説明

ポリマーワックスの剥離廃液処理方法

【課題】ポリマーワックスの剥離廃液を有害物質の問題となる発生を回避し、産業廃棄物の発生を完全に排除して、有価燃料とする。
【解決手段】剥離剤が混入されたポリマーワックスの剥離廃液に酸例えば硫酸を添加して(ステップS5)、該廃液内にポリマーのみのゲル状半固形化状のポリマー塊を析出すると共に、有害の剥離剤を塩に変化させ、ポリマー塊を抽出する(ステップS6)。ポリマーワックスが排除された廃液にアルカリ液を添加取り出して中和処理し(ステップS8)、乾燥させて(ステップS9)固形物を得て、この固形物と先に抽出したポリマーから固形燃料を取り出し、産業廃棄物の発生を排除して有価燃料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物の発生、有害ガスの発生等を実質的に排除することができるようにしたポリマーワックスの剥離廃液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床面には、その保護、美観等の目的をもって、多くの場合、その床剤としてポリマーワックスが塗布される。
この塗布された床剤としてのポリマーワックスは、塵埃の付着、機械的擦傷、磨耗等によって損耗し、その機能、美観が低下することから、通常、定期的に塗り替えがなされる。この塗り替えに当たっては、まず、すでに塗られているポリマーワックスを剥離することが必要であり、上述した定期的な塗り替えによって、多量のポリマーワックスの剥離廃液が発生する。
【0003】
ポリマーワックスの剥離方法としては、大別して溶剤等の剥離剤を用いるウエット方式によるものと、剥離剤を全く用いないかあるいは塗布後剥離したワックスが乾燥くずになるドライ方式によるものとがある。
ドライ方式による場合、有害廃液が発生しないことから、一般に環境にやさしいという利点がある。
しかしながら、ドライ剥離を行うものにあっては、剥離に先立って塗布される剥離剤が高価格であるとか、機械的に剥離する機械の初期投資が大であるとか、比較的小面積に対する剥離には適さないなどの問題がある。また、この場合においても剥離によって生じた剥離廃物の廃棄処理が問題となる。また、消石灰の製造時において、剥離廃物を生石灰に混入させる提案もなされているが、この方法は、多量の生石灰を必要とするため一般的な処理法とはなっていない。
【0004】
一方、ウエット方式による場合は、多量にポリマーワックスの剥離廃液が発生することから環境への影響を考慮した処分が大きな問題となっている。
このような環境への影響を考慮して、凝集剤によって廃液中のポリマーをフロック析出し、これを濾過して液体分をできるだけ清浄化して排水するなどの方法の提案がなされている(例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【0005】
しかしながら、清浄化した液体も、固形物の排除はなされるものではあっても必ずしも有害化学物質の排除はなされていないため、BOD(Biochemical Oxygen Demand)により河川にそのまま流すことができない。したがって、産業廃棄物として取り扱うことになりその廃棄費用によるコスト高を来たす。
すなわち、この産業廃棄物の発生は、環境問題とともに、特に、昨今この廃棄委託処理に多大の費用が掛かり、施工者の負担が大きな問題となっている。
【特許文献1】特開2000−301162号公報
【特許文献2】特開2001−276843号公報
【特許文献3】特開2001−212598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、特にポリマーワックスの剥離廃液処理方法にあって、ポリマーと廃液中に含まれる剥離液による成分をも有効に燃料として利用することができるようにして産業廃棄物の全廃を図り、同時にその処理にあって、環境に悪影響を及ぼす有害物質、有害ガスの発生を排除することができるようにしたポリマーワックスの剥離廃液処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法は、剥離剤が混入されたポリマーワックスの剥離廃液に酸を添加して該廃液内にポリマーのみのゲル状半固形化状のポリマー塊を分離析出させる工程と、前記ポリマー塊を前記剥離廃液から抽出する工程と、前記ポリマー塊の抽出によってポリマーが除去された残部廃液にアルカリ溶液を添加する中和処理工程と、該中和処理された前記残部廃液を乾燥して固形物を得る乾燥処理工程とを有し、前記固形物と前記半固形化状ポリマー塊とを固形燃料とする工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記ポリマーワックスの剥離廃液処理方法にあって、前記ポリマーが、金属架橋型スチレンアクリルポリマーであり、前記剥離剤がアミン類であって、これによって前記ポリマーの金属を遊離させて架橋強度を減少させて剥離を生じさせる剥離剤であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ポリマーワックスの剥離廃液処理方法にあって、前記剥離廃液に添加する酸を、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸の内の少なくとも一つとしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記ポリマーワックスの剥離廃液処理方法にあって、前記中和処理のアルカリ溶液を水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムの少なくとも1つとしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記各ポリマーワックスの剥離廃液処理方法にあって、前記固形燃料に他の燃焼材を混合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明の剥離廃液処理方法においては、ポリマーワックスの剥離廃液中から酸の添加によってポリマーを分離抽出すると共に、剥離廃液中の有害な剥離剤中のアミンを塩に変化させることによって無害化する。そして、抽出されたポリマーは、固形燃料として用いる。このポリマーは、床剤の主成分であることから、きわめて多量に抽出されるので、多量の固形燃料が生産されるため、多量の産業廃棄物の発生が回避されることになる。
【0010】
また、本発明においては、ポリマー塊の洗浄水にアルカリ溶液を添加する中和処理を行うことにより、先の酸の添加によって高い酸性を示す廃液を中性もしくはこれに近い酸性とすることができるので、その取り扱いの危険性と共に、この廃液を乾燥しこれより更に固形物を取り出すものであり、これをも燃料とするものであり、この乾燥過程等においても有害なガスの発生が回避されるものである。
【0011】
上述したように、本発明方法によれば、ポリマーワックスのポリマーのみならず、これが除去された剥離廃液からも、有効に固形燃料の製造を行うものであり、しかもその製造過程及び最終残渣物において、有害ガス、有害物質の発生を実質的に皆無とすることができるものである。
したがって、産業廃棄物の発生が回避され、環境にやさしいポリマーワックスの剥離廃液処理がなされるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法の実施の形態を説明するが、本発明は、この実施形態例に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一実施形態例のフロー図である。
この実施の形態例では、例えば床面に塗布されたポリマーワックスの塗り替えにおいて、この床面に塗布されているポリマーワックスの剥離作業の開始から説明するものであるが、本発明は、剥離作業によって発生したポリマーワックスの剥離廃液に対しての処理方法である。
【0014】
まず、剥離作業現場においては、床面に塗布されている床剤のポリマーワックスの剥離作業に先立って、床面清掃を行う(ステップS1)。
次に、アミン類を有する剥離剤によるワックス剥離及び床面洗浄を行う(ステップS2)。
これによってポリマーワックスや剥離剤を含む剥離廃液が発生する。
このポリマーワックスの剥離廃液を、運搬容器例えばいわゆるポリ容器に収容し(ステップS3)、廃液処理現場に運搬する(ステップS4)。
【0015】
この廃液処理現場において、運搬されてきた剥離廃液を攪拌しつつ、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸のうちの少なくとも一つによる酸例えば硫酸を添加して剥離剤のアミンを塩に変化させるとともに、剥離廃液を酸性にする(ステップS5)。
この硫酸の添加によって剥離廃液上層にワックス成分、すなわちポリマーのみのゲル状半固形化状のポリマー塊が分離析出される。このポリマー塊を剥離廃液から抽出する(ステップS6)。このようにしてポリマーと残部廃液とを分離する。
【0016】
そして、この実施の形態例においては、このポリマーワックスの剥離廃液から抽出したポリマー塊を清浄水で水洗浄する(ステップS7)。
そして、このステップS7のポリマー洗浄によって生じた洗浄水と、ステップS6でポリマーが抽出されて得た上記残部廃液にアルカリ液を添加して中和処理を行う(ステップS8)。
この中和処理によって、廃液をほぼ中性ないしは弱酸性とする。
次に、中和処理された廃液を乾燥、例えば送風乾燥する(ステップS9)。そして、この乾燥によって生じた固形物と、先の洗浄されたポリマーに、燃焼助成材混合し(ステップS10)固形燃料を得る。
【0017】
以下、上述した本発明の剥離廃液処理方法の実施の形態例をさらに詳細に説明する。
図1におけるステップS1の床面清掃は、掃除機等によって塵埃等を排除する工程である。
ステップS2におけるワックス剥離作業は、ステップS1において床面から塵埃等除去されて清浄化された床面にワックスを剥離する剥離剤を塗布する工程である。
この剥離剤は、アミン類を有する剥離剤、例えば2−アミノ−エタノール、あるいは2−アミノ−プロパノールなどのアミン類15%〜25%、アルコール60%、及び残部水から形成されている。この剥離剤によってワックス材を構成する例えば亜鉛架橋型のスチレンアクリルポリマーと、架橋金属の例えば亜鉛Znを遊離させて架橋強度を減少させて剥離を生じさせる。
【0018】
その後、例えば更に水を床面に散布し、例えばスクイジー及びバキュームを用いてポリマーワックスが剥離された剥離廃液を回収する、このようにして剥離廃液が発生する。
この回収された剥離廃液は、上述のポリマーと剥離剤とを含む廃液である。
この廃液は、例えば床面積70m〜80mに対するワックス剥離作業で、約20[l](リットル)を発生する。この廃液は例えばpH11〜pH14程度の強いアルカリ性を示している。
【0019】
この剥離廃液は、図1に示すステップS3及びS4によって廃液処理現場に運び込まれる。
そして、図1のステップS5で説明したように、廃液処理現場において、剥離廃液を拌しつつ、酸、例えば硫酸、塩酸、硝酸、酢酸の少なくとも1種の酸を添加する。例えば、濃度が35[g/l]の硫酸を例えば0.7[l]添加する。このようにすると、廃液の上層に、ゲル状の半固形化状のポリマー塊が瞬時に析出される。これにより、剥離剤のアミンが化学反応によって塩、例えばアミンの硫酸塩と水とになる。
そして、ステップS6において、この廃液から塊状のポリマーが抽出される。ここで抽出されるポリマーは塊状であることから、この抽出はきわめて容易に行うことができる。
このポリマー塊の抽出によって、ポリマー(すなわちワックス成分)と残部の廃液とが分離される。
【0020】
ステップS6で抽出されたポリマーは、ステップS7において例えば5[l]の水で洗浄される。この洗浄によって、ポリマー塊に付着されている不要成分洗浄後の洗浄水とステップS6のポリマー抽出によって発生した残部廃液とが例えば同一槽内に収容される。この洗浄水を含む約25[l]の廃液は、pHが2程度の強い酸性となっている。
【0021】
ステップS7でポリマー洗浄された洗浄水とステップS6のポリマー抽出後の廃液はステップS8に示されるように中和処理がなされる。この中和処理は、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム等のいずれか少なくとも1種、例えば水酸化ナトリウムの添加によってなされ、これによってほぼ中性例えばやや酸性のpH6とされる。このようにして強い酸性を示した廃液が中性もしくは弱酸とされるため、危険性が排除されて環境に優しい廃液となる。
【0022】
次に、ステップS8において、中和処理がなされた廃液は、ステップS9で送風乾燥されてその液体成分が排除されて固形物が得られる。このステップS8の乾燥処理は、沸騰が生じない程度の加温下によって行うこともできる。
上述したように、ステップS5で硫酸が添加され、ステップS8で例えば水酸化ナトリウムが添加されて取り出される固形物は、ナトリウムの硫酸塩を主成分とすることが確認されている。そして、洗浄水を含む約25[l]の廃液に対して88g(3.5g/[l])の固形物が取り出されたことが確認された。
【0023】
この固形物とステップS6で分離抽出されたポリマーとで固形燃料が形成される。この固形燃料は、ポリマーが気化することによって燃焼するため、燃焼助成剤として、例えば可燃性にすぐれた紙、おがくず等を混合して用いられると、より効果的な固形燃料となる。
また、この固形燃料は、切断することによって任意の小片形状のチップ、つまり燃焼しやすい形状にして利用することができる。
【0024】
上述した本発明の剥離廃液処理方法においては、上述した廃液に対する乾燥処理においても環境に問題となる程度のガスや物質が発生しないことが確認されている。
【0025】
すなわち、上述した廃液の送風乾燥において、放出される気体の大気汚染については、環境計量証明事業登録、群馬県知事第7号、(株)群馬分析センターに依頼した結果、硫黄酸化物の基準が9v/vppmであるところ、計量方法JIS K 0103 7.1で0.00v/vppmであった。
また、窒素酸化物測定については、基準が250cmv/mであるところ計量方法JIS K 0104 5.4で10cmv/m未満の7.96cmv/mと8.95cmv/mであった。つまり、本発明の剥離廃液処理方法においては、放出ガスによる大気汚染も全く問題がないことが確認された。
【0026】
また、上述した廃液1000ccを乾燥させて生じた固形物を焼却したところ、15g〜20gという微量の灰が残った。
この灰の成分の分析を群馬県立産業技術センターに依頼した結果は、図2のとおりであった。
この図2に示されているNo3の硫黄SとNo5のナトリウムNaは、前記硫酸の添加と水酸化ナトリウムの添加によって生じたものであり、No6の亜鉛Zは、金属架橋型ポリマーワックスによるものである。そして、焼却によって残された灰は、環境基準よりも十分に少ないため、このまま棄却しても全く問題にならない量であった。しかし、これを1200℃〜1300℃で熱処理すると安山岩に似た人工骨材ができるので、これを建材としての利用することも可能である。
【0027】
なお、ステップS5及びS8において、硫酸以外の他の酸及びアルカリ液を用いた場合においてもそれぞれアミン、カリウム、亜鉛、カルシウム等の塩が形成されるが、いずれにおいても有害ガスの発生が回避された。
また、添加する酸として、複数の酸を混合することができ、例えば硫酸と酢酸とをもちいるときは、ポリマー塊の分離析出速度を速めることができた。
【0028】
上述したように、本発明の剥離廃液処理方法によって得た固形燃料は、例えば廃棄プラスチックを燃料としている各種製造工場(例えば製紙工場等)や、いわゆる廃プラ発電所等の燃料として有効である。
【0029】
次に、上述した本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法を実施する処理装置、特に、ステップS9の送風乾燥を実施する送風乾燥装置を例示説明する。図3は、この送風乾燥機100の一例の断面を示す概略側面図である。
この送風乾燥機100は、風洞を構成する外囲器101を有し、複数のトレイ102を保持するトレイ保持棚103を外囲器101内に出入することができるように構成されている。
トレイ保持棚103は、上述したポリマーが取り除かれた廃液、例えばポリマーの洗浄水を含む廃液110が収容されるトレイ102が複数段に配置されている。そして、それぞれトレイ102は、所要の狭間隔を保持して水平に保持されるようになっている。
【0030】
外囲器101内には、その内部に配置されたトレイ保持棚103を挟んで一方に送風機104が配置され、他方に送風排出筒105が配置されている。この排出筒105の底部側面にはトレイ102を通過して到来する送風を、排出筒105に送風する送風の吸込口106が設けられる。また、排出筒105の底部には吸込口106に対向して傾斜規制体107が設けられ、良好に送風が排出筒105の上端の開口105aから外部に送出されるようになされる。
【0031】
図4は、トレイ保持棚(図示せず)によって保持された複数のトレイ102の配置関係を示した概略断面図である。
【0032】
トレイ102は、底が浅く形成され、かつ上面開口が広面積を有する例えば深さ5cm、幅×横が50cm×60cmの形状とされる。そして、その周壁102Wは、底面に対する角度ができるだけ45°に近い傾きをもって立ち上がる形状とされる。
各トレイ102には、トレイ保持棚103の最下段に配置されるトレイ102を除いて各底面に貫通孔108が設けられ、この貫通孔108の周縁には、廃液110が通過しないように上方に突出して形成された液密の筒状堰堤109が設けられる。
また、各貫通孔108の配置位置は、上下に隣接するトレイ102に関してその貫通孔108が重なることがないように、図示されるように互いに左側と右側に位置するように配置される。なお、堰堤109の高さは、各トレイ102に収容する廃液の深さに相当する高さに設定される。
【0033】
このような複数のトレイの配置において、最上段のトレイ102に矢印aに示すように、乾燥がなされる廃液110を、貫通孔108上以外において流し込む。このとき、堰堤109によって廃液110が貫通孔108に流れこむことが阻止される。そして、その廃液110の量が堰堤109の高さを越えたとき、貫通孔108を通じて下段のトレイ102に廃液が流れ込む。この繰り返しによって、各トレイ102にそれぞれ堰堤109の高さによって規定された厚さ(深さ)をもって、廃液が注入される。
【0034】
このようにしてそれぞれ廃液が注入されたトレイ102を保持したトレイ保持棚103を、図3に示すように、外囲器101内の所定位置に配置し、送風機104から上述した送風を行って、各トレイ102内の廃液110の液体を気化させる。
また、ここでは図示されていない加熱手段を設けて廃液を温めることができるが、沸騰させるような高温加熱は回避されなければならない。
【0035】
この送風乾燥に際しては、送風が廃液面に45°で入射することが望ましいので、トレイ102間の間隙も狭小に選定され、このようにすることによって、能率の良い乾燥が生じることが確認された。このため周壁102Wの少なくとも送風の入射側、すなわち図示の例では送風機104が配置された側の傾きθを45°もしくはこれにできるだけ近い角度に選定する。
このようにして、廃液110の乾燥がなされると、各トレイ102の底面には廃液110の固形物の残渣が生じることになる。
このようにして得た固形物は、図1のフロー図で説明したように、先に抽出したポリマーと共に例えばステップS10を経て固形燃料とされる。
【0036】
なお、上述した例では、廃液を送風乾燥した場合であるが、上述したように、本発明においては、環境に問題が生じるガスが放出されるおそれがないことから上述した例に限定されず、種々の乾燥手段例えば除湿機等を用いることができる。
【0037】
上述したように本発明方法によれば、ポリマーワックスの剥離廃液の処理において、多量に発生するポリマー成分を廃液から純粋の塊状として分離することによって、これを燃料として用いることができるようにして、産業廃棄物となることを全廃したことから、環境上大きな利益をもたらすことができる。
さらに、昨今、益々産業廃棄物の処分費用の高騰化している状況にあって、簡単な方法で無害化し、有価燃料として生産することができるので、床剤剥離の施行業者の経済的負担を経済的利益に転換することができる。
そして、その燃料化処理において、有毒ガスの発生も回避ないしは、環境汚染を来たす基準値より充分低くできたことから、この有毒ガス排除のための装置を設けるなどの経済的負担、装置の簡易化が図られるなど多くの利益をもたらすことになる。
【0038】
また、本発明方法によれば、高価格な凝集剤を用いることがなく、また、ポリマー成分のみをポリマー塊として取り出すことから、従来におけるようにポリマーのフロックを生成してこれを濾過するという方法による場合に比して格段的に作業性の向上と、毎回濾過のための布等を用意するという時間的、費用的負担の格段的軽減が図られる。
因みに、現在、従来のこの方法による場合、20[l]の剥離廃液において、
凝集剤が、700〜2600円、
濾過の布地が、90円、
産業廃棄物処分費が、90円(キログラム当たり45円)
であるが、本発明方法によれば、これら費用が割愛されることによって多量に発生するワックス剥離廃液の処理費用の減少が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一例のフローを示す図である。
【図2】本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法における廃液の乾燥固形物の燃焼灰の組成の分析結果を示す表図である。
【図3】本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法における廃液の送風乾燥機の一例の概略断面図である。
【図4】本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法における廃液の送風乾燥におけるトレイの配置関係の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
100……送風乾燥機、101……外囲器、102……トレイ、102W……周壁、103……トレイ保持棚、104……送風機、105……送風排出筒、105a……開口、106……吸込口、107……傾斜規制板、108……貫通孔、109……堰堤、110……廃液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離剤が混入されたポリマーワックスの剥離廃液に酸を添加して該廃液内にポリマーのみのゲル状半固形化状のポリマー塊を分離析出させる工程と、
前記ポリマー塊を前記剥離廃液から抽出する工程と、
前記ポリマー塊の抽出によってポリマーが除去された残部廃液にアルカリ溶液を添加する中和処理工程と、
該中和処理された前記残部廃液を乾燥して固形物を得る乾燥処理工程とを有し、
前記固形物と前記半固形化状ポリマー塊とを固形燃料とする工程とを有することを特徴とするポリマーワックスの剥離廃液処理方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、金属架橋型スチレンアクリルポリマーであり、
前記剥離剤がアミン類であって、前記ポリマーワックスの剥離が、前記金属を遊離させることによる架橋強度を減少させて剥離を生じさせる剥離剤であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーワックスの剥離廃液処理方法。
【請求項3】
前記剥離廃液に添加する酸を、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸のうちの少なくとも一つとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーワックスの剥離廃液処理方法。
【請求項4】
前記中和処理のアルカリ溶液を水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムの少なくとも1つとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーワックスの剥離廃液処理方法。
【請求項5】
前記固形燃料に燃焼助成材を混合させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーワックスの剥離廃液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277455(P2007−277455A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107507(P2006−107507)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(504288591)株式会社グンビル (5)
【Fターム(参考)】