説明

ポリマー認証方法、認証可能ポリマー、認証可能ポリマー及び認証可能製品の製造方法、並びにそれで製造される製品

一実施形態では、試験ポリマーが認証可能ポリマーであることを認証する方法であって、認証可能ポリマーが基板ポリマーと熱変色性化合物とを含んでおり、熱変色性化合物が第一の温度及び認証波長で第一の信号を有するとともに、認証温度及び認証波長で第二の信号を有し、第一の信号と第二の信号とが異なり、認証温度が第一の温度より高い温度であり、当該方法が、試験ポリマーの一部分を認証温度に上昇させて加熱部分を生み出すのに十分な刺激に試験ポリマーを暴露し、認証波長で試験ポリマーの加熱部分の試験信号を測定し、試験信号が認証可能ポリマーの認証信号と同じであれば試験ポリマーが認証可能ポリマーであると認証することを含んでなる方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー系製品の認証技術に関し、特に、ポリマー系製品の認証方法、かかる認証を容易にする方法、及び認証可能な製品の製造方法に関する。特に本発明は、コンパクト・ディスク(CD)及びディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)のような、ポリカーボネートで作製された情報記憶媒体で使用するための非破壊認証技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CD及びDVDのような情報記憶媒体又は光記憶媒体は、伝統的に機械で読取り可能な符号、音声、映像、テキスト及び/又はグラフィックスのような情報を含んでいる。情報記憶媒体は、多くの場合、ポリカーボネートのようなポリマーで作製された1以上の基板を含んでいる。
【0003】
情報記憶媒体の様々なメーカー及びユーザーが直面している大きな問題は、無許可製造者、販売者及び/又はユーザーによる情報の無許可複製又はコピーである。情報記憶媒体のかかる無許可複製又はコピーは、しばしば海賊行為といわれ、最終使用時点での消費者レベル海賊行為並びに商業レベルでのデータ、基板及び海賊行為防止情報の大規模な複製を含む様々な形態で起こり得る。その形態にかかわらず、情報記憶媒体の海賊行為は合法のソフトウェア及び娯楽コンテンツ供給者及び本来の電子装置製造者から多大の収益及び利得を奪い去る。
【0004】
消費者レベルで海賊行為を止めようとする試みとして、保護すべき情報と共に電子的な海賊行為防止信号を情報担持基板上に配置することが行われてきた。かかる情報記憶媒体の機械リーダー及びプレイヤーは、所望情報へのアクセスを許す前にかかる海賊行為防止信号の確認を要求するように構成されている。理論的には、消費者レベルの複製ではこれらの電子的な海賊行為防止信号を無許可コピー上に複写することができず、したがって得られる複製物及びコピーは使用できない。
【0005】
しかし、かかる消費者レベルの海賊行為防止技術の裏をかくための多数の技術が開発されており、それは今も続いている。その上、商業レベルの複製は、無許可複製物が今では本来の電子的な海賊行為防止回路、コードなどを含む程度にまで進化している。例えば、商業レベルの複製方法には、ピットコピー、高周波(RF)コピー、「ビット・トゥー・ビット」コピー及び他の鏡像コピー技術があり、これらは保護すべき情報と共に海賊行為防止信号も複製物の情報担持基板上に配置する。ハッカーが常用する他の技術には、コンピューターコードを修正することで、海賊行為防止(コピープロテクト又はコピー防止ともいう)特性を除去してデータへの無制限のアクセスを可能にするものもある。
【0006】
これらの一層巧妙な消費者レベル及び商業レベルの複製及びコピー方法に対抗することを目指した1つの海賊行為防止技術は、情報記憶媒体の構成に使用する基板中に「標識」又は認証マーカーを配置することを含んでいる。かかる標識又は認証マーカーは、情報記憶媒体の製造又は配給系統に沿った1以上の時点で、或いは特定のCD又はDVD上のデータにアクセスするために使用する最終用途リーダー又はプレイヤーで検出できる。
【0007】
例えば、米国特許第6099930号(Cyrら)では、ディジタル・コンパクト・ディスクのような材料中に標識物質が配置される。コーティング、混合、ブレンディング又は共重合により、近赤外蛍光物質がコンパクト・ディスク中に導入される。蛍光物質が670〜1100ナノメートルの範囲内の波長を有する電磁放射に暴露された場合、蛍光が検出できる。
【0008】
米国特許第6514617号(Hubbardら)には、有機蛍光染料、無機蛍光物質、有機金属蛍光物質、半導体発光ナノ粒子又はこれらの組合せからなる標識物質を含んでなるポリマーが開示されている。この場合、標識物質は約350℃以上の温度安定性を有すると共に、分光蛍光計によって標識物質を約100〜約1100ナノメートルの励起波長で検出可能とするのに十分な量で存在する。
【0009】
国際公開第00/14736号では、基板材料の1以上の固有の物理的又は化学的特性に頼って情報担持基板の無許可複製を識別する。かかる海賊行為防止特性は、(例えば光ディスクに関しては)ディスクの重量及び/又は密度、ディスクの回転速度、ディスクの加速度及び減速度、ディスクの慣性、ディスクの反射率のような分光特性、ディスクの光透過率のような光学的特性、ディスクの吸水性及び寸法安定性、ディスクのデータ伝送速度並びにディスクのウォッブル度、又はかかる特性の組合せのような性能特性に基づくものであり得る。
【0010】
米国特許第6296911号(Catarineu Guille’n)には、外部刺激に応答して対象物の色変化を得るための方法であって、発光顔料、温度に従って色の変化を可能にする熱変色性顔料、及び/又は湿度に従って色特性の変化を引き起こす吸湿性顔料を含む、複合効果を有する各種顔料を所望の対象物中に配合することを含んでなる方法が開示されている。
【0011】
米国特許出願公開第2002/0149003号(Luchtら)には、ポリチオフェン及びキャリヤー媒質を含んでなる熱変色性ポリマー系示温組成物が開示されている。この組成物は、ポリチオフェンが組成物の重量を基準にして約0.05〜約5.0重量%の量で媒質中に存在することを特徴とする。この化合物の構造は、組成物が製品と熱交換状態に置かれた場合、製品が設計温度又は設計温度を超える温度に到達すると組成物が色変化を示すように設計されている。
【0012】
しかし、情報記憶媒体の無許可製造者、販売者及び/又はユーザーがかかる方法を出し抜く能力は、ますます巧妙化する方法によって高まり続けている。例えば、情報記憶媒体の無許可製造者は、無許可複製物を製造する目的で、合法的に製造され標識された基板を不法に入手することを知っている。その上、海賊行為の高い利得性は、以前には知られていない標識を同定して同様に標識された情報記憶媒体基板を製造する目的で、一部の無許可製造者及びその供給者が標識基板材料のリバースエンジニアリングを行うことも可能にした。
【0013】
したがって、情報記憶媒体の無許可製造者、販売者及び/又はユーザーにとって現在知られておらず及び/又は利用できない情報記憶媒体の標識及び認証方法を発見することの必要性が存在している。特に、情報記憶媒体基板及び情報記憶媒体を認証する目的で情報記憶媒体基板中に使用するための、入手、複製、使用及び/又は発見するのが困難な認証マーカー又は認証マーカーの組合せを発見することが望ましいであろう。
【特許文献1】米国特許第6099930号明細書
【特許文献2】米国特許第6514617号明細書
【特許文献3】国際公開第00/14736号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6296911号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0149003号明細書
【特許文献6】米国特許第4238524号明細書
【特許文献7】米国特許第4304899号明細書
【特許文献8】米国特許第5005873号明細書
【特許文献9】米国特許第5201921号明細書
【特許文献10】米国特許第5314072号明細書
【特許文献11】米国特許第5423432号明細書
【特許文献12】米国特許第5461136号明細書
【特許文献13】米国特許第5510619号明細書
【特許文献14】米国特許第5553714号明細書
【特許文献15】米国特許第5703229号明細書
【特許文献16】米国特許第5959065号明細書
【特許文献17】米国特許第6001953号明細書
【特許文献18】米国特許第6060577号明細書
【特許文献19】米国特許第6072011号明細書
【特許文献20】米国特許第6143839号明細書
【特許文献21】米国特許第6475588号明細書
【特許文献22】米国特許第6475589号明細書
【特許文献23】米国特許第6477134号明細書
【特許文献24】米国特許第6537636号明細書
【特許文献25】米国特許第6607814号明細書
【特許文献26】英国特許第2264558号明細書
【特許文献27】英国特許第2330408号明細書
【特許文献28】特開平08−096508号公報
【特許文献29】特開平08−138268号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書には、ポリマー又は製品の認証方法、認証可能ポリマー、認証可能ポリマー及び製品の製造方法、並びに開示された方法で製造される認証可能製品に関する実施形態が開示される。
【0015】
一実施形態では、試験ポリマーが認証可能ポリマーであることを認証する方法であって、認証可能ポリマーが基板ポリマーと熱変色性化合物とを含んでおり、熱変色性化合物が第一の温度及び認証波長で第一の信号を有するとともに、認証温度及び認証波長で第二の信号を有し、第一の信号と第二の信号とが異なり、認証温度が第一の温度より高い温度であり、当該方法が、試験ポリマーの一部分を認証温度に上昇させて加熱部分を生み出すのに十分な刺激に試験ポリマーを暴露し、認証波長で試験ポリマーの加熱部分の試験信号を測定し、試験信号が認証可能ポリマーの認証信号と実質的に同じであれば試験ポリマーが認証可能ポリマーであると認証することを含んでなる方法が開示される。
【0016】
別の実施形態では、基板ポリマー、及び第一の温度及び認証波長で第一の信号を有すると共に、認証温度及び認証波長で第二の信号を有する熱変色性化合物であって、第一及び第二の信号は異なっており、認証温度は第一の温度より高い熱変色性化合物を含んでなる認証可能ポリマーであって、熱変色性化合物が目視で検出できる熱変色応答を与えない量で認証可能ポリマー中に存在する認証可能ポリマーが開示される。
【0017】
また、認証可能ポリマー及び認証可能製品の製造方法も開示される。
【0018】
一実施形態では、認証可能ポリマーの製造方法であって、基板ポリマー及び熱変色性化合物を合体させて認証可能ポリマーを製造することを含んでなり、熱変色性化合物が目視で検出できる熱変色応答を与えない量で導入される方法が開示される。
【0019】
また、認証可能製品の製造方法であって、基板ポリマー及び熱変色性化合物を合体させて認証可能ポリマーを製造し、認証可能ポリマーから認証可能製品を形成することを含んでなる方法も開示される。
【0020】
また、開示された方法で製造される認証可能製品も開示される。
【0021】
図面の簡単な説明
次に、例示的であって限定的ではない図面について説明する。
【0022】
図1は、蛍光データを試験信号として使用する認証方法用の実験装置の略図である。
【0023】
図2は、室温時(低温)及び約100℃に加熱した時(高温)における532nmの励起波長での試料MWB0703031−2〜−5の蛍光発光プロフィルである。
【0024】
図3は、検出の可逆性を示す図である。
【0025】
図4は、試料MWB0703031−4の熱変色挙動を示す図である。
【0026】
図5は、熱変色性顔料による可視的な色変化を示す図である。
【0027】
図6は、試料MWB0703031−4の蛍光減衰度を加熱後の時間の関数として表すグラフである。
【0028】
図7は、吸収及び蛍光測定のためのアプローチを示す略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本明細書には、認証可能ポリマー及びポリマー系製品の認証を容易にする方法、並びに認証可能製品を製造するために使用できる認証可能ポリマーの製造方法が開示される。本明細書に開示される認証可能ポリマーを様々なポリマー系製品中に使用することは、製造系統に沿った任意の時点、配給系統に沿った任意の時点、販売時点、又は製品の使用時点で1以上の関係者が認証可能ポリマーの有無を確認又は認定することを可能にする。
【0030】
認証可能ポリマー及び認証方法は、価値ある情報を提供する。例えば、試験ポリマーを認証可能ポリマーとして認定することは、試験ポリマーの供給源、認証可能製品の供給源、試験ポリマーの組成、試験ポリマー又は認証可能製品が無許可複製物又はコピーであるか否か、試験ポリマーの通し番号(又はロット番号)、製造日などの1以上の情報を提供し得る。場合によっては、試験ポリマーが認証可能ポリマーであると認証できないことは、無許可複製又はコピーの証拠として役立つ。
【0031】
かかる認証可能ポリマーは、一般に基板ポリマー及び熱変色性化合物を含んでなる。好適な熱変色性化合物は、第一の温度及び認証波長で第一の信号を有すると共に、認証温度及び認証波長で第二の信号を有し、第一及び第二の信号は異なっており、認証温度は第一の温度より高い。
【0032】
例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーは基板ポリマー、熱変色性化合物及び増幅化合物を含んでなる。
【0033】
例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーは、基板ポリマーと、目視で検出又は観察できる熱変色応答を与えない量で存在する熱変色性化合物とを含んでなる。
【0034】
基板ポリマーとして使用できる好適なポリマーの若干の可能な例には、特に限定されないが、非晶質、結晶質及び半結晶質熱可塑性材料、即ち、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(特に限定されないが、線状及び環状ポリオレフィンを包含し、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含む)、ポリエステル(特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルメチレンテレフタレートなどを含む)、ポリアミド、ポリスルホン(特に限定されないが、水素化ポリスルホンなどを含む)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン(特に限定されないが、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−コ−アクリロニトリル、スチレン−コ−無水マレイン酸などを含む)、ポリブタジエン、ポリアクリレート(特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−ポリイミドコポリマーなどを含む)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(特に限定されないが、2,6−ジメチルフェノールから導かれるもの、2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーなどを含む)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン及びテフロン(登録商標)、並びにエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、無機充填材入りシリコーン、ビス−マレイミド、シアネートエステル、ビニル樹脂及びベンゾシクロブテン樹脂のような熱硬化性樹脂、加えて上述のプラスチックの1種以上を含むブレンド、コポリマー、混合物、反応生成物及び複合物がある。
【0035】
本明細書で使用する「ポリカーボネート」、「ポリカーボネート組成物」及び「芳香族カーボネート連鎖単位を含む組成物」という用語は、下記の式(I)の構造単位を有する組成物を包含する。
【0036】
【化1】

式中、R基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、その残部は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。好ましくは、Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは下記の式(II)の基である。
【0037】
【化2】

式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAとを隔てる1つ又は2つの原子を有する橋かけ基である。例示的な実施形態では、1つの原子がAとAとを隔てている。この種の基の非限定的な実例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンである。橋かけ基Yは、炭化水素基或いは飽和炭化水素基(例えばメチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデン)であり得る。
【0038】
ポリカーボネートは、ただ1つの原子がAとAとを隔てているジヒドロキシ化合物の界面反応で製造できる。本明細書で使用する「ジヒドロキシ化合物」という用語は、例えば、下記の一般式(III)を有するビスフェノール化合物を包含する。
【0039】
【化3】

式中、R及びRは各々ハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、同一であっても相異なっていてもよく、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは下記の式(IV)の基の1つを表す。
【0040】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0041】
好適なジヒドロキシ化合物の若干の非限定的な実例には、二価フェノール、及び米国特許第4217438号に名称又は式(一般式若しくは特定式)で開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。式(III)で表すことができる種類のビスフェノール化合物の具体例の非排他的リストには、下記のものが包含される。即ち、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後は「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシーt−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンなど、並びに上述のものを含む組合せである。
【0042】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーの使用が所望される場合には、2種以上の二価フェノール、或いは二価フェノールとグリコール、ヒドロキシ−若しくは酸−末端ポリエステル、二塩基酸又はヒドロキシ酸とのコポリマーを使用することも可能である。ポリアリーレート及びポリエステルカーボネート樹脂又はこれらのブレンドも使用できる。枝分れポリカーボネート並びに線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも有用である。枝分れポリカーボネートは、重合中に枝分れ剤を添加することで製造できる。
【0043】
これらの枝分れ剤は公知であり、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、及び上述のものの1種以上を含む混合物であり得る3以上の官能基を含む多官能性有機化合物を包含し得る。その具体例には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビスフェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)−α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸などがある。枝分れ剤は、約0.05〜2.0重量%のレベルで添加し得る。枝分れ剤及び枝分れポリカーボネートの製造方法は、米国特許第3635895号及び同第4001184号に記載されている。本発明では、あらゆる種類のポリカーボネート末端基が想定されている。
【0044】
一実施形態では、ポリマーは、A及びAの各々がp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAを基剤とするポリカーボネートである。一実施形態では、ポリカーボネートの平均分子量は約5000〜約100000である。別の例示的な実施形態では、ポリマーとして使用するポリカーボネートの平均分子量は約10000〜約65000であるのに対し、別の例示的な実施形態では、ポリマーとして使用するポリカーボネートは約15000〜約35000の平均分子量を有する。
【0045】
ポリカーボネート合成の監視及び評価に際しては、ポリカーボネート中に存在するフリース生成物の濃度を測定することが特に重要である。前述の通り、顕著なフリース生成物の生成はポリマーの枝分れを引き起こし、制御不可能な溶融物挙動をもたらすことがある。本明細書で使用する「フリース」及び「フリース生成物」という用語は、下記の式(V)を有するポリカーボネート中の繰返し単位を意味する。
【0046】
【化5】

式中、Xは上記の式(III)に関連して記載した二価基である。
【0047】
基板ポリマーとして使用するのに適したポリカーボネート組成物は、この種の樹脂組成物中に通常配合される各種の添加剤も含み得る。かかる添加剤は、例えば、充填材又は補強材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂、発泡剤など、並びに上述の添加剤の1種以上を含む組合せである。充填材又は補強材の例には、ガラス繊維、石綿、炭素繊維、シリカ、タルク及び炭酸カルシウムがある。熱安定剤の例には、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)ホスファイト、ジメチルベンゼンホスホネート及びトリメチルホスフェートがある。酸化防止剤の例には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及びペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がある。光安定剤の例には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンがある。可塑剤の例には、ジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレート、トリス(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン及びエポキシ化大豆油がある。帯電防止剤の例には、グリセロールモノステアレート、ステアリルスルホン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがある。離型剤の例には、ステアリルステアレート、みつろう、モンタンろう及びパラフィンろうがある。他の樹脂の例には、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリフェニレンオキシドがある。上述の添加剤の任意の組合せも使用できる。かかる添加剤は、組成物を製造するための成分混合中の適当な時点で混合できる。
【0048】
「熱変色性化合物」という用語は、一般には温度の関数として色が変化する化合物をいう。しかし、本明細書で使用する「熱変色性化合物」とは、第一の温度及び認証波長で第一の信号を有すると共に、認証温度及び認証波長で第二の信号を有する化合物をいう。この場合、認証温度は第一の温度より高く、第一及び第二の信号は異なっている。第一の温度は時には「低温」状態といわれ、認証温度は「高温」状態といわれる。本明細書で使用する「認証温度」とは、熱変色性化合物の熱変色転移温度以上の任意の温度をいう。
【0049】
本明細書で使用する「信号」とは、振動分光法、蛍光分光法、ルミネセンス分光法、電子分光法など、及びこれらの組合せのような分析方法で検出できる応答をいう。振動分光法の例は、ラマン分光法、赤外分光法、表面ラマン分光法及び表面共鳴ラマン分光法である。例示的な一実施形態では、信号は蛍光分光法、ルミネセンス分光法など、及びこれらの組合せのような分析方法で検出できる応答をいう。別の例示的な実施形態では、信号は蛍光分光法で検出できる応答をいう。
【0050】
一実施形態では、熱変色性化合物の信号は熱変色性化合物の蛍光又はルミネセンスの変化を反映する。蛍光発光の変化は、完全な発光スペクトルの変化又はスペクトルの局部の変化を観測すること(即ち、標識発光のピーク位置での蛍光発光の離散強度を観測すること、又は「高温」及び「低温」状態で異なる値を示すことが知られている選択波長での蛍光強度の比を観測すること)で検出できる。例えば、一実施形態では、信号は特定の励起波長又は範囲で放出される蛍光の強度又は位置であり得る。例示的な一実施形態では、熱変色性化合物の信号は、特定の励起波長(即ち、後述するような認証波長)で認証可能ポリマーから放出される蛍光として評価される。一実施形態では、熱パルスに応答した経時的な蛍光強度変化が信号として使用される。
【0051】
例示的な一実施形態では、熱変色性化合物の第一及び第二の信号は、熱変色性化合物の蛍光強度又は蛍光強度比を基準にして約5%以上異なる。別の実施形態では、熱変色性化合物の第一及び第二の信号は、熱変色性化合物の蛍光ピーク位置を基準にして約10nm以上異なる。
【0052】
開示される方法で使用するのに適した熱変色性化合物は、一般に、ポリマー母材と化学的適合性を有すると共に、エンジニアリングプラスチックの配合、特にポリマー基板の加工条件に矛盾しない熱安定性を有するように選択される有機物質である。一実施形態では、安定な熱変色性化合物は熱変色性を示す芳香族及び/又はヘテロ原子単位を含む複合ポリマーである。
【0053】
好適な熱変色性化合物の実例には、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)、アルキル/アリール置換ポリ(イソチアナフテン)、及び対応モノマーの対応コポリマー、ブレンド又は組合せがある。
【0054】
一実施形態では、ポリチオフェンは一般に下記の構造(VI)を有する。
【0055】
【化6】

式中、R〜Rは水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルコキシ基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換チオアルキル基、置換又は非置換トリアルキルシリル基、置換又は非置換アシル基、置換又は非置換エステル基、置換又は非置換アミン基、置換又は非置換アミド基、置換又は非置換ヘテロアリール、或いは置換又は非置換アリール基であり、nは1〜1000であり、mは0〜1000であり、lは1〜1000である。別の実施形態では、R〜R又はR〜Rは五員環又は六員環を構成する。別の実施形態では、R〜R又はR〜Rは六員以上の環を構成する。さらに別の実施形態では、R〜Rは橋かけされて六員以上の環を形成する。
【0056】
特定の設計温度に対してポリチオフェンを合成する際、例えばポリ(3−アルキルチオフェン)系列に関しては、レギオランダム(R=アルキル、R=アルキル、n≒0.8、m≒0.2、l=40〜80、R、R、R、R=H)及びレギオレギュラー(R=アルキル、n=40〜80、m=0、R、R、R=H)のポリ(3−n−アルキルチオフェン)の両方について、n−アルカン置換基の長さと熱変色転移の温度との間にほぼ逆比例の相関関係がある。レギオランダムポリマーに関しては、n−ヘキサデシルのような長い置換基は、n−オクチル(130℃)のような短鎖置換基より低い熱変色転移温度(81℃)を有する。レギオレギュラーポリマーはレギオランダムポリマーより高い熱変色転移温度を有するが、鎖長との間には同じ逆比例の相関関係が認められる。n−ヘキサデシル及びn−オクチルは約125〜約175℃の熱変色転移温度を有する。ポリマー中のチオフェン単位の数がほぼ16を超えさえすれば、熱変色転移温度は分子量に依存しない。オリゴチオフェン(n+m+l<16)は、ポリチオフェン(n+m+l>16)より低い熱変色転移温度を有する。
【0057】
例示的な一実施形態では、熱変色性化合物はレギオランダムポリマーである。例示的な一実施形態では、熱変色性化合物はポリ(3−アルキルチオフェン)系列中のレギオランダムポリマーである。別の例示的な実施形態では、熱変色性化合物はオリゴチオフェン(n+m+l<16)である。
【0058】
一実施形態では、使用する熱変色性化合物は約−30℃以上の熱変色転移温度を有する熱変色性化合物である。一実施形態では、使用する熱変色性化合物は約250℃以下の熱変色転移温度を有する熱変色性化合物である。別の実施形態では、使用する熱変色性化合物は約35〜約195℃の熱変色転移温度を有する熱変色性化合物である。別の例示的な実施形態では、使用する熱変色性化合物は約45〜約135℃の熱変色転移温度を有する熱変色性化合物である。
【0059】
熱変色性化合物は、後述するような分析方法で検出するのに十分な量でポリマーに添加される。一実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして約10.0重量%以下の量で認証可能ポリマー中に存在する。別の実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして約5.0重量%以下の量で認証可能ポリマー中に存在する。例示的な一実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして約1.0重量%以下の量で認証可能ポリマー中に存在する。さらに別の例示的な実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして約0.05重量%以下の量で認証可能ポリマー中に存在する。一実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.005重量%以上の量で認証可能ポリマー中に存在する。
【0060】
例示的な一実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.001〜約10.0重量%の量で認証可能ポリマー中に存在する。別の実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.01〜約5.0重量%の量で存在するのに対し、別の実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.02〜約1.0重量%の量で存在する。特に例示的な一実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.03〜1.0重量%の量で存在する。
【0061】
例示的な一実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.50重量%未満の量で存在する。別の例示的な実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.005〜約0.50重量%の量で存在する。別の例示的な実施形態では、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.02重量%から約0.50重量%未満までの量で存在する。
【0062】
例示的な一実施形態では、基板ポリマーは透明であり、熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして0.005〜約0.1重量%の量で使用される。熱変色性化合物のかかる低い濃度は、得られる認証可能ポリマーが「低温」状態から「高温」状態への迅速な切換えを示すので有利である。
【0063】
例示的な一実施形態では、熱変色性化合物は目視で検出できる熱変色応答を与えない量で認証可能ポリマー中に存在する。即ち、認証可能ポリマー中での熱変色性化合物の量は、認証可能ポリマーを熱変色転移温度以上の温度(即ち、認証温度)に暴露した場合に肉眼で見える色変化を生じない。
【0064】
本明細書に開示される認証可能ポリマー中には、増幅化合物を任意に使用できる。例示的な一実施形態では、増幅化合物は検出すべき蛍光信号を増幅するために熱変色性化合物と相乗的な相互作用を示すように選択された蛍光標識である。本明細書で使用する蛍光標識とは、有機蛍光物質、無機蛍光物質、有機金属蛍光物質、発光ナノ粒子及びこれらの組合せの1種以上をいう。その上、使用する蛍光標識はポリマー添加剤並びにポリマーの化学的及び物理的老化に対して感受性を示さない。
【0065】
例示的な一実施形態では、増幅化合物として使用する蛍光標識は、周囲環境条件に対して高い頑強性を示すと共に、約350℃以上、好ましくは約375℃以上、さらに好ましくは約400℃以上の温度安定性を示す部類の染料から選択される。通例、蛍光標識は約10分以上、好ましくは約1分以上、さらに好ましくは約20秒以上の時間にわたって温度安定性を有する。
【0066】
一般に、増幅化合物は、第一の温度(即ち、「低温」状態)での熱変色性化合物の吸収と重なり合うが、熱変色性化合物が「高温」状態にある場合には重なりが少ないか又は理想的には全く重ならない励起波長を有するように選択される。かかる増幅化合物を使用する場合、試験信号を評価する検出波長は通例は増幅化合物の最大発光であり、認証波長又は波長スペクトルは増幅化合物の最大励起波長である。一実施形態では、認証波長又は波長スペクトルは増幅化合物の最大励起波長の±50nm以内にあるのに対し、別の実施形態では、認証波長又は波長スペクトルは増幅化合物の最大励起波長の±30nm以内にある。例示的な一実施形態では、認証波長又は波長スペクトルは増幅化合物の最大励起波長の±10nm以内にある。
【0067】
好適な増幅化合物の励起範囲は、典型的には約100〜約1100ナノメートル、さらに典型的には約200〜約1000ナノメートル、最も典型的には約250〜約950ナノメートルである。好適な増幅化合物の発光範囲は、典型的には約250〜約2500ナノメートルである。
【0068】
一実施形態では、増幅化合物の最大励起波長は約800nm以下である。別の実施形態では、増幅化合物の最大励起波長は約250nm以上である。例示的な一実施形態では、増幅化合物の最大励起波長は約350〜約700nmである。例示的な一実施形態では、増幅化合物の最大励起波長は約450〜約650nmである。特に例示的な一実施形態では、増幅化合物の最大励起波長は約500〜約600nmである。
【0069】
例示的な増幅化合物には、下記の染料、特に限定されないが、米国特許第5573909号に記載されたものを始めとするペリレン誘導体、ポリアザインダセン類又はクマリン類のような染料からなる蛍光標識がある。他の好適な部類の染料には、ランタニド錯体、炭化水素及び置換炭化水素染料、多環式芳香族炭化水素、シンチレーション染料(好ましくはオキサゾール類及びオキサジアゾール類)、アリール置換及びヘテロアリール置換ポリオレフィン(C〜Cオレフィン部分)、カルボシアニン染料、フタロシアニン染料及び顔料、オキサジン染料、カルボスチリル染料、ポルフィリン染料、アクリジン染料、アントラキノン染料、アントラピリドン染料、ナフタルイミド染料、ベンゾイミダゾール誘導体、アリールメタン染料、アゾ染料、ジアゾニウム染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、テトラゾリウム染料、チアゾール染料、ペリノン染料、ビス−ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT)、キサンテン及びチオキサンテン染料、並びにインジゴイド及びチオインジゴイド染料がある。蛍光標識にはまた、近赤外波長の光を吸収して可視波長の光を放出する反ストークスシフト染料がある。
【0070】
以下は、蛍光標識として有用で商業的に入手できる好適な蛍光染料及び/又は発光染料の部分リストである。即ち、5−アミノ−9−ジエチルイミノベンゾ(a)フェノキサゾニウムペルクロレート、7−アミノ−4−メチルカルボスチリル、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ビフェニリル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾオキサゾール−1,3、2,5−ビス(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ビフェニリル)オキサゾール、4,4’−ビス(2−ブチルオクチルオキシ)−p−クアテルフェニル、p−ビス(o−メチルスチリル)ベンゼン、5,9−ジアミノベンゾ(a)フェノキサゾニウムペルクロレート、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、1,1’−ジエチル−2,2’−カルボシアニンヨージド、1,1’−ジエチル−4,4’−カルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチル−4,4’,5,5’−ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージド、1,1’−ジエチル−4,4’−ジカルボシアニンヨージド、1,1’−ジエチル−2,2’−ジカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチル−9,11−ネオペンチレンチアトリカルボシアニンヨージド、1,3’−ジエチル−4,2’−キノリルオキサカルボシアニンヨージド、1,3’−ジエチル−4,2’−キノリルチアトリカルボシアニンヨージド、3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサゾニウムペルクロレート、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルチアジカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルチアトリカルボシアニンヨージド、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、2,2’−ジメチル−p−クアテルフェニル、2,2−ジメチル−p−テルフェニル、7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2、7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2、7−ジメチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−3−エチルベンゾチアゾリウムペルクロレート、2−(6−(p−ジメチルアミノフェニル)−2,4−ネオペンチレン−1,3,5−ヘキサトリエニル)−3−メチルベンゾチアゾリウムペルクロレート、2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムペルクロレート、3,3’−ジメチルオキサトリカルボシアニンヨージド、2,5−ジフェニルフラン、2,5−ジフェニルオキサゾール、4,4’−ジフェニルスチルベン、1−エチル−4−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)ピリジニウムペルクロレート、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)ピリジニウムペルクロレート、1−エチル−4−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)キノリウムペルクロレート、3−エチルアミノ−7−エチルイミノ−2,8−ジメチルフェノキサジン−5−イウムペルクロレート、9−エチルアミノ−5−エチルイミノ−10−メチル−5H−ベンゾ(a)フェノキサゾニウムペルクロレート、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、1,1’,3,3,3’,3’−ヘキサメチル−4,4’,5,5’−ジベンゾ−2,2’−インドトリカルボシアニンヨージド、1,1’,3,3,3’,3’−ヘキサメチルインドジカルボシアニンヨージド、1,1’,3,3,3’,3’−ヘキサメチルインドトリカルボシアニンヨージド、2−メチル−5−t−ブチル−p−クアテルフェニル、N−メチル−4−トリフルオロメチルピペリジノ−<3,2−g>クマリン、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール、2,2’−p−フェニレン−ビス(5−フェニルオキサゾール)、3,5,3"",5""−テトラ−t−ブチル−p−セキシフェニル、3,5,3"",5""−テトラ−t−ブチル−p−キンキフェニル、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−アセチルキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−カルボエトキシキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−メチルキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(3−ピリジル)キノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、3,3’,2”,3"'−テトラメチル−p−クアテルフェニル、2,5,2"",5"'−テトラメチル−p−キンキフェニル、p−テルフェニル、p−クアテルフェニル、ナイルレッド、ローダミン700、オキサジン750、ローダミン800、IR125、IR144、IR140、IR132、IR26、IR5、ジフェニルヘキサトリエン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタレン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、ピレン、クリセン、ルブレン、コロネン、フェナントレンである。
【0071】
本明細書で使用する蛍光標識には、約1〜約50ナノメートルの粒度の半導体発光ナノ粒子も含まれる。例示的な発光ナノ粒子には、特に限定されないが、CdS、ZnS、Cd、PbS又はこれらの組合せがある。発光ナノ粒子にはまた、特に限定されないが、ユウロピウム及びジスプロシウムをドープしたアルミン酸ストロンチウムを始めとする希土類アルミン酸塩もある。
【0072】
一実施形態では、アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,8,10(2H,9H)−テトラオン及び2,9−ビス[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−5,6,12,13−テトラフェノキシのようなペリレン誘導体からなる蛍光標識が増幅化合物として使用される。
【0073】
例示的な一実施形態では、蛍光標識は、Lumogen Red F−300及びOrange F−240(BASF社、ドイツ)のような蛍光ペリレン誘導体、Solvent Red 149のような蛍光アントラピリドン類、Macolex Fluorescent Red G(Bayer社、ドイツ)のようなクマリン誘導体、Marigold Orange(DayGlo社)及びSolvent Orange 63(Farbtex社、中国)のようなチオキサンテン染料、Pigment Red 181(Farbtex社、中国)、Vat Violet 3(DayGlo社)及びVat Red 41(Farbtex社、中国)のようなチオインジゴイド誘導体、並びにかかる蛍光標識の組合せの1種以上である。
【0074】
増幅化合物の濃度は、増幅化合物の量子効率、励起及び発光波長、並びに使用する検出技術に依存し、一般に認証ポリマーの約10−18重量%ないし約2重量%の量で存在する。別の実施形態では、増幅化合物は認証ポリマーの約10−15重量%ないし約0.5重量%の量で存在する。例示的な一実施形態では、増幅化合物は認証ポリマーの約10−12重量%ないし約0.05重量%の量で存在する。
【0075】
本明細書に開示される認証方法は、試験ポリマー又は試験ポリマーから形成された試験製品を認証できる。一般に、認証方法の目的は、試験ポリマーが認証可能ポリマーであるか否か、或いは試験製品が認証可能ポリマーからなるか否かを判定することである。一実施形態では、試験ポリマーはポリカーボネートである。別の実施形態では、認証方法はポリカーボネートからなる情報記憶媒体である成形品を認証する。例示的な一実施形態では、試験製品はDVD又はCDである。
【0076】
試験ポリマー又は試験製品は、試験ポリマー又は製品の一部分を認証温度に上昇させるのに十分な刺激に暴露される。試験ポリマー又は製品の一部分を認証温度に上昇させて加熱部分を生み出すのに十分な刺激に暴露する段階は、直接刺激又は間接刺激を用いて行われる。
【0077】
直接刺激は、空気又は液体のような加熱流体を介して熱エネルギーを試験ポリマー又は認証可能ポリマーの加熱部分に伝達する熱源である。直接加熱源は、ハンドデバイス又は独立した加熱装置であり得る。かかる加熱装置の実例には、ヒートガン、オーブン、ホットプレートなどがある。
【0078】
間接刺激は、空気又は液体のような加熱流体を介して熱エネルギーを試験ポリマー又は認証可能ポリマーの加熱部分に伝達するものではない。その代わり、間接刺激は非熱エネルギーを試験ポリマーの一部分に伝達し、そこで非熱エネルギーは熱エネルギーに変換される。例えば、一実施形態では、間接刺激は電磁放射である。一実施形態では、電磁放射は試験ポリマーの一部分を加熱する赤外線であり得る。別の実施形態では、電磁放射は認証可能ポリマー中に存在するエネルギー変換化合物に吸収され、それが熱変色性化合物を刺激するのに十分な内部発熱をもたらす。
【0079】
電磁放射を吸収してそれを熱エネルギーに変換する好適な化合物の例には、近赤外(NIR)吸収剤、電磁放射の少なくとも一部を吸収するポリマー又は着色剤などがある。例示的な一実施形態では、NIR吸収剤及び(さらに詳しくは)その吸収特性を用いることで、レーザーのような外部NIR光源で誘起される内部熱パルスを生み出すことができる。かかるNIR吸収剤の市販品の一例は、BASF社(ドイツ)から商業的に入手できるNIR7788である。一実施形態では、約780nmの波長を有するレーザーがNIR7788を含む認証可能ポリマーに照射される。NIR7788はレーザーを部分的に吸収し、吸収したエネルギーを熱に変換することで試料温度を熱変色転移温度を超える温度(即ち、認証温度)に上昇させる。好適なNIR吸収剤の他の例には、フタロシアニン誘導体(例えば、Avecia社(マンチェスター、英国)から入手できるPro−Jet830)、ニッケル、白金、パラジウム及び他の有機金属錯体(Keystone Aniline Corporation(シカゴ、米国イリノイ州)から入手できる「Keysorb」NIR染料系列)、アントラキノン誘導体(Epolin Inc.(ニューワーク、米国ニュージャージー州)から入手できるEpolin9000)、インドナフトール誘導体、スクアリリウム(squarylium)及びエロコニウム(eroconium)染料、オキサジン、チアジン及び他のアジン誘導体から得られるもののような有機塩などがある。
【0080】
開示される方法の利点は、試験ポリマー又は製品の一部分のみを認証温度に加熱すればよいことである。特に、試験ポリマー又は製品の加熱すべき部分は、認証波長で試験信号を得るために必要な試験試料のサイズに対応している。このサイズは、最小ではレーザーが生み出すスポット(即ち、約1ミクロン)から製品のサイズにまでわたり得る。一実施形態では、試験ポリマー又は製品の加熱すべき部分は直径約0.1〜約20cmである。別の実施形態では、試験ポリマー又は製品の加熱すべき部分は、直径約0.5〜約15cmである。
【0081】
認証温度は、上述のように、熱変色性化合物の熱変色転移温度に依存する。本明細書で使用する認証温度は、認証可能ポリマーのほぼ熱変色転移温度以上の温度をいう。認証可能ポリマー中に使用する熱変色性化合物の熱変色転移温度が未知である場合には、ディジタル走査熱量測定(DSC)を用いることでそれを確認できる。通例、認証可能ポリマーの慣性及び恐らくは試験ポリマーの組成のため、試験ポリマーの加熱すべき部分は熱変色転移温度より5℃以上高く加熱する必要がある。したがって、一実施形態では、認証温度は熱変色性化合物の熱変色転移温度より約5℃以上高い温度である。一実施形態では、認証温度は認証可能ポリマー中に使用する熱変色性化合物の熱変色転移温度より約15℃以上高い。別の実施形態では、認証温度は認証可能ポリマー中に使用する熱変色性化合物の熱変色転移温度より約25℃以上高いのに対し、別の例示的な実施形態では、認証温度は認証可能ポリマー中に使用する熱変色性化合物の熱変色転移温度より約35℃以上高い。
【0082】
一実施形態では、約65℃の転移温度を有する熱変色性化合物に関しては、試験ポリマー又は製品の加熱部分は約80℃以上の認証温度に昇温される。一実施形態では、認証温度は20℃以上であるのに対し、別の実施形態では、認証温度は約40〜約200℃である。例示的な一実施形態では、認証温度は約50〜約140℃である。熱変色性化合物は、所定のポリマー基板に対し、認証温度が認証中に試験製品の可視的なゆがみ又は認証可能ポリマーの可視的な融解を引き起こさないように選択するのが好ましいことに注意しなければならない。例示的な一実施形態では、認証温度は熱変色転移温度より高くかつポリマー基板のガラス転移温度より低くなるように選択される。
【0083】
試験ポリマーの一部分を認証温度に上昇させるのに十分な熱源に試験ポリマー又は製品を暴露する時間は、加熱部分のサイズ、ポリマーの組成、熱変色性化合物の性質及び濃度、刺激、加熱部分を生み出すために使用する方法、並びに基板中の熱伝導性を増加させる添加剤(例えば、アルミナ、金属充填材など)の存在に応じて変化する。一実施形態では、試験ポリマー又は製品は約1秒以上の時間にわたって熱源に暴露される。別の実施形態では、試験ポリマー又は製品は約600秒(10分)以下の時間にわたって熱源に暴露される。一実施形態では、試験ポリマー又は製品は約5〜300秒の時間にわたって熱源に暴露される。例示的な一実施形態では、試験ポリマー又は製品は約10〜150秒の時間にわたって熱源に暴露される。
【0084】
試験ポリマーの加熱部分の試験信号の測定は、一般に、確認が望まれる認証可能ポリマーの特定の認証波長に関する予備知識を用いて行われる。認証可能ポリマーの特定の認証波長は、熱変色性化合物の性質、熱変色性化合物の添加量、蛍光標識の存在、蛍光標識の添加量、蛍光標識の性質、ポリマーの種類などの様々な因子に依存する。かかる予備知識が入手できないこと又はそれを決定するのが困難であることは、開示される方法の利点である。
【0085】
本明細書に開示される認証方法で使用する認証可能ポリマーの第一及び第二の信号は、発光が一定の波長又は波長スペクトルに応答するものであるとはいえ、熱変色性化合物は異なる温度では異なる波長のエネルギーを放出するという事実を反映するものである。本明細書で使用する「認証波長」という用語は、熱変色性化合物を励起するために使用する電磁放射の波長をいい、単一の波長又は波長スペクトルであり得る。一実施形態では、試験ポリマーの認証方法は、試験ポリマーを光源で励起し、第一の温度及び認証温度に関して熱変色性化合物から放出される蛍光の変化を検出することを含む。例示的な一実施形態では、認証波長又は励起波長は認証温度で熱変色性化合物からの最大発光をもたらす波長である。
【0086】
かくして認証波長は、一実施形態では、熱刺激に暴露した場合における熱変色性化合物からの蛍光発光の変化が検出可能である選択波長として定義される。一実施形態では、認証波長は通例、「高温」状態(即ち、認証温度)における熱変色性化合物の最大発光の位置に基づいて選択される。一実施形態では、認証波長は最大発光をもたらす波長の±50nmであり得るのに対し、別の実施形態では、認証波長は最大発光波長の±30nmである。例示的な一実施形態では、認証波長は最大発光波長の±10nmである。
【0087】
一実施形態では、認証可能ポリマーの認証波長は約800nm以下である。別の実施形態では、認証可能ポリマーの認証波長は約250nm以上である。例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーの認証波長は約350〜約700nmである。例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーの認証波長は約450〜約650nmである。特に例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーの認証波長は約500〜約600nmである。
【0088】
一実施形態では、認証可能ポリマーの第一及び第二の信号は、認証波長又は励起波長に応答して放出される光の波長又は波長スペクトル、或いはかかる発光波長の測定値に基づく計算値である。かかる第一及び第二の信号又は「検出波長」は、熱変色性化合物及び任意の増幅化合物の関数であることが認められよう。一実施形態では、放出される光の波長は検出波長といわれることがあり、一般に300〜2500nmである。別の実施形態では、検出波長は350〜1100nmの範囲内で選択される。例示的な一実施形態では、検出波長は400〜800nmの間で選択される。別の例示的な実施形態では、検出波長は450〜750nmの間で選択される。別の例示的な実施形態では、検出波長は450〜750nmの間で選択される。別の特に例示的な実施形態では、検出波長は450〜650nmであるように選択される。
【0089】
得られる試験信号は、第一の信号の測定値、第二の信号の測定値、これらの組合せ、又はかかる信号の1以上に基づく計算値であり得る。例えば、試験信号は、蛍光の強度、蛍光ピークの形状及び/又は位置、経時的な又は熱源除去後の蛍光の持続時間又は減衰度、選択波長での蛍光強度の比、並びにこれらの信号の組合せの1以上であり得る。
【0090】
試験信号は、振動分光法、蛍光分光法、ルミネセンス分光法、電子分光法など、及びこれらの組合せのような分析技術を用いて測定できる。例示的な一実施形態では、試験信号は、蛍光分光法及びルミネセンス分光法からなる群から選択される分析技術を用いて測定される。例示的な一実施形態では、試験信号は蛍光分光法を用いて測定される。
【0091】
一実施形態では、試験信号は反射、発光、蛍光又はルミネセンスの1以上を測定することで求められる。例示的な一実施形態では、試験信号は蛍光又はルミネセンスの1以上を測定することで求められる。
【0092】
一実施形態では、試験信号は図1に示すような実験装置を用いて測定される。熱源2及びポータブル分光蛍光計4を用いて試験ポリマー10の試験信号が測定される。分光蛍光計4には、シャッター18及び/又は光学フィルター14が備わっている。レーザー2からの光は、二分岐型光ファイバー反射プローブ8の2つのアームの一方である第一の光ファイバーアーム6に集束される。光ファイバープローブ8の共通端8を表面12への垂線に対して0又は45度の角度で試料10の近くに配置した場合、試料10からの発光が捕集される。プローブ8の第二の光ファイバーアーム12は分光計4に結合される。若干の実験装置では、ロングパス光学フィルター14により、分光計4への励起光の入射を阻止できる。捕集されたスペクトルの処理は、適当なソフトウェアを用いてコンピューター16上で行われる。適当なソフトウェアの一例は、Synergy Software社(レディング、米国ペンシルヴェニア州)のKaleidaGraphである。
【0093】
別の実施形態では、2台のレーザー(一方は標識を励起するためのものであり、他方は熱パルス/温度上昇を生み出すためのものである)の使用に基づく検出装置が使用できる。この検出装置は、現場又は固定状態での容易な検出を可能にするためにハンドヘルド型であり得る。
【0094】
図7は、試料の蛍光分析を行うために使用する一実施形態を示している。図7は、前面照明構成で蛍光分析を行う場合、それぞれ(A)吸収測定及び(B)蛍光測定のためのアプローチ(A)及び(B)を示している。かかる構成は、ポリマー母材の強い吸収の存在下でも非常にわずかな濃度の蛍光標識の評価を可能にする。
【0095】
一実施形態では、試験ポリマーは薄い縁端を有する成形品の形状を有している。励起のために使用する光源が上方から(即ち、製品の表面に対して垂直に、又は表面への垂線に対してある角度(0〜80度)で)製品を照明している間に、刺激への暴露に由来する蛍光発光の変化の検出が製品のかかる薄い縁端(縁端蛍光)で行われる。例示的な一実施形態では、成形品はCD又はDVDのような情報記憶媒体デバイスである。
【0096】
試験信号が認証可能ポリマーの認証信号と実質的に同じであれば、試験ポリマーを認証可能ポリマーとして認証できる。一実施形態では、これは試験ポリマー及び認証可能ポリマーの両方に関する試験信号の値が約5%以下の差を有することを意味する。他の実施形態では、試験ポリマー及び認証可能ポリマーの試験信号間における±20%以下の変動が許容できる一方、他の実施形態では、約±10%未満の変動が認められる。
【0097】
ポリマー、熱変色性化合物及び蛍光標識に加えて、本明細書に開示される認証可能ポリマー又は認証可能ポリマーは、この種の樹脂組成物中に通常配合される各種添加剤を任意に含み得る。かかる添加剤には、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤(ベンゼンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラアルキルホスホニウム塩など)、離型剤(ペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレートなど)など、及び上述のもののいずれかを含む組合せがある。例えば、認証可能ポリマー組成物は、認証可能ポリマーの全重量を基準にして約0.01〜約0.1重量%の熱安定剤、約0.01〜約1重量%の帯電防止剤、及び約0.1〜約1重量%の離型剤を含み得る。
【0098】
若干の使用可能な酸化防止剤には、例えば、有機亜リン酸エステル(例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなど)、アルキル化モノフェノール、ポリフェノール、及びポリフェノールとジエンとのアルキル化反応生成物(例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、オクタデシル−2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイトなど)、p−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデン−ビスフェノール、ベンジル化合物、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、チオアルキル又はチオアリール化合物のエステル(例えば、ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネートなど)、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミドなど、並びに上述のものの組合せがある。
【0099】
使用できる他の可能な添加剤には、とりわけ、UV吸収剤、光安定剤や熱安定剤のような安定剤(例えば、酸性リン系化合物)、ヒンダードフェノール、酸化亜鉛や硫化亜鉛粒子又はこれらの組合せ、潤滑剤(鉱油など)、可塑剤、着色剤として使用される染料(アントラキノン類、アントラピリドン類、メタン染料、キノフタロン類、アゾ染料、ペリノン類など)、並びに上述の添加剤の組合せがある。
【0100】
特にポリマーがポリカーボネートである場合、認証可能ポリマーの加工を助けるため(即ち、押出機又は他の混合装置内で)、触媒も使用できる。触媒は、通例、得られる材料の粘度を調節するために役立つ。使用可能な触媒には、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化テトラアルキルホスホニウムなどの水酸化物があり、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルホスホニウムが好ましい。触媒は単独でも使用でき、或いはリン酸などの酸のような失活剤と組み合わせても使用できる。さらに、配合時にポリマー溶融物中に水を注入し、ベントから水蒸気として除去することで、残留揮発性化合物を除去することもできる。
【0101】
本明細書に開示される認証可能ポリマーは、各種前駆体を適切に混合できる反応器(例えば、一軸又は二軸押出機、ニーダー、ブレンダーなど)を用いて製造される。
【0102】
基板ポリマー中に熱変色性化合物及び任意には増幅化合物を導入するための方法には、例えば、溶液キャスティング、混合、ブレンディング又は共重合がある。熱変色性化合物及び増幅化合物は、認証可能ポリマー全体に均一に分散するようにして、或いは認証可能ポリマーの一部分上に分散するようにして基板ポリマー中又は基板ポリマー上に導入できる。例示的な一実施形態では、熱変色性化合物及び増幅化合物は認証可能ポリマー全体に均一に分散するようにして基板ポリマー中に導入される。熱変色性化合物及び増幅化合物は、ポリマー製造段階中、ポリマー配合段階中、製品へのポリマー加工中、又はこれらの組合せでポリマー中に導入できる。熱変色性化合物及び増幅化合物を同時に又は別々に導入することが可能である。一実施形態では、ポリマー配合段階中又は製品形成時に、濃縮物(即ち、マスターバッチ)を用いて1種以上の熱変色性化合物及び任意の増幅化合物が導入される。
【0103】
例えば、基板ポリマー用のポリマー前駆体を(例えば、ペレット状、粉末状及び/又は液状の)熱変色性化合物及び増幅化合物と予備混合し、重量計量又は体積計量フィーダーを用いて押出機内に同時に供給することができ、或いは射出成形機又は他の成形機の供給口又は別の注入口を通して熱変色性化合物及び蛍光標識を任意に添加することができる。任意には、一実施形態では、基板ポリマーを製造した後、認証可能ポリマーの一部分上へのコーティング、成形又は溶接で熱変色性化合物及び増幅化合物を基板ポリマーの一部分上に分散させることができる。例示的な一実施形態では、基板ポリマーと混和しないキャリヤー中に配置しない限りは、熱変色性化合物及び任意の増幅化合物は均一に分配される。
【0104】
一実施形態では、熱変色性化合物は混合、ブレンディング、配合又は共重合で基板ポリマー中に導入される。例示的な一実施形態では、熱変色性化合物は、ポリマー中への熱変色性化合物のドライブレンドを形成し、得られた混合物を配合することでポリマー中に導入される。
【0105】
一実施形態では、増幅化合物は混合、ブレンディング、配合又は共重合で基板ポリマー中に導入される。例示的な一実施形態では、増幅化合物は、配合段階中に増幅化合物を溶融状態で添加することで基板ポリマー中に導入される。かかる添加は、一実施形態では、サイドフィーダーを通して行うことができる。
【0106】
別の実施形態では、熱変色性化合物及び増幅化合物は、配合中に熱変色性化合物及び増幅化合物を溶融状態で添加することで基板ポリマー中に導入される。一実施形態では、かかる添加はサイドフィーダーを通して行うことができる。別の例示的な実施形態では、熱変色性化合物及び増幅化合物は、二軸押出機を用いて配合を行い、サイドフィーダーを通して熱変色性化合物及び増幅化合物を溶融物に添加することで導入される。
【0107】
基板ポリマー前駆体を使用する場合には、押出機は、分解を引き起こすことなしにポリマー前駆体を溶融するのに十分高い温度に維持すべきである。例えばポリカーボネートに関しては、一実施形態では約220〜約360℃の温度を使用できる。別の実施形態では、約260〜約320℃の温度が使用される。同様に、押出機内の滞留時間は分解を最小限に抑えるように制御すべきである。約10分以上までの滞留時間が使用でき、一実施形態では約5分までが使用され、別の実施形態では約2分までが使用され、さらに別の実施形態では約1分までが使用される。所望の形態(通例はペレット、シート、ウェブなど)に押し出す前に、例えば溶融濾過及び/又はスクリーンパックの使用などにより、得られた混合物を任意に濾過して望ましくない夾雑物又は分解生成物を除去できる。
【0108】
認証可能ポリマーは、材料の物理的及び化学的性質が所望される任意の用途のために使用できる。一実施形態では、認証可能ポリマーは情報記憶媒体用として使用される。他の実施形態には、包装材料(特に薬品包装)、レンズのような自動車部品、(携帯電話カバーのような)テレコムアクセサリー、コンピューター及び家電製品、建築材料、医療装置、眼鏡製品、フィルム及びシート(ディスプレイ用途で使用するものを含む)などがある。
【0109】
認証可能ポリマー組成物を製造した後、各種の成形技術、加工技術又はこれらの組合せを用いてそれを情報記憶媒体に成形できる。使用可能な成形技術には、射出成形、フィルムキャスティング、押出し、プレス成形、吹込み成形、スタンピングなどがある。使用可能な一方法は、金型に溶融ポリマーを充填する射出成形−圧縮技術からなる。金型はプレフォーム、インサート、充填材などを含み得る。認証可能ポリマーを冷却し、それが少なくとも部分的に溶融した状態にあるうちに圧縮することで、らせん同心円状又は他の整列状態に配列された所望の表面構造(例えば、ピット、溝、縁端構造、平滑性など)を成形品の所望部分(即ち、所望領域の片面又は両面)に刻印する。次いで、成形品を室温に冷却する。成形品を製造した後、当技術分野で公知のもののうち、電気めっき、(スピンコート法、吹付け塗り、蒸着、スクリーン印刷、塗装、浸し塗りなどの)コーティング技術、ラミネーション、スパッタリング、及び上述の加工技術の1以上を含む組合せのような追加の加工を用いて基板上に所望の層を配設できる。
【0110】
ポリカーボネート情報記憶媒体の一例は、任意に中空コア(バブル、キャビティなど)又は充填材(繊維、球体、粒子などの様々な形態を有する金属、プラスチック、ガラス、セラミックなど)入りのコアを含み得る射出成形ポリカーボネート基板からなる。
【0111】
形成される認証可能製品又は試験製品が情報記憶媒体である一実施形態では、認証可能ポリマーは、情報記憶媒体プレイヤー装置内においてレーザーで読み出される基板を形成するために使用するのが好ましい。その理由は、認証可能ポリマーの応答を捏造すること、及び使用する技術が媒体の再生可能性に影響を及ぼさないように保証することが著しく困難だからである。DVDのように2枚の基板を有する情報記憶媒体では、認証可能ポリマーを用いて一方又は両方の基板を形成することができる。例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーで形成されたDVDの基板はDVDプレイヤー装置内においてレーザーで読み出される層である。
【0112】
情報記憶媒体のこの基板上には、データ層、誘電体層、反射層及び/又は保護層、並びに上述の層を含む組合せを含む各種の層が配設される。これらの層は各種の材料からなり、製造する媒体の種類に従って配設される。例えば、第一面媒体に関しては、これらの層は保護層、誘電体層、データ記憶層、誘電体層、及び次いで基板に接触して配設された反射層であり得ると共に、基板の反対側には任意の化粧層が配設される。他方、あるタイプの光媒体に関しては、これらの層は任意の化粧層、保護層、反射層、誘電体層及びデータ記憶層であり得ると共に、基板に接触して追加の誘電体層が配設される。光媒体は、特に限定されないが、CD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM、高密度DVD、光磁気ディスクなどのような任意の通常の先行記録型、書換型又は追記型フォーマットのものを含み得る。媒体の形態はディスク形に限定されず、読取り装置に適応し得る任意の形状のものであり得ることは言うまでもない。
【0113】
データ記憶層は、光層、磁気層又は光磁気層のように、検索可能なデータを記憶し得る任意の材料からなり得る。通例、データ層は約600オングストローム(Å)程度までの厚さを有しており、約300Åまでの厚さが好ましい。使用可能なデータ記憶層には、特に限定されないが、酸化物(例えば、酸化ケイ素)、希土類元素−遷移金属合金、ニッケル、コバルト、クロム、タンタル、白金、テルビウム、ガドリニウム、鉄、ホウ素など、及び上述のものの1種以上を含む合金や組合せ、有機染料(例えば、シアニン系又はフタロシアニン系染料)、並びに無機相変化化合物(例えば、TeSeSn、InAgSbなど)がある。
【0114】
粉塵、油及びその他の夾雑物からの保護を行う保護層は、一実施形態では約100ミクロン(μ)超から約10Å未満までの厚さを有し、他の実施形態では約300Å以下の厚さを有し、他の例示的な実施形態では約100Å以下の厚さを有し得る。保護層の厚さは、通常、少なくとも一部では、使用する読取り/書込み機構の種類(例えば、磁気機構、光機構又は光磁気機構)によって決定される。使用可能な保護層には、とりわけ、金、銀、窒化物(例えば、特に窒化ケイ素及び窒化アルミニウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素など)、酸化物(例えば、二酸化ケイ素など)、ポリマー材料(例えば、ポリアクリレート及びポリカーボネート)、炭素フィルム(ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素など)、並びに上述の材料の1種以上を含む組合せのような耐食性材料がある。
【0115】
データ記憶層の片側又は両側に配設されてしばしば熱制御体として使用される誘電体層は、通例、最大では約1000Å以上、最小では約200Å以下の厚さを有し得る。使用可能な誘電体層には、環境に適合すると共に好ましくは周囲の層との反応性を示さない材料のうち、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなど)、酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)及び上述の材料の1種以上を含む組合せがある。
【0116】
反射層は、データ検索を可能にするのに十分な量のエネルギー(例えば、光)を反射するのに十分な厚さを有するべきである。通例、反射層は約700Å程度までの厚さを有し得るが、若干の例示的な実施形態では約300〜約600Åの厚さが使用される。使用可能な反射層には、金属(例えば、アルミニウム、銀、金、チタン、ケイ素、及び上述の金属の1種以上を含む合金や混合物など)を始めとして、特定のエネルギー場を反射し得る任意の材料がある。
【0117】
データ記憶層、誘電体層、保護層及び反射層に加えて、潤滑層などの他の層が使用できる。有用な潤滑剤には、特にフルオロオイル及びグリースなどのフルオロ化合物がある。
【0118】
一実施形態では、認証可能ポリマーは情報記憶媒体の基板に成形される。例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーは光記憶媒体の基板を構成する。特に例示的な一実施形態では、認証可能ポリマーはディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)の1以上の基板を構成する。
【0119】
本明細書に開示される認証可能ポリマーを含んでなる例示的なDVDは、それぞれが通例約1.0ミリメートル(mm)以下の厚さ、好ましくは約0.7mm以下の厚さを有する2枚の結合されたプラスチック基板(又は樹脂層)を含んでいる。また、約0.4mm以上の厚さも好ましい。2枚の結合されたプラスチック基板の少なくとも一方は、1以上のデータ層を含んでいる。一般に層0(又はL0)と呼ばれる第一の層は、データを読み出すディスク面(読取り面)に近い。一般に層1(又はL1)と呼ばれる第二の層は、読取り面から遠い。L0(3)とL1(5)との間には、通例は接着剤が配設され、任意には保護被膜又は隔離層が配設されている。片面DVD(即ち、DVDの一方の面上に配設された単一の読取り面から読取りを行うもの)は、さらに、読取り面の反対側にあるDVDの面上に配設されたラベルを含み得る。一実施形態では、第一の層及び第二の層の一方又は両方が認証可能ポリマーからなる。例示的な一実施形態では、第一の層が認証可能ポリマーからなる。
【0120】
読取り面から単一の層を読み出す場合(例えば、DVD5、DVD10)には、スパッタリング又は他の蒸着方法によってスタンプ面を薄い反射性データ層で被覆する。これにより、通例約60〜約100オングストローム(Å)の厚さの金属被膜が形成される。2つのデータ層を同じ読取り面から読み出すDVD(例えば、DVD9、DVD14、DVD18)については、レーザーは第一の層を読み出す場合にはそれで反射されなければならず、第二の層を読み出す場合には第一の層を通過しなければならない。したがって、第一の層は「半透明」(即ち、半反射性)である一方、第二の層は「全反射性」である。Consortium for Optical Mediaによって定められた現行の基準では、(ECMA規格#267に記載されている)電気パラメーターR14Hについて測定した全反射性及び半反射性データ層用の金属被膜の組合せはレーザーの波長で約18〜約30%とすべきである。現在のDVDでは、一般に使用されるレーザー波長は約700nm以下であり、約400〜約675nmが好ましく、約600〜約675nmがさらに好ましい。これらの金属被膜基準は無色の光学品質樹脂と共に使用するDVDデータ層に関して定められたが、これらは着色樹脂を用いるDVD系に対しても等しく適用される。
【0121】
樹脂に色を付与する場合、基板を通過して反射される光の透過率は影響を受ける。半反射層及び全反射層(L0及びL1)上の金属被膜の性質及び厚さは、基板の光透過率に合わせて調整される。所望の反射率を得るためには、半反射性データ層の金属被膜の厚さをその反射率とバランスさせると共に、全反射性データ層の厚さを調整してその反射率が所望の規格範囲内にあるようにすればよい。
【0122】
個々のデータ層用の金属被膜は、各種の反射性材料を用いて得ることができる。半反射性及び/又は全反射性データ層として使用するのに十分な反射率を有し、好ましくはスパッタリングで基板上に配設し得る材料(例えば、金属、合金など)が使用できる。若干の使用可能な反射性材料には、金、銀、白金、ケイ素、アルミニウムなど、並びに上述の材料の1種以上を含む合金及び組合せがある。例えば、第一/第二の反射性データ層金属被膜は、金/アルミニウム、銀合金/アルミニウム、銀合金/銀合金などであり得る。
【0123】
各層の総合反射率に加え、後続層の十分な反射率を確保するため、相次ぐ反射性データ層間の反射率の差を調節すべきである。好ましくは、相次ぐ層(例えば、第一及び第二の層)間の反射率の差は約5%以下であり、約4%以下が好ましく、約3.0%以下がさらに好ましい。さらに、互いに隣接する反射性データ層間の反射率の差は約0.5%以上であることが好ましく、約1%以上がさらに好ましい。2つの層に関して記載したが、3以上の層も使用できることは言うまでもなく、相次ぐ層間の反射率の差は上記に述べた通りにすべきであることに注意されたい。
【0124】
反射性データ層は、通例、スパッタリング又はその他の方法により、成形やエンボシングなどで基板の表面に形成されたパターン(例えば、ピット、溝、アスペリティ、スタート/ストップオリエンテイターなどの表面構造)上に配設される。例えば蒸着は、第一のパターン化表面上に半反射性データ層をスパッターすることからなり得る。次いで、半反射性データ層上に隔離層又は保護被膜を配設できる。複数のデータ層を有するDVD(例えば、DVD14、DVD18など)を形成する場合には、半反射性データ層の反対側にある隔離層の面上に(例えば、スタンピングなどにより)第二のパターン化表面を形成できる。次いで、スパッタリング又はその他の方法により、隔離層上に全反射性データ層を蒸着できる。別法として、DVD14構造の場合には、第二の基板(又は樹脂層)のパターン化表面上に全反射性データ層を蒸着できる。次いで、半反射性データ層及び全反射性データ層の一方又は両方の上に隔離層又は保護被膜が配設される。次いで、2枚の基板の間に結合剤又は接着剤を配置して互いに結合することによってディスクを形成できる。任意には、相次ぐ層間に隔離層を配設しながら、複数の半反射性データ層を蒸着することもできる。
【0125】
反射性データ層の反射率は、反射層の数に応じて約5〜約100%であり得る。単一の反射性データ層を使用する場合、反射率は好ましくは約30〜約100%であり、約35〜約95%がさらに好ましく、約45〜約85%がさらに一段と好ましい。二重の反射性データ層を使用する場合、データ層の反射率は好ましくは約5〜約45%であり、約10〜約40%がさらに好ましく、約15〜約35%がさらに一段と好ましく、約18〜約30%が特に好ましい。最後に、複数の反射性データ層(例えば、単一の読取り面から読取り可能な3以上の反射性データ層)を使用する場合、反射率は好ましくは約5〜約30%であり、約5〜約25%がさらに好ましい。現在、特に好ましい範囲はECMA規格#267に準拠している。それによれば、反射率は2層DVD(例えば、1以上の全反射層及び1以上の半反射層)に関して約18〜約30%であり、1層DVD(例えば、1つの全反射層)に関して約45〜約85%である。
【0126】
一実施形態では、これらのDVD基板を製造するために使用する認証可能ポリマーは、レーザーの波長範囲内で約60%から94%未満までの光の透過を可能にする。その透過範囲内では、透過率は好ましくは約70%以上であり、約74%以上がさらに好ましく、約78%以上が特に好ましい。使用する着色剤の種類及び量に応じ、透過率は約92%以下であり得るが、着色剤の種類に応じて約88%以下、さらには約85%以下でもあり得る。基板の透過率が減少するのに伴い、基板の所望の密着性を達成し得ることが一層困難になる点に注意すべきである。基板はポリカーボネートを含んでなることが好ましく、主としてポリカーボネートからなる(例えば、約80%以上のポリカーボネートを含む)基板が特に好ましい。
【実施例】
【0127】
実施例1
実験用として熱安定性有機蛍光物質(Lumogen F Red 300、BASF社、ドイツ)を使用した。この特定の蛍光物質は、約578nmに位置する最大吸収、約615nmに位置する蛍光発光、及び90%を超える蛍光収率を有している。この蛍光物質をトレーサーレベル(最終製品中で約1ppm)で配合するため、それをまずポリカーボネート中に配合して蛍光物質含有量0.005pphのマスターバッチ(Lumogen F−300 MB)を形成した。熱変色性物質は、ポリカーボネート中で化学的に安定であると共に、このエンシニアリングポリマーの加工条件を維持できるように選択した。この実施例のためには、レギオランダムポリ(3−オクタデシルチオフェン)(ロードアイランド大学(キングストン、米国ロードアイランド州)から入手できるP3ODTロット#YW1202)を選択した。この熱変色性物質は、室温では赤色であり、熱変色転移温度を超えると赤みがかった黄色に変わる。この物質は65℃で熱変色転移を示すといわれているが、実際の実験によれば、迅速な熱変色を受けるためにP3ODTは実際には約100℃の温度(ヒーターの表面温度)を要求することが実証されている。
【0128】
二軸押出機上での配合により、かかる標識の組合せを光学品質(OQ)ポリカーボネート配合物中に配合した。使用したOQポリカーボネート樹脂配合物は、(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて絶対ポリカーボネート標準に対し測定して)約17700の平均分子量Mwを有するポリカーボネート樹脂、亜リン酸エステル系熱安定剤及び離型剤を含んでいる。続いて、押出し段階後に形成されたペレットの射出成形により、各種配合物からのプラーク試料(厚さ0.60mm及び1.20mm)を得た。各種試料に関する標識濃度を表1に示す。
【0129】
【表1】


ポリマー製品の分析用の実験装置を図1に示す。ポリマー製品の蛍光測定は、熱源2としての小形532nmレーザー(Nanolase社、フランス)及びポータブル分光蛍光計4を用いて行った。分光蛍光計4(Ocean Optics,Inc.、ダニーディン、米国フロリダ州、モデルST2000)には、200μmのスリット、400nmのブレーズ波長を有すると共に30%を超える効率で250〜800nmのスペクトル範囲をカバーする600本/mmの回折格子、及び線形CCDアレイ検出器が備わっていた。レーザー2からの光は、「シックス・アラウンド・ワン」二分岐型光ファイバー反射プローブ8(Ocean Optics,Inc.、モデルR400−7−UV/VIS)の2つのアームの一方である第一の光ファイバーアーム6に集束させた。光ファイバープローブ8の共通端8を表面12への垂線に対して0又は45度の角度で試料10の近くに配置した場合、試料10からの発光が捕集された。プローブ8の第二の光ファイバーアーム12は分光計4に結合した。若干の実験では、ロングパス光学フィルター14により、分光計4への励起光の入射を阻止できる。捕集されたスペクトルの処理は、KaleidaGraph(Synergy Software社、レディング、米国ペンシルヴェニア州)を用いてコンピューター16上で行った。
【0130】
ポリマー製品の加熱は、ハウス内蔵ヒーター又はヒートガンを用いて行った。
【0131】
実施例2
図2は、実施例1で製造したポリマー製品に関し、製品が室温(低温)及び100℃(高温)にある場合に図1の実験装置で測定した蛍光スペクトルの差を示すものである。図2は、室温(低温)にある場合及び約100℃(高温)に加熱した場合について、532nmの励起波長での試料MWB0703031−2〜−5の蛍光発光プロフィルを示している。熱変色性標識(0.05pphのP3ODT)のみを含む試料MWB0703031−2は、試料温度を約100℃に上昇させた場合に蛍光スペクトルの顕著な変化を示す。蛍光発光が増加するばかりでなく、ピーク位置が約650nmから約590nmにシフトする。有機蛍光物質(1ppmのBASF社製Lumogen F−300)のみを含む試料MWB0703031−3は、「低温」状態と「高温」状態との間で蛍光発光特性の変化を示さない。それに比べて、同じ有機蛍光物質を増幅化合物として熱変色性化合物と共に添加した場合(試料MWB0703031−4及びMWB0703031−5の場合)には、第一の温度と認証温度との間(即ち、「低温」状態と「高温」状態との間)で蛍光発光スペクトルが顕著に変化する。認証温度の「高温」状態での発光は、試料MWB0703031−2(熱変色性化合物のみ)に比べ、約590nmに極大を有する一層はっきりしたピーク(即ち、強度が大きく幅の狭いピーク)を示す。これは、蛍光物質と熱変色性化合物との間の相乗効果を例示している。認証プロセス中における蛍光発光の差はNIR吸収剤の存在でほとんど影響されないことに注意されたい。その結果、NIR吸収剤及び(さらに詳しくは)その吸収特性を使用して、レーザーのような外部NIR光源で誘起される内部熱パルスを生み出すことができる。
【0132】
実施例3
図3は、実施例1で製造した材料MWB0703031−4を加熱した際における蛍光強度増加の可逆性を実証している。試料MWB0703031−4をヒートガンからの相次ぐ短い熱パルスに暴露しながら、動的蛍光測定を行った。
【0133】
この実施例は、開示された方法が多数回実施できる頑強な認証方法を提供することを例示している。この特徴は、製品が真正のものであるか否かを証明するために製造、輸送及び配給中の様々な段階で、さらには法廷で製品が検査されることのある海賊行為防止の点で特に興味深い。
【0134】
実施例4
図4は、実施例1で製造した試料MWB0703031−4の加熱中に測定した吸収特性の変化を示している。図4の第一のグラフ(左)は、温度を「低温」から「高温」に上昇させた場合の吸収スペクトルの変化を示している。図4の第二のグラフ(右)は、535nmでの吸光度変化を示している。
【0135】
試料が「低温」状態から「高温」状態に移行した場合、(レーザーの励起波長である532nmでの吸光度とほとんど同じである)535nmでの吸光度が約0.35から約0.08までほぼ75%も減少することに注意しなければならない。かかる変化は、製品中に非常に低いレベルで存在する蛍光物質標識の可変励起を引き起こす。その結果、熱変色性顔料と蛍光物質との組合せは蛍光信号の強い増加を示す。熱変色転移に際して吸収スペクトル中に認められる変化は、図5に示す可視的な色変化(温度が熱変色転移温度を超えて上昇した際に赤色から黄色にシフトすること)に矛盾しない。
【0136】
実施例5
図6は、熱パルス後の蛍光発光の変化を例示している。実施例1で製造した試料MWB0703031−4の蛍光減衰度が加熱後の時間の関数として示されている。実施例3の実験装置を使用した。これは、2つの試料状態(「高温」及び「低温」)間における蛍光発光の変化の監視ばかりでなく、加熱後の蛍光減衰度のような動的パラメーターの分析によっても確認を行うのが可能であることを示している。かかる減衰特性は、通例、熱パルスの強度及び持続時間並びに熱変色性物質の添加量及びポリマー母材の性質に依存する。このような理由で、確認プロセス中に減衰特性を使用することは一層確実な認証を可能にする。
【0137】
本明細書に開示される方法及び製品は、ポリマー基材基板(特に、ポリカーボネート系材料)及びかかる基板から製造される製品の出所及び素性を認証し確認する際に有用な認証方法を提供する。
【0138】
特定の基板又は情報記憶媒体中における熱変色性化合物及び増幅化合物の存在は、認証可能ポリマーに関して個々に選択される認証信号について様々なオプションを可能にする。その結果、偽造者及び違法の製造者や販売者が、認証可能ポリマー及びそれから合法的に製造される製品についての認証信号を「模造」することは一層困難になる。その上、増幅化合物の吸収は一般に熱変色性顔料の吸収の陰に隠されるので、増幅化合物をUV−可視分光法で検出するのは困難である。「隠れた」増幅化合物及び時間と共に変化する信号を有する熱変色性化合物の両方を使用することで、偽造者及び違法の製造者や販売者を一層容易に確認して逮捕することができる。
【0139】
以上、例示的な実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】蛍光データを試験信号として使用する認証方法用の実験装置の略図である。
【図2】室温時(低温)及び約100℃に加熱した時(高温)における532nmの励起波長での試料MWB0703031−2〜−5の蛍光発光プロフィルである。
【図3】検出の可逆性を示す図である。
【図4】試料MWB0703031−4の熱変色挙動を示す図である。
【図5】熱変色性顔料による可視的な色変化を示す図である。
【図6】試料MWB0703031−4の蛍光減衰度を加熱後の時間の関数として表すグラフである。
【図7】吸収及び蛍光測定のためのアプローチを示す略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験ポリマーが認証可能ポリマーであることを認証する方法であって、認証可能ポリマーが基板ポリマーと熱変色性化合物とを含んでおり、熱変色性化合物が第一の温度及び認証波長で第一の信号を有するとともに、認証温度及び認証波長で第二の信号を有し、第一の信号と第二の信号とが異なり、認証温度が第一の温度より高い温度であり、当該方法が、
試験ポリマーの一部分を認証温度に上昇させて加熱部分を生み出すのに十分な刺激に試験ポリマーを暴露し、
認証波長で試験ポリマーの加熱部分の試験信号を測定し、
試験信号が認証可能ポリマーの認証信号と実質的に同じであれば試験ポリマーが認証可能ポリマーであると認証する
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
試験信号を測定する段階がさらに、反射、発光、蛍光又はルミネセンスの1以上を測定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
熱変色性化合物が、認証可能ポリマーを基準にして約1重量%未満の量で認証可能ポリマー中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
熱変色性化合物が、認証可能ポリマーを基準にして0.005重量%以上の量で認証可能ポリマー中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
熱変色性化合物が、目視で検出できる熱変色応答を与えない量で認証可能ポリマー中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
試験信号が、蛍光の強度、蛍光ピークの形状、蛍光ピークの位置、経時的な又は熱源除去後の蛍光の持続時間又は減衰度、2以上の異なる波長での蛍光強度の比、及びこれらの組合せの1以上である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
認証可能ポリマーがさらに増幅化合物を含み、増幅化合物の結果として認証可能ポリマーの認証信号が熱変色性化合物の第二の信号より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項8】
基板ポリマー、及び
第一の温度及び認証波長で第一の信号を有すると共に、認証温度及び認証波長で第二の信号を有する熱変色性化合物であって、第一及び第二の信号は異なっており、認証温度は第一の温度より高い熱変色性化合物
を含んでなる認証可能ポリマーであって、
熱変色性化合物は認証可能ポリマーの重量を基準にして約0.001〜約0.50重量%の量で認証可能ポリマー中に存在する、認証可能ポリマー。
【請求項9】
熱変色性化合物が認証可能ポリマーの重量を基準にして約0.005〜約0.4重量%の量で存在する、請求項8記載の認証可能ポリマー。
【請求項10】
認証可能ポリマーがさらに増幅化合物を含み、増幅化合物の結果として認証可能ポリマーの認証信号が熱変色性化合物の第二の信号より大きい、請求項8記載の認証可能ポリマー。
【請求項11】
認証可能ポリマーの製造方法であって、
基板ポリマー及び熱変色性化合物を合体させて認証可能ポリマーを製造することを含んでなり、熱変色性化合物が認証可能ポリマーの重量を基準にして約0.001〜約0.50重量%の量で導入される、方法。
【請求項12】
認証可能製品の製造方法であって、
請求項30記載の認証可能ポリマーを用意し、
認証可能ポリマーから認証可能製品を形成する
ことを含んでなる方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法で製造される認証可能製品。
【請求項14】
光ディスクである、請求項13記載の認証可能製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−513447(P2007−513447A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541364(P2006−541364)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038667
【国際公開番号】WO2005/055156
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】