説明

ポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理方法、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理方法、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置及びポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理装置

【課題】PCB汚染廃油及びPCB汚染固形物を安全、確実に無害化するとともに、PCB汚染廃油から燃料ガスを回収して有効利用することができる方法及び装置を提供する
【解決手段】ガス化溶融炉50の熱分解部52は、圧縮ブロックとPCB汚染廃油とを熱分解・ガス化し、ガス改質部53は、発生したガスをガス改質し、溶融部54は、圧縮ブロックと微量PCB汚染廃油の不燃物を溶融し排出することとし、供給装置は、PCB汚染廃油を圧縮ブロック供給量の20重量%以下の供給量で上記熱分解部52に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)が含まれる絶縁油(「ポリ塩化ビフェニル汚染廃油」という)及びそのような絶縁油を使用した廃棄電気機器等(「ポリ塩化ビフェニル汚染固形物」という)を安全に処理できるポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理方法、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理方法、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置及びポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビフェニル(PCB)を使用していないとする電気機器等に、数mg/kgから数十mg/kg程度の微量なPCBに汚染された絶縁油を含むものが存在することが平成14年7月に確認された。その量は電気機器が約120万台、OFケーブルが1,400kmに上るとの推計があり、このような微量PCB汚染廃電気機器等(微量のPCBによって汚染された絶縁油及びそれが使用された電気機器やOFケーブルに係るものが廃棄物となったものをいう)の処理について、技術的に安全、確実で、かつ廃棄物の特性をふまえた処理方策に係る検討が求められている。微量PCB汚染廃電気機器を処理する技術のひとつとして特許文献1が開発されている。
【0003】
特許文献1は、微量PCB汚染廃電気機器のうち、トランスについては、PCB汚染絶縁油を抜き取り別途処理し、トランスを固定床炉又は連続炉で加熱しトランス内部に付着残留している微量PCB汚染絶縁油を揮発させて排ガスに移行させ、その排ガスを排ガス処理手段で焼却してPCBを分解している。また、OFケーブルについては、断面が露出するように切断したOFケーブル断片を固定床炉又は連続炉で加熱して、該OFケーブルに用いられている微量PCB汚染絶縁油を含浸させた絶縁紙から微量PCB汚染絶縁油を揮発させて排ガスに移行させ、同様に排ガス処理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−115638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による方式では微量PCB汚染廃電気機器からPCB汚染絶縁油を揮発させ加熱し分解し無害化することができる。しかしながら、絶縁油は石油由来の鎖式飽和炭化水素を主成分としており、この成分から燃料ガスを回収することが期待できるが、特許文献1による方式ではPCB汚染絶縁油から燃料ガスを得るように有効に利用することができないという問題がある。
【0006】
また、特許文献1による方式では、トランスから抜き取ったPCB汚染絶縁油を別途処理することが必要であり、さらにPCB汚染絶縁油を揮発させた後のトランスやOFケーブルの後処理も必要であり、簡便なプロセスで微量PCB汚染廃電気機器を無害化することができないという問題がある。
【0007】
このような事情に鑑みて、本発明は、PCB汚染廃油及びPCB汚染固形物を安全、確実に無害化するとともに、PCB汚染廃油から燃料ガスを回収して有効利用することができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<第一発明>
本発明に係るポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理方法は、ポリ塩化ビフェニルで汚染された廃油を、竪型ガス化溶融炉により無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収する。
【0009】
かかるポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理方法において、本発明では、固定炭素を含む廃棄物を回分的に圧縮し圧縮ブロックを成形する圧縮工程と、圧縮ブロックとともにポリ塩化ビフェニル汚染廃油を竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給して熱分解・ガス化し、発生したガスを上記竪型ガス化溶融炉のガス改質部でガス改質し、不燃物を上記竪型ガス化溶融炉の溶融部で溶融し排出するガス化溶融工程と、ガス改質した改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製工程とを備え、上記ガス化溶融工程にて、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油を圧縮ブロック供給量の20重量%以下の供給量で上記熱分解部に供給することを特徴としている。
【0010】
<第二発明>
本発明に係るポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理方法は、ポリ塩化ビフェニルで汚染された汚染固形物を、竪型ガス化溶融炉により無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収する。
【0011】
かかるポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理方法において、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物と固定炭素を含む廃棄物との混合物を回分的に圧縮し混合物圧縮ブロックを成形する圧縮工程と、混合物圧縮ブロックを竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給して熱分解・ガス化し、発生したガスを上記竪型ガス化溶融炉のガス改質部でガス改質し、不燃物を上記竪型ガス化溶融炉の溶融部で溶融し排出するガス化溶融工程と、ガス改質した改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製工程とを備え、上記圧縮工程にて、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物を、固定炭素を含む廃棄物の20重量%以下の比率で混合して混合物圧縮ブロックを成形することを特徴としている。
【0012】
<第三発明>
本発明に係るポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置は、ポリ塩化ビフェニルで汚染された廃油を無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収する。
【0013】
かかるポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置において、本発明では、固定炭素を含む廃棄物を回分的に圧縮し圧縮ブロックを成形する圧縮装置と、熱分解部、ガス改質部及び溶融部を有する竪型ガス化溶融炉と、圧縮ブロックと塩化ビフェニル汚染廃油を上記熱分解部に供給する供給装置と、上記ガス改質部でガス改質された改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製装置とを備え、上記竪型ガス化溶融炉の熱分解部は、圧縮ブロックとポリ塩化ビフェニル汚染廃油とを熱分解・ガス化し、ガス改質部は、発生したガスをガス改質し、溶融部は、圧縮ブロックとポリ塩化ビフェニル汚染廃油の不燃物を溶融し排出し、上記供給装置は、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油を圧縮ブロック供給量の20重量%以下の供給量で上記熱分解部に供給することとすることを特徴としている。
【0014】
<第四発明>
本発明に係るポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理装置は、ポリ塩化ビフェニルで汚染された汚染固形物を無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収する。
【0015】
かかるポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理装置において、本発明では、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物と固定炭素を含む廃棄物との混合物を回分的に圧縮し混合物圧縮ブロックを成形する圧縮装置と、熱分解部、ガス改質部及び溶融部を有する竪型ガス化溶融炉と、混合物圧縮ブロックを上記竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給する供給装置と、上記ガス改質部でガス改質された改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製装置とを備え、上記竪型ガス化溶融炉の熱分解部は、混合物圧縮ブロックを熱分解・ガス化し、ガス改質部は発生したガスをガス改質し、溶融部は、混合物圧縮ブロックの不燃物を溶融し排出し、上記圧縮装置は、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物の量を、固定炭素を含む廃棄物量の20重量%以下の量として圧縮ブロックを成形することとすることを特徴としている。
【0016】
第一発明乃至第四発明において、ガス改質とは、少なくとも、熱分解・ガス化し発生したガス中に含まれる炭化水素ガスを水蒸気と反応させ燃料ガスとして有用な水素および一酸化炭素を生成すること、及び発生ガス中に含まれるタール分を熱分解することをいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油及びポリ塩化ビフェニル汚染固形物を安全、確実に無害化するとともに、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油から燃料ガスを回収して有効利用することができる方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係る微量ポリ塩化ビフェニル汚染絶縁油(以下、「PCB汚染廃油」という)の処理装置の構成を示す図である。該処理装置の具体的な構成を説明する前に、まず、該処理装置によるPCB汚染廃油の処理の概略を説明する。
【0020】
処理装置は、微量のポリ塩化ビフェニルで汚染された絶縁油、すなわちPCB汚染廃油を無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収するための装置である。該処理装置では、まず、固定炭素を含む廃棄物を圧縮装置で回分的(バッチ的)に圧縮して圧縮ブロックとした後、該圧縮ブロックとともにPCB汚染廃油を竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給する。ここで、「固定炭素」とは、加熱しても揮発しない炭素のことをいう。該熱分解部では、酸素含有ガスが導入され、圧縮ブロックとPCB汚染廃油とが熱分解され一酸化炭素、水素等にガス化される。
【0021】
また、上記竪型ガス化溶融炉のガス改質部にて、酸素含有ガスが導入され、上記熱分解部で発生したガスをガス改質し、ガス精製装置で改質ガスを洗浄、精製し燃料ガスとして回収する。また、溶融部にて、圧縮ブロックとPCB汚染廃油の不燃物を溶融し、溶融スラグ、溶融金属として排出する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るPCB汚染廃油の処理装置1の構成を示す図である。以下、図1にもとづいて処理装置1の構成について説明する。
【0023】
図1に示されているように、処理装置1には、後述の圧縮装置20内に上方から固定炭素を含む廃棄物を投入する廃棄物投入装置10が設けられている。該廃棄物投入装置10は、廃棄物を外部から受け入れて貯留するホッパ11と、該ホッパ11の底部をなし開閉自在な蓋部12とを有している。該廃棄物投入装置10は、蓋部12が開位置にあるときに、廃棄物を圧縮装置20内に投入する。
【0024】
上記廃棄物投入装置10の下方には、上記廃棄物を圧縮して圧縮ブロックを成形する圧縮装置20が設けられている。該圧縮装置20は、ホッパ11の下方位置で水平方向に延びる筒状部21と、該筒状部21内を前後方向(図1にて左右方向)で往復動するピストン22と、該ホッパ11よりも下流位置(図1にて右方側)で上下方向に往復動して筒状部21の下流側開口を開閉する板状の圧縮支持盤23とを有している。上記筒状部21は、その内壁断面が、後述する加熱炉30の内壁断面と同形かつ同一寸法で形成されている。
【0025】
上記圧縮装置20は、圧縮支持盤23が下降位置にて筒状部21の下流側開口を塞いだ状態で、ピストン22が圧縮支持盤23へ向けて前方(右方)へ移動することにより、該ピストン22と圧縮支持盤23とでホッパ11から投入された廃棄物を前後方向ではさんで圧縮し、該廃棄物の圧縮ブロックPを成形する。該圧縮ブロックPの成形は、回分的(バッチ的)に行われる。
【0026】
上記圧縮装置20の下流側には、該圧縮装置20の筒状部21に接続されトンネル式加熱炉30(以下、「加熱炉30」という)が水平方向に延びて設けられている。該加熱炉30は外部から加熱されており、上記圧縮装置20から供給された圧縮ブロックPが該加熱炉30内で乾燥されるようになっている。該加熱炉30の下流側端部は、竪型ガス化溶融炉50(以下、「ガス化溶融炉50」という)の装入口51と接続されており、圧縮ブロックPを該装入口51からガス化溶融炉50内へ供給可能となっている。また、該加熱炉30は、その上壁が下流側(図1にて右方)へ向けて上方へ傾斜しており、通路が広がっている。これによって、圧縮ブロックPの上方に空間が形成され、該圧縮ブロックPから蒸発した水分の放出が可能となっている。
【0027】
処理装置1は、ガス化溶融炉50内にPCB汚染廃油を供給するための供給装置40が設けられている。該供給装置40は、PCB汚染廃油を貯留するタンク41と、該タンク41からPCB汚染廃油を送液するポンプ42とを有している。本実施形態では、該PCB汚染廃油は該ポンプ42によってガス化溶融炉50の装入口51の手前の位置に送液されるようになっている。後述するように、送液されたPCB汚染廃油は圧縮ブロックPとともにガス化溶融炉50内に供給される。
【0028】
ガス化溶融炉50は、上下方向に延びる鉛直部分と、該鉛直部分の下部から水平方向に延びる水平部分とを有している。上記上下方向に延びる部分は、その略下半部が熱分解部52として形成されており、略上半部がガス改質部53として形成されている。また、上記水平部分は溶融部54として形成されている。
【0029】
上記熱分解部52では、圧縮ブロックPとPCB汚染廃油が堆積して廃棄物堆積層Qが形成され、該廃棄物堆積層Qの廃棄物とPCB汚染廃油が熱分解によりガス化されるともに不燃分が溶融されるようになっている。ガス化溶融炉50の側壁の下部には、上記廃棄物堆積層P内に酸素含有ガスを供給する第一酸素含有ガス供給口55が設けられている。
【0030】
上記ガス改質部53では、後述するように、上記熱分解部52で廃棄物堆積層Qから発生したガスが改質されて改質ガスが生成される。ガス化溶融炉50の側壁の上部側には、ガス改質部53内に酸素含有ガスを供給する複数の第二酸素含有ガス供給口56が設けられている。
【0031】
上記溶融部54では、上記熱分解部52で生成された溶融物が加熱されて該溶融物に含まれる炭素等がガス化されて除去される。ガス化溶融炉50の水平部分の上壁には、上記溶融部54に燃料ガスを供給する燃料ガス供給口57が設けられている。また、該溶融部54には、上記溶融物を外部へ排出するための溶融物排出口58が下方へ延びて設けられている。
【0032】
ガス化溶融炉50の頂部には、該頂部に形成された改質ガス排出口59から延びガス改質部53で生成された改質ガスを炉外へ排出するためのガスダクト60が設けられている。ガスダクト60の下流側には、上記改質ガスを冷却洗浄するための冷却洗浄水循環装置70が設けられている。該冷却洗浄水循環装置70は、該ガスダクト60に連結され上記改質ガスを冷却洗浄水によって冷却するとともに該改質ガスから水溶性成分、ダスト、炭素微粒子等を除去する冷却洗浄装置71と、該冷却洗浄装置71で上記改質ガスの冷却洗浄に使用された冷却洗浄水を貯留して、該冷却洗浄水に含まれる固形物を沈殿分離する沈殿槽72と、該固形物が分離された冷却洗浄水を冷却する熱交換器73とを有している。冷却された冷却洗浄水は再び上記冷却洗浄装置71に戻される。
【0033】
また、冷却洗浄装置71の下流側には、該冷却洗浄装置71で冷却そして洗浄された改質ガスを精製して、燃料ガスとして利用可能な精製ガスを生成するガス精製装置80が設けられている。該ガス精製装置80は、酸洗浄水により上記改質ガスから重金属類を溶解して除去する酸洗浄装置81と、アルカリ洗浄水により上記改質ガスから塩化水素を除去するアルカリ洗浄装置82と、該改質ガスから硫化水素を除去する脱硫装置83と、該改質ガスから水分を除去する除湿装置84とを有している。
【0034】
以下、処理装置1によるPCB汚染廃油の処理について説明する。
【0035】
まず、固定炭素を含む廃棄物を廃棄物投入装置10のホッパ11に貯留する。そして、該ホッパ11に設けられた蓋部12が開放されることにより所定量の該廃棄物が圧縮装置20へ投入される。該圧縮装置20は、圧縮支持盤22を下降位置にもたらした状態でピストン22を前方へ移動させることにより、上記廃棄物が圧縮されてち密な圧縮ブロックPを形成する。該圧縮ブロックPの成形は、回分的(バッチ的)に行われ、該圧縮ブロックPが順次成形されることにより、該圧縮ブロックPが前方へ押し出されて加熱炉30へ供給される。
【0036】
上記圧縮ブロックPの断面形状は、加熱炉30の入口の内壁断面と同形、同一寸法であり、圧縮ブロックPは加熱炉30の内壁と接触状態を保ったまま押し込まれるため、加熱炉30の入口で加熱炉内雰囲気をシールできる。圧縮ブロックPは、順次新しい圧縮ブロックが押し込まれる毎に、加熱炉30内を滑りながらガス化溶融炉50の装入口51へ向けて移動する。
【0037】
既述したように、加熱炉30は外部から加熱されており、内部は昇温され、圧縮ブロックPの移動、昇温過程において、圧縮ブロックP中の水分が蒸発され乾燥される。また、タンク41からポンプ42によってPCB汚染廃油がガス化溶融炉50の装入口51の手前の位置に送液される。そして、乾燥された圧縮ブロックPおよびPCB汚染廃油は、ガス化溶融炉50の装入口51から該ガス化溶融炉50の熱分解部52内へ装入そして供給される。
【0038】
上記PCB汚染廃油は、圧縮ブロック供給量の20重量%以下の供給量で上記熱分解部52に供給されることが好ましい。これによって、圧縮ブロックPとして成形された廃棄物に含まれる固定炭素が酸素含有ガスにより燃焼して生じる熱エネルギー量を、PCBル汚染廃油を熱分解するのに十分な量とすることができるからである。また、上述の比率が20重量%より大きくPCB汚染廃油の供給量が多くなると、PCB汚染廃油を熱分解するために必要な熱エネルギー量を得ることが困難になるので好ましくない。
【0039】
上記熱分解部52内へ供給された圧縮ブロックPおよびPCB汚染廃油は、廃棄物堆積層Qを形成する。該廃棄物堆積層Qでは、熱分解部52の下部に設けられた第一酸素含有ガス供給口55から該廃棄物堆積層Q中へ酸素含有ガスが供給される。この結果、廃棄物中の固定炭素などの可燃物が燃焼して、その熱エネルギーで廃棄物とPCB汚染廃油の揮発分が揮発して熱分解される。この熱分解により、一酸化炭素、水素、炭化水素、二酸化炭素等へのガス化が行われるとともに、廃棄物およびPCB汚染廃油中の不燃分(金属、灰分など)が溶融して溶融物が生成される。
【0040】
また、熱分解部52の下部に接続された溶融部54では、燃料ガス供給口57から供給される燃料ガスが燃焼して生成する高温燃焼ガスで上記溶融物が加熱され、該溶融物に含まれる微量の炭素などがガス化して除去され、該溶融物は溶融物排出口58から溶融スラグ、溶融金属として排出される。
【0041】
ガス化溶融炉50のガス改質部53では、第二酸素含有ガス供給口56から酸素含有ガスが供給されており、廃棄物堆積層Qからの発生ガスの一部が燃焼されて温度雰囲気を1000℃以上にされた領域で該発生ガスが滞留され、以下のガス改質がなされる。
【0042】
熱分解部52の廃棄物堆積層Qにおいて、圧縮ブロックPとPCB汚染廃油とが熱分解して生成された上記発生ガスに含まれる炭化水素(メタン等)と一酸化炭素は、ガス改質部53にて、該発生ガスに含まれる水蒸気と下記(1)、(2)の反応により反応し、燃料ガスとして有用な一酸化炭素と水素を多く含むように改質される。
CH+HO→CO+3H (1)
CO+ HO→H+CO (2)
【0043】
熱分解部52に供給された圧縮ブロックPの廃棄物中の水分の重量比率が20重量%以上であると、発生ガスに十分な水蒸気が含まれるので、上記(1)、(2)の反応が十分に行われ、燃料ガスとして好ましい組成の改質ガスを得ることができるので好ましい。
【0044】
また、上記廃棄物中の水分の重量比率が20重量%未満であると、水蒸気量が少ないため上記(1)、(2)の反応が行われにくく、さらに下記(3)の反応などにより炭素微粒子が多量に発生し、冷却洗浄装置71でスカムが発生して、ガス精製装置80において装置の配管内に該スカムが付着して該配管を閉塞させて連続操業を困難にしたり、燃料ガスの性状に悪影響を及ぼしたりするなど問題が生じるので好ましくない。
2CO→C+CO (3)
【0045】
したがって、上記廃棄物中の水分の重量比率が20重量%未満である場合には、上述の問題を回避するために、水蒸気または水を供給する供給装置(図示せず)を設けて、ガス改質部53に水蒸気または水を供給するようにすることが好ましい。
【0046】
また、廃棄物堆積層Qからの発生ガスは、ガス改質部53にて、ガス温度を1000℃以上にした領域で滞留されて、該発生ガスに含まれるタール分のクラッキングが行われる。タール分のクラッキングとは、タール分の高分子量成分が低分子量の炭化水素や一酸化炭素に熱分解されることをいい、タール分を除去することにより改質ガスを燃料ガスとして利用する際にタールによるトラブルを回避することができる。また、クラッキングにより生成した炭化水素は、さらに水蒸気と反応して燃料ガスとして有用な一酸化炭素と水素に改質される。
【0047】
また、ガス改質部53において、廃棄物堆積層Qから発生したガスは、ガス温度を1000℃以上にした領域で滞留されて、発生ガスに含まれるPCBが分解され塩化水素が生成する。塩化水素は後述するガス精製装置80にて除去される。
【0048】
ガス改質部53で生成された改質ガスは、ガス化溶融炉50の炉頂部の改質ガス排出口59からガスダクト60に排出され冷却洗浄装置71で冷却洗浄水により冷却されるとともに、水溶性成分、ダスト、炭素微粒子等の固形物が該冷却洗浄水によって洗浄除去される。上記改質ガスの冷却洗浄に使用された冷却洗浄水は、沈殿槽72に導かれ上記固形物が沈殿分離される。該固形物が分離された冷却洗浄水は、熱交換器73により冷却され再び冷却洗浄装置71へ導入される。また、沈殿槽72に貯留された冷却洗浄水の一部は、洗浄水処理装置(図示せず)に抜き出され、アルカリを添加され、該冷却洗浄水中に溶解しているカルシウムイオン等が沈殿分離され塩水として回収される。
【0049】
冷却洗浄装置71で洗浄された改質ガスは、ガス精製装置80へ導かれ、酸洗浄装置81で酸性水により該改質ガスから重金属類が溶解され除去される。改質ガス中には、PCB汚染廃油に含まれるPCBが分解して生成した塩化水素が含まれているが、該塩化水素は、アルカリ洗浄装置82でアルカリ洗浄水により吸収され除去される。また、該改質ガスには、廃棄物に含まれていた塩素分から廃棄物のガス化の際に生成した塩化水素が改質ガス中に含まれているが、この塩化水素もアルカリ洗浄装置82でアルカリ洗浄水により除去される。さらに脱硫装置83で改質ガス中の硫化水素が除去される。そして、除湿装置84で改質ガス中の水分が除去される。この結果、燃料ガスとして利用可能な精製ガスが回収される。
【0050】
固定炭素を含む廃棄物は、廃棄物中の固定炭素の重量比が3重量%以上のものを用いることが好ましい。熱分解部52において廃棄物中の固定炭素が酸素含有ガスにより燃焼して生じる熱エネルギー量がPCB汚染廃油を熱分解するのに十分な量とすることができるからである。また、廃棄物中の固定炭素の重量比が5重量%以上のものを用いることにより、PCB汚染廃油を熱分解するとともに廃棄物を熱分解するのに十分な熱エネルギー量を得ることができるので、より好ましい。
【0051】
ガス改質部53から排出される改質ガスの水分の体積比率が33体積%以上となるように、圧縮ブロック供給量に対するPCB汚染廃油供給量の重量比率、固定炭素を含む廃棄物中の水分の重量比率、ガス改質部53に供給する水蒸気または水の供給量を調整することにより、PCB汚染廃油を水素、一酸化炭素など燃料ガスとして有用なガスにまで熱分解、ガス改質することができ、既述した炭素微粒子が多量に発生して生じる問題を回避することができる。但し、改質ガス中の水分の体積比率が多くなればなるほど熱効率が悪くなるので、熱効率の観点から改質ガス中の水分の体積比率の上限を50体積%程度とすることが好ましい。
【0052】
熱分解部52、ガス改質部53に供給する酸素含有ガスは、酸素以外の窒素などの成分が多いと、その窒素量がそのまま燃料ガスに含まれ燃料ガスとしての性状を低くすることになるので、供給する酸素含有ガスは酸素濃度が80体積%以上の高濃度とすることが好ましい。
【0053】
本実施形態では、PCB汚染廃油を、固定炭素を含む廃棄物の圧縮ブロックとともにガス化溶融炉に供給することとしたが、これに代えて、固定炭素を含む廃棄物とPCB汚染廃油との混合物を圧縮して混合物圧縮ブロックを成形して、本実施形態と同様に、該混合物圧縮ブロックから燃料ガスを生成することができる。
【0054】
本実施形態では、PCB汚染廃油をガス化溶融炉に供給することとしたが、これに代えて、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物(以下、「PCB汚染固形物」という)を供給してもよい。ここで、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物とは、微量のPCBによって汚染された絶縁油が使用された電気機器やOFケーブル等をいう。この場合、固定炭素を含む廃棄物とPCB汚染固形物との混合物を圧縮して成形された混合物圧縮ブロックをガス化溶融炉50に供給することができる。すなわち、本実施形態に係る処理装置は、PCB汚染廃油およびPCB汚染固形物のいずれの処理にも使用することができる。
【0055】
本実施形態によれば、PCB汚染廃油及びPCB汚染固形物を安全、確実に無害化するとともに、上記PCB汚染廃油から燃料ガスを回収して有効利用することができる。
【実施例】
【0056】
固定炭素を8重量%、水分を32重量%含む固形廃棄物を圧縮して圧縮ブロックとして、図1に示すガス化溶融炉に投入した。ガス化溶融炉に投入する装入口より手前の位置で、上記圧縮ブロックに対して、PCB汚染廃油(ポリ塩化ビフェニル濃度:48mg/kg)を11重量%の重量比率で添加した。ガス化溶融炉の熱分解部に純酸素を供給し、固定炭素と酸素との反応熱により、熱分解・ガス化させるとともに不燃物を溶融し、スラグとメタルを回収した。スラグおよびメタル中のポリ塩化ビフェニルの溶出量を測定したが定量下限値未満であり、溶出基準値の0.003mg/L未満であった。
【0057】
また、ガス化溶融炉のガス改質部に酸素を供給し、ガス改質部出口の温度を約1200℃になるように調整した。改質ガスを約70℃まで、急冷・酸洗浄し、アルカリ洗浄後、脱硫し、除湿して、水素、一酸化炭素を主体とした燃料ガスを回収した。得られた精製ガス(燃料ガス)中のポリ塩化ビフェニル濃度は、定量下限値である0.01mg/Nm未満であった。また、改質ガスを冷却洗浄した冷却洗浄水から回収された塩水のポリ塩化ビフェニルの濃度は、定量下限値である0.0005mg/L未満であった。この結果、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油が無害化され、燃料ガスとして回収されることを確認できた。
【符号の説明】
【0058】
1 処理装置
20 圧縮装置
40 供給装置
50 ガス化溶融炉(竪型ガス化溶融炉)
52 熱分解部
53 ガス改質部
54 溶融部
80 ガス精製装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビフェニルで汚染された廃油を、竪型ガス化溶融炉により無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収するポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理方法であって、
固定炭素を含む廃棄物を回分的に圧縮し圧縮ブロックを成形する圧縮工程と、
圧縮ブロックとともにポリ塩化ビフェニル汚染廃油を竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給して熱分解・ガス化し、発生したガスを上記竪型ガス化溶融炉のガス改質部でガス改質し、不燃物を上記竪型ガス化溶融炉の溶融部で溶融し排出するガス化溶融工程と、
ガス改質した改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製工程とを備え、
上記ガス化溶融工程にて、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油を圧縮ブロック供給量の20重量%以下の供給量で上記熱分解部に供給することを特徴とするポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理方法。
【請求項2】
ポリ塩化ビフェニルで汚染された汚染固形物を、竪型ガス化溶融炉により無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収するポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理方法であって、
ポリ塩化ビフェニル汚染固形物と固定炭素を含む廃棄物との混合物を回分的に圧縮し混合物圧縮ブロックを成形する圧縮工程と、
混合物圧縮ブロックを竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給して熱分解・ガス化し、発生したガスを上記竪型ガス化溶融炉のガス改質部でガス改質し、不燃物を上記竪型ガス化溶融炉の溶融部で溶融し排出するガス化溶融工程と、
ガス改質した改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製工程とを備え、
上記圧縮工程にて、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物を、固定炭素を含む廃棄物の20重量%以下の比率で混合して混合物圧縮ブロックを成形することを特徴とするポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理方法。
【請求項3】
ポリ塩化ビフェニルで汚染された廃油を無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収するポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置であって、
固定炭素を含む廃棄物を回分的に圧縮し圧縮ブロックを成形する圧縮装置と、
熱分解部、ガス改質部及び溶融部を有する竪型ガス化溶融炉と、
圧縮ブロックと塩化ビフェニル汚染廃油を上記熱分解部に供給する供給装置と、
上記ガス改質部でガス改質された改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製装置とを備え、
上記竪型ガス化溶融炉の熱分解部は、圧縮ブロックとポリ塩化ビフェニル汚染廃油とを熱分解・ガス化し、ガス改質部は、発生したガスをガス改質し、溶融部は、圧縮ブロックとポリ塩化ビフェニル汚染廃油の不燃物を溶融し排出し、
上記供給装置は、ポリ塩化ビフェニル汚染廃油を圧縮ブロック供給量の20重量%以下の供給量で上記熱分解部に供給することとすることを特徴とするポリ塩化ビフェニル汚染廃油の処理装置。
【請求項4】
ポリ塩化ビフェニルで汚染された汚染固形物を無害化するとともにガス化し燃料ガスとして回収するポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理装置であって、
ポリ塩化ビフェニル汚染固形物と固定炭素を含む廃棄物との混合物を回分的に圧縮し混合物圧縮ブロックを成形する圧縮装置と、
熱分解部、ガス改質部及び溶融部を有する竪型ガス化溶融炉と、
混合物圧縮ブロックを上記竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給する供給装置と、
上記ガス改質部でガス改質された改質ガスを精製し燃料ガスとして回収するガス精製装置とを備え、
上記竪型ガス化溶融炉の熱分解部は、混合物圧縮ブロックを熱分解・ガス化し、ガス改質部は発生したガスをガス改質し、溶融部は、混合物圧縮ブロックの不燃物を溶融し排出し、
上記圧縮装置は、ポリ塩化ビフェニル汚染固形物の量を、固定炭素を含む廃棄物量の20重量%以下の量として圧縮ブロックを成形することとすることを特徴とするポリ塩化ビフェニル汚染固形物の処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−55545(P2012−55545A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202920(P2010−202920)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】