説明

ポリマーワックスの剥離廃液処理方法

【課題】産業廃棄物の全廃を図ることが可能なポリマーワックスの剥離廃液処理方法を提供する。
【解決手段】ポリマーワックスの剥離廃液に酸を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、ポリマー塊を抽出し、剥離廃液をポリマー塊と一次処理水とに分離する分離抽出工程と、一次処理水にアルカリを加える中和処理工程と、一次処理水を固形分と二次処理水とに分離する脱水処理工程と、二次処理水に活性汚泥を混合する生物処理工程とによりポリマーワックスの剥離廃液を処理する。生物処理工程で使用する活性汚泥として、二次処理水中で培養を行うことにより馴致された活性汚泥を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物の発生、有害物質の発生等を実質的に排除することができるようにしたポリマーワックスの剥離廃液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床面には、その保護、美観等の目的をもって、多くの場合、その床剤としてポリマーワックスが塗布される。
この塗布された床剤としてのポリマーワックスは、塵埃の付着、機械的擦傷、磨耗等によって損耗し、その機能、美観が低下することから、通常、定期的に塗り替えがなされる。この塗り替えに当たっては、まず、すでに塗られているポリマーワックスを剥離することが必要であり、上述した定期的な塗り替えによって、多量のポリマーワックスの剥離廃液が発生する。
【0003】
このポリマーワックスの剥離廃液の処理方法として、ポリマーと廃液中に含まれる剥離液による成分をも有効に燃料として利用することができるようにして産業廃棄物の全廃を図り、同時にその処理にあって、環境に悪影響を及ぼす有害物質の発生を排除することができるようにしたポリマーワックスの剥離廃液処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−207128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のポリマーワックスの剥離廃液処理方法においても、固形物の排除はされていても、必ずしも有害化学物質の全廃はなされていない。このため、排水のBOD(Biochemical Oxygen Demand)が大きく河川にそのまま流すことができない。従って、ポリマーワックスを処理した後の廃液も産業廃棄物として取り扱うことになり、その廃棄費用によるコスト高を来たす。
すなわち、この産業廃棄物の発生は、環境問題とともに、特に、昨今この廃棄委託処理に多大の費用が掛かり、このための施工者の負担が大きな問題となっている。
【0006】
本発明においては、ポリマーワックスの剥離廃液処理方法にあって、ポリマーと廃液中に含まれる剥離液による成分をも有効に燃料として利用することができるようにして産業廃棄物の全廃を図り、同時にその処理にあって、環境に悪影響を及ぼす有害物質の発生を排除することができるようにしたポリマーワックスの剥離廃液処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるポリマーワックスの剥離廃液の処理方法は、ポリマーワックスの剥離廃液に酸を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、ポリマー塊を抽出し、剥離廃液をポリマー塊と一次処理水とに分離する分離抽出工程と、一次処理水にアルカリを加える中和処理工程と、中和処理した一次処理水を固形分と二次処理水とに分離する脱水処理工程と、二次処理水に活性汚泥を混合する生物処理工程とを有する。そして、生物処理工程で使用する活性汚泥として、二次処理水中で培養を行うことにより馴致された活性汚泥を使用することを特徴とする。
【0008】
本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法によれば、二次処理水で馴致した活性汚泥を用いて生物処理をおこなうことにより、活性汚泥中で優性菌が増殖し、二次処理水の生物処理に適した活性汚泥となる。そして、この馴致された活性汚泥を用いて二次処理水の生物処理を行うことにより、短時間で排水の浄化が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明の剥離廃液処理方法においては、ポリマーワックスの剥離廃液中から酸の添加によってポリマーを分離抽出する。そして、抽出されたポリマーは、固形燃料として用いる。このポリマーは、床剤の主成分であることから、きわめて多量に抽出されるので、多量の固形燃料が生産されるため、多量の産業廃棄物の発生が回避されることになる。
【0010】
また、本発明方法によれば、活性汚泥を用いた生物処理を行うことにより、二次処理水のBODを、河川に放流できる数値、例えば、群馬県の排水基準のBOD60mg/L以下まで低下させることができる。このとき、二次処理水に加水する必要がないため、二次処理水の量が増加しない。このため、活性汚泥法により処理する二次処理水の量が増加しないため、活性汚泥法により処理するための装置を小さくすることが可能であり、処理コストを大幅に低下させることができる。
【0011】
上述したように、本発明方法によれば、ポリマーワックスのポリマーのみならず、これが除去された剥離廃液からも、有効に固形燃料の製造を行うことができ、しかもその製造過程及び最終残渣物において、排水中のBOD、COD、SS等を河川への排水基準値以下に低下させることができる。
従って、産業廃棄物の発生が回避され、環境にやさしいポリマーワックスの剥離廃液処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一実施形態例のフロー図である。
【図2】本発明のポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一実施形態例で使用する真空乾燥装置の概略構成図である。
【図3】本発明のポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一実施形態例で使用する間接加熱方式の乾燥装置の概略構成図である。
【図4】本発明のポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一実施形態例で使用する活性汚泥処理を行う処理装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法の一実施形態例のフロー図である。
【0014】
この実施の形態は、例えば床面に塗布されたポリマーワックスの塗り替えにおいて、ポリマーワックスの剥離作業によって発生した剥離廃液に対する処理方法である。
【0015】
まず、床面に塗布されているポリマーワックスを、アミン類などの剥離剤により剥離する。ポリマーワックスを剥離した際に、ポリマーワックス及び剥離剤を含む、ポリマーワックスの剥離廃液が発生する。
【0016】
この剥離廃液に対して、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、いわゆるブレンステッド酸を混合する凝集処理を行う(ステップS1)。この工程により、剥離廃液が酸性になる。剥離廃液に酸を混合することにより、剥離廃液上層にワックス成分、すなわち半固形化状のポリマー塊を分離析出する。
析出したポリマー塊を抽出し、剥離廃液を、ポリマー塊と一次処理水とに分離する(ステップS2)。また、抽出したポリマー塊を水で洗浄し、洗浄に使用した水を、再び一次処理水に加えてもよい。
【0017】
上述の一次処理水にアルカリを混合することで、一次処理水を中和する(ステップS3)。ポリマー塊を分離抽出する工程において、一次処理水に過剰な酸を加える必要があるため、一次処理水が酸性になる。この酸性の一次処理水にアルカリを加えることにより、一次処理水をほぼ中性、又は、弱酸性にする。
【0018】
次に、中和処理した一次処理水に、脱水処理を行う(ステップS4)。脱水処理工程は、吸収材を混合した一次処理水から、固形分以外を気化させることにより行う。
脱水処理により、一次処理水中に残存しているポリマー等の固形分を、一次処理水中から完全に分離する。そして、吸収材と共に、ポリマー塊を一次処理水から抽出する。この工程により、一次処理水をポリマー塊と吸収材とからなる混合物と、二次処理水とに分離する。
【0019】
ステップS2の分離抽出工程により得られたポリマー塊に、ステップS4の脱水処理工程において得られたポリマー塊を加えて混合する(ステップS5)。この工程により、ポリマーワックスの剥離廃液から固形燃料を製造することができる。
脱水処理工程において、中和した一次処理水に吸収材を混合している場合には、脱水処理工程において得られたポリマー塊と吸収材との混合物を、ステップS2の分離抽出工程により得られたポリマー塊に混合する。
【0020】
また、ステップS4の脱水処理で得られた二次処理水を、生物処理、例えば活性汚泥法による処理を行う(ステップS6)。二次処理水には、水以外にも一次処理水に含まれている、例えば有機物等、水とともに気化する成分が含まれている。このため、二次処理水のBODは基準値以上に大きい。従って、二次処理水をそのまま下水や河川に排出することができない。
そこで、二次処理水に生物処理を行うことにより、二次処理水に含まれる、有機物等の汚染物質を分解、除去する。二次処理水のBOD、COD等を基準値以下とし、二次処理水を下水や河川に排出可能にする。
【0021】
また、必要に応じて、上述の生物処理(活性汚泥処理)に加えてオゾン処理を行う(ステップS7)。オゾン処理を行うことにより、上述の生物処理で分解除去できなかった物質を、分解することができる。このため、二次処理水をより清浄化することができる。
【0022】
上述した本発明の剥離廃液処理方法の実施の形態例をさらに詳細に説明する。
まず、床面に塗布されているポリマーワックスの剥離作業は、例えば、床面に塗工されているワックスの表面を、掃除機等によって塵埃等を排除し、ワックスを剥離する剥離剤を塗布する工程である。剥離剤としては、例えば、アミン類、アルコール類、エーテル類、及び、水等を含む組成物を用いる。そして、剥離剤を塗布した後に剥離作業を行い、例えばスクイジー及びバキュームを用いて剥離剤により剥離されたポリマーワックスを含む剥離廃液を回収する。この剥離廃液は例えばpH11〜pH12.5程度の強いアルカリ性を示している。
【0023】
上述の剥離廃液には、図1のステップS1で説明したように、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸から選ばれる少なくとも1種の酸(ブレンステッド酸)を混合する。酸を混合することにより、剥離廃液の上層に、ゲル状の半固形化状のポリマー塊が瞬時に析出される。このように、剥離剤に含まれるアミンが、酸と反応することにより、ポリマー塊が塩として発生する。
次に、ステップS2において、剥離廃液から、ポリマー塊を分離抽出する。そして、このポリマー塊の抽出によって、剥離廃液を、ポリマーワックス及び剥離剤等からなるポリマー塊と、剥離廃液からポリマー塊を取り除いた後の一次処理水とに分離する。
一次処理水は、例えば、pHが2〜6.1程度の酸性を示す。
【0024】
なお、ステップS2で抽出したポリマーは、ポリマー塊に付着している不要成分を洗浄するために、水等により洗浄する。そして、このポリマー塊の洗浄に用いた水を、上述の一次処理水に加えてもよい。
【0025】
上述の一次処理水は、ステップS3に示すように、アルカリを混合して、中和処理を行う。この中和処理に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム等である。そして、アルカリの混合により、一次処理水を中性、又は、例えばpH6程度の弱酸性にする。このようにして強い酸性を示す一次処理水を、中性もしくは弱酸とすることにより、一次処理水の危険性を低下することができ、後工程において取り扱いが容易になる。
【0026】
次に、中和処理を行った一次処理水は、ステップS4において脱水処理を行う。
一次処理水には、上述のポリマー塊の分離抽出工程において、分離抽出されなかったポリマーワックス成分や剥離剤等の残留物が含まれている。このため、一次処理水から、これらの残留物等を分離除去する必要がある。脱水処理工程では、一次処理水を気化させることにより、ポリマーワックス成分や剥離剤等の固形分を主成分とする残留物と、水等の気化成分とに分離する。また、脱水処理により気化した成分を凝縮することにより、二次処理水が得られる。
【0027】
なお、中和処理した一次処理水を上述のステップS4において脱水処理した後、残留物に吸収剤を混合することができる。また、上述の脱水処理工程において、中和処理した一次処理水に吸収材を混合した後、脱水処理を行うこともできる。吸収材としては、廃液内に含まれる水分やポリマーを吸収することができるものが好ましい。さらに、可燃性であり、混合しやすい粒状や粉末状等の形状であることが好ましい。
吸収材としては、例えば、おがくず、籾殻、蕎麦殻、椰子殻、紙、糸、毛等の繊維、果物、ワイン、酒、焼酎、大豆、おから、ビール、油、さとうだいこん、サトウキビ等食品の搾りかす、かつおや昆布のだしがら、こんにゃく飛粉、ナッツ類の殻、活性炭等を使用することができる。これらの例示する吸収材は、通常、廃棄物として大量に処分されているものであるため、吸収材に費やすコストを削減することができる。
【0028】
そして、吸収材が混合された一次処理水は、例えば、真空乾燥や、間接加熱方式等の方法により脱水処理され、一次処理水から気化成分が分離される。気化成分を分離することにより、一次処理水に含まれる固形分等の残留物と、吸収材との混合物が得られる。
また、ステップS4の脱水処理により分離する一次処理水に含まれる気化成分は、熱交換器、コンデンサ等によって凝縮することにより、再び液体(二次処理水)として回収することができる。
【0029】
上述の脱水処理により得られる残留物、又は、残留物と吸収材との混合物は、ステップS2で分離抽出されたポリマー塊とを、ステップS5において混合することにより固形燃料を製造することができる。この固形燃料は、ポリマーが気化することによって燃焼する。このため、ステップS4の脱水処理工程において可燃性の吸収材を混合した場合には、この吸収材が燃焼助成剤として作用するため、効果的な固形燃料となる。また、燃焼助成剤として、例えば、可燃性に優れた紙、おがくず等をさらに固形燃料に混合することによって、より効果的な固形燃料となる。また、この固形燃料は、切断、成形加工することにより、任意の小片形状のチップ等の燃焼しやすい形状としてもよい。
【0030】
次に、ステップS4の脱水処理において得られる二次処理水には、剥離廃液や、剥離廃液を処理するための各種物質、例えば、亜鉛、エチレングリコールモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、2−アミノエタノール等が含まれている。このため、二次処理水は、BOD及びCODの数値が高く、そのまま河川や下水に排出できない。そこで、ステップS6において、二次処理水に活性汚泥を用いた生物処理を行うことで、河川に排出できるレベルまで、排水のBOD、CODを低下させる。
生物処理では、あらかじめ二次処理水に馴致させた活性汚泥を用いて、爆気式の浄化槽で浄化処理する。このことにより、河川に排出できるレベルまで、二次処理水のBOD、CODを低下させる。
【0031】
上述の活性汚泥の馴致方法について説明する。
例えば、活性汚泥を1000〜3000mg/L含む水を準備し、この活性汚泥に二次処理水を等量混合する。そして、混合した二次処理水と活性汚泥とを、散気管を備えるばっ気槽において好気運転と嫌気運転とを繰り返す。この状態を約10日以上、例えば12〜14日間保持することにより、活性汚泥中で優性菌が増殖し、二次処理水の処理能力に優れる活性汚泥となる。
このように、二次処理水に馴致させた活性汚泥を用いることにより、24〜48時間程度の生物処理により、で二次処理水のBOD及びCODを河川に放流できる排水基準値以下に低下させることができる。
【0032】
また、生物処理した二次処理水に必要に応じて、ステップS7においてオゾン処理を行う。例えば、生物処理後の二次処理水の色度が高い場合には、オゾン処理を行うことにより、二次処理水の色度を低下させることができる。このとき、色度に加え、生物処理で分解除去できなかった物質を分解することができるため、生物処理した二次処理水のCODを低下させることができる。
【0033】
上述した本実施の形態例の剥離廃液処理方法においては、ポリマーワックスの剥離廃液中から酸の添加によってポリマーを分離抽出することができる。そして、抽出されたポリマーは、固形燃料として用いることができる。
上述の剥離廃液処理方法によって得た固形燃料は、例えば廃棄プラスチックを燃料としている各種製造工場(例えば製紙工場等)や、いわゆる廃プラ発電所等の燃料として有効である。
【0034】
さらに、剥離廃液から固形分を分離した二次処理水を活性汚泥法により処理することにより、河川に排出できる程度まで、排水のBOD及びCODを低下させることができる。このため、生物処理した二次処理水を河川等に排出することができる。
従って、上述の方法によれば、有害物質、環境負荷物質を排出せずに、ポリマーワックスの剥離廃液を処理することができる。また、産業廃棄物の廃棄委託処理が不要になるため、処理費用の負担をなくすことができる。
【0035】
次に、上述した本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法において、ステップS3の脱水処理で使用する乾燥装置を例示説明する。
乾燥装置としては、例えば図2に示す真空乾燥装置や、図3に示す間接加熱方式による乾燥装置が挙げられる。
なお、例示する真空乾燥装置、間接加熱方式による乾燥装置以外にも、例えば、蒸留装置、マグネトロン乾燥装置等のその他の乾燥方法、乾燥装置を用いることもできる。
例えば、加熱系の乾燥処理としては、対流伝熱を用いた通気式箱形乾燥装置、バンド乾燥装置、回転乾燥装置、流動層乾燥装置、又は、気流乾燥装置を用いることができる。また、導電伝熱を用いた凍結乾燥装置、円筒乾燥装置、又は、水蒸気加熱管束回転乾燥装置を用いることができる。また、輻射伝熱を用いた赤外線ランプやニクロムヒータ等の輻射源を用いた乾燥装置、内部発熱を用いたマイクロ波等の高周波の電磁波を用いた乾燥装置等を用いることができる。
非加熱系の乾燥処理としては、真空乾燥、遠心乾燥、超音波乾燥、吸引乾燥、又は、加圧乾燥等を用いることができる。
また、上記の乾燥方法及び乾燥装置を組み合わせた複合型の乾燥装置を用いることができる。
【0036】
図2は、ステップS4における脱水処理に用いる乾燥装置の一例として、真空乾燥装置の概略構成を示す図である。
図2に示す真空乾燥装置には、一次処理水を脱水処理するための加熱乾燥機10が水平状態で設置されている。この加熱乾燥機10の外周部12は二重構造を有する。また、加熱乾燥機10には、一方の面の中心部を貫通して回転軸14が設けられている。この回転軸14は、図示しない駆動源と接続されて、正逆に回転可能な構造である。
【0037】
加熱乾燥機10の上部には、一次処理水や吸収材を投入するためのホッパ15が設けられている。このホッパ15の開口部には、圧力蓋16が開閉可能に設けられている。加熱乾燥機10の外周部12の二重構造内には、ボイラ30から配管41を通して加熱水蒸気を供給される構造となっている。また、回転軸14は、配管41及び回転軸14の端部に接続されたロータリージョイント18を通して、加熱水蒸気が供給される構造となっている。
【0038】
また、外周部12及び回転軸14のロータリージョイント18には、供給された加熱水蒸気を排出するためのドレーン配管42が接続され、加熱水蒸気が加熱乾燥機10の外部に排出される構造である。
【0039】
また、図2に示すように、加熱乾燥機10は、ホッパ15の側面に配管43が接続されている。配管43は、サイクロン21を経由して熱交換器23に接続されている。熱交換器23には、冷却水の循環ライン22が設けられ、熱交換器23の内部を通過する加熱乾燥器10からの排気を冷却するための冷却水が供給される。冷却水の循環ライン22は、冷却ヒータ27を備える冷水槽24、熱交換器23から排出される冷却水を冷却するためクーリングタワー28、及び、循環ライン22を駆動するためのポンプ29を備える。
【0040】
また、熱交換器23は、除湿管44を通してレシーバタンク25に接続されている。レシーバタンク25には、真空ポンプ26が接続されている。そして、真空ポンプ26により、レシーバタンク25内の排気を行うとともに、除湿管44、及び、配管43を通して、加熱乾燥器10の内部を、減圧することができる構造である。レシーバタンク25にはブロー配管48が設けられ、レシーバタンク25内に蓄えられた水が、ブロー配管48によりオーバーフローされる構成である。
【0041】
次に、図2に示す真空乾燥装置を用いた一次処理水の脱水処理について説明する。
まず、一次処理水を加熱乾燥器10内に投入する。そして、回転軸14と接続された、図示していない駆動部によって、回転軸14を回転し、投入された一次処理水を撹拌、混合する。また、この工程では、一次処理水を加熱乾燥器10内に投入する際、一次処理水に吸収材を混合することが好ましい。吸収材を加えることにより、乾燥装置内での撹拌の際に、一次処理水の発泡を抑え、一次処理水の発泡による真空度の低下を抑えることができる。
【0042】
次に、ボイラ30から配管41を通して、加熱水蒸気を加熱乾燥器10の外周部12及び回転軸14内に導入する。これにより、加熱容器内に投入されている一次処理水及び吸収材を撹拌しながら加熱し、80℃程度まで温度を上昇させる。
【0043】
次に、真空ポンプ26を駆動して、加熱乾燥器10及びレシーバタンク25を減圧し、加熱乾燥機10内部の真空度を−0.1MPa程度まで低下させる。そして、加熱乾燥機10内の圧力を低下させ、さらに、一次処理水を加熱することにより、一次処理水の成分の一部を気化させる。真空ポンプ26で加熱乾燥器10内を吸引しているため、発生する気化成分は、配管43を通じて加熱乾燥機10の外へ排気される。
【0044】
そして、加熱乾燥器10内から気化成分に混ざって排気される一次処理水に含まれる固形分や吸収材等を、サイクロン21によって分離する。分離された固形分や吸収材等は、乾燥器内の固形分及び吸収材等と共に上述のステップS5での混合により固形燃料となる。
【0045】
次に、加熱乾燥機10から排出された蒸気は、配管43を通り、熱交換器23に導入される。熱交換機23は、熱交換機23内部を通過する加熱乾燥器10からの排気を、冷却水と熱交換させることで冷却する。そして、加熱乾燥器10からの排気を冷却することにより、加熱乾燥器10内で気化した成分を凝縮、液化させて気化成分が二次処理水を得る。
二次処理水は、除湿管44を通り、レシーバタンク25に送られる。そして、レシーバタンク25内に蓄えられ、ブロー配管48により、オーバーフローされる。
【0046】
また、加熱乾燥機10内に投入された一次処理水及び吸収材において、一次処理水から蒸発成分が分離されるまで上述の真空乾燥を行うことにより、一次処理水から固形分と蒸発成分とを分離させて、固形分のみを乾燥機内に残存させることができる。このため、加熱乾燥機内には、固形分と共に吸収材が残存する。そして、固形分及び吸収材を、図1のフロー図で説明したように、ステップS2において抽出したポリマー塊に、ステップS5において混合し固形燃料となる。
【0047】
次に、図3に間接加熱方式による乾燥装置の概略構成図を示す。
図3に示す乾燥装置は、一次処理水を脱水処理するための蒸留塔30、蒸留塔30内の一次処理水を加熱するヒータ油を供給するオイルバス31、蒸留塔から排気を凝縮して二次処理水を得るコンデンサ33、及び、二次処理水を蓄えるレシーバタンク34が設置されている。
【0048】
蒸留塔30とオイルバス31との間には、オイルバス31において加熱されたヒータ油が蒸留塔30に供給される配管46と、蒸留塔30からヒータ油が排出される配管45が接続されている。また、蒸留塔30内には、配管45及び配管46に接続され、ヒータ油が蒸留塔30内の一次処理水と熱交換する部分である配管47が設けられている。
【0049】
また、オイルバス31内には、ヒータ油を加熱するためのヒータ37が設けられている。蒸留塔30とオイルバス31との間の配管46には循環ポンプ35が備えられ、循環ポンプ35を駆動することにより、ヒータ油がオイルバス31内で加熱され、配管45,46,47を循環する構成である。
【0050】
蒸留塔30の上部には、配管49が接続されている。配管49は、サイクロン32及びコンデンサ33を介し、レシーバタンク34に接続されている。コンデンサ33には、図示しない冷却水供給ラインから冷却水が供給され、コンデンサ33内に導入される蒸留塔30からの排気を冷却する。
【0051】
また、配管49はコンデンサ33を通してレシーバタンク34に接続されている。レシーバタンク34には、真空ポンプ36が接続されている。そして、真空ポンプ36により、レシーバタンク34内の排気を行うとともに、配管49を通して、蒸留塔30の内部を減圧することができる構造である。レシーバタンク34にはブロー配管48が設けられ、レシーバタンク34内に蓄えられた水が、ブロー配管48によりオーバーフローされる構成である。
【0052】
次に、図3に示す間接加熱方式による乾燥装置を用いた一次処理水の脱水処理について説明する。
まず、一次処理水を蒸留塔30内に投入する。
また、オイルバス31内のヒータ油を、所定の温度までヒータ37により加熱する。そして、循環ポンプ35を駆動することにより、オイルバス31内のヒータ油を配管46を通して蒸留塔30内の配管47に供給する。
また、真空ポンプ36を駆動することにより、蒸留塔30及びレシーバタンク34内を減圧する。
このように、蒸留塔30内の一次処理水をヒータ油で加熱し、さらに、蒸留塔30内の圧力を低下することにより、一次処理水に含まれる気化成分が気化する。蒸留塔30内を真空ポンプ36で吸引しているため、発生する気化成分は配管48により蒸留塔30の外部へ排気される。
【0053】
蒸留塔30からの排気に混ざっている一次処理水に含まれる残留物を、サイクロン32によって分離する。分離された残留物に吸収材等を加え、上述のステップS5での混合により、固形燃料となる。
【0054】
次に、蒸留塔30から排出された蒸気は、配管49を通り、コンデンサ32に導入される。コンデンサ32は、内部を通過する蒸留塔30からの排気を、冷却水と熱交換させることで冷却する。そして、蒸留塔30からの排気を冷却することにより、加熱乾燥器10内で気化した成分を凝縮、液化させて気化成分が二次処理水となる。
二次処理水は、配管48を通り、レシーバタンク34に送られる。そして、レシーバタンク34内に蓄えられ、ブロー配管により、オーバーフローされる。
【0055】
(生物処理装置の説明)
次に、上述した本発明によるポリマーワックスの剥離廃液処理方法において、ステップS6における活性汚泥を用いた生物処理について説明する。
図4に、活性汚泥を用いた生物処理を行う処理装置の構成を示す。この処理装置は、調製槽51、ばっ気槽52、沈殿槽53、放流水槽54、及び、オゾン処理槽55を備える。
【0056】
調製槽51において、ステップS4で得た二次処理水の水量と水質を調整する。また、処理装置には、調製槽51内の二次処理水に生物処理に必要な栄養塩類を加えるための栄養塩類タンク56を備える。そして、この栄養塩類タンク56から、調製槽51に、生物処理に必要な栄養塩類を供給する。特に、ポリマーワックスの剥離廃液からなる二次処理水には、生物処理に必要な栄養素としてリンが不足することが多い。このため、栄養塩類としてリンを二次処理水に供給することが好ましい。
【0057】
調製槽51で調製された二次処理水は、ポンプによりばっ気槽52に導入される。また、ばっ気槽52には、二次処理水を生物処理するための活性汚泥が、二次処理水と共に投入される。ばっ気槽52には、投入された二次処理水と活性汚泥とを完全混合するために、側面の一部に傾斜面52Aが設けられている。
ばっ気槽52の底部には、ばっ気槽52内の二次処理水及び活性汚泥に、空気を送るための散気管56が備えられている。そして、散気管56は、活性汚泥処理において好気条件と嫌気条件とを交互に行うことができるように、また、処理装置を長期間運転停止した場合に、活性汚泥が腐敗や酸化分解しないように、運転を制御することができる構成である。
【0058】
ばっ気槽52で活性汚泥処理された二次処理水は、沈殿槽53に送られる。このとき、二次処理水は、ばっ気槽52のオーバーフロー、及び、高低差を利用した自然流下により沈殿槽53へ送られる。
また、沈殿槽53には、分離壁59を備える。分離壁59の内側にばっ気槽52からの二次処理水が導入される。ばっ気槽52からの二次処理水が導入される二次処理水には、活性汚泥が混入しているため、分離壁59の内側に導入することにより、分離壁59の内側を活性汚泥が沈降し、沈殿槽53の底部に沈殿する。このため、沈殿槽53内で、二次処理水と活性汚泥とを分離することができる。そして、分離壁59の外側で、沈殿槽53の上部において、活性汚泥が分離された二次処理水が、放流水槽57に送られる。
【0059】
放流水槽57の底部には、活性汚泥処理された二次処理水を長期間貯留した場合に、二次処理水の腐敗を防ぐために、散気管57が設けられている。
放流水槽57から、活性汚泥処理によりBOD、CODを基準値以下まで処理した二次処理水を、河川等に放流することができる。
上述の散気管56,57には、ブロワ58が接続されている。このブロワ58を運転又は停止することにより、散気管56,57の運転を制御する。
【0060】
また、処理装置には、オゾン処理槽55が設けられている。オゾン処理槽55には、オゾン発生装置60が接続されている。そして、オゾン発生装置60において発生させたオゾンを、オゾン処理槽55に導入することにより、オゾン処理槽55内の二次処理水のオゾン処理を行う。
放流水槽54内の生物処理された二次処理水を河川等に放流するために、色度が高い場合には、オゾン処理槽55においてオゾン処理を行うことにより、二次処理水の色度を低下させることができる。また、オゾン処理により、二次処理水のCODを低下させることができるため、放流水槽54内の二次処理水のCODが、河川等に放流するための基準値以上である場合には、オゾン処理により、二次処理水のCODを基準値以下に低下させることができる。
【0061】
上述の活性汚泥処理では、二次処理水中で微生物を培養することにより、二次処理水に馴致した活性汚泥を使用する。
二次処理水に馴致した活性汚泥を使用することにより、二次処理水のBOD及びCODを24〜48時間程度で、河川に放流できる基準値以下に処理することができる。
微生物を二次処理水中で培養することにより、二次処理水の環境に適した優性菌が増殖する。このため、微生物を二次処理水に馴致させることにより、二次処理水の処理に適した活性汚泥となる。
【0062】
(実験例)
以下、上述の本発明の剥離廃液処理方法について、実施例を用いて説明する。
まず、ポリマーワックスの剥離廃液から二次処理水を得た。
ポリマーワックスの剥離廃液10L(pH10.28)に対して、濃度が36%(pH0.29)の希硫酸を0.5L添加した。
そして、希硫酸を添加することによって、凝集したポリマー塊を抽出した。このとき1485gのポリマー塊が得られた。また、ポリマー抽出後の廃液として、pH6.1の廃液が8.5L得られた。
次に、抽出したポリマー塊を2Lの水で洗浄した。そして、この洗浄に用いた水を、上記ポリマー抽出後の廃液に混合した。
次に、上記ポリマー抽出後の廃液に、15%水酸化ナトリウム150mLを添加した。そして、pH7.12に二次処理水を得た。
次に、上述の方法で排出された一次処理水12Lに対し、吸収材としておがくずを3036g混合した。
次に、上述の図2に示した真空乾燥装置を用いて吸収材が混合された上記廃液の真空乾燥を、真空度−0.1MPa、温度80℃の条件で行った。
得られた二次処理水を用いて、以下の実験を行った。
なお、以下の実験例では、群馬県において河川への放流するための排水基準を参照して、二次処理水のBODの放流の可否を判断している。群馬県の河川への排水基準は、pH5.8〜8.6、BOD60以下、COD60以下、亜鉛2mg/L以下である。
【0063】
[二次処理水の生物処理実験1]
(実験例1)
次に、上述のポリマーワックス剥離廃液の凝集・脱水処理を行った二次処理水について、BODの低下を目的とした実験を行った。二次処理水は、上述の剥離廃液処理において加熱分離処理されているため、有機物を分解するための細菌類などを含んでいない。このため、市販のEM菌培養液を種汚泥に用いて生物処理を行い、二次処理水のBODの低下を観察した。
二次処理水の生物処理は、上述の散気管を備えるばっ気槽を用いて行った。
まず、ばっ気槽中に二次処理水30Lと菌培養液50mLを投入し、二次処理水の生物処理を行った。また、ばっ気槽中に、菌床として木炭を100g投入した。
好気条件2時間(H)、嫌気条件1時間(H)で、好気条件と嫌気条件を繰り返すばっ気槽の運転を行った。
二次処理水の初期のBODは、450mg/Lであった。
【0064】
(実験例2)
実験例1と同様の条件で、EM菌培養液の投入量を200mLとして二次処理水の生物処理を行った。二次処理水の初期のBODは、450mg/Lであった。
【0065】
(実験例3)
EM菌培養液を投入せずに、実験例1と同様の条件で、好気条件と嫌気条件を繰り返すばっ気槽の運転を行った。二次処理水の初期のBODは、450mg/Lであった。
【0066】
実験例1〜3の活性汚泥の生物処理の結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実験例1と実験例2とでは、菌培養液の投入量によるBOD低下の効果を観察するため、菌培養液の投入量に大きな差を設けた。
表1に示すように、菌培養液200mLを投入した実験例2では、168時間(7日)経過した時点でのBODが、100mg/Lであった。また、288時間(12日)経過した時点でのBODが、30mg/Lまで低下した。
これに対し、菌培養液50mLを投入した実験例1では、168時間(7日)経過した時点でのBODが56mg/Lであった。また、288時間(12日)経過した時点でのBODが、25mg/Lまで低下した。
なお、上記の実験例1〜3では、各実験例のばっ気槽を並べ、ばっ気槽に蓋をしない状態で試験を行った。このため、ばっ気槽からの飛沫等により、各実験例のばっ気槽同士で菌が混入したと考えられる。このため、菌培養液の投入を行わなかった実験例3においても、168時間(7日)経過した時点でのBODが59mg/Lまで低下し、288時間(12日)経過した時点でのBODが、29mg/Lまで低下した。
【0069】
[二次処理水の生物処理実験2]
(実験例4)
実験例1,2の結果から、EM菌培養液の投入量を減らした場合にも、二次処理水のBODを低下できるか実験を行った。
菌培養液の投入量を10mLとし、実験例1と同様の条件で二次処理水の生物処理を行った。また、実験例1で使用した菌床をばっ気槽中でそのまま使用した。二次処理水の初期のBODは、350mg/Lであった。
【0070】
(実験例5)
菌培養液の投入量を20mLとし、実験例4と同様の条件で二次処理水の生物処理を行った。また、実験例4と同様に、実験例1で使用した菌床をばっ気槽中でそのまま使用した。二次処理水の初期のBODは、350mg/Lであった。
【0071】
(実験例6)
EM菌培養液を投入せずに、実験例4と同様の条件で、好気条件と嫌気条件を繰り返すばっ気槽の運転を行った。また、実験例4と同様に、実験例1で使用した菌床をばっ気槽中でそのまま使用した。二次処理水の初期のBODは、350mg/Lであった。
【0072】
実験例4〜6の活性汚泥の馴致処理の結果を表1に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示すように、菌培養液100mLを投入した実験例4では、96時間(4日)経過した時点でのBODが、100mg/Lであった。また、216時間(9日)経過した時点でのBODが、34mg/Lであり、288時間(12日)経過した時点でのBODが、33mg/Lであった。
これに対し、菌培養液20mLを投入した実験例5では、96時間(4日)経過した時点でのBODが、120mg/Lであった。また、216時間(9日)経過した時点でのBODが、40mg/Lであり、288時間(12日)経過した時点でのBODが、30mg/Lであった。
また、実験例6では菌培養液の投入を行わなかったが、実験例1で使用した菌床を使用している。このため、実験例6においても、96時間(4日)経過した時点でのBODが91mg/L、216時間(9日)経過した時点でのBODが52mg/L、288時間(12日)経過した時点でのBODが36mg/Lとなった。
【0075】
実験例1〜6の結果から、EM菌培養液を用いた生物処理では、菌培養液の添加量の増減にかかわらず、二次処理水の生物処理が進められ、二次処理水のBODが低下した。また、菌培養液を添加していな維実験例3,6においても、実験例1,2,4,5と同様に二次処理水のBODが低下した。これは、各実験例のばっ気槽を並べ、ばっ気槽に蓋をしない状態で試験を行ったため、飛沫等によりばっ気槽に菌が混入したと考えられる。
実験例1〜6において、生物処理後の二次処理水は、少し赤みを帯びた色をしていた。
また、実験例1〜6の結果から、二次処理水に対して市販の菌培養液を投入した場合は、二次処理水のBODを排水基準値の60mg/L以下にするまで1週間以上かかることがわかる。
【0076】
[馴致した種汚泥による二次処理水の生物処理実験]
(実験例7)
下水処理場のばっ気槽液を二次処理水で馴致した種汚泥を用いて、二次処理水の生物処理を行った。
二次処理水の生物処理は、上述の散気管を備えるばっ気槽を用いて行った。
まず、ばっ気槽中に二次処理水1.6Lと種汚泥300mLを投入し、更に、二次処理水のpHを調製するためのリン緩衝液0.1mL、希釈水としてイオン交換水100mLを加えて二次処理水の生物処理を行った。
好気条件1.5時間(H)、嫌気条件0.5時間(H)で、好気条件と嫌気条件を繰り返すばっ気槽の運転を行った。
二次処理水の初期値は、BODが1000mg/L、CODが300mg/L、pH7.0、MLSS(Mixed liquor Suspended Solid)濃度が1700mg/Lであった。
種汚泥、リン酸緩衝液及び希釈水を加えた調整後の二次処理水は、BODが630mg/L、pH7.0であった。
実験例7の二次処理水の生物処理の結果を表3に示す。
【0077】
なお、実験例7で使用した種汚泥は、次の方法で作製した。
まず、下水処理施設のばっ気槽内から液体(ばっ気液)2Lを採取した。そして、採取したばっ気液を沈降させた後、上澄み1Lを捨てた。そして、残りのばっ気液に二次処理水1Lを加えて、室温で好気/嫌気時間を1.5H/0.5Hとして10日間馴致させた。ばっ気液を二次処理水で馴致させた後、再びばっ気槽液を沈降させ、上澄み1.7Lを捨てた。上澄みを捨てた残りを種汚泥として使用した。
使用したリン緩衝液は、KHPOが0.12mol/L、KHPOが0.07mol/L、NaHPOが0.12mol/Lの混合液を用いた。
【0078】
【表3】

【0079】
表3に示すように、24時間経過後に、二次処理水のBODが26mg/Lまで低下した。
二次処理水に馴致させた種汚泥を用いることにより、24時間で二次処理水のBODを排水基準値の60mg/L以下に処理することができた。また、48時間経過後も、二次処理水が透明なままであり、CODが5mg/Lまで低下した。従って、二次処理水で馴致した種汚泥を用いて二次処理水の生物処理を行うことにより、短時間でBODを低下させることができた。
なお、実験例7において、BOD及びCODの測定には、SSの影響を除くために、二次処理水を5Aろ紙でろ過した後の液を試験液とした。
【0080】
[馴致した種汚泥による高濃度BOD二次処理水の生物処理実験]
(実験例8)
下水処理場のばっ気槽液を二次処理水で馴致した種汚泥を用いて、高濃度BOD二次処理水の生物処理実験を行った。
二次処理水の生物処理は、上述の散気管を備えるばっ気槽を用いて行った。
まず、ばっ気槽中に二次処理水20Lと種汚泥10Lを投入し、更に、二次処理水のpHを調製するためのリン緩衝液30mLを加えて二次処理水の生物処理を行った。
好気条件1.5時間(H)、嫌気条件0.5時間(H)で、好気条件と嫌気条件を繰り返すばっ気槽の運転を行った。
実験例8に用いた二次処理水の初期値は、BODが2900mg/L、CODが900mg/L、pH7.7、MLSSが2800mg/Lであった。また、ノルマルヘキサン抽出物質(n―Hxn抽出物質)が1mg/L未満、全窒素含有量(T−N)が17mg/L、全リン含有量(T−P)が0.2mg/L未満、亜鉛含有量(Zn)が1.9mg/Lであった。
種汚泥及びリン酸緩衝液を加えた調整後の二次処理水は、BODが2900mg/L、CODが900mg/L、pH7.2であった。
実験例7の二次処理水の生物処理の結果を表4に示す。
【0081】
なお、実験例8で使用した種汚泥は、次の方法で作製した。
まず、下水処理施設のばっ気槽内から液体(ばっ気液)30Lを採取した。そして、採取したばっ気液を沈降させた後、上澄み20Lを捨てた。そして、残りのばっ気液に二次処理水20Lを加えて、室温で好気/嫌気時間を1.5H/0.5Hとして10日間馴致させた。ばっ気液を二次処理水で馴致させた後、再びばっ気槽液を沈降させ、上澄み20Lを捨てた。上澄みを捨てた残りを種汚泥として使用した。
使用したリン緩衝液は、KHPOが0.12mol/L、KHPOが0.07mol/L、NaHPOが0.12mol/Lの混合液を用いた。
【0082】
【表4】

【0083】
二次処理水の原水のBODは2900mg/Lであり、これに活性汚泥及びリン酸緩衝溶液を加えて調整した後のBODは、1800mg/Lであった。そして、調整後の二次処理水を上記の条件で生物処理した結果、表4に示すように、BODが24時間後に22mg/Lmとなり、48時間後に5mg/Lとなった。
また、CODの測定結果から、調整後の二次処理水のCOD620mg/Lであり、処理開始から24時間後に23mg/Lとなり、48時間後に22mg/Lとなった。
また、全リン含有量(T−P)は、リン酸緩衝溶液を加えて調整したため、調整後の二次処理水において13mg/Lに増加しているが、生物処理の結果48時間後には7.4mg/Lまで低下している。二次処理水の調整に用いたリン酸緩衝液の量を調整することにより、全リン含有量はさらに低下させられると考えられる。
なお、実験例8においてBOD及びCODの測定は、実際の処理の状況を考えて、ろ紙によるろ過を行わず、二次処理水を30〜40分静置した後、上澄み液を採取して測定した。
【0084】
以上の結果から、二次処理水で馴致した活性汚泥を用いて二次処理水の生物処理を行うことにより、短時間で二次処理水のBOD及びCODを低下させることができた。また、全窒素含有量(T−N)、全リン含有量(T−P)、及び、亜鉛含有量(Zn)も、二次処理水に馴致させた活性汚泥を用いて生物処理を行うことにより、安定して処理することができる。
【0085】
[活性汚泥及びオゾンによる高濃度BOD二次処理水の生物処理]
(実験例9)
実験例8と同様の条件による二次処理水を生物処理し、生物処理後の二次処理水にオゾン処理を行った。実験例9のオゾンの流入条件を表5に示す。また、実験例9の結果を表6に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
(オゾン注入量と反応率の関係)
オゾンの注入量が最も少ない8.0mg/Lにおいて、反応率が76.6%と最も高く、オゾンの注入量が最も多い47.9mg/Lにおいて、反応率が約60%と最も低い結果となった。この結果から、オゾンの注入量の増加と共に、オゾンの反応率が低下した。しかし、オゾン注入量がg50mg/Lに近くなっても、反応率の急激な悪化は見られなかった。
【0089】
(オゾン注入量と色度の関係)
オゾン注入量が8.0mg/Lの時点で、色度が19から9.8まで低下している。注入量が16.0mg/Lとなった時点で色度が6.8まで低下した。注入量16.0mg/L以降は、注入量を増やしても色度低下が緩やかである。
この結果から、色度の低下が、オゾン注入の当初から比較的短時間で起こり、オゾンの反応が短時間で終了していることがわかる。従って、オゾンの注入により、比較的短時間で排水の色度を低下させることができる。
【0090】
(オゾン注入量とCODの関係)
オゾン注入量が8.0mg/Lの時点で、CODが20mg/Lから17mg/Lまで低下している。さらに、注入量が16.0mg/Lとなった時点でCODが15mg/Lまで低下し、これ以降は注入量を増やしてもCODの値はほとんど変化していない。
また、オゾンの流量が0.2ml/minの条件と0.3ml/minの条件の条件とを比較すると、同じオゾンの注入量47.9mg/Lの時点でのCODの値は、0.2ml/minの条件の方が低い。これは、オゾンの流量が0.2ml/minの条件が、流量が0.3ml/minの条件よりも反応時間が長くなるため、CODの値が低下したと考えられる。
この結果から、オゾン注入の当初から比較的短時間でCODの低下が起こり、オゾンの反応が短時間で終了していることがわかる。従って、オゾンの注入により、比較的短時間で排水のCODを低下させることができる。
【0091】
(オゾン注入量とBODの関係)
一般的には、オゾンの注入により排水中のBODが上昇することが知られている。しかし、実験例9では、流量が0.3ml/minの条件で47.9mg/L注入した場合を除いて、オゾンの注入によるBODの上昇は見られなかった。
この結果、オゾンの流量を0.2ml/minの条件とするか、又は、オゾンの反応時間を5分以下とすることにより、オゾンの注入によるBODの上昇を防ぐことができる。
【0092】
上述の実験例9の結果から、オゾンの注入量が10〜20mg/Lの比較的低濃度の範囲で、色度及びCODが低下した。さらに、同じオゾン注入量では、オゾンの流量を少なくし、反応時間を長くした方が、色度及びCODともに高い効果がえられた。また、オゾンの注入量が大きい場合には、色度及びCODの低下量が少なく、BODが上昇する可能性がある。このため、オゾンの注入量は、10〜30mg/L程度であることが好ましく、特に10〜20mg/L程度であることが好ましい。
【0093】
上述したように、本発明のポリマーワックスの剥離廃液処理方法によれば、ポリマーワックスのポリマーのみならず、これが除去された剥離廃液からも、有効に固形燃料の製造を行うことができ、しかもその製造過程及び最終残渣物において、有害物質の発生を実質的に皆無とすることができる。
従って、産業廃棄物の発生が回避され、環境にやさしいポリマーワックスの剥離廃液処理ができる。
【0094】
また、本発明方法によれば、ポリマーワックスの剥離廃液の処理において、ポリマー成分を塊状に分離した後、多量に発生する廃液(二次処理水)を活性汚泥による生物処理で浄化し、河川へ放流することができる。このように、生物処理により廃液中の環境負荷物質を除去し、廃液のBOD、COD等を河川への排水基準値以下に低減することができる。
【0095】
以上のように、本願発明によれば、産業廃棄物を発生させずに、ポリマーワックスの剥離廃液を簡単な方法で有価燃料として生産し、さらに廃液を生物処理により無害化したことにより、床剤剥離の施行業者の経済的負担を軽減することができる。
【0096】
本発明は、上述の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
10 加熱乾燥機、12 外周部、14 回転軸、15 ホッパ、16 圧力蓋、18 ロータリージョイント、21,32 サイクロン、22 循環ライン、23 熱交換器、24 冷水槽、25,34 レシーバタンク、26,36 真空ポンプ、28 クーリングタワー、29 ポンプ、30 ボイラ、30 蒸溜塔、31 オイルバス、33 コンデンサ、35 循環ポンプ、37 ヒータ、41,43,45,46,47,49 配管、42 ドレーン配管、44 除湿管、48 ブロー配管、60 オゾン発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーワックスの剥離廃液に酸を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、
前記ポリマー塊を抽出し、前記剥離廃液をポリマー塊と一次処理水とに分離する分離抽出工程と、
前記一次処理水にアルカリを加える中和処理工程と、
中和処理した前記一次処理水を、前記一次処理水を固形分と二次処理水とに分離する脱水処理工程と、
前記二次処理水に活性汚泥を混合する生物処理工程と、を有し、
前記生物処理工程で使用する前記活性汚泥として、前記二次処理水中で培養を行うことにより馴致された活性汚泥を使用する
ことを特徴とするポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項2】
前記脱水処理工程において、中和処理した前記一次処理水に吸収材を加えた後、前記一次処理水を固形分と二次処理水とに分離することを特徴とする請求項1に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項3】
前記生物処理工程を、間欠運転が可能な散気管が設けられたばっ気槽を備える生物処理装置において行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項4】
前記馴致された活性汚泥として、前記ばっ気槽中において活性汚泥と混合されている二次処理水を使用することを特徴とする請求項3に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項5】
前記生物処理工程にかかる時間が48時間以内であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項6】
前記生物処理工程を行った後の二次処理水にオゾンを混合するオゾン処理工程を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項7】
オゾンの混合量が、8mg/L以上50mg/L以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−194493(P2010−194493A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44645(P2009−44645)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(504288591)株式会社グンビル (5)
【Fターム(参考)】