発光装置、並びにそれが適用されうる照明装置及び画像表示装置等の各分野において、その産業上の利用可能性は極めて高い。
【0163】
さらに、近紫外・紫外光により励起される蛍光体を保持するためのバインダとして、本発明の製造方法で製造されたポリオルガノシロキサン硬化物を使用することにより、青色励起より広範な蛍光体を選択することが可能となり、高演色性、高輝度の半導体発光装置の提供が可能となる。このような紫外光励起の赤・緑・青蛍光体による白色光源は、高演色性で色再現性に優れる。したがって、本発明の製造方法で製造されたポリオルガノシロキサン硬化物を液晶ディスプレイのバックライト、住宅や店舗用照明、理化学用・医療用・工程検査用などの写真撮像用照明などに用いることにより、長時間連続して見つめていても眼の疲れや体の不調を起こしにくい高品質の照明を提供することができる。
【0164】
また、本発明は、前述の半導体発光装置の分野のみならず、光線透過性(透明性)、耐光性、耐熱性、耐水熱性、耐UV性などの種々の特性が要求される航空宇宙産業用材料や、その他の材料、例えば、熱伝導性シート、熱伝導性接着材、絶縁性熱伝導材料、アンダーフィル材、シーラント、光学用導波路構造材、導光板、導光シート、反射光制御材料、診断用マイクロフルイド材料、微生物培養媒体、ナノインプリント用材料およびそれらの製造方法にも適用性が高いため、航空宇宙、光学、電気電子、バイオ等の各分野においても、その産業上の利用可能性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の一実施形態としての半導体発光装置の模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施例1で使用した製造装置を示す模式的な図である。
【図3】本発明の実施例2及び比較例3の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0166】
1 発光装置(半導体発光装置)
2 プリント配線
3 絶縁基板
4 発光素子
5 発光層部
6 導線ワイヤ
7 枠材
8 封止部(ポリオルガノシロキサン硬化物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体状態の触媒と、液体状の硬化性ポリオルガノシロキサンとを接触させる
ことを特徴とする、ポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンとして、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとヒドロキシシリル基を有するポリオルガノシロキサンとを用いる
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法。
【請求項3】
前記触媒として、ヒドロキシルアミノ基を有する化合物を用いる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンとして、重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンを用いる
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン硬化物の製造方法。
【請求項5】
ポリオルガノシロキサン硬化物を含有する発光装置の製造方法であって、
該ポリオルガノシロキサン硬化物を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造する
ことを特徴とする、発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−90292(P2010−90292A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262318(P2008−262318)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】