説明

ポリマー及び組成物

ポリマー(ポリマーP)であって、(a)約5重量%から約95重量%の少なくとも1種のC2−12アルキルアクリレート、(b)約2.5重量%から約60重量%の少なくとも1種のポリマー前駆体であって、C1−30アルキル(メタ)アクリレート、C2−30ビニル芳香族化合物、C2−30ビニルハライド、C2−30ビニルニトリル、カルボン酸のC2−30ビニルエステル、及びそれらの混合物からなる群から選ばれたポリマー前駆体、但し、(i)前記ポリマー前駆体のそれぞれのホモポリマーは、約−25℃超のTgを有し、かつ(ii)前記ポリマー前駆体のそれぞれは、ヒドロキシ、カルボキシ、酸無水物、ニトロ、エポキシ、及びアミノからなる群から選ばれた官能基以外の基を含むことを条件とする、(c)約0.1重量%から約2重量%の少なくとも1種のポリマー前駆体であって、少なくとも1種のカルボキシ及び/又は酸無水物基を有する、少なくとも1種の活性化不飽和成分(好都合には、エチレン性不飽和モノマー)を含むポリマー前駆体、と(d)任意選択で約60重量%までの少なくとも1種の更に任意選択的に置換されたポリマー前駆体であって、少なくとも1種の活性化不飽和成分(好都合には、エチレン性不飽和モノマー)を含み、更に任意選択的な置換基がカルボキシ及び/又は酸無水物基以外の基であるポリマー前駆体を含むモノマー組成物から得られる、及び/又は得ることができるポリマー(ポリマーP)であって、その際に、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択的に成分「d」は、互いに異なるものであること、但し、ポリマーPが、全モノマー組成物に対して、約0.35重量%超、場合により約2重量%までの量の水溶性開始剤の存在下で、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択的に成分「d」を重合して得られた、及び/又は得ることができることを条件とするポリマー(ポリマーP)が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリマー分散体の分野、例えば接着剤としての用途、並びにポリマー及びその分散体の製造に関係する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は、周囲温度で軽く加圧した時に、種々の表面に対して付着可能な永久的接着膜を形成する。感圧接着剤は、ラベル、テープ、又はフィルムなどの粘着製品を製造するために用いられ、かつ硬化又は溶媒の蒸発が必要でないため、取り扱いが容易で、従来の接着剤より迅速な処理が可能になる。
【0003】
粘着膜を塗布した基材の性質は、材質内の内部強度(凝集力)と基材に対する外部親和性(接着力)のバランスをとることが前提になる。感圧接着剤にとっては、高度な凝集力(即ち、せん断強度)は、粘着製品の製造条件下(例えば、切断、打ち抜き時など)で基材上に強固に残る粘着膜を作成するために必要である。同時に、製品に対する接着力(即ち、剥離強度及びループタック)は、意図する用途に対する要求条件を満たさなければならない。感圧接着剤で接着力と凝集力の最適バランスを達成することは難しい。
【0004】
感圧接着剤に関する更なる問題は、感圧接着剤が可塑剤を含有する基材及び/又は支持体に塗布された時に、経年で起きる望ましくない剥離強度の低下である。例えば、ビニル基材(例えば、標識、バインダー及び容器)、及びビニル支持体(例えば、フィルム及びビニル)は、ジオクチルフタレート(本明細書ではDOPと呼ぶ)及び/又はジノニルフタレート(本明細書ではDINPと呼ぶ)などの可塑剤を含むことがある。剥離強度の低下は、可塑剤が基材及び/又は支持体から接着剤膜に移行することによって起こり、最終的には接着破壊が起きる。
【0005】
追加の問題は、ビニルフィルムが支持体に用いられた時、積層体が経年で収縮することである。この現象は、接着剤膜への可塑剤の移行ばかりでなく、フィルム製造工程(カレンダー加工として知られる)で、ビニルフィルムにもたらされた応力の解除の双方に関係する。
【0006】
エマルジョン接着剤は、通常、水性ポリマー分散体がその他の技術(例えば、有機溶媒の溶液、又はUV硬化性接着剤)より安全かつ安価である故、環境及びコストの観点で一般的に好ましい。
【0007】
それ故、感圧接着剤を可塑剤含有基材とともに用いることができるように、耐可塑剤性を改良した感圧接着剤は、一般的に望ましいであろう。可塑剤含有支持体に塗布された時に、剥離性能及び耐収縮性を実質的に維持する感圧接着剤を提供することは、その製品の寿命を延長する観点から、特に望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
接着剤(感圧接着剤)として適し、本明細書で認識した問題の一部又は全部を解決する水性ポリマー分散体を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本出願人は、ある種の水性ポリマー分散体が、ビニルフィルム支持体に接着剤として塗布可能であり、経年しても剥離強度を維持し、かつ改良された耐収縮性を示すことを発見した。
【0010】
それ故、広く、本発明に従って、ポリマー(ポリマーP)であって、
(a)約5重量%から約95重量%の少なくとも1種のC2−12アルキルアクリレート(成分a)、
(b)約2.5重量%から約60重量%の少なくとも1種のポリマー前駆体(成分b)であって、C1−30アルキル(メタ)アクリレート、C2−30ビニル芳香族化合物、C2−30ビニルハライド、C2−30ビニルニトリル、カルボン酸のC2−30ビニルエステル、及びそれらの混合物からなる群から選ばれたポリマー前駆体、但し、
(i)前記ポリマー前駆体のそれぞれのホモポリマーは、約−25℃超のTgを有し、かつ
(ii)前記ポリマー前駆体のそれぞれは、ヒドロキシ、カルボキシ、酸無水物、ニトロ、エポキシ、及びアミノからなる群から選ばれた官能基以外の基を含むことを条件とする、
(c)約0.1重量%から約2重量%の少なくとも1種のポリマー前駆体(成分c)であって、少なくとも1種のカルボキシ及び/又は酸無水物基を有する、少なくとも1種の活性化不飽和成分(好都合には、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー)を含むポリマー前駆体、と
(d)任意選択で約60重量%までの少なくとも1種の更に任意選択的に置換されたポリマー前駆体(成分d)であって、少なくとも1種の活性化不飽和成分(好都合には、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー)を含み、更に任意選択的な置換基がカルボキシ及び/又は酸無水物基以外の基であるポリマー前駆体を含むモノマー組成物から得られる、及び/又は得ることができるポリマー(ポリマーP)(その際に、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択的に成分「d」は、互いに異なるものであること、但し、ポリマーPが、全モノマー組成物に対して、約0.35重量%超、場合により約2重量%までの量の水溶性開始剤の存在下で、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択的に成分「d」を重合して得られた、及び/又は得ることができることを条件とする)が、提供される。
【0011】
好ましくは、モノマー組成物は、成分「a」、「b」及び「c」、並びに任意選択で成分「d」から本質的になる。
【0012】
重量%としてモノマー成分に求められた値は、ポリマーの総重量に基づいて計算される。
【0013】
本発明の別の観点に従えば、ポリマーPを含む水性分散体が提供される。
【0014】
本発明の更に別の観点に従えば、ポリマーPを含む感圧接着剤が提供される。
【0015】
本発明の更なる観点及びそれらの好ましい特徴は、本明細書の特許請求の範囲に与えられる。本発明の実施形態のその他の多くの変更は、当業者には明らかであり、そのような変更は、本発明の広義の範囲に属すると解釈される。
【0016】
文脈が明らかに示唆しない限りは、本明細書の用語の複数形は、単数形を含むと解釈されるが、その逆も同様である。
【0017】
本明細書で用いる用語「含む(comprising)」は、後続のリストが網羅されていないこと、及び任意のその他の追加の適切な用語、例えば、適切な一つ又は複数の更なる特徴、成分、要素、及び/又は置換基を含有(include)してもよく、又はしなくてもよいことを意味すると理解されるであろう。それにひきかえ、本明細書で用いる「から本質的になる(consisting essentially of)」は、後続のリストが網羅されていて、如何なる追加の用語を含有しないことを意味すると理解されるであろう。
【0018】
本発明の感圧接着剤は、優れた耐可塑剤性を有する。出願人は、従来技術の感圧接着剤(即ち、0.35重量%未満の開始剤を用いて得られた感圧接着剤)と比較して、接着剤積層体(可塑化基材を含む)が、80℃2日間の経時変化処理された時、その剥離値が減少しないことを発見した。出願人は、ガラス板上に塗布した接着膜が、70℃で7日間の径時変化処理された時、本発明の感圧接着剤が、優れた耐収縮性を示すことを更に発見した。
【0019】
成分「a」、「b」、「c」及び「d」を含むポリマーは、例えば、ポリマーに共有結合したラジカル開始剤及び/又は連鎖移動剤の小部分を含むことができる。ラジカル開始剤又は連鎖移動剤などの、通常は重合性モノマーと解釈されない化合物は、好ましくは、ポリマーPの成分ではない。
【0020】
(モノマー成分)
(成分「a」(「ソフト」モノマー))
好ましくは、成分「a」用のモノマーは、少なくとも1種のC1−20アルキルアクリレートを含み、そのホモポリマーが約−40℃以下のTを有するものであり、より好ましくは、1種以上のC1−10アルキルアクリレートを含み、かつ最も好ましくは、n−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、及びn−オクチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーを含む。n−ブチルアクリレート及び2−エチルへキシルアクリレートのモノマーが特に好ましく、例えば2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0021】
ポリマーPの総重量を基にして、成分「a」は、好都合には、約5重量%から約95重量%、より好都合には、約55重量%から約80重量%、最も好都合には約60重量%から約70重量%含まれる。
【0022】
(成分「b」(ハードモノマー))
成分「b」用のモノマーは、C1−30アルキル(メタ)アクリレート、C2−30ビニル芳香族化合物、C2−30ビニルハライド、C2−30ビニルニトリル、カルボン酸のC2−30ビニルエステル、及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーを含み、そのホモポリマーは、約−25℃以上のTを有するものである。成分「b」用のモノマーは、好ましくは、少なくとも1種のC1−30アルキル(メタ)アクリレートを含み、より好ましくは、1種以上のC1−12アルキル(メタ)アクリレートを含み、最も好ましくは、エチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、sec−プロピルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーを含む。モノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及び/又はそれらの混合物が特に好ましい。
【0023】
成分「b」は、ポリマーPの総重量を基準にして、好都合には、約2.5重量%から約60重量%、より好都合には、約8重量%から約50重量%、最も好都合には、約15重量%から約40重量%含まれる。
【0024】
(成分「c」(低酸含有量))
成分「c」用のモノマーは、好ましくは、カルボキシル基を含むエチレン性不飽和化合物、エチレン性不飽和酸無水物、及び/又はエチレン性不飽和二価酸及び/又は三価酸のエチレン性不飽和モノエステルを含み、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーを含む。モノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸である。
【0025】
モノマー組成物の酸含有量は相対的に低いことが好まれるので、成分「c」は少ない量で存在する。成分「c」は、ポリマーPの総重量を基準にして、好都合には、約0.1重量%から約3重量%、より好都合には、約0.2重量%から約2.5重量%、最も好都合には、約0.5重量%から約2重量%、例えば約1重量%から約2重量%である。
【0026】
(任意選択的成分「d」(他の官能性モノマー))
好ましくは、成分「d」用のモノマーは、ポリマーPを含む水性ポリマー分散体から形成されるフィルムの内部強度及び/又は接着力を通常高める、エチレン性不飽和化合物を含む。
【0027】
エチレン性不飽和基に加えて、これらの化合物は、更なる官能基を含まないか、又はこのましくは、エポキシ、ヒドロキシル、エチルイミダゾリドン、N−メチロール、カルボニル、及び/又は他のエチレン性不飽和基と共役結合していない更なるエチレン性不飽和基からなる群から選ばれた1種以上の更なる官能基を含むことができる。そのうえに、酸又は酸無水物基以外の1種以上の更なる追加の官能基が、分子中に存在するならば、更なる官能基は、酸又は酸無水物基だけを含むことができる。
【0028】
より好ましい更なる官能基は、本明細書中で、後で説明する官能基などの任意の適切な有機基から選択される。
【0029】
最も好ましい更なる官能基は、


独立して水素又はC1−24炭化水素基を表し、かつXはハロ基を表す。
【0030】
また、上に掲げた最も好ましい官能基は、環式類似体を含む。例えば、−ORはオキシランを含み、−SRはチイランを含み、−CONRR’はラクタムを含み、−CORはラクトンを含む。また、最も好ましい官能基は、組み合わされてもよい。例えば、カルボニル基とイミダゾールなどのヘテロアリール基の組み合わせは、イミダゾロンとなる。
【0031】
特に好ましい更なる官能基は、エポキシ、エチルイミダゾリドン、ヒドロキシ、N−メチロール、カルボニル、及び/又は他のエチレン性不飽和基と共役結合していない更なるエチレン性不飽和基を含む。例えば、成分「d」は、エチルイミダゾリドンメタクリレート及びそれらの誘導体(商標Norsocryl(登録商標)102及びNorsocryl(登録商標)104としてArkema社から商業的に入手できるモノマーなど)及び/又はヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を含むことができる。
【0032】
成分「d」用のエチレン性不飽和化合物は、成分「a」、「b」及び/又は「c」用の如何なる化合物も含まない。
【0033】
成分「d」は、ポリマーPの総重量を基準にして、好都合には、約25重量%以下、より好都合には約20重量%以下、最も好都合には約0.1重量%から約10重量%、具体的には約0.1重量%から約2重量%を構成する。
【0034】
本発明のポリマー製造時に官能性モノマーとの架橋量を増すために、他の成分(ホルムアルデヒドなど)を任意選択で用いることができる。
【0035】
(開始剤)
高められた耐可塑剤性を備えた本発明のポリマーを得るために、既知の感圧接着剤にとってはありふれた多量の開始剤総量、場合により約0.2重量%超の開始剤を用いるべきであることを出願人が見出した。開始剤総量は、重合されるモノマーの総重量を基準にして、好ましくは約0.2重量%から約2重量%、より好ましくは約0.35重量%から約2重量%、最も好ましくは約0.4重量%から約1.0重量%、例えば約0.4重量%から約0.7重量%である。また、単一種の開始剤又は異なる開始剤の混合物を用いることができる。
【0036】
好ましい開始剤は、フリーラジカル重合の開始に適した任意のものであり、より好ましくはラジカル乳化重合の開始に適したものである。好都合には、開始剤はペルオキシドであり、より好都合には、ペルオキシジサルフェート;それらのアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩などから選択される。その他の適切な開始剤は、レドックス−開始剤系であることができ、アスコルビン酸/Fe(II)サルフェート/ナトリウムペルオキシジサルフェート系、t−ブチルヒドロペルオキシド/ナトリウムジサルファイト系、及び/又はt−ブチルヒドロペルオキシド/ナトリウムヒドロキシメタンスルフィン酸系からなる群から選ばれたものなどがある。その他の適切な開始剤は、当業者によく知られているであろう。
【0037】
(任意選択の置換基)
本明細書で用いる用語「任意選択の置換基」及び/又は「任意選択で置換された」は、(他の置換基のリストで示されない限り)下記の基(又はこれらの基で置換された)の1種以上を表す;カルボキシ、スルホ、ホルミル、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、メチル、メトキシ及び/又はそれらの混合物。これらの任意選択の基は、同一の位置で、複数の(好ましくは2種の)前記した基(例えば、アミノ及びスルホニル、互に直接結合しているならば、スルファモイル基を表す)の化学的に可能な全組み合わせを含む。好ましい任意選択の基は、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、メチル、ハロ、トリハロメチル、及び/又はメトキシを含む。
【0038】
本明細書で用いる時、同義語「有機置換基」及び「有機基」(本明細書で「オルガノ」と省略することもある)は、一つ又は複数の炭素原子、及び場合により一つ又は複数の別のヘテロ原子を含む任意の一価又は多価成分(場合により一つ又は複数の他の成分に結合)を表す。有機基は、炭素を含有する一価の基を含み、有機であり、しかも炭素以外の原子に自由原子価を有する(例えばオルガノチオ基)ような、オルガノヘテリル基(オルガノ元素基としても知られる)を含むことができる。有機基は、別法として又は追加で、炭素原子上に、官能基の種類に関係なく、1個の自由原子価を有する任意の有機置換基を含むオルガニル基を含むことができる。また、有機基は、複素環式化合物(環員原子として少なくとも2個の異なる元素、この場合一つは炭素、を有する環式化合物)の任意の環原子から水素原子を取り除いて形成される一価基を含むヘテロシクリル基を含むことができる。有機基中の非炭素原子は、好ましくは、水素、ハロ、リン、窒素、酸素、ケイ素及び/又は硫黄から選択され、より好ましくは、水素、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄から選択される。好都合なリン含有基は、ホスフィニル基(即ち、「−PR」ラジカル、式中Rは、独立してH又はヒドロカルビルを表す)、ホスフィン酸基(即ち、「−P(=O)(OH)」ラジカル)、及びホスホン酸基(即ち、「−P(=O)(OH)」ラジカル)を含むことができる。ハロは、F、Cl、Br又はIを表し、好ましいハロは、F、Cl、Brであり、F及びClが最も好ましい。
【0039】
最も好ましい有機基は、一つまたは複数の下記の炭素含有成分を含む;アルキル、アルコキシ、アルカノイル、カルボキシ、カルボニル、ホルミル及び/又はそれらの組み合わせ;一つまたは複数の下記のヘテロ原子含有成分と任意選択で組み合わせて:オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、イミノ、ニトリロ及び/又はそれらの組み合わせ。有機基は、同一の位置で、複数の(好ましくは2種の)前記した炭素含有成分及び/又はヘテロ原子成分(例えば、アルコキシ及びカルボニル、互に直接結合しているならば、アルコキシカルボニル基を表す)の化学的に可能な全ての組み合わせを含む。
【0040】
本明細書で用いる用語「ヒドロカルボ基」は、有機基の一部であり、一つ又は複数の水素原子及び一つ又は複数の炭素原子から成り、かつ一つ又は複数の飽和、不飽和成分及び/又は芳香族成分を含むことができる、任意の一価又は多価の成分(場合により一つ又は複数の他の成分に結合した)を表す。ヒドロカルボ基は、一つ又は複数の下記の基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、炭化水素(例えばアルキル)から1個の水素原子を取り除いて形成された一価の基を含む。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2個の水素原子を取り除いて形成された二価の基を含み、その自由原子価は二重結合に使われていない(例えばアルキレン)。ヒドロカルビリデン基は、炭化水素の同一炭素原子から2個の水素原子を取り除いて形成された二価の基(「RC=」で表すことができる)を含み、その自由原子価は二重結合に使われる(例えばアルキリデン)。ヒドロカルビリダイン基は、炭化水素の同一炭素原子から3個の水素原子を取り除いて形成された三価の基(「RC≡」で表すことができる)を含み、その自由原子価は三重結合に使われる(例えばアルキリダイン)。また、ヒドロカルボ基は、飽和の炭素・炭素一重結合(例えばアルキル基)、不飽和二重及び/又は三重炭素・炭素結合(たとえば、それぞれアルケニル及びアルキニル基)、芳香族基(例えばアリール基)、及び/又は同一成分内でそれらの組み合わせ含むことができ、並びに指示された場合、他の官能基で置換されてもよい。
【0041】
適合し、かつ文脈が明確に断らない限り、本明細書で用いる用語「アルキル」又は同等語(例えば「アルク」)は、本明細書で述べた基など(例えば、二重結合、三重結合、芳香族成分(それぞれアルケニル、アルキニル及び/又はアリールなど)及び/又はそれらの組み合わせ(例えば、アラルキル)並びに2種以上の成分を結合した任意の多価ヒドロカルボ種(二価ヒドロカルビレンラジカル、例えばアルキレンなど)を含む)の任意の他のヒドロカルボ基を包含する用語で容易に置換することができる。
【0042】
本明細書でいう好ましいアリール基は、単環式又はアニールされた6から24個の炭素環原子をもつ任意の芳香族炭化水素成分を含む。より好ましいアリール基は、フェニル、及び/又はナフタレン、アズレン、アントラセン及び/又はフェナントレンからのラジカルを含む。
【0043】
用語ヘテロアリールは、環式ヘテロ原子を含む任意のアリール基を表す。好ましいヘテロアリール基は、単環式又はアニールされた5から24個の環状原子をもつ任意の芳香族炭化水素成分を含み、その少なくとも一つの環状原子は、N、O、S及びPからなる群から選ばれたヘテロ原子である。より好ましいヘテロアリール基は、ピロール、インドール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、チノリン、イソチノリン、及び/又はピリミジンの任意の適切なラジカルを含む。
【0044】
本明細書で(例えば、置換基として)述べる任意のラジカル基又は成分は、特に断らない限り又は文脈が明確に指示しない限りは、多価又は一価のラジカルであることができる(例えば、2つの他の成分に結合した二価のヒドロカルビレン成分)。しかし、本明細書に明示した場合、このような一価又は多価の基は、任意選択的な基を含むことができる。鎖状の3個以上の原子を含む基は、この鎖が全体で又は一部分で直鎖状、分子状であるか、及び/又は環を形成する基(スピロ及び/又は溶融環を含む)を意味する。ある置換基に対して、幾つかの原子の総数が特定されること、例えばC1−Nオルガノは、1からN個の炭素原子を含むオルガノ成分を意味する。本明細書に記載した式の全てにおいて、若し一つ又は複数の置換基が、成分中の任意の特定の原子(例えば、連鎖及び/又は環に沿った特定の位置)に結合するように示されないならば、この置換基は、任意のHを置き換えることができ、及び/又は化学的に適切であり及び/又は有効である成分の利用可能な任意の位置に配置することができる。
【0045】
好ましくは、本明細書に掲載された有機基のいずれもが、1から36個の炭素原子、より好ましくは1から18個の炭素原子を含む。有機基中の炭素原子の数が、1から12、特に1から10(インクルーシブに)であることが特に好ましく、例えば1から4の炭素原子である。
【0046】
(アルキル)アクリレート、(メタ)アクリレート及び/又は(コ)ポリマーなどの括弧で示された特徴を含む、本明細書で用いた化学的用語(特別に認定された化合物に対するIUAPC名を除く)は、括弧内の部分は文脈が示すように任意であり、例えば用語(メタ)アクリレートがメタクリレート及びアクリレートを示すことを意味する。
【0047】
本明細書に述べた本発明の一部又は全てに含まれ、及び/又は用いられた、ある種の成分、種、基、繰り返し単位、化合物、オリゴマー、ポリマー、材料、組成物、及び/又は配合は、下記の非網羅的リスト中の任意のものなどの、一つ又は複数の異なる形態として存在することができる:立体異性(光学異性体(例えば、E及び/又はZ型)、ジアステレオ異性体及び/又は幾何異性体など);互変体(例えばケト及び/又はエノール形)、配座異性体、塩、両性イオン、錯体(キレートなど、包接体、クラウン化合物、クリプタンド(cryptands)/クリプテード(cryptades)、包接化合物、層間化合物、侵入型化合物、配位化合物、有機金属錯体、非化学量論的錯体、π−アダクト、溶媒和物、及び/又は水和物);同位体的置換形、高分子構造[ホモ又はコポリマー、ランダム、グラフト及び/又はブロックポリマー、リニアー及び/又は分枝したポリマー(例えば、スター及び/又は側鎖分枝形)、架橋及び/又は網目構造ポリマー、二価及び/又は三価繰り返し単位から得られたポリマー、デンドリマー、異なる立体規則性のポリマー(例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリマーなど)];多形体(格子間形状、結晶性形状及び/又は非晶質形状など)、異なる相、固溶体;及び/又は可能な限りそれらの組み合わせ、及び/又はそれらの混合物。本発明は、本明細書に定義されたように、効果的なこのような全ての形態を含み、及び/又は用いる。
【0048】
(活性化不飽和成分)
本明細書で、用語「活性化不飽和成分」は、少なくとも一つの活性化成分に化学的に接近して、少なくとも一つの不飽和炭素・炭素間二重結合を含む種を表すために用いられる。好ましくは、活性化成分は、適切な求電子基により付加してエチレン性不飽和二重結合を活性化する任意の基を含む。好都合には、活性化成分は、オキシ、チオ、(任意選択でオルガノ置換)アミノ、チオカルボニル、及び/又はカルボニル基[後の二基は任意選択でチオ、オキシ又は(任意選択でオルガノ置換)アミノで置換される]を含む。より好都合な活性化成分は、(チオ)エーテル、(チオ)エステル、及び/又は(チオ)アミド成分である。最も好都合な「活性化不飽和成分」は、「不飽和エステル成分」を含み、これは、一つ又は複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)カルボニル(チオ)オキシ」、及び/又は一つ又は複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)カルボニル(オルガノ)アミノ」基、及び/又は類似体、及び/又は誘導された成分、例えば(メタ)クリレート官能基及び/又はそれらの誘導体を含む成分を包含する有機種を表す。「不飽和エステル成分」は、場合により、任意選択的に置換された総称的なα,β−不飽和酸エステル、及び/又はそれらの誘導体、それらのチオ誘導体及び類似体を含むことができる。
【0049】
好ましい活性化不飽和成分は、式1’で表される:
【化1】


(式中、n’は0又は1であり、X’はオキシ又はチオであり、X’はオキシ、チオ又はNR’(R’はH又は場合により置換されたオルガノを表す)であり、R’、R’、R’及びR’はそれぞれ独立してH、場合により置換基、及び/又は任意選択で置換されたオルガノ基を表す)、かつそれらの全ての適切な異性体、それらの組み合わせ、又は同一種及び/又はそれらの混合物である。
【0050】
本明細書では、用語「活性化不飽和成分」、「不飽和エステル成分」及び/又は式1’は、個別の化学種(化合物、イオン、フリーラジカル、オリゴマー及び/又はポリマーなど)及び/又はそれらの任意の部分を表すことができることが理解されるであろう。したがって、式1’は、多価(好ましくは2価)ラジカルを表す。このように、本明細書でn’、X’、X’、R’、R’、R’、R’及びR’に与えられる選択肢は、相当する二価又は多価ラジカルを適切なものとして包含する。
【0051】
式1’のより好ましい成分(それらの異性体及び混合物を含む)は、n’が1、X’がO、X’がO、S又はNR’であり、R’、R’、R’及びR’が、独立して、H、任意選択の置換基、及び任意選択で置換されたC1−10ヒドロカルボから選択され、その際、存在するR’は、H及び任意選択で置換されたC1−10ヒドロカルボから選択される。
【0052】
最も好ましくは、n’が1、X’がO、X’がO又はS、かつR’、R’、R’及びR’が、独立して、H、ヒドロキシ、及び/又は任意選択で置換されたC18ヒドロカルビルである。
【0053】
例えば、n’が1、X’及びX’が両者ともにO、かつR’、R’、R’及びR’が、独立して、H、OH、及び/又はC1−4アルキルである。
【0054】
n’が1、X’及びX’が両者ともにOである場合に式1’の成分についは、(R’及びR’)の一つがHであり、かつR’がHである時には、式1’は、アクリレート成分を表す。この成分は、アクリレート(R’及びR’の両者がHである時)及びそれらの誘導体(R’又はR’のいずれかがHでない時)を含む。同様に、(R’及びR’)の一つがHであり、かつR’がCHである時には、式1’は、メタクリレート成分を表す。この成分は、メタクリレート(R’及びR’の両者がHである時)及びそれらの誘導体(R’又はR’のいずれかがHでない時)を含む。式1’について、アクリレート及び/又はメタクリレートが、特に好ましい。
【0055】
好都合な式1’の成分は、n’が1、X’及びX’が両者ともにO、R’及びR’が独立してH、メチル又はOH、かつR’がH又はCHであるものである。
【0056】
より好都合な式1’の成分は、n’が1、X’及びX’が両者ともにO、R’がOH、R’がCH、かつR’がHであるもの、及び/又はそれらの互変体(例えば、アセトアセトキシ官能種)である。
【0057】
最も好都合な不飽和エステル成分は、−OCO−CH=CH、−OCO−C(CH)=CH、アセトアセトキシ、−OCO−CH=C(CH)(OH)、及びそれらの全ての適切な互変体から選択される。
【0058】
他の反応性成分などの、式1’で表された任意の適切な成分が、本発明の文脈で用いることができることが理解されるであろう。
【0059】
(ポリマー)
ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、従来法により測定することができる。本明細書で特に説明が無い場合は、全てのガラス転移温度は、示差熱分析法(DTA)又は示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定した。ASTM3418/82、中点値(midpoint)温度を参照されたい。
【0060】
多くのモノマーから製造したホモポリマーのTgが知られている。例えば、「Polymer Handbook、第2版、J.Brandrup & E.H.Immergut著、1975年、J.Wiley & Sons」を参照されたい。ある種のモノマーが本明細書に明白に掲載されていないならば、上記のハンドブックに開示されたTgは、ある種のモノマーが構成成分のいずれかの定義に該当するか否かを決定するために用いられるべきである。個別のホモポリマーのTgが、本明細書に又は上記のハンドブックに開示されていない場合に限り、DTA又はDSC測定からTgを得る必要があるであろう。
【0061】
本発明のポリマーは、一つ又は複数の適切なポリマー前駆体を用いて製造することができる。このポリマー前駆体は、有機及び/又は無機であることができ、任意の適切な(コ)モノマー、(コ)ポリマー(ホモポリマーを含む)及びそれらの混合物を含み、かつそれぞれのポリマー前駆体との結合を形成して連鎖延長をもたらす、及び/又は本明細書に示したように直接結合によりそれぞれのポリマー前駆体のもう一つとの架橋をもたらすことができる成分を含む。
【0062】
本発明のポリマー前駆体は、適切な重合可能な機能性を有する一つ又は複数のモノマー、ポリマー、それらの混合物、及び/又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0063】
モノマーは、重合可能な低分子量(例えば、一千ダルトン未満)の実質的に単分散性化合物である。
【0064】
ポリマーは、重合手段により製造される大分子量(例えば、千ダルトンの多数倍)をもつ巨大分子の多分散性混合物であり、巨大分子は、小さい単位(それ自身がモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーであることができる)を多数繰り返すものであり、かつ(特性が分子構造の細部に非常に依存しない限り)1個又は数個の単位の付加又は除去が、巨大分子の特性に与える影響を無視できる。
【0065】
オリゴマーは、モノマーとポリマーの間の中間分子量を有する分子の多分散性混合物であり、この分子は少数のモノマー単位を含み、その一つ又は数個を除くと分子の特性が著しく変わる。
【0066】
本明細書の文脈次第で、ポリマーなる用語は、オリゴマーを包含することもあれば、包含しないこともある。
【0067】
本発明の及び/又は本発明で用いるポリマー前駆体は、直接的合成により、又は(ポリマー前駆体自体が高分子である場合は)重合により製造することができる。重合可能なポリマーが、それ自体、本発明の及び/又は本発明で用いるポリマー前駆体として用いられる場合には、このようなポリマー前駆体が低多分散性であり、より好ましくは、実質的に単分散性であり、副反応、副生物の数、及び/又はこのポリマー前駆体から形成された任意の高分子材料中の多分散性を最小化することが好ましい。このポリマー前駆体は、通常の温度及び圧力で実質的に非反応性であることができる。
【0068】
本明細書で示唆した場合を除いて、本発明の及び/又は本発明で用いるポリマー及び/又は高分子ポリマー前駆体は、当業者によく知られた適切な重合手段を用いて(共)重合可能である。適切な手段の例は、熱開始反応、適切な薬剤又は触媒を加えることによる化学的開始反応、及び/又は任意の開始剤を用い、例えばUVなどの適切な波長で電磁波輻射線を照射することによる開始反応(光化学開始反応)、及び/又は電子線、α粒子、中性子及び/又はその他の粒子などの異なるタイプの照射を行うことによる開始反応を含む。
【0069】
ポリマー及び/又はオリゴマーの繰り返し単位上の置換基を選択して、この材料とポリマー及び/又は樹脂との混和性を改良することができる。これにより、本明細書に述べた用途のための配合、及び/又は組み合わせを行うことができる。置換基の大きさ及び長さは、樹脂との物理的絡み合い又は相互配置を最適化するために選択することができ、または適切な他の樹脂と化学的に反応する及び/又は架橋することができるその他の反応性構成要素を含んでもよく、又は含まなくてもよい。
【0070】
(製造法)
また、本発明は、ポリマーPを含有する水性ポリマー分散体の製造法に関係する。
【0071】
本発明のポリマーPは、乳化重合により得ることが好ましい。この乳化重合は、好ましくは約30℃から約100℃の温度、より好ましくは、約50℃から約95℃の温度で行われることが好ましい。重合媒体は、主に水から構成することができるが、少なくとも水に部分的に溶解性の溶媒との混合物、例えば、メタノールと水の混合物、又はイソプロパノールと水の混合物を用いることができる。乳化重合は、バッチ法又は別法として準連続法で行うことができ、反応物質及び補助添加物が反応器に連続的に添加され、そこで重合が起きる。反応物質は、濃度勾配をもって、又は段階的に添加できる。
【0072】
本発明に従う方法の好ましい実施形態では、重合は準連続法で行われる。最初に、重合される比較的少量のモノマーが反応器に供給され、加熱され、かつ重合される。次に、モノマー残部が、通常は互いに空間的に分離された数個の導入口を経由して、反応器に連続的に供給さる。モノマーは、導入口当たり単一モノマーとして、又はモノマー混合物として、純粋な形又は乳化された形(事前乳化物)で反応器に供給できる。それぞれの導入口を通る質量流量は、個々に調節すること、即ち段階的に又は濃度勾配的に調節することができる。また、モノマーが反応器に供給され、それにより、反応器の反応領域内に累進的濃度勾配を作ることができる。
【0073】
本発明に従う方法の別の好ましい実施形態において、重合が準連続法で行われる。重合は、重合種又はプレポリマーで始まる。重合から最終的に得られるポリマーPが、ポリマーPの定義でカバーされる限りは、重合種又はプレポリマーの化学的特性は制約を受けない。全ての成分が、重合種又はプレポリマー中に同時に存在すべきではない。好ましくは、重合種成分の組成、及び重合種上で重合する成分の組成は、少なくとも一つの成分で異なる。好ましくは、この水性分散体は、重合種又はプレポリマーとして、約10から約100nm、好ましくは約40から約60nmの非ゼロ重量平均直径を有するポリマーを含有する。
【0074】
好ましくは、ポリマーPは、適切な界面活性剤の存在下で、水中で乳化重合により製造される。好ましくは、この重合法から得られた最終的な水性ポリマー分散体は、約1重量%から約5重量%(重合されるモノマーの全重量を基準にして)の界面活性剤を含有する。適切な表面活性物質は、フリーラジカル水性乳化重合を行うために通常用いられる保護コロイドばかりでなく、乳化剤も含む。
【0075】
適切な保護コロイドの例は、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、及びビニルピロリドン含有ポリマーがある。更に適切な保護コロイドの詳細な説明は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第14巻/1、Makromolekulare Stoffe、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1961年、411から420頁に見出すことができる。
【0076】
また、乳化剤及び/又は保護コロイドの混合物を用いることができる。好ましくは、用いられる表面活性物質は、保護コロイドとは異なり、もっぱら、相対分子量が通常2,000未満の乳化剤である。この乳化剤は、実際に、アニオン性、カチオン性又は非イオン性であり、これらの表面活性物質の混合物を用いる場合には、個々の成分は相互に混和性でなければならず、疑問があるならば、幾つかの先行実験によって、重合に先立って確認できる。一般的に、アニオン性乳化剤は、相互に混和性があり、かつ非イオン性乳化剤とも混和性である。カチオン性乳化剤も同様であるが、一方、アニオン性及びカチオン性乳化剤は、通常相互に非混和性である。本発明に用いる適切な界面活性剤は、当業者によく知られており、及び/又は以下に個別に説明する。
【0077】
好ましくは、本発明に従う水性ポリマー分散体は、乳化重合から直接得られる製品の分散体である。これらの水性ポリマー分散体は、異なる目的のために、例えば感圧接着剤として用いることができる。本発明の感圧接着剤は、例えばラベル用の支持体として用いるような、高分子フィルムなどの任意の適切な表面又は基材に塗布することができる。
【0078】
(界面活性剤/乳化剤)
本発明に従えば、界面活性剤は、芳香族基を含有する乳化剤(芳香族乳化剤)及び芳香族基を含有しない乳化剤(脂肪族乳化剤)の二つの群に分類される。本明細書において、単純な用語「乳化剤」は、芳香族乳化剤、及び脂肪族族乳化剤の両者を包含する。
【0079】
好ましい脂肪族乳化剤は、エトキシル化脂肪族アルコール(約3から約50のEO度をもち、かつC8−36アルキル基を含むものなど)、アルキル硫酸エステルのアルカリ金属及び/又はアンモニウム塩(C8−12アルキル基を含むものなど)、エトキシル化アルカノールの硫酸モノエステルのアルカリ金属及び/又はアンモニウム塩(約4から約30のEO度をもち、かつC12−18アルキル基を含むものなど)、アルキルスルホン酸のアルカリ金属及び/又はアンモニウム塩(C12−18アルキル基を含むものなど)、及び/又はそれらの適切な混合物である。
【0080】
好ましい芳香族乳化剤は、エトキシル化モノ−、ジ−、及びトリ−アルキルフェノール(約3から約50のEO度をもち、かつC4−8アルキル基を含むものなど)、エトキシル化アルキルフェノール(約3から約50のEO度をもち、かつC4−8アルキル基を含むものなど)、アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩(C8−11アルキル基を含むものなど)、スルホン化アルキルアリールエーテル、ポリアリールフェニルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属及びアンモニウム塩、及び/又はそれらの混合物である。
【0081】
更に適切な芳香族及び脂肪族乳化剤は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第14巻/1、Makromolekulare Stoffe、Georg Thieme Verlag、シュトゥットガルト、1961年、192から208頁に見出すことができる。
【0082】
好都合には、本発明に用いられる界面活性剤は、イオン性界面活性剤であり、
(I)複数の、好ましくは少なくとも3個の芳香環、
(II)強酸、任意選択で一価のオキシ置換スルホアニオン、及び/又は一価のオキシ置換ホスホアニオンから選択された強酸から形成された少なくとも1種の電気陰性置換基、と
(III)複数のヘテロ有機単位、同一又は異なってもよい任意選択で一つ又は複数のオキシヒドロカルビレン繰り返し単位を含む、任意選択で少なくとも一つの置換基
を含む。
【0083】
任意選択で、上記イオン性界面活性剤は、単独で又は他のタイプの界面活性剤(イオン性又は非イオン性)と組み合わせて用いることができる。
【0084】
より好都合には、このイオン性界面活性剤は、芳香族であり、かつ約8から約20、好ましくは約10から約18、より好ましくは約12から約17、例えば約16のHLB値をもつことができる。
【0085】
好都合には、芳香族イオン性界面活性剤は、式A:
【化2】


(式中、Ar及びArは、それぞれの場合独立して芳香族成分を含むC8−18ヒドロカルボ基を表し、
Lは、二価のオルガノ結合基又は直接結合であって、その際、任意選択でAr及びArがともに縮合環を形成してもよく、
は、任意選択で置換C1−8ヒドロカルビレン基、より好ましくはC1−8アルキレン基であり、
及びXは、それぞれの場合独立してO、S、CH、NH又はNRを表し、その際、Rは任意選択で置換C1−20ヒドロカルビル基、より好ましくはC1−10アルキル基であり、
AはS(OP)1−3又はP(O)1−3成分を表し、かつqは1から3であり、
Cは適切な対カチオンであり、かつpは電荷qとバランスをとり、
mは1から70の整数、好ましくは5から60の整数、より好ましくは10から50の整数、最も好ましくは10から30の整数、例えば約16であり、
nは1から6の整数、任意選択で1から3を表す)で表される。
【0086】
より好都合には、式Aのイオン性界面活性剤は、式B:
【化3】


(式中、L、R、X、X、A、C、q、p、n及びmは、式Aで与えられたものと同じであり、Rは任意選択で置換C1−8ヒドロカルビレン基、より好ましくはC1−8アルキレン基である)で表される。
【0087】
式Bで、より好ましくは、
L、R及びRは、それぞれの場合独立してC1−4アルキレン基、より好ましくは−CHCH(CH)−、−CH(CH)−又は−CHCH−であり、
及びXは、それぞれの場合独立してO、S、NH又は−N(C1−8アルキル)−、最も好ましくはO及びAはS(O)、又はP(O)であり、かつqは1であり、
Cは適切な対イオンであり、かつPは任意選択で1であり、
nは1から3、より好ましくは3であり、かつmは10から30、最も好ましくは10から20、例えば16である。
【0088】
式A及びBの最も好ましい界面活性剤は、スチレンとフェノールの反応で得られたアルコキシル化マルチスチリル置換フェノール(トリスチリルフェノール及び/又はそれらの誘導体)のリン酸化及び/又は硫酸化により得られる、及び/又は得ることができるものである。
【0089】
式A及びBの特に好ましいトリスチリルフェノール系イオン性界面活性剤は、以下の商品呼称の下でRhodia社から入手できるものである:
Soprophor 3D−33(エトキシル化リン酸エステル遊離酸)、
Soprophor 3D−33/LN(低非イオン性エトキシル化リン酸エステル遊離酸)、
Soprophor 3D−FLK(エトキシル化リン酸エステルカリウム塩)、
Soprophor 3D−FL(エトキシル化リン酸エステルTEA(トリエチルアミン)塩)、
Soprophor 3D−FL−60(エトキシル化リン酸エステルTEA(トリエチルアミン)塩)、
Soprophor 4D−384(エトキシル化硫酸エステルアンモニウム塩)、
Soprophor 4D−360(エトキシル化硫酸エステルアンモニウム塩)、及び/又はそれらの任意の適切な混合物。
【0090】
代表的界面活性剤は、下式で表すことができ、
【化4】


(カチオンがアンモニウムである時)この界面活性剤は、Soprophor 4D−384の商品呼称の下でRhodia社から入手できる。
【0091】
本発明の別の実施形態では、King社から市場で入手できるアルキレンナフチルスルホン酸エステルの任意選択で置換された誘導体を、イオン性界面活性剤として用いることができる。
【0092】
(連鎖移動剤)
好ましいポリマーPは、全モノマー組成物重量を基準にして、約0.05重量%未満の、場合により約0.03重量%未満の量の少なくとも1種の適切な連鎖移動剤の存在下で、成分「a」、「b」及び「c」、及び任意選択で成分「d」のそれぞれを重合することにより得る、及び/又は得ることができる。
【0093】
また、連鎖移動剤(CTA)は、この重合過程で用いることができるが、一実施形態では、本発明のポリマーを製造するために実質的に用いていない。何らかの連鎖移動剤を用いる場合、できるだけ少量で用いることがよく、重合されるモノマー100重量部を基準にして、好都合には0.05重量部まで、より好都合には約0.01から約0.05重量部、かつ最も好都合には約0.01から約0.03重量部である。連鎖移動剤の機能は、得られたポリマーの分子質量を低下させることである。適切な連鎖移動剤は、t−ブチルメルカプタン、エチルヘキシルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−ドデシルメルカプタン、及び/又はt−ドデシルメルカプタンなどのチオール基をもつ化合物を含む。
【0094】
適切な開始剤は、既に説明した。
【0095】
反応媒体に開始剤を供給する適切な形態は、技術者に知られている。重合開始前に、開始剤は、全量又は一部だけ反応器に存在することができる。後者の場合、開始剤の残部は、重合反応による開始剤の消費に関連する速度で、注入口から反応器に供給される。重合が終了した後に、反応媒体中にモノマーが存在することを回避するために、反応収率が約95%以上の範囲に達した時、一般的に更なる開始剤が添加される。
【0096】
モノマー、開始剤、連鎖移動剤などは、反応器の塔頂部から、側部で、又は底部を通して反応器に供給できる。
【0097】
通常、乳化重合は、約15重量%から約75重量%、好ましくは約50重量%から約75重量%の固形分をもつ水性ポリマー分散体を生成する。高固形分のポリマー分散体が好ましい。
【0098】
好ましくは、本発明に従って得る、及び/又は得ることができるポリマーPは、約200から280nmの平均粒子径を有する。水性分散体のpHは、約4から約9の範囲が好ましい。
【0099】
ポリマーP、特にそれらの水性ポリマー分散体は、接着剤として、特に感圧接着剤として用いることができる。好ましくは、ポリマーPは、水性分散体の形態で用いられ、さらなる添加剤を少しも添加することなく用いることができる。しかし、粘着付与剤、消泡剤、増粘剤、凝固剤、柔軟剤、顔料、界面活性剤、殺生剤又は充填剤などの更なる添加剤が添加されることも、また可能である。
【0100】
適切な粘着付与剤の例は、コロホニュウム樹脂(例えば、アビエチン酸)及びそれらのエステルなどの誘導体などの樹脂である。コロホニュウムエステルは、メタノール、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,3−プロパントリオール、ペンタエリトリットなどのアルコールから得ることができる。その他の適切な粘着付与剤は、クマロン−インデン樹脂、ポリテルペン樹脂、ブタジエン、ペンテン、メチルブテン、イソプレン、ピペリレン、ジビニルメタン、ペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの不飽和炭化水素樹脂をベースにした炭化水素樹脂、スチレン及びスチレン誘導体である。更なる適切な粘着付与剤は、比較的低分子量(一般的に平均分子量30,000未満)のポリアクリレートである。好ましいポリアクリレートは、一つ又は複数のC1−8アルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0101】
用語「効果的な」、「容認できる」、「活性な」及び/又は「適切な」(例えば、任意の工程、用途、方法、応用、製造、製品、材料、配合、化合物、モノマー、オリゴマー、ポリマー、前駆体、及び/又は本発明のポリマー、及び/又は本明細書の中で適切と説明したポリマーに関連して)は、正しいやり方で用いた時に、それらが本明細書で説明されたように効用があるように添加され、及び/又は組み合わされるものに、要求される特性を提供する本発明の特徴を表していると理解されるであろう。このような効用は、材料が前記した用途に対して必要な特性を有する例については直接的であり、及び/又は材料が合成中間体としての用途及び/又は直接的効用をもつ他の材料を形成する診断的手段を含む例については間接的であるかもしれない。また、本明細書で用いる時、これらの用語は、官能基が、効果的な、容認できる、活性な、及び/又は適切な最終製品の製造に適していることを示す。
【0102】
本発明の好ましい効用は、感圧接着剤として、より好ましくは改良された耐可塑剤性を示す感圧接着剤としての用途を含む。
【0103】
本発明の更なる観点及び好ましい実施形態は、特許請求の範囲に与えられる。
【0104】
本発明を、以下の実施例により更に説明するが、この実施例に限定するものではない。本明細書中に、本発明のポリマー及び組成物を製造するために用いる成分の幾つかを示すために、種々の登録商標、別の呼称、及び/又は省略語が使われる。これらは、化学名及び/又は商品名、場合により市場から入手するときの製造業者又は供給業者により、以下の表で識別される。しかし、化学名及び/又は本明細書中で説明した材料の供給業者が示されない場合、それは、例えば、「McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents」、Rock Road、Glen Rock、N.J.07452−1700、USA、1997年、及び/又は「Hawley’s Condensed Chemical Dictionary(14版)」、Lewis、Richard J.,Sr、John Wiley & Sonsに容易に見出すことができる。
【0105】
「AA」は、アクリル酸(CH=CHCOH)を示す。
「Abex 3594」は、Rhodia社からのアニオン性界面活性剤である。
「Acticide MV14」は、Thor GmbH社からの殺生剤の商品名であり、活性成分として、2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン(3.5%)、及び5−クロロ−2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン(10.6%)を含有する。
「Acticide L30」は、Thor GmbH社からの殺生剤の商品名であり、活性成分として、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(30%)を含有する。
「Acticide MBS」は、Thor GmbH社からの殺生剤の商品名であり、活性成分として、2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3(2H)−オンを含有する。
「Aerosol(登録商標)OT75」(本明細書ではAOTと表すこともある)は、Sigma Chemical社から商業的に入手できるアニオン性界面活性剤の商標である。
「Alcogum 296−W」は、Alco Chemical社から商業的に入手できるポリアクリル酸ナトリウムの高粘度水性溶液の商品呼称である。
「AMP−95」は、Dow社からの第一級アミノアルコール分散体の商品呼称である。
「BA」はブチルアクリレートを表す。
「EA」はエチルアクリレートを表す。
「Ebecryl 110(登録商標)」は、Cytec社の商標であり、エトキシル化フェノールのモノアクリレートを表す。
「Ebecryl 114(登録商標)」は、Cytec社の商標であり、フェノキシエチルアクリレートを表す。
「EHA」は、2−エチルヒドロキシアクリレートを表す。
「Formopon」は、Rohm & Haas社から商業的に入手できるホルムアルデヒドハイドロサルファイトナトリウム(本明細書ではSFSと表すこともある)の商品呼称である。
「HBA」は、ヒドロキシブチルアクリレートを表す。
「HDDA」は、ヘキサンジオールジアクリレートを表す。
「KPS」は、過硫酸カリウムを表す。
「NaPS」は、過硫酸ナトリウムを表す。
「MA」は、メチルアクリレートを表す。
「MAA」は、メタクリル酸(CH=CH(CH)COH)を表す。
「MMA」は、メチルメタクリレートを表す。
「Norsocryl(登録商標)102」(本明細書では「N102」と表すこともある)は、2−(2−オクソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート(MEIO)のメチルメタクリレート(MMA、75重量%)溶液であるモノマーであり、Arkema社からこの商品名で入手できる。
「Rhodaline 962」は、Rhobia社からの疎水性分散剤の商品呼称である。
「Rongalit C(登録商標)」は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムである重合開始剤の商品名(BASF社)である。
「Soprophor(登録商標)4D384」は、トリスチリルフェノール−16EO硫酸エステルのアンモニウム塩である界面活性剤であり、Rhodia社からこの商品名で入手できる。
「Surfynol 440」及び「Surfynol 420」は、Air Products社からの非イオン性エトキシル化界面活性剤/破泡剤の商品呼称である。
「t−BHP」は、t−ブチルヒドロキシペルオキシドを表し、Luperox H 70又はTrigonox A−W70の商品呼称(それぞれArkema社又はAkzoNobel社から)で、例えば水30%中のt−BHP70%として商業的に入手できる。
【実施例1】
【0106】
以下の表1a及び2aにその組成を示した2つのポリマーを作成した。比較例Aは、開始剤低濃度の比較例であり、実施例1は本発明のポリマーPである。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
このポリマーは、当業者によく知られた従来からの手法で、重合温度82℃で、反応器中で重合される。重合の過程で、一種のモノマーの事前乳化液が反応器に供給される。並行して、開始剤溶液(プレミックスタンク2の)が、反応器に供給される。事前乳化液の初期組成、及び反応器の初期内容物が、表1b及び2bに示される。
【0110】
【表3】

【0111】
表2bに記載の実施例1は、表1bに与えられた比較例Aと同様な手法で作成され、かつ処理される。
【0112】
【表4】

【0113】
これらの合成に用いられた重合種子は、下記のモノマー組成を基準にしている:スチレン(15.5%)、n−ブチルアクリレート(83%)、及びアクリル酸(1.5%)。
【0114】
【表5】

【0115】
重合種子を作成するために、水及び界面活性剤が反応器に供給され、続いて82℃に加熱される。次に、反応器に、開始剤が導入され、モノマー事前乳化液が3から4時間かけて供給される。並行して、開始剤溶液(プレミックスタンク2の)が反応器に供給される。混合物を1時間熟成し、次に冷却する。
【0116】
比較例A及び実施例1から得られた水性ポリマー分散体の接着特性を、本明細書に記載したような標準試験法に従って試験した。
【0117】
以下の実施例2及び3に示したポリマーは、実施例1と同様に作成され、実施例4及び5のそれぞれの感圧接着剤に配合した。
【実施例2】
【0118】
(実施例2)
(ポリマー組成(+殺生剤))
重量(ポンド) 重量%
脱イオン水 11067.0 37.31
重炭酸ナトリウム 46.0 0.16
過硫酸ナトリウム 104.0 0.35
Soprophor 4D384 1364.0 4.60
(25%)
ヘキサンジオールジアクリレート 13.7 0.046
Norsocryl 102 213.0 0.72
アクリル酸 170.0 0.57
メチルアクリレート 2556.0 8.62
メチルメタクリレート 2556.0 8.62
ブチルアクリレート 11531.0 38.88
硫酸第一鉄七水化物 0.048 0.00016
Trigonox A−W70 12.20 0.0411
Formopon 8.50 0.0287
Acticide MV14 10.40 0.0351
Acticide L30 9.70 0.0327
総計 29661.548 100.000
【実施例3】
【0119】
(実施例3)
(ポリマー組成(+殺生剤))
重量(ポンド) 重量%
脱イオン水 175.251 31.864
重炭酸ナトリウム 0.931 0.169
過硫酸ナトリウム 1.843 0.335
Soprophor 4D384 27.486 4.997
(25%)
ヘキサンジオールジアクリレート 0.270 0.049
Norsocryl 102 4.224 0.768
アクリル酸 3.381 0.615
メチルメタクリレート 100.540 18.280
ブチルアクリレート 235.220 42.767
硫酸第一鉄七水化物 0.00090 0.00016
Trigonox A−W70 0.259 0.047
Formopon 0.215 0.039
Acticide MV14 0.197 0.036
Acticide L30 0.183 0.033
総計 550.001 100.000
【実施例4】
【0120】
(実施例4)
(実施例2のポリマーを用いた感圧接着剤の配合)
pph 重量比
実施例2 100.000 29202.76
Aerosol OT75 0.280 81.77
Surfynol 440 0.600 175.22
Rhodaline 962 0.100 29.20
アンモニア(28%) 0.180 52.56
脱イオン水 1.570 458.48
総計 102.73 30000.00
【実施例5】
【0121】
(実施例5)
(実施例3のポリマーを用いた感圧接着剤の配合)
pph 重量%
実施例3 100.000 98.386
AMP−95 0.420 0.413
Aerosol OT75 0.300 0.295
Rhodaline 962 0.200 0.197
Alcogum 296−W 0.720 0.708
総計 100.00
【0122】
(試験方法)
剥離接着力(剥離強度)は、FINAT試験法(FTM)1号に従って試験された。この標準試験法FTM1は、FINAT Technical Handbook第5版、1999年(FINAT社、私書箱85612NL−2508 CHハーグ、オランダによる出版)に記載がある。
【0123】
((a)試験片の作成)
試験対象の分散体を、アンモニア(pH=7にするため)及び湿潤剤(即ち、Surfynol 420(Air Products社から))と混合した。この混合物の配合は、ラテックス100g中に0.6gのSurfynolであった。次に、これを、バーコーターを用いてシリコン処理紙に塗布して薄膜を作成し、110℃で3分間乾燥した。乾燥接着剤の単位面積当たりの重量が25g/mになるように、コーティングバーの間隙高さを選択した。乾燥接着剤上に、市販の通常のDOP可塑化PVCフィルム(80μm厚)を置き、手動ロールを用いてしっかりとロールがけした。得られた接着剤を大気条件下に少なくとも24時間保存し、続いて、これを切断して25mm幅の小片を作成した。最小の長さは175mmであった。
【0124】
((b)(FINAT FTM1に従い)接着力測定のために剥離強度を試験する)
シリコン処理紙を剥がした後、フィルム状試験小片をガラス板に接着した(周囲条件:23℃、50%相対湿度)。この試験小片を20分間放置した後、抗張力試験装置を用いて、180度の角度、300mm/分の速度でこの小片を剥離した。これを実施するために必要な力として、剥離強度をN/25mmで求めた。繰り返し測定して3個の試験試料の平均値を求めた。
【0125】
((c)剥離保持力を試験する)
先ず80℃で2日間オーブン内に置いた、2番目のセットの小片を用いて、剥離強度試験法を繰り返した。次に、シリコン処理紙を剥離する前に、23℃、50%RH(相対湿度)で4時間、試験小片を平衡化させた。
【0126】
((d)耐収縮性を試験する)
((d)(i)コーテッド材料の作成)
試験対象の分散体を、アンモニア(pH=7にするため)及び湿潤剤(即ち、Surfynol 420(Air Products社から))と混合した。この混合物の配合は、ラテックス100g中に0.6gのSurfynolであった。次に、これを、バーコーターを用いてシリコン処理紙に塗布して薄膜を作成し、110℃で3分間乾燥した。乾燥接着剤の単位面積当たりの重量が25g/mになるように、コーティングバーの間隙高さを選択した。乾燥接着剤上に、市販の通常のDOP可塑化PVCフィルム(80μm厚)を置き、手動ロールを用いてしっかりとロールがけした。得られた接着剤を大気条件下に少なくとも24時間保存し、続いて、これを切断して50mm幅の小片を作成した。その長さは200mmであった。
【0127】
((d)(ii)試料の測定)
シリコン処理紙を剥がした後、フィルム状試験小片をガラス板に接着した(周囲条件:23℃、50%相対湿度)。接着剤とガラス基板間の接触調整を確実にするために、小片上に2kgのローラーを4回(2往復)通過させた。次に、試験小片を、小片の最短側面に対し平行になるように等しい長さの2部片に切断した。その後、小片を70℃のオーブン中に7日間放置した。オーブンから取り出した後、試験小片の2部片の間の分離巾を測定し、ミリメートル(mm)で報告した。
【0128】
【表6】


脚注
1:3個の測定結果の平均値
2:重量平均値は動的光散乱(Ni comp 370、粒子サイジング方式)により測定した
3:以前に解説したように、試験小片は、オーブン中で、70℃で7日間エージングした
【0129】
上記のデータが例証するように、実施例1の、本発明に従う感圧接着剤は、比較例Aに比較して、剥離保持力の改良及び優れた耐収縮性を示した。
【0130】
(実施例6から18について)
以下で説明するように、実施例2と同様な方法で種々のポリマーを作成した。また、これらのポリマーは、本明細書で説明するように、感圧接着剤に配合することができる。
【0131】
(移行性可塑剤と混和性がある主要なモノマーの例)
【実施例6】
【0132】
ブチルアクリレートモノマーを、同一重量の2−エチルアクリレートモノマーで置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【実施例7】
【0133】
ブチルアクリレートモノマーを、同一重量の2−エチルアクリレート及びブチルアクリレートモノマーの50:50重量比の混合物で置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【0134】
(カルボキシル化モノマーの例)
【実施例8】
【0135】
アクリル酸(AA)モノマーを、同一重量(1%)のメタクリル酸(MAA)で置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【実施例9】
【0136】
アクリル酸(AA)モノマーを、増加した重量(2重量%)のメタクリル酸(MAA)で置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【実施例10】
【0137】
アクリル酸(AA)モノマーの量を、1%から2重量%に増加させた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【0138】
(架橋反応の例)
【実施例11】
【0139】
モノマーの事前乳化液供給の終点で、0.35gのホルムアルデヒドを添加して、Norsocryl 102との架橋反応を高めて、実施例2に記載のように作成した。
【0140】
(PVC上に感圧接着剤の付着を高めるための他の官能性モノマーの例)
【実施例12】
【0141】
メチルメタクリレート(MMA)を、商標「Abecryl 110」の下でCytec社から商業的に入手できる、同一重量(5%)のエトキシル化フェノールモノアクリレートで置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【実施例13】
【0142】
メチルメタクリレート(MMA)を、商標「Abecryl 114」の下でCytec社から商業的に入手できる、同一重量(5%)のフェノキシエチルアクリレートで置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【実施例14】
【0143】
ブチルアクリレートモノマー(BA)を、同一重量(3%)のヒドロキシブチルアクリレート(HBA)で置き換えた以外は、実施例2に記載のように作成した。
【0144】
ヒドロキシ官能化モノマーは、Norsocryl 102型官能性モノマーときわめて容易に後反応すると考えられているので、如何なるメカニズムに縛られることなく、実施例12から14が作成された。
【0145】
(分子量分布に影響を及ぼす開始剤量の例)
【実施例15】
【0146】
用いた開始剤量を、0.4重量%(0.61%から)に減量した以外は、実施例2に記載のように作成した。
【実施例16】
【0147】
用いた開始剤量を、0.5重量%(0.61%から)に減量した以外は、実施例2に記載のように作成した。
【0148】
(その他の実施例について)
【実施例17】
【0149】
アクリル酸モノマーを、同一重量のメタクリル酸で置き換えた以外は、実施例6に記載のように本発明のポリマーを作成することができた。
【実施例18】
【0150】
アクリル酸モノマーを、同一重量のメタクリル酸で置き換え、かつ0.4重量%のNaPSを添加した以外は、実施例6に記載のように本発明のポリマーを作成することができた。
【0151】
上記の実施例のポリマーを、本明細書に記載のように、感圧接着剤として配合した。本明細書に記載の試験法で、試験小片を作成し、試験板から取り除いた。
【0152】
(結果について)
実施例の幾つかについて測定(2個の小片)した剥離強度値を以下の表に示すが、移行は全くないか、きわめて限定的であった。
【0153】
【表7】

【0154】
本発明の特別な実施形態が、感圧接着剤コーテッド試験小片の再剥離性を特に高める(板上に接着剤を殆ど残さない)ので、この特別な実施形態が特に好ましいことが判明した。
【0155】
実施例6、8及び9は、剥離後に殆ど残留物を残さないので、先行技術の溶媒系接着剤に匹敵する結果を得た。
【0156】
特に高められた接着剤の再剥離性をもたらすための、これらの試験から考えられる変更は下記の項目を含む:
BAを2EHAで置き換える(実施例6と実施例2の比較)、
AAをMAAで置き換える(実施例8と実施例2の比較)、
カルボキシル化モノマー(例えばAA)の量を増加させる(実施例10と実施例2の比較)、と
官能性モノマー(Norsocryl 102など)との架橋量を増加させる(実施例11と実施例2の比較)。
【0157】
従って、単独又は組み合わせた、このような変更は、本発明の好ましい実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(ポリマーP)であって、
(a)約5重量%から約95重量%の少なくとも1種のC2−12アルキルアクリレート(成分a)、
(b)約2.5重量%から約60重量%の少なくとも1種のポリマー前駆体(成分b)であって、C1−30アルキル(メタ)アクリレート、C2−30ビニル芳香族化合物、C2−30ビニルハライド、C2−30ビニルニトリル、カルボン酸のC2−30ビニルエステル、及びそれらの混合物からなる群から選ばれたポリマー前駆体、但し、
(i)前記ポリマー前駆体のそれぞれのホモポリマーは、約−25℃超のTgを有し、かつ
(ii)前記ポリマー前駆体のそれぞれは、ヒドロキシ、カルボキシ、酸無水物、ニトロ、エポキシ、及びアミノからなる群から選ばれた官能基以外の基を含むことを条件とする、
(c)約0.1重量%から約2重量%の少なくとも1種のポリマー前駆体(成分c)であって、少なくとも1種のカルボキシ及び/又は酸無水物基を有する、少なくとも1種の活性化不飽和成分(好都合には、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー)を含むポリマー前駆体、と
(d)任意選択で約60重量%までの少なくとも1種の更に任意選択的に置換されたポリマー前駆体(成分d)であって、少なくとも1種の活性化不飽和成分(好都合には、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー)を含み、更に任意選択的な置換基がカルボキシ及び/又は酸無水物基以外の基であるポリマー前駆体、を含むモノマー組成物から得られる、及び/又は得ることができるポリマー(ポリマーP)、
その際に、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択的に成分「d」は、互いに異なるものであること、
但し、ポリマーPが、全モノマー組成物に対して、約0.35重量%超、場合により約2重量%までの量の水溶性開始剤の存在下で、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択的に成分「d」を重合して得られた、及び/又は得ることができることを条件とする。
【請求項2】
ポリマーPが、全モノマー組成物に対して、総量で約0.05重量%未満の、少なくとも1種の適切な連鎖移動剤の存在下で、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択で成分「d」を重合して得られた、及び/又は得ることができることを更なる条件とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
ポリマーPが、実質的に連鎖移動剤不在下で、成分「a」、「b」及び「c」のそれぞれ、並びに任意選択で成分「d」を重合して得られた、及び/又は得ることができることを更なる条件とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
成分「a」が、n−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、及びn−オクチルアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルキルアクリレートを含む請求項1から3の任意の一項に記載のポリマー。
【請求項5】
成分「b」が、少なくとも1種のC1−30アルキル(メタ)アクリレートを含む請求項1から4の任意の一項に記載のポリマー。
【請求項6】
成分「b」が、エチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、及びイソプロピルアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートを含む請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
成分「c」が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む請求項1から6の任意の一項に記載のポリマー。
【請求項8】
成分「d」が、エポキシ基、ヒドロキシル基、エチルイミダゾリドン基、N−メチロール基、カルボニル基、又は他のエチレン性不飽和基と共役結合していない更なるエチレン性不飽和基からなる群から選ばれた基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物を含む請求項1から7の任意の一項に記載のポリマー。
【請求項9】
請求項1から8の任意の一項に記載のポリマーPの粒子を含む水性分散体。
【請求項10】
少なくとも1種の芳香族乳化剤を含む請求項9に記載の分散体。
【請求項11】
芳香族乳化剤が、
(I)複数の、好ましくは少なくとも3個の芳香族環、
(II)強酸から形成された少なくとも1種の負に帯電した置換基であって、任意選択で一価のオキシ置換スルホアニオン、及び/又は一価のオキシ置換ホスホアニオンから選ばれた置換基、と
(III)任意選択で、複数のヘテロ有機単位、場合により、同一又は異なっていてもよい、1種以上のオキシヒドロカルビレン繰り返し単位を含む少なくとも1種の置換基を
含むイオン性界面活性剤である請求項10に記載の分散体。
【請求項12】
請求項1から8の任意の一項に記載のポリマー、及び/又は請求項9又は10に記載の分散体の製造方法であって、
(a)反応媒体中で、
(i)ポリマー前駆体の形態の成分「a」、「b」、「c」、及び任意選択で成分「d」、と
(ii)全モノマー組成物に対して、総量で約0.35重量%超、場合により約2重量%までの、1種以上の適切な水溶性重合開始剤を
接触させるステップを含む方法。
【請求項13】
反応媒体が、全モノマー組成物に対して、総量で約0.05重量%未満の、少なくとも1種の適切な連鎖移動剤を更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
反応媒体が、連鎖移動剤を実質的に含まない請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から8の任意の一項に記載のポリマー、請求項12から14の任意の一項に記載の方法から得ることができるポリマー、及び/又は請求項9から11の任意の一項に記載の分散体を含む感圧接着剤。
【請求項16】
感圧接着剤を製造するために、請求項1から8の任意の一項に記載のポリマー、請求項12から14の任意の一項に記載の方法から得ることができるポリマー、及び/又は請求項9から11の任意の一項に記載の分散体を用いること。
【請求項17】
請求項15に記載の感圧接着剤を塗布した基材及び/又は支持体。
【請求項18】
基材及び/又は支持体が可塑剤を含む請求項17に記載の基材及び/又は支持体。

【公表番号】特表2009−507946(P2009−507946A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529540(P2008−529540)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008704
【国際公開番号】WO2007/028600
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】