ポリマー粒子の機械的特性の改良方法
【課題】ポリマー粒子の機械的特性(弾性率および硬度等)を改良する。
【解決手段】親水基および疎水基を有するポリマー粒子の機械的硬度を増大させる方法であって、極性溶剤中に存在させた該ポリマー粒子を、少なくとも1回の加熱段階およびその後でおこなわれる少なくとも1回の冷却段階から成る熱サイクルに付す工程を含む該方法。
【解決手段】親水基および疎水基を有するポリマー粒子の機械的硬度を増大させる方法であって、極性溶剤中に存在させた該ポリマー粒子を、少なくとも1回の加熱段階およびその後でおこなわれる少なくとも1回の冷却段階から成る熱サイクルに付す工程を含む該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを基材とする粒子の技術分野に関する。より詳しくは、本発明は、ポリマー粒子の形態的特性および機械的特性を改良する方法およびその用途に関する。
【0002】
本発明はまた、半導体加工の技術分野に関する。より詳しくは、本発明は、ポリマー粒子を研磨粒子として使用する化学機械的研磨(CMP;chemical mechanical polishing)法に関する。
【背景技術】
【0003】
ICの製造プロセスにおける銅の集積化は、CMPによってウェーハ表面から過剰材料を除去して該表面を平坦化する複式ダマスク加工法(dual damascene processing)を用いて行うことができる。
【0004】
CMPは、この種の表面全体の平坦化を達成するために銅製連結層に適用される加工法としては最良の方策である。一方、研磨法においては、スラリーは最も重要で不可欠な要因である。銅に対して使用されるCMP用スラリーは、研磨粒子と化学物質(例えば、無機酸、有機酸、腐蝕抑制剤、酸化剤および錯生成剤)から成る。使用される研磨剤等の無機粒子は高い除去率(RR)を示すが、硬質であるために、銅だけでなく、シリカ膜表面上にも多くのスクラッチや損傷をもたらす。
【0005】
軟質材料を完全に平坦化するためには、新規な研磨粒子として、ポリマーを基材とする粒子を開発する必要がある。
【0006】
未処理のポリマー研磨剤をレジストの研磨試験に供したところ、その除去率は、ポリマー製レジストよりも硬質な銅や低誘電率材料(low-k materials)等の他の材料に比べて十分ではなかった。酸化剤などの反応性の強い化学物質の添加によって、これらのより硬質な材料の除去が促進され、また、より大きな下方向へ作用する力(down force)によって研磨方法は改良されるが、より重大な問題点、例えば、金属に対する腐蝕および機械的損傷等がもたらされる。この種の化学物質をより硬質なパッドと併用することによって、除去効率を改善できるが、被処理表面が損傷を受けやすいので、該併用は避けることが好ましい。
【0007】
ポリマー粒子のこれらの欠点を解消するために、ポリマー粒子製コアを無機シリカ製シェルで被覆することによって研磨剤の硬度を改良する、いわゆる複合研磨剤が開発されている。ポリマー製コアは、圧縮できるという利点をもたらす。複合研磨剤の一例は特許文献1に記載されている。複合研磨剤のポリマー製コアは、下方向に対して局部的に大きな力が作用する領域において緩衝効果をもたらす。しかしながら、半導体の加工において一般的に使用されている銅や低誘電率材料等のような損傷を受けやすい材質の表面においては、無機材料製シェルの存在に起因してスクラッチが発生する。
【0008】
別の改良法によれば、ウェーハのキャリヤー上において下方向に作用する力を増大させることによって、材料除去率を増大させることはできるが、ウェーハ上での材料層の損傷、スクラッチ、離層または破壊が発生し易くなり、このことは、特に低誘電率材料の場合に問題となる。
【特許文献1】米国特許2004/0144755号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、本発明は、ポリマー粒子の機械的特性を改良することによってポリマー粒子を含有する市販の研磨性スラリーの欠点を解消し、これによって、例えば、半導体デバイスのCu構造体の研磨を、損傷を伴うことなく可能にすることを目的とする。
【0010】
本発明は、ポリマーを基材とする粒子の構造または形態を改変する方法を提供することを目的とする。換言すると、本発明は、ポリマー粒子の高分子的構造(macromolecular structure)および超分子的構造(supra-molecular structure)を改変する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、親水基および疎水基を有するポリマー粒子の機械的硬度を増大させる方法であって、極性溶媒中に存在させた該ポリマー粒子を、少なくとも1回の加熱段階およびその後でおこなわれる少なくとも1回の冷却段階から成る熱サイクルに付す工程を含む該方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法において、前記のポリマー粒子はコポリマーおよび/またはターポリマー粒子であることが好ましい。
【0013】
前記の少なくとも1回の加熱段階において、加熱温度はコポリマーまたはターポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)に達することが好ましく、より好ましくは当該温度を超える温度に達することである。前記の少なくとも1回の加熱段階における温度は最高で300℃までであり、前記の少なくとも1回の冷却段階における温度は最低で10℃までであってよい。好ましくは、前記の少なくとも1回の加熱段階における温度は最高で200℃までであり、前記の少なくとも1回の冷却段階における温度は最低で20℃までである。
【0014】
本発明に係る方法において、前記の熱サイクルは、溶剤の蒸発を回避するために密閉反応器中で行う。
【0015】
前記の少なくとも1回の加熱段階において、温度は5〜10℃/分の昇温速度で上昇させることが好ましい。
【0016】
前記の少なくとも1回の冷却段階において、温度は15〜30℃/分の降温速度で降下させることが好ましい。
【0017】
本発明に係る方法において、前記の極性溶媒は水であることが好ましい。
【0018】
前記のポリマー粒子は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートを含有するか、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートから成っていてもよい。
【0019】
前記のポリマー粒子は、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコール−メタクリレートを含有するか、あるいは、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコール−メタクリレートから成るものであることが好ましい。
【0020】
前記のポリマー粒子は、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび4−ビニルピリジンから成るターポリマー粒子であることがより好ましい。
【0021】
本発明に係る方法は、前記の熱サイクルの後、コポリマーおよび/またはターポリマー粒子を無機シェルまたは無機化合物で被覆する工程をさらに含むことができる。
【0022】
前記の無機シェルはシリカであることが好ましい。
【0023】
本発明の別の目的は、本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子、特にコポリマーまたはターポリマー粒子を提供することである。
【0024】
前記のコポリマーまたはターポリマー粒子は、弾性率(E)4GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を示すことができる。
【0025】
前記の弾性率(E)は、ナノ圧子(nanoindenter)または原子間力顕微鏡(AFM)によって行われるナノ圧痕測定により測定され、前記の硬度はナノ圧子によって測定される。
【0026】
本発明は、本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子を含む、化学機械的研磨で使用するための研磨性スラリー組成物も提供する。
【0027】
本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子は、乾燥状態または湿潤状態のいずれかの状態で、研磨剤粒子として使用できる。
【0028】
本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子は、銅層、低誘電率誘電層(low-k dielectric layers)(すなわち、誘電率kが3.9未満の層)、感光層、または半導体ウェーハ基板等の半導体デバイスの層を研磨するのに使用できる。
【0029】
本発明に係る方法は、ポリマー粒子の機械的特性を、当該ポリマー粒子の粒度および/または形態の実質的な変化を伴うことなく改良することを可能にする。
本発明に係る方法はまた、ポリマー粒子の機械的特性を、該ポリマー粒子の初期粒度分布の実質的な変化を伴うことなく改良することを可能にする。
【0030】
全ての添付図面は本発明の幾つかの側面および具体例を説明することを意図するものであって、全ての代替的態様および選択肢を示すわけではないので、本発明は添付図面の内容に制限されるものではない。
【0031】
本発明は、ポリマー粒子の硬度および弾性率等の機械的特性を改良する方法を提供する。
【0032】
より詳しくは、ポリマー粒子の機械的特性、特に硬度を改良するための本発明に係る方法は、極性溶媒中に含まれるポリマー粒子、好ましくはコポリマーおよび/またはターポリマー粒子であって、親水基および疎水基を含有するポリマー粒子を、各熱サイクルが少なくとも1回の加熱段階およびその後の少なくとも1回の冷却段階から成る少なくとも1回の熱サイクルに供する工程を含むものである。
【0033】
本発明において、ポリマー粒子はホモポリマー粒子またはヘテロポリマー粒子を示す。
コポリマーは一般に、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって得られる生成物を示すが、本発明においては、正確には2種類の異なるモノマーの重合によって得られる生成物を示す。ターポリマーは正確に3種類の異なるモノマーの重合によって得られる生成物を示す。「ヘテロポリマー」は、コポリマー、ターポリマーおよび3種類を越える異なるモノマーの重合により得られるポリマーを包含することを意味する。
【0034】
本発明においては、本発明の方法によって得られるポリマー粒子に対しての用語「結晶質」は、増大した結晶質相および非晶質相から成る半結晶質形態を示すものとする。結晶質相には、ポリマー鎖自体が最少のエネルギーコンホメーションで、特有のタクチシティーを構造に付与しながら配向する、より秩序化された領域が存在する。
【0035】
本願明細書に記載された本発明で使用されるポリマー粒子は、2種類の異なるモノマーが結合したポリマー(コポリマーと呼ぶ)粒子および/または3種類の異なるモノマーが結合したポリマー(ターポリマーと呼ぶ)粒子が好ましい。
当該ポリマーにおけるモノマー、特にコポリマーにおけるモノマー、またはターポリマーにおけるモノマーは、疎水基および親水基を組み合わせて含有するものである。
本発明に係る方法で使用されるモノマーはビニル基を有することが好ましい。
【0036】
本発明の方法で使用されるポリマー、特にコポリマーおよび/またはターポリマーに含有されるモノマーは、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキル基の炭素原子数が1〜24のアルキル−(メタ)−アクリレート類、ビニル芳香族モノマー類(例えば、ビニルピリジン、アルキルビニルピリジン、ビニルブチロラクタム、ビニルカプロラクタム)、モノカルボン酸、ジカルボン酸、イタコン酸、置換ビニル芳香族モノマー類、オレフィン類(例えば、プロピレン、イソブチレン、または炭素原子数10〜20の長鎖アルキルオレフィン類)、ビニルアルコールエステル類(例えば、ビニルアセテート、ビニルステアレート)、ビニルハライド類(例えば、ビニルフロオリド、ビニルクロライド、ビニリデンフルオリド)、およびビニルニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)からなる群から選択できる。
【0037】
本発明の方法で使用されるコポリマーまたはターポリマーは以下に示す組み合わせのモノマーの重合によって得ることができる:
−(メタ)アクリル酸と、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、
−(メタ)アクリル酸と、スチレンまたは他のビニル芳香族モノマー類、
−アルキル(メタ)アクリレート類(アクリル酸またはメタクリル酸のエステル類)と、モノまたはジカルボン酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸またはイタコン酸、
−ハロゲン(すなわち、塩素、フッ素、臭素)、ニトロ、シアノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミノ、アミノアルキル等の置換基を有する置換ビニル芳香族モノマー類と、不飽和モノまたはジカルボン酸および/またはアルキル(メタ)アクリレート、
−窒素環を含有するモノエチレン型不飽和モノマー類、例えば、ビニルピリジン、アルキルビニルピリジン、ビニルブチロラクタム、ビニルカプロラクタムと、不飽和モノまたはジカルボン酸、
−オレフィン類、例えば、プロピレン、イソブチレン、または炭素原子数10〜20の長鎖アルキルオレフィン類と、不飽和モノまたはジカルボン酸、
−ビニルアルコールエステル類、例えば、ビニルアセテートおよびビニルステアレートおよび/またはビニルハライド類、例えば、ビニルフロオリド、ビニルクロライド、ビニリデンフルオリドおよび/またはビニルニトリル類、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルと、不飽和モノまたはジカルボン酸、
−アルキル基の炭素原子数が1〜24のアルキル(メタ)アクリレート類および不飽和モノカルボン酸、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸。
【0038】
本発明の方法で使用されるコポリマーおよびターポリマーのそれぞれについては、疎水性が異なる2または3種類のモノマーを使用することが好ましく、これによって熱サイクル後における水中での優先的な配向がもたらされる。この種のポリマーとしては、例えば、特に制限されるものではないが、ポリメチルメタクリレートおよびポリスチレンを基材とするコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。
【0039】
ポリマー粒子は、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートを含有するか、あるいはポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートから成ることが好ましい。
本発明の方法において、熱サイクルに付される出発ポリマー粒子として使用される好ましいコポリマーはメチルメタクリレート(MMA)およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPGEMA)の重合によって得られるものである。
本発明の方法において、熱サイクルに付される出発ポリマー粒子として使用される好ましいターポリマーはメチルメタクリレート(MMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPGEMA)およびビニル−ピリジン(特に4−ビニル−ピリジン)の重合によって得られるものである。
【0040】
本発明の方法は、熱処理、特に連続的な加熱および冷却からなる熱サイクルを含むものである。熱サイクルは、少なくとも1回の加熱段階およびその後に続く少なくとも1回の冷却段階を含むことができる。熱サイクルは、1回の加熱段階、その後に続く1回の冷却段階、およびその後に続く1回の加熱段階を含むことができる。熱サイクルは、1回の加熱段階、およびその後に続く1回の冷却段階を含むことが好ましい。
【0041】
ポリマー粒子内部での再配向を得るためには、少なくとも1回の加熱/冷却サイクルが必要である。所望により、当該加熱/冷却サイクル(即ち、熱サイクル)をさらに1回、2回またはそれ以上繰り返すことができる。
【0042】
加熱および冷却中における温度は最低で10℃および最高で300℃の範囲内で変化させることが好ましく、より好ましくは、室温(約20℃)と200℃の間で変化させる。
【0043】
加熱段階中に到達する温度は、ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)を越える温度であることが好ましい。Tgは非晶質ポリマー(または部分的結晶質ポリマーにおける非晶質領域)が、硬くて比較的安定な状態から粘稠またはゴム状態に変化する温度である。
【0044】
熱処理を意図的におこなうことにより、十分な熱エネルギーを付与し、ポリマー鎖の別のコンホメーションを達成するための活性エネルギー障壁を越えるようにする。当該別のコンホメーションはより秩序化された結晶構造であることが好ましい。
【0045】
加熱段階中の温度は、コポリマーおよび/またはターポリマーのガラス転移温度(Tg)に達することが好ましい。異なるポリマーの混合物の場合、加熱段階中の温度は、少なくとも最低のTgに達することが好ましく、より好ましくは最高のTgに達することである。特に、加熱段階中で採用される温度は最高で300℃までであることが好ましく、より好ましくは最高で200℃までである。
【0046】
冷却段階は最低で10℃までの温度であることが好ましく、より好ましくは最低で20℃までである。
【0047】
より好ましい熱サイクルは、最高で200℃までの1回の加熱段階、およびその後に続く最低で20℃までの1回の冷却段階を含む。
さらに好ましい熱サイクルは、温度を、ポリマー、特にコポリマーおよび/またはターポリマーのTgを越え、かつ最高で約200℃までの温度に上げる1回の加熱段階、およびその後に続いて最低で室温(すなわち約20℃)までである1回の冷却段階を含む。
【0048】
熱処理中、個々のモノマー鎖における疎水基および親水基は極性溶媒の存在下で交互にそれ自体で再配向できる。そのため熱処理を極性溶媒(すなわち双極子モーメントが異なり、かつ0より高いいずれかの適切な溶剤)の存在下で行うと、個々のモノマーから成るポリマー鎖は再秩序化され、コポリマーまたはターポリマーを基材とするポリマー粒子の結晶化が起こり得る。
【0049】
極性溶剤の好ましい具体例は、アルコール類(例えばメタノール、エタノール)、アセトンであり、より好ましくは水である。
【0050】
熱サイクルは、緩やかな加熱段階およびその後に続く迅速な冷却段階を含むことが好ましい。緩やかな加熱段階は、好ましくは約5℃/分〜約10℃/分の昇温速度(本発明の方法においては、5℃/分未満、および6℃/分、7℃/分、8℃/分、9℃/分、11℃/分、または12℃/分を採用することができる)で加熱することを意味し、これによってポリマー鎖の再配向が促進される。
【0051】
本発明の最も好ましい方法においては、加熱段階中に到達する温度は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも少なくとも数度(即ち、1℃,2℃,3℃,10℃,またはこれよりも高い温度)高い温度である。
【0052】
緩やかな加熱段段階の後に迅速な冷却段階を続けることによって、変化したコンホメーションをブロック化することが好ましい。このような変化したコンホメーションは、より高い結晶状態に相当することが好ましく、これによって機械的特性の改良が促進される。
【0053】
迅速な冷却段階においては、約15℃/分から20℃/分までの降温速度で冷却がおこなわれる。本発明の方法においては、14℃/分、16℃/分、17℃/分、18℃/分、19℃/分もしくは21℃/分またはそれ以上の降温速度で冷却をおこなうこともできる。
【0054】
本発明の方法は、ポリマー粒子、特に新規なコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子の製造方法であって、本願明細書に記載の適切なモノマーを重合させる工程、およびこれによって得られたポリマー粒子を、本願明細書に記載の熱サイクルに付する工程を含む該製造方法によって規定することもできる。
【0055】
熱サイクルは、温度を、先行する段階で得られたポリマー粒子のTgを越える温度まで上昇させる少なくとも1回の加熱段階、およびその後に続いて温度を室温(すなわち約20℃)まで降下させる少なくとも1回の冷却段階を含むことが好ましい。
【0056】
熱サイクルは、温度をポリマー粒子のTgを越える温度まで、好ましくは約10℃/分未満の昇温速度で上昇させる1回の加熱段階、および温度を室温まで、好ましくは約15℃/分を越える降温速度で降下させる1回の冷却段階から成ることがより好ましい。
【0057】
本発明によるポリマー粒子は、未処理ポリマー粒子と比較して幾つかの利点、例えば、pHに対する安定性等の利点をさらに有する。
本発明によるポリマー粒子を溶液中で安定化させるためには、界面活性剤の添加は不要である。
【0058】
非常に低濃度(微量)のカチオン性界面活性剤の添加であっても、ポリマー粒子に正のゼータ電位(zeta potential)が誘導されるので、pHの影響(即ち、pHの変化)がポリマー粒子の挙動に大きな影響を与える。
本発明による方法においては、親水基および疎水基を変えることによってモノマーが選択されるため、ポリマー粒子の製造中または処理中において界面活性剤を必要としない。本発明方法によって得られる処理されたポリマー粒子自体はミセル状構造として作用する。
【0059】
ポリマー粒子の粒度、粒度分布または形態を変化させる機械的特性(例えば弾性率または硬度)を改良するために採用される従来の方法に比べて、本発明の方法によれば加熱および冷却の熱サイクルによって利点が得られる。例えば、製造時の架橋剤の使用によって、粒度について高い単分散度(monodispersity)を達成することが非常に困難になる。
【0060】
これに対して、本発明の方法によれば、得られた粒子の粒度について高い単分散度を達成することができる。
このような高い単分散度とは好ましくは、粒子の平均粒度(または粒径)の標準偏差が約5〜10%であることを示す。換言すれば、粒子は好ましくは約90%を越える粒度(または粒径)(より好ましくは約95%を越える粒度)の均一性を示す。
本発明によって得られたポリマー粒子の粒度は数百ナノメーターからミクロンサイズに及び得る。
【0061】
本発明による熱処理サイクル中において、ポリマー粒子の初期粒度(分布)は実質的に変わらない。
しかしながら、ポリマー粒子の初期粒度は、モノマー含有量、製造温度および開始剤の種類等のパラメーターによって製造時に変化させることができる。
【0062】
本発明に係る方法においては、異なる種類のポリマー粒子を用いることによって本発明によるポリマー粒子を得ることができる。
好ましくは、出発ポリマー粒子は、親水基および疎水基を有するモノマーから得られるコポリマーおよび/またはターポリマーから製造される。
【0063】
加熱段階においては、加熱温度を上げることによって、ポリマー鎖の回転および再編成のための活性化障壁( activation barrier)を越えるのに必要なエネルギーが付与される。迅速な冷却段階においては、このような再編成は、実際にエネルギー的により安定なコンホメーションが得られるように固定化される。
【0064】
極性溶剤はポリマー粒子を構成する個々のモノマーの親水基と特有の相互作用をするため、熱処理中のポリマー粒子内でのポリマー鎖の再編成効果は、極性溶剤(好ましくは水)の存在下でのみ得られる。該相互作用によって、該親水基が極性溶剤方向に向かって配置される再配向(即ち、該親水基がポリマー粒子の外側に向かって配置される再配向)がもたらされる。
【0065】
本発明に係る方法によって得られるポリマー粒子が、結晶質相および非晶質相からなる半結晶質形態を示すことが観察されている。結晶質相中には、特有のタクチシティーをポリマー構造に付与する最少エネルギーのコンホメーションにおいてポリマー鎖自体が配向するより秩序化された領域が存在する。
【0066】
ポリマーの機械的特性は、主として、当該ポリマーにおける結晶化度やポリマー鎖の配向によって決定される。
本発明において、ポリマー鎖の再配向は、熱処理/サイクル中における当該ポリマー鎖と溶剤分子との相互作用によって達成される。実際は、溶剤の極性(または親水性度(hydrophilicity))は、ポリマーの親水性セグメントとの相互作用を誘発するのに重要である。使用される極性溶剤の好ましい例として、水が挙げられる。その他の極性溶剤としては、例えばメタノールおよび/またはエタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0067】
本発明によるポリマー粒子を無機化合物で被覆することによって、複合ポリマー粒子を得ることができる。
【0068】
本発明によるポリマー粒子(特に、コポリマー粒子および/またはターポリマー粒子並びに複合ポリマー粒子)は化学機械的研磨(CMP)用の研磨剤(ポリマー研磨剤とも呼ばれる)として使用できる。
本発明の方法によって得られる複合ポリマー粒子、並びにコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子は、銅や低誘電率材料(即ち、誘電率kが3.9未満の材料)等のような容易に損傷を受けやすい材質の表面に対して特に適している。
【0069】
本発明によるポリマー粒子は、シリカ、アルミナまたはセリア等の無機硬質研磨剤と比較して、より良好な機械的特性を有する。
本発明によるポリマー研磨剤において、CMP法で作用する下方向に作用する力等のような、外部の機械的荷重に応じて生じる変形のミクロ機械的作用(micromechanical processes)は、硬質無機研磨剤と比較して、より一層制御し易く、本発明によるポリマー粒子には、従来の粒子の状態と比較して、CMP等のような幾つかの応用方法において著しい利点が付与される。
【0070】
本発明のポリマー研磨剤は研磨性スラリーに使用することができる。
本発明は当該研磨性スラリーを提供することも目的とする。
【0071】
本発明の研磨性スラリーは、酸化剤、防錆剤、および/または界面活性剤等のような当業者に既知の適当な全ての化合物または添加剤をさらに含有することができる。
【0072】
別法として、本発明のポリマー粒子(またはポリマー研磨剤)を、既存の市販されているCMP研磨性スラリーに添加し、当該スラリーの性能を改良することができる。
別法として、ポリマー粒子のコア内部に酸化剤等の化学物質を封入でき、そのためこれらの粒子が下方向に作用する力を示す過程、例えば、CMP工程中、これらの化学物質は徐々に放出される。
【0073】
本発明によるポリマー粒子は、CMPの後洗浄用の溶液またはスラリーにおいて使用することもできる。
本発明の目的でもある当該CMPの後処理用スラリーまたは溶液はCuのCMP工程後に適用できる。
本発明に係るCMPの後洗浄用溶液またはスラリーは、CMP工程後において残留する生成物および/または不要な生成物を除去するために使用できる。
【0074】
CuのCMP工程は通常、多段テーブル型CMP工具( multi-platen CMP tool)上で行われ、これによってウェーハの処理量および平滑性が最適化される。第1テーブルは、パターン化されてエッチングされた特徴的形態(features)上の不要なCuを1次的に除去するために使用される。バルク材料が除去された後、ウェーハを第2テーブルに移送し、残留物(Cu)およびバリア金属を、非選択性のスラリーを用いて同時に除去する。最後に、ウェーハを第3テーブル上でバフ研磨ステップに供し、表面を平滑化すると共に、残留する全てのバリア金属を除去する。このCMP工程において、後に行うリンスおよびバフ研磨ステップは、微小スクラッチの発生を最少にし、平滑性を上げることを目的とするものである。この場合、適用される下方向に作用する力は非常に低いので、軟質パッドを用いることが好ましい。
【0075】
軟質ポリマーを基材とするスラリー(本発明に係るポリマー粒子を含有するスラリー)は、従来のCMPの後洗浄用スラリーに比べて高い除去率を示し、その結果、この最後のバフ研磨ステップが十分に改善される。
【0076】
好ましい具体例によれば、メチルメタクリレート(MMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)および4−ビニル−ピリジン(4ViPy)の重合によって得られるターポリマー粒子(「TER−P」と呼ぶこともある)は、本発明に係る方法において出発ポリマーとして使用される。
MMA/MPEGMA/4−ViPyの比率はそれぞれ2/1/1〜30/1/1とすることができる。
MMA/MPEGMA/4−ViPyの好ましい比率はそれぞれ15/1/1である。
【0077】
好ましい別法においては、MMAおよびMPEGMAモノマーの重合によって得られるコポリマー粒子は本発明に係る方法の出発ポリマー粒子として使用できる。
【0078】
このような好ましいターポリマー粒子およびコポリマー粒子は、熱処理/サイクルに際して、水中において、そのガラス転移温度(Tg)より少し高温の約130℃で熱容量の追加的なショルダーを示す。
【0079】
本発明による方法においては、熱処理によって、ポリマー鎖の再配向に起因するポリマー粒子の結晶化度の上昇が起こる。親水基は極性溶剤の極性分子に向かって配向し、これによって達成される再配向により、より秩序化された構造を示すと共に、著しい機械的特性を有する、より良好な結晶質構造がもたらされる。実際は、ポリマー粒子の機械的特性は主に、ポリマー粒子中に存在する結晶の度合いおよびポリマー粒子中のポリマー鎖の配向によって決定される。
【0080】
示差走査熱量法(DSC)を用いて、実験室規模での本発明によるポリマー粒子の熱処理および分析を行うことができる。
他の技術を用いて、加熱中に増加する圧力に耐えることができる温度制御装置付き密閉反応器のような大きな規模で熱処理を行うことができる。
【0081】
TER−Pポリマー粒子が乾燥状態(乾燥粉末配合物)で示したDSC曲線を図2に示す。25℃から200℃まで10℃/分での加熱段階、その後の200℃から25℃まで10℃/分での冷却段階、およびその後の25℃から200℃まで10℃/分での第2加熱段階からなる熱サイクルの後、TER−Pポリマー粒子に結晶化は観察されない。
【0082】
図3において、コロイド溶液中のTER−Pポリマー粒子(換言すると、利用できる極性溶剤を有するもの)のDSC曲線を示す。図3は、図2で適用した同様の熱サイクル時における130℃での結晶化発熱ピークを示す。
換言すると、皿(pan)の中に極性溶剤(水)を存在させたTER−Pポリマー粒子についてのみ、結晶化が起こる。利用できる溶剤がDSC用の皿中にない場合(乾燥ポリマー粒子の場合)は、熱処理(および測定)時において、ポリマー鎖の再秩序化は起こらない。
【0083】
水中で熱サイクルに供されたCO−Pポリマー粒子のDSC曲線では、図4に示すように、同様の結晶化効果がより小さい程度で観察できる。界面活性剤の存在下では、図5に示すように、結晶化効果は観察されない。
ポリマー粒子(コア)をシリカシェルで被覆した後、水中での熱サイクルに供した場合は、図6A(TER−C−A)および図6B(TER−C−B)に示すように、結晶化は観察されない。
【0084】
加熱および冷却の熱サイクル後に得られたポリマー粒子は、集積回路(IC)製造工業で使用されるCuおよび低誘電率材料のような軟質で容易に損傷を受けやすい新規材料に対して困難な化学機械的平滑化(CMP)において利用することができる。
本発明によるポリマー粒子は、シリカ、アルミナまたはセリア等の無機硬質研磨剤を用いる従来のCMP法と比較して、機械的な研磨作用をより少なくするために(換言すれば、下方向へ作用する力を印加した後で、より圧縮的な作用をもたらすために)、研磨機構の調整を目的として使用することが好ましい。
【0085】
熱処理後に得られる構造を有する本発明によるポリマー粒子は、化学機械的研磨で使用するために、それ自体として使用することもできるし、または研磨性スラリーに添加して使用することもできる。
【0086】
ポリマー粒子は、溶剤の存在下で(換言すると、「湿潤」状態で)使用するか、または水性組成物として使用する態様が好ましい。この理由は、該ポリマー粒子の機械的特性が最大に増大されるからである。
研磨性スラリーは、半導体基板上の銅および/または損傷を受けやすい材質の表面を研磨するのに使用されることが好ましい。
研磨性スラリーに、酸化剤および/または界面活性剤および/または防錆剤等の添加剤をさらに添加して、当該スラリーの性能を改良することができる。
【0087】
別法においては、好ましくは、熱処理後において本発明によるポリマー粒子を無機被膜でさらに被覆することができる。
例えば、「TER−P」ポリマー粒子は、シリカ粒子(直径=30nm)製の連続的な「ラズベリー状」の被膜で被覆することができる。この被膜は、コア(ポリマー)とシェル(シリカ)との間の界面でシランカップリング剤を用いておこなうことができ(「TER−C−A」と呼ぶ)、また、該シランカップリング剤を用いなくてもおこなうことができる(「TER−C−B」と呼ぶ)。
【0088】
本発明に係る方法によって得られるコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子は、乾燥状態(即ち、溶剤が存在しない状態)で、6GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を示す。特に、当該粒子は約6〜約10GPaの弾性率(E)および約0.25〜約1GPaの硬度を示す。
湿潤状態において、当該コポリマー粒子および/またはターポリマー粒子は、4GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を示す。特に、当該粒子は約4〜約10GPaの弾性率(E)および約0.25〜約1GPaの硬度を示す。
【0089】
硬度(H)はナノ圧子によるナノ圧痕測定法を用いて測定されている。
弾性率(E)はナノ圧子またはAFM(原子間力顕微鏡)を用いる方法によるナノ圧痕測定法を用いて測定されている。
【0090】
ナノ圧痕測定法は従来の硬度試験に類似した技術を指すが、該試験よりもさらに小スケールで行われるものである。鋭利なダイアモンド圧子を試験材料に圧入するのに要する力を圧痕深さの関数として測定する。使用器具の名前から明らかなように、深さ分析はナノメータースケールであるので、圧痕実験は薄膜に対してでも実施可能である。ナノ圧痕実験で容易に得ることができる2つの物性値は、試験材料の弾性率Eおよび硬度Hであり、これらの物性値は降伏強さと相関させることができる。
【実施例】
【0091】
以下の実施例で用いた原料は、メチルメタクリレート(MMA;99%純度;アルドリッチ社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA;平均分子量454;アルドリッチ社製)、4−ビニルピリジン(4−ViPy;95%純度;アルドリッチ社製)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(97%;シグマ−アルドリッチ社製)および4−ビニルピリジン(95%純度;アルドリッチ社製)である。これらの原料は、さらに精製することなく、そのまま用いた。
【0092】
pH溶液は、バックグラウンド電解質として、10−3MのHCl、NaOH、およびNaCl(和光ケミカル株式会社から入手した分析グレード品)を用いて調製した。
【0093】
実施例1:出発原料としてのポリマー粒子の製造
K.ニシモト等による方法(米国特許第6,582,761号明細書参照)の変形法を採用して、界面活性剤−ラジカル重合によって、ポリ−メチルメタクリレート(PMMA)を基材とするポリマー粒子を製造した。
【0094】
典型的な重合方法は以下の通りである:
メチルメタクリレート(MMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)、およびイオン交換水(DIW)を丸底3つ口フラスコ内に装填した。
【0095】
粒子の凝集を防止するために、第3のコモノマーとして 4−ビニルピリジン(4−ViPy)を反応系に添加した。この溶液を撹拌しながら70℃まで加熱した。
【0096】
その後、アザ型重合開始剤として、水に予め溶解させた2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(APDH)を反応物に添加した。
【0097】
操作の開始前、すなわちモノマーを添加する前に、酸素効果を除くために、溶液を窒素でパージし、次いで、熱重量分析で測定される転化率が80〜90%を越えるまで反応を窒素ガス雰囲気下で行った。
【0098】
最後に、反応系を氷水浴で急冷させて反応を停止させた。
【0099】
ポリマー粒子の最終的寸法は、367±15nm(100の測定値の平均値として走査電子顕微鏡により測定した値)および494±59nm(水中での動的光散乱により測定した値)であった。
【0100】
実施例2:製造後の処理
実施例1で示した製造法により得られた分散液を遠心分離し、上澄み溶液を廃棄し、超音波処理法を用いて脱イオン水にポリマー粒子を再懸濁させた。この操作を3回繰り返した。
【0101】
上記の処理によって、PMMAナノ粒子に正の表面電荷(ζ電位)を付与した。
【0102】
遠心分離処理/超音波処理サイクルは粒子の精製に必要である。正の表面電荷によって溶液中でのポリマー粒子の静電的安定化が促進される。超音波処理中、粒子は再秩序化が起こる以上に再分散化がおこなわれ、ポリマー粒子の相互凝集が継続して十分に防止される。
【0103】
実施例3:ポリマー粒子の熱処理
加熱段階およびその後の冷却段階からなる熱処理は、示差走査熱量法(DSC)で監視しながらおこなった。
【0104】
DSCの実施装置は熱分析器具であり、物質転移(material transitions)と関連する温度および熱流を、時間および温度の関数として測定するものである。
【0105】
熱サイクルによって、結晶化度の割合ならびに物質の結晶化速度および相転移に関する情報を得ることができる。
【0106】
熱流束(heat flux)DSCにおいて、サンプル材料を入れた皿および空の対照皿を、炉で囲まれた熱電ディスク(thermoelectric disk)上に置く。炉を一次的な加熱速度で加熱し、熱電ディスクを経てサンプルおよび対照皿に熱を伝達させる。しかしながら、サンプルの熱容量のために、サンプル皿と対照皿との間に温度差が生じ、これを面熱電対(area thermocouples)によって測定し、その結果として生じる熱流をオームの法則:q=△T/R(式中、qはサンプルの熱流、△Tはサンプルと対照との温度差、およびRは熱電ディスクの抵抗である)の熱当量によって測定する。
【0107】
測定のための主な操作は以下の通りである:
−器具とともに既知量のインジウムおよびベンゾフェノンを検量し、
−皿のタイプおよび材料を選択し、
−サンプルを調製し、
−TA器具制御ソフトウェアによって、試験方法を案出するか、または選択し、サンプルおよび器具の情報を入力し、
−パージガスの流量をセットし、
−サンプルを装填し、セルのふたを閉じ、次いで
−実験を始める。
【0108】
固形粉体またはコロイド水溶液としての各サンプルについて、熱サイクルを2回繰り返した。100℃を越える水溶液の試験のためには、気密皿の使用が最良であった。
【0109】
DSCにおけるサンプルの一般的な質量範囲は約1〜10mgとした。固形化合物および5重量%水溶液の使用量は約10mgとした。
【0110】
熱サイクルの一例を以下に挙げる:
1)5分間25℃で保持、
2)25℃から200℃まで10℃/分で加熱、
3)5分間200℃で保持、
4)200℃から25℃まで15℃/分で冷却、
5)5分間25℃で保持、
6)25℃から200℃まで10℃/分で加熱、
7)5分間200℃で保持、
8)200℃から25℃まで15℃/分で冷却。
【0111】
加熱中、サンプルは熱的平衡にあることが好ましく、熱的平衡を達成するためには、加熱速度はできるだけ遅いことが好ましい。
【0112】
実施例4:複合粒子の製造
(ポリマー)コアと(シリカ)シェルとの間にシランカップリング剤を含む複合粒子は、機械的特性を改良する本発明による方法(実施例3で記載した熱処理法)によって得られたPPMAナノ粒子を出発原料とし、以下のようにして製造した。
【0113】
先に合成したPMMAを基材とするポリマー粒子を含有する水性分散液を丸底3つ口フラスコに装填し、(クロロメチル)トリメチルシランを添加し、混合物を低いpH条件下で撹拌した。
【0114】
この第1段階によってシラン化PMMAを基材とするポリマー粒子の水性分散液が得られ、これをコロイドシリカ粒子懸濁液に添加することによって、シリカ粒子がポリマー粒子に付着した粒子の分散液を得ることができる。
【0115】
これを達成するために、コロイドシリカ粒子を含有する水性分散液(pH8)を先の溶液に添加した。この水性分散液にビニルトリエトキシシランを添加し、混合物を撹拌した後、TEOSを添加し、得られた混合物を60℃まで加熱し、撹拌後、冷水浴で冷却した。
【0116】
このようにして、複合粒子を含有する水性分散液を得た。
【0117】
直径が30nmのシリカのシェルを有する複合粒子の最終的寸法は、453±27nm(走査電子顕微鏡により測定した値)および554±67nm(水中での動的光散乱法により測定した値)であった。
【0118】
別法として、複合粒子は以下に示すようにして製造できる。PMMAを基材とするポリマー粒子を含有する水性分散液(pH2)を、コロイドシリカを含有する水性分散液と混合して得られた水性分散液(pH5)を撹拌することによって、複合粒子を含有する水性分散液を得た。
【0119】
別法によって得られた複合粒子(直径が30nmのシリカのシェルを有する複合粒子)の最終的寸法は、440±18nm(走査電子顕微鏡により測定した値)および567±64nm(水中での動的光散乱法により測定した値)であった。
【0120】
実施例5:ポリマー粒子のナノ圧痕測定
図7では、ポリマー粒子を含む厚み約1ミクロンの層(ポリマー粒子はステープル留めした)の圧痕深さ500nm(塑性変形)でのナノ圧痕測定より得られた試験材料の弾性率Eおよび硬度Hを図示する。
【0121】
材料の弾性率Eおよび硬度Hは降伏強さに相関させることができる。
E値は、未処理TER−Pポリマー粒子の3GPaから、本発明による熱処理後のTER−Pポリマー粒子の7GPaに改良される。
図7Bに示されるように、硬度(H)値は、未処理TER−Pポリマー粒子の0.08GPaから、熱処理TER−Pポリマー粒子の0.25GPaに改良された。
【0122】
図8は、新しく切り出したマイカ基板上に堆積(deposit)させたTER−P−処理粒子単一層に、より小さな圧痕深さ(50nm未満)を与える技術を適用したときのAFMナノ圧痕測定の結果を図示する。測定は空気中および水中で行った。
【0123】
図8Aは、AFMにより測定された、空気中における処理後のTER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
図8Bは、AFMにより測定された、水中における処理TER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
図8Cは、比較として、AFMにより測定された、空気中における未処理TER−Pおよび複合TER−C−AおよびTER−C−Bについての力−圧痕曲線を図示する。
図8Dは、比較として、AFMにより測定された、水中における未処理TER−Pおよび複合TER−C−AおよびTER−C−Bについての力−圧痕曲線を図示する。
【0124】
水中における処理TER−Pサンプルの力−圧痕曲線から算出したE値(図8Eに図示する)は4GPaであり、空気中(溶剤除去後の乾燥状態)では6.5GPaである。固体状態の粒子は湿潤粒子と比較して硬いことが知られている。未処理TER−P−粒子について水中におけるE値は1.6であり、乾燥状態(空気中)においてE値は1.6GPaから4GPaに増加する。
【0125】
力−圧痕曲線からヤング率の定量的値を得るために、接点の連続体力学から古典的ヘルツ接触モデル(classical Hertzian contact models)を使用できる:
E2=[3F(1−ν22)/4δ3/2][(R1+R2)/R1R2]1/2
(式中、δは圧痕深さであり、Fは印加される荷重であり、R1およびR2はそれぞれ球状又は放物線状圧子および圧痕された粒子の曲率半径であり、E2は当該粒子の表面弾性率であり(チップ(tip)のEは130〜160であると考える)、およびν2はサンプルのポアソン比である)。PMMAを基材とするターポリマー(および複合体)のポアソン比は知られていないため、計算上、バルクPMMAのポアソン比(ν2=0.38)を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】本発明のポリマー粒子の製造のための出発原料として使用されたPMMAを基材とするターポリマー粒子の製造法について図示する。
【図1B】ポリマーコアおよびシリカシェルとともにその界面でシランカップリング剤を有する複合研磨剤ポリマー粒子の製造法について図示する。
【図2】比率15/1/1のメチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)−4−ビニルピリジン(4−ViPy)ターポリマー(TER−P)の乾燥粉体配合での示差走査熱量曲線を示す。
【図3】本発明の熱処理後における比率15/1/1のメチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)−4−ビニルピリジン(4−ViPy)ターポリマー(「TER−P」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図4】メチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)コポリマー(「CO−P」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図5】カチオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート(CTAHS)の存在下で製造されたメチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)−4−ビニルピリジン(4−ViPy)ターポリマー(「TER−P−S」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図6A】コアとシェルとの界面にシランカップリング剤を有して製造された、シリカ粒子(直径=30nm)製の連続「キイチゴ状」被膜を有する「TER−P」(「TER−C−A」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図6B】コアとシェルとの界面にシランカップリング剤を有することなく製造された、シリカ粒子(直径=30nm)製の連続する「ラズベリー状」の被膜を有する「TER−P」(「TER−C−B」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図7A】約1ミクロンの粒子層の圧痕深さ500nm(塑性変形)でのナノ圧痕測定に基づく材料の弾性率(E)を図示する。E値は3GPa(未処理TER−P)から7GPa(処理TER−P)に明らかに改良される。
【図7B】約1ミクロンの粒子層の圧痕深さ500nm(塑性変形)でのナノ圧痕測定に基づく材料の硬度(H)を図示する。材料のH値は0.08GPa(未処理TER−P)から0.25GPa(処理TER−P)に明らかに改良される。
【図8A】AFMにより測定された、空気中における処理後のTER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
【図8B】AFMにより測定された、水中における処理後のTER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
【図8C】AFMにより測定された、空気中における未処理TER−Pサンプルおよび複合ポリマー粒子についての力−圧痕曲線を図示する。
【図8D】AFMにより測定された、水中における未処理TER−Pサンプルおよび複合ポリマー粒子についての力−圧痕曲線を図示する。
【図8E】熱処理TER−Pサンプルについて、空気中対水中におけるAFMによるナノ圧痕測定に基づいて算出された弾性率(E)を図示する(改良点を矢印で示す)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを基材とする粒子の技術分野に関する。より詳しくは、本発明は、ポリマー粒子の形態的特性および機械的特性を改良する方法およびその用途に関する。
【0002】
本発明はまた、半導体加工の技術分野に関する。より詳しくは、本発明は、ポリマー粒子を研磨粒子として使用する化学機械的研磨(CMP;chemical mechanical polishing)法に関する。
【背景技術】
【0003】
ICの製造プロセスにおける銅の集積化は、CMPによってウェーハ表面から過剰材料を除去して該表面を平坦化する複式ダマスク加工法(dual damascene processing)を用いて行うことができる。
【0004】
CMPは、この種の表面全体の平坦化を達成するために銅製連結層に適用される加工法としては最良の方策である。一方、研磨法においては、スラリーは最も重要で不可欠な要因である。銅に対して使用されるCMP用スラリーは、研磨粒子と化学物質(例えば、無機酸、有機酸、腐蝕抑制剤、酸化剤および錯生成剤)から成る。使用される研磨剤等の無機粒子は高い除去率(RR)を示すが、硬質であるために、銅だけでなく、シリカ膜表面上にも多くのスクラッチや損傷をもたらす。
【0005】
軟質材料を完全に平坦化するためには、新規な研磨粒子として、ポリマーを基材とする粒子を開発する必要がある。
【0006】
未処理のポリマー研磨剤をレジストの研磨試験に供したところ、その除去率は、ポリマー製レジストよりも硬質な銅や低誘電率材料(low-k materials)等の他の材料に比べて十分ではなかった。酸化剤などの反応性の強い化学物質の添加によって、これらのより硬質な材料の除去が促進され、また、より大きな下方向へ作用する力(down force)によって研磨方法は改良されるが、より重大な問題点、例えば、金属に対する腐蝕および機械的損傷等がもたらされる。この種の化学物質をより硬質なパッドと併用することによって、除去効率を改善できるが、被処理表面が損傷を受けやすいので、該併用は避けることが好ましい。
【0007】
ポリマー粒子のこれらの欠点を解消するために、ポリマー粒子製コアを無機シリカ製シェルで被覆することによって研磨剤の硬度を改良する、いわゆる複合研磨剤が開発されている。ポリマー製コアは、圧縮できるという利点をもたらす。複合研磨剤の一例は特許文献1に記載されている。複合研磨剤のポリマー製コアは、下方向に対して局部的に大きな力が作用する領域において緩衝効果をもたらす。しかしながら、半導体の加工において一般的に使用されている銅や低誘電率材料等のような損傷を受けやすい材質の表面においては、無機材料製シェルの存在に起因してスクラッチが発生する。
【0008】
別の改良法によれば、ウェーハのキャリヤー上において下方向に作用する力を増大させることによって、材料除去率を増大させることはできるが、ウェーハ上での材料層の損傷、スクラッチ、離層または破壊が発生し易くなり、このことは、特に低誘電率材料の場合に問題となる。
【特許文献1】米国特許2004/0144755号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、本発明は、ポリマー粒子の機械的特性を改良することによってポリマー粒子を含有する市販の研磨性スラリーの欠点を解消し、これによって、例えば、半導体デバイスのCu構造体の研磨を、損傷を伴うことなく可能にすることを目的とする。
【0010】
本発明は、ポリマーを基材とする粒子の構造または形態を改変する方法を提供することを目的とする。換言すると、本発明は、ポリマー粒子の高分子的構造(macromolecular structure)および超分子的構造(supra-molecular structure)を改変する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、親水基および疎水基を有するポリマー粒子の機械的硬度を増大させる方法であって、極性溶媒中に存在させた該ポリマー粒子を、少なくとも1回の加熱段階およびその後でおこなわれる少なくとも1回の冷却段階から成る熱サイクルに付す工程を含む該方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法において、前記のポリマー粒子はコポリマーおよび/またはターポリマー粒子であることが好ましい。
【0013】
前記の少なくとも1回の加熱段階において、加熱温度はコポリマーまたはターポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)に達することが好ましく、より好ましくは当該温度を超える温度に達することである。前記の少なくとも1回の加熱段階における温度は最高で300℃までであり、前記の少なくとも1回の冷却段階における温度は最低で10℃までであってよい。好ましくは、前記の少なくとも1回の加熱段階における温度は最高で200℃までであり、前記の少なくとも1回の冷却段階における温度は最低で20℃までである。
【0014】
本発明に係る方法において、前記の熱サイクルは、溶剤の蒸発を回避するために密閉反応器中で行う。
【0015】
前記の少なくとも1回の加熱段階において、温度は5〜10℃/分の昇温速度で上昇させることが好ましい。
【0016】
前記の少なくとも1回の冷却段階において、温度は15〜30℃/分の降温速度で降下させることが好ましい。
【0017】
本発明に係る方法において、前記の極性溶媒は水であることが好ましい。
【0018】
前記のポリマー粒子は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートを含有するか、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートから成っていてもよい。
【0019】
前記のポリマー粒子は、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコール−メタクリレートを含有するか、あるいは、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコール−メタクリレートから成るものであることが好ましい。
【0020】
前記のポリマー粒子は、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび4−ビニルピリジンから成るターポリマー粒子であることがより好ましい。
【0021】
本発明に係る方法は、前記の熱サイクルの後、コポリマーおよび/またはターポリマー粒子を無機シェルまたは無機化合物で被覆する工程をさらに含むことができる。
【0022】
前記の無機シェルはシリカであることが好ましい。
【0023】
本発明の別の目的は、本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子、特にコポリマーまたはターポリマー粒子を提供することである。
【0024】
前記のコポリマーまたはターポリマー粒子は、弾性率(E)4GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を示すことができる。
【0025】
前記の弾性率(E)は、ナノ圧子(nanoindenter)または原子間力顕微鏡(AFM)によって行われるナノ圧痕測定により測定され、前記の硬度はナノ圧子によって測定される。
【0026】
本発明は、本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子を含む、化学機械的研磨で使用するための研磨性スラリー組成物も提供する。
【0027】
本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子は、乾燥状態または湿潤状態のいずれかの状態で、研磨剤粒子として使用できる。
【0028】
本発明に係る方法によって得ることができるポリマー粒子は、銅層、低誘電率誘電層(low-k dielectric layers)(すなわち、誘電率kが3.9未満の層)、感光層、または半導体ウェーハ基板等の半導体デバイスの層を研磨するのに使用できる。
【0029】
本発明に係る方法は、ポリマー粒子の機械的特性を、当該ポリマー粒子の粒度および/または形態の実質的な変化を伴うことなく改良することを可能にする。
本発明に係る方法はまた、ポリマー粒子の機械的特性を、該ポリマー粒子の初期粒度分布の実質的な変化を伴うことなく改良することを可能にする。
【0030】
全ての添付図面は本発明の幾つかの側面および具体例を説明することを意図するものであって、全ての代替的態様および選択肢を示すわけではないので、本発明は添付図面の内容に制限されるものではない。
【0031】
本発明は、ポリマー粒子の硬度および弾性率等の機械的特性を改良する方法を提供する。
【0032】
より詳しくは、ポリマー粒子の機械的特性、特に硬度を改良するための本発明に係る方法は、極性溶媒中に含まれるポリマー粒子、好ましくはコポリマーおよび/またはターポリマー粒子であって、親水基および疎水基を含有するポリマー粒子を、各熱サイクルが少なくとも1回の加熱段階およびその後の少なくとも1回の冷却段階から成る少なくとも1回の熱サイクルに供する工程を含むものである。
【0033】
本発明において、ポリマー粒子はホモポリマー粒子またはヘテロポリマー粒子を示す。
コポリマーは一般に、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって得られる生成物を示すが、本発明においては、正確には2種類の異なるモノマーの重合によって得られる生成物を示す。ターポリマーは正確に3種類の異なるモノマーの重合によって得られる生成物を示す。「ヘテロポリマー」は、コポリマー、ターポリマーおよび3種類を越える異なるモノマーの重合により得られるポリマーを包含することを意味する。
【0034】
本発明においては、本発明の方法によって得られるポリマー粒子に対しての用語「結晶質」は、増大した結晶質相および非晶質相から成る半結晶質形態を示すものとする。結晶質相には、ポリマー鎖自体が最少のエネルギーコンホメーションで、特有のタクチシティーを構造に付与しながら配向する、より秩序化された領域が存在する。
【0035】
本願明細書に記載された本発明で使用されるポリマー粒子は、2種類の異なるモノマーが結合したポリマー(コポリマーと呼ぶ)粒子および/または3種類の異なるモノマーが結合したポリマー(ターポリマーと呼ぶ)粒子が好ましい。
当該ポリマーにおけるモノマー、特にコポリマーにおけるモノマー、またはターポリマーにおけるモノマーは、疎水基および親水基を組み合わせて含有するものである。
本発明に係る方法で使用されるモノマーはビニル基を有することが好ましい。
【0036】
本発明の方法で使用されるポリマー、特にコポリマーおよび/またはターポリマーに含有されるモノマーは、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキル基の炭素原子数が1〜24のアルキル−(メタ)−アクリレート類、ビニル芳香族モノマー類(例えば、ビニルピリジン、アルキルビニルピリジン、ビニルブチロラクタム、ビニルカプロラクタム)、モノカルボン酸、ジカルボン酸、イタコン酸、置換ビニル芳香族モノマー類、オレフィン類(例えば、プロピレン、イソブチレン、または炭素原子数10〜20の長鎖アルキルオレフィン類)、ビニルアルコールエステル類(例えば、ビニルアセテート、ビニルステアレート)、ビニルハライド類(例えば、ビニルフロオリド、ビニルクロライド、ビニリデンフルオリド)、およびビニルニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)からなる群から選択できる。
【0037】
本発明の方法で使用されるコポリマーまたはターポリマーは以下に示す組み合わせのモノマーの重合によって得ることができる:
−(メタ)アクリル酸と、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、
−(メタ)アクリル酸と、スチレンまたは他のビニル芳香族モノマー類、
−アルキル(メタ)アクリレート類(アクリル酸またはメタクリル酸のエステル類)と、モノまたはジカルボン酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸またはイタコン酸、
−ハロゲン(すなわち、塩素、フッ素、臭素)、ニトロ、シアノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミノ、アミノアルキル等の置換基を有する置換ビニル芳香族モノマー類と、不飽和モノまたはジカルボン酸および/またはアルキル(メタ)アクリレート、
−窒素環を含有するモノエチレン型不飽和モノマー類、例えば、ビニルピリジン、アルキルビニルピリジン、ビニルブチロラクタム、ビニルカプロラクタムと、不飽和モノまたはジカルボン酸、
−オレフィン類、例えば、プロピレン、イソブチレン、または炭素原子数10〜20の長鎖アルキルオレフィン類と、不飽和モノまたはジカルボン酸、
−ビニルアルコールエステル類、例えば、ビニルアセテートおよびビニルステアレートおよび/またはビニルハライド類、例えば、ビニルフロオリド、ビニルクロライド、ビニリデンフルオリドおよび/またはビニルニトリル類、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルと、不飽和モノまたはジカルボン酸、
−アルキル基の炭素原子数が1〜24のアルキル(メタ)アクリレート類および不飽和モノカルボン酸、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸。
【0038】
本発明の方法で使用されるコポリマーおよびターポリマーのそれぞれについては、疎水性が異なる2または3種類のモノマーを使用することが好ましく、これによって熱サイクル後における水中での優先的な配向がもたらされる。この種のポリマーとしては、例えば、特に制限されるものではないが、ポリメチルメタクリレートおよびポリスチレンを基材とするコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。
【0039】
ポリマー粒子は、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートを含有するか、あるいはポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートから成ることが好ましい。
本発明の方法において、熱サイクルに付される出発ポリマー粒子として使用される好ましいコポリマーはメチルメタクリレート(MMA)およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPGEMA)の重合によって得られるものである。
本発明の方法において、熱サイクルに付される出発ポリマー粒子として使用される好ましいターポリマーはメチルメタクリレート(MMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPGEMA)およびビニル−ピリジン(特に4−ビニル−ピリジン)の重合によって得られるものである。
【0040】
本発明の方法は、熱処理、特に連続的な加熱および冷却からなる熱サイクルを含むものである。熱サイクルは、少なくとも1回の加熱段階およびその後に続く少なくとも1回の冷却段階を含むことができる。熱サイクルは、1回の加熱段階、その後に続く1回の冷却段階、およびその後に続く1回の加熱段階を含むことができる。熱サイクルは、1回の加熱段階、およびその後に続く1回の冷却段階を含むことが好ましい。
【0041】
ポリマー粒子内部での再配向を得るためには、少なくとも1回の加熱/冷却サイクルが必要である。所望により、当該加熱/冷却サイクル(即ち、熱サイクル)をさらに1回、2回またはそれ以上繰り返すことができる。
【0042】
加熱および冷却中における温度は最低で10℃および最高で300℃の範囲内で変化させることが好ましく、より好ましくは、室温(約20℃)と200℃の間で変化させる。
【0043】
加熱段階中に到達する温度は、ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)を越える温度であることが好ましい。Tgは非晶質ポリマー(または部分的結晶質ポリマーにおける非晶質領域)が、硬くて比較的安定な状態から粘稠またはゴム状態に変化する温度である。
【0044】
熱処理を意図的におこなうことにより、十分な熱エネルギーを付与し、ポリマー鎖の別のコンホメーションを達成するための活性エネルギー障壁を越えるようにする。当該別のコンホメーションはより秩序化された結晶構造であることが好ましい。
【0045】
加熱段階中の温度は、コポリマーおよび/またはターポリマーのガラス転移温度(Tg)に達することが好ましい。異なるポリマーの混合物の場合、加熱段階中の温度は、少なくとも最低のTgに達することが好ましく、より好ましくは最高のTgに達することである。特に、加熱段階中で採用される温度は最高で300℃までであることが好ましく、より好ましくは最高で200℃までである。
【0046】
冷却段階は最低で10℃までの温度であることが好ましく、より好ましくは最低で20℃までである。
【0047】
より好ましい熱サイクルは、最高で200℃までの1回の加熱段階、およびその後に続く最低で20℃までの1回の冷却段階を含む。
さらに好ましい熱サイクルは、温度を、ポリマー、特にコポリマーおよび/またはターポリマーのTgを越え、かつ最高で約200℃までの温度に上げる1回の加熱段階、およびその後に続いて最低で室温(すなわち約20℃)までである1回の冷却段階を含む。
【0048】
熱処理中、個々のモノマー鎖における疎水基および親水基は極性溶媒の存在下で交互にそれ自体で再配向できる。そのため熱処理を極性溶媒(すなわち双極子モーメントが異なり、かつ0より高いいずれかの適切な溶剤)の存在下で行うと、個々のモノマーから成るポリマー鎖は再秩序化され、コポリマーまたはターポリマーを基材とするポリマー粒子の結晶化が起こり得る。
【0049】
極性溶剤の好ましい具体例は、アルコール類(例えばメタノール、エタノール)、アセトンであり、より好ましくは水である。
【0050】
熱サイクルは、緩やかな加熱段階およびその後に続く迅速な冷却段階を含むことが好ましい。緩やかな加熱段階は、好ましくは約5℃/分〜約10℃/分の昇温速度(本発明の方法においては、5℃/分未満、および6℃/分、7℃/分、8℃/分、9℃/分、11℃/分、または12℃/分を採用することができる)で加熱することを意味し、これによってポリマー鎖の再配向が促進される。
【0051】
本発明の最も好ましい方法においては、加熱段階中に到達する温度は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも少なくとも数度(即ち、1℃,2℃,3℃,10℃,またはこれよりも高い温度)高い温度である。
【0052】
緩やかな加熱段段階の後に迅速な冷却段階を続けることによって、変化したコンホメーションをブロック化することが好ましい。このような変化したコンホメーションは、より高い結晶状態に相当することが好ましく、これによって機械的特性の改良が促進される。
【0053】
迅速な冷却段階においては、約15℃/分から20℃/分までの降温速度で冷却がおこなわれる。本発明の方法においては、14℃/分、16℃/分、17℃/分、18℃/分、19℃/分もしくは21℃/分またはそれ以上の降温速度で冷却をおこなうこともできる。
【0054】
本発明の方法は、ポリマー粒子、特に新規なコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子の製造方法であって、本願明細書に記載の適切なモノマーを重合させる工程、およびこれによって得られたポリマー粒子を、本願明細書に記載の熱サイクルに付する工程を含む該製造方法によって規定することもできる。
【0055】
熱サイクルは、温度を、先行する段階で得られたポリマー粒子のTgを越える温度まで上昇させる少なくとも1回の加熱段階、およびその後に続いて温度を室温(すなわち約20℃)まで降下させる少なくとも1回の冷却段階を含むことが好ましい。
【0056】
熱サイクルは、温度をポリマー粒子のTgを越える温度まで、好ましくは約10℃/分未満の昇温速度で上昇させる1回の加熱段階、および温度を室温まで、好ましくは約15℃/分を越える降温速度で降下させる1回の冷却段階から成ることがより好ましい。
【0057】
本発明によるポリマー粒子は、未処理ポリマー粒子と比較して幾つかの利点、例えば、pHに対する安定性等の利点をさらに有する。
本発明によるポリマー粒子を溶液中で安定化させるためには、界面活性剤の添加は不要である。
【0058】
非常に低濃度(微量)のカチオン性界面活性剤の添加であっても、ポリマー粒子に正のゼータ電位(zeta potential)が誘導されるので、pHの影響(即ち、pHの変化)がポリマー粒子の挙動に大きな影響を与える。
本発明による方法においては、親水基および疎水基を変えることによってモノマーが選択されるため、ポリマー粒子の製造中または処理中において界面活性剤を必要としない。本発明方法によって得られる処理されたポリマー粒子自体はミセル状構造として作用する。
【0059】
ポリマー粒子の粒度、粒度分布または形態を変化させる機械的特性(例えば弾性率または硬度)を改良するために採用される従来の方法に比べて、本発明の方法によれば加熱および冷却の熱サイクルによって利点が得られる。例えば、製造時の架橋剤の使用によって、粒度について高い単分散度(monodispersity)を達成することが非常に困難になる。
【0060】
これに対して、本発明の方法によれば、得られた粒子の粒度について高い単分散度を達成することができる。
このような高い単分散度とは好ましくは、粒子の平均粒度(または粒径)の標準偏差が約5〜10%であることを示す。換言すれば、粒子は好ましくは約90%を越える粒度(または粒径)(より好ましくは約95%を越える粒度)の均一性を示す。
本発明によって得られたポリマー粒子の粒度は数百ナノメーターからミクロンサイズに及び得る。
【0061】
本発明による熱処理サイクル中において、ポリマー粒子の初期粒度(分布)は実質的に変わらない。
しかしながら、ポリマー粒子の初期粒度は、モノマー含有量、製造温度および開始剤の種類等のパラメーターによって製造時に変化させることができる。
【0062】
本発明に係る方法においては、異なる種類のポリマー粒子を用いることによって本発明によるポリマー粒子を得ることができる。
好ましくは、出発ポリマー粒子は、親水基および疎水基を有するモノマーから得られるコポリマーおよび/またはターポリマーから製造される。
【0063】
加熱段階においては、加熱温度を上げることによって、ポリマー鎖の回転および再編成のための活性化障壁( activation barrier)を越えるのに必要なエネルギーが付与される。迅速な冷却段階においては、このような再編成は、実際にエネルギー的により安定なコンホメーションが得られるように固定化される。
【0064】
極性溶剤はポリマー粒子を構成する個々のモノマーの親水基と特有の相互作用をするため、熱処理中のポリマー粒子内でのポリマー鎖の再編成効果は、極性溶剤(好ましくは水)の存在下でのみ得られる。該相互作用によって、該親水基が極性溶剤方向に向かって配置される再配向(即ち、該親水基がポリマー粒子の外側に向かって配置される再配向)がもたらされる。
【0065】
本発明に係る方法によって得られるポリマー粒子が、結晶質相および非晶質相からなる半結晶質形態を示すことが観察されている。結晶質相中には、特有のタクチシティーをポリマー構造に付与する最少エネルギーのコンホメーションにおいてポリマー鎖自体が配向するより秩序化された領域が存在する。
【0066】
ポリマーの機械的特性は、主として、当該ポリマーにおける結晶化度やポリマー鎖の配向によって決定される。
本発明において、ポリマー鎖の再配向は、熱処理/サイクル中における当該ポリマー鎖と溶剤分子との相互作用によって達成される。実際は、溶剤の極性(または親水性度(hydrophilicity))は、ポリマーの親水性セグメントとの相互作用を誘発するのに重要である。使用される極性溶剤の好ましい例として、水が挙げられる。その他の極性溶剤としては、例えばメタノールおよび/またはエタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0067】
本発明によるポリマー粒子を無機化合物で被覆することによって、複合ポリマー粒子を得ることができる。
【0068】
本発明によるポリマー粒子(特に、コポリマー粒子および/またはターポリマー粒子並びに複合ポリマー粒子)は化学機械的研磨(CMP)用の研磨剤(ポリマー研磨剤とも呼ばれる)として使用できる。
本発明の方法によって得られる複合ポリマー粒子、並びにコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子は、銅や低誘電率材料(即ち、誘電率kが3.9未満の材料)等のような容易に損傷を受けやすい材質の表面に対して特に適している。
【0069】
本発明によるポリマー粒子は、シリカ、アルミナまたはセリア等の無機硬質研磨剤と比較して、より良好な機械的特性を有する。
本発明によるポリマー研磨剤において、CMP法で作用する下方向に作用する力等のような、外部の機械的荷重に応じて生じる変形のミクロ機械的作用(micromechanical processes)は、硬質無機研磨剤と比較して、より一層制御し易く、本発明によるポリマー粒子には、従来の粒子の状態と比較して、CMP等のような幾つかの応用方法において著しい利点が付与される。
【0070】
本発明のポリマー研磨剤は研磨性スラリーに使用することができる。
本発明は当該研磨性スラリーを提供することも目的とする。
【0071】
本発明の研磨性スラリーは、酸化剤、防錆剤、および/または界面活性剤等のような当業者に既知の適当な全ての化合物または添加剤をさらに含有することができる。
【0072】
別法として、本発明のポリマー粒子(またはポリマー研磨剤)を、既存の市販されているCMP研磨性スラリーに添加し、当該スラリーの性能を改良することができる。
別法として、ポリマー粒子のコア内部に酸化剤等の化学物質を封入でき、そのためこれらの粒子が下方向に作用する力を示す過程、例えば、CMP工程中、これらの化学物質は徐々に放出される。
【0073】
本発明によるポリマー粒子は、CMPの後洗浄用の溶液またはスラリーにおいて使用することもできる。
本発明の目的でもある当該CMPの後処理用スラリーまたは溶液はCuのCMP工程後に適用できる。
本発明に係るCMPの後洗浄用溶液またはスラリーは、CMP工程後において残留する生成物および/または不要な生成物を除去するために使用できる。
【0074】
CuのCMP工程は通常、多段テーブル型CMP工具( multi-platen CMP tool)上で行われ、これによってウェーハの処理量および平滑性が最適化される。第1テーブルは、パターン化されてエッチングされた特徴的形態(features)上の不要なCuを1次的に除去するために使用される。バルク材料が除去された後、ウェーハを第2テーブルに移送し、残留物(Cu)およびバリア金属を、非選択性のスラリーを用いて同時に除去する。最後に、ウェーハを第3テーブル上でバフ研磨ステップに供し、表面を平滑化すると共に、残留する全てのバリア金属を除去する。このCMP工程において、後に行うリンスおよびバフ研磨ステップは、微小スクラッチの発生を最少にし、平滑性を上げることを目的とするものである。この場合、適用される下方向に作用する力は非常に低いので、軟質パッドを用いることが好ましい。
【0075】
軟質ポリマーを基材とするスラリー(本発明に係るポリマー粒子を含有するスラリー)は、従来のCMPの後洗浄用スラリーに比べて高い除去率を示し、その結果、この最後のバフ研磨ステップが十分に改善される。
【0076】
好ましい具体例によれば、メチルメタクリレート(MMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)および4−ビニル−ピリジン(4ViPy)の重合によって得られるターポリマー粒子(「TER−P」と呼ぶこともある)は、本発明に係る方法において出発ポリマーとして使用される。
MMA/MPEGMA/4−ViPyの比率はそれぞれ2/1/1〜30/1/1とすることができる。
MMA/MPEGMA/4−ViPyの好ましい比率はそれぞれ15/1/1である。
【0077】
好ましい別法においては、MMAおよびMPEGMAモノマーの重合によって得られるコポリマー粒子は本発明に係る方法の出発ポリマー粒子として使用できる。
【0078】
このような好ましいターポリマー粒子およびコポリマー粒子は、熱処理/サイクルに際して、水中において、そのガラス転移温度(Tg)より少し高温の約130℃で熱容量の追加的なショルダーを示す。
【0079】
本発明による方法においては、熱処理によって、ポリマー鎖の再配向に起因するポリマー粒子の結晶化度の上昇が起こる。親水基は極性溶剤の極性分子に向かって配向し、これによって達成される再配向により、より秩序化された構造を示すと共に、著しい機械的特性を有する、より良好な結晶質構造がもたらされる。実際は、ポリマー粒子の機械的特性は主に、ポリマー粒子中に存在する結晶の度合いおよびポリマー粒子中のポリマー鎖の配向によって決定される。
【0080】
示差走査熱量法(DSC)を用いて、実験室規模での本発明によるポリマー粒子の熱処理および分析を行うことができる。
他の技術を用いて、加熱中に増加する圧力に耐えることができる温度制御装置付き密閉反応器のような大きな規模で熱処理を行うことができる。
【0081】
TER−Pポリマー粒子が乾燥状態(乾燥粉末配合物)で示したDSC曲線を図2に示す。25℃から200℃まで10℃/分での加熱段階、その後の200℃から25℃まで10℃/分での冷却段階、およびその後の25℃から200℃まで10℃/分での第2加熱段階からなる熱サイクルの後、TER−Pポリマー粒子に結晶化は観察されない。
【0082】
図3において、コロイド溶液中のTER−Pポリマー粒子(換言すると、利用できる極性溶剤を有するもの)のDSC曲線を示す。図3は、図2で適用した同様の熱サイクル時における130℃での結晶化発熱ピークを示す。
換言すると、皿(pan)の中に極性溶剤(水)を存在させたTER−Pポリマー粒子についてのみ、結晶化が起こる。利用できる溶剤がDSC用の皿中にない場合(乾燥ポリマー粒子の場合)は、熱処理(および測定)時において、ポリマー鎖の再秩序化は起こらない。
【0083】
水中で熱サイクルに供されたCO−Pポリマー粒子のDSC曲線では、図4に示すように、同様の結晶化効果がより小さい程度で観察できる。界面活性剤の存在下では、図5に示すように、結晶化効果は観察されない。
ポリマー粒子(コア)をシリカシェルで被覆した後、水中での熱サイクルに供した場合は、図6A(TER−C−A)および図6B(TER−C−B)に示すように、結晶化は観察されない。
【0084】
加熱および冷却の熱サイクル後に得られたポリマー粒子は、集積回路(IC)製造工業で使用されるCuおよび低誘電率材料のような軟質で容易に損傷を受けやすい新規材料に対して困難な化学機械的平滑化(CMP)において利用することができる。
本発明によるポリマー粒子は、シリカ、アルミナまたはセリア等の無機硬質研磨剤を用いる従来のCMP法と比較して、機械的な研磨作用をより少なくするために(換言すれば、下方向へ作用する力を印加した後で、より圧縮的な作用をもたらすために)、研磨機構の調整を目的として使用することが好ましい。
【0085】
熱処理後に得られる構造を有する本発明によるポリマー粒子は、化学機械的研磨で使用するために、それ自体として使用することもできるし、または研磨性スラリーに添加して使用することもできる。
【0086】
ポリマー粒子は、溶剤の存在下で(換言すると、「湿潤」状態で)使用するか、または水性組成物として使用する態様が好ましい。この理由は、該ポリマー粒子の機械的特性が最大に増大されるからである。
研磨性スラリーは、半導体基板上の銅および/または損傷を受けやすい材質の表面を研磨するのに使用されることが好ましい。
研磨性スラリーに、酸化剤および/または界面活性剤および/または防錆剤等の添加剤をさらに添加して、当該スラリーの性能を改良することができる。
【0087】
別法においては、好ましくは、熱処理後において本発明によるポリマー粒子を無機被膜でさらに被覆することができる。
例えば、「TER−P」ポリマー粒子は、シリカ粒子(直径=30nm)製の連続的な「ラズベリー状」の被膜で被覆することができる。この被膜は、コア(ポリマー)とシェル(シリカ)との間の界面でシランカップリング剤を用いておこなうことができ(「TER−C−A」と呼ぶ)、また、該シランカップリング剤を用いなくてもおこなうことができる(「TER−C−B」と呼ぶ)。
【0088】
本発明に係る方法によって得られるコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子は、乾燥状態(即ち、溶剤が存在しない状態)で、6GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を示す。特に、当該粒子は約6〜約10GPaの弾性率(E)および約0.25〜約1GPaの硬度を示す。
湿潤状態において、当該コポリマー粒子および/またはターポリマー粒子は、4GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を示す。特に、当該粒子は約4〜約10GPaの弾性率(E)および約0.25〜約1GPaの硬度を示す。
【0089】
硬度(H)はナノ圧子によるナノ圧痕測定法を用いて測定されている。
弾性率(E)はナノ圧子またはAFM(原子間力顕微鏡)を用いる方法によるナノ圧痕測定法を用いて測定されている。
【0090】
ナノ圧痕測定法は従来の硬度試験に類似した技術を指すが、該試験よりもさらに小スケールで行われるものである。鋭利なダイアモンド圧子を試験材料に圧入するのに要する力を圧痕深さの関数として測定する。使用器具の名前から明らかなように、深さ分析はナノメータースケールであるので、圧痕実験は薄膜に対してでも実施可能である。ナノ圧痕実験で容易に得ることができる2つの物性値は、試験材料の弾性率Eおよび硬度Hであり、これらの物性値は降伏強さと相関させることができる。
【実施例】
【0091】
以下の実施例で用いた原料は、メチルメタクリレート(MMA;99%純度;アルドリッチ社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA;平均分子量454;アルドリッチ社製)、4−ビニルピリジン(4−ViPy;95%純度;アルドリッチ社製)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(97%;シグマ−アルドリッチ社製)および4−ビニルピリジン(95%純度;アルドリッチ社製)である。これらの原料は、さらに精製することなく、そのまま用いた。
【0092】
pH溶液は、バックグラウンド電解質として、10−3MのHCl、NaOH、およびNaCl(和光ケミカル株式会社から入手した分析グレード品)を用いて調製した。
【0093】
実施例1:出発原料としてのポリマー粒子の製造
K.ニシモト等による方法(米国特許第6,582,761号明細書参照)の変形法を採用して、界面活性剤−ラジカル重合によって、ポリ−メチルメタクリレート(PMMA)を基材とするポリマー粒子を製造した。
【0094】
典型的な重合方法は以下の通りである:
メチルメタクリレート(MMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)、およびイオン交換水(DIW)を丸底3つ口フラスコ内に装填した。
【0095】
粒子の凝集を防止するために、第3のコモノマーとして 4−ビニルピリジン(4−ViPy)を反応系に添加した。この溶液を撹拌しながら70℃まで加熱した。
【0096】
その後、アザ型重合開始剤として、水に予め溶解させた2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(APDH)を反応物に添加した。
【0097】
操作の開始前、すなわちモノマーを添加する前に、酸素効果を除くために、溶液を窒素でパージし、次いで、熱重量分析で測定される転化率が80〜90%を越えるまで反応を窒素ガス雰囲気下で行った。
【0098】
最後に、反応系を氷水浴で急冷させて反応を停止させた。
【0099】
ポリマー粒子の最終的寸法は、367±15nm(100の測定値の平均値として走査電子顕微鏡により測定した値)および494±59nm(水中での動的光散乱により測定した値)であった。
【0100】
実施例2:製造後の処理
実施例1で示した製造法により得られた分散液を遠心分離し、上澄み溶液を廃棄し、超音波処理法を用いて脱イオン水にポリマー粒子を再懸濁させた。この操作を3回繰り返した。
【0101】
上記の処理によって、PMMAナノ粒子に正の表面電荷(ζ電位)を付与した。
【0102】
遠心分離処理/超音波処理サイクルは粒子の精製に必要である。正の表面電荷によって溶液中でのポリマー粒子の静電的安定化が促進される。超音波処理中、粒子は再秩序化が起こる以上に再分散化がおこなわれ、ポリマー粒子の相互凝集が継続して十分に防止される。
【0103】
実施例3:ポリマー粒子の熱処理
加熱段階およびその後の冷却段階からなる熱処理は、示差走査熱量法(DSC)で監視しながらおこなった。
【0104】
DSCの実施装置は熱分析器具であり、物質転移(material transitions)と関連する温度および熱流を、時間および温度の関数として測定するものである。
【0105】
熱サイクルによって、結晶化度の割合ならびに物質の結晶化速度および相転移に関する情報を得ることができる。
【0106】
熱流束(heat flux)DSCにおいて、サンプル材料を入れた皿および空の対照皿を、炉で囲まれた熱電ディスク(thermoelectric disk)上に置く。炉を一次的な加熱速度で加熱し、熱電ディスクを経てサンプルおよび対照皿に熱を伝達させる。しかしながら、サンプルの熱容量のために、サンプル皿と対照皿との間に温度差が生じ、これを面熱電対(area thermocouples)によって測定し、その結果として生じる熱流をオームの法則:q=△T/R(式中、qはサンプルの熱流、△Tはサンプルと対照との温度差、およびRは熱電ディスクの抵抗である)の熱当量によって測定する。
【0107】
測定のための主な操作は以下の通りである:
−器具とともに既知量のインジウムおよびベンゾフェノンを検量し、
−皿のタイプおよび材料を選択し、
−サンプルを調製し、
−TA器具制御ソフトウェアによって、試験方法を案出するか、または選択し、サンプルおよび器具の情報を入力し、
−パージガスの流量をセットし、
−サンプルを装填し、セルのふたを閉じ、次いで
−実験を始める。
【0108】
固形粉体またはコロイド水溶液としての各サンプルについて、熱サイクルを2回繰り返した。100℃を越える水溶液の試験のためには、気密皿の使用が最良であった。
【0109】
DSCにおけるサンプルの一般的な質量範囲は約1〜10mgとした。固形化合物および5重量%水溶液の使用量は約10mgとした。
【0110】
熱サイクルの一例を以下に挙げる:
1)5分間25℃で保持、
2)25℃から200℃まで10℃/分で加熱、
3)5分間200℃で保持、
4)200℃から25℃まで15℃/分で冷却、
5)5分間25℃で保持、
6)25℃から200℃まで10℃/分で加熱、
7)5分間200℃で保持、
8)200℃から25℃まで15℃/分で冷却。
【0111】
加熱中、サンプルは熱的平衡にあることが好ましく、熱的平衡を達成するためには、加熱速度はできるだけ遅いことが好ましい。
【0112】
実施例4:複合粒子の製造
(ポリマー)コアと(シリカ)シェルとの間にシランカップリング剤を含む複合粒子は、機械的特性を改良する本発明による方法(実施例3で記載した熱処理法)によって得られたPPMAナノ粒子を出発原料とし、以下のようにして製造した。
【0113】
先に合成したPMMAを基材とするポリマー粒子を含有する水性分散液を丸底3つ口フラスコに装填し、(クロロメチル)トリメチルシランを添加し、混合物を低いpH条件下で撹拌した。
【0114】
この第1段階によってシラン化PMMAを基材とするポリマー粒子の水性分散液が得られ、これをコロイドシリカ粒子懸濁液に添加することによって、シリカ粒子がポリマー粒子に付着した粒子の分散液を得ることができる。
【0115】
これを達成するために、コロイドシリカ粒子を含有する水性分散液(pH8)を先の溶液に添加した。この水性分散液にビニルトリエトキシシランを添加し、混合物を撹拌した後、TEOSを添加し、得られた混合物を60℃まで加熱し、撹拌後、冷水浴で冷却した。
【0116】
このようにして、複合粒子を含有する水性分散液を得た。
【0117】
直径が30nmのシリカのシェルを有する複合粒子の最終的寸法は、453±27nm(走査電子顕微鏡により測定した値)および554±67nm(水中での動的光散乱法により測定した値)であった。
【0118】
別法として、複合粒子は以下に示すようにして製造できる。PMMAを基材とするポリマー粒子を含有する水性分散液(pH2)を、コロイドシリカを含有する水性分散液と混合して得られた水性分散液(pH5)を撹拌することによって、複合粒子を含有する水性分散液を得た。
【0119】
別法によって得られた複合粒子(直径が30nmのシリカのシェルを有する複合粒子)の最終的寸法は、440±18nm(走査電子顕微鏡により測定した値)および567±64nm(水中での動的光散乱法により測定した値)であった。
【0120】
実施例5:ポリマー粒子のナノ圧痕測定
図7では、ポリマー粒子を含む厚み約1ミクロンの層(ポリマー粒子はステープル留めした)の圧痕深さ500nm(塑性変形)でのナノ圧痕測定より得られた試験材料の弾性率Eおよび硬度Hを図示する。
【0121】
材料の弾性率Eおよび硬度Hは降伏強さに相関させることができる。
E値は、未処理TER−Pポリマー粒子の3GPaから、本発明による熱処理後のTER−Pポリマー粒子の7GPaに改良される。
図7Bに示されるように、硬度(H)値は、未処理TER−Pポリマー粒子の0.08GPaから、熱処理TER−Pポリマー粒子の0.25GPaに改良された。
【0122】
図8は、新しく切り出したマイカ基板上に堆積(deposit)させたTER−P−処理粒子単一層に、より小さな圧痕深さ(50nm未満)を与える技術を適用したときのAFMナノ圧痕測定の結果を図示する。測定は空気中および水中で行った。
【0123】
図8Aは、AFMにより測定された、空気中における処理後のTER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
図8Bは、AFMにより測定された、水中における処理TER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
図8Cは、比較として、AFMにより測定された、空気中における未処理TER−Pおよび複合TER−C−AおよびTER−C−Bについての力−圧痕曲線を図示する。
図8Dは、比較として、AFMにより測定された、水中における未処理TER−Pおよび複合TER−C−AおよびTER−C−Bについての力−圧痕曲線を図示する。
【0124】
水中における処理TER−Pサンプルの力−圧痕曲線から算出したE値(図8Eに図示する)は4GPaであり、空気中(溶剤除去後の乾燥状態)では6.5GPaである。固体状態の粒子は湿潤粒子と比較して硬いことが知られている。未処理TER−P−粒子について水中におけるE値は1.6であり、乾燥状態(空気中)においてE値は1.6GPaから4GPaに増加する。
【0125】
力−圧痕曲線からヤング率の定量的値を得るために、接点の連続体力学から古典的ヘルツ接触モデル(classical Hertzian contact models)を使用できる:
E2=[3F(1−ν22)/4δ3/2][(R1+R2)/R1R2]1/2
(式中、δは圧痕深さであり、Fは印加される荷重であり、R1およびR2はそれぞれ球状又は放物線状圧子および圧痕された粒子の曲率半径であり、E2は当該粒子の表面弾性率であり(チップ(tip)のEは130〜160であると考える)、およびν2はサンプルのポアソン比である)。PMMAを基材とするターポリマー(および複合体)のポアソン比は知られていないため、計算上、バルクPMMAのポアソン比(ν2=0.38)を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】本発明のポリマー粒子の製造のための出発原料として使用されたPMMAを基材とするターポリマー粒子の製造法について図示する。
【図1B】ポリマーコアおよびシリカシェルとともにその界面でシランカップリング剤を有する複合研磨剤ポリマー粒子の製造法について図示する。
【図2】比率15/1/1のメチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)−4−ビニルピリジン(4−ViPy)ターポリマー(TER−P)の乾燥粉体配合での示差走査熱量曲線を示す。
【図3】本発明の熱処理後における比率15/1/1のメチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)−4−ビニルピリジン(4−ViPy)ターポリマー(「TER−P」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図4】メチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)コポリマー(「CO−P」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図5】カチオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート(CTAHS)の存在下で製造されたメチルメタクリレート(MMA)−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)−4−ビニルピリジン(4−ViPy)ターポリマー(「TER−P−S」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図6A】コアとシェルとの界面にシランカップリング剤を有して製造された、シリカ粒子(直径=30nm)製の連続「キイチゴ状」被膜を有する「TER−P」(「TER−C−A」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図6B】コアとシェルとの界面にシランカップリング剤を有することなく製造された、シリカ粒子(直径=30nm)製の連続する「ラズベリー状」の被膜を有する「TER−P」(「TER−C−B」と呼ぶ)の水中での示差走査熱量曲線を示す。
【図7A】約1ミクロンの粒子層の圧痕深さ500nm(塑性変形)でのナノ圧痕測定に基づく材料の弾性率(E)を図示する。E値は3GPa(未処理TER−P)から7GPa(処理TER−P)に明らかに改良される。
【図7B】約1ミクロンの粒子層の圧痕深さ500nm(塑性変形)でのナノ圧痕測定に基づく材料の硬度(H)を図示する。材料のH値は0.08GPa(未処理TER−P)から0.25GPa(処理TER−P)に明らかに改良される。
【図8A】AFMにより測定された、空気中における処理後のTER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
【図8B】AFMにより測定された、水中における処理後のTER−Pサンプルについての力−圧痕曲線を図示する。
【図8C】AFMにより測定された、空気中における未処理TER−Pサンプルおよび複合ポリマー粒子についての力−圧痕曲線を図示する。
【図8D】AFMにより測定された、水中における未処理TER−Pサンプルおよび複合ポリマー粒子についての力−圧痕曲線を図示する。
【図8E】熱処理TER−Pサンプルについて、空気中対水中におけるAFMによるナノ圧痕測定に基づいて算出された弾性率(E)を図示する(改良点を矢印で示す)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水基および疎水基を有するポリマー粒子の機械的硬度を増大させる方法であって、極性溶剤中に存在させた該ポリマー粒子を、少なくとも1回の加熱段階およびその後でおこなわれる少なくとも1回の冷却段階から成る熱サイクルに付す工程を含む該方法。
【請求項2】
ポリマー粒子がコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1回の加熱段階中において、加熱を、コポリマー粒子またはターポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)までおこない、次いで、場合によりまたは所望により、該転移温度を越える温度までおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回の加熱段階中において、加熱を、最高温度が300℃に達するまでおこない、次いで、少なくとも1回の冷却段階中において、冷却を、最低温度が10℃に達するまでおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1回の加熱段階中において、加熱を、最高温度が200℃に達するまでおこない、次いで、少なくとも1回の冷却段階中において、冷却を、最低温度が20℃に達するまでおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶剤の蒸発を回避するために、熱サイクルを密閉反応器内でおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1回の加熱段階中において、温度を、5〜10℃/分の昇温速度で上昇させる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1回の冷却段階中において、温度を15〜30℃/分の降温速度で降下させる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
極性溶剤が水である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー粒子が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートを含有するか、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートから成る請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリマー粒子が、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含有するか、あるいは、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから成る請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー粒子が、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび4−ビニルピリジンから成る請求項1に記載の方法。
【請求項13】
熱サイクル後におこなう工程であって、コポリマー粒子および/またはターポリマー粒子を無機シェルまたは無機化合物で被覆する該工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
無機シェルがシリカである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって得られるコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子。
【請求項16】
4GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を有する請求項15に記載のコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子。
【請求項17】
4〜10GPaの弾性率(E)および0.25〜1GPaの硬度を有する請求項15に記載のコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子。
【請求項18】
化学機械的研磨において使用される研磨性スラリー組成物であって、請求項16に記載のポリマー粒子を含有する該研磨性スラリー組成物。
【請求項19】
請求項16に記載のポリマー粒子を研磨粒子として使用する方法。
【請求項20】
該粒子が乾燥状態にある請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該粒子が湿潤状態にある請求項19に記載の方法。
【請求項22】
半導体デバイスの層(例えば、銅層、低誘電率誘電層(即ち、3.9未満の誘電率kを有する層)または感光層)または半導体ウェーハの基板を研磨するための請求項19に記載の方法。
【請求項1】
親水基および疎水基を有するポリマー粒子の機械的硬度を増大させる方法であって、極性溶剤中に存在させた該ポリマー粒子を、少なくとも1回の加熱段階およびその後でおこなわれる少なくとも1回の冷却段階から成る熱サイクルに付す工程を含む該方法。
【請求項2】
ポリマー粒子がコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1回の加熱段階中において、加熱を、コポリマー粒子またはターポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)までおこない、次いで、場合によりまたは所望により、該転移温度を越える温度までおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回の加熱段階中において、加熱を、最高温度が300℃に達するまでおこない、次いで、少なくとも1回の冷却段階中において、冷却を、最低温度が10℃に達するまでおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1回の加熱段階中において、加熱を、最高温度が200℃に達するまでおこない、次いで、少なくとも1回の冷却段階中において、冷却を、最低温度が20℃に達するまでおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶剤の蒸発を回避するために、熱サイクルを密閉反応器内でおこなう請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1回の加熱段階中において、温度を、5〜10℃/分の昇温速度で上昇させる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1回の冷却段階中において、温度を15〜30℃/分の降温速度で降下させる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
極性溶剤が水である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー粒子が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートを含有するか、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリイソブチレンおよび/またはアクリレートから成る請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリマー粒子が、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含有するか、あるいは、メチルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから成る請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー粒子が、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび4−ビニルピリジンから成る請求項1に記載の方法。
【請求項13】
熱サイクル後におこなう工程であって、コポリマー粒子および/またはターポリマー粒子を無機シェルまたは無機化合物で被覆する該工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
無機シェルがシリカである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって得られるコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子。
【請求項16】
4GPaよりも高い弾性率(E)および0.25GPaよりも高い硬度を有する請求項15に記載のコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子。
【請求項17】
4〜10GPaの弾性率(E)および0.25〜1GPaの硬度を有する請求項15に記載のコポリマー粒子および/またはターポリマー粒子。
【請求項18】
化学機械的研磨において使用される研磨性スラリー組成物であって、請求項16に記載のポリマー粒子を含有する該研磨性スラリー組成物。
【請求項19】
請求項16に記載のポリマー粒子を研磨粒子として使用する方法。
【請求項20】
該粒子が乾燥状態にある請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該粒子が湿潤状態にある請求項19に記載の方法。
【請求項22】
半導体デバイスの層(例えば、銅層、低誘電率誘電層(即ち、3.9未満の誘電率kを有する層)または感光層)または半導体ウェーハの基板を研磨するための請求項19に記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図1A】
【図1B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図1A】
【図1B】
【公開番号】特開2007−204752(P2007−204752A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19493(P2007−19493)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【出願人】(504431810)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーヴェン (3)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【出願人】(504431810)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーヴェン (3)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
【Fターム(参考)】
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