説明

ポリビニルアセタールトップ層を有する二重層感熱性画像形成要素

親水性表面を有する基材上に、(b)水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤性であり、かつ、低い極性を有する有機溶剤に不溶性である第1のポリマーを含んで成る第1の層と、(c)水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤性である第2のポリマーを含んで成る第2の層を含んで成る画像形成可能な要素であって、前記第1のポリマーが前記第2のポリマーと異なり、前記第2のポリマーが、ビニルアセタール反復単位と、−COOH、−SO3H、−PO32 、−PO42 、芳香族OH、及び酸性アミド又はイミド基を有する基から選ばれるペンダント酸性基とを含む熱画像形成可能な要素を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱性のポジ型(positive working)要素に関し、特に、基材上に2つの層を含んで成る感熱性印刷版前駆体であって、トップ層がポリビニルアセタールを含む感熱性印刷版前駆体に関する。本発明は、さらに、かかる要素の製造方法及びかかる要素の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷は、油と水との非混和性に基づき、油状物質又は印刷インクが画像領域により受容されることが好ましく、水又は浸し水が非画増領域により受容されることが好ましい。適切に生じさせた表面を水で湿らせて印刷インクを適用した場合に、背景又は非画像領域は水を受容し、印刷インクをはじき、一方で、画像領域は印刷インクを受容し、水をはじく。画像領域内の印刷インクは、次に、画像が形成されるべき紙、布帛などの物体の表面に転写される。しかしながら、一般的に、印刷インクを、まず、ブランケットなどの中間材に転写させ、次に、中間材が、印刷インクを、画像を形成させるべき物体の表面に転写させる。この方法は、オフセット平版印刷と呼ばれている。
【0003】
しばしば使用されるタイプの平版印刷版前駆体(印刷版前駆体とは、露光及び現像前のコートされた印刷版を指す)は、アルミニウムを基にした基材に適用された感光性コーティングを含む。このコーティングは、露光部が現像工程中に除去されるように可溶性になるように輻射線に対して反応することができる。かかる版(もしくはプレート)はポジ型と呼ばれている。一方、コーティングの露光部が輻射線により硬化した場合には、版はネガ型(negative working)と呼ばれる。両方の場合において、残存した画像領域は印刷インクを受容し(すなわち親油性である)、非画像領域(背景)は水を受容する(すなわち親水性)である。画像領域と非画像領域の差異化(differentiation)は露光中に起こる。
【0004】
従来の版において、転写させるべき情報を含むフィルムは、良好な接触を確保するために、真空下で印刷版前駆体に取り付けられた。次に、版を、その一部が紫外線から構成される輻射線源により露光させる。ポジ型の版が使用される場合には、版上の画像に対応するフィルム上の領域は、光が版に作用しないように不透明であり、一方、非画像領域に対応するフィルム上の領域は、透明であり、光が当該コーティングを透過するのを可能にし、当該コーティングの溶解度は増加する。ネガ型の版の場合には、反対のことが起こる。すなわち、版上の画像に対応するフィルム上の領域が透明であるのに対し、非画像領域は不透明である。透明なフィルム領域の下にあるコーティングは、入射光により硬化され、一方、光が作用しなかった領域は、現像中に除去される。ネガ型版の光硬化した表面は、そのため親油性であり、印刷インクを受容するが、現像液により除去されるコーティングでコートされた非画像領域は減感され、従って、親水性である。
【0005】
数十年にわたって、ポジ型の市販の印刷版前駆体は、アルカリ可溶性のフェノール樹脂及びナフトキノンジアジド誘導体の使用により特徴付けられ、画像形成は紫外線を用いて行われた。
【0006】
平版印刷版前駆体の最近の発展により、レーザーを直接アドレスすることができる印刷版前駆体の製造に好適な輻射線感受性組成物がもたらされた。従来の版では一般的であったようなフィルムを使用せずに、印刷版前駆体上に画像を転写させるのに、デジタル画像形成情報を使用することができる。
【0007】
ポジ型の直接レーザーアドレス可能な印刷版前駆体の1つの例は、米国特許第4,708,925号明細書に記載されている。この特許明細書には、画像形成層がフェノール樹脂及び輻射線感受性オニウム塩を含む平版印刷版前駆体が記載されている。この特許明細書に記載されているように、フェノール樹脂とオニウム塩の間の相互作用は、組成物にアルカリ溶剤抵抗性をもたらし、この組成物は、オニウム塩の光分解によりアルカリ可溶性を回復する。この印刷版前駆体は、英国特許第2,082,339号明細書に詳しく記載されているように、露光と現像の間にさらなる処理工程が加えられる場合には、ポジ型印刷版の前駆体として、又はネガ型印刷版の前駆体として使用できる。米国特許第4,708,925号明細書に記載された印刷版前駆体は、それ自体で紫外線感受性であり、可視光及び赤外線に対してさらに増感することができる。
【0008】
ポジ型システムとして使用できる直接レーザーアドレス可能な印刷版前駆体の別の例が米国特許第5,372,907号明細書及び米国特許第5,491,046号明細書に記載されている。これら2つの特許明細書には、像様露光によって樹脂マトリックスの溶解度を高めるために、輻射線による潜伏性ブレンステッド酸の分解が記載されている。米国特許第4,708,925号明細書に記載されている印刷版前駆体の場合におけるように、これらのシステムは、画像形成と現像の間のさらなる処理工程と組み合わせて、ネガ型システムとして使用することもできる。ネガ型印刷版前駆体の場合には、分解副生成物は、その後、露光領域の層を不溶性にするために、樹脂の架橋反応を触媒するために、その後、使用される。この架橋反応は、現像に先立って、加熱工程を必要とする。米国特許第4,708,925号明細書に記載されているように、これらの印刷版前駆体は、使用される酸形成材料のために、それ自体で紫外線感受性である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第6,294,311 B1号明細書、米国特許第6,358,669 B1号明細書及び米国特許第6,555,291 B1号明細書には、それぞれ、感熱性の二重層(dual−layer)平版印刷版前駆体が記載されている。これらの前駆体は、優れた感度を示す。しかしながら、接触することになる有機溶剤(例えば、現像液、浸し水、及びブランケット洗浄液)に対する抵抗性が改善された前駆体を得ることが望ましいであろう。
【0010】
他の感熱性二重層印刷版前駆体は、例えば米国特許第6,352,812 B1号明細書、米国特許第6,699,636号明細書及び米国特許第6,352,811 B1号明細書に記載されているが、化学物質に対するそれらの抵抗性及び/又はそれらの耐摩耗性をさらに改善することが望ましいであろう。
【0011】
欧州特許第1 433 594 A2号明細書には、2つの画像形成層を有する感熱性印刷版前駆体であって、トップ層が下記の単位:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Wはカルボキシ基であり、二価基Xは好ましくは単結合、アルキレン基又はアリーレン基であり、当該アルキレン基又はアリーレン基はエーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)、エステル(−COO−)又はアミド(−CONR−)結合を含んでいてもよい)
を含むコポリマーを含む感熱性印刷版前駆体が記載されている。しかしながら、これらの印刷版前駆体の感度は、高度な用途にとっては不十分であり、さらに、露光域が非常に狭い。
【0014】
本発明の目的は、有機溶剤に対する高度の抵抗性により特徴付けられるのに加えて、優れた耐摩耗性及び感度を示す、平版印刷版前駆体のようなポジ型熱画像形成可能な要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、驚くべきことに、
(a)親水性表面を有する基材;
(b)水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤可能であり、かつ、低い極性を有する有機溶剤に不溶性である第1のポリマーを含んで成る第1の層;
(c)水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤可能である第2のポリマーを含んで成る第2の層;
を順に含んで成る画像形成可能な要素であって、
前記第1のポリマーが前記第2のポリマーと異なり、
前記第2のポリマーが、ビニルアセタール反復単位と、−COOH、−SO3H、−PO32 、−PO42 、芳香族OH、及び酸性アミド又はイミド基を有する基から選ばれるペンダント酸性基とを含み、
当該要素は、任意選択的に、少なくとも1種の光熱変換材料を含み、
前記第2の層が、インクを吸収し、水性アルカリ現像液に不溶性であり、水性アルカリ現像液に対して不浸透性であるが、赤外線により前記現像液に可溶性になるか又は前記現像液に対して浸透性になること、
を特徴とする画像形成可能な要素によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明において使用する場合に、用語「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を包含し、このことは、用語「(メタ)アクリル酸」にも同様に当てはまる。
【0017】
本発明において、例えばノボラックなどのポリマーは、露光された平版印刷版前駆体を現像するために従来用いられている時間内で、室温で100mlの現像液に1g又はそれより多く溶解する場合に、水性アルカリ現像液(pHが約8〜14)に可溶性であると見なす。
【0018】
特に断らない限り、本発明において用いる用語「アルキル基」は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の飽和炭化水素基を意味する。当該直鎖状、分岐鎖状又は環状の飽和炭化水素基は、好ましくは1〜18個の炭素原子を有し、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有し、最も好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
【0019】
上記アルキル基は、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NO2 、NR72、C(O)OR7 及びOR7 (R7 は独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)から選ばれる置換基を1又は2個以上(好ましくは0又は1個)任意選択的に有していてもよい。上記定義は、アラルキル基及びアルコキシ基のアルキル単位にも当てはまる。この定義は、炭化水素基中にC−C二重結合を含むことを除いて、アルケニル基にも当てはまる。
【0020】
特に断らない限り、本発明において使用する場合に用語「アリール基」は、1又は2以上の縮合環を有し、好ましくは5〜14個の炭素原子を含む芳香族炭素環式基を意味する。当該アリール基は、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、CN、NO2 、NR72、COOR7 及びOR7 (各R7 は水素原子、アルキル及びアリールから独立に選ばれる)から選ばれる置換基を1又は2個以上(好ましくは0〜3個)任意選択的に有していてもよい。上記定義は、アリーレン基、及びアラルキル基のアリール単位にも当てはまる。好ましい例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられ、フェニル基及びナフチル基は任意選択的に置換されていてもよい(例えばトリル基)。ヘテロアリール基において、少なくとも1個の環炭素原子が、O、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置き換えられており、置換基としては、上記の置換基が挙げられる。
【0021】
本発明において言及する縮合環又は環系は、1つの環とそれと縮合した環とが2個の原子を共有しているものである。
【0022】
特に断らない限り、本発明において使用する場合に、用語「炭素環式」基は、環原子として炭素原子のみを含む飽和、不飽和(非芳香族)又は芳香族基を意味する。
【0023】
特に断らない限り、本発明において使用する場合に、用語「複素環式基」は、5〜7員(好ましくは5又は6員)の飽和、不飽和(非芳香族)又は芳香族の環であって、1個以上の環炭素原子が、N、NR8 、S及びO(好ましくはN又はNR8 )から選ばれたヘテロ原子で置き換えられた環を意味する。
【0024】
複素環式又は炭素環式基は、1又は2個以上の置換基を任意選択的に含んでいてもよい。置換基は、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、−OR8 、−NR82、−C(O)OR8 、C(O)NR82及びCN(各R8 は水素、アルキル、アリール及びアラルキルから独立に選ばれる)から選ばれる。
【0025】
基材
本発明の画像形成可能な要素は、親水性表面を有する基材を含む。本発明の要素に使用される基材は、好ましくは寸法安定性のある板状又は箔状材料であり、これまで既に印刷フォーム(printing forms)用の基材として使用されているものを基材として使用するのが好ましい。かかる基材の例としては、紙、プラスチック材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)で被覆された紙、金属板又は箔、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を包含する)、亜鉛及び銅板など、プラスチックフィルム、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリビニルアセテートなどで作られたプラスチックフィルム、並びに紙もしくはプラスチックフィルムと上記の金属のうちの1つから製造された積層材、あるいは蒸着により金属化された紙/プラスチックフィルムが挙げられる。これらの基材のうちで、アルミニウム板又は箔が特に好ましい。なぜなら、アルミニウム板又は箔は、非常に高い程度の寸法安定性を示し、安価であり、熱安定であり、そしてさらに、コーティングに対して優れた接着性を示すからである。さらに、アルミニウム箔をポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層させた複合フィルムを使用できる。
【0026】
基材の表面は、それ自体で親水性であるか、又は表面に親水性を付与するために好適な周知の処理にかけられていてもよい。
【0027】
金属基材、特にアルミニウム基材を表面処理、例えば、乾燥状態でブラッシングすることによる研磨、又は研磨懸濁液を用いてブラッシングすることによる研磨、あるいは電気化学的研磨(例えば塩酸電解液を用いる電気化学的研磨)にかけ、任意選択的に陽極酸化することが好ましい。
【0028】
さらに、研磨され、そして任意選択的に硫酸又はリン酸中で陽極酸化された金属基材の表面の親水性を改善するために、金属基材を、水溶液、例えばケイ酸ナトリウム、フッ化カルシウムジルコニウム、ポリビニルホスホン酸若しくはリン酸の水溶液による後処理にかけてもよい。親水化後処理のために、ホスフェートとフッ化アルカリ(フッ化ナトリウムなど)を含む溶液を使用することもできる。本発明の枠組み内で、用語「基材」は、任意選択的に前処理された基材、例えばその表面に親水性化層(hydrophilizing layer)(「中間層」としても知られている)を示す任意選択的に前処理された基材も包含する。
【0029】
上記の基材の前処理についての詳細は当業者に周知である。
【0030】
第1の層
第1の層は、水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤可能であり、かつ、低い極性を有する有機溶剤に不溶性である少なくとも1種の第1のポリマーを含む。
【0031】
第1のポリマーが不溶である低い極性を有する溶剤としては、例えばブチルアセテート、エチルアセテート、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0032】
第1のポリマーの例としては、カルボキシル官能基を有するアクリルポリマー及びコポリマー、ビニルアセテートとクロトネートとビニルネオデカノエートのコポリマー、スチレンと無水マレイン酸のコポリマー、マレイン酸によりエステル化されたウッドロジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
特に好適なポリマーは、N−置換マレイミド類、特にN−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド類、特にメタクリルアミド、並びにアクリル酸及び/又はメタクリル酸、特にメタクリル酸、から誘導される。これらのモノマーのうちの2種のコポリマーがより好ましく、3種のモノマー全てが重合した形態で存在することが特に好ましい。上記種類の好ましいポリマーは、N−フェニルマレイミドと(メタ)アクリルアミドとメタクリル酸のコポリマーであり、より好ましくは、25〜75モル%(より好ましくは35〜60モル%)のN−フェニルマレイミドと、10〜50モル%(より好ましくは15〜40モル%)の(メタ)アクリルアミドと5〜30モル%(より好ましくは10〜30モル%)の(メタ)アクリル酸を含むものである。他の親水性モノマー、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを、(メタ)アクリルアミドの一部に代えて用いることができる。水性アルカリ媒体に可溶性の他のモノマーを、(メタ)アクリル酸に代えて用いることができる。かかるポリマーは例えばドイツ国特許出願公開第19936331 A1号明細書に記載されている。
【0034】
第1のポリマーとして好適なポリマーの別のグループは、次のモノマー:5〜30モル%のメタクリル酸と、20〜75モル%のN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド又はこれらの混合物と、3〜50モル%のCH2C(R)C(O)NHCH2OR’(式中、RはC1−C12アルキル、フェニル、置換フェニル、アラルキル又はSi(CH33であり、R’はH又はCH3 を表す)を重合した形態で含むコポリマーが挙げられる。かかるコポリマーは例えば国際公開第2005/018934号に詳しく記載されている。
【0035】
第1の層に好ましい第1のポリマーの別のグループとしては、側鎖に尿素基を含むモノマーを重合した携帯で含むコポリマーが挙げられる。かかるコポリマーは、例えば、米国特許第5,731,127号明細書に記載されている。これらのコポリマーは、10〜80質量%(好ましくは20〜80質量%)の下記一般式(I):
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは二価の連結基であり、Yは置換又は非置換の二価の芳香族基であり、ZはOH、COOH及びSO2NH2から選ばれる)
により表される少なくとも1種のモノマーを含む。Rは好ましくはメチル基である。Xは、好ましくは、置換もしくは非置換アルキレン基、置換もしくは非置換フェニレン基(C64)基、又は置換もしくは非置換ナフタレン(C106)基、例えば、−(CH2n−(nは2〜8の整数)、1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン、並びに1,4−、2,7−及び1,8−ナフチレンである。より好ましくは、Xは非置換アルキレン基−(CH2n−(nは2又は3)であり、最も好ましくは、Xは−(CH2CH2)−を表す。Yは、好ましくは置換もしくは非置換フェニレン基又は置換もしくは非置換ナフチレン基である。より好ましくは、Yは非置換1,4−フェニレン基である。Zは好ましくはOHである。
【0038】
好ましいモノマーは、
【0039】
【化3】

【0040】
(式中、ZはOH、COOH及びSO2NH2から選ばれ、好ましくはOHである)
である。
【0041】
前記コポリマーの合成にあたっては、1又は2個以上の尿素基を含むモノマーを使用できる。重合した形態では、前記コポリマーは、20〜90質量%の他の重合性モノマー、例えば、マレイミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド及びメタクリルアミドなどをさらに含む。好ましくは、アルカリ溶液に可溶性のコポリマーは、尿素基を有するモノマーを30〜70質量%、アクリルニトリル又はメタクリロニトリル(好ましくはアクリロニトリル)を20〜60質量%、及びアクリルアミド又はメタクリルアミド(好ましくはメタクリルアミド)を5〜25質量%含む。
【0042】
上記ポリマーは水性アルカリ現像液に可溶性であり、それらは、さらに、極性溶媒、例えば第1の層を生成させるためのコーティング溶剤として使用できるエチレングリコールモノメチルエーテル、又はメチルラクテートとメタノールとジオキソランとの混合物などに可溶性である。上記ポリマーは、周知のフリーラジカル重合法を使用して調製できる。
【0043】
水性アルカリ媒体に可溶性であるならば、N−置換環状イミド単位を含むメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーの誘導体や、N−置換環状イミド単位を含むスチレン/無水マレイン酸コポリマーの誘導体を、第1コーティング溶液中の第1のポリマーとして使用することもできる。かかるコポリマーは、無水マレイン酸系コポリマーを、アミン、例えばp−アミノベンゼンスルホンアミド又はp−アミノフェノールと反応させ、次いで酸によって環化させることによって調製することができる。
【0044】
第1のポリマーとして使用できる別のグループのポリマーは、1〜90モル%のスルホンアミドモノマー単位を含むコポリマー、特に、N−(p−アミノスルホニルフェニル)−メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェノール)−メタクリルアミド、N−(o−アミノスルホニルフェニル)−メタクリルアミド及び/又は対応するアクリルアミド類である。側鎖にスルホンアミド基を含む好適なポリマー、それらの製法及び好適なモノマー類は、米国特許第5,141,838 B号明細書に記載されている。特に好適なポリマーは、(1)スルホンアミドモノマー単位、特にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、(2)アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル、並びに(3)メチルメタクリレート及び/又はメチルアクリレートを含む。これらのコポリマーの幾つかは、Kokusan Chemical(日本国群馬)から商品名PUコポリマーとして入手可能である。
【0045】
さらに、下記式(IIa)及び/又は(IIb):
【0046】
【化4】

【0047】
[式中、X1 は独立にO又はNR3 を表し;
1 は、独立に、置換又は非置換の、アルキレン基(好ましくはC1−C12)、シクロアルキレン基(好ましくはC6−C12)、アリーレン基(好ましくはC6−C12)又はアラルキレン基(好ましくはC7−C14)を表し;
2 及びR3 は、それぞれ独立に、水素原子、あるいは、置換又は非置換の、アルキル基(好ましくはC1−C12)、シクロアルキル基(好ましくはC6−C12)、アリール基(好ましくはC6−C12)又はアラルキル基(好ましくはC7−C14)を表し;
2aは、置換又は非置換の、アルキル基(好ましくはC1−C12)、シクロアルキル基(好ましくはC6−C12)、アリール基(好ましくはC6−C12)又はアラルキル基(好ましくはC7−C14)を表す]
により表される構造単位を含む第1のポリマーとしてポリアクリレートを使用できる。
【0048】
かかるポリアクリレート並びにそれらを調製するための出発モノマー及びコモノマーは欧州特許出願公開明細書第0 544 264号(第3〜5頁)に詳しく記載されている。
【0049】
本発明に従えば、式(IIa)及び/又は(IIb)のポリアクリレートに類似のポリメタクリレートも第1の層において使用できる。
【0050】
側鎖に尿素基をさらに含むスルホンアミド側基を有するポリアクリレートも第1のポリマーとして使用できる。かかるポリアクリレートは、例えば欧州特許出願公開明細書第0 737 896号に記載されており、下記の構造単位(IIc):
【0051】
【化5】

【0052】
[式中、X2 は、置換又は非置換の、アルキレン基(好ましくはC1−C12)、シクロアルキレン基(好ましくはC6−C12)、アリーレン基(好ましくはC6−C12)又はアラルキレン基(好ましくはC7−C14)を表し;
3 は、置換又は非置換のアリーレン基(好ましくはC6−C12)である]
を含む。
【0053】
本発明に従えば、式(IIc)のポリアクリレートに類似のポリメタクリレートも第1の層において使用できる。
【0054】
欧州特許出願公開明細書第0 737 896号に記載されている尿素基及びフェノール性OHを有する式(IId)のポリアクリレートも第1のポリマーとして使用できる。
【0055】
【化6】

【0056】
上記式中、X2 及びX3 は先に定義したとおりである。
【0057】
本発明に従えば、式(IId)のポリアクリレートに類似のポリメタクリレートも第1の層において使用できる。
【0058】
スルホンアミド側基及び/又はフェノール側基を有する好適なポリ(メタ)アクリレートの分子量の質量平均は、好ましくは、2,000〜300,000である。
【0059】
もちろん、アルカリ現像液に可溶性であり、好ましくは低い極性を有する有機溶剤に不溶性である異なる第1のポリマーの混合物も使用できる。
【0060】
第1の層の乾燥層質量を基準として、第1のポリマーは少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%の量で存在する。上記の第1の実施態様において、好ましくは、この量は、99.9質量%を超えず、より好ましくは95質量%を超えず、さらにいっそう好ましくは85質量%を超えない。上記の第2の実施態様において、第1の層は専ら第1のポリマーから構成されていてもよい。
【0061】
当該要素を赤外線への暴露により画像形成すべき場合には、当該要素は、光熱変換材料を含む。光熱変換材料は、第1の層もしくは第2の層、又は第1の層と第2の層の両方に、あるいは、第1の層と第2の層の間に存在する別の吸収層中に存在することができる。赤外線の代わりに直接加熱が用いられる場合には、光熱変換材料を存在させる必要はない。
【0062】
本発明の一実施態様に従えば、第1の層は少なくとも1種の光熱変換材料(以下、「赤外線(IR)吸収剤」ともいう)を含む。
【0063】
光熱変換材料は、赤外線を吸収して赤外線を熱に変換することができる。赤外線吸収剤が赤外線を吸収して赤外線を熱に変換することができる限り、赤外線吸収剤の化学構造に特に制限はない。赤外線吸収剤が、650〜1,300nm、好ましくは750〜1,120nmの範囲に基本的吸収を示すことが好ましく、赤外線吸収剤は好ましくはこの範囲内で吸収極大を示す。800〜1,100nmの範囲内で吸収極大を示す赤外線吸収剤が特に好ましい。赤外線吸収剤が紫外範囲内の輻射線を吸収しない又は実質的に吸収しないことがさらに好ましい。赤外線吸収剤は、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン顔料/染料、並びにポリチオフェン、スクアリリウム、チアゾリウム、クロコネート、メロシアニン、シアニン、インドリジン、ピリリウム又は金属ジオチオリン類の染料/顔料から選ばれる。好適な赤外線吸収剤としては、たとえば米国特許第号明細書の表1に記載された化合物が挙げられる。さらなる例は、米国特許第4,327,169号明細書、米国特許第4,756,993号明細書、米国特許第5,156,938号明細書、国際公開第00/29214号、米国特許第6,410,207号明細書及び欧州特許出願公開第1 176 007号に見出すことができる。
【0064】
好適な赤外線吸収剤は、例えば、式(III):
【0065】
【化7】

【0066】
[式中、各Z1 は独立にS、O、NRa 又はC(アルキル)2 を表わし;
各R’は、独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基又はアルキルアンモニウム基を表わし;
R''は、ハロゲン原子、SRa 、ORa 、SO2a 又はNRa2(好ましくはハロゲン原子、SRa 又はNRa2)を表わし;
各R'''は、独立に、水素原子、アルキル基、−COORa 、−ORa 、−SRa 、−NRa2又はハロゲン原子を表わし;また、R'''はベンゾ縮合環であることができ;
A- はアニオンを表わし;
b 及びRc は、両方とも水素原子を表すか、あるいはそれらが結合している炭素原子と共に炭素環式の5又は6員環を形成しており;
a は、水素原子、アルキル基又はアリール基(SRa では、Ra は、好ましくは、Sがアリール環の一員であるアリールであり、NRa2では、各Ra は好ましくはアリール基である)を表わし;
各bは、独立に0、1、2又は3を表す。]
により表わされるシアニン染料である。
【0067】
R’がアルキルスルホネート基を表す場合には、アニオンA- を必要としないように内部塩を形成できる。R’がアルキルアンモニウム基を表す場合には、A- と同じ又は異なる第2の対イオンが必要である。
1 は、好ましくは、C(アルキル)2 であり;
R’は、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;
R''は、好ましくは、ハロゲン原子又はSRa であり;
R'''は、好ましくは、水素原子であり;
a は、好ましくは、任意選択的に置換されていてもよいフェニル基、又は任意選択的に置換されていてもよい複素芳香族基である。
【0068】
好ましくは、Rb 及びRc は、それらが結合している炭素原子と共に、5又は6員炭素環式環を形成する。
【0069】
対イオンA- は、好ましくは、塩化物イオン、トリフルオロメチルスルホネート又はトシレートアニオンである。
【0070】
式(II)のIR染料のうちで、対称的な構造を有する染料が特に好ましい。特に好ましい染料の例としては、
2−[2−[2−フェニルスルホニル−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロライド、
2−[2−[2−チオフェニル−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロライド、
2−[2−[2−チオフェニル−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムトシラート、
5−クロロ−2−(2−{3−[2−(5−クロロ−1−エチル−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−2−ジフェニルアミノ−シクロペント−1−エニル}−ビニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム塩(例えばテトタフルオロボラート)、
2−[2−[2−クロロ−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−ベンゾ[e]−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−1H−ベンゾ[e]−インドリウム−トシラート、及び
2−[2−[2−クロロ−3−[2−エチル−(3H−ベンゾチアゾール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−3−エチル−ベンゾチアゾリウム−トシラート。
【0071】
下記の化合物も本発明において使用するのに好適な赤外線吸収剤である:
【0072】
【化8】

【0073】
【化9】

【0074】
【化10】

【0075】
【化11】

【0076】
【化12】

【0077】
【化13】

【0078】
【化14】

【0079】
【化15】

【0080】
赤外線吸収剤が第1の層中に存在する場合には、その赤外線吸収剤の量は、好ましくは、第1の層の乾燥層質量を基準として少なくとも1質量%、より好ましくは少なくとも3質量%、最も好ましくは少なくとも5質量%である。通常、赤外線吸収剤の量は、50質量%を超えず、好ましくは30質量%を超えず、最も好ましくは20質量%を超えない。カーボンブラックが赤外線吸収剤として使用される場合、カーボンブラックは、好ましくは、40%以上の量で使用されるのが好ましい。たった1種の赤外線吸収剤、又は2種もしくはそれ以上の混合物を存在させることができ、後者の場合には、上記の量は、全ての赤外線吸収剤の合計量である。
【0081】
低分子量赤外線吸収剤に加えて、ポリマーに共有結合したIR染料も第1の層で使用でき、そのため、使用されるポリマーは水性アルカリ溶液に可溶性である(例えばドイツ国特許出願明細書第10 2004 029 503 A1号参照)。かかる場合、第1の層には、さらなる第1のポリマーは必要とされない。ポリマーに共有結合したIR染料に加えて、第1の層において、IR染料カチオンも使用できる(すなわち、カチオンが染料塩のIR吸収部分である)。IR染料カチオンは、側鎖に−COOH、−SO3H、−PO32及び/又は−PO42基を含むポリマーとイオン的に相互作用する(例えばドイツ国特許出願明細書第10 2004 029 503 A1号参照)。
【0082】
コントラストを増加させるために、第1の層は、さらに、可視スペクトル範囲で高い吸収を示す染料又は顔料(「コントラスト染料及び顔料」)を含むことができる。特に好適な染料及び顔料は、コーティングに使用される溶剤又は溶剤混合物に溶解するか、あるいは、顔料の分散形態中に容易に導入されるものである。好適なコントラスト染料としては、特に、ローダミン染料、トリアリールメタン染料、例えばビクトリアブルー(Victoria blue)R及びビクトリアブルーB0、クリスタルバイオレット及びメチルバイオレット、アントラキノン顔料、アゾ顔料、及びフタロシアニン染料及び/又は顔料が挙げられる。着色剤は、第1の層中に、その乾燥層質量を基準として、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1.5〜7質量%の量で存在する。
【0083】
さらに、第1の層は界面活性剤(例えば、陰イオン性、陽イオン性、両イオン性もしくは非イオン性界面活性剤又はそれらの混合物)を含むことができる。好適な例としては、フッ素含有ポリマー、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド基を有するポリマー、ソルビトール−トリ−ステアレート及びアルキル−ジ−(アミノエチル)−グリシンが挙げられる。これらは、乾燥層質量を基準にして、好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%の量で存在する。
【0084】
第1の層は、プリントアウト染料、例えばクリスタルバイオレットラクトン又はフォトクロミック染料(例えばスピロピラン類など)などをさらに含むことができる。それらは、乾燥層質量を基準として、好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%の量で存在する。
【0085】
また、第1の層中に流れ向上剤、例えばポリ(グリコール)エーテル変性シロキサン類が存在してもよい。流れ向上剤は、乾燥層質量を基準として、好ましくは0〜1質量%の量で存在する。
【0086】
第1の層はさらに酸化防止剤、例えばメルカプト化合物(2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール及び3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール)、及びトリフェニルホスフェートなどを含むことができる。酸化防止剤は、乾燥層質量を基準として、好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%の量で存在する。
【0087】
もちろん、他のコーティング添加剤が存在してもよい。
【0088】
さらに、必須の第1のポリマーに加えて、第1の層は、フェノール樹脂を含むことができる。第1のポリマーと同様に、フェノール樹脂は、水性アルカリ現像液に可溶であるが、第1のポリマーとは反対に、フェノール樹脂は低い極性を有する有機溶剤にも可溶性である。
【0089】
第1の層が、フェノール樹脂(例えばノボラック及びレゾールなど、好ましくはレゾール)を任意成分として含む場合には、フェノール樹脂は、乾燥層質量を基準として、30質量%以下の量で存在することが好ましく、より好ましくは25質量%以下、最も好ましくは10質量%以下の量で存在する。1つの具体的な実施態様によれば、第1の層はフェノール樹脂を含む。
【0090】
好適なフェノール樹脂は、1種又は2種以上の好適なフェノール類、例えばフェノール自体、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、ピロガロール、フェニルフェノール、ジフェノール類(例えばビスフェノール−A)、トリスフェノール、1−ナフトール及び2−ナフトールと、1種又は2種以上の好適なアルデヒド類、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びフルフラルアルデヒドなど、並びに/又は、ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどとの縮合生成物である。触媒の種類及び反応物のモル比が、樹脂の分子構造を決め、ひいては樹脂の物理的特性を決める。フェニルフェノール、キシレノール、レゾルシノール及びピロガロールは、縮合のためにただ1種のフェノールとして使用されるのは好ましくなく、むしろ他のフェノール類との混合物として使用されるのが好ましい。アルデヒド/フェノール比は約0.5:1〜1:1、好ましくは0.5:1〜0.8:1であり、「ノボラック」として知られており熱可塑性を有するフェノール樹脂を生成させるために、酸触媒が使用される。「レゾール」として知られているフェノール樹脂は、より高いアルデヒド/フェノール比で、アルカリ触媒の存在下で得られる。
【0091】
好適なフェノール樹脂は、公知の方法に従って調製できるか、あるいは市販されている。好ましくは、その分子量(標準としてポリスチレンを使用して、ゲル透過クロマトグラフィにより求められる質量平均)は1,000〜15,000、特に好ましくは1,500〜10,000である。
【0092】
上記のノボラック及びレゾールに加えて、変性ノボラック/レゾール、例えばトシル化ノボラックを使用することもできる。フェノール基を有する(メタ)アクリレート(例えばターポリマー又はテトラポリマー)も、任意成分として使用できる。
【0093】
第2の層
本発明の画像形成可能な要素の第2の層は、水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤可能であり、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーを含む。この第2のポリマーは、ビニルアセタール反復単位と、−COOH、−SO3H、−PO32 、−PO42 、芳香族OH、及び酸性アミド又はイミド基を有する基から選ばれるペンダント酸性基とを含む。ペンダント酸性基は、アセタール反復単位中に存在しうるか、又は異なる反復単位中に存在しうると理解されるべきである。本発明の枠組み内で、「酸性アミド基」という表現は、酸性スルホンアミド基も包含する。
【0094】
第2の層はインクを受容し、水性アルカリ現像液に不溶性であり、水性アルカリ現像液に対して不浸透性であるが、赤外線により前記現像液に可溶性又は前記現像液に対して浸透性になる。
第2の層が画像形成可能な要素の最外層であることが好ましい。
【0095】
ビニルアセタール反復単位及びペンダント酸性基を有する反復単位に加えて、第2のポリマー(以下、ポリビニルアセタールコポリマーという)は、通常、単位(A):
【0096】
【化16】

【0097】
を含み、任意選択的に、さらに単位(B):
【0098】
【化17】

【0099】
(式中、R4 はH及びC1−C4アルキルから選ばれ、R16及びR17は独立にH、ハロゲン及びC1−C4アルキルから選ばれる)
を含む。
【0100】
ポリビニルアセタールコポリマー中に存在する全単位を基準にして、好ましくは、単位(A)は、10〜60モル%(より好ましくは15〜50モル%、さらにいっそう好ましくは15〜40モル%)の量で存在し、単位(B)は、0〜30モル%(より好ましくは0.1〜30モル%、1〜15モル%が特に好ましい)の量で存在する。
【0101】
一実施態様によると、第2のポリマーは、構造単位(A)及び(C)と、任意選択的に(B)を含む。ここで、単位Cは、(C−1)、(C−2)、(C−3)及び(C−4)から選ばれる少なくとも1種のアセタール単位と、任意選択的に(C−5)、(C−6)、(C−7)及び(C−8)から選ばれる少なくとも1種の単位である:
【0102】
【化18】

【0103】
【化19】

【0104】
[式中、
4 はH又はC1−C4アルキルを表し、
5 はH、C1−C18アルキル、アリール又はC2−C18アルケニルを表し、
16は独立にH、ハロゲン又はC1−C4アルキルを表し、
17は独立にH、ハロゲン又はC1−C4アルキルを表し、
18は独立に−OH、−O−トシル、−O−ナフチル、−COOH、−(CH2a−COOH、−O−(CH2a−COOH、−SO3H、−PO32又は−PO42を表し、
aは1〜8の整数であり、
cは1〜5の整数であり、
X’は独立に、脂肪族、芳香族又は芳香族脂肪族スペーサーであり、
Y’は、−CO−X4−COOR20及び−SO221から独立に選ばれ、
Lは、−NH−CO−R’基であるか又は−CO−NH−R''基(式中、R’は水素原子、カルボキシル基により置換されていてもよいアルキル、アルケニル及びアリール基から選ばれ、R''は、1個又は2個以上のヒドロキシル基、C1−C3エーテル若しくはアミノ基、モノ−C1−C3−アルキルアミノ、ジ−C1−C3−アルキルアミノ若しくはカルボキシル基により置換されていてもよいC1−C6炭化水素基であるか、又は少なくとも1個のカルボキシル若しくはスルホン酸基を含むアリール基である)であり、
V はアルキル基及びアリール基から選ばれ、
10は、H、アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルケニル基から選ばれ、
13及びR14は、水素原子及びアルキル基から独立に選ばれるか、又はR13とR14は、それらが結合している2つの炭素原子と共に5又は6員炭素環式環を形成しており、
20は、水素原子及びアルキル基から選ばれ、
21は、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から選ばれ、
4 は、
−(CR67k−及び−CR8=CR9
(式中、kは1〜6の整数であり、R6及びR7の各基は水素原子及びC1−C6アルキル基から独立に選ばれ、R8及びR9は水素原子及びC1−C6アルキル基から独立に選ばれるか、又はR8とR9は、それらが結合している2つの炭素原子と共に任意選択的に置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基を形成している)
から選ばれる]。
【0105】
4 は、
−(CR67k −及び−CR8=CR9
から選ばれる。ここで、kは1〜6の整数であり、R6及びR7の各基は水素原子及びC1−C6(好ましくはC1−C4)アルキル基から独立に選ばれ(k>1である場合には、全てのR6 基が同じである必要はなく、また、全てのR7 基が同じである必要もない)、R8及びR9は水素原子及びC1−C6(好ましくはC1−C4)アルキル基から独立に選ばれるか、又はR8とR9は、それらが結合している2つの炭素原子と共に任意選択的に置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基を形成している。(この任意選択的に置換されていてもよいアリール基は、例えば任意選択的に置換されていてもよいフェニルもしくはナフチル基であることができ、非置換フェニル基が好ましい。任意選択的に置換されていてもよいヘテロアリール基は、通常、5又は6個の環原子を有し、それらの環原子のうちの1個又は2個以上(好ましくは1又は2個)が、硫黄、酸素及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子である。好ましいヘテロアリール基は、1個の酸素原子、1個の硫黄原子又は1〜2個の窒素原子を含む。アリール及びヘテロアリール基に好適な置換基はC1−C4アルキル基、C1−C4ヘテロアルキル基、シアノ基、C1−C4アルコキシ基及び−COOHである。置換基が存在する場合に、置換基の個数は通常1〜3であるが、非置換アリール及びヘテロアリール基が好ましい。)
【0106】
4 が、
【0107】
【化20】

【0108】
[式中、R1a〜R1fは、それぞれ独立に、水素原子及びC1−C6(好ましくはC1−C4)アルキル基から選ばれ、好ましくはR1a〜R1fは、それぞれ水素原子を表わす]
から選ばれることが特に好ましい。
【0109】
10は、好ましくは水素原子又はC1−C4アルキル基(好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはH又はCH3 である
【0110】
13及びR14は、独立に、水素原子又はC1−C4アルキル基(好ましくはメチル基)である。
【0111】
式(C−2)及び(C−4)において、X’は、脂肪族スペーサー(aliphatic spacer)、特に好ましくは−(CR2223)−であり、ここで、R22及びR23は、独立に、好ましくは、水素原子及びアルキル基(好ましくはC1−C4アルキル基、特に−CH3 )から選ばれ、R22及びR23がHであることが特に好ましい。
【0112】
式(C−1)において、(R18c が1個又は2個以上のOH基を表わす場合には、X’は、好ましくは、アリーレン基(例えば、フェニル環又はナフチル環系)のような芳香族スペーサーである。少なくとも1個のR18がOHと異なるものである場合には、式(C−1)において、X’は好ましくはアリーレン又はアルキレンスペーサーを表わす。
【0113】
一実施態様によると、X’はナフチレンであり、R18はその複数のフェニル環のうちの1つに結合しており、アセタール基はナフチレン単位のその他のフェニル環に結合している。
【0114】
4 は、好ましくはC1−C4アルキル基であり、より好ましくはCH3 である。
【0115】
5 は、好ましくはC1−C18アルキル基であり、より好ましくはC1−C6アルキル基である。
【0116】
16 及びR17は、独立に、好ましくはH又はC1−C4アルキル基であり、より好ましくはH又はCH3である。
【0117】
cは、好ましくは、1〜3の整数であり、より好ましくは1である。
【0118】
本発明の一実施態様において使用されるポリビニルアセタールは、好ましくは、ポリマー1g当たり70mg KOH以下の酸価を示し、より好ましくは、ポリマー1g当たり50mg KOH以下、特に好ましくはポリマー1g当たり30mg KOH以下、さらに好ましくはポリマー1g当たり20mg KOH以下の酸価を示す。0の酸価も可能である。用語「酸価」とは、1gのポリマーを中和するのに必要とされる、滴定により求められるKOHのmg数を指す。
【0119】
異なる単位Aの組み合わせ及び/又は異なる単位Bの組み合わせ及び/又は異なる単位Cの組み合わせを含む第2のポリマーを使用することもできる。かかる場合に、A、B及びCについて示した量は、それぞれ、単位Aの全て、単位Bの全て、及び単位Cの全ての各合計量を指す。本発明のポリビニルアセタール中の単位A、B及びCの比に特に制限は無い。一実施態様に従えば、下記の比が好ましい:
単位A 10〜60モル%(特に好ましくは15〜50モル%);
単位B 0.1〜30モル%(特に好ましくは1〜15モル%);及び
単位C 20〜80モル%(特に好ましくは35〜65モル%)。
【0120】
第2の層中に更なる成分が存在するかしないかに応じて、第2のポリマーの量は、第2の層の乾燥層質量を基準にして最高100質量%を構成することができ、より好ましくは5〜100質量%を構成することができる。
【0121】
本発明の一実施態様に従えば、第2の層は、少なくとも1種の以下で定義するポリビニルアセタールを10〜99.9質量%、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは50〜95質量%含む。その他は例えば赤外線吸収剤であることができる。
【0122】
本発明において使用されるポリビニルアセタールコポリマーの調製において出発物質として機能するビニルアルコール/ビニルアセテートコポリマーは、70〜98モル%の程度まで加水分解されていることが好ましく、通常、20,000〜130,000g/モルの質量平均分子量Mw を有する。まさにこのコポリマーは、感熱性要素の望ましい将来の用途に応じて、合成のための出発物質として使用される。オフセット印刷版の場合には、35,000〜130,000g/モルの質量平均分子量Mw 及び80〜98モル%のビニルアセテート構造単位の加水分解度を有するポリマーが好ましい。
【0123】
上記ポリビニルアセタールは、周知の方法に従って生成できる。本発明に好適なポリビニルアセタール及びそれらの製造は、例えば米国特許第5,169,897号明細書、ドイツ国特許第34 04 366 B1号明細書及びドイツ国特許出願公開明細書第100 11 096 A1号に詳しく記載されている。
【0124】
本発明の一実施態様に従うと、要素の第2の層は、少なくとも1種の光熱変換材料(赤外線吸収剤)をさらに含む。第1層について先に記載したものと同じ赤外線吸収剤を使用できる。赤外線吸収剤は、第1の層と第2の層の両方に存在することも可能であるが、赤外線吸収剤は、これらの層のうちの一方だけに存在することが好ましい。
【0125】
赤外線吸収剤が第2の層中に存在する場合に、赤外線吸収剤の量は、第2の層の乾燥層質量を基準として、好ましくは少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも1質量%、最も好ましくは少なくとも1.5質量%である。通常、赤外線吸収剤の量は、50質量%を超えず、好ましくは30質量%を超えず、最も好ましくは20質量%を超えない。赤外線吸収剤は、例えば、0.2〜0.5質量%の量で存在することができる。カーボンブラックが赤外線吸収剤として使用される場合、カーボンブラックは、40%以上の量で使用されることが好ましい。たった1種の赤外線吸収剤、又は2種もしくはそれ以上の混合物を存在させることができ、後者の場合には、上記の量は、全ての赤外線吸収剤の合計量である。
【0126】
第2の層において、ポリビニルアセタールに加えて、フェノール樹脂が任意成分として存在することができ、フェノール樹脂は、60質量%以下の量で存在することができ、特に好ましくは30質量%以下の量で存在することができる。
【0127】
第1の層の任意成分として先に述べたノボラック及びレゾールに加えて、変性ノボラック/レゾール、例えば米国特許第6,358,669号明細書及び米国特許第6,555,291号明細書に記載されているようなトシル化ノボラックを第2の層に使用することもできる。
【0128】
本発明の一実施態様に従えば、第2の層は、前記ポリビニルアセタール(又は複数種のポリビニルアセタールの混合物)の他、フェノール樹脂を含まない。
【0129】
さらに、第2の層は、可視スペクトル範囲で高い吸収を示す染料又は顔料を含むことができる。例えば第1の層に関して先に記載したものが好適である。着色剤は、第2の層の乾燥層質量を基準として、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%の量で存在する。
【0130】
第1の層に関して先に記載した界面活性剤が第2の層中に存在してもよい。その場合、界面活性剤は、第2の層の乾燥総質量を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜0.5質量%の量で存在する。
【0131】
第2の層は、加熱によって酸を放出する酸形成剤(acid formers)を含むこともできる。例としては、トリアジン類や、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、トリフラートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、ペンタフルオロスルホン酸アニオン、p−メチルベンジルスルホン酸アニオン、エチルスルホン酸アニオン、トリフルオロメチル酢酸アニオン及びペンタフルオロエチル酢酸アニオンなどの非求核性アニオンとのジアゾニウム、インドリウム、スルホニウム、ホスホニウム、アンモニウム、オキシスルホオキソニウム、オキシスルホニウム及びスルホオキソニウム塩が挙げられる。これらだけでなく、C1−C5アルキルスルホネート類、アリールスルホネート類、N−C1−C5アルキルスルホニルスルホンアミド類、例えばベンゾイントシレート、2−ヒドロキシメチルベンゾイントシレート及びN−メタンスルホニル−2,4−ジメチルベンゾスルホンアミド、並びに前記のもののうちの2種又はそれ以上の組み合わせも挙げられる。酸形成剤は、第2の層の乾燥層質量を基準にして、好ましくは0〜25質量%、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%の量で存在する。好ましい実施態様に従えば、酸形成剤は存在しない。
【0132】
さらに、第2の層の組成物は、流れ向上剤、例えばポリ(グリコール)エーテル変性スターチなどを含むことができる。流れ向上剤は、第2の層の乾燥層質量を基準にして、0〜1質量%の量で存在することが好ましい。
【0133】
第2の層において架橋結合可能なエノールエーテル類を使用することは、本発明の範囲内に含まれない。
【0134】
本発明の一実施態様に従えば、第2の層は、1種のポリビニルアセタール又は複数種のポリビニルアセタールの混合物のみから構成される。
【0135】
第1の好ましい実施態様:
本発明の一実施態様の第2の層において使用されるポリビニルアセタールは、下記の構造単位(A)、(C−1a)、及び任意選択的に(B)を含み、さらなる構造単位として(C−3)、(C−1b)及び(C−1c)が任意選択的に存在してもよい:
【0136】
【化21】

【0137】
ここで、単位(A)、(B)及び(C−3)は先に定義したとおりであり、Wはアリーレン基であり、cは1〜5(好ましくは1〜3、特に好ましくは1)の整数であり、dは1〜3(好ましくは1)の整数である。
【0138】
単位(C−1a)におけるcが1である場合には、Wはフェニレンであり、1個のヒドロキシ基が好ましくはパラ位に存在する。
【0139】
構造単位(C−1b)において、1〜3個の−O−トシル基がフェニル環に結合していてもよく、たった1個の−O−トシル基が存在する場合には、その−O−トシル基は好ましくはパラ位に存在する。
【0140】
単位(C−1c)におけるcが1である場合には、1個のヒドロキシ基が好ましくはパラ位に存在する。
【0141】
一実施態様によれば、ポリビニルアセタールは、単位(A)、(B)、(C−1a)及び(C−1b)を含む。別の一実施態様によれば、単位(A)、(B)、(C−1a)、及び(C−1b)に加えて、少なくとも1つの単位(C−3)及び/又は(C−1c)が存在する。
【0142】
好ましくは、この第1の好ましい実施態様における各単位の量は下記のとおりである:
単位(A) 10〜60モル%(特に好ましくは15〜40モル%)、
単位(B) 0.1〜30モル%(特に好ましくは1〜15モル%)、
単位(C−1a) 10〜80モル%(特に好ましくは40〜60モル%)、
単位(C−3) 0〜50モル%(特に好ましくは10〜30モル%)、
単位(C−1b) 0〜50モル%(特に好ましくは10〜30モル%)、及び
単位(C−1c) 0〜20モル%(特に好ましくは0〜5モル%)。
【0143】
この第1の好ましい実施態様において、第2の層は、好ましくは、少なくとも1種の光熱変換材料と、10〜99.9質量%のポリビニルアセタール(1種又は複数種)とを含む。
【0144】
第2の好ましい実施態様
本発明の別の一実施態様の第2の層において使用されるポリビニルアセタールは、ポリマー1g当たり50mg KOH以下の酸価を有するポリビニルアルコールを5〜100質量%含む。光熱変換材料は第1の層中に存在する。このポリビニルアセタールは、好ましくは、先に定義した構造単位(A)と、構造単位(B)と、構造単位(C−3)と、構造単位(C−5)及び(C−1a)のうちの少なくとも一方とを含む。ここで、(C−1a)において、Wはフェニレンであり、cは1であり、R18は先に定義したとおりである。
【0145】
作製
本発明に係る画像形成可能な要素を製造するには、基材の親水性表面に第1コーティング組成物を適用する。このコーティング溶液を適用するのに一般的なコーティング装置を使用できる。コーティング溶液は、例えば、スピンコーティング、ドクターブレードを用いるコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、あるいはスロットノズルを用いるコーティング(スロットコーター、ホッパーコーターとも呼ばれている)によって適用できる。通常、第1コーティング組成物は、極性溶剤又は溶剤混合物から適用される。
【0146】
第1の層の乾燥層質量は、好ましくは0.1〜5g/m2 、より好ましくは1〜3g/m2である。
【0147】
第2の層は、上記のコーティング法と同じ方法により第1の層上に適用できる。通常、第1の層が溶解するのを防ぐために、低い極性を有する溶剤又は溶剤混合物が使用される。
【0148】
第2の層の乾燥層質量は0.1〜5g/m2 、より好ましくは0.3〜1.5g/m2である。
【0149】
基材の両面に2つの層から構成されるコーティングを提供することもできるが、基材の片面にだけ当該コーティングを適用することが好ましい。
【0150】
状態調節
上記層を乾燥後、画像形成可能な要素を、乾燥した層から水分が除去されるのを防ぐ条件下で、約40〜約90℃の温度で少なくとも4時間(好ましくは少なくとも20時間)かけての熱処理による「状態調節」に、任意選択的にさらにかけてもよい。より好ましくは、この熱処理は、約50〜約70℃の温度で少なくとも24時間行われる。この熱処理の間に、画像形成可能な要素は、前駆体からの水分の除去に対する有効なバリヤーとして機能する非透水性シート材料で覆われても又はかかる非透水性シート材料で包みこまれるか、あるいは、画像形成可能な要素の熱処理は、相対湿度が少なくとも25%に調節された環境中で行われる。さらに、ポリマーフィルム、金属箔又は耐水紙である非透水性シート材料を使用して、非透水性シート材料を画像形成可能な要素の縁部の周りにシールすることができる。
【0151】
実施態様によっては、この熱処理は、当該画像形成可能な要素を少なくとも100個(好ましくは約500個の要素)を含む積層体に対して、あるいは、画像形成可能な要素がコイル状である場合に行うことができる。画像形成可能な要素の積層体を熱処理する場合、それらの画像形成可能な要素は、適切な間紙(interleaving papers)により分離することができる。
【0152】
画像形成
本発明に係る画像形成可能な要素の画像形成は、近赤外線及び赤外線(600〜1500nm)への暴露に続いて、現像工程により行うことができる。輻射線源としては、たとえば、650〜1,300nm、好ましくは750〜1,120nmの範囲内で発する半導体レーザー又はレーザーダイオードが使用される。レーザー光は、コンピューターによりデジタル制御できる。すなわち、コンピューター・トゥー・プレート(ctp)印刷版をもたらすコンピューターに記憶したデジタル化情報により版の像様露光が行えるように、レーザー光を切り替えることができる。当業者に知られている、IRレーザーを用いたあらゆる画像セッティング装置をこの目的のために使用できる。上記赤外線は、本発明のもともとは現像液に不溶性の第2の層を、水性アルカリ現像液に可溶性に、水性アルカリ現像液に分散可能に、又は水性アルカリ現像液が浸透可能なものにする。
【0153】
像様に照射/加熱される要素、例えば印刷版前駆体は、水性アルカリ現像液(水に加えて少量の有機溶剤も含むいわゆる溶剤系現像液を包含する)により現像される。この水性アルカリ現像液は、典型的には、8〜14のpHを有し、好ましくは10〜14のpHを有する。この目的のために、市販の現像液及びそれらの混合物を使用できる。当業者であれば、第1の層及び第2の層に使用されるポリマーに基づいて、個々の印刷版前駆体に対して、現像剤組成物を最適化できることは言うまでもない。現像浴中にスラッジが形成するのを防止するために、コーティングによっては、従来のポジ型現像液と従来のネガ型現像液の混合物を使用することが都合よいことがある。かかる混合物は、通常、12〜14の範囲内のpH値を有し、(メタ)ケイ酸アルカリ塩及び界面活性剤に加えて、しばしば少量の有機溶剤(Dowanol EPHなど)及び任意選択的にアミン類(ジエタノールアミンなど)も含む。第1の層及び第2の層は、露光領域において、現像液により除去され、それにより、基材の親水性表面が露出する。
【0154】
現像された印刷版を、印刷領域の耐摩耗性を高めるために、さらに、ベーキング工程にかけることができる。しかしながら、本発明の印刷版の場合には、品質の低下なしに非常に多数毎のコピーを印刷することができるため、この工程は絶対的に必要ではない。
【0155】
印刷版の典型的な処理条件の下では、本発明の印刷版前駆体は、昼光の可視光及び紫外部分に対して好ましくは感受性でないため(すなわち、コーティングは、紫外線/可視光に対して感受性である成分を含まない)、本発明の印刷版前駆体は、白色光の下で処理でき、黄色灯条件を必要としない。
【0156】
本発明を以下の例でより詳しく説明するが、これらの例は決して本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0157】
合成例1(ポリビニルアセタール1)
窒素雰囲気中で、60℃の280mlのDMSOに44.05gのMowiol(登録商標)10−98(Kuraray Specialities Europe製のポリビニルアルコール;加水分解度約98モル%;残留アセテート基の含有量約1.5質量%;DIN 53015に準拠する20℃での4%水溶液の粘度約10mPa・s)を溶解させた。この溶液に、4.32gの32%HClを加えた。50mlのDMSOに溶解させた22.41gの4−ヒドロキシベンズアルデヒドと50.70gの4−トシルオキシベンズアルデヒドの混合物を攪拌下で加えた。混合物を60℃で4時間反応させ、ポリビニルアセタール1を水中で析出させた。ポリビニルアセタール1を濾過して取り出し、洗浄し、40℃で乾燥させた。
【0158】
得られた生成物(酸価=0)は、下記の構造単位(量はモル%で示す)から構成されていた。
ビニルアルコール(構造単位A) 37.2モル%
アセテート(構造単位B) 3.2モル%
4−ヒドロキシベンズアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−1) 29.8モル%
4−トシルオキシベンズアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−1) 29.8モル%
【0159】
合成例2(ポリビニルアセタール2)
60℃の975mlのDMSOに103.125gのMowiol(登録商標)10−98を溶解させた。この溶液に、11.25mlの30%HClを加えた。30mlのDMSOに溶解させた10.68gのアセトアルデヒドと40.8gのブチルアルデヒドと7.9gの4−ホルミル安息香酸の混合物を攪拌下で加えた。混合物を60℃で4時間反応させ、ポリビニルアセタール2を水中で析出させた。ポリビニルアセタール2を濾過して取り出し、洗浄し、40℃で乾燥させた。
【0160】
得られた生成物(酸価=20)は、下記の構造単位(量はモル%で示す)から構成されていた。
ビニルアルコール(構造単位A) 36.8モル%
アセテート(構造単位B) 3.24モル%
アセトアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−3) 16.9モル%
ブチルアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−3) 39.4モル%
4−ホルミル安息香酸から誘導されたアセタール(構造単位C−1) 3.66モル%
【0161】
合成例3(ポリビニルアセタール3)
150gのメチルエチルケトン中の15gのMowital(登録商標)B30T(Kuraray Specialities Europe製のポリビニルアルコール)の溶液に、1.01gの無水マレイン酸を60℃で加えた。この酸無水物が溶解した後、0.30gのトリエチルアミンを少しずつ加え、次に、混合物を80℃で4時間攪拌した。ポリマーを1リットルの水中で析出させ、濾過して取り出し、洗浄し、乾燥させた(流動床乾燥機)。
【0162】
上記反応によって、構造単位C−5がポリビニルブチラール(構造単位A、B及びC−3)中に導入された。
ビニルアルコール(構造単位A) 45.7モル%
アセテート(構造単位B) 3モル%
ブチルアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−3) 46.7モル%
無水マレイン酸から誘導された構造単位(構造単位C−5) 4.6モル%
この生成物の酸価は27であった。
【0163】
合成例4(ポリビニルアセタール4)
15gのMowital B30Tを150gのメチルエチルケトン(分子篩により1日間乾燥)中に、室温で、次に40℃で1時間かけて溶解させた。1.01gのトルエンスルホニルイソシアネートを加え、室温で少なくとも3時間攪拌し、次に40℃で1時間攪拌した。ポリマー溶液が得られ、これは冷却するとゲル状になり、そして60℃に加熱すると、僅かに流動性になった。
【0164】
ポリマーを析出させるために、温かいポリマー溶液を1リットルの水中に注ぎ入れ、ポリマーを濾過して取り出し、洗浄し、乾燥させた(流動床乾燥機)。
【0165】
ポリマーの酸価は18であると求められた。上記反応によって、ポリビニルブチラール中に構造単位C−8が導入された。
ビニルアルコール(構造単位A) 49.2モル%
アセテート(構造単位B) 2.9モル%
ブチルアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−3) 45.6モル%
p−トルエンスルホニルイソシアネートから誘導された構造単位(構造単位C−8) 2.3モル%
【0166】
合成例5(ポリビニルアセタール5)
窒素雰囲気中で60℃の240mlのDMSOに25.78gのMowiol(登録商標)10−98を溶解させた。この溶液に、2.3mlの30%HClを加えた。15mlのDMSOに溶解させた2.75gのアセトアルデヒドと10.3gのブチルアルデヒドと1.59gの4−ヒドロキシベンズアルデヒドの混合物を攪拌下で加えた。混合物を60℃で4時間反応させ、その後、ポリビニルアセタール5が水中で析出させた。このポリマーを濾過して取り出し、洗浄し、40℃で乾燥させた。
【0167】
得られたポリマーは、構造単位A、B、C−1及びC−3から構成された。
【0168】
生成物の酸価は0であった。
ビニルアルコール(構造単位A) 35.4モル%
アセテート(構造単位B) 3.2モル%
アセトアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−3) 17.6モル%
ブチルアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−3) 40.1モル%
4−ヒドロキシベンズアルデヒドから誘導されたアセタール(構造単位C−1) 3.7モル%
【0169】
合成例6〜22(ポリビニルアセタール6〜22)
合成例1と同様に合成を行った。出発物質及びそれらの量についての情報は表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
ポリマーAの合成
100gのメトキシエタノール中に溶解させたメタクリル酸とメタクリルアミドとN−フェニルマレイミド(モル比20:35:45)のコポリマー20gに、0.19gのNaOH及び3.53gのIR−トランプ(Trump)染料:
【0172】
【化22】

【0173】
を加えた。溶液を4時間攪拌し、次に80℃に加熱した。水中に析出させることにより着色ポリマーが得られた。得られた着色ポリマーは、濾過して取り出し、乾燥させた。
【0174】
実施例1
以下のコーティング溶液をアルミニウム基材(電気化学的に研磨され、陽極酸化され、ポリビニルホスホン酸による後処理にかけられた)に適用した。
50mlの2−メトキシエタノール
5.0gの、メタクリル酸とメタクリルアミドとN−フェニルマレイミド(モル比20:35:45)のコポリマー
0.7gのトランプ染料(赤外線吸収剤)
【0175】
乾燥層質量は2.0g/m2 であった。
【0176】
次に、第2の層を得るために、コーティング溶液を適用した:
20gの、10質量%の水と35質量%のメタノールと55質量%のメチルグリコールの溶剤混合物
2.5gのポリビニルアセタール1
【0177】
印刷版前駆体を145℃で1分間乾燥させた。
【0178】
第2の層の乾燥層質量は1.42g/m2 であった。
【0179】
この版を、Creo Quantum 800イメージセッター(830nm、220rpm、すなわち10Wで112mJ/cm2)により像様露光し、次に、コダック・ポリクローム・グラフィックス(Kodak Polychrome Graphics)から市販されているポジ型現像液Goldstar(登録商標)とコダック・ポリクローム・グラフィックスから市販されているネガ型現像液956(pH=10)の1:1混合物により現像した。
【0180】
第2の層の特性の調査
第2の層の耐溶剤性及び耐摩耗性を調べるために、例1に記載したコーティング溶液を上記アルミニウム基材上に直接適用し、次に、145℃で1分間乾燥させた。乾燥層質量は1g/m2 であった。
【0181】
比較として、ジエチルケトンとDowanol PMA(92:8質量%)の混合物中のトシル化ノボラック(m−クレゾールノボラック、トシル化度15モル%)の溶液をアルミニウム基材上に適用した。乾燥後、乾燥層質量は、この場合にも1g/m2 であった。
【0182】
耐溶剤性は、上記のコーティングされた版上に、クリーニング用ナフサ:イソプロパノール:水(84:15:1質量%)の混合物を滴下し、そして放置(滞留時間は、30秒間間隔で30秒間から4分間)し、次にそれを布でこすることにより調べた。本発明の第2の層は、4分間後に侵食は全く認められなかったが、トシル化ノボラックの層は、たった30秒間の滞留時間の後に除去された。
【0183】
上記のとおり作製したコーティングされたアルミニウム基材を、さらに、プライノメーター(plynometer)による摩耗試験にかけた。この目的のために、15gの研磨スラリー(Grazeから入手可能なSyloid(登録商標)AL−1の5%スラリー)を滲み込ませた織フラシパッド(8×16cm)を、上記のコーティングされた基材(7×10cm)上で伸ばした.1回の測定当たりのプライノメーターのランタイムは15分間であった。摩耗による層材料の減損量を質量測定法で求めた。本発明に係る第2の層では、減損量は5%未満であったが、トシル化ノボラックの第2の層の減損量は40%であった。
【0184】
実施例2
下記のコーティング組成物を使用して、実施例1に記載したように基材上の第1の層を作製した:
5.80gの、メタクリル酸とメタクリルアミドとN−フェニルマレイミド(モル比20:35:45)のターポリマー、
1.50gの、N−フェニルマレイミドとメタクリルアミドとアクリロニトリルと下記のモノマーとのコポリマー:
【0185】
【化23】

【0186】
4.16gの、Georgia−Pacific(アトランタ)製のレゾール樹脂GP649D99、
1.50gのトランプ染料、
0.15gの、PCAS(フランス)製の染料D11、
0.15gのByk(登録商標)307(ポリエトキシル化ジメチルポリシロキサン)、
130gの溶剤(γ−ブチロラクトン:Dowanol PM:メチルエチルケトン:水、10:50:30:10質量%)。
【0187】
1.3g/m2 の乾燥層質量が得られた。
【0188】
下記のコーティング溶液を使用して第2の層を作製した:
2.2gのポリビニルアセタール2、
0.3gのトシル化ノボラック(m−クレゾールノボラック、トシル化度15モル%)、
0.03gのByk 307、
0.032gのエチルバイオレット(C.I.42600)、
50gの溶剤混合物(35gのメタノール、5gのDowanol、10gのメチルエチルケトン)。
【0189】
印刷版前駆体を145℃で1分間乾燥させた。
【0190】
第2の層の乾燥層質量は0.4g/m2 であった。
【0191】
Creo Quantum 800イメージセッター(830nm、50〜125mJ/cm2;10W)により像様露光した。メタケイ酸ナトリウムとDowanol EPH(2−フェノキシエタノール)とジエタノールアミンを含む水性アルカリ現像液(pH=13)を用いて現像を行った。
【0192】
60mJ/cm2 の露光エネルギーで開始し、クリーンな背景が得られた。55〜125mJ/cm2 の露光エネルギーでは、ハイライトドットとシャドーの解像度は良好であった。
【0193】
比較例1
実施例2に記載したように第1の層をアルミニウム基材上に作製した。
【0194】
トシル化ノボラック(m−クレゾールノボラック;トシル化度15%)を第2の層(乾燥層質量0.4g/m2 )として使用した。
【0195】
実施例2に記載したように露光及び現像を行った。
【0196】
80mJ/cm2 を超える露光エネルギーを適用するまでクリーンな背景が得られなかった。露光エネルギーが110mJ/cm2 を超えた場合に、ハイライトドットの損失が観測された。
【0197】
例3
下記のコーティング溶液を、上記のようにアルミニウム基材上に適用した:
5.39gのポリマーA(上記の合成法に従って調製)、
2.45gの、Georgia−Pacific(アトランタ)製のレゾール樹脂GP649D99、
0.092gの、PCAS(フランス)製の染料D11(コントラスト媒体、CAS433334−19−1)、
0.03gのByk(登録商標)307、
92gの溶剤(メチルエチルケトン:Dowanol PM:γ−ブチロラクトン:水、65:15:10:10質量%)。
【0198】
乾燥層質量は1.35g/m2 であった。
【0199】
基材に適用した第2の層は実施例2の第2の層に対応した。乾燥層質量は0.4g/m2 であった。
【0200】
Creo Quantum 800イメージセッター(830nm、71mJ/cm2)により像様露光した。メタケイ酸ナトリウムとDowanol EPHとジエタノールアミンを含む水性アルカリ現像液(pH=13)を用いて現像を行った。クリーンな背景が得られ、1×1画素エレメントの解像度は優れていた。
【0201】
例4
上記のアルミニウム基材に、実施例2に記載した第1の層を設けた。ポリビニルアセタール2の代わりにポリビニルアセタール3を使用し、また、乾燥(145℃で1分間)後に層質量が0.39g/m2 であったことを除き、実施例2に記載の組成物を第2の層として使用した。
【0202】
Creo Quantum 800イメージセッター(830nm、50〜99mJ/cm2;6W)により像様露光した。メタケイ酸ナトリウムとDowanol EPHとジエタノールアミンを含む水性アルカリ現像液(pH=13)を用いて現像を行った。
【0203】
クリーンな背景が得られ、適用した露光エネルギー範囲全体にわたって解像度は優れていた。
【0204】
実施例5
実施例4を繰り返したが、ポリビニルアセタール4は第2の層に使用した。第2の層の乾燥層質量は0.42g/m2 であった。
【0205】
実施例4に記載したように、露光及び現像を行った。
【0206】
クリーンな背景が得られ、適用した露光エネルギー範囲全体にわたって解像度は優れていた。
【0207】
実施例6
実施例4を繰り返したが、ポリビニルアセタール4は第2の層に使用した。第2の層の乾燥層質量は0.42g/m2 であった。
【0208】
実施例4に記載したように、露光及び現像を行った。
【0209】
クリーンな背景が得られ、適用した露光エネルギー範囲全体にわたって解像度は優れていた。
【0210】
実施例7(耐摩耗性試験)
アルミニウム箔を電気化学的に研磨し(Ra=0.6μm)、陽極酸化し(酸化アルミニウム層3.5g/m2 )、その後、ポリビニルホスホン酸中間層を設けた。この処理されたアルミニウム基材上に、メタノール/水/メチルセロソルブ(質量比35/10/55)の混合物中の様々なポリビニルアセタールの10質量%溶液を、1g/m2 の乾燥層質量が得られるように適用した。
【0211】
次に、15gの研磨スラリー(Grazeから入手可能なSyloid(登録商標)AL−1の5%スラリー)を滲み込ませた織フラシパッド(8×16cm)を、上記のコーティングされた基材(7×10cm)上で伸ばした.1回の測定当たりのプライノメーターのランタイムは15分間であった。摩耗による層材料の減損量を質量測定法で求めた。その結果を表2に示す。
【0212】
【表2】

【0213】
実施例8
アセトンと水とDowanol PMとメチルラクテート(質量比20/6/39/35)の溶剤混合物中の10質量%のアクリルターポリマー(メタクリルアミド:フェニルマレイミド:メタクリル酸、35:40:25モル%)を含むコーティング溶液をアルミニウム基材(耐摩耗性試験に関して記載したとおり)にドクターブレードにより適用した。乾燥は、熱風を用いて、次に、100℃のオーブン内で10分間かけて行った。乾燥層質量は0.5g/m2 であった。次に、ドクターブレードを用いて第2の層を形成した。この目的に対し、メタノールと水とメチルセロソルブ(質量比35/10/55)の混合物中に96.5質量%のポリビニルアセタール22、1.5質量%のトランプ染料(シアニン構造を有する赤外線吸収剤)及び2質量%のクリスタルバイオレットを溶解させた固形分5質量%の溶液を調製した。乾燥は、熱風を用いて、次に、100℃のオーブン内で10分間かけて行った。第2の層の乾燥層質量は0.8g/m2 であると求められた。
【0214】
【化24】

【0215】
上記の摩耗試験は、得られた二重層版を用いて行った。Syloid(登録商標)を使用した場合には、8%の層材料の損失が観測された。
【0216】
上記のように作製した赤外線感受性印刷版前駆体を、次に、像様露光した。スクリーン
露光源としてCreo Trendsetter 3244イメージセッター(830nm、150mJ/cm2;9.5W及び100rpm)を使用した。150ライン/インチで1×1画素ラインを2〜99%有するスクリーンを版上に載せた。輻射線源としてCreo Trendsetter 3244イメージセッター(830nm、150mJ/cm2;9.5W及び100rpm)を使用した。
【0217】
現像は、欧州特許出願公開明細書第0 366 321 A2号の実施例1に従って、モル比1:1で水で希釈したアルカリ現像液を使用して23℃で行った。現像液は、まず、版上に30秒間放置し、次に、版上のその現像液をタンポンで10秒間こすった。
【0218】
高い解像度(1×1画素ラインがはっきりと見える)とクリーンな背景を有する非常に良好な画像が得られた。印刷によって、クリーンな背景を有する精細に解像された画像が得られた。コピー数は、Kodak Polychrome Graohicsから市販されている印刷版Electra Excelを使用した
【0219】
耐溶剤性は、未露光版をメチルエチルケトン中に4分間漬けることにより試験した。2分後、コーティングの侵食は全く認められなかった。4分間後、染料だけを洗い落とした。これは、極めて高い耐溶剤性を示唆する。
【0220】
比較例2
実施例8を繰り返したが、第2の層をアルミニウム基材上に直接、すなわちアクリルターポリマー層なしに、生成させた。
【0221】
照射及び露光後、画像が得られたが、背景領域はクリーンではなかった。
【0222】
メチルエチルケトンの滴を用いて耐溶剤性を試験した。1分間の滞留時間後、未露光コーティングに侵食は観察されなかった。
【0223】
この比較例は、クリーンな背景領域を得るには、二重層構造が必要であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)親水性表面を有する基材;
(b)水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤可能であり、かつ、低い極性を有する有機溶剤に不溶性である第1のポリマーを含んで成る第1の層;
(c)水性アルカリ現像液に可溶性であるか又は水性アルカリ現像液中で膨潤可能である第2のポリマーを含んで成る第2の層;
を順に含んで成る画像形成可能な要素であって、
前記第1のポリマーが前記第2のポリマーと異なり、
前記第2のポリマーが、ビニルアセタール反復単位と、−COOH、−SO3H、−PO32 、−PO42 、芳香族OH、及び酸性アミド又はイミド基を有する基から選ばれるペンダント酸性基とを含み、
当該要素は、任意選択的に、少なくとも1種の光熱変換材料を含み、
前記第2の層が、インクを吸収し、水性アルカリ現像液に不溶性であり、水性アルカリ現像液に対して不浸透性であるが、赤外線により前記現像液に可溶性になるか又は前記現像液に対して浸透性になること、
を特徴とする画像形成可能な要素。
【請求項2】
前記第1の層若しくは第2の層又はこれらの層の両方が、少なくとも1種の光熱変換材料を含む、請求項1に記載の画像形成可能な要素。
【請求項3】
前記第2のポリマーが、構造単位(A)及び(C)と、任意選択的に(B)とを含み、ここで、単位Cは、(C−1)、(C−2)、(C−3)及び(C−4)から選ばれる少なくとも1種のアセタール単位と、任意選択的に(C−5)、(C−6)、(C−7)及び(C−8)から選ばれる少なくとも1種の単位:
【化1】

【化2】

[式中、
4 はH又はC1−C4アルキルを表し、
5 はH、C1−C18アルキル、アリール又はC2−C18アルケニルを表し、
16は独立にH、ハロゲン又はC1−C4アルキルを表し、
17は独立にH、ハロゲン又はC1−C4アルキルを表し、
18は独立に−OH、−O−トシル、−O−ナフチル、−COOH、−(CH2a−COOH、−O−(CH2a−COOH、−SO3H、−PO32又は−PO42を表し、
aは1〜8の整数であり、
cは1〜5の整数であり、
X’は独立に、脂肪族、芳香族又は芳香族脂肪族スペーサーであり、
Y’は、−CO−X4−COOR20及び−SO221から独立に選ばれ、
Lは、−NH−CO−R’基であるか又は−CO−NH−R''基(式中、R’は水素原子、カルボキシル基により置換されていてもよいアルキル、アルケニル及びアリール基から選ばれ、R''は、1個又は2個以上のヒドロキシル基、C1−C3エーテル若しくはアミノ基、モノ−C1−C3−アルキルアミノ、ジ−C1−C3−アルキルアミノ若しくはカルボキシル基により置換されていてもよいC1−C6炭化水素基であるか、又は少なくとも1個のカルボキシル若しくはスルホン酸基を含むアリール基である)であり、
V はアルキル基及びアリール基から選ばれ、
10は、H、アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルケニル基から選ばれ、
13及びR14は、水素原子及びアルキル基から独立に選ばれるか、又はR13とR14は、それらが結合している2つの炭素原子と共に5又は6員炭素環式環を形成しており、
20は、水素原子及びアルキル基から選ばれ、
21は、アルキル、アラルキル及びアリール基から選ばれ、
4 は、
−(CR67k−及び−CR8=CR9
(式中、kは1〜6の整数であり、R6及びR7の各基は水素原子及びC1−C6アルキル基から独立に選ばれ、R8及びR9は水素原子及びC1−C6アルキル基から独立に選ばれるか、又はR8とR9は、それらが結合している2つの炭素原子と共に任意選択的に置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基を形成している)
から選ばれる]
である、請求項1又は2に記載の画像形成可能な要素。
【請求項4】
前記第2の層が、ポリマー1g当たり50mg KOH以下の酸価を有する第2のポリマーを5〜100質量%含み、前記少なくとも1種の光熱変換材料が前記第1の層中に存在する、請求項3に記載の画像形成可能な要素。
【請求項5】
前記第2の層が、1種又は2種以上のフェノール樹脂をさらに含む、請求項4に記載の画像形成可能な要素。
【請求項6】
前記第1の層が、30質量%以下の1種又は2種以上のフェノール樹脂をさらに含む、請求項4又は5に記載の画像形成可能な要素。
【請求項7】
前記第2のポリマーが、構造単位Cとして、少なくとも1つの単位(C−3)と、(C−5)及び(C−1)から選ばれる少なくとも1つの単位とを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項8】
構造単位(A)、(B)及び(C)が、下記の量:
(A)10〜60モル%、
(B)0.1〜30モル%、
(C)20〜80モル%、
で前記第2のポリマー中に存在する、請求項4〜7のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項9】
前記第2のポリマーが、ポリマー1g当たり30mg KOH以下の酸価を有する、請求項4〜8のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項10】
前記第2の層が、第2のポリマーのみから成る、請求項4〜9のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項11】
前記光熱変換材料が前記第2の層中に存在し、前記第2の層が、さらに、構造単位(A)及び(C−1a):
【化3】

(式中、Wはアリーレン基であり、cは1〜5の整数である)
並びに任意選択的に構造単位(B)を含む第2のポリマー10〜99.9質量%も含む(ただし、単位(A)及び(B)は請求項3に定義したとおり)、請求項3に記載の画像形成可能な要素。
【請求項12】
前記第2のポリマーが、下記の構造単位(C−3)、(C−1b)及び(C−1c):
【化4】

(式中、R5及びcは請求項3に定義したとおりであり、dは1〜3の整数である)
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項11に記載の画像形成可能な要素。
【請求項13】
前記第2のポリマーが、構造単位(A)、(B)、(C−1a)及び(C−1b)を含む、請求項12に記載の画像形成可能な要素。
【請求項14】
前記第2のポリマーが、10〜80モル%の構造単位(C−1a)を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項15】
前記第2のポリマーが、10〜30モル%の構造単位(C−1b)を含む、請求項12又は13に記載の画像形成可能な要素。
【請求項16】
構造単位(C−1a)におけるcが1であり、1つのヒドロキシル基が、パラ位でフェニル基に結合している、請求項11〜15のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項17】
構造単位(C−1b)におけるdが1であり、1つのO−トシル基がパラ位に結合している、請求項12又は13に記載の画像形成可能な要素。
【請求項18】
単位(C−3)中のR5がブチルである、請求項12に記載の画像形成可能な要素。
【請求項19】
構造単位(C−1c)におけるcが1であり、1つのカルボキシ基がパラ位に結合している、請求項12に記載の画像形成可能な要素。
【請求項20】
構造単位(B)中のR4がメチル基である、請求項12〜19のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項21】
前記第1のポリマーが、N−置換マレイミドとそれと共重合可能なコモノマーとから誘導されたコポリマー、側鎖に尿素基を有するコポリマー、及び側鎖にスルホンアミド基を有するコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項22】
前記光熱変換材料が、式:
【化5】

[式中、
各Z1 は独立にS、O、NRa又はC(アルキル)2を表し;
各R’は独立にアルキル基、アルキルスルホネート基またはアルキルアンモニウム基を表し;
R''は、ハロゲン原子、SRa、ORa、SO2a又はNRa2を表し;
各R'''は独立に水素原子、アルキル基、−COORa、−ORa、−SRa、−NRa2若しくはハロゲン原子、又はベンゾ縮合環を表し;
b及びRcは、両方とも水素原子を表すか、又はそれらが結合している炭素原子と共に5又は6員炭素環式環を形成しており;
はアニオンを表し;
aは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し;
各bは独立に0、1、2又は3である]
により表わされる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素の製造方法であって、
(a)請求項1又は21に規定される第1のポリマーを含む第1の溶液を、親水性表面を有する基材に適用する工程:
(b)請求項1、3、4、7〜9及び11〜20のいずれか一項に規定される少なくとも1種の第2のポリマーを含む第2の溶液を適用する工程;
(c)乾燥工程;及び任意選択的に
(d)工程(c)で得られた要素を熱処理することにより、当該要素を状態調節する工程;
を含む方法。
【請求項24】
(a)請求項2〜22のいずれか一項に記載の画像形成可能な要素を近赤外線又は赤外線に像様露光する工程;及び
(b)水性アルカリ現像液によりコーティングの露光領域を除去して、それらの領域において基材の親水性表面を露出させる工程;
を含む、画像形成された要素の製造方法。

【公表番号】特表2009−503594(P2009−503594A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524427(P2008−524427)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007618
【国際公開番号】WO2007/017162
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(505316060)コダック グラフィック コミュニケーションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【Fターム(参考)】