ポンプまたは圧縮機用の駆動装置
ポンプ、圧縮機またはこれらに類似する機器に用いられる駆動装置(11)であって、棒部材(23)の往復運動の結果として、ポンプまたは圧縮機のチャンバーなど、少なくとも2つのチャンバー(27a、27b、27’、27’’)内に可変圧力を供給するよう構成される。棒部材が、チャンバーと流体接続さえるピストン(21a、21b)又はプランジャとしての、2つの可動圧力チャンバー面に接続され、ハウジング(19)内で往復運動可能に支持される。駆動装置はさらに、棒部材(23)に往復運動をもたらすよう構成される電気モータ(31)を備える。棒部材は、電気モータ(31)のロータ(31b)を貫通して延在する。電気モータは、電気回転モータである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ポンプおよび圧縮機用の駆動装置に関する。本発明は、複数のポンプとそれに適した駆動装置を有する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプおよび圧縮機用の駆動装置として、様々な形式の駆動装置が知られている。その形式は、重量、容量、力、速度、騒音レベル、振動レベル、信頼性、利用可能である電源、価格等のパラメータに基づき選択される。たとえば、海中で利用するためには、保守整備の必要性が少なく、水圧または電力により駆動可能である信頼性の高い駆動装置が望ましい。
【0003】
米国特許第7,287,595号明細書には、海中環境で水圧を供給するための水圧ピストンを駆動するために電気モータを使用することが開示されている。電気エンジンは、遊星歯車(190)を介してローラねじアセンブリ(170)に接続されている。ローラねじには、ピストンステム(134)が接続され、ピストンステムの反対側の端部では水圧ピストン(130)に接続されている。このような構成によれば、電気モータへの電力によって水圧を供給することが可能となり、水圧がアキュムレータ(142)に蓄積される。こうして、たとえば水圧供給用供給ケーブルが海面から海底抗井へ案内されなくてはならないことを回避できる。
【0004】
米国特許第7,287,595号明細書に示される解決策は、ピストンステム(134)のストローク長さが、遊星歯車(190)とローラねじアセンブリ(170)の可動限界(最下限)との間の距離に限定されている点に特徴がある。
【0005】
米国特許第4,145,165号明細書には、電気モータのロータを貫通して延在するねじロッドを有するストロークの長いポンプが開示されている。ロータの稼働時、ロッドは、ロータとの螺合のために軸方向に往復運動する。ロッドの2つの端部は、2つのプランジャとして機能し、これら2つのプランジャは2つの隣接する室に反復して出入することによりポンプ作動を行う。
【0006】
さらに、2009年2月26日に公開された米国特許出願公開第2009/0053074号明細書は、同様なピストンロッドの往復運動を行うためにリニアモータを使用する類似の容積型ポンプを開示する。このポンプは、ピストンロッドの各端部でピストンを使用するものである。
【0007】
また、ピストンステムを、直接的または間接的に、クランクシャフト(図1を参照)またはフライホイールに取り付けてピストン運動をさせることが知られている。このようなクランクシャフトまたはフライホイールは、ピストンのストローク長さに対して交差する軸方向を有する。このような構成のアセンブリはスペースを要する。また、ストローク長さは、クランクシャフトまたはフライホイールの径方向の寸法により制限されてしまう。
【0008】
本発明の目的は、上述の短所を回避し、従来技術に対してさらなる長所を備える、ポンプおよび圧縮機用の駆動装置を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
発明の第1態様によると、ポンプ、圧縮機またはこれらに類似する機器に用いられる駆動装置であって、ポンプまたは圧縮機などのチャンバー内に、棒部材の往復運動の結果として、可変圧力を供給するよう構成される。棒部材は、ピストンまたはダイヤフラムなどの可動圧力チャンバー面に接続されるとともに、棒部材はハウジング内で往復運動可能に支持される。駆動装置はさらに、棒部材に往復運動をもたらすよう構成される電気モータを備える。駆動装置において、棒部材は、電気モータのロータを貫通する。
【0010】
圧力チャンバー面は、多様な形式であってよい。一般には、圧力チャンバー面は、その動作によって圧力チャンバーの容積を変化させる面である。圧力チャンバー面は、例えば、棒部材に取り付けられることが可能であるピストンであってよい。また、棒部材に機械的に接続されるダイヤフラムポンプのダイヤフラムであってもよい。また、ポンプの圧力チャンバーの可動部品であってもよい。棒部材は圧力チャンバーに機械的に、または流体接続により接続される。従って、棒部材自体はたとえば、運動エネルギーがポンプまたは圧縮機に水圧により伝達されるピストンである。
【0011】
棒部材は、電気モータのロータを貫通する部品である。ロータは、電気回転モータの回転部品、または電気リニアモータの非回転部品であってもよい。棒部材は、モータの運動エネルギーを圧力チャンバー面に伝達する部品である。この運動エネルギーの伝達は、直接的に、または間接的に行われる。
【0012】
電気モータのロータは、少なくともハウジングと少なくとも1つの可動圧力チャンバー面とにより囲まれる流体チャンバー内に配置される。駆動装置のハウジングは、流体チャンバーを囲む壁部となる。
【0013】
流体チャンバーを包囲するのに役立つ可動圧力チャンバー面の数は、2つとするのが有利である。これら2つの圧力チャンバー面は、好適には電気ロータの各端部で棒部材に接続され、これによりチャンバーに圧力が供給された際、2つの圧力チャンバー面の間で力が平衡する。
【0014】
流体チャンバーには好適には液体が充填されている。これにより、以下に詳細に説明する複数の利点が得られる。しかし、流体チャンバーには気体が充填されても良い。
【0015】
複数の可動圧力チャンバー面はピストンであることが可能であり、これらピストン相互の距離はピストンが接続されている棒部材により略一定に維持される。このようにして、流体チャンバー内の容積が一定に保たれる。その結果、ピストンの移動中における流体チャンバー内での圧力変動は低減する。また、流体チャンバー内の流体に圧縮仕事は行われない点で有利である。
【0016】
駆動装置は、ポンプまたは圧縮機に接続可能であり、これらと2つの可動圧力チャンバー面が協働する。一方の圧力面が2つのポンプまたは圧縮機の一方と共に機能するのが好ましい。2つのポンプまたは圧縮機は、ポンピングまたは圧縮される媒体が供給される同一の供給源に接続される。これにより、各ポンプまたは圧縮機の流入側の媒体の圧力が略同一になる。
【0017】
電気モータは回転モータであることが好ましく、駆動装置は、電気モータの回転運動を棒部材の直線運動に変換するためのローラねじ装置を備えてもよい。ローラねじ装置は、回転モータの回転運動を棒部材の直線運動に変換するためのあらゆる形式の適切な装置を含むものとする。回転運動から直線運動への変換に加えて、力伝達も行われることが好ましい。駆動装置は複数のローラねじ装置を備えてもよい。棒部材の位置は好適には、電気モータのロータが行う回転の数により決定される。棒部材の軸方向の位置は、回転数の値を読み取ることにより検知可能である。
【0018】
駆動装置は、運動の減速の際に電気モータを発電機として利用して電気エネルギーを生成するよう構成されてもよい。こうすると、エネルギー効率の高い駆動装置が得られ、発生した運動エネルギーの一部が駆動装置から電気エネルギーとして取り出される。減速時の駆動装置の運動エネルギーは、モータおよび制御システムを介して、加速時の1つまたは複数のその他の駆動装置のモータに伝達される。これにより、回転運動および直線運動のために必要なエネルギーを、ポンプ装置全体から損失を減算した範囲内で保存することが可能になる。
【0019】
流体チャンバーに液体が充填されている実施形態では、圧力チャンバー面に対向する両側が同じ液体で充填されていることが有利である。圧力チャンバー面からの漏れが生じ得る場合に、その重要性が低くなる。
【0020】
また、流体チャンバーが液体で充填されている場合、この場合の流体チャンバーは好適には圧力チャンバー面の両側の圧力より高い圧力下にある。これにより、漏れが生じた場合には流体室とは異なる方向に漏れが生じることとなる。
【0021】
加えて、駆動装置は、第1室と第2室との間に閉鎖可能である流体接続部を備えてもよい。このような接続部または管路は、棒部材および圧力チャンバー面の位置調節に、またチャンバー内の流体の量の調節にも適切である。
【0022】
本発明の第2態様によると、ポンプ装置であって、2つの駆動装置とこれらに取り付けられるポンプまたは圧縮機とを備えるポンプ装置が提供される。駆動装置は、棒部材の往復運動の結果としてポンプまたは圧縮機のチャンバー内に可変圧力を供給するよう構成され、その際棒部材はハウジング内で往復運動を行うよう支持されており、駆動装置は、棒部材に往復運動をもたらすよう構成される電気モータをさらに備える。ポンプ装置は、棒部材が電気モータのロータを貫通し、電気モータの各側には、その運動によりチャンバー内の圧力が可変とされるピストンまたはダイヤフラムが接続され、可変圧力によりポンプ機能または圧縮機能がもたらされる。
【0023】
本発明の第2態様によるこのようなポンプ装置の駆動装置は、相互の位相差に応じて動作する。これにより、ポンピングされるものと同じ供給源に他のポンプアセンブリが接続される場合、滑らかなポンプの流れが可能となる。これに相当する有利な結果は、電源の負荷に関しても得られる。
【0024】
正確な位置制御が可能であることによって、駆動の運転許容範囲内で自由に選択可能である駆動装置の運転曲線が、トルク、慣性、速度、ストローク距離、利用可能である電流および電圧に基づくことが可能になる。ポンプは、全てのロッドアセンブリの速度に関する異なる運転曲線が常時一定の和で保たれている限りは、一定の流れを満たし続ける。このためには、全ての速度変化がdv/dt=0を満たすことが必要である。瞬時速度の合計が一定であり、固定のピストン活動領域では、ポンピングされる媒体の流れは一定になる。これは、駆動装置の1つが加速する期間が、他の駆動装置の減速の期間に対応しなくてはならないことを意味する。これにより加速と出力との和が長時間一定に保たれる。加速および減速はゼロであることも可能であり、この場合も合計速度は一定となる。
【0025】
好適な実施形態よると、2つまたはそれ以上の駆動装置を有する装置内の駆動装置は、アセンブリ内の他の駆動装置の挙動に応じて電気モータを制御するよう構成される電気モータ制御装置を備える。有利には、第1電気モータまたは駆動装置の運転曲線は、第2電気モータまたは駆動装置の運転曲線に適合される。これにより、ポンピングされる媒体の固有の密度に基づいてポンプの流れを適合させることが可能になる。ポンプされる媒体の密度は、たとえば粒子、石、泡、比較的大きい気体量のような不純物の存在の影響を受けることがある。上記に加えて、不具合が駆動装置の可能な運転許容範囲内で補償されることも可能である。
【0026】
本発明の第1または第2態様に係る駆動装置およびポンプ装置は、小型の構造で、煩雑性が低く、軽量であり、部品数が少ないことが好ましく、高トルクのモータの使用ならびにスラスタの異なる位置決めを容易にする。
【0027】
この他の有利な特徴は請求項に説明される。
【0028】
本発明の各種技術的特徴および機能をより詳しく理解するために、以下に実施形態の説明を行う。図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】クランクケースとクロスヘッドとを有する公知の容積型ポンプを示す図である。
【図2】本発明の一態様の好適な実施形態の原理を示す概略図である。
【図3】ダイヤフラムポンプおよびホースダイヤフラム・ポンプの原理を示す概略図である。
【図4】図2の駆動ユニットの他の実施形態を示す図である。
【図5】図2の駆動ユニットのより現実的な実施形態を示す断面図である。
【図6】回転運動の直線運動への変換に用いられるローラねじの斜視図である。
【図7】図6のローラねじの断面図である。
【図8】本発明の第2態様に係るポンプ装置の斜視図である。
【図9】図8のポンプ装置の断面図である。
【図10】本発明に係る駆動装置の電力、ポンプ動力、ロータ速度に関するグラフである。
【図11】図10に示される曲線の有利な代替曲線を示す図である。
【図12】過度の力による損傷から駆動装置を保護するための保護装置を示す図である。
【図13】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図14】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図15】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図16】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図17】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図18】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図19】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図20】モータ制御に関する有利な実施形態を示す図である。
【図21】本発明の第1態様に係る駆動装置の他の実施形態を示す図である。
【図22】駆動装置の好適な実施形態の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、クランクシャフトとクロスヘッドとを有する公知の容積型ポンプが示されている。図面から分かるように、エンジンを除いてもクランクシャフトおよびクロスヘッド用に比較的大きなスペースおよび重量の大きな部材が必要とされる。以下の実施形態の例では、図1の点線内のものを置き換えた、駆動ユニットについて説明する。置き換えた駆動ユニットは、さらに駆動モータを備える。
【0031】
図2には、第1および第2ダイヤフラムポンプ13a、13b用の駆動装置11の原理の概略図が示されている。ダイヤフラムポンプ13a、13bはそれぞれ入口弁15a、15bと出口弁17a、17bとを有する。
【0032】
入口弁および出口弁は、これらの圧力差に応じて開閉する。弁はその他の方法、たとえば電気式または油圧制御式に制御されることも可能である。矢印は、ダイヤフラムポンプ13a、13bにおける流れ方向を示す。
【0033】
本発明は、ダイヤフラムポンプまたはこの種のポンプに限定されるものではない。本発明に係る駆動装置は、たとえば圧縮機またはその他の装置の作動用に使用することが可能である。図3には、図2に示されるダイヤフラムポンプ13a、ならびにホースダイヤフラム・ポンプ13cの原理の概略図が示されている。ポンプおよび圧縮機は、当業者によく知られたものであり、ここでは詳しく説明しない。このような装置用の駆動装置11について以下に詳細に説明する。
【0034】
再び図2について説明する。駆動装置11は、円筒形のハウジング19を備える。ハウジング19内には第1および第2ピストン21a、21bが配置され、これは相互にピストンロッド23により接続される。ピストンは、ハウジング19の内壁面に対してシール25a、25bにて当接しており、各ピストン21a、21bの各々においてその両側に対して境界を形成する。ピストンは、ハウジング19の内側で追加的なシリンダまたはブッシング内に配置されることも可能である。第1ピストン21aの左側には、第1ピストン21aと第1ダイヤフラムポンプ13aのダイヤフラム29aとの間に、第1機能チャンバー27aが設けられる。これに対応して、第2ピストン21bと第2ダイヤフラムポンプ13bのダイヤフラム29bとの間に第2機能チャンバー27bが設けられる。
【0035】
ハウジング19の中央部分には、電気モータ31が配置される。電気モータ31は、第1ピストン21aと第2ピストン21bとの間の流体チャンバー41の中に配置される。モータのステータ31aは、ハウジング19の内壁に接続される。ステータ31aの径方向内側には電気モータのロータ31bが配置される。電気モータ31の電源は不図示とする。ロータ31bの径方向内側では、ロータ31bがピストンロッド23に対して自由に回転可能であるようにピストンロッド23が配置されている。電気モータ31は、永久磁石モータとするのが好適である。
【0036】
ロータ31bには、ロータ31bと共に回転するようにナット33aが取り付けられている。ナット33aは、ローラねじ装置33の一部であり、ナット33aの回転がピストンロッド23の軸方向運動につながるよう、ピストンロッド23に設けられた溝と係合する。ナット33aと係合するピストンロッド23の溝は不図示とする。第1ピストン21aおよび第2ピストン21bは、これにより電気モータ31の回転により軸方向に移動可能である。また、軸方向はロータ31bの回転方向により決定されることが可能である。
【0037】
本発明は、電気モータ31の回転運動をピストンロッド23の軸方向運動に変換する形式の装置に限定されない。当業者であれば、たとえば力、速度、重量、容量、エネルギー損失、保守管理、信頼性、価格に関して最も適切な動力伝達装置を選択することが可能である。
【0038】
駆動ユニットが使用される用途に応じて、電気モータ31とナット33aとの間に、たとえば遊星歯車を用いてギヤ比を設定することも可能である。
【0039】
図5は、図2に示した駆動装置のより現実的な実施例の断面を示す図である。第1ピストン21aおよび第2ピストン21bの間の流体チャンバー41には液体が充填されるのが好ましい。駆動装置の使用される用途に応じて、液体は複数の種類の液体であり得る。しかし多くの用途においてはオイルが有利である。電気モータ31およびローラねじ33(ナット33a)のような可動部品は、適切な方法で潤滑される。同時に、液体は電気モータ31の冷却にも寄与する。
【0040】
ハウジング19内で液体を使用する際に特に長所となるのは、駆動装置が、たとえば極めて深い海中のような高い圧力下での使用に特に適切である点である。また、ダイヤフラムポンプ13a、13b(図2)が同じ供給源に接続される場合、供給源の圧力は駆動装置の両側、すなわちそれぞれ第1ピストン21aおよび第2ピストン21bの左右に作用する。これにより電気モータは、1つのピストンのみで作動される場合のように一定の逆圧に対向して作動する必要がなくなる。さらに別の長所は、ピストン21a、21bにおける圧力低下が低減し、シール25a、25bにおける漏れが減少することである。このような構成は、第1機能チャンバー27aおよび第2機能チャンバー27b内の駆動媒体が、第1ピストン21aおよび第2ピストン21bの間の流体チャンバー41内と同じ液体である場合に特に有利になる。この場合、シール25a、25bからの漏れは大きな問題とはならない。また、流体チャンバー41内の液体には圧力が加えられることが好ましく、この場合ピストン21a、21b外側の液体より圧力が高くなる。漏れが発生するとすれば、この流体チャンバー41から外へ向かっての方向に生じるので、流体チャンバーの中の液体は汚染されない。その結果、駆動装置の耐久性および動作信頼性が向上する。流体チャンバー41内の液体は、電気モータ31およびその他の可動機械部品、たとえばローラねじ装置33を冷却および潤滑するのが好ましい。
【0041】
第1ピストン21aと他方のピストン21bとの間の流体チャンバー41には流体が充填されているため、それが液体または気体であっても、ピストンが軸方向に移動する際に、流体は電気モータ31およびローラねじ33(ナット33a)を通って流れなくてはならない。そのため、ピストンロッド23とロータ31bとの間には溝37が適切に配置されている。流体はステータ31aとロータ31bとの間の溝を通って流れることも可能である。
【0042】
液体の代わりに気体を流体室41内で使用することが有利であり得る。その場合、液体の場合よりも流体摩擦が低減する。これは、高速に動作する軽量の駆動装置において特に有利となる。
【0043】
適切な実施形態では、第1機能チャンバー27aおよび第2機能チャンバー27bの間に、閉鎖可能である流体接続部(不図示)が配置される。この場合、ポンピングを行わずにピストン21a、21bを移動させることができる。こうして、ピストン21a、21bを正確な、または所望の位置に調節または修正するか、または機能チャンバー27a、27b内の流体の量を調節することが可能である。このような流体接続は、内部の媒体の加熱および起動手順にも使用可能である。また、流体チャンバー41へ接続するための1つまたは複数の弁を配置するのが好ましい。このようにすれば、流体チャンバー内の液体を、ハウジング19外で循環させることができる。これにより、駆動装置を分解することなく、液体の加熱および冷却、ならびに液体の浄化および/または交換を行うことが可能になる。
【0044】
流体チャンバー41内の液体に接する温度計(不図示)を配置することにより、測定された温度に応じてモータの性能を制御するモータ制御部を設けることが有利となる。こうして、過剰な熱に対する保護、ならびに特定の最低温度が液体に必要とされる速度を装置に適用する場合に、十分な高さの温度を確保することが可能となる。
【0045】
ピストンロッドがナット33aと共に回転することを防止するため、クロスバー35の形の回転防止装置が配置される。クロスバー35はピストンロッド23に固定され、これに対して横方向に延在する。クロスバー35はその両端において、ハウジング19の内壁に沿って軸方向に延在する案内溝に係合する。こうして、クロスバー35はピストンロッド23(またはピストン)が、ハウジング19に対して回転することを防止する。回転を防止するためにその他の方法も可能である。たとえば、ピストンおよびハウジングは、非同心である断面を有するものとすることができる。
【0046】
図5のハウジング19は各端部には、ポンプまたは圧縮機(不図示)に取り付けるためのフランジ39a、39bが設けられる。
【0047】
図2に示される実施例のように、ピストン21a、21bからダイヤフラム29a、29bへの動力伝達のために、駆動媒体として液体を使用する代わりに、駆動装置は、ポンプまたは圧縮機を機械的な動力伝達により駆動することが可能である。1つ(または2つ)のピストンの代わりに、駆動装置は、直接たとえばダイヤフラムポンプのダイヤフラムに接続されることが可能である。図2に示される装置をダイヤフラム29a、29bなしで使用することも可能である。その際、ピストン21a、21bは、ポンプされる媒体に直接接触する。
【0048】
図2または図5に示される駆動装置において特に長所となるのは、駆動装置全体が密閉可能であることである。したがって、動的に密閉する必要はない。図2に示される装置では、2つのダイヤフラム29a、29bおよびハウジング19は、密閉された空間をなすことが分かる。しかし、ハウジング19内に、ハウジング19内の流体の再充填のため、または圧力検査のために弁(不図示)を配置することが可能である。
【0049】
図4は、図2に示される構成の別の実施形態を示す。図4の構成は1つのポンプにのみ接続されている。アセンブリの右側にピストン21bが保持されているが、図2の第2機能チャンバー27bに相当するチャンバーは、たとえば大気圧に対して解放されているか、または気体が充填されているものとする。第2ピストン21bを保持することにより、流体チャンバー41を加圧することが可能になり、これにより、駆動装置は1つのポンプのみを作動させているにもかかわらず、上述の長所を得ることができる。
【0050】
図6は、図2において説明された駆動装置において使用可能であるローラねじアセンブリ33’の斜視図である。ローラねじアセンブリ33’は、ピストンロッド23’上にナット33a’を有する。ピストンロッド23’には、ナット33a’が係合するらせん溝が設けられている。これにより、ナット33a’の回転により、ナットがピストンロッド23’の長手方向に沿って移動する。図2の駆動装置におけるピストンロッド23では当然、所望のストローク領域の長さでのみこのような溝が設けられていればよい。図7は、図6と同じローラねじアセンブリ33’の断面を示している(溝は不図示)。前述した通り、本発明に係る駆動装置は、回転運動を直線運動に変換するための図示される装置に限定されない。
【0051】
図8および図9には、本発明の第1態様に関して上で説明した駆動装置の実施形態の特定の例が示されている。図8および図9は、図2に示される形式の2つの駆動装置103を備えるポンプ装置101、ならびに4つのホースダイヤフラム・ポンプ105を示している。ポンプアセンブリ101を1つの論理ユニットのポンプとして機能させるために、4つのホースダイヤフラム・ポンプ105の入口は同じ供給源に接続されているのが好ましく、それらの出口も同じく結合されているのが好ましい。図2において説明した駆動ユニットと同様に、ホースダイヤフラム・ポンプ105の入口はそれぞれの入口弁15’にあり、出口はそれぞれの出口弁17’にある。
【0052】
先に述べた通り、駆動装置103として、好適には本明細書において先に説明した種類のものを用いるのが好ましい。
【0053】
各駆動装置には、各電気モータ31を動作させるための電源供給ソケット107が配置される。
【0054】
駆動装置103の機能チャンバー27’をホースダイヤフラム・ポンプ105に接続するために、機能チャンバー27’とホースダイヤフラム・ポンプ105との間の接続管109として流路が配置される。接続管109は、共通のチャンバーの一部をなし、駆動装置103内の機能チャンバー27’とポンプ105のダイヤフラム111の外側のチャンバー27’’(図9)とを備える。
【0055】
図9には、ホースダイヤフラム・ポンプがより詳しく示されている。ダイヤフラム111はホース形状を有し、入口弁15’と出口弁17’との間に延在する。弁15’、17’は、逆止弁である。
【0056】
図8および図9に示されるポンプ装置101の他の構成部品は、図2および図5の関連で先に説明された通りである。
【0057】
2つの電気モータ31、すなわち各駆動装置103に1つずつのモータを使用することにより、これらは好ましくは反対方向に回転可能であるように駆動される。これにより、ポンプ装置101全体のねじりモーメントをなくすことができる。
【0058】
同じ駆動装置103に接続される2つのホースダイヤフラム・ポンプ105が、この構成では逆位相で駆動される。つまり、1つのポンプ105の駆動装置103からの圧力が高まり、他方のポンプ105では圧力が低下する。また、図8および図9に示されるポンプアセンブリ101では、2つの駆動装置103は、一方が他方の1/4サイクル、または90°遅れて駆動される。
【0059】
ポンプ装置に2つより多くの駆動装置103を配置することも考えられる。たとえば、6つまたはそれ以上のポンプに接続される3つまたはそれ以上の駆動装置を配置することも可能である。こうして、ポンプされるべき媒体を非常に安定的にポンピングすることが可能であり、機械部品の摩耗も低減される。ポンプが6つある装置では、たとえば各ポンプが360°サイクルのうちの60°の間ポンプするように構成することが可能である。ポンプが相互にオーバーラップし、たとえば各ポンプが360°サイクルの70°の間ポンプするよう構成することが可能である。各ポンプの機能における最初と最後の5°は、それぞれサイクルの前後のポンプと共通させることが可能である。
【0060】
駆動装置において電気モータを使用すると特に長所となるのは、ピストンロッドのストロークが調節可能であることである。図10は、1回の全ストローク長で(ストローク方向)のポンピングの例を示しており、その際モータ(およびナットと歯車装置)からの回転エネルギー全体がポンプ媒体(図2のピストン21a、21bとダイヤフラム29a、29bとの間の液体)に伝達される。電気モータのロータのロータ速度グラフから分かるように、この工程は概ね、ロータ速度が上昇する加速期と、ロータ速度が比較的均一である定常期と、ロータ速度がゼロ回転まで減少する最終減速期とに分割可能である。また、サイクルの終わりに近付くにつれて、ピストンを終了位置へもたらすためにより多くの電気エネルギーが使用されることが通常である。
【0061】
図11は、1回の全ストローク長におけるポンピングの例を示しており、回転エネルギーの一部はポンプ媒体に伝達され、残りの回転エネルギーは回転の減速のためモータにより戻される。したがって、電気モータはストロークの最後には発電機として機能する。生成された電気エネルギーはたとえば中間で蓄電器に保存されるか、またはたとえば他の駆動装置内の他の電気モータに直接送られることが可能である。
【0062】
したがって、電気モータの電気制御は、多数の可能性をモータの制御をもたらす点で有利である。モータの速度、加速度、トルクを、たとえばポンプされる媒体およびその状態(温度、粘度、比重等)のパラメータおよび駆動装置の状態(温度、流体室内の流体種類、年数等)に基づいて、調整することが可能である。また、所望の速度を決定する際、固有振動数を考慮することが好ましい。
【0063】
本発明に係る構成において、回転永久磁石モータを使用するのが好ましい。また、電気モータは、非同期モータまたは同期モータであってよい。電気モータの種類としては、高効率および高トルクの電気モータが有利である。また、直流モータ、交流モータのいずれをも使用することが可能である。
【0064】
反対のストローク方向に電気モータの回転方向を変更する代わりに、ローラねじ装置、または回転運動を直線運動に変換するための対応する装置としてもよい。これは、電気モータの回転方向は変わらずにストローク方向が自動的に変更されるような構成である。
【0065】
他の実施形態では、電気モータのステータはハウジング19外に配置されることが可能である。その際、駆動装置内の流体が充填されるチャンバーを開けることなく、保守管理のためにステータを交換または取り外すことが可能である。ステータはハウジング19内に統合されることも可能である。
【0066】
図12は、駆動装置にクラッチ145a、145bまたは解除機構が設けられる有利な実施形態を示している。簡潔化するために、図12には本発明に係る駆動装置の基本的な部品のみが示されている。前述の駆動装置に対応して、電気モータの回転運動をピストンロッド123の直線運動に変換するために、ピストンロッド123にはナット133aが設けられる。ピストンロッド123の各端部には、ピストン121a、121bが配置される。ピストンロッド123がナット133aとともに回転することを回避するために、ピストンロッド123には直線ガイド部135が係合する。直線ガイド部は、たとえばボールスプライン、スプライン、多角形軸等のうちのいずれかであればよい。直線ガイド部135は、ピストンロッド123を直線的に移動させつつ、これを一定の回転位置に維持する。これにより、通常動作時には直線ガイド部135とピストンロッド123との間には回転力が存在する。
【0067】
ピストンロッド123への不測のまたは過剰な負荷がかかった場合、ピストンロッドの直線運動を停止して過剰なトルクから解放するために、ピストンロッド123をナット133aと共に回転させることが望ましい。これを可能にするため、内側クラッチ部品145aと外側クラッチ部品145bとを備えるクラッチ装置が設けられる。外側クラッチ部品145は、ハウジング(不図示)に回転可能に固定される。内側クラッチ部品145aおよび直線ガイド部135にピストンロッド123から過度のトルクがかかると、内側および外側クラッチ部品145a、145bの間の回転接続が滑り始める。これが生じると、ピストンロッド123はナット133aと共に回転を始め、その直線運動が停止する。
【0068】
クラッチ装置145a、145bとしては多様な形式のものが考えられる。クラッチ装置の機能的特徴は、たとえば磁石、スプリング力、転がり抵抗または摩擦に基づくものである。せん断ピンによる解決法も考え得るが、この場合はクラッチの作動または解除機能後に、より多くの手間がかかることになる。
【0069】
クラッチ装置のトルク閾値は、たとえば内側および下方のクラッチ部品145a、145bを相互に押圧する力を調節することによって調節可能であることが好ましい。このような特徴により、機械的に安全な機構が提供され、これによりピストン121a、121bからの流体への過度な力が回避される。
【0070】
クラッチ装置の長所は、作動時に駆動装置に何ら損傷を与えないことである。また、作動後に駆動装置は直ちに使用可能である。
【0071】
さらなる有利な特徴は、モータまたはピストンロッドがそれぞれ、ある特定の時間にどこの位置にあるかを監視するため電気モータのフィードバックに駆動装置を適応させることである。これは、たとえばモータを追従する回転位置レゾルバ、またはロッドの直線運動を追う直線位置決め装置を用いて、またはモータ制御装置によるモータのインピーダンス測定により、場合によっては終了位置センサを用いて実施される。
【0072】
ここで説明した駆動装置の他の態様として、電気モータの代わりに油圧モータを使用してもよい。
【0073】
図13は、ポンプ装置における2つの駆動装置の速度曲線を示している。これは好適には、図8および図9関連して説明されたポンプ装置(101)のようなポンプ装置であることが可能である。2つの駆動装置は、上述の駆動装置103であることが可能である。
【0074】
図13の曲線は、4つのピストンA、B、C、Dの絶対速度を示しており、第1駆動装置103は2つのピストンA、Bを備え、第2駆動装置103は2つのピストンC、Dを備える。図13の左側を参照すると、ピストンAがゼロ速度から正規化速度1まで一定の加速度で加速する。ピストンロッド23のストローク終端では速度はゼロとなる。往復ストロークの2つの終端位置の間にある中央位置で速度は最大となる。駆動装置103の1サイクルは、図13の曲線に従って、接続するポンプ105(図8および図9を参照)に対して両方のピストンAおよびBが、ポンピング動作が1回行われた際に行われることとなる。
【0075】
第2駆動装置103のピストンCおよびDの曲線は、第1駆動装置103に対して90°すなわち1/4サイクル(1/4cycle)遅れている。図13に示されるように、第1および第2駆動装置103の2つの曲線の和は一定である。つまり、これらの絶対速度の合計は常に「1」(正規化)である。この特徴により、リップルがなく、ポンプアセンブリ101のポンピング速度が一定になる。
【0076】
ピストンロッド23およびこれに取付けられるピストン21a、21b(またはA、B、C、D)の位置と速度と加速度との間の関係は、図14、図15、図16に示される。
【0077】
ピストンまたはピストンロッドの加速度を示している図16を初めに参照すると、加速度は正の一定値と、対応する負の一定値との間で交互に入れ替わることが分かる。つまり、ピストンロッドの往復ストロークの2つの終端位置の間の中央にある中間位置から減速が開始する。この減速は、終端位置でゼロ速度になる。しかし相対減速は継続し、これはゼロ速度から継続するため実際は絶対的な加速となる。したがって、終端位置からピストンロッドが中間位置に達するまで、速度は上昇する。ここで加速度の符号が変わり、ピストンロッドは再び他方の終端位置に達するまで減速する。終端位置は実際のフルストロークの終端位置とは異なる場合がある。
【0078】
図15は、ポンプ装置101(図8および図9を参照)の第1および第2駆動装置103の2つのピストンロッドに生じる速度を示している。図15から明らかになるように、速度曲線は「ハット関数」または三角形関数である。このような関数は、図16の加速度曲線の積分により生じる。
【0079】
図15の速度曲線の積分により、図14の二次曲線が生じる。これらの曲線の最上点および最下点は、2つの駆動装置の2つのピストンロッドの終端位置を表している。
【0080】
本実施形態よれば、ピストンロッド23の急激な動作がない点が有利である。しかし、ピストンの動作は実際には必要に応じて、ポンプ装置からの一定的な複合流を確保するために作動許容範囲内で不規則であってもよい。この特徴のさらなる長所は、パイプや弁のような接続設備における摩耗が低減されることである。
【0081】
図17は、ポンプ装置101の各駆動装置の2つのピストンロッド23におけるトルクを示している。2つの駆動装置103の各電気モータ31からの加速は、その他の曲線の半分の周期でのトルク曲線と同様である。ローラねじ装置33を介してモータからピストンロッドに作用する力は、中間位置の2つの交差の間で一定である。しかし、電気モータの方向が終端位置で変わるため、トルク曲線はその他の曲線の半分の周期を有する。これは、2つの駆動装置103によりポンプアセンブリ101に伝達される力が、電力供給源から一定に保たれることを意味する。図18は、図17と同じ曲線を示しているが、駆動部Iおよび駆動部IIとして示される2つの駆動部の加速および減速に関して表示がなされている。
【0082】
図19は、ピストンロッドの速度曲線が、ポンピング速度に関して変化する様子を示している。第1および第2駆動装置103の2つの速度の和を一定に保つために、第1駆動装置が速度を下げると第2駆動装置はこれに対応してその速度を下げ、サイクルの長さを同じにしなくてはならない。図19では、これが2つの異なる速度VAおよびVBにて示される。図に示されるように、第1駆動装置のサイクル(ここでは2つの異なるサイクル長さt1Aおよびt2Aで示される)は、第2駆動装置のサイクル長さ、すなわちt1Bおよびt2Bに対応しなくてはならない。これは、周期の一部の場合も有効である。
【0083】
一定の合計速度を保つためにその他の形の曲線も考えられる。これは、生じる微分方程式の解に基づきモータ制御に関して数学的近似法を用いて計算可能である。ガラーキン法に基づく近似解によりリアルタイムに行われることが可能である。
【0084】
さらに、1つのポンプアセンブリに2つより多い駆動装置103、たとえば3つ、4つまたはそれ以上を、瞬間速度の和が一定に保たれる限りは使用してもよい。これは、速度曲線の周期的結合がないことも含まれる。
【0085】
ローラねじ装置と永久磁石モータとを組み合わせた駆動装置は、ピストンロッド23およびこれに接続されるピストン21a、21bのトルクおよび速度の非常に正確な制御を可能にする。上述の組み合わせにより、減速状態にある駆動装置から加速状態にある駆動装置にエネルギーを伝達することが可能である。
【0086】
また、本発明の第2態様に係るポンプ装置の有利な実施形態では、駆動装置103は、別の駆動要素103の挙動に基づき制御されるよう構成される。これは図20に示されており、この図はポンプ装置101(図8および図9を参照)の2つの駆動装置103の速度曲線を示している。各駆動装置103は、2つのポンプ105またはポンプヘッドに接続される。電気モータ31用のセンサ手段および/またはモータ制御部(不図示)が、駆動装置103の挙動に関する入力を提供することが可能である。この図に示される状況では、第1駆動装置A(実線)が、ストローク中のt1の時点でその加速度値を変更する。このような変更の理由は、ポンプ媒体の変更、またはその他の外的または内的の要因である。第2駆動装置B(点線)は、一定の合計速度を維持するためにこの変化に適応する(連続的な水平曲線を参照)。これにより、t1の時点でその減速度を、第1駆動装置Aの低下した加速度に応じて変更する。
【0087】
曲線は、その一定の速度の和を維持しつつも、駆動装置の作動許容範囲内で多少不規則であってもよい。
【0088】
図20からは、第1駆動装置Aの曲線が、1/4サイクル(1/4cycle)でその上部点に至らないことが分かる。しかし、1/2サイクル(1/2cycle)では意図される下部点に当たるよう構成されている。第2駆動装置Bに関しても同様のことが観察される。
【0089】
その後、1/2サイクル(1/2cycle)で第2駆動装置Bの加速度は低下し、第1駆動装置Aでこれに対応して加速度が低下する。しかしその合成速度は前と同じままである。一方向へのストローク内の速度曲線の下方の領域は、そのストロークのストローク長さを表している。
【0090】
制限要因は加速度/減速度であり、ここでは線形曲線の上昇または下降により表されている。
【0091】
図21は、本発明の第1態様に係る駆動装置111の他の実施形態を示している。ここでは、図12に関連して詳細に説明したクラッチ装置145および直線ガイド部135が示されている。図21では、さらに、ピストンロッド23の意図されない過剰な直線運動があった場合にこれを抑制するため、ばね手段204が配置される。
【0092】
図22では、ばね手段204の機能が詳細に説明される。ばね手段204は、第1スリーブ203に対して滑動するよう配置される。さらに、第2スリーブ202がハウジング219に対して滑動可能である。ピストンロッド223が図22の右側へ向かって移動すると、リング201が第1スリーブ203に向かって押圧され、これが第2スリーブ202を介してばね手段204へ力を伝達する。
【0093】
ピストンロッド223が図22の左側へ向かって移動すると、ピストンロッド223の縁部8が第1スリーブ203のスリーブ縁部209に対して押圧され、これにより第1スリーブ203が、右側からのばね手段204の圧縮による張力を伝達する。ばね手段204は、ハウジング219に対して圧縮される。有利には、ばね手段204のばね特性は、所望のブレーキ経路に応じて適合される。
【0094】
両方向へのピストンロッド23の意図されない過剰な直線運動を抑制するために1つばね手段204を使用することにより、小型な設計が達成される。ばね手段204は、たとえば皿ばね等の、多様な形式のものを使用することが可能である。
【0095】
本発明の第1態様に係る駆動装置、または本発明の第2態様に係るポンプ装置に使用される駆動装置は、3000l/minの加圧能力で最大90barの圧力上昇をもたらすことが可能である。より好適には、これは4000l/minで最大120barの圧力上昇をもたらすことが可能である。
【0096】
これ以外の実施形態も可能である。本発明の範囲は請求項により限定されるが、当業者であれば、発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施例に複数の変更を加えることが可能であろう。
【符号の説明】
【0097】
11 駆動装置
19 ハウジング
21a 第1ピストン
21b 第2ピストン
23 ピストンロッド
25a シール
25b シール
27a 第1機能チャンバー
27b 第2機能チャンバー
31 電気モータ
41 流体チャンバー
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ポンプおよび圧縮機用の駆動装置に関する。本発明は、複数のポンプとそれに適した駆動装置を有する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプおよび圧縮機用の駆動装置として、様々な形式の駆動装置が知られている。その形式は、重量、容量、力、速度、騒音レベル、振動レベル、信頼性、利用可能である電源、価格等のパラメータに基づき選択される。たとえば、海中で利用するためには、保守整備の必要性が少なく、水圧または電力により駆動可能である信頼性の高い駆動装置が望ましい。
【0003】
米国特許第7,287,595号明細書には、海中環境で水圧を供給するための水圧ピストンを駆動するために電気モータを使用することが開示されている。電気エンジンは、遊星歯車(190)を介してローラねじアセンブリ(170)に接続されている。ローラねじには、ピストンステム(134)が接続され、ピストンステムの反対側の端部では水圧ピストン(130)に接続されている。このような構成によれば、電気モータへの電力によって水圧を供給することが可能となり、水圧がアキュムレータ(142)に蓄積される。こうして、たとえば水圧供給用供給ケーブルが海面から海底抗井へ案内されなくてはならないことを回避できる。
【0004】
米国特許第7,287,595号明細書に示される解決策は、ピストンステム(134)のストローク長さが、遊星歯車(190)とローラねじアセンブリ(170)の可動限界(最下限)との間の距離に限定されている点に特徴がある。
【0005】
米国特許第4,145,165号明細書には、電気モータのロータを貫通して延在するねじロッドを有するストロークの長いポンプが開示されている。ロータの稼働時、ロッドは、ロータとの螺合のために軸方向に往復運動する。ロッドの2つの端部は、2つのプランジャとして機能し、これら2つのプランジャは2つの隣接する室に反復して出入することによりポンプ作動を行う。
【0006】
さらに、2009年2月26日に公開された米国特許出願公開第2009/0053074号明細書は、同様なピストンロッドの往復運動を行うためにリニアモータを使用する類似の容積型ポンプを開示する。このポンプは、ピストンロッドの各端部でピストンを使用するものである。
【0007】
また、ピストンステムを、直接的または間接的に、クランクシャフト(図1を参照)またはフライホイールに取り付けてピストン運動をさせることが知られている。このようなクランクシャフトまたはフライホイールは、ピストンのストローク長さに対して交差する軸方向を有する。このような構成のアセンブリはスペースを要する。また、ストローク長さは、クランクシャフトまたはフライホイールの径方向の寸法により制限されてしまう。
【0008】
本発明の目的は、上述の短所を回避し、従来技術に対してさらなる長所を備える、ポンプおよび圧縮機用の駆動装置を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
発明の第1態様によると、ポンプ、圧縮機またはこれらに類似する機器に用いられる駆動装置であって、ポンプまたは圧縮機などのチャンバー内に、棒部材の往復運動の結果として、可変圧力を供給するよう構成される。棒部材は、ピストンまたはダイヤフラムなどの可動圧力チャンバー面に接続されるとともに、棒部材はハウジング内で往復運動可能に支持される。駆動装置はさらに、棒部材に往復運動をもたらすよう構成される電気モータを備える。駆動装置において、棒部材は、電気モータのロータを貫通する。
【0010】
圧力チャンバー面は、多様な形式であってよい。一般には、圧力チャンバー面は、その動作によって圧力チャンバーの容積を変化させる面である。圧力チャンバー面は、例えば、棒部材に取り付けられることが可能であるピストンであってよい。また、棒部材に機械的に接続されるダイヤフラムポンプのダイヤフラムであってもよい。また、ポンプの圧力チャンバーの可動部品であってもよい。棒部材は圧力チャンバーに機械的に、または流体接続により接続される。従って、棒部材自体はたとえば、運動エネルギーがポンプまたは圧縮機に水圧により伝達されるピストンである。
【0011】
棒部材は、電気モータのロータを貫通する部品である。ロータは、電気回転モータの回転部品、または電気リニアモータの非回転部品であってもよい。棒部材は、モータの運動エネルギーを圧力チャンバー面に伝達する部品である。この運動エネルギーの伝達は、直接的に、または間接的に行われる。
【0012】
電気モータのロータは、少なくともハウジングと少なくとも1つの可動圧力チャンバー面とにより囲まれる流体チャンバー内に配置される。駆動装置のハウジングは、流体チャンバーを囲む壁部となる。
【0013】
流体チャンバーを包囲するのに役立つ可動圧力チャンバー面の数は、2つとするのが有利である。これら2つの圧力チャンバー面は、好適には電気ロータの各端部で棒部材に接続され、これによりチャンバーに圧力が供給された際、2つの圧力チャンバー面の間で力が平衡する。
【0014】
流体チャンバーには好適には液体が充填されている。これにより、以下に詳細に説明する複数の利点が得られる。しかし、流体チャンバーには気体が充填されても良い。
【0015】
複数の可動圧力チャンバー面はピストンであることが可能であり、これらピストン相互の距離はピストンが接続されている棒部材により略一定に維持される。このようにして、流体チャンバー内の容積が一定に保たれる。その結果、ピストンの移動中における流体チャンバー内での圧力変動は低減する。また、流体チャンバー内の流体に圧縮仕事は行われない点で有利である。
【0016】
駆動装置は、ポンプまたは圧縮機に接続可能であり、これらと2つの可動圧力チャンバー面が協働する。一方の圧力面が2つのポンプまたは圧縮機の一方と共に機能するのが好ましい。2つのポンプまたは圧縮機は、ポンピングまたは圧縮される媒体が供給される同一の供給源に接続される。これにより、各ポンプまたは圧縮機の流入側の媒体の圧力が略同一になる。
【0017】
電気モータは回転モータであることが好ましく、駆動装置は、電気モータの回転運動を棒部材の直線運動に変換するためのローラねじ装置を備えてもよい。ローラねじ装置は、回転モータの回転運動を棒部材の直線運動に変換するためのあらゆる形式の適切な装置を含むものとする。回転運動から直線運動への変換に加えて、力伝達も行われることが好ましい。駆動装置は複数のローラねじ装置を備えてもよい。棒部材の位置は好適には、電気モータのロータが行う回転の数により決定される。棒部材の軸方向の位置は、回転数の値を読み取ることにより検知可能である。
【0018】
駆動装置は、運動の減速の際に電気モータを発電機として利用して電気エネルギーを生成するよう構成されてもよい。こうすると、エネルギー効率の高い駆動装置が得られ、発生した運動エネルギーの一部が駆動装置から電気エネルギーとして取り出される。減速時の駆動装置の運動エネルギーは、モータおよび制御システムを介して、加速時の1つまたは複数のその他の駆動装置のモータに伝達される。これにより、回転運動および直線運動のために必要なエネルギーを、ポンプ装置全体から損失を減算した範囲内で保存することが可能になる。
【0019】
流体チャンバーに液体が充填されている実施形態では、圧力チャンバー面に対向する両側が同じ液体で充填されていることが有利である。圧力チャンバー面からの漏れが生じ得る場合に、その重要性が低くなる。
【0020】
また、流体チャンバーが液体で充填されている場合、この場合の流体チャンバーは好適には圧力チャンバー面の両側の圧力より高い圧力下にある。これにより、漏れが生じた場合には流体室とは異なる方向に漏れが生じることとなる。
【0021】
加えて、駆動装置は、第1室と第2室との間に閉鎖可能である流体接続部を備えてもよい。このような接続部または管路は、棒部材および圧力チャンバー面の位置調節に、またチャンバー内の流体の量の調節にも適切である。
【0022】
本発明の第2態様によると、ポンプ装置であって、2つの駆動装置とこれらに取り付けられるポンプまたは圧縮機とを備えるポンプ装置が提供される。駆動装置は、棒部材の往復運動の結果としてポンプまたは圧縮機のチャンバー内に可変圧力を供給するよう構成され、その際棒部材はハウジング内で往復運動を行うよう支持されており、駆動装置は、棒部材に往復運動をもたらすよう構成される電気モータをさらに備える。ポンプ装置は、棒部材が電気モータのロータを貫通し、電気モータの各側には、その運動によりチャンバー内の圧力が可変とされるピストンまたはダイヤフラムが接続され、可変圧力によりポンプ機能または圧縮機能がもたらされる。
【0023】
本発明の第2態様によるこのようなポンプ装置の駆動装置は、相互の位相差に応じて動作する。これにより、ポンピングされるものと同じ供給源に他のポンプアセンブリが接続される場合、滑らかなポンプの流れが可能となる。これに相当する有利な結果は、電源の負荷に関しても得られる。
【0024】
正確な位置制御が可能であることによって、駆動の運転許容範囲内で自由に選択可能である駆動装置の運転曲線が、トルク、慣性、速度、ストローク距離、利用可能である電流および電圧に基づくことが可能になる。ポンプは、全てのロッドアセンブリの速度に関する異なる運転曲線が常時一定の和で保たれている限りは、一定の流れを満たし続ける。このためには、全ての速度変化がdv/dt=0を満たすことが必要である。瞬時速度の合計が一定であり、固定のピストン活動領域では、ポンピングされる媒体の流れは一定になる。これは、駆動装置の1つが加速する期間が、他の駆動装置の減速の期間に対応しなくてはならないことを意味する。これにより加速と出力との和が長時間一定に保たれる。加速および減速はゼロであることも可能であり、この場合も合計速度は一定となる。
【0025】
好適な実施形態よると、2つまたはそれ以上の駆動装置を有する装置内の駆動装置は、アセンブリ内の他の駆動装置の挙動に応じて電気モータを制御するよう構成される電気モータ制御装置を備える。有利には、第1電気モータまたは駆動装置の運転曲線は、第2電気モータまたは駆動装置の運転曲線に適合される。これにより、ポンピングされる媒体の固有の密度に基づいてポンプの流れを適合させることが可能になる。ポンプされる媒体の密度は、たとえば粒子、石、泡、比較的大きい気体量のような不純物の存在の影響を受けることがある。上記に加えて、不具合が駆動装置の可能な運転許容範囲内で補償されることも可能である。
【0026】
本発明の第1または第2態様に係る駆動装置およびポンプ装置は、小型の構造で、煩雑性が低く、軽量であり、部品数が少ないことが好ましく、高トルクのモータの使用ならびにスラスタの異なる位置決めを容易にする。
【0027】
この他の有利な特徴は請求項に説明される。
【0028】
本発明の各種技術的特徴および機能をより詳しく理解するために、以下に実施形態の説明を行う。図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】クランクケースとクロスヘッドとを有する公知の容積型ポンプを示す図である。
【図2】本発明の一態様の好適な実施形態の原理を示す概略図である。
【図3】ダイヤフラムポンプおよびホースダイヤフラム・ポンプの原理を示す概略図である。
【図4】図2の駆動ユニットの他の実施形態を示す図である。
【図5】図2の駆動ユニットのより現実的な実施形態を示す断面図である。
【図6】回転運動の直線運動への変換に用いられるローラねじの斜視図である。
【図7】図6のローラねじの断面図である。
【図8】本発明の第2態様に係るポンプ装置の斜視図である。
【図9】図8のポンプ装置の断面図である。
【図10】本発明に係る駆動装置の電力、ポンプ動力、ロータ速度に関するグラフである。
【図11】図10に示される曲線の有利な代替曲線を示す図である。
【図12】過度の力による損傷から駆動装置を保護するための保護装置を示す図である。
【図13】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図14】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図15】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図16】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図17】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図18】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図19】ポンプアセンブリ内の駆動装置により行われる往復運動を表す図である。
【図20】モータ制御に関する有利な実施形態を示す図である。
【図21】本発明の第1態様に係る駆動装置の他の実施形態を示す図である。
【図22】駆動装置の好適な実施形態の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、クランクシャフトとクロスヘッドとを有する公知の容積型ポンプが示されている。図面から分かるように、エンジンを除いてもクランクシャフトおよびクロスヘッド用に比較的大きなスペースおよび重量の大きな部材が必要とされる。以下の実施形態の例では、図1の点線内のものを置き換えた、駆動ユニットについて説明する。置き換えた駆動ユニットは、さらに駆動モータを備える。
【0031】
図2には、第1および第2ダイヤフラムポンプ13a、13b用の駆動装置11の原理の概略図が示されている。ダイヤフラムポンプ13a、13bはそれぞれ入口弁15a、15bと出口弁17a、17bとを有する。
【0032】
入口弁および出口弁は、これらの圧力差に応じて開閉する。弁はその他の方法、たとえば電気式または油圧制御式に制御されることも可能である。矢印は、ダイヤフラムポンプ13a、13bにおける流れ方向を示す。
【0033】
本発明は、ダイヤフラムポンプまたはこの種のポンプに限定されるものではない。本発明に係る駆動装置は、たとえば圧縮機またはその他の装置の作動用に使用することが可能である。図3には、図2に示されるダイヤフラムポンプ13a、ならびにホースダイヤフラム・ポンプ13cの原理の概略図が示されている。ポンプおよび圧縮機は、当業者によく知られたものであり、ここでは詳しく説明しない。このような装置用の駆動装置11について以下に詳細に説明する。
【0034】
再び図2について説明する。駆動装置11は、円筒形のハウジング19を備える。ハウジング19内には第1および第2ピストン21a、21bが配置され、これは相互にピストンロッド23により接続される。ピストンは、ハウジング19の内壁面に対してシール25a、25bにて当接しており、各ピストン21a、21bの各々においてその両側に対して境界を形成する。ピストンは、ハウジング19の内側で追加的なシリンダまたはブッシング内に配置されることも可能である。第1ピストン21aの左側には、第1ピストン21aと第1ダイヤフラムポンプ13aのダイヤフラム29aとの間に、第1機能チャンバー27aが設けられる。これに対応して、第2ピストン21bと第2ダイヤフラムポンプ13bのダイヤフラム29bとの間に第2機能チャンバー27bが設けられる。
【0035】
ハウジング19の中央部分には、電気モータ31が配置される。電気モータ31は、第1ピストン21aと第2ピストン21bとの間の流体チャンバー41の中に配置される。モータのステータ31aは、ハウジング19の内壁に接続される。ステータ31aの径方向内側には電気モータのロータ31bが配置される。電気モータ31の電源は不図示とする。ロータ31bの径方向内側では、ロータ31bがピストンロッド23に対して自由に回転可能であるようにピストンロッド23が配置されている。電気モータ31は、永久磁石モータとするのが好適である。
【0036】
ロータ31bには、ロータ31bと共に回転するようにナット33aが取り付けられている。ナット33aは、ローラねじ装置33の一部であり、ナット33aの回転がピストンロッド23の軸方向運動につながるよう、ピストンロッド23に設けられた溝と係合する。ナット33aと係合するピストンロッド23の溝は不図示とする。第1ピストン21aおよび第2ピストン21bは、これにより電気モータ31の回転により軸方向に移動可能である。また、軸方向はロータ31bの回転方向により決定されることが可能である。
【0037】
本発明は、電気モータ31の回転運動をピストンロッド23の軸方向運動に変換する形式の装置に限定されない。当業者であれば、たとえば力、速度、重量、容量、エネルギー損失、保守管理、信頼性、価格に関して最も適切な動力伝達装置を選択することが可能である。
【0038】
駆動ユニットが使用される用途に応じて、電気モータ31とナット33aとの間に、たとえば遊星歯車を用いてギヤ比を設定することも可能である。
【0039】
図5は、図2に示した駆動装置のより現実的な実施例の断面を示す図である。第1ピストン21aおよび第2ピストン21bの間の流体チャンバー41には液体が充填されるのが好ましい。駆動装置の使用される用途に応じて、液体は複数の種類の液体であり得る。しかし多くの用途においてはオイルが有利である。電気モータ31およびローラねじ33(ナット33a)のような可動部品は、適切な方法で潤滑される。同時に、液体は電気モータ31の冷却にも寄与する。
【0040】
ハウジング19内で液体を使用する際に特に長所となるのは、駆動装置が、たとえば極めて深い海中のような高い圧力下での使用に特に適切である点である。また、ダイヤフラムポンプ13a、13b(図2)が同じ供給源に接続される場合、供給源の圧力は駆動装置の両側、すなわちそれぞれ第1ピストン21aおよび第2ピストン21bの左右に作用する。これにより電気モータは、1つのピストンのみで作動される場合のように一定の逆圧に対向して作動する必要がなくなる。さらに別の長所は、ピストン21a、21bにおける圧力低下が低減し、シール25a、25bにおける漏れが減少することである。このような構成は、第1機能チャンバー27aおよび第2機能チャンバー27b内の駆動媒体が、第1ピストン21aおよび第2ピストン21bの間の流体チャンバー41内と同じ液体である場合に特に有利になる。この場合、シール25a、25bからの漏れは大きな問題とはならない。また、流体チャンバー41内の液体には圧力が加えられることが好ましく、この場合ピストン21a、21b外側の液体より圧力が高くなる。漏れが発生するとすれば、この流体チャンバー41から外へ向かっての方向に生じるので、流体チャンバーの中の液体は汚染されない。その結果、駆動装置の耐久性および動作信頼性が向上する。流体チャンバー41内の液体は、電気モータ31およびその他の可動機械部品、たとえばローラねじ装置33を冷却および潤滑するのが好ましい。
【0041】
第1ピストン21aと他方のピストン21bとの間の流体チャンバー41には流体が充填されているため、それが液体または気体であっても、ピストンが軸方向に移動する際に、流体は電気モータ31およびローラねじ33(ナット33a)を通って流れなくてはならない。そのため、ピストンロッド23とロータ31bとの間には溝37が適切に配置されている。流体はステータ31aとロータ31bとの間の溝を通って流れることも可能である。
【0042】
液体の代わりに気体を流体室41内で使用することが有利であり得る。その場合、液体の場合よりも流体摩擦が低減する。これは、高速に動作する軽量の駆動装置において特に有利となる。
【0043】
適切な実施形態では、第1機能チャンバー27aおよび第2機能チャンバー27bの間に、閉鎖可能である流体接続部(不図示)が配置される。この場合、ポンピングを行わずにピストン21a、21bを移動させることができる。こうして、ピストン21a、21bを正確な、または所望の位置に調節または修正するか、または機能チャンバー27a、27b内の流体の量を調節することが可能である。このような流体接続は、内部の媒体の加熱および起動手順にも使用可能である。また、流体チャンバー41へ接続するための1つまたは複数の弁を配置するのが好ましい。このようにすれば、流体チャンバー内の液体を、ハウジング19外で循環させることができる。これにより、駆動装置を分解することなく、液体の加熱および冷却、ならびに液体の浄化および/または交換を行うことが可能になる。
【0044】
流体チャンバー41内の液体に接する温度計(不図示)を配置することにより、測定された温度に応じてモータの性能を制御するモータ制御部を設けることが有利となる。こうして、過剰な熱に対する保護、ならびに特定の最低温度が液体に必要とされる速度を装置に適用する場合に、十分な高さの温度を確保することが可能となる。
【0045】
ピストンロッドがナット33aと共に回転することを防止するため、クロスバー35の形の回転防止装置が配置される。クロスバー35はピストンロッド23に固定され、これに対して横方向に延在する。クロスバー35はその両端において、ハウジング19の内壁に沿って軸方向に延在する案内溝に係合する。こうして、クロスバー35はピストンロッド23(またはピストン)が、ハウジング19に対して回転することを防止する。回転を防止するためにその他の方法も可能である。たとえば、ピストンおよびハウジングは、非同心である断面を有するものとすることができる。
【0046】
図5のハウジング19は各端部には、ポンプまたは圧縮機(不図示)に取り付けるためのフランジ39a、39bが設けられる。
【0047】
図2に示される実施例のように、ピストン21a、21bからダイヤフラム29a、29bへの動力伝達のために、駆動媒体として液体を使用する代わりに、駆動装置は、ポンプまたは圧縮機を機械的な動力伝達により駆動することが可能である。1つ(または2つ)のピストンの代わりに、駆動装置は、直接たとえばダイヤフラムポンプのダイヤフラムに接続されることが可能である。図2に示される装置をダイヤフラム29a、29bなしで使用することも可能である。その際、ピストン21a、21bは、ポンプされる媒体に直接接触する。
【0048】
図2または図5に示される駆動装置において特に長所となるのは、駆動装置全体が密閉可能であることである。したがって、動的に密閉する必要はない。図2に示される装置では、2つのダイヤフラム29a、29bおよびハウジング19は、密閉された空間をなすことが分かる。しかし、ハウジング19内に、ハウジング19内の流体の再充填のため、または圧力検査のために弁(不図示)を配置することが可能である。
【0049】
図4は、図2に示される構成の別の実施形態を示す。図4の構成は1つのポンプにのみ接続されている。アセンブリの右側にピストン21bが保持されているが、図2の第2機能チャンバー27bに相当するチャンバーは、たとえば大気圧に対して解放されているか、または気体が充填されているものとする。第2ピストン21bを保持することにより、流体チャンバー41を加圧することが可能になり、これにより、駆動装置は1つのポンプのみを作動させているにもかかわらず、上述の長所を得ることができる。
【0050】
図6は、図2において説明された駆動装置において使用可能であるローラねじアセンブリ33’の斜視図である。ローラねじアセンブリ33’は、ピストンロッド23’上にナット33a’を有する。ピストンロッド23’には、ナット33a’が係合するらせん溝が設けられている。これにより、ナット33a’の回転により、ナットがピストンロッド23’の長手方向に沿って移動する。図2の駆動装置におけるピストンロッド23では当然、所望のストローク領域の長さでのみこのような溝が設けられていればよい。図7は、図6と同じローラねじアセンブリ33’の断面を示している(溝は不図示)。前述した通り、本発明に係る駆動装置は、回転運動を直線運動に変換するための図示される装置に限定されない。
【0051】
図8および図9には、本発明の第1態様に関して上で説明した駆動装置の実施形態の特定の例が示されている。図8および図9は、図2に示される形式の2つの駆動装置103を備えるポンプ装置101、ならびに4つのホースダイヤフラム・ポンプ105を示している。ポンプアセンブリ101を1つの論理ユニットのポンプとして機能させるために、4つのホースダイヤフラム・ポンプ105の入口は同じ供給源に接続されているのが好ましく、それらの出口も同じく結合されているのが好ましい。図2において説明した駆動ユニットと同様に、ホースダイヤフラム・ポンプ105の入口はそれぞれの入口弁15’にあり、出口はそれぞれの出口弁17’にある。
【0052】
先に述べた通り、駆動装置103として、好適には本明細書において先に説明した種類のものを用いるのが好ましい。
【0053】
各駆動装置には、各電気モータ31を動作させるための電源供給ソケット107が配置される。
【0054】
駆動装置103の機能チャンバー27’をホースダイヤフラム・ポンプ105に接続するために、機能チャンバー27’とホースダイヤフラム・ポンプ105との間の接続管109として流路が配置される。接続管109は、共通のチャンバーの一部をなし、駆動装置103内の機能チャンバー27’とポンプ105のダイヤフラム111の外側のチャンバー27’’(図9)とを備える。
【0055】
図9には、ホースダイヤフラム・ポンプがより詳しく示されている。ダイヤフラム111はホース形状を有し、入口弁15’と出口弁17’との間に延在する。弁15’、17’は、逆止弁である。
【0056】
図8および図9に示されるポンプ装置101の他の構成部品は、図2および図5の関連で先に説明された通りである。
【0057】
2つの電気モータ31、すなわち各駆動装置103に1つずつのモータを使用することにより、これらは好ましくは反対方向に回転可能であるように駆動される。これにより、ポンプ装置101全体のねじりモーメントをなくすことができる。
【0058】
同じ駆動装置103に接続される2つのホースダイヤフラム・ポンプ105が、この構成では逆位相で駆動される。つまり、1つのポンプ105の駆動装置103からの圧力が高まり、他方のポンプ105では圧力が低下する。また、図8および図9に示されるポンプアセンブリ101では、2つの駆動装置103は、一方が他方の1/4サイクル、または90°遅れて駆動される。
【0059】
ポンプ装置に2つより多くの駆動装置103を配置することも考えられる。たとえば、6つまたはそれ以上のポンプに接続される3つまたはそれ以上の駆動装置を配置することも可能である。こうして、ポンプされるべき媒体を非常に安定的にポンピングすることが可能であり、機械部品の摩耗も低減される。ポンプが6つある装置では、たとえば各ポンプが360°サイクルのうちの60°の間ポンプするように構成することが可能である。ポンプが相互にオーバーラップし、たとえば各ポンプが360°サイクルの70°の間ポンプするよう構成することが可能である。各ポンプの機能における最初と最後の5°は、それぞれサイクルの前後のポンプと共通させることが可能である。
【0060】
駆動装置において電気モータを使用すると特に長所となるのは、ピストンロッドのストロークが調節可能であることである。図10は、1回の全ストローク長で(ストローク方向)のポンピングの例を示しており、その際モータ(およびナットと歯車装置)からの回転エネルギー全体がポンプ媒体(図2のピストン21a、21bとダイヤフラム29a、29bとの間の液体)に伝達される。電気モータのロータのロータ速度グラフから分かるように、この工程は概ね、ロータ速度が上昇する加速期と、ロータ速度が比較的均一である定常期と、ロータ速度がゼロ回転まで減少する最終減速期とに分割可能である。また、サイクルの終わりに近付くにつれて、ピストンを終了位置へもたらすためにより多くの電気エネルギーが使用されることが通常である。
【0061】
図11は、1回の全ストローク長におけるポンピングの例を示しており、回転エネルギーの一部はポンプ媒体に伝達され、残りの回転エネルギーは回転の減速のためモータにより戻される。したがって、電気モータはストロークの最後には発電機として機能する。生成された電気エネルギーはたとえば中間で蓄電器に保存されるか、またはたとえば他の駆動装置内の他の電気モータに直接送られることが可能である。
【0062】
したがって、電気モータの電気制御は、多数の可能性をモータの制御をもたらす点で有利である。モータの速度、加速度、トルクを、たとえばポンプされる媒体およびその状態(温度、粘度、比重等)のパラメータおよび駆動装置の状態(温度、流体室内の流体種類、年数等)に基づいて、調整することが可能である。また、所望の速度を決定する際、固有振動数を考慮することが好ましい。
【0063】
本発明に係る構成において、回転永久磁石モータを使用するのが好ましい。また、電気モータは、非同期モータまたは同期モータであってよい。電気モータの種類としては、高効率および高トルクの電気モータが有利である。また、直流モータ、交流モータのいずれをも使用することが可能である。
【0064】
反対のストローク方向に電気モータの回転方向を変更する代わりに、ローラねじ装置、または回転運動を直線運動に変換するための対応する装置としてもよい。これは、電気モータの回転方向は変わらずにストローク方向が自動的に変更されるような構成である。
【0065】
他の実施形態では、電気モータのステータはハウジング19外に配置されることが可能である。その際、駆動装置内の流体が充填されるチャンバーを開けることなく、保守管理のためにステータを交換または取り外すことが可能である。ステータはハウジング19内に統合されることも可能である。
【0066】
図12は、駆動装置にクラッチ145a、145bまたは解除機構が設けられる有利な実施形態を示している。簡潔化するために、図12には本発明に係る駆動装置の基本的な部品のみが示されている。前述の駆動装置に対応して、電気モータの回転運動をピストンロッド123の直線運動に変換するために、ピストンロッド123にはナット133aが設けられる。ピストンロッド123の各端部には、ピストン121a、121bが配置される。ピストンロッド123がナット133aとともに回転することを回避するために、ピストンロッド123には直線ガイド部135が係合する。直線ガイド部は、たとえばボールスプライン、スプライン、多角形軸等のうちのいずれかであればよい。直線ガイド部135は、ピストンロッド123を直線的に移動させつつ、これを一定の回転位置に維持する。これにより、通常動作時には直線ガイド部135とピストンロッド123との間には回転力が存在する。
【0067】
ピストンロッド123への不測のまたは過剰な負荷がかかった場合、ピストンロッドの直線運動を停止して過剰なトルクから解放するために、ピストンロッド123をナット133aと共に回転させることが望ましい。これを可能にするため、内側クラッチ部品145aと外側クラッチ部品145bとを備えるクラッチ装置が設けられる。外側クラッチ部品145は、ハウジング(不図示)に回転可能に固定される。内側クラッチ部品145aおよび直線ガイド部135にピストンロッド123から過度のトルクがかかると、内側および外側クラッチ部品145a、145bの間の回転接続が滑り始める。これが生じると、ピストンロッド123はナット133aと共に回転を始め、その直線運動が停止する。
【0068】
クラッチ装置145a、145bとしては多様な形式のものが考えられる。クラッチ装置の機能的特徴は、たとえば磁石、スプリング力、転がり抵抗または摩擦に基づくものである。せん断ピンによる解決法も考え得るが、この場合はクラッチの作動または解除機能後に、より多くの手間がかかることになる。
【0069】
クラッチ装置のトルク閾値は、たとえば内側および下方のクラッチ部品145a、145bを相互に押圧する力を調節することによって調節可能であることが好ましい。このような特徴により、機械的に安全な機構が提供され、これによりピストン121a、121bからの流体への過度な力が回避される。
【0070】
クラッチ装置の長所は、作動時に駆動装置に何ら損傷を与えないことである。また、作動後に駆動装置は直ちに使用可能である。
【0071】
さらなる有利な特徴は、モータまたはピストンロッドがそれぞれ、ある特定の時間にどこの位置にあるかを監視するため電気モータのフィードバックに駆動装置を適応させることである。これは、たとえばモータを追従する回転位置レゾルバ、またはロッドの直線運動を追う直線位置決め装置を用いて、またはモータ制御装置によるモータのインピーダンス測定により、場合によっては終了位置センサを用いて実施される。
【0072】
ここで説明した駆動装置の他の態様として、電気モータの代わりに油圧モータを使用してもよい。
【0073】
図13は、ポンプ装置における2つの駆動装置の速度曲線を示している。これは好適には、図8および図9関連して説明されたポンプ装置(101)のようなポンプ装置であることが可能である。2つの駆動装置は、上述の駆動装置103であることが可能である。
【0074】
図13の曲線は、4つのピストンA、B、C、Dの絶対速度を示しており、第1駆動装置103は2つのピストンA、Bを備え、第2駆動装置103は2つのピストンC、Dを備える。図13の左側を参照すると、ピストンAがゼロ速度から正規化速度1まで一定の加速度で加速する。ピストンロッド23のストローク終端では速度はゼロとなる。往復ストロークの2つの終端位置の間にある中央位置で速度は最大となる。駆動装置103の1サイクルは、図13の曲線に従って、接続するポンプ105(図8および図9を参照)に対して両方のピストンAおよびBが、ポンピング動作が1回行われた際に行われることとなる。
【0075】
第2駆動装置103のピストンCおよびDの曲線は、第1駆動装置103に対して90°すなわち1/4サイクル(1/4cycle)遅れている。図13に示されるように、第1および第2駆動装置103の2つの曲線の和は一定である。つまり、これらの絶対速度の合計は常に「1」(正規化)である。この特徴により、リップルがなく、ポンプアセンブリ101のポンピング速度が一定になる。
【0076】
ピストンロッド23およびこれに取付けられるピストン21a、21b(またはA、B、C、D)の位置と速度と加速度との間の関係は、図14、図15、図16に示される。
【0077】
ピストンまたはピストンロッドの加速度を示している図16を初めに参照すると、加速度は正の一定値と、対応する負の一定値との間で交互に入れ替わることが分かる。つまり、ピストンロッドの往復ストロークの2つの終端位置の間の中央にある中間位置から減速が開始する。この減速は、終端位置でゼロ速度になる。しかし相対減速は継続し、これはゼロ速度から継続するため実際は絶対的な加速となる。したがって、終端位置からピストンロッドが中間位置に達するまで、速度は上昇する。ここで加速度の符号が変わり、ピストンロッドは再び他方の終端位置に達するまで減速する。終端位置は実際のフルストロークの終端位置とは異なる場合がある。
【0078】
図15は、ポンプ装置101(図8および図9を参照)の第1および第2駆動装置103の2つのピストンロッドに生じる速度を示している。図15から明らかになるように、速度曲線は「ハット関数」または三角形関数である。このような関数は、図16の加速度曲線の積分により生じる。
【0079】
図15の速度曲線の積分により、図14の二次曲線が生じる。これらの曲線の最上点および最下点は、2つの駆動装置の2つのピストンロッドの終端位置を表している。
【0080】
本実施形態よれば、ピストンロッド23の急激な動作がない点が有利である。しかし、ピストンの動作は実際には必要に応じて、ポンプ装置からの一定的な複合流を確保するために作動許容範囲内で不規則であってもよい。この特徴のさらなる長所は、パイプや弁のような接続設備における摩耗が低減されることである。
【0081】
図17は、ポンプ装置101の各駆動装置の2つのピストンロッド23におけるトルクを示している。2つの駆動装置103の各電気モータ31からの加速は、その他の曲線の半分の周期でのトルク曲線と同様である。ローラねじ装置33を介してモータからピストンロッドに作用する力は、中間位置の2つの交差の間で一定である。しかし、電気モータの方向が終端位置で変わるため、トルク曲線はその他の曲線の半分の周期を有する。これは、2つの駆動装置103によりポンプアセンブリ101に伝達される力が、電力供給源から一定に保たれることを意味する。図18は、図17と同じ曲線を示しているが、駆動部Iおよび駆動部IIとして示される2つの駆動部の加速および減速に関して表示がなされている。
【0082】
図19は、ピストンロッドの速度曲線が、ポンピング速度に関して変化する様子を示している。第1および第2駆動装置103の2つの速度の和を一定に保つために、第1駆動装置が速度を下げると第2駆動装置はこれに対応してその速度を下げ、サイクルの長さを同じにしなくてはならない。図19では、これが2つの異なる速度VAおよびVBにて示される。図に示されるように、第1駆動装置のサイクル(ここでは2つの異なるサイクル長さt1Aおよびt2Aで示される)は、第2駆動装置のサイクル長さ、すなわちt1Bおよびt2Bに対応しなくてはならない。これは、周期の一部の場合も有効である。
【0083】
一定の合計速度を保つためにその他の形の曲線も考えられる。これは、生じる微分方程式の解に基づきモータ制御に関して数学的近似法を用いて計算可能である。ガラーキン法に基づく近似解によりリアルタイムに行われることが可能である。
【0084】
さらに、1つのポンプアセンブリに2つより多い駆動装置103、たとえば3つ、4つまたはそれ以上を、瞬間速度の和が一定に保たれる限りは使用してもよい。これは、速度曲線の周期的結合がないことも含まれる。
【0085】
ローラねじ装置と永久磁石モータとを組み合わせた駆動装置は、ピストンロッド23およびこれに接続されるピストン21a、21bのトルクおよび速度の非常に正確な制御を可能にする。上述の組み合わせにより、減速状態にある駆動装置から加速状態にある駆動装置にエネルギーを伝達することが可能である。
【0086】
また、本発明の第2態様に係るポンプ装置の有利な実施形態では、駆動装置103は、別の駆動要素103の挙動に基づき制御されるよう構成される。これは図20に示されており、この図はポンプ装置101(図8および図9を参照)の2つの駆動装置103の速度曲線を示している。各駆動装置103は、2つのポンプ105またはポンプヘッドに接続される。電気モータ31用のセンサ手段および/またはモータ制御部(不図示)が、駆動装置103の挙動に関する入力を提供することが可能である。この図に示される状況では、第1駆動装置A(実線)が、ストローク中のt1の時点でその加速度値を変更する。このような変更の理由は、ポンプ媒体の変更、またはその他の外的または内的の要因である。第2駆動装置B(点線)は、一定の合計速度を維持するためにこの変化に適応する(連続的な水平曲線を参照)。これにより、t1の時点でその減速度を、第1駆動装置Aの低下した加速度に応じて変更する。
【0087】
曲線は、その一定の速度の和を維持しつつも、駆動装置の作動許容範囲内で多少不規則であってもよい。
【0088】
図20からは、第1駆動装置Aの曲線が、1/4サイクル(1/4cycle)でその上部点に至らないことが分かる。しかし、1/2サイクル(1/2cycle)では意図される下部点に当たるよう構成されている。第2駆動装置Bに関しても同様のことが観察される。
【0089】
その後、1/2サイクル(1/2cycle)で第2駆動装置Bの加速度は低下し、第1駆動装置Aでこれに対応して加速度が低下する。しかしその合成速度は前と同じままである。一方向へのストローク内の速度曲線の下方の領域は、そのストロークのストローク長さを表している。
【0090】
制限要因は加速度/減速度であり、ここでは線形曲線の上昇または下降により表されている。
【0091】
図21は、本発明の第1態様に係る駆動装置111の他の実施形態を示している。ここでは、図12に関連して詳細に説明したクラッチ装置145および直線ガイド部135が示されている。図21では、さらに、ピストンロッド23の意図されない過剰な直線運動があった場合にこれを抑制するため、ばね手段204が配置される。
【0092】
図22では、ばね手段204の機能が詳細に説明される。ばね手段204は、第1スリーブ203に対して滑動するよう配置される。さらに、第2スリーブ202がハウジング219に対して滑動可能である。ピストンロッド223が図22の右側へ向かって移動すると、リング201が第1スリーブ203に向かって押圧され、これが第2スリーブ202を介してばね手段204へ力を伝達する。
【0093】
ピストンロッド223が図22の左側へ向かって移動すると、ピストンロッド223の縁部8が第1スリーブ203のスリーブ縁部209に対して押圧され、これにより第1スリーブ203が、右側からのばね手段204の圧縮による張力を伝達する。ばね手段204は、ハウジング219に対して圧縮される。有利には、ばね手段204のばね特性は、所望のブレーキ経路に応じて適合される。
【0094】
両方向へのピストンロッド23の意図されない過剰な直線運動を抑制するために1つばね手段204を使用することにより、小型な設計が達成される。ばね手段204は、たとえば皿ばね等の、多様な形式のものを使用することが可能である。
【0095】
本発明の第1態様に係る駆動装置、または本発明の第2態様に係るポンプ装置に使用される駆動装置は、3000l/minの加圧能力で最大90barの圧力上昇をもたらすことが可能である。より好適には、これは4000l/minで最大120barの圧力上昇をもたらすことが可能である。
【0096】
これ以外の実施形態も可能である。本発明の範囲は請求項により限定されるが、当業者であれば、発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施例に複数の変更を加えることが可能であろう。
【符号の説明】
【0097】
11 駆動装置
19 ハウジング
21a 第1ピストン
21b 第2ピストン
23 ピストンロッド
25a シール
25b シール
27a 第1機能チャンバー
27b 第2機能チャンバー
31 電気モータ
41 流体チャンバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ、圧縮機またはこれらに類似する機器に用いられる駆動装置(11)であって、
棒部材(23)の往復運動の結果として、ポンプまたは圧縮機のチャンバーなど、少なくとも2つのチャンバー(27a、27b、27’、27’’)内に可変圧力を供給するように構成され、
前記棒部材(23)が、前記チャンバーと流体接続されるピストン(21a、21b)又はプランジャとしての、2つの可動圧力チャンバー面に接続され、
前記棒部材(23)が、ハウジング(19)内で往復運動可能に支持されており、
前記棒部材(23)に往復運動をもたらすよう構成される電気モータ(31)を備え、
前記棒部材が、前記電気モータ(31)のロータ(31b)を貫通して延在し、
前記電気モータが電気回転モータである駆動装置。
【請求項2】
前記電気回転モータが電気同期モータである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記電気回転モータが永久磁石モータである請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記電気モータ(31)の前記ロータ(31b)が、少なくとも前記ハウジング(19)と、前記ピストン(21a、21b)またはプランジャとにより囲まれる流体チャンバー(41)内に配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記流体チャンバー(41)には液体が充填されている請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記流体チャンバー(41)が、前記ピストン(21a、21b)の対向する側の圧力より高い圧力にて加圧される請求項4または5に記載の駆動装置。
【請求項7】
海中での水深に応じた周囲圧力が加圧される状態で使用される請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
解除機構(145、145a、145b)をさらに備え、該解除機構(145a、145b)が、前記解除機構(145a、145b)におけるトルク閾値に達するまで前記棒部材(123)の回転を回避し、
前記解除機構(145a、145b)が前記トルク閾値にて前記棒部材の回転を許容する請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記棒部材(23)の両方向への過剰な長手方向運動を抑制するよう構成されるばね手段(204)を備える請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
第1および第2室(27a、27b)の間に閉鎖可能である流体接続部をさらに備える請求項1から9のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
ポンプ装置(101)であって、
2つの駆動装置(103)とこれらに接続されるポンプ(105)または圧縮機とを備え、
前記駆動装置(103)が、棒部材(23)の往復運動の結果として、前記ポンプ(105)または圧縮機のチャンバー(27’’)内に可変圧力を供給するように構成され、
前記棒部材(23)が、ハウジング(19)内で往復運動可能に支持されており、
前記駆動装置(103)が、前記棒部材(23)に往復運動をもたらすよう構成される電気回転モータ(31)をさらに備え、
前記棒部材(23)が前記電気回転モータ(31)の前記ロータ(31)を貫通して延在し、
前記電気回転モータ(31)の各側には、その運動により前記チャンバー(27’、27’’)内の圧力が可変圧力とされるピストン(21’)またはプランジャが接続され、
前記可変圧力によりポンプ機能または圧縮機能がもたらされるポンプ装置。
【請求項12】
前記2つの駆動装置(103)が、相互の位相差に応じて動作する請求項11に記載のポンプ装置。
【請求項13】
2以上の駆動装置(103)が、その各棒部材(23)の瞬間速度の和が、1以上の連続するサイクルを通して一定であるよう動作する請求項11または12に記載のポンプ装置。
【請求項14】
前記2つの前記駆動装置(103)の各棒部材(23)が、一定の正の値と、ゼロと、一定の負の値との間で変化する加速度で、加速および減速される請求項13に記載のポンプ装置。
【請求項15】
前記2つの駆動装置(103)の各々は、前記駆動装置(103)の瞬間速度の和が一定に維持されるように、他方の前記駆動装置(103)の実挙動に基づき制御される請求項13に記載のポンプ装置。
【請求項16】
前記2つの駆動装置が、前記電気回転モータ(31)の運動の減速時に、その電気回転モータ(31)の使用により電気エネルギーを生成するよう構成されており、
生み出された前記電気エネルギーが、前記ポンプ装置を構成する別の駆動装置の前記電気回転モータ(31)に、前記別の駆動装置(103)の加速時に伝達され、前記加速時以外には電源にフィードバックされる請求項11から15のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項1】
ポンプ、圧縮機またはこれらに類似する機器に用いられる駆動装置(11)であって、
棒部材(23)の往復運動の結果として、ポンプまたは圧縮機のチャンバーなど、少なくとも2つのチャンバー(27a、27b、27’、27’’)内に可変圧力を供給するように構成され、
前記棒部材(23)が、前記チャンバーと流体接続されるピストン(21a、21b)又はプランジャとしての、2つの可動圧力チャンバー面に接続され、
前記棒部材(23)が、ハウジング(19)内で往復運動可能に支持されており、
前記棒部材(23)に往復運動をもたらすよう構成される電気モータ(31)を備え、
前記棒部材が、前記電気モータ(31)のロータ(31b)を貫通して延在し、
前記電気モータが電気回転モータである駆動装置。
【請求項2】
前記電気回転モータが電気同期モータである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記電気回転モータが永久磁石モータである請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記電気モータ(31)の前記ロータ(31b)が、少なくとも前記ハウジング(19)と、前記ピストン(21a、21b)またはプランジャとにより囲まれる流体チャンバー(41)内に配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記流体チャンバー(41)には液体が充填されている請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記流体チャンバー(41)が、前記ピストン(21a、21b)の対向する側の圧力より高い圧力にて加圧される請求項4または5に記載の駆動装置。
【請求項7】
海中での水深に応じた周囲圧力が加圧される状態で使用される請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
解除機構(145、145a、145b)をさらに備え、該解除機構(145a、145b)が、前記解除機構(145a、145b)におけるトルク閾値に達するまで前記棒部材(123)の回転を回避し、
前記解除機構(145a、145b)が前記トルク閾値にて前記棒部材の回転を許容する請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記棒部材(23)の両方向への過剰な長手方向運動を抑制するよう構成されるばね手段(204)を備える請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
第1および第2室(27a、27b)の間に閉鎖可能である流体接続部をさらに備える請求項1から9のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
ポンプ装置(101)であって、
2つの駆動装置(103)とこれらに接続されるポンプ(105)または圧縮機とを備え、
前記駆動装置(103)が、棒部材(23)の往復運動の結果として、前記ポンプ(105)または圧縮機のチャンバー(27’’)内に可変圧力を供給するように構成され、
前記棒部材(23)が、ハウジング(19)内で往復運動可能に支持されており、
前記駆動装置(103)が、前記棒部材(23)に往復運動をもたらすよう構成される電気回転モータ(31)をさらに備え、
前記棒部材(23)が前記電気回転モータ(31)の前記ロータ(31)を貫通して延在し、
前記電気回転モータ(31)の各側には、その運動により前記チャンバー(27’、27’’)内の圧力が可変圧力とされるピストン(21’)またはプランジャが接続され、
前記可変圧力によりポンプ機能または圧縮機能がもたらされるポンプ装置。
【請求項12】
前記2つの駆動装置(103)が、相互の位相差に応じて動作する請求項11に記載のポンプ装置。
【請求項13】
2以上の駆動装置(103)が、その各棒部材(23)の瞬間速度の和が、1以上の連続するサイクルを通して一定であるよう動作する請求項11または12に記載のポンプ装置。
【請求項14】
前記2つの前記駆動装置(103)の各棒部材(23)が、一定の正の値と、ゼロと、一定の負の値との間で変化する加速度で、加速および減速される請求項13に記載のポンプ装置。
【請求項15】
前記2つの駆動装置(103)の各々は、前記駆動装置(103)の瞬間速度の和が一定に維持されるように、他方の前記駆動装置(103)の実挙動に基づき制御される請求項13に記載のポンプ装置。
【請求項16】
前記2つの駆動装置が、前記電気回転モータ(31)の運動の減速時に、その電気回転モータ(31)の使用により電気エネルギーを生成するよう構成されており、
生み出された前記電気エネルギーが、前記ポンプ装置を構成する別の駆動装置の前記電気回転モータ(31)に、前記別の駆動装置(103)の加速時に伝達され、前記加速時以外には電源にフィードバックされる請求項11から15のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−511297(P2012−511297A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539058(P2011−539058)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066657
【国際公開番号】WO2010/066754
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511136913)
【出願人】(511136924)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066657
【国際公開番号】WO2010/066754
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511136913)
【出願人】(511136924)
【Fターム(参考)】
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