説明

ポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法

【課題】転写型の表面形状を転写型どおりに精度よく転写することができ、かつ透明性に優れるポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を溶融混練する溶融工程と、溶融ポリプロピレン系樹脂をTダイから吐出してシート状に成形する成形工程と、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を、弾性ロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとで挟圧することによって、前記シート状溶融ポリプロピレン系樹脂の表面に前記転写型を転写しつつ、前記シート状溶融樹脂を冷却固化する転写工程とを含み、前記金属ロールの表面温度が0〜95℃であり、前記弾性ロールと、前記金属ロールとによってシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧する際の線圧が1〜300N/mmであり、挟圧する距離が1〜30mmであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法に関し、詳しくは転写型の表面形状を転写型どおりに精度よく転写することができ、かつ透明性に優れるポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転写型の形状が表面に転写された樹脂製シート(表面形状転写シート)としては、プリズムシート、レンズシートなどが知られており、これらは液晶表示装置のバックライトの部材として有用である。表面形状転写シートの製造方法としては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂を溶融混練してTダイから吐出し、吐出した溶融状シートを、転写型を備えた金属ロールとタッチロールの間で挟圧することで転写型の表面形状を転写する方法が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
一方、近年では結晶性熱可塑性樹脂を用いて表面形状転写シートを製造する試みもなされている。しかしながら、結晶性熱可塑性樹脂を用いた場合、透明性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142682
【特許文献2】特開2007−276463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、転写型の表面形状を転写型どおりに精度よく転写することができ、かつ透明性に優れるポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練する溶融工程と、溶融ポリプロピレン系樹脂をTダイから吐出してシート状に成形する成形工程と、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を、弾性ロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとで挟圧することによって、前記シート状溶融ポリプロピレン系樹脂の表面に前記転写型を転写しつつ、前記シート状溶融樹脂を冷却固化する転写工程とを含み、前記金属ロールの表面温度が0〜95℃であり、前記弾性ロールと、前記金属ロールとによってシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧する際の線圧が1〜300N/mmであり、挟圧する距離が1〜30mmであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法である。
【0006】
また、本発明は、前記転写工程において、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を、弾性ロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとで狭圧する際、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂と弾性ロールとの間隙に支持体を挿入するポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写型の表面形状を転写型どおりに精度よく転写することができ、かつ透明性に優れるポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】シート製造システムの概略図
【図2】シート製造システムの概略図
【図3】シート製造システムの概略図
【図4】転写型の拡大図
【図5】転写型の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体や、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体が挙げられる。また、これらの混合物であってもよい。好ましくは、プロピレンの単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、またはプロピレン・エチレン・1−ヘキセン共重合体である。また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂が、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0011】
上記のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセンなどが挙げられ、炭素数4〜12のα−オレフィンがより好ましく、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。特に共重合性の観点から、好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0012】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂が共重合体である場合、該共重合体におけるコモノマー由来の構成単位の含量は、透明性と耐熱性のバランスの観点から、0重量%を超え40重量%以下が好ましく、0重量%を超え30重量%がより好ましい。なお、2種類以上のコモノマーとプロピレンとの共重合体である場合には、該共重合体に含まれる全てのコモノマー由来の構成単位の合計含量が、前記範囲であることが好ましい。
【0013】
本実施形態において用いられるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に従い測定される値(試験温度、公称荷重は、JIS K 7210の附属書B表1による)で、通常0.1g/10分〜50g/10分程度であり、0.5g/10分〜20g/10分程度であると好ましい。MFRがこのような範囲のポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく、均一なシートを成形することができる。
【0014】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのどの形式であってもよい。本発明で用いるポリプロピレン系樹脂は、耐熱性の点からシンジオタクチック、あるいはアイソタクチックのポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂は、分子量やプロピレン由来の構成単位の割合、タクチシティーなどが異なる2種類以上のポリプロピレン系樹脂のブレンドでもよい。また、ポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂以外のポリマーや添加剤とを適宜併用してもよい。
【0016】
本実施形態において用いられるポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を配合してもよい。
【0017】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収材、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられ、これらのうち複数種を併用するものであってもよい。
【0018】
上記の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤(HALS)や、1分子中に例えばフェノール系とリン系の酸化防止機構と有するユニットを有する複合型の酸化防止剤などが挙げられる。
【0019】
上記の紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシトリアゾール系などの紫外線吸収剤や、ベンゾエート系など紫外線遮断剤などが挙げられる。
【0020】
上記の帯電防止剤としては、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型などが挙げられる。
【0021】
上記の滑剤としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドや、ステアリン酸などの高級脂肪酸、及びその金属塩などが挙げられる。
【0022】
上記の造核剤としては、例えばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ロジン系造核剤、ポリビニルシクロアルカンなどの高分子系造核剤等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては球状、あるいはそれに近い形状の微粒子が無機系、有機系に関わらず使用できる。
【0023】
(シート製造システムの構成)
図1を参照して、本実施形態に係る表面形状転写シートの製造方法に用いられるシート製造システム1の構成について説明する。シート製造システム1は、押出機10、Tダイ12、弾性ロール14、表面に転写型を備えた金属ロール16、冷却ロール18を備える。
【0024】
まず、ホッパー(図示せず)から押出機10にポリプロピレン系樹脂を投入する。このとき使用するポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂の劣化・分解を抑制するために、押出機10に熱可塑性樹脂を供給する前に、窒素中で40℃以上且つ(Tm−20℃)以下の温度にて1時間〜10時間程度予備乾燥をすることが好ましい(ただし、Tm[℃]は、JIS K 7121で規定される示差走査熱量測定における融解ピーク温度である。)。また、押出機10内も、20〜120℃の窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスでガス置換することが好ましい。押出機10は、投入されたポリプロピレン系樹脂を溶融混練しつつ押し出して、溶融混練したポリプロピレン系樹脂(溶融ポリプロピレン系樹脂)をTダイ12へと搬送するものである。
ポリプロピレン系樹脂を押出機中で溶融混練する際に用いられるスクリューとしては、単軸押出機の場合、L/D=24〜36、圧縮比1.5〜4のフルフライトタイプ、バリアタイプ、さらにマドック型の混練部分を有するタイプを用いることができる。ポリプロピレン系樹脂の劣化・分解を抑制し、均一に溶融混練するために、L/D=28〜36、圧縮比2.5〜3.5のバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂が劣化・分解した場合に発生する揮発ガスを取り除くため、押出機先端に1mmφ以上5mmφ以下のオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。押出機先端部分の樹脂圧力を高めるとは、先端での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定を向上させることができる。使用するオリフィスは、より好ましくは2mmφ以上4mmφ以下である。
ポリプロピレン系樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプ(図示せず)を取り付けることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂中にある異物を取り除くため、リーフディスクフィルター(図示せず)を取り付けることが好ましい。
【0025】
Tダイ12は、押出機10と接続されており、押出機10から搬送された溶融ポリプロピレン系樹脂をシート状に広げるためのマニホールド(図示せず)をその内部に有している。また、Tダイ12には、マニホールドと連通すると共にマニホールドによってシート状に広げられた溶融ポリプロピレン系樹脂を吐出する吐出口12aがその下部に設けられている。そのため、Tダイ12の吐出口12aから吐出された溶融ポリプロピレン系樹脂は、シート状である。
吐出されるシート状溶融ポリプロピレン系樹脂の温度は、180℃以上300℃以下であることが好ましい。この溶融樹脂の温度は、Tダイ12の吐出口12a部分において樹脂温度計を用いて測定される。
【0026】
Tダイ12としては、溶融ポリプロピレン系樹脂の流路の壁面に微小な段差や傷のないものが好ましい。Tダイ12の吐出口12a部分(リップ部分)は、溶融ポリプロピレン系樹脂との摩擦係数が小さい材料であり、且つ、硬い材料で、めっき、コーティング等(例えば、タングステンカーバイド系、フッ素系の特殊めっき)がされていることが好ましい。このようなTダイは、吐出口12aの先端部分の曲率半径を小さくすること(吐出口12aの先端部分をいわゆるシャープエッジと呼ばれる形状とすること)が可能である。
【0027】
Tダイ12の吐出口12aの先端部分は、溶融ポリプロピレン系樹脂の流路の壁面の、吐出口12aにおける曲率半径が0.1mm以下とされたシャープエッジと呼ばれる形状のものであることが好ましく、当該曲率半径が0.05mm以下であることがより好ましく、当該曲率半径が0.03mm以下であることがより一層好ましい。このようなTダイ12を用いることで、吐出口12aにおける目やにの発生を抑制することができ、同時にダイラインを抑制する効果も見られ、製造される表面形状転写シートの外観の均一性をより優れたものにできる。曲率半径は、0.01mm以上であることが好ましい。
【0028】
Tダイ12における溶融樹脂の吐出口12aから、弾性ロール14及び表面に転写型を備えた金属ロール16によってシート状溶融ポリプロピレン系樹脂が挟圧されるまでの間(いわゆる、エアギャップ)の長さHとしては、50mm〜250mmであることが好ましく、50mm〜180mmであることがより好ましい。エアギャップの長さHが250mmを超えると、エアギャップにおいて配向が発生し、ポリプロピレン系樹脂製シートSの位相差が大きくなってしまう傾向にある。エアギャップの長さHの下限は、Tダイ12のサイズや弾性ロール14及び表面に転写型を備えた金属ロール16の径などフィルム製造システム1によって決定され、通常50mm程度となる。
【0029】
弾性ロール14は、ゴムロール、または弾性変形可能な金属ロールである。弾性ロールとしてゴムロールを使用する場合は、その表面硬度が65〜80であることが好ましく、70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のゴムロールを用いることにより、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂にかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、表面に転写型を備えた金属ロール16とゴムロールとの間にバンク(樹脂溜り)を形成することなく、ポリプロピレン系樹脂製シートを成形することが容易となる。バンクが形成されると、得られるポリプロピレン系樹脂製シートの複屈折が大きくなる傾向がある。
【0030】
弾性変形可能な金属ロールの例としては、特許第3422798号公報に記載されている成形ロールや、特開平7−040370号公報に記載されている成形ベルト手段、特開平11−235747号公報に記載されている押さえロール等が挙げられる。本発明のポリプロピレン系樹脂製シートの転写面と反対側の面の平滑性が優れるという観点から、弾性ロールは、弾性変形可能な金属ロールを用いることが、好ましい。弾性変形可能な金属ロールの表面は、鏡面状態であることが好ましい。
【0031】
特許第3422798号公報に記載されている成形ロールとは、具体的には図1に示すように、筒状の金属製の帯状体(無端ベルトともいう)14aと、帯状体14aの内部に配置されたゴム製ロール14b(本実施形態においては1本)と、帯状体14aとゴム製ロール14bとの間の空間を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する弾性ロール14である。
帯状体14aは、ばね鋼、ステンレス鋼、ニッケル鋼等の弾性変形が可能な金属薄膜によって筒状に形成されており、その表面に継ぎ目が存在していない。帯状体14aの両側は、図示しない閉塞部材によって閉塞されている。帯状体14aとしては例えば、その厚みが100μm〜1500μmで、その直径が200mm〜600mmで、表面粗度が0.5S以下のものを用いることができ、好ましくは表面粗度が0.2S以下である。なお、帯状体14aの直径は、表面形状転写シートSの加工速度に応じて適切な大きさに設定されるが、帯状体14aの直径が上記の範囲である場合には、表面形状転写シートSの加工速度は数m/分〜百数十m/分となる。
ゴム製ロール14bは、円柱形状を呈しており、帯状体14aの内部において弾性変形及び回転可能である。ゴム製ロール14bは、硬度が30〜90程度のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、ネオプレン又はシリコーンによって形成することができる。また、ゴム製ロール14bとしては、通常その直径が100mm〜250mmのものを用いることができる。
液体Lは、例えば水、エチレングリコール、油を用いることができる。図示しない温度調節手段によって液体Lの温度を調節することにより、間接的に帯状体14aの表面温度が調節されることとなる。
【0032】
なお、本発明においては、帯状体14aの厚さが350μm〜500μmであり、ゴム製ロール14bの硬度が60〜75であることが好ましい。このような帯状体を用いることにより、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を均一に挟圧しやすくなる。
【0033】
特開平7−040370号公報に記載されている成形ベルト手段とは、図2に示される弾性ロール20のようなものである。具体的には、弾性ロール20は、筒状の金属製帯状体(無端ベルトともいう)22と、帯状体22の内部に2本のロール24、26と、帯状体22の表面温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。ロール24、26は、それぞれのロールの回転軸が転写型を備えた金属ロール16の回転軸と平行になるように配され、帯状体22と表面に転写型を備えた金属ロール16との間でシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧可能なように配される。ロール24はゴム製ロールであり、ロール26は金属製ロールであり、ロール26の表面温度を温度調節手段で調節することにより帯状体22の表面温度を調節するものである。
【0034】
帯状体22は、ばね鋼、ステンレス鋼、ニッケル鋼等の弾性変形が可能な金属薄膜によって筒状に形成されており、その表面に継ぎ目が存在していない。帯状体22は、ゴム製ロール24及び金属製ロール26に掛け渡されており、ロール24,26の距離を近接又は離間することにより帯状体22の張力(テンション)を調節することができるようになっている。帯状体22としては、その厚みが300μm〜800μmで、円筒状としたときの直径が200mm〜600mmのものを用いることができ、好ましくは表面粗度が0.2S以下である。
【0035】
ロール24,26は、円柱形状を呈しており、帯状体22の内部において回転可能である。ゴム製ロール24は、硬度が30〜90のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、ネオプレン又はシリコーンによって形成することができる。また、ロール24,26としては、その直径が80mm〜200mmのものを用いることができる。
【0036】
弾性ロール20を用いた場合には、Tダイ12の吐出口12aから吐出されたシート状溶融ポリプロピレン系樹脂が帯状体22と転写型を備えた金属ロール16とによって最初に挟まれる位置が挟圧の開始点となり、その後溶融樹脂が帯状体22と転写型を備えた金属ロール16とから離れる位置が挟圧の終点となる。
【0037】
なお、本発明においては、帯状体22の厚さが350μm〜600μmであり、ゴム製ロール24の硬度が60〜80であることが好ましい。このような帯状体を用いることにより、バンクが形成されにくくなり、また、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を均一に挟圧しやすくなる。
【0038】
特開平11−235747号公報に記載されている押さえロールとは、具体的には図3に示すように、高剛性の金属内筒30aと、金属内筒30aの外側に配置された薄肉金属外筒30bと、金属内筒30aの内側に配置された流体軸筒30cと、金属内筒30aと薄肉金属外筒30bとの間の空間及び流体軸筒30c内を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する弾性ロール30である。
【0039】
金属内筒30a、薄肉金属外筒30b及び流体軸筒30cは、同軸となるように配設されている。金属内筒30aには、その周方向に沿って複数の貫通孔30dが設けられている。そのため、液体Lは、流体軸筒30c、貫通孔30d、金属内筒30aと薄肉金属外筒30bとの間の空間の順に弾性ロール30の内部を循環するようになっている。
【0040】
薄肉金属外筒30bは、ステンレス鋼等によって形成されており、その表面に継ぎ目が存在しておらず、可撓性を有している。薄肉金属外筒30bは、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用できる範囲内で薄肉化が図られている。薄肉金属外筒30bとしては、その厚みが2000μm〜5000μmであり、その直径が200mm〜500mmであり、表面粗度が0.5S以下のものを用いることができ、好ましくは表面粗度が0.2S以下である。このような薄肉金属外筒を用いることにより、バンクが形成されにくくなり、また、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を均一に挟圧しやすくなる。
【0041】
液体Lは、例えば水、エチレングリコール、油を用いることができる。図示しない温度調節手段によって液体Lの温度を調節することにより、間接的に薄肉金属外筒30bの表面温度が調節されることとなる。
【0042】
また、弾性ロールとしてゴムロールを使用する場合は、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂をゴムロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとによってシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧する際に、該シート状溶融ポリプロピレン系樹脂とゴムロールとの間隙に支持体を挿入することが好ましい。支持体としては、例えば熱可塑性樹脂製二軸延伸フィルムを用いることができる。
支持体は平滑性に優れるものを用いることが好ましい。表面形状転写シートの転写面と反対側の面は、支持体と接した状態で、ロール間で挟圧されるため、得られる表面形状転写シートの転写面と反対側の面には、前記支持体の表面状態が転写される。したがって、使用する支持体の表面粗度が小さく、平滑であればあるほど、得られる表面形状転写シートの転写面と反対側の面の平滑性は良好となる。使用する支持体の表面粗度は0.01μm以上1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上1.0μm以下である。また使用する支持体の厚みは、本願発明のように製造する表面形状転写シートがポリプロピレン系樹脂製である場合には5μm以上50μm以下であることが必要であり、好ましくは10μm以上40μm以下である。使用する支持体が5μmより薄い場合、皺なく通紙することが困難になるなど、ハンドリングで問題を生じるため好ましくなく、一方、50μm以上である場合は、溶融状シートの冷却効率が悪くなり、得られる表面形状転写シートの透明性が悪化するため好ましくない。前記支持体を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂と強固に熱融着しない樹脂であればよく、具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどである。これらの内、湿度や熱などによる寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。
【0043】
ゴムロールは、その表面硬度が65〜80であることが好ましく、70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のゴムロールを用いることにより、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂にかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、表面に転写型を備えた金属ロールとゴムロールとの間にバンクを形成することなく成形することが容易となる。バンクが形成されると、得られる表面形状転写シートの複屈折が大きくなる傾向がある。
【0044】
ゴムロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとの間で支持体とともに挟圧されたシート状溶融ポリプロピレン系樹脂は、冷却固化された後、前記支持体と積層された状態で、必要に応じて端部をスリットした後、巻取機にて巻き取られ、表面形状転写シートとなる。支持体を巻取機の前で剥離し、表面形状転写シートのみを巻き取ることも可能である。ロール間で挟圧した支持体を表面形状転写シートから剥離する場合には、該表面形状転写シートの温度が、60℃以下、好ましくは40℃以下まで冷却されたあとに剥離除去することが好ましい。表面形状転写シートの温度が高い状態で支持体を剥離すると、表面形状転写シートが変形して配向を生じ、複屈折が大きくなることがある。
【0045】
表面に転写型を備えた金属ロールは、高剛性の金属外筒16aと、金属外筒16aの内側に配置された流体軸筒16bと、金属外筒16aと流体軸筒16bとの間の空間及び流体軸筒16b内を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。前記金属ロール16としては、その直径が200mm〜600mmのものを用いることが好ましい。なお、表面に転写型を備えた金属ロールを転写ロールともいう。
冷却ロール18は、高剛性の金属外筒18aと、金属外筒18aの内側に配置された流体軸筒18bと、金属外筒18aと流体軸筒18bとの間の空間及び流体軸筒18b内を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。前記冷却ロール18としては、その直径が200mm〜600mmで、表面粗度が0.2S以下の鏡面のものを用いることが好ましい。
転写ロール16、冷却ロール18においては、弾性ロール14と同様、図示しない温度調節手段によって液体Lの温度を調節することにより、間接的に金属外筒16a,18aの表面温度が調節され、弾性ロール14と共にTダイ12の吐出口12aから吐出されたシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を冷却して固化させる。
【0046】
前記転写型は、前記転写ロール表面に備えられ、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂の表面に押し当てられ、その表面形状を逆型として前記シート状溶融ポリプロピレン系樹脂に転写するものである。転写型は、互いに略平行に配された複数の溝を有する。溝の間隔は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。溝の間隔は、通常500μm以下であり、250μm以下であることが好ましい。溝の深さは3〜500μmであることが好ましい。
図4および図5に、転写型表面の例を示す。これらは、転写ロールをロールの軸と平行に切断したときのロール表面部分の拡大図である。図4は、断面形状がV字溝(三角形)の転写型の場合の断面図である。図4に示すように、転写型には複数の溝が設けられている。溝の間隔(P)とは、隣接する各溝の最深部の距離をいう。溝の深さ(h)とは、転写ロール表面から溝の最深部までの垂直距離をいう。断面形状がV字溝(三角形)である場合、該三角形の凹部の頂角θは40°〜160°とすることが好ましい。
【0047】
また、図5には、各溝が略半円弧状であり、溝と溝との間に平坦な尾根部がある形状を示した。図5において、ピッチ間隔(P)は図4と同様に、隣接する各溝の最深部間の距離をいい、溝の深さ(h)とは転写ロール表面から溝の最深部までの垂直距離をいう。上記略半円弧とは、図5に示すように、断面が半円弧状である形状に限定されるものではなく、円柱体をその軸線に平行であって、該軸線を含まない平面で切断した場合のいずれかの弧状である形状であってもよいし、或いは半楕円弧状や、該半楕円弧状の一部である扁平湾曲状等の形状であってもよい。また、尾根部は平坦でなくても構わない。
【0048】
転写型における溝は、図4に示されるように連続して略平行に設けてもよいし、図5に示すように間隔dをあけて略平行に設けてもよい。溝の間隔や深さ、形状は、製造するシートの用途により選択する。なお、本発明において上記転写型における溝の間隔(P)および深さ(h)は、転写型全体で必ずしも一定ではなく、部分的に隣接する凹部間で異なる形状である場合も含まれるものとする。
【0049】
転写型の溝は、転写ロールの周方向に平行であってもよく、転写ロールの幅方向に平行であってもよく、周方向と一定の角度をなしていてもよい。
【0050】
上記転写型の作製方法としては、公知の方法を採用することができ、上記ステンレス鋼、鉄鋼などからなる転写ロールの表面に、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施した後に、そのメッキ面に対してダイヤモンドバイトや金属砥石等を用いた除去加工や、レーザー加工や、またはケミカルエッチングを行ない、形状を加工する方法が例示されるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0051】
また、転写ロールの表面は、上記転写型を形成した後に、たとえば表面形状の精度を損なわない程度で、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施してもよい。
【0052】
Tダイ12の吐出口12aから吐出されたシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を、弾性ロールと転写ロールとで挟圧することによって、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂の表面に転写型を転写しつつ、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を冷却固化し、表面形状転写シートを製造することができる。挟圧する圧力(線圧)は、弾性ロール14を転写ロール16に押し付ける圧力により決定され、1〜300N/mmであり、好ましくは1〜200N/mmである。線圧が1N/mm未満であると、溶融樹脂に対する線圧を均一に制御することが困難となり、転写型を精度よくシート状溶融ポリプロピレン系樹脂の表面に転写しにくくなる傾向にある。線圧が300N/mmを超えると、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂が強く挟圧されすぎるため、溶融樹脂が、挟圧(ニップ)された部分にたまりながら成形されるバンク成形となり、大きな複屈折が発現してしまう傾向にある。
【0053】
挟圧する圧力(線圧)を制御する方法としては、(1)挟圧(ニップ)する部分にコッターと呼ばれる三角形の楔形の「つめもの」を設置し、このコッターを調整することによりロール間隔を調整する方法、(2)弾性ロール14及び転写ロール16の双方を、油圧、エア等を用いて所定の圧力で調整したコッターに当接するまで押し付ける方法、が一般的である。その他、コッターを用いず、ねじの回転数を制御し、機械的に所定の位置まで無段階で圧着する方法や、油圧系にサーボモーターを用いる方法も挙げられる。
【0054】
また、転写型を精度よく転写するという観点から、弾性ロールと転写ロールとによって挟圧する距離は1〜30mmであり、好ましくは1〜15mmである。挟圧する距離を制御する方法としては(1)挟圧(ニップ)する部分にコッターを設置し、このコッターを調整することによりロール間隔を調整する方法、(2)弾性ロールの弾性を変える方法、が一般的である。
【0055】
本発明の方法は、厚みが50〜500μmのポリプロピレン系樹脂製シートの製造に好適である。本発明の方法によって得られる、このような厚みのシートは、透明性に優れる。
【0056】
また、挟圧する際の転写ロールの表面温度は、0〜95℃であり、透明性に優れる表面形状転写シートを製造する観点から、弾性ロールと転写ロールによって挟圧する際に、急速に冷却することが必要であるため、弾性ロールおよび/または金属ロールの表面温度を0〜60℃とすることが好ましく、弾性ロールの表面温度を0〜40℃とすることがより好ましく、弾性ロールの表面温度を0〜30℃とすることがさらに好ましい。
【0057】
表面形状転写シートの加工速度は、転写ロールの径が大きいほど速くなる。具体的には、転写ロール16の直径が600mmである場合、シートの加工速度を、最大で50m/分程度、通常30m/分程度に設定することができる。
【0058】
弾性ロール14及び転写ロール16は、Tダイ12の下方において、一般的には一列に並ぶように配列されている。特に、弾性ロール14と転写ロール16とは、所定間隔をもって配置されており、この弾性ロール14と転写ロール16との間隔や、各ロール14,16,18の回転速度、Tダイ12の吐出口12aから吐出される溶融樹脂の吐出量等によって表面形状転写シートの厚みが規定される。
【0059】
得られた表面形状転写シートは、通常、さらに冷却されたのち、必要に応じて耳部がスリット(切断)され、巻取機にて巻き取られるか、または、枚葉に切断されて、例えば液晶表示装置を構成するプリズムシートなどとして用いられる。なお、表面形状転写シートの耳部をスリット(切断)する前、又はスリット(切断)した後に、表面形状転写シートの片面又は両面に保護フィルムを積層してもよい。また、樹脂として光拡散剤が添加されたものを用いた場合には、表面に形状が転写された光拡散板として好適に用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(1)転写型
3種類の転写型A〜Dを用いた。いずれの転写型もプリズムレンズ(角柱レンズ)形状であり、図4に示すように各溝部が平行に等間隔(溝の間隔P)で構成されている。溝はいずれもロールの周方向に平行である。下記表1において、P、h、θは、図4に示す転写型に施されているV字の溝の断面形状の各距離または角度を示し、「溝の間隔P」は隣接する溝の距離、「溝深さh」は溝の最深(頂角)部までの垂直距離、「θ」はV字凹みの頂点の角度(頂角)を示す。
【0062】
(2)表面形状転写樹脂シートの転写率
得られた表面形状転写樹脂シートを切断し、断面を鏡面仕上げしたのち、超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製「VK−8500」)で観察して、以下の式(1)で定義される形状転写率T(%)を算出した。
形状転写率T(%)=シートの断面形状の凹部溝深さ/転写型の断面形状の溝深さh×100・・・(1)
【0063】
【表1】

【0064】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
プロピレン系重合体のメルトフローレートは、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
【0065】
(3)融点(Tm、単位:℃)
ポリプロピレン系樹脂を熱プレス成形して、厚さ0.5mmのシートを作成した。前記熱プレス成形では、熱プレス機内でポリプロピレン系樹脂を230℃で5分間予熱後、3分間かけて50kgf/cm2まで昇圧し2分間保圧した後、30℃、30kgf/cm2で5分間冷却するようにプレスした。作製したプレスシートの切片10mgについて、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下で下記[1]〜[5]の熱履歴を加えた後、50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱して融解曲線を作成した。この融解曲線において、最高吸熱ピークを示す温度(℃)を求め、これを該ポリプロピレン系樹脂の融点(Tm)とした。
[1]220℃で5分間加熱する;
[2]降温速度300℃/分で220℃から150℃まで冷却する;
[3]150℃において1分間保温する;
[4]降温速度5℃/分で150℃から50℃まで冷却する;
[5]50℃において1分間保温する。
【0066】
(4)面内位相差Re
シートの複屈折の大きさは面内位相差Reで評価した。面内位相差Reは位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA−WPR)を用いて測定した。
【0067】
(5)内部ヘイズ
内部ヘイズは、フィルムを石英ガラス製の容器(セル)に、ポリプロピレン系樹脂とほぼ同じ屈折率を有する液体であるフタル酸ジメチルと、測定するフィルムを入れた状態で、JIS K−7136に準じた方法で測定した。
【0068】
(6)挟圧距離
弾性ロールと転写ロールとの間で挟圧する距離は、以下の方法で測定した。弾性ロールと転写ロールとの間に感圧紙(富士フィルムビジネスサプライ(株)製プレスケールLLW)を挟み、感圧紙の発色部分のMD方向の距離を測定し、挟圧距離とした。
【0069】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体、MFR=7、Tm=164℃)を、270℃に加熱した50mmφ押出機10(スクリュー:L/D=32、フルフライトスクリュー)にて溶融混練し、押出機10から、押出機10に続いて設置されるギヤポンプ、アダプタ及びTダイ12(すべて270℃に設定)へとこの順にフィードし、Tダイ12の吐出口(リップ口)12aからシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を吐出した。Tダイ12の吐出口12a部分における溶融樹脂の温度は270℃であった。そして、当該溶融樹脂を、図2に示される弾性ロール20と、転写ロール16とによって挟圧長さ4mm、線圧150N/mmで挟圧すると共に、弾性ロール20、転写ロール16及び冷却ロール18によって冷却して固化させることで、厚みが100μmの表面形状転写シートを得た。表面形状転写シートの製造条件、シート厚み、形状転写率T、内部ヘイズ、面内位相差を表2に示す。
【0070】
ここで、弾性ロール20の帯状体22は、円筒状としたときのその直径が280mm、その厚みが300μm、その表面粗度が0.2Sであった。弾性ロール20中のロール24はシリコーンによって形成され、ロール26は金属ロールであり、その直径がそれぞれ160mm、ロール24の硬度が60であった。転写ロール16と冷却ロール18は、その直径が300mmであった。冷却ロール18の表面粗度は0.1Sであり、表面は鏡面であった。弾性ロール20の回転速度を5m/分、転写ロール16及び冷却ロール18の回転速度を5m/分、エアギャップHを150mm、転写ロール16の表面温度を20℃、弾性ロール20の帯状体22の表面温度を20℃にそれぞれ設定した。また、前記転写ロールの表面には、表面形状が表1に示すV字凹み溝Aである転写型が設けられていた。
【0071】
(実施例2)
転写ロールの表面に、表面形状が表1に示すV字凹み溝Bである転写型を設けた以外は、実施例1と同様の方法により、表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例3)
転写ロールの表面に、表面形状が表1に示すV字凹み溝Cである転写型を設けた以外は、実施例1と同様の方法により、表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0073】
(実施例4)
製造するポリプロピレン系樹脂製シートの厚み250μmとした以外は実施例1と同様の方法により、表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0074】
(実施例5)
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体、MFR=7、Tm=164℃)を、280℃に加熱した50mmφ押出機10(スクリュー:L/D=32、フルフライトスクリュー)にて溶融混練し、押出機10から、押出機10に続いて設置されるギヤポンプ、アダプタ及びTダイ12(すべて280℃に設定)へとこの順にフィードし、Tダイ12の吐出口(リップ口)12aからシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を吐出した。Tダイ12の吐出口12a部分における溶融樹脂の温度は280℃であった。そして、当該溶融樹脂を、ゴムロールと、転写ロール16とによって挟圧する際に、繰出機より繰り出されたポリエステル製二軸延伸フィルム(厚み25μm)を当該溶融樹脂とゴムロールの間に挿入し、ゴムロール、転写ロール16及び冷却ロール18によって冷却して固化させることで、厚みが100μmの表面形状転写シートを得た。ゴムロールと転写ロールとによる挟圧条件は、挟圧長さ8mm、線圧14N/mmとした。
表面形状転写シートの製造条件、シート厚み、形状転写率T、内部ヘイズ、面内位相差を表2に示す。
【0075】
ここで、ゴムロール、転写ロール16と冷却ロール18は、その直径が300mmであった。冷却ロール18の表面粗度は0.1Sであり、表面が鏡面のものであった。ゴムロールの回転速度を5m/分、転写ロール16及び冷却ロール18の回転速度を5m/分、エアギャップHを120mm、転写ロール16の表面温度を80℃、ゴムロールの表面温度を10℃にそれぞれ設定した。また、前記転写ロールの表面には、表面形状が表1に示すV字凹み溝Dである転写型を設けた。
【0076】
(実施例6)
転写ロールの温度を70℃に設定したこと以外は実施例5と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例7)
ゴムロールの回転速度を3m/分、転写ロール16お呼び冷却ロール18の回転速度を3m/分に設定したこと以外は実施例6と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0078】
(実施例8)
ゴムロールの回転速度を3m/分、転写ロール16お呼び冷却ロール18の回転速度を3m/分に設定したこと以外は実施例5と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0079】
(実施例9)
転写ロールの温度を50℃に設定したこと以外は実施例8と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0080】
(実施例10)
ゴムロールの回転速度を10m/分、転写ロール16お呼び冷却ロール18の回転速度を10m/分に設定したこと以外は実施例6と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0081】
(実施例11)
転写ロールの温度を90℃に設定したこと以外は実施例10と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1)
転写ロールの温度を100℃に設定したこと以外は実施例10と同様の方法により表面形状転写シートを得た。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【符号の説明】
【0084】
1 シート製造システム
10 押出機
12 Tダイ
12a 樹脂吐出口
14 弾性ロール
14a 帯状体
14b ゴム製ロール
16 表面に転写型を備えた金属ロール(転写ロール)
16a 金属外筒
16b 流体軸筒
18 冷却ロール
18a 金属外筒
18b 流体軸筒
20 弾性ロール
22 帯状体
24 ゴム製ロール
26 金属製ロール
30 弾性ロール
30a 金属内筒
30b 薄肉金属外筒
30c 流体軸筒
30d 貫通孔
L 液体
H エアギャップ
S ポリプロピレン系樹脂製シート
P 溝の間隔
h 溝の深さ
θ V字溝の凹部の頂角
d 尾根部の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を溶融混練する溶融工程と、
溶融ポリプロピレン系樹脂をTダイから吐出してシート状に成形する成形工程と、
シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を、弾性ロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとで挟圧することによって、前記シート状溶融ポリプロピレン系樹脂の表面に前記転写型を転写しつつ、前記シート状溶融樹脂を冷却固化する転写工程とを含み、
前記金属ロールの表面温度が0〜95℃であり、
前記弾性ロールと、前記金属ロールとによってシート状溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧する際の線圧が1〜300N/mmであり、
挟圧する距離が1〜30mmであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂製シートの厚さが50〜500μmである請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法。
【請求項3】
前記弾性ロールおよび/または前記金属ロールの表面温度が0〜60℃である請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法。
【請求項4】
前記転写型が、互いに略平行に配された複数の溝を有し、溝の間隔が10〜250μmであり、溝の深さが3〜500μmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法。
【請求項5】
前記転写工程において、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂を、弾性ロールと、表面に転写型を備えた金属ロールとで狭圧する際、シート状溶融ポリプロピレン系樹脂と弾性ロールとの間隙に支持体を挿入することを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂製シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143717(P2011−143717A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280203(P2010−280203)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】