説明

ポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法

【課題】ハーフミラー等の光学系を使用せずに、高精度な軸倒れ測定を行うことができる、ポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】光源5と、光源5から射出される測定光6を被測定シャフト1で反射させた反射光の一部を直接受光して第1の受光位置を検出する第1の光検出素子3と、反射光の他の一部を直接受光して第2の受光位置を検出する第2の光検出素子4と、第1の光検出素子3と第2の光検出素子4から出力される信号により、被測定シャフト1の軸倒れ角度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法に関するものであり、特に、非接触でモータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する場合、シャフトの軸方向に対して垂直となるように平板ミラーをシャフトの先端に取付け、オートコリメータを用いてミラーの傾きを検出することにより、シャフトの軸倒れを算出していた。
【0003】
また、特許文献1には、円柱状で外周面が平滑面となっている被測定物の傾斜角を非接触で測定し、円柱状の被測定物の倒れ角を算出する測定方法が開示されている。特許文献1に示す従来の測定方法を、図8を用いて具体的に説明する。
【0004】
図8に示すように、光源101から射出されたレーザ光は、光軸102を通り被測定物103に照射し、放射状に反射する。反射光は、光軸102方向に進む(光源101方向に戻る)反射光と、光軸102に対してαの角度を持った第1光路104に進む反射光と、第2光路105を進む反射光とがある。第1光路104を進む反射光は、第1のミラー106によって上方に反射し、第1のイメージセンサ107がそれを受光する。また、第2光路105を進む反射光は、第2のミラー108によって上方に反射し、第2のイメージセンサ109がそれを受光する。また、光軸102方向に進む反射光は、ハーフミラー110によって上方に反射し、第3のイメージセンサ111がそれを受光する。そして、3つのイメージセンサから検出される3つの相対位置によって被測定物の倒れ角を算出している。
【特許文献1】特開昭60−211302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の方法では、軸倒れのY軸成分を検出しようとすると、Y軸測定用の第3のイメージセンサ111は光源位置方向に設置しなければならないが、第3のイメージセンサ111と光源101との重なりを避けるために、ハーフミラー110を用いて反射光の進路を変化させている。このため、ハーフミラー110等の光学系が必要となり、光学系の設置誤差などの影響を取り除くために、軸倒れのない校正用被測定物を用意してオフセット調整を行わなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ハーフミラー等の光学系を使用せずに、高精度な軸倒れ測定を行うことができる、ポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置は、光源と、前記光源から射出される測定光を被測定シャフトで反射させた反射光の一部を直接受光して第1の受光位置を検出する第1の光検出素子と、上記反射光の他の一部を直接受光して第2の受光位置を検出する第2の光検出素子と、前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子から出力される信号により、前記シャフトの軸倒れ角度を測定するポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の測定装置及び測定方法によれば、シャフトにレーザを照射し、放射状に広がった反射光を直接光検出素子で受光するものであるので、ハーフミラー等の光学系を使用することがなく、高精度な軸倒れ測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置は、光源と、前記光源から射出される測定光を被測定シャフトで反射させた反射光の一部を直接受光して第1の受光位置を検出する第1の光検出素子と、上記反射光の他の一部を直接受光して第2の受光位置を検出する第2の光検出素子と、前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子から出力される信号により、前記シャフトの軸倒れ角度を測定するポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定するものである。
【0010】
また、本発明に係るポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定方法は、光源から射出される測定光を被測定シャフトで反射させた反射光の一部を第1の光検出素子により直接受光して第1の受光位置を検出し、上記反射光の他の一部を第2の光検出素子により直接受光して第2の受光位置を検出し、前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子から出力される信号により、前記シャフトの軸倒れを測定するものである。
【0011】
また、上記測定装置及び測定方法において、前記第1の光検出素子、前記第2の光検出素子及び前記被測定シャフトが同一直線上に配置されていることが好ましい。
【0012】
さらに、上記測定装置及び測定方法において、前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子が、前記光源と前記被測定シャフトとを結ぶ直線に対して線対称となっていることが好ましい。
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法の概略構成を示した図である。
【0015】
図1に示すように、測定対象物であるポリゴンミラー用モータのシャフト(被測定シャフト)1を鉄プレートからなる測定台2の上に配置する。本実施形態では、被測定シャフト1と測定台2との接触部分を原点とし、測定台の主面上において、任意の方向にX軸を設定するとともに、X軸に対して直角方向にY軸を設定する。
【0016】
また、第1の光検出素子3と第2の光検出素子4を被測定シャフト1と同一直線状となるように配置する。本実施形態では、さらに第1の光検出素子3と第2の光検出素子4を結ぶ直線が測定台2に対して平行になるように配置した。なお、第1の光検出素子3はX軸測定用の光検出素子であり、光源5から射出される測定光6を被測定シャフト1で反射させた反射光を直接受光して第1の受光位置を検出するものである。また、第2の光検出素子4はY軸測定用の光検出素子であり、第1の光検出素子3に入射する反射光7とは異なる反射光8を直接受光して第2の受光位置を検出するものである。
【0017】
そして、第1の光検出素子3と第2の光検出素子4を結ぶ直線の垂直二等分線の方向に光源を配置する。これにより、第1の光検出素子3と第2の光検出素子4は、光源5から射出した光の光軸を基準として線対称の位置に配置される。このように配置した理由を図2を用いて説明する。図2は、図1において被測定シャフト1を上方から見た図である。図2に示すように、光源5から射出した測定光6の一部は、断面が円形の被測定シャフト1の外周側面上の微小面で反射し、X軸測定用の第1の光検出素子3に受光する反射光7となる。ここで微小面は、X軸に対して垂直の面であるためX軸方向の傾きを求めるためには、この微小面の傾きを測定する必要がある。このためその微小面の傾き情報を持った反射光を検出する位置が、第1の光検出素子3の配置位置となる。同様の方法で、Y軸測定用の第2の光検出素子4の配置位置が決まる。
【0018】
次に、本実施形態に係る被測定シャフト1の軸倒れ角度を測定する測定方法について説明する。
【0019】
図1に示すように、光源5から射出した測定光6であるレーザ光は被測定シャフト1に照射し、被測定シャフト1で放射状に反射し反射光となる。反射光の一部は第1の光検出素子3に直接入射する。また、第1の光検出素子3に入射する反射光7とは異なる反射光8が第2の光検出素子4に直接入射する。ここで、第1の光検出素子3又は第2の光検出素子4に直接入射するとは、被測定シャフト1で反射した反射光が、被測定シャフト1から第1の光検出素子3(又は第2の光検出素子4)までの間にミラーやハーフミラー等の光学系及びその他の物を介さないことを意味する。
【0020】
第1の光検出素子3又は第2の光検出素子4に入射したレーザ光は、その入射位置の光量に対応する所定の数値からなる検出位置X又はYに変換される。より具体的には、入射位置の量に比例した電荷が発生し、電荷が光電流として光検出素子内部の抵抗層に到達し、抵抗層の両端の出力電極までの距離に逆比例して分割され、そのときの抵抗層の両端で発生する電圧VX1,VX2によって入射検出位置X,Yを演算する。
【0021】
X軸成分測定用の第1の光検出素子3によって検出位置Xを算出する方法について図3を用いて詳細に説明する。図3は、X軸成分測定用の第1の光検出素子3の正面図である。尚、Y軸成分測定用の第2の光検出素子4についても図3と同様の構成である。第1の光検出素子3の受光部31に、当該受光部31の原点位置32からXの距離に被測定シャフト1からの反射光7が照射した場合、第1の光検出素子3から出力される電圧をVX1,VX2とし、第1の光検出素子3における受光部31の縦方向の面幅をdとして、X軸の入射検出位置Xを求めると(数式1)のように表わされる。
【0022】
【数1】

【0023】
上記第1の光検出素子3で求めたように、第2の光検出素子4も上記同様の方法で、Y軸の入射検出位置Yを求めると(数式2)のように表わされる。
【0024】
【数2】

【0025】
次に、第1の光検出素子3で得られたX軸の入射検出位置Xと第2の光検出素子4で得られたY軸の入射検出位置Yから、X軸方向における被測定シャフト1の傾きθとY軸方向における被測定シャフト1の傾きθを算出する。この傾きθと傾きθの算出方法について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、図1で示す矢印aの方向(Y軸に平行な方向)からXY平面に対して平行に見た時の平面図である。図5は、図1で示す矢印bの方向(X軸に平行な方向)からXY平面に対して平行に見た時の平面図である。
【0026】
図4で示すように、光源5から射出した測定光6が被測定シャフト1で反射して第1の光検出素子3まで入射するまでの光路長をL1とした場合、上記第1の光検出素子3で得られた入射検出位置Xを用いて、X軸方向の傾きθを求めると、数式(3)のように表される。
【0027】
【数3】

【0028】
同様に、図5で示すように、光源5から射出した測定光6が被測定シャフト1で反射して第2の光検出素子4まで入射するまでの光路長をL2とした場合、上記第2の光検出素子4で得られた入射検出位置Yを用いて、Y軸方向の傾きθを求めると、数式(4)のように表される。
【0029】
【数4】

【0030】
なお、本実施形態では、上記光路長L1と光路長L2とを同じ値Lとなるように、第1の光検出素子3と第2の光検出素子4を配置している。
【0031】
ここで、レーザ光がある入射角を持って傾斜面で反射する場合には、入射角補正を行うことが好ましい。この場合、上記のθ、θは、図1に示すレーザ光の入射角θで補正を行うことになる。この入射角補正を行ったときのX軸の傾きをθX、Y軸の傾きをθYとすると、数式(5)、数式(6)のように表される。
【0032】
【数5】

【0033】
【数6】

【0034】
次に、被測定シャフト1の軸の倒れ方向φAを上記の数式5と数式6を用いて求める。図6は、図1をZ軸方向から見た時のXY平面図を表している。図6に示すように、被測定シャフト1の軸の倒れ方向φAは、数式(7)で表される。
【0035】
【数7】

【0036】
そして被測定シャフト1の軸倒れの角度φは図7より、数式(8)のように表わされる。図7は、図1をXY平面方向から見た時の平面図である
【0037】
【数8】

【0038】
以上のとおり、本発明の測定装置及び測定方法によれば、光源5から射出した測定光6をシャフト1に照射し、放射状に広がった反射光の一部の反射光7,8を2つの光検出素子3,4で直接受光して、X軸成分、Y軸成分の軸倒れを算出することで、シャフト1の軸倒れ角度を算出することができる。
【0039】
このように本発明の測定装置及び測定方法は、従来のようにシャフト先端にミラーを取り付ける必要がなく、検査タクトタイムの短縮を図ることができ、インラインでシャフトの軸倒れを測定することが可能となる。また装置構成が単純で、誤差要因となるような複雑な光学系を使用しないため、精度の高い軸倒れの測定が可能である。
【0040】
実際に、光路長Lを150mm、レーザの波長を650nm、ビームパワーを14mW、第1及第2の光検出素子3,4として、受光面幅dが6mmのPSDを用いて、14台のシャフトの軸倒れを測定した。この時、従来使用していたオートコリメータでの測定値と比較すると、相関係数は0.98以上となり、従来の測定方法と高い相関を得ることができていることが確認できた。従って、本発明に係る測定装置及び測定方法は、従来の測定方法と同様に精度の高い測定方法である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の利用分野は特に制限はなく、ポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定方法及び測定装置として広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置及び測定方法の概略構成を示した図
【図2】図2は、図1において被測定シャフトを上方から見た図
【図3】図3は、X軸成分測定用の第1の光検出素子の正面図
【図4】図1で示す矢印aの方向からXY平面に対して平行に見た時の平面図
【図5】図5は、図1で示す矢印bの方向からXY平面に対して平行に見た時の平面図
【図6】図6は、図1をZ軸方向から見た時のXY平面図
【図7】図7は、図1をXY平面方向から見た時の平面図
【図8】図8は、従来のポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置概略構成を示した図
【符号の説明】
【0043】
1 被測定シャフト(シャフト)
2 測定台
3 第1の光検出素子
4 第2の光検出素子
5,101 光源
6 測定光
7,8 反射光
31 受光部
32 受光部の原点位置
102 光軸
103 被測定物
104 第1光路
105 第2光路
106 第1のミラー
107 第1のイメージセンサ
108 第2のミラー
109 第2のイメージセンサ
110 ハーフミラー
111 第3のイメージセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から射出される測定光を被測定シャフトで反射させた反射光の一部を直接受光して第1の受光位置を検出する第1の光検出素子と、上記反射光の他の一部を直接受光して第2の受光位置を検出する第2の光検出素子と、前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子から出力される信号により、前記シャフトの軸倒れ角度を測定するポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定装置。
【請求項2】
前記第1の光検出素子、前記第2の光検出素子及び前記被測定シャフトが同一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子が、前記光源と前記被測定シャフトとを結ぶ直線に対して線対称となっていることを特徴とする請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
光源から射出される測定光を被測定シャフトで反射させた反射光の一部を第1の光検出素子により直接受光して第1の受光位置を検出し、上記反射光の他の一部を第2の光検出素子により直接受光して第2の受光位置を検出し、前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子から出力される信号により、前記シャフトの軸倒れ角度を測定するポリゴンミラー用モータのシャフトの軸倒れを測定する測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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