説明

ポンプ、及び、流体噴射装置

【課題】ポンプから吐出される流体の脈動を低減すること。
【解決手段】流入口及び流出口が設けられた第1ハウジングを有し、前記流入口から前記第1ハウジング内に流体を吸い込み、当該流体を前記流出口から前記第1ハウジング外に吐出するポンプ部と、前記ポンプ部を駆動する駆動源、及び、当該駆動源を収容する収容部が設けられた第2ハウジングを有し、前記流出口から前記収容部内に流入した流体が流れる流路に弾性体が設けられた駆動部と、を備えたことを特徴とするポンプである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、及び、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの一例として、駆動歯車と従動歯車が噛み合った状態でハウジング内に収容された歯車ポンプが知られている。歯車ポンプでは、駆動歯車の軸孔に回転軸の一端側が差し込まれ、回転軸の他端側がハウジングから突出し、回転の駆動源に連結される。駆動源により回転軸が回転して歯車が回転すると、吸込口から歯車収容部に流体が吸い込まれ、その後、流体は、歯車の歯合いと歯車収容部の内壁とで作られる空間に閉じ込められて、吐出口に順次に送り出される。よって、歯車ポンプにより流体が移送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−163711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動源の回転むらや歯車の製造誤差などが原因で、歯車ポンプから吐出される流体の流量や圧力が変動し、流体に脈動が生じてしまうことがある。そうすると、歯車ポンプを使用する装置に振動や騒音が発生してしまう。また、ヘッド内のインクを加圧してノズルからインクを噴射させるインクジェットプリンターでは、流体(インク)の脈動によりノズルからのインク噴射が不安定になってしまう。
そこで、本発明では、ポンプから吐出される流体の脈動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、流入口及び流出口が設けられた第1ハウジングを有し、前記流入口から前記第1ハウジング内に流体を吸い込み、当該流体を前記流出口から前記第1ハウジング外に吐出するポンプ部と、前記ポンプ部を駆動する駆動源、及び、当該駆動源を収容する収容部が設けられた第2ハウジングを有し、前記流出口から前記収容部内に流入した流体が流れる流路に弾性体が設けられた駆動部と、を備えたことを特徴とするポンプである。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インクジェットプリンターの概略図である。
【図2】図2Aは実施例1の歯車ポンプの断面図であり、図2Bはポンプハウジングを上から見た図である。
【図3】図3Aは歯車ポンプ内を流れる流体の全体の流路を説明する図であり、図3Bは駆動軸の上端から流出した流体の流れを説明する図である。
【図4】図4Aは実施例2の歯車ポンプの断面図であり、図4Bはローターハウジングに取り付けられたフィルムを説明する図である。
【図5】図5A及び図5Bは実施例2の歯車ポンプの断面図である。
【図6】図6A及び図6Bは実施例3の歯車ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、流入口及び流出口が設けられた第1ハウジングを有し、前記流入口から前記第1ハウジング内に流体を吸い込み、当該流体を前記流出口から前記第1ハウジング外に吐出するポンプ部と、前記ポンプ部を駆動する駆動源、及び、当該駆動源を収容する収容部が設けられた第2ハウジングを有し、前記流出口から前記収容部内に流入した流体が流れる流路に弾性体が設けられた駆動部と、を備えたことを特徴とするポンプである。
このようなポンプによれば、ポンプ部から吐出された流体に生じている脈動(流体の圧力変動)を弾性体で吸収することができ、ポンプの外部に吐出される流体の脈動を低減することができる。
【0009】
かかるポンプであって、前記駆動源である第1回転子が回転軸の一端に取り付けられ、前記回転軸の他端に前記第1ハウジング内で回転する第2回転子が取り付けられ、駆動モーターによって回転する第3回転子が前記第2ハウジングの外周に設けられ、前記第3回転子の回転に伴って、前記第3回転子と前記第1回転子にそれぞれ設けられたマグネットの間に生じる磁力によって前記第1回転子が回転し、前記第1回転子の回転に伴って前記回転軸及び前記第2回転子が回転すること。
このようなポンプによれば、駆動モーターの熱が収容部内に伝わり難いため、流体の脈動を低減するために収容部内に流体を流したとしても、流体に与える温度変化の影響を小さくすることができる。
【0010】
かかるポンプであって、前記第1回転子に前記弾性体が設けられたこと。
このようなポンプによれば、収容部内を流れる流体を弾性体と接触させることができる。
【0011】
かかるポンプであって、前記第1回転子が有する面のうち、前記回転軸の軸方向と交差する方向に沿う面に、前記弾性体が設けられたこと。
このようなポンプによれば、第1回転子の回転力により、流体が振動しながら流れる方向と異なる方向の力を流体に与えて、流体の振動を均すことができ、流体の脈動をより低減することができる。
【0012】
かかるポンプであって、前記第2ハウジングに前記弾性体が設けられたこと。
このようなポンプによれば、収容部内を流れる流体を弾性体と接触させることができる。
【0013】
かかるポンプであって、前記回転軸は中空の回転軸であって、前記第1ハウジング内の流体が前記回転軸の内部空間を介して前記収容部内に流入すること。
このようなポンプによれば、ポンプの姿勢に関係なく、収容部内の全域に亘って流体を流すことができ、収容部内を流れる流体を弾性体と接触させることができる。
【0014】
かかるポンプであって、前記弾性体は、前記流路に設けられた空間部を弾性膜で閉塞したものであること。
このようなポンプによれば、ポンプ部から吐出された流体に生じている脈動(流体の圧力変動)を弾性体で吸収することができ、ポンプの外部に吐出される流体の脈動を低減することができる。
【0015】
かかるポンプを用いて流体を移送する流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、流体噴射装置を流れる流体の脈動を低減することができる。
【0016】
===プリンター1について===
図1は、インクジェットプリンター(以下、プリンター1)の概略図である。「流体噴射装置」として、プリンター1を例に挙げて実施形態を説明する。プリンター1は、インクタンク10と、往路チューブ11aと、返路チューブ11bと、ヘッド12と、キャップ13と、プラテン14と、を有する。
【0017】
ヘッド12は、複数のノズルNzと、ノズルNz毎に設けられて各ノズルNzに連通するインク室121と、複数のインク室121に連通する共通インク室122と、を有する。なお、ノズルNzからのインク噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室121を膨張・収縮させることによりノズルNzからインクを噴射させる方式や、駆動素子(発熱素子)によりノズルNz内に気泡を発生させ、その気泡でノズルNzからインクを噴射させる方式がある。
【0018】
インクを貯留するインクタンク10は、往路チューブ11a及び返路チューブ11bを介して、ヘッド12の共通インク室122に連通している。そして、往路チューブ11aの途中に歯車ポンプPが設けられている。
【0019】
印刷モード時には、プラテン14に支持された被記録媒体S(用紙やフィルム等)に向けてヘッド12が移動方向に移動しながらインクを噴射する画像形成動作と、移動方向と交差する方向に被記録媒体Sが搬送される搬送動作と、が繰り返される。その結果、先の画像形成動作により形成されたドットの位置とは異なる被記録媒体S上の位置に、後の画像形成動作にてドットが形成され、被記録媒体S上に2次元の画像が印刷される。そして、印刷モード時にインクが消費されると、プリンター1のコントローラー(不図示)は、歯車ポンプPを稼働し、インクタンク10内のインクをヘッド12に移送し、ヘッド12にインクを供給する。
【0020】
また、ヘッド12やインク流路(往路チューブ11a,返路チューブ11b)内のインクに気泡が混入してしまうことがある。そうすると、ノズルNzが目詰まりしたり、インク室121内のインクを適切に加圧することが出来なかったりして、ノズルNzから適正な量のインクが噴射されなくなってしまう。また、気泡がインクの流れを妨げて、ヘッド12に十分な量のインクを供給することが出来なくなってしまう。
【0021】
そこで、プリンター1は、インク内の気泡を除去する「メンテナンスモード」を定期的に実行する。メンテナンスモード時に、コントローラーは、ヘッド12をホームポジション(被記録媒体Sと対向しない領域)に移動し、ヘッド12のノズル面をキャップ13で封止する。この状態で、コントローラーは、歯車ポンプPを稼働し、インクタンク10,往路チューブ11a,ヘッド12,返路チューブ11bの順に、インクを循環する。そうすることで、ヘッド12やインク流路内のインクに混入していた気泡をインクタンク10に送ることができる。インクタンク10に送られた気泡は、インクの液面で弾けて消滅する。こうして、ヘッド12やインク流路内のインクに混入していた気泡を除去することができる。
【0022】
なお、メンテナンスモードの最後に、インクタンク10の空気層をエアーポンプ(不図示)で加圧して、ヘッド12内のインクを加圧した状態で、ヘッド12とキャップ13を離間させてもよい。そうすると、インクと共にノズルNzから気泡が勢いよく排出され、ヘッド12内のインクに混入していた気泡をより確実に除去することができる。
【0023】
===歯車ポンプP:実施例1===
図2Aは、実施例1の歯車ポンプPの断面図であり、図2Bは、歯車26,27等が収容された状態のポンプハウジング25を上から見た図である。なお、図2Aの左図は、歯車ポンプPをY方向の中央部(図2Bの位置AA’)にて軸方向(鉛直方向)に沿って切った断面図であり、図2Aの右図は、歯車ポンプPをX方向の中央部(図2Bの位置BB’)にて軸方向に沿って切った断面図である(X方向の右側から見た図である)。図3Aは、歯車ポンプP内を流れる流体の全体の流路を説明する図であり、図3Bは、駆動軸26aの上端から流出した流体の流れを説明する図である。なお、図3Aでは、ポンプハウジング25の外形は示さず、ポンプハウジング25内を流れる流体の流路だけを示す。
【0024】
まず、実施例1の歯車ポンプPの構成について説明する。
実施例1の歯車ポンプPは、駆動モーター20と、上面が閉塞した略円筒形状の外部ローター21と、略円柱形状の内部ローター22と、上面が閉塞した略円筒形状のローターハウジング23と、仕切板24と、略直方体形状のポンプハウジング25と、駆動歯車26と、駆動軸26aと、従動歯車27と、従動軸27aと、シール部材30と、を有する。
【0025】
ポンプハウジング25の上面には、駆動歯車26と従動歯車27を収容する歯車収容部C1(凹部)と、歯車収容部C1に連通する吸込口31及び吐出口32(凹部)が設けられている。歯車収容部C1は、各歯車26,27を収容する円柱形状の凹部の一部が重なった形状をしており、駆動歯車26と従動歯車27は互いに噛み合った状態で歯車収容部C1内に収容されている。歯車収容部C1内は、2つの歯車26,27の歯が噛み合った領域により区画される。図2Bに示すように、2つの歯車26,27の歯が噛み合った領域よりもY方向手前側の領域が吸込口31に連通し、Y方向奥側の領域が吐出口32に連通している。そして、ポンプハウジング25の上面を仕切板24が閉塞するように、ポンプハウジング25と仕切板24がシール部材30(例えばOリング)を介して密着結合されている。
【0026】
駆動歯車26の中央に設けられた軸孔には駆動軸26aが挿入され、駆動歯車26と駆動軸26aは一体回転可能に連結されている。駆動軸26aは、内部に空間C4のある円筒形状の軸、即ち、中空の軸であり、駆動軸26aの内部空間C4を流体が通過可能となっている。一方、従動歯車27の中央に設けられた軸孔には従動軸27aが挿入され、従動歯車27と従動軸27aは一体回転可能に連結されている。従動軸27aは内部に空間の無い円柱形状の軸である。各歯車26,27を上から見た際に(図2B)、駆動歯車26は反時計回り方向に回転し、従動歯車27は時計回り方向に回転する。
【0027】
駆動軸26aの下端、及び、従動軸27aの下端は、ポンプハウジング25に設けられた軸受け部(歯車収容部C1の下面に設けられた凹部)に回転自在に支持されている。従動軸27aの上端は、仕切板24に設けられた軸受け部(凹部)に回転自在に支持されている。駆動軸26aの上端は、ポンプハウジング25及び仕切板24から突出し、ローターハウジング23の内部上面に設けられた凹部(以下、天井凹部C5)に設けられている。天井凹部C5には支持部材231(リブ部材)が設けられている。そして、駆動軸26aの上端は、駆動軸26aの内部空間C4が塞がれないように、駆動軸26aの上端面の複数地点(例えば十字状の四点)にて支持部材231により回転自在に支持されている。従って、駆動軸26aの内部空間C4は内部ローター収容部C2と連通している。
【0028】
また、ポンプハウジング25には、下面から突出した第1流入路28a(中空円筒部)と、第1流入路28aから吸込口31まで軸方向に延びた第2流入路28b(空間部)と、吐出口32から駆動軸26aの下端までに至る「第1中間流路33(空間部)」が設けられている。第1中間流路33は、図2Aの右図や図3Aに示すように、吐出口32から下方に延びた後に、90度曲がって駆動軸26aの下端までY方向に延びた空間であり、吐出口32と駆動軸26aの内部空間C4を連通させる。
【0029】
仕切板24から突出した駆動軸26aの部位には、内部ローター22が駆動軸26aと一体回転可能に取り付けられている。そして、ローターハウジング23が内部ローター22に覆い被さるようにして、即ち、ローターハウジング23に設けられた内部ローター収容部C2に内部ローター22が収容されるようにして、ローターハウジング23が仕切板24に取り付けられている。なお、ローターハウジング23と仕切板24はシール部材30を介して密着結合している。
【0030】
内部ローター22は、ローターハウジング23の内周面及び仕切板24の上面に接することなく、内部ローター収容部C2に収容されている。即ち、内部ローター22の全周に亘って、ローターハウジング23及び仕切板24との間に空間が設けられている。従って、内部ローター収容部C2内を流体が通過可能となっている。
【0031】
また、内部ローター22は内部マグネット支持部材221と内部マグネット222を有し、内部マグネット222が内部マグネット支持部材221を介して駆動軸26aに取り付けられている。
【0032】
内部マグネット支持部材221は、内部に空間部C6を有する中空の部材であり、駆動軸26aに取り付けられる内周部221aと、内部マグネット222が取り付けられる外周部221bと、軸方向における中央部にて内周部221aと外周部221bを連結する連結部材221c(リブ部材)と、フィルムFと、を有する。
【0033】
フィルムFは、内周部221aと外周部221bの間の空間部C6の上面と下面を閉塞するように、内周部221aと外周部221bに取り付けられている。また、フィルムFは、弾性変形する薄い膜(弾性膜)であり、例えば、プラスチックフィルムや、ゴム膜、薄い板金などで形成されている。以下、フィルムFと空間部C6を合わせて「弾性体」とも呼ぶ。
【0034】
そして、外部ローター21がローターハウジング23に覆い被さるようにしてローターハウジング23に取り付けられている。外部ローター21は外部マグネット支持部材211と外部マグネット212を有する。また、外部ローター21の上部に駆動モーター20が取り付けられている。外部ローター21がローターハウジング23に取り付けられると、外部ローター21の内周側に位置する外部マグネット212がローターハウジング23を介して内部ローター22の内部マグネット222と対向する。
【0035】
また、図2Aの右図に示すように、仕切板24には、上面から下面まで軸方向に貫通した「第2中間流路34(空間部)」が設けられ、ポンプハウジング25には、上面から下面まで軸方向に貫通した「第3中間流路35(空間部)」が設けられている。第2中間流路34は内部ローター収容部C2と第3中間流路35に連通し、第3中間流路35は第2中間流路34と流出路29に連通している。
【0036】
次に、実施例1の歯車ポンプPの動作について説明する。
駆動モーター20の駆動により外部ローター21が回転すると、ローターハウジング23を介して外部マグネット212と内部マグネット222の間に生じる磁力により、内部ローター22が回転する。そして、内部ローター22の回転に伴って駆動軸26a及び駆動歯車26が回転し、駆動歯車26の回転に伴って従動歯車27及び従動軸27aが回転する。
【0037】
駆動歯車26と従動歯車27が回転すると、吸込口31に位置する流体(例えばインク)が、各歯車26,27の歯合いと歯車収容部C1の内壁とで作られる歯合い空間C3に閉じ込められ、吐出口32に順次送られる。流体を閉じ込めた歯合い空間C3が吐出口32に達すると、その歯合い空間C3に、もう一方の歯車の歯が入り込む。そのため、吐出口32に送られた流体は、吸込口31に戻ることが出来ず、吐出口32から流出する。
【0038】
このように駆動歯車26と従動歯車27が回転すると、吸込口31の流体が吐出口32に順次送られて、吸込口31は吐出口32に比べて低圧状態となり、歯車ポンプPの外部から第1流入路28a及び第2流入路28bを介して吸込口31に流体が流れ込む。一方、吐出口32は吸込口31に比べて高圧状態となり、吐出口32から流体が圧送される。
【0039】
吐出口32から圧送された流体は、図2Aの右図や図3Aに示すように、第1中間流路33を流れ、中空である駆動軸26aの下端から上端に亘って駆動軸26aの内部空間C4を流れる。駆動軸26aの内部空間C4を流れた流体は、駆動軸26aの上端面のうち、支持部材231で支持されていない部位から(即ち、支持部材231の間から)、内部ローター収容部C2内に流出する。
【0040】
内部ローター収容部C2内に流出した流体は、まず、内部ローター22の上面を流れる。即ち、内部マグネット支持部材221に設けられた空間部C6の上面を閉塞するフィルムFの上を流体が流れる。その後、流体は、内部ローター22の側面とローターハウジング23の内側側面との間を流れて仕切板24の上面に達する。仕切板24の上面に達した流体は、内部ローター22の下面と仕切板24の上面との間を第2中間流路34まで流れる。即ち、内部マグネット支持部材221に設けられた空間部C6の下面を閉塞するフィルムFの下を流体が流れる。その後、流体は、第2中間流路34と第3中間流路35を順に流れ、流出路29から歯車ポンプPの外部に流出する。
【0041】
つまり、実施例1の歯車ポンプPでは、第1流入路28a,第2流入路28b,吸込口31,歯車収容部C1,吐出口32,第1中間流路33,駆動軸26a(内部空間C4),内部ローター収容部C2,第2中間流路34,第3中間流路35,流出路29の順に、流体が流れる。
【0042】
なお、本実施形態では、歯車ポンプPをプリンター1(図1)にてインクを移送するために使用する。具体的には、インクタンク10とヘッド12を繋ぐ往路チューブ11aの途中に歯車ポンプPが設けられている。そのため、駆動モーター20が回転し、駆動歯車26及び従動歯車27が回転すると、インクタンク10内のインクが歯車ポンプPに流入し、歯車ポンプPから流出したインクがヘッド12に圧送(移送)される。
【0043】
ところで、歯車ポンプPでは、駆動モーター20の回転むらや歯車26,27の製造誤差などが原因で、歯車収容部C1から吐出される流体の流量や圧力が変動し、歯車収容部C1から吐出される流体に脈動が生じてしまう場合がある。流体に脈動が生じると、プリンター1に振動や騒音が発生してしまう。また、流体(インク)に生じた脈動により、所望しないタイミングでノズルNzからインクが噴射されてしまったり、規定量のインクがノズルNzから噴射されなかったりしてしまう。即ち、ノズルNzからのインク噴射が不安定になってしまう。
【0044】
しかし、本実施例1の歯車ポンプPは、歯車の回転によって、第1流入路28a(流入口に相当)からポンプハウジング25(第1ハウジングに相当)内に流体を吸い込み、第1中間流路33及び駆動軸26a(流出口に相当)からポンプハウジング25外に流体を吐出するポンプ部と、歯車を回転させる内部ローター22(駆動源に相当)をローターハウジング23(第2ハウジングに相当)で収容した駆動部と、を備える。そして、歯車収容部C1から吐出された流体が内部ローター収容部C2(収容部に相当)の内部を流れ、内部ローター収容部C2内を流れる流体の流路に弾性体が設けられている。
【0045】
なお、本実施例1では、内部マグネット支持部材221に設けられた空間部C6をフィルムFで閉塞したものを「弾性体」としている。そうすると、フィルムFを介して流路の反対側が空間部C6(空気層)となるので、フィルムFは流路側にも流路の反対側にも弾性変形可能となり、流体の脈動(流体の圧力変動)を吸収することができる。また、内部ローター収容部C2内を流れる流体が弾性体に接触するように、本実施例1では、内部ローター22の上面と下面に弾性体が設けられている。
【0046】
従って、本実施例1の歯車ポンプPでは、内部ローター22の上面に設けられたフィルムFとローターハウジング23との間や内部ローター22の下面に設けられたフィルムFと仕切板24との間に流体が流れる際に、流体の脈動に応じてフィルムFが流路側(流体側)又は流路の反対側(空間部C6側)に弾性変形するため、流体の脈動(流体の圧力変動)が吸収される。つまり、弾性体がダンパーとしての機能を果たす。よって、歯車収容部C1から吐出された流体に生じていた脈動を低減することができ、歯車ポンプPから外部に吐出される流体の脈動を低減することができる。その結果、流体の脈動によりプリンター1に発生する振動や騒音を抑制することができ、また、ノズルNzからのインク噴射を安定させることができる。
【0047】
また、内部ローター収容部C2内を流れる流体の流路に弾性体を設けているため、歯車ポンプP内で流体の脈動が低減される。そのため、歯車ポンプPの他にダンパーを設ける必要がなく、歯車ポンプPを搭載するプリンター1の装置構成を簡略化・小型化することができる。
【0048】
また、歯車ポンプPでは一般的に、駆動軸26aの貫通部分(駆動軸26aと仕切板24の隙間)から、歯車収容部C1を流れる流体が内部ローター収容部C2に漏れ易い。駆動軸26aの貫通部分にシール部材(不図示)を設けたとしても流体漏れを完全に防止することは難しい。
【0049】
しかし、本実施例1の歯車ポンプPでは、内部ローター22に設けられた弾性体で流体の脈動を低減するために、内部ローター収容部C2内を流体が流れる。即ち、駆動軸26aの貫通部分から流体が漏れ出る箇所である内部ローター収容部C2内を流体が流れる。つまり、流体が漏れ出る箇所が流体の流路となっている。そのため、駆動軸26aの貫通部分から内部ローター収容部C2に漏れ出た流体を、歯車収容部C1から駆動軸26aを介して内部ローター収容部C2内に流れ出る流体と共に、歯車ポンプPの外部に流すことができる。従って、本実施例1の歯車ポンプPでは、歯車ポンプPに多量の洗浄液を流したり歯車ポンプPを分解したりすることなく、駆動軸26aの貫通部分から漏れ出た流体を内部ローター収容部C2から取り除くことが出来る。
【0050】
このように、本実施例1の歯車ポンプPでは、流体の脈動を低減するだけでなく、洗浄性も向上する。そのため、例えば、歯車ポンプPに流すインクの色を置換した後に、内部ローター収容部C2に漏れ出た前色のインクが残留していることが無く、異なる色のインクが混ざってしまうことを防止できる。また、歯車ポンプPを洗浄する際に流した洗浄液が内部ローター収容部C2に残留していることも無く、洗浄液とインクが混ざってしまうことも防止できる。このように、洗浄性が向上した本実施例1の歯車ポンプPによれば、歯車ポンプPに対して使用する流体(インクや洗浄液)の置換性も向上する。
【0051】
また、本実施例1の歯車ポンプPでは、内部ローター22(駆動源,第1回転子に相当)が駆動軸26a(回転軸に相当)の一端に取り付けられ、駆動軸26aの他端に駆動歯車26(第1ハウジング内で回転する第2回転子に相当)が取り付けられ、駆動モーター20によって回転する外部ローター21(第3回転子に相当)がローターハウジング23の外周に設けられている。そして、外部ローター21の回転に伴って、外部ローター21と内部ローター22にそれぞれ設けられたマグネット212,222の間に生じる磁力によって内部ローター22が回転し、内部ローター22の回転に伴って駆動軸26a及び駆動歯車26が回転する。
【0052】
つまり、本実施例1の歯車ポンプPでは、外部マグネット212と内部マグネット222によって、駆動モーター20の回転力が非接触で内部ローター22及び駆動軸26aに伝達される。そのため、仕切板24から突出する駆動軸26a(駆動軸26aの貫通部分)を、ローターハウジング23と仕切板24とで密閉することができる。よって、ローターハウジング23外への流体漏れを抑制することができる。
【0053】
また、駆動モーター20の回転力が非接触で内部ローター22及び駆動軸26aに伝達されるということは、内部ローター収容部C2内に駆動モーター20の熱が伝わり難く、内部ローター収容部C2内の温度を比較的に低くすることができる。従って、温度変化の影響を受け易い流体(例えば、粘度や組成が変化し易いインク)を、流体の脈動を低減するために内部ローター収容部C2内に流したとしても、流体に与える温度変化の影響を小さくすることができる。よって、流体の粘度や組成の変化を防止することができる。
【0054】
また、本実施例1の歯車ポンプPでは、内部ローター22が有する面のうち、駆動軸26aの軸方向と交差する方向に沿う面(即ち、回転面、ここでは上面及び下面)に弾性体が設けられている。図3Bに示すように、駆動軸26aの上端から吐出された流体は内部ローター22の上面を半径方向に流れるのに対して、内部ローター22は半径方向と異なる円周方向(半径方向と略交差する方向)に回転する。
【0055】
そのため、内部ローター22の上面に弾性体を設けることで、内部ローター22の回転力により、半径方向に振動しながら内部ローター22の上面上を流れる流体に対して半径方向と異なる方向に力を与えることができる。その結果、半径方向に流れる流体の振動を内部ローター22の上面に沿って均すことができ、流体に生じている脈動をより低減することができる。同様に、内部ローター22の下面に弾性体を設けることで、内部ローター22の回転力により、内部ローター22の下面の下を流れる流体に対して、流体が振動しながら流れる方向と異なる方向に力を与えることができる。その結果、流体の振動を内部ローター22の下面に沿って均すことができ、流体に生じている脈動をより低減することができる。
【0056】
また、本実施例1の歯車ポンプPでは、駆動軸26aを中空の回転軸とし、歯車収容部C1から吐出された流体が、駆動軸26aの内部空間C4を介して内部ローター収容部C2内に流入する。そのため、歯車ポンプPの姿勢に関係なく、内部ローター22の全周に亘って、即ち、内部ローター22とローターハウジング23との隙間や内部ローター22と仕切板24との隙間の全域に亘って、流体を流すことができる。つまり、歯車ポンプPの姿勢に関係なく、内部ローター収容部C2内を流れる流体を、内部ローター22の上面や下面に設けられた弾性体と接触させることができ、流体の脈動を低減することができる。
【0057】
従って、図2に示すようにポンプハウジング25を内部ローター22よりも鉛直方向の下側に配置してもよいし、ポンプハウジング25を内部ローター22よりも鉛直方向の上側に配置してもよいし、駆動軸26aの軸方向が水平方向に沿う姿勢で歯車ポンプPを使用してもよい。
【0058】
ただし、ポンプハウジング25を内部ローター22よりも鉛直方向の下側に配置することで、駆動軸26aの上端から流出したインクに含まれる沈降し易い色材を、重力によって流出路29まで流れ易くすることができる。よって、歯車ポンプP内での色材の滞留を抑制することができ、所望の濃度のインクで画像を印刷することができる。
【0059】
一方、ポンプハウジング25を内部ローター22よりも鉛直方向の上側に配置することで、駆動軸26aの下端から流出したインクに含まれる気泡を、浮力によって流出路29に向かわせ易くすることができる。よって、歯車ポンプP内での気泡の滞留を抑制することができる。
【0060】
また、ここでは、内部ローター22の上面と下面の両方に弾性体(空間部C6とフィルムF)を設けているが、これに限らない。内部ローター22の上面と下面のうちの何れか一方にだけ弾性体を設けてもよい。ただし、上面と下面の両方に弾性体を設けて、脈動が生じている流体を受ける弾性体の面積を大きくする方が、流体の脈動をより低減できる。
【0061】
また、ここでは、内部マグネット支持部材221に空間部C6を設け、その空間部C6を閉塞するように内部マグネット支持部材221にフィルムFを取り付けているが、これに限らない。内部マグネット222に空間部を設け、その空間部を閉塞するように内部マグネット222にフィルムFを取り付けてもよい。
【0062】
===歯車ポンプP:実施例2===
図4Aは、実施例2の歯車ポンプPの断面図であり、図4Bは、ローターハウジング23に取り付けられたフィルムFを説明する図である。なお、図4Aの断面図は、図2Aの右図と同様に、歯車ポンプPをX方向の中央部(図2Bの位置BB’)にて軸方向に沿って切った断面図である。図4Bは、内部ローター22が駆動軸26aに取り付けられていない状態を示す図である。前述の実施例1では、内部ローター22に弾性体が設けられているのに対して、実施例2では、ローターハウジング23(第2ハウジングに相当)に弾性体が設けられている。
【0063】
図4の歯車ポンプPでは、ローターハウジング23の側面に弾性体が設けられている。具体的には、ローターハウジング23の側面の一部をくり貫くことにより形成される空洞部(空間部)を閉塞するように、ローターハウジング23の側面にフィルムFが取り付けられている。なお、ローターハウジング23の側面の複数箇所に分けてフィルムF設けられ、ローターハウジング23の側面では、ローターハウジング23の基体とフィルムFが交互に配置されている。
【0064】
また、外部ローター21の内側の側面とフィルムFとの間に隙間(空気層)を設ける。そうすることで、フィルムFを介して流路の反対側が、外部ローター21との隙間になるため、フィルムFは、流路側にも流路の反対側にも弾性変形可能となり、流体の脈動を吸収することができる。歯車収容部C1から吐出された流体は、第1中間流路33及び駆動軸26aを介して内部ローター収容部C2に流入した後に、ローターハウジング23の側面と内部ローター22の側面との間を流れる。その際に、フィルムFは、流体の脈動に応じて、流路側(流体側)又は流路の反対側(外部ローター21との隙間側)に弾性変形し、流体の脈動(流体の圧力変動)が吸収される。このように、ローターハウジング23に弾性体を設けたとしても、内部ローター収容部C2内を流れる流体を弾性体と接触させることができ、歯車収容部C1から吐出された流体に生じていた脈動を低減することができる。従って、歯車ポンプPから吐出される流体の脈動を低減することができる。
【0065】
また、ローターハウジング23の側面に弾性体を設ける方が、内部ローター22の上面や下面に弾性体を設ける場合(実施例1)に比べて、脈動が生じている流体を受ける弾性体の面積を大きくすることができる。
【0066】
図5A及び図5Bは、図4とは異なる実施例2の歯車ポンプPの断面図である。なお、図5A及び図5Bは図4Aと同様の断面図である。図4では、ローターハウジング23の側面に弾性体を設けているが、これに限らず、ローターハウジング23の上面に弾性体を設けてもよい。
【0067】
図5Aの歯車ポンプPでは、ローターハウジング23の内側の上面に凹部C7(空間部)が形成されている。そして、凹部C7の開口を閉塞するように、ローターハウジング23にフィルムFが取り付けられている。
一方、図5Bの歯車ポンプPでは、ローターハウジング23の上面の一部をくり貫くことにより形成される空洞部(空間部)を閉塞するように、ローターハウジング23にフィルムFが取り付けられている。なお、この場合、外部ローター21の内側の上面とフィルムFとの間に隙間(空気層)を設け、フィルムFが流路の反対側(外部ローター21側)にも弾性変形可能にする。
【0068】
歯車収容部C1から吐出された流体は、第1中間流路33及び駆動軸26aを介して内部ローター収容部C2に流入した後に、ローターハウジング23の内側の上面(フィルムF)と内部ローター22の上面との間を流れる。その際に、フィルムFは、流体の脈動に応じて、流路側(流体側)又は流路の反対側(図5Aでは凹部C7側、図5Bでは外部ローター21との隙間側)に弾性変形し、流体の脈動(流体の圧力変動)が吸収される。従って、歯車収容部C1から吐出された流体に生じていた脈動を低減することができ、歯車ポンプPから吐出される流体の脈動を低減することができる。
【0069】
なお、実施例1のように内部ローター22に弾性体を設け、更に、実施例2のようにローターハウジング23にも弾性体を設けるようにしてもよい。また、実施例2の歯車ポンプPも実施例1と同様に、歯車収容部C1から吐出された流体が駆動軸26aの内部空間C4を介して内部ローター収容部C2内に流入する。そのため、歯車ポンプPの姿勢に関係なく、ローターハウジング23の側面や上面に設けられた弾性体に流体を接触させることができる。
【0070】
===歯車ポンプP:実施例3===
図6A及び図6Bは、実施例3の歯車ポンプPの断面図である。なお、図6は歯車ポンプPをX方向の中央部(図2Bの位置BB’)にて軸方向に沿って切った断面図である。実施例1及び実施例2の歯車ポンプPでは、駆動軸26aを中空の軸とし、歯車収容部C1から吐出された流体が駆動軸26aの内部空間C4を介して内部ローター収容部C2内に流入する。これに対して、実施例3の歯車ポンプPでは、歯車収容部C1から吐出された流体が駆動軸36を介さずに内部ローター収容部C2内に流入する。
【0071】
そのため、実施例3の歯車ポンプPでは、駆動軸36を、内部に空間の無い円柱形状の軸とする。そして、歯車収容部C1の吐出口32と内部ローター収容部C2とを直接に連通させる中間流路37(流出口に相当)を、ポンプハウジング25と仕切板24に設ける。つまり、実施例3の歯車ポンプPでは、実施例1の歯車ポンプP(図2)と同様に、流体が、まず、第1流入路28a,第2流入路28b,吸込口31,歯車収容部C1を順に流れる。その後、流体は、吐出口32,中間流路37,内部ローター収容部C2を流れた後に、仕切板24に設けられた第2中間流路34,ポンプハウジング25に設けられた第3中間流路35,流出路29を順に通って外部に流出する。
【0072】
そして、実施例3の歯車ポンプPにおいても他の実施例と同様に、内部ローター収容部C2内を流れる流体の流路に弾性体が設けられている。図6の歯車ポンプPでは、実施例1(図2)と同様に内部ローター22の上面と下面に弾性体が設けられているが、これに限らず、実施例2(図4,図5)と同様にローターハウジング23に弾性体が設けられるようにしてもよい。
【0073】
ただし、この実施例3の歯車ポンプPのように、歯車収容部C1から吐出された流体が駆動軸36を介さずに内部ローター収容部C2内に流入する場合、歯車ポンプPの姿勢によって流体が主に流れる流路が異なってくる。例えば、図6Aに示すように、ポンプハウジング25が内部ローター22よりも鉛直方向の下側に位置する場合、流体は内部ローター22の下面と仕切板24との間を主に流れ、内部ローター22の側面とローターハウジング23の側面との間や内部ローター22の上面とローターハウジング23の内側上面との間には流体が流れ難い。そのため、図6Aの場合には、特に、内部ローター22の下面に弾性体を設けることで、内部ローター収容部C2内を流れる流体をより確実に弾性体と接触させることができ、流体の脈動を低減できる。
【0074】
一方、図6Bに示すように、ポンプハウジング25が内部ローター22よりも鉛直方向の上側に位置する場合、内部ローター22と仕切板24との間だけでなく、内部ローター22の側面とローターハウジング23の側面との間や内部ローター22の下面とローターハウジング23の底面との間にも流体が流れる。そのため、図6Bの場合には、内部ローター22の上面や下面に弾性体を設けてもよいし、ローターハウジング23の側面や底面に弾性体を設けてもよい。
【0075】
===変形例===
前述の実施例では、内部ローター22やローターハウジング23に弾性体を設けているが、これに限らず、内部ローター収容部C2内を流れる流体の流路であれば、何れの箇所に弾性体を設けてもよい。例えば、内部ローター収容部C2側の仕切板24の面に凹部を設け、その凹部を閉塞するように仕切板24にフィルムFを取り付けてもよい。
【0076】
前述の実施例では、弾性膜(フィルムF)で空間部を閉塞する弾性体を流路に設け、弾性膜の一方側を流体の流路とし、他方側を空間部(空気層)としているが、これに限らない。例えば、弾性膜を介した流路の反対側の空間部に、流体の脈動に応じて弾性変形する部材(例えば液体やスポンジ)を充填してもよい。また、例えば、弾性膜を設けずに、流路に設けられた空間部に、流体の脈動に応じて弾性変形する部材を埋め込んでもよい。
【0077】
前述の実施例では、歯車収容部C1内で駆動歯車26と従動歯車27が噛み合った状態で回転する歯車ポンプPを例に挙げているが、これに限らない。例えば、歯車を収容する収容部の内壁に歯が設けられ、収容部内の歯車が内壁に設けられた歯と噛み合いながら回転する歯車ポンプでもよい。また、歯車ポンプに限らず、ベーンポンプなどの回転ポンプでもよいし、ピストンポンプなどの往復ポンプでもよい。
【0078】
前述の実施例では、ポンプハウジング25から流体が流出しているが、これに限らない。例えば、歯車収容部C1から吐出された流体が、内部ローター収容部C2内に設けられた弾性体を通過した後に、仕切板24やローターハウジング23の側面から外部に流出するようにしてもよい。
【0079】
前述の実施例では、外部マグネット212と内部マグネット222によって駆動モーター20の回転力を非接触で駆動軸26aに伝達しているが、これに限らない。駆動軸26aに駆動モーター20を連結し、駆動モーター20が直接に駆動軸26aを回転するようにしてもよい。この場合、歯車収容部C1から吐出された流体を、駆動モーター20を収容するハウジング内に流し、そのハウジング内を流れる流体の流路に弾性体を設ける。
【0080】
前述の実施例では、図1に示すように、インクタンク10とヘッド12を繋ぐチューブの途中にポンプ(歯車ポンプP)を設けているが、これに限らない。例えば、ヘッド12のノズル面との間に密閉空間を形成するキャップの下面にチューブを取り付け、そのチューブの途中にポンプを設けてもよい。この場合、ヘッド12とキャップを当接させた状態でポンプを稼働すると、密閉空間が負圧状態となり、ノズルNzから増粘したインクや異物等が強制的に吸引され、ノズルNzの目詰まりを防止することができる。
【0081】
また、前述の実施例では、流体噴射装置(プリンター1)においてポンプを使用しているが、これに限らず、流体を移送する必要性の有る別の装置においてポンプを使用してもよい。
【0082】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてポンプについて記載されているが、流体噴射装置等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0083】
<流体噴射装置>
前述の実施形態では、流体噴射装置として、インクジェットプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、カラーフィルター製造装置、ディスプレイ製造装置、半導体製造装置、及び、DNAチップ製造装置などの流体噴射装置でもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 プリンター、10 インクタンク、11a 往路チューブ、
11b 返路チューブ、12 ヘッド、13 キャップ、14 プラテン、
P 歯車ポンプ、20 駆動モーター、21 外部ローター、
211 外部マグネット支持部材、212 外部マグネット、
22 内部ローター、221 内部マグネット支持部材、
221a 内周部、221b 外周部、221c 連結部材、F フィルム、
222 内部マグネット、23 ローターハウジング、24 仕切板、
25 ポンプハウジング、26 駆動歯車、26a 駆動軸、
27 従動歯車、27a 従動軸、28a 第1流入路、28b 第2流入路、
29 流出路、30 シール部材、31 吸込口、32 吐出口、
33 第1中間流路、34 第2中間流路、35 第3中間流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び流出口が設けられた第1ハウジングを有し、前記流入口から前記第1ハウジング内に流体を吸い込み、当該流体を前記流出口から前記第1ハウジング外に吐出するポンプ部と、
前記ポンプ部を駆動する駆動源、及び、当該駆動源を収容する収容部が設けられた第2ハウジングを有し、前記流出口から前記収容部内に流入した流体が流れる流路に弾性体が設けられた駆動部と、
を備えたことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプであって、
前記駆動源である第1回転子が回転軸の一端に取り付けられ、
前記回転軸の他端に前記第1ハウジング内で回転する第2回転子が取り付けられ、
駆動モーターによって回転する第3回転子が前記第2ハウジングの外周に設けられ、
前記第3回転子の回転に伴って、前記第3回転子と前記第1回転子にそれぞれ設けられたマグネットの間に生じる磁力によって前記第1回転子が回転し、前記第1回転子の回転に伴って前記回転軸及び前記第2回転子が回転する、
ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプであって、
前記第1回転子に前記弾性体が設けられたポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載のポンプであって、
前記第1回転子が有する面のうち、前記回転軸の軸方向と交差する方向に沿う面に、前記弾性体が設けられたポンプ。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか1項に記載のポンプであって、
前記第2ハウジングに前記弾性体が設けられたポンプ。
【請求項6】
請求項2から請求項5の何れか1項に記載のポンプであって、
前記回転軸は中空の回転軸であって、前記第1ハウジング内の流体が前記回転軸の内部空間を介して前記収容部内に流入するポンプ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のポンプであって、
前記弾性体は、前記流路に設けられた空間部を弾性膜で閉塞したものであるポンプ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のポンプを用いて流体を移送する流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−53534(P2013−53534A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191012(P2011−191012)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】