説明

ポリマー溶液の製造方法

【課題】本発明は、溶液キャスト法として知られている方法にて、高い透明性と優れた表面平滑性および厚み精度を有するフィルムとすることが可能な、未溶解物を発生することない均一なポリマー溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、撹拌の周速が10〜25m/sec.、かつ吐出流量Qと溶液量Vの比(Q/V)が7〜30となる設定を与えた撹拌下でポリマーの溶解を行なうことを特徴とするポリマー溶液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未溶解物を発生することのない均一なポリマー溶液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機EL、PDPなどに代表されるフラットパネルディスプレイは、薄型、軽量である特徴が市場ニーズにマッチし、急速に普及、さらにはその利用範囲が拡大している。これらのフラットパネルディスプレイにおいては、数々のポリマーフィルムが用いられており、例えば、プラスチック基板フィルム、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、光反射フィルム、電磁波遮蔽フィルム、ディスプレイ表面保護フィルムなどに利用されている。そして、これらポリマーフィルムには、ディスプレイの視認性を低下させないよう、非常に高い透明性と優れた表面平滑性および厚み精度が要求されることが一般的である。
【0003】
一方、フマル酸ジエステルからなる重合体は、1981年大津らにより見出され(例えば非特許文献1参照。)、光学レンズ、プリズムレンズ、光学ファイバー等の光学材料が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。また、フマル酸ジエステル重合体の単分子膜を用いた液晶ディスプレイ用の高分子配向膜基板(例えば特許文献3参照。)が開示され、フマル酸ジエステル重合体の超薄膜の製造方法についても開示され、電気素子、パターンニング、マイクロリソグラフィー、光学素子(光導波路、非線型三次素子用バインダー樹脂)等の用途が提案されている(例えば特許文献4参照。)。さらに、フマル酸ジエステル重合体からなる低誘電性高分子材料、フィルム、基板および電子部品が開示され、溶液キャスト法によるフィルムについても提案されている。(例えば特許文献5参照。)。
【0004】
溶液キャスト法にて非常に高い透明性と優れた表面平滑性および厚み精度を示すフィルムを得るには、ポリマーが均一に溶解し、未溶解物など異物のないポリマー溶液を製造する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−028513号公報
【特許文献2】特開昭61−034007号公報
【特許文献3】特開平02−214731号公報
【特許文献4】特開平02−269130号公報
【特許文献5】特開平09−208627号公報
【非特許文献1】ラジカル重合ハンドブック(314頁)、株式会社エス・ティー・エス
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フマル酸ジエステル重合体は溶剤への溶解性が乏しく、溶解する場合でもポリマー溶液が高粘度となるため、均一に溶解し、未溶解物のないポリマー溶液を製造することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、未溶解物のない均一なポリマー溶液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリマーの溶解を行なう際、特定の撹拌羽根を備えた撹拌槽を用い、さらに特定の撹拌の条件設定とすることにより未溶解物のない均一なポリマー溶液を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、撹拌の周速が10〜25m/sec.、かつ吐出流量Qと溶液量Vの比(Q/V)が7〜30となる設定を与えた撹拌下でポリマーの溶解を行なうことを特徴とするポリマー溶液の製造方法に関するものである。
【0010】
以下、本発明のポリマー溶液の製造方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリマー溶液の製造方法では、ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽を用いてポリマーの溶解を行なう。ここで、ディスパー型の撹拌羽根とは、丸鋸の刃を交互に上下に折り曲げたような形状を示す円板状の撹拌羽根のことであり、例えば図1に示す形状を有するものが挙げられる。該撹拌羽根を用いることにより、撹拌羽根の刃近傍における溶液へ大きな剪断効果を与えることができること、及び溶剤へ投入されたポリマーを溶剤の中に均一に分散させる能力も高いことから、ポリマー溶液を製造する上で優れた撹拌羽根である。そして、ディスパー型以外の撹拌羽根について、プロペラ型やアンカー型などでは剪断作用が小さいため、溶剤に投入されたポリマーの凝集物が生成しやすく、また一旦生成した凝集物を解体するのも困難であるため未溶解物が溶液中に残ってしまい、均一に溶解したポリマー溶液を製造することは困難である。
【0012】
本発明のディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽でのポリマー溶液の製造方法においては、ポリマーが沈降せず均一分散することが重要であることから撹拌の周速は10〜25m/sec.であり、好ましくは15〜23m/sec.、特に好ましくは17〜21m/sec.である。周速が10m/sec.未満であると、ポリマーが溶剤へ均一に分散せずに凝集物が生成し、かつ系全体の流動性も小さくなるため、溶解後に未溶解物が残存し、溶解性が良好な溶液を得ることは困難である。また、周速が25m/sec.を超えると、撹拌時に溶液の飛散が激しくなること、また撹拌槽の機器負荷が大きくなって溶解操作が困難になる。ここで、周速(m/sec.)とは回転数(rpm)と攪拌羽根の円周(m)の積で表わしたものである。
【0013】
また、吐出流量Qと溶液量Vの比(以下、Q/V)は7〜30であり、好ましくは10〜25である。Q/Vが7未満であるとポリマーが溶剤への均一に分散せずに凝集物が生成し、かつ系全体の流動性も小さくなるため、溶解後に未溶解物が残存し、溶解性が良好な溶液を得ることは困難である。Q/Vが30を超えると撹拌時に溶液の飛散が激しくなること、また撹拌槽の機器負荷が大きくなって溶解操作が困難になる。ここで、吐出流量Qとは撹拌羽根先端から吐出される流量のことであり、溶液量Vとは、溶液の製造で使用するポリマーと溶剤量を合わせた量のことを表わす。
【0014】
本発明のポリマー溶液の製造方法では、溶剤へポリマーを投入する方法に関して特に制限はなく、例えば溶剤中にポリマーを投入する方法、ポリマー中に溶剤を投入する方法等が挙げられ、その中でも均一分散に優れることから、溶剤中にポリマーを投入する方法が好ましい。その際には、ポリマーの投入に時間がかかるとポリマーの溶解に伴う溶液の粘度上昇が大きいために後から投入されたポリマーが溶液中に分散されにくく、未溶解物ができやすくなるため、粘度上昇が大きくなる前にポリマーの投入を終わらせる方が好ましい。
【0015】
本発明のポリマー溶液の製造方法において、前記撹拌羽根の直径dと撹拌槽の内径Dの比(以下、d/D)は0.4〜0.6が好ましい。
【0016】
本発明で使用される溶剤としては、ポリマーを均一に溶解し、無色透明な溶液を得ることができる限り、特に制限はなく、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、溶剤は単独、あるいは2種類以上の混合溶剤であっても構わず、無色透明な溶液が得られる限り、溶剤の混合比率は任意である。その中でも、ポリマーの溶解性の点からトルエン、キシレン、テトラヒドロフランが好ましく、さらにフィルム成膜する際の乾燥性の点からトルエンまたはキシレンにアセトン、メチルエチルケトンを添加した混合溶剤とすることが好ましい。
【0017】
本発明のポリマー溶液の製造方法において、ポリマーと溶剤の濃度は、ポリマーがディスパー型の攪拌羽根を備えた撹拌槽で特定の攪拌条件下で溶解する限り、特に制限はなく、例えばポリマー/溶剤=15/85〜25/75(重量比)が好ましい。
【0018】
本発明のポリマー溶液の製造方法において、溶解中に撹拌槽を加温あるいは冷却などの温度設定に特に制限はなく、使用される溶剤の沸点に応じて任意に設定することが可能である。ただし、溶液内の温度が高いほど溶液粘度が低下するため溶解性の良好なポリマー溶液を得ることができる。
【0019】
本発明のポリマー溶液の製造方法で溶解するポリマーは、フマル酸ジエステル重合体であり、フマル酸ジエステル重合体の範疇に属する限り如何なる重合体を用いることが可能であり、その中でも特に下記一般式(1)に示されるフマル酸ジエステル残基50モル%以上であることが好ましく、特に80モル%以上、さらに90モル%以上であることが好ましい。
【0020】
【化1】

(ここで、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基または環状アルキル基である。)
ここで、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基または環状アルキル基であり、これらはフッ素、塩素などのハロゲン基;エーテル基;エステル基もしくはアミノ基で置換されていてもよい。
【0021】
、Rにおける炭素数1〜12の直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜12の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜12の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、特にイソプロピル基が好ましい。
【0022】
具体的な一般式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基としては、例えばフマル酸ジメチル残基、フマル酸ジエチル残基、フマル酸ジプロピル残基、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−n−ブチル残基、フマル酸ジイソブチル残基、フマル酸ジ−sec−ブチル残基、フマル酸ジ−tert−ブチル残基、フマル酸ジ−n−ペンチル残基、フマル酸ジ−イソペンチル残基、フマル酸ジ−sec−ペンチル残基、フマル酸ジ−tert−ペンチル残基、フマル酸ジ−n−ヘキシル残基、フマル酸ビス−(2−エチルヘキシル)残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が挙げられ、その中でもフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−tert−ブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基が好ましく、特にフマル酸ジイソプロピル残基が好ましい。また、それらは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0023】
また、該フマル酸ジエステル重合体は、他の単量体残基を含有していてもよく、他の単量体の残基としては、例えばスチレン残基、α−メチルスチレン残基等のスチレン類残基;(メタ)アクリル酸残基;(メタ)アクリル酸メチル残基、(メタ)アクリル酸エチル残基、(メタ)アクリル酸ブチル残基、下記一般式(2)で示されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基、下記一般式(3)で示されるテトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基等の(メタ)アクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;メチルビニルエーテル残基、エチルビニルエーテル残基、ブチルビニルエーテル残基等のビニルエーテル類残基;N−メチルマレイミド残基、N−シクロヘキシルマレイミド残基、N−フェニルマレイミド残基等のN−置換マレイミド類残基;エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基、より選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。これらの中でも他の単量体残基としては、下記一般式(2)で示されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基、下記一般式(3)で示されるテトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基であることが好ましい。
【0024】
【化2】

(ここで、Rは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、分岐アルキル基を示す。nは1または2を示す。)
【0025】
【化3】

(ここで、Rは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、分岐アルキル基を示す。)
ここで一般式(2)のRは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、分岐アルキル基であり、nは1または2である。Rにおける炭素数1〜4の直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。そして、具体的な一般式(2)で示されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基としては、例えば(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチル残基、(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルエチル残基等が挙げられる。
【0026】
また、一般式(3)のRは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖アルキル基、分岐アルキル基である。Rにおける炭素数1〜4の直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。そして、具体的な一般式(3)で示されるテトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基としては、例えばアクリル酸テトラヒドロフルフリル残基、アクリル酸2−メチルテトラヒドロフルフリル残基、アクリル酸2−エチルテトラヒドロフルフリル残基等が挙げられる。
【0027】
本発明のポリマーとして使用されるフマル酸ジエステル重合体は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、GPC)により、測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が50,000〜250,000であることが好ましい。
【0028】
また、本発明のポリマーとして使用されるフマル酸ジエステル重合体は、例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジ−tert−ブチル、フマル酸ジ−n−ペンチル、フマル酸ジ−イソペンチル、フマル酸ジ−sec−ペンチル、フマル酸ジ−tert−ペンチル、フマル酸ジ−n−ヘキシル、フマル酸ビス−(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジシクロプロピル、フマル酸ジシクロブチル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル等のフマル酸ジエステル類のラジカル重合によって製造することができる。
【0029】
また、該フマル酸ジエステル重合体が、他の単量体残基を含有している場合には、前記フマル酸ジエステル類と、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、テトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類等をラジカル共重合することに得ることができる。
【0030】
前記ラジカル重合あるいはラジカル共重合は公知の重合方法、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれも採用可能である。
【0031】
本発明のポリマー溶液の製造方法では、発明の主旨を越えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤等を配合しても可能である。
【0032】
本発明により製造されるポリマー溶液は、一般的に溶液キャスト法として知られている方法でポリエチレンテレフタレートフィルムや金属板などの基材上に塗布することによってフィルムとすることが可能である。さらには塗布する前にポリマー溶液をフィルターを通すことにより異物を除去でき、高い透明性と優れた表面平滑性および厚み精度を有するフィルムとすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のポリマー溶液の製造方法により、高い透明性と優れた表面平滑性および厚み精度が要求されるポリマーフィルムを製造する溶液成膜法に適したポリマー溶液を製造できることが可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、断りのない限り用いた試薬は市販品を用いた。
【0035】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0036】
〜数平均分子量の測定〜
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名C0−8011(カラム;商品名GMHHR−Hを装着))を用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0037】
〜フマル酸ジエステル重合体の組成〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析より求めた。
【0038】
〜溶液粘度の測定〜
スピンドルタイプ粘度計(東機産業製、商品名TV−20)を用い、30℃で測定した。
【0039】
合成例1(フマル酸ジエステル重合体の合成)
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた5Lのオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)4g、蒸留水26000g、フマル酸ジイソプロピル1400g、および重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート7gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、450rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマー粒子を蒸留水で2回およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:75%)。
【0040】
得られたフマル酸ジイソプロピル単独重合体の数平均分子量は120,000であった。
【0041】
合成例2(フマル酸ジエステル重合体の合成)
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた50Lのオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)40g、蒸留水26000g、フマル酸ジイソプロピル13750g、アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル250gおよび重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート80gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマー粒子を蒸留水で2回およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:81%)。
【0042】
H−NMR測定により、フマル酸ジイソプロピル残基/アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基=97/3(モル%)であるフマル酸ジイソプロピル共重合体であることを確認した。得られたフマル酸ジイソプロピル共重合体の数平均分子量は150,000であった。
【0043】
実施例1
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン2.2kgとメチルエチルケトン2.2kgからなる混合溶剤に、フェノール系酸化防止剤3.8g(旭電化製、商品名AO−60)、リン系酸化防止剤11.7g(旭電化製、商品名PEP−36)を添加し、周速24m/sec.、かつ吐出流量Qと溶液量Vの比(以下、Q/V)12で、さらに攪拌羽根の直径dと撹拌槽の内径Dの比(以下、d/D)0.42の撹拌条件にて、合成例1で得られたフマル酸ジエステル重合体1.1kgを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は2700cPであり、未溶解物は目視で観察されず、均一なポリマー溶液であることを確認した。
【0044】
実施例2
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン0.5kgとメチルエチルケトン0.5kgからなる混合溶剤に、フェノール系酸化防止剤0.9g(旭電化製、商品名AO−60)、リン系酸化防止剤2.7g(旭電化製、商品名PEP−36)を添加し、周速19m/sec.、かつQ/V=27で、さらにd/D=0.53の撹拌条件にて、合成例1で得られたフマル酸ジエステル重合体0.25kgを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は2900cPであり、未溶解物は目視で観察されず、均一なポリマー溶液であることを確認した。
【0045】
実施例3
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン50gとメチルエチルケトン50gからなる混合溶剤に、周速10m/sec.、かつQ/V=22で、さらにd/D=0.57の撹拌条件にて、合成例2で得られたフマル酸ジエステル重合体25gを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は3000cPであり、未溶解物は目視で観察されず、均一なポリマー溶液であることを確認した。
【0046】
実施例4
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン4.2kgとメチルエチルケトン4.2kgからなる混合溶剤に、周速18m/sec.、かつQ/V=7.6で、さらにd/D=0.46の撹拌条件にて、合成例2で得られたフマル酸ジエステル重合体2.1kgを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は3000cPであり、未溶解物は目視で観察されず、均一なポリマー溶液であることを確認した。
【0047】
比較例1
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン0.46kgとメチルエチルケトン0.46kgからなる混合溶剤に、フェノール系酸化防止剤0.8g(旭電化製、商品名AO−60)、リン系酸化防止剤2.4g(旭電化製、商品名PEP−36)を添加し、周速9.1m/sec.、かつQ/V=7.7で、さらにd/D=0.50の撹拌条件にて、合成例1で得られたフマル酸ジエステル重合体0.23kgを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は3800cPであり、未溶解物を目視で観察した。
【0048】
比較例2
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン4.6kgとメチルエチルケトン4.6kgからなる混合溶剤に、周速26m/sec.、かつQ/V=19で、さらにd/D=0.65の撹拌条件にて、合成例1で得られたフマル酸ジエステル重合体2.3kgを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は3600cPであり、未溶解物(飛散ポリマー)を目視で観察した。
【0049】
比較例3
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン2.0kgとメチルエチルケトン2.0kgからなる混合溶剤に、フェノール系酸化防止剤3.5g(旭電化製、商品名AO−60)、リン系酸化防止剤10g(旭電化製、商品名PEP−36)を添加し、周速18m/sec.、かつQ/V=6.5で、さらにd/D=0.33の撹拌条件にて、合成例2で得られたフマル酸ジエステル重合体1.0kgを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は4000cPであり、未溶解物を目視で観察した。
【0050】
比較例4
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、トルエン60gとメチルエチルケトン60gからなる混合溶剤に、周速15m/sec.、かつQ/V=31で、さらにd/D=0.53の撹拌条件にて、合成例2で得られたフマル酸ジエステル重合体30gを添加した後、室温にて1時間撹拌を続けてポリマー溶液を得た。得られた溶液の溶液粘度は3500cPであり、未溶解物(飛散ポリマー)を目視で観察した。
【0051】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ディスパー型の攪拌羽根の一例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスパー型の撹拌羽根を備えた撹拌槽で、撹拌の周速が10〜25m/sec.、かつ吐出流量Qと溶液量Vの比(Q/V)が7〜30となる設定を与えた撹拌下でポリマーの溶解を行なうことを特徴とするポリマー溶液の製造方法。
【請求項2】
撹拌羽根の直径dと撹拌槽の内径Dの比(d/D)が0.4〜0.6とした設定でポリマーの溶解を行なうことを特徴とする請求項1に記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項3】
ポリマーが下記一般式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基50モル%以上からなる重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー溶液の製造方法。
【化1】


【図1】
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【公開番号】特開2008−184529(P2008−184529A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18933(P2007−18933)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】