説明

ポリスチレン系樹脂積層発泡シートおよびその成形体

【課題】 ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが本来有する軽量で、断熱性が高く、高強度さらには外観、意匠性に優れる特質を損なうことなく、印刷後の乾燥工程において環境負荷の大きい有機溶剤蒸気の発生のないポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供する。
【解決手段】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ポリスチレン系樹脂を押出ラミネートしてなる非発泡ポリスチレン樹脂層を介して、ポリスチレン系非発泡フィルムを積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、該非発泡ポリスチレンフィルムの片面に水性インキを用いて印刷を施すことにより、上記特性を有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートおよびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタントらーめん等の容器には、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面にポリスチレン系樹脂非発泡フィルム層を積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートが、軽量で、断熱性が高く、高強度の割れ難い容器が得られ、さらに、積層するポリスチレン系樹脂非発泡フィルムに印刷を施すことにより、食品用容器とした時に外観や意匠性に優れたものとすることができることから多量に使用されている(例えば、特許文献1)。
しかし、このような印刷に用いるインクは、一般に顔料や樹脂を分散させるためにトルエンやメチルエチルケトンなどの有機溶剤を含んでおり、印刷後の乾燥工程にてそれら有機溶剤が蒸気として発生することで環境負荷が大きく問題がある。しかも、それらを除害するために多大な設備投資が必要であり十分な対策を講じることが困難である。
【特許文献1】特開平9−295365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが本来有する軽量で、断熱性が高く、高強度さらには外観、意匠性に優れる特質を損なうことなく、製造工程の環境負荷が小さいポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ポリスチレン系樹脂を押出ラミネートしてなる非発泡ポリスチレン樹脂層を介してポリスチレン系非発泡フィルムを積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、該非発泡ポリスチレンフィルムの片面に水性インキを用いて印刷がなされているポリスチレン系樹脂積層発泡シート(請求項1)、
水性インキが、水およびアルコールを基材とし、基材中に顔料および樹脂分が分散しているものである、請求項1記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(請求項2)、および
請求項1または2記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られた成形体(請求項3)
に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、軽量で、断熱性が高く、高強度さらには外観、意匠性に優れ、製造工程の環境負荷が小さいポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートとポリスチレン系樹脂非発泡フィルムとからなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造する方法において用いられる積層フィルムは、ポリスチレン系樹脂からなり、無延伸、又は2軸延伸されたポリスチレン系フィルムである。また、該積層フィルムは、2層以上の多層フィルムを使用してもよい。
【0007】
本発明で用いるポリスチレン系樹脂フィルムは、片面に水性インキによって印刷がなされている。
【0008】
該水性インキとしては、水およびアルコールとを基材とし、基材中に顔料および樹脂分とが分散しているものが好適に用いられる。
【0009】
前記水性インキを構成するアルコールの好ましい具体例としては、イソプロパノール、エチルアルコール、メタノールおよびプロパノールがあげられ、これらは単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0010】
前記水性インキを構成する樹脂分は、前記基材に溶解し、顔料を分散させる効果を示すものであれば良く、好ましく用いられる例として、例えば、塩化ビニルおよび酢酸ビニルの共重合物、ゴムの塩素化物、ポリスチレンの塩素化物、アクリル酸およびその誘導体の重合物、ダイマー酸とポリアミンとの縮合物、ポリエステルまたはポリエーテルとジイソシアネートとの重合物、セルロースの硝酸エステル化合物などがあげられる。
【0011】
基材として水およびアルコールを用いる水性インキにより印刷されたフィルムを使用することにより、後述する押出ラミネート法によるポリスチレン系樹脂発泡積層シートの製造工程(溶融状態のポリスチレン系非発泡樹脂を介してフィルムとポリスチレン系樹脂発泡シートを積層する)において、基材としてトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いる従来の溶剤系インキにより印刷されたフィルムでは大量に蒸発・揮散されていた溶剤成分を低減させ、環境への負荷を小さくすることができる。
【0012】
本発明で用いる非発泡ポリスチレンフィルムは、印刷層とポリスチレン系樹脂発泡シートとの接着性を向上させる目的で、インクの上からさらにアンカーコート剤を塗布してあるものでもよい。好ましく用いられるアンカーコート剤の一例として、塩素化ポリスチレンを水に分散させたものをあげることができる。
【0013】
本発明で用いる非発泡ポリスチレンフィルムの目付は、20〜40g/m2が好ましく、25〜35g/m2がより好ましい。非発泡ポリスチレンフィルムの目付量が20g/m2未満の場合、積層時に該非発泡ポリスチレンフィルムにシワが発生しやすくなり、安定的な生産が困難となる傾向がある。また、40g/m2を越えると、フィルム自体のコストが高くなる傾向がある
また、非発泡ポリスチレンフィルムは、インキとの接着性を高める目的で、あらかじめ印刷を施す面にコロナ処理やプラズマ処理が施されていてもよい。
【0014】
前記の印刷は、グラビア印刷等の公知の方法によってなされる。印刷の模様や色数は特に限定はなく、その印刷層が内面(ポリスチレン系樹脂層の発泡層側)に配置されることにより、外観および意匠性に優れ、環境負荷の小さい積層発泡シートが得られる。
【0015】
本発明に用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートと非発泡ポリスチレンフィルムは、ポリスチレン系樹脂を押出ラミネートしてなる非発泡ポリスチレン系樹脂層を介して積層される。押出ラミネートの代表的な方法を、図1に基づいて説明する。
【0016】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造は、図1に概略を示す押出ラミネート設備を用いて行うことができる。押出ラミネート法により本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造する方法としては、発泡シート1をニップロール2に沿わせながら、ニップロール2および冷却ロール3との間に繰り出し、Tダイ4から非発泡ポリスチレン系樹脂層6をフィルム状に押出し、さらにフィルム7をエキスパンダーロール(フィルムのシワを取るためのロール)8を通して、フィルム6の印刷面が非発泡樹脂層7側となるようにニップロール2および冷却ロール3との隙間5に繰り出し、ニップロール2と冷却ロール3とでフィルム7と非発泡ポリスチレン系樹脂層6と発泡シート1とを圧着、引取りすることにより、本発明の積層発泡シート9を得る。
【0017】
この際、押出ラミネート法による積層方法においては、Tダイから押出される非発泡ポリスチレン系樹脂層の温度を、使用する樹脂の流動性により適宜選定することが好ましい。非発泡ポリスチレン系樹脂層の樹脂温度がポリスチレン系樹脂発泡シートと溶融圧着するのに必要な温度に対し低すぎる場合には、ポリスチレン系樹脂発泡シートとの接着力が確保できなくなる傾向がある。一方、高すぎる場合には、非発泡ポリスチレン系樹脂層の有する熱により、ポリスチレン系樹脂発泡シートの非発泡ポリスチレンフィルム接着を行う側の表面に微細な気泡が発生し、成形時の火膨れの原因となったり、更に、外面に積層する他の熱可塑性樹脂非発泡フィルムが膨張・収縮を起こしてシワが発生する傾向がある。例えば、ハイインパクトポリスチレン樹脂の場合には、210〜240℃であることが好ましい。
【0018】
なお、樹脂温度の具体的測定方法としては、例えば、非接触式温度センサー(オプテックス社製 THERMO−HUNTER PT−3LFなど)を用いて、Tダイからフィルム状に押出された非発泡ポリスチレン系樹脂層の中央部と端部の表面温度を測定し、非発泡ポリスチレン系樹脂層の樹脂温度とすることができる。
【0019】
このようにして得られる本発明のポリスチレン系樹脂積層シートの目付は、非発泡ポリスチレンフィルムが非発泡ポリスチレン系樹脂層を介して積層される場合、該非発泡ポリスチレン系樹脂層の目付量は100〜160g/m2が好ましく、120〜140g/m2がより好ましい。該非発泡ポリスチレン系樹脂層の目付量が100g/m2未満の場合には、溶融圧着するのに必要な熱量が不足し、ポリスチレン系樹脂発泡シートとの接着力が確保できなくなる傾向がある。また、160g/m2を越えると、コストが高くなる傾向がある。
【0020】
本発明により得られるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、広く一般的に行われている加熱成形方法にて容器等の成形体に成形することができる。すなわち、赤外線ヒーター等で加熱し、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを二次発泡させた後、金型で嵌合して容器形状を付与した後、シートから容器を打ち抜く方法である。加熱成形の例としては、具体的には、プラグ成形、マッチ・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法があげられる。これらのうちでも、容器形状の出方および表面性の点で、マッチ・モールド成形成形が好ましい。
【0021】
一般に、熱成形に使用される金型設計により、適正なポリスチレン系樹脂積層発泡シートの二次発泡厚みが決まる。一般に、丼形状を有する成形体を得るために熱成形を行う場合には、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの二次厚みとしては4.5〜6.0mm程度が求められ、これに合わせてポリスチレン系樹脂積層発泡シートの一次厚みを決める必要がある。
【0022】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートとは、スチレン系モノマーの単独重合樹脂、スチレン系モノマーと各種ビニールモノマーまたはジビニールモノマーとの共重合樹脂、オレフィン系単独および共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂等へのスチレン系モノマーのグラフト重合樹脂、並びに、これら重合樹脂の混合樹脂組成物からなるスチレン系樹脂を押出発泡したものである。
【0023】
押出発泡による発泡シート製造プロセスは、広く一般に行われている方法で行うことができる。例えば、ポリスチレン系樹脂に造核剤などを混合した樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混合し、発泡剤を圧入した後、更に、発泡に適した温度となるまで溶融樹脂を冷却して、サーキュラー・ダイより低圧域に押出し(すなわち、圧力開放による発泡を行い)、円筒状発泡体を得、円筒状発泡体の内面側から冷却するように円筒状発泡体の内側に位置して設置された円筒状冷却筒にて成形した後、切り開いて発泡シートを得られる方法が知られている。
【0024】
本発明で用いられる発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの物理発泡剤、または、重曹−クエン酸などの化学発泡剤があげられる。また、工業的にはブタンが多用される。なかでも、シートの熱成形性・発泡剤ガスの保持性の観点から、イソブタン70〜100重量%およびノルマルブタン0〜30重量%からなる混合ブタンを用いることが好ましい。
【0025】
本発明で用いられる造核剤としては、多孔質無機粉末、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土、タルク等が使用できる。また、必要に応じて、樹脂中の造核剤の分散をよくするために、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等の滑剤等を添加しても良い。
【0026】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートの目付量は、190g/m2以上であることが好ましく、220g/m2以上であることがより好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡シートの目付量が190g/m2未満では、容器強度を満足する容器を得ることができない傾向がある。また、ポリスチレン系樹脂発泡シートの目付量の増加は、容器強度の向上に繋がる反面、コストアップになることから、400g/m2以下にすることが好ましい。
【0027】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートの残存発泡剤量は、主に、ポリスチレン系樹脂の押出発泡による製造時の発泡剤の圧入量、および発泡時のポリスチレン系樹脂の樹脂温度によって決まる。また、後述するポリスチレン系樹脂発泡シートの表層部の密度を上げることも、ポリスチレン系樹脂発泡シート表面からの発泡剤の散逸を抑える効果も有し、残存発泡剤量の確保に有効である。
【0028】
ポリスチレン系樹脂発泡シートに残存発泡剤(ガス)量が多くなるに伴い、ポリスチレン系樹脂発泡シートのセル内でのガス圧力が高くなり、容器強度が向上する。
【0029】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートの残存発泡剤量は、十分に強度の高い容器を得るために、2.3〜3.0重量%であることが好ましく、2.5〜2.8重量%であることがより好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡シートの残存発泡剤量が2.3重量%未満であれば、得られる容器の容器強度が低下する傾向がある。また、残存発泡剤量が3.0重量%を越える場合には、ポリスチレン系樹脂非発泡フィルムとの積層時にポリスチレン系樹脂発泡シートから発泡剤ガスが散逸して、両者の積層界面に空隙が生じ、成形の加熱時にポリスチレン系樹脂非発泡フィルムとポリスチレン系樹脂発泡シートとの界面が剥離する現象(いわゆる、火膨れ現象)を生じさせ、容器外観が大きく損なわれる傾向がある。
【0030】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートの独立気泡率は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート中の発泡剤ガスの散逸を抑え、長期間での強度物性を維持するために、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡シートの独立気泡率が85%未満の場合には、発泡シートの残存発泡剤の散逸が早くなり、気泡内の圧力が維持できず、強度が大幅に低下する他、成形時の加熱による二次発泡力も低下するため、良好な成形が不可能となる傾向がある。なお、ポリスチレン系樹脂発泡シートの独立気泡率は、Air Comparison Pycnometer(例えば、BECKMAN製model1930等)を用いて測定することができる。
【0031】
本発明においては、押出発泡法にてポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する際、ポリスチレン系樹脂発泡シート表面に空気を吹き付けて急冷することにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表層部の密度を高くすることができる。目標とする表層部の密度を得るためには、押出直後のシート表面温度、押出樹脂吐出量、シート引き取り速度等に合わせて、冷却空気の温度、風量、風速および吹き付け位置を適宜調整すればよい。
【0032】
ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの強度を十分引き出すためには、積層発泡シートの最大二次厚み(加熱してシートに焼けが発生する直前の二次発泡厚み)の80〜90%程度の二次厚みとなるように加熱して成形を行うことが望ましく、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの厚みは1.5〜2.2mmが好ましく、1.7〜2.0mmがより好ましい。ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの厚みが1.5mm未満であれば、成形時の加熱を強くする必要があり、過剰な加熱による容器強度の低下や外観不良を招く傾向がある。また、2.2mmを越える場合には、成形時に十分な加熱を行うことができず、加熱不足のためポリスチレン系樹脂積層発泡シートの伸びが不足し、ナキ(成形体において、局所的に発泡シートが引き延ばされる現象)等の成形不良が発生する傾向がある。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0034】
(容器の外観観察)
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを、連続成形機(浅野研究所製、FLC3型)を用い、絞り比0.85の容器(口元内径130mmφおよび底面口径86mmφ×深さ110mm、36個/ショット)の金型を用い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートのポリスチレン系樹脂非発泡フィルム積層面が容器の外側となるように、マッチ・モールド法により成形した。その際のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの二次発泡厚みは、5.4〜5.6mmとなるように加熱条件を調整した。得られた容器を、以下の基準に従い目視評価を行った。
○:インクのカスレや飛びが認められない。
△:インクのカスレや飛びが微かに認められる。
×:インクのカスレや飛びが明かに認められる。
【0035】
(積層発泡シート製造時の環境負荷評価)
積層発泡シートの製造工程における環境負荷の程度として、印刷済みポリスチレン系フィルムと溶融状態のポリスチレン系樹脂が接触する際に発生する臭気を、簡易型ガスセンサー(新コスモス電機(株)製、XP−329形)を用いて測定した。測定は、図1で示したロール2および冷却ロール3周辺において、5分間行い5分間での最大値を測定値とし、以下の基準で評価した。
○:測定値が1000未満
×:測定値が1000以上
【0036】
(ポリスチレンシートAの製造方法)
ポリスチレン樹脂(PSジャパン製、スタイロン685)100重量部、ブレンドオイル0.05重量部及び気泡核形成剤(林化成 タルカンPK)0.5重量部をブレンダーにて攪拌混合した配合物をタンデム型押出機に供給し、第1段押出機中にて溶融させた後、発泡剤としてイソブタン85重量%/ノルマルブタン15重量%のブタンガスをポリスチレン樹脂(100重量部)に対し4.5重量部圧入混合し、150℃(ダイスの樹脂流入部に設置した温度センサーによって測定)に設定した第2段押出機中で冷却し、サーキュラーダイより大気圧下に吐出し、冷却筒にて成形しながら10m/minで引き取りつつ延伸・冷却し、円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより、1050mm幅の発泡シートを得た。
なお、得られたポリスチレン系樹脂発泡シートは、目付量220g/m2 、残存発泡剤量2.6%、およびシートの厚み2.0mmでその独立気泡率は90%以上であった。
【0037】
(押出ラミネート法)
図1に示す押出ラミネート設備を用いて、表1に示す発泡シート1を繰り出し、非発泡樹脂層7をTダイ4からフィルム状に押出し、さらに、エキスパンダーロール9を通して、印刷済みのフィルム8をロール2と冷却ロール3との間に繰り出し、ロール2と冷却ロール3とでフィルム8と非発泡樹脂層7と発泡シート1とを圧着、引取りすることにより、発泡シートと非発泡樹脂層と積層フィルムとからなる積層発泡シートを製造した。
【0038】
(非発泡樹脂層)
ハイインパクトポリスチレン樹脂(PSジャパン製、HIPS475D)を、非発泡樹脂層として使用した。
【0039】
(フィルムB)
目付30g/m2の未延伸ポリスチレンフィルム(旭化成製、OPS)を使用した。なお、非発泡樹脂層と接着する面には、東京インキ(株)製の水性グラビアインキを用い、グラビア法により木目調の印刷を施した。
(フィルムC)
目付30g/m2の未延伸ポリスチレンフィルム(旭化成製、OPS)を使用した。なお、非発泡樹脂層と接着する面には、東京インキ(株)製の油性インキ(SYNA−S:基材としてイソプロパノールおよび酢酸エチルを使用))を用い、グラビア法により木目調の印刷を施した。
【0040】
(実施例1)
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートAに対し、押出ラミネート法により、目付量130g/m2のハイインパクトポリスチレン樹脂(PSジャパン製、HIPS475D)を介して、ポリスチレンフィルムBを積層し、目付量380g/m2のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得た。なお、押出ラミネート時の押出されたハイインパクトポリスチレン樹脂層の表面温度は、非接触式表面温度計(APTUS製PT−3LF)を用いて測定した結果、幅方向で225±3℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、連続成形機(浅野研究所製、FLC3型)にて成形を行い、容器とした。得られた容器については、外観観察を行った。得られた結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1)
フィルムBの代わりにフィルムCを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートおよび容器の外観観察結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
以上のように、実施例のように、印刷に水性インキを用いたポリスチレン系樹脂積層発泡シートは従来使用されている、トルエンやメチルエチルケトンを使用したインキを用いたポリスチレン系樹脂積層発泡シートのフィルムの接着性とほぼ同等、かつ、その積層発泡シートを用いて作製した成形体は外観、意匠性に優れ、食品用器等に好適に用いることができるものであり、さらに、環境負荷を低減できることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】押出ラミネート法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 発泡シート
2 ニップロール
3 冷却ロール
4 Tダイ
5 ニップロール2と冷却ロール3とで形成される隙間
6 非発泡樹脂層
7 フィルム
8 エキスパンダーロール
9 積層発泡シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ポリスチレン系樹脂を押出ラミネートしてなる非発泡ポリスチレン樹脂層を介して、ポリスチレン系非発泡フィルムを積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、該非発泡ポリスチレンフィルムの片面に水性インキを用いて印刷がなされているポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
水性インキが、水およびアルコールを基材とし、基材中に顔料および樹脂分が分散しているものである、請求項1記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られた成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−305897(P2006−305897A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132167(P2005−132167)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】