説明

ポンプシステム

【課題】様々な補正モードを用いて搬送流体の脈動を可及的に軽減できるようにする。
【解決手段】ポンプシステムは、少なくとも2つの周期、複数の補正モード、複数の補正度のそれぞれを組み合わせるとともに、標準モードとの周期を変えることなく搬送部材を往復動させて搬送流体を搬送するとともに、脈動率算出部によって各組合せについて脈動率を算出するとともに、最も脈動率の低い組合せを採用して搬送流体を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を搬送するためのポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無脈動を実現するためのポンプシステム及びその制御方法については、従来、種々の技術が提案されている。この種のポンプシステムとして、2つの同形のポンプを有し、各ポンプが、それぞれ1つのダイヤフラム、シリンダ、プランジャ、およびシリンダヘッド等を有しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このポンプシステムは、一方のポンプのプランジャと他方のポンプのプランジャとが位相がずれた状態で往復運動を行うように構成されているとともに、2つのポンプの合成吐出量が常に一定な、いわゆる無脈動ポンプシステムとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなポンプシステムは、同形の2つのポンプが用いられ、脈動が生じないように制御されて運転されるが、搬送流体の粘度や温度等の条件によっても各ポンプの脈動の度合いは異なる。このような場合には、ポンプの組み合わせや、搬送流体の条件等の種々の条件による脈動をできるだけ防止できるような多様な脈動補正が必要となる。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、様々な補正モードを用いて搬送流体の脈動を可及的に軽減できるようなポンプシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために以下の技術的手段を講じた。
【0008】
すなわち、本発明に係るポンプシステムは、所定周期の往復動によって搬送流体を搬送路内で搬送するための搬送部材と、この搬送部材を、搬送流体を吐出する吐出行程と、搬送流体を吸入する吸入行程とを併せて1つのサイクルとして駆動する駆動部と、搬送路内の搬送流体の流量を検出する流量信号検出部と、流量信号検出部によって測定される流量信号に基づいて搬送流体の脈動率を算出する脈動率算出部と、搬送部材の周期について第1周期、第2周期の少なくとも2つの周期を選択可能にする速度モード選択部と、搬送流体の吐出行程において、所定の加速区間、等速区間、減速区間の搬送部材を駆動する標準モードに対して、標準モードの等速区間よりも等速区間を延長するとともに、標準モードの加速区間、減速区間よりもその一方又は両方を短縮して、搬送部材を駆動する複数の補正モードを選択可能な補正方法選択部と、前記各補正モードにおいて延長される等速区間の延長幅を複数の補正度として設定して選択可能な補正度選択部と、を備え、少なくとも2つの周期、複数の補正モード、複数の補正度のそれぞれを組み合わせるとともに、標準モードとの周期を変えることなく搬送部材を往復動させて搬送流体を搬送するとともに、脈動率算出部によって各組合せについて脈動率を算出するとともに、最も脈動率の低い組合せを採用して搬送流体を搬送するように構成されてなることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、速度モード選択部による少なくとも2つの速度モード(第1周期、第2周期)、補正方法選択部による複数の補正モード、補正度選択部による複数の補正度のそれぞれを組み合わせ、各組合せで運転したときの搬送流体の脈動率を算出して比較することで、多数種類の補正をテストして最適な組合せを選択できる。これによって、搬送流体の脈動を可及的に軽減して、最適な搬送流体の搬送を実現できる。
【0010】
また、本発明に係るポンプシステムは、前記補正方法選択部は、吐出行程の減速区間を標準モードの減速区間から短縮して等速区間を延長する第1補正モードと、吐出行程の加速区間及び減速区間を標準モードの加速区間及び減速区間から短縮して等速区間を延長する第2補正モードと、吐出行程の加速区間を標準モードの加速区間から短縮して等速区間を延長する第3補正モードとを選択可能に構成されてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、補正方法選択部による第1補正モードから第3補正モードの3種類の補正モードと、速度モード、補正度とを組合せ、各組合せにおける脈動率を算出して、これが最小となる組合せを選択することで、搬送流体の脈動を可及的に軽減して、最適な搬送流体の搬送を実現できる。
【0012】
また、本発明に係るポンプシステムは、前記補正度選択部は、所定の第1補正度と、第1補正度よりも等速区間を大きく延長する第2補正度と、第2補正度よりも等速区間を大きく延長する第3補正度を選択可能に構成されてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、補正方法選択部による第1補正度から第3補正度の3種類の補正度と、速度モード、補正方法(補正モード)とを組合せ、各組合せにおける脈動率を算出して、これが最小となる組合せを選択することで、搬送流体の脈動を可及的に軽減して、最適な搬送流体の搬送を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、様々な補正モードを用いて搬送流体の脈動を可及的に軽減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ポンプシステムの構成図である。
【図2】高速モードにおける搬送部材の標準速度波形及び補正用速度波形である。
【図3】低速モードにおける搬送部材の標準速度波形及び補正用速度波形である。
【図4】高速モードにおけるタイムテーブルである。
【図5】低速モードにおけるタイムテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。本発明に係るポンプシステムは、図1に示すように、搬送流体を貯留するタンク109と、タンク109に接続されるとともに搬送流体を所定方向に搬送する搬送路(配管)110を含む送液部100と、この搬送路110に接続されるとともに、所定の往復動によって搬送流体を圧送する搬送部材103と、搬送部材103を操作するための操作部200と、搬送部材103を駆動する駆動部101と、搬送部材103、駆動部101等を操作するための操作部200と、操作部200とともに、搬送部材103と駆動部101を制御する制御部300とを有する。
【0017】
搬送路110は、その中途部で、搬送部材103と接続されている。搬送路110には複数(図例では2つ)の搬送部材103が接続されている。搬送路110は、その中途部に設けたポンプヘッド(ポンプ室)104に搬送部材103が接続される。これにより、搬送部材103はその往復動によってポンプヘッド104内に搬送流体を吸入し、そしてポンプヘッド104外に搬送流体を吐出できるように構成される。
【0018】
搬送路110は、搬送部材103よりも下流側に、流量信号検出部106を有する。さらに、搬送路110には、流量信号検出部106よりも下流側に、3方電動制御弁107が設けられ、この3方電動制御弁107の下流側に圧力計108が設けられている。3方電動制御弁107には、所定の搬送流体をタンク109に戻すための配管110が接続されており、この配管110の中途部には、圧力計108及び背圧弁111が設けられている。
【0019】
本実施形態において、搬送部材103には、プランジャ式が採用される。搬送部材103には、プランジャ式以外に、ピストン式、ダイヤフラム式その他の種々の方式のものが採用される。搬送部材103は、駆動部101によって所定の周期で往復動をすることで、ポンプヘッド104に搬送流体を吸入し、そして吸引した搬送流体を搬送路110の下流側に吐出する。
【0020】
搬送路110において、搬送部材103の上流側(タンク109側)には、搬送流体の上流側への逆流を防止する逆止弁105が設けられている。また、搬送路110において、搬送部材103の下流側には、搬送部材103によってポンプヘッド104から吐出された搬送流体のポンプヘッド104内への逆流を防止する逆止弁105が設けられている。
【0021】
駆動部101は、2つの搬送部材103のそれぞれに1つずつ設けられる。本実施形態において、駆動部101には、例えばリニアアクチュエータが採用される。駆動部101としてのリニアアクチュエータは、電流制御によって搬送部材103の速度と変位(位置)を制御する。駆動部101には、アクチュエータの変位(位置)に係る信号を検出する変位信号検出部102が接続される。なお、図1〜図5において、2つの駆動部101は、一方が♯1、他方が♯2で示される。
【0022】
操作部200は、ポンプシステムの運転・停止を行う運転・停止実行部201と、搬送部材103、駆動部101部を複数の周期で選択的に駆動できるように、その速度モードを選択可能な速度モード選択部202と、搬送流体の脈動を軽減するための複数の補正方法(補正モード)を選択・設定可能な補正方法選択部203と、補正方法選択部203で選択される補正方法の補正の度合い(補正度)を選択・設定可能な補正度選択部204と、速度モード選択部202の速度モード(周期)、補正方法選択部203の補正方法、及び補正度選択部204の補正度を組み合わせて、最適な脈動補正を実行するオートチューニング実行部205と、搬送部材103の有効面積を設定する有効面積設定部206と、搬送流体の流量を選択・設定可能な流量設定部207と、搬送路110の搬送流体の脈動率を算出する脈動率算出部208と、ポンプシステムを使用する使用者に対する情報や、設定項目を表示する表示部209と、を有する。
【0023】
運転・停止実行部201は、ポンプシステムの運転、停止、待機の各モードを実行する。運転・停止実行部は、操作部200によって自動的に各モードが制御されるように構成される。また、ポンプシステムの使用者によって各モードを操作できるように、操作部200に運転・停止実行部201に連動する操作ボタンが設けられていてもよい。
【0024】
速度モード選択部202は、ポンプの運転速度について、高速モード、低速モードの2種類の速度モードを選択できるように構成される。この速度モードは、搬送部材103、及び駆動部101の運転周期に関する。すなわち、搬送部材103、駆動部101は、所定の周期で運転される(搬送部材103と駆動部101の周期は同じである)が、高速モードと低速モードでは搬送部材103、駆動部101の周期が異なる。具体的には、高速モードにおける搬送部材103、駆動部101の周期は、低速モードの周期よりも小さい。
【0025】
この点について図2、図3を参照しながら詳細に説明する。図2(a)は、高速モードでポンプシステムを通常運転(標準モード)したときの搬送部材103の速度波形を示し、図3(a)は、低速モードでポンプシステムを通常運転(標準モード)したときの搬送部材103の速度波形を示す。以下、この図2(a)、図3(a)に係る速度波形を「標準モードにおける速度波形」という。本実施形態では、標準モードとして、高速モードと低速モードの2種類の速度モードが用意されている。
【0026】
図2、図3では、縦軸に搬送部材103の速度、横軸に時間がとられる。図2、図3に示すように、搬送部材103は、搬送流体をポンプヘッド104から吐出する吐出行程と、搬送流体をポンプヘッド104に吸入する吸入行程とを合わせて1サイクル(周期)とし、これを繰り返す。
【0027】
高速モードと低速モードとでは、搬送部材103の周期が異なる。図2の高速モードでは、搬送部材103の周期は、1秒である(以下、高速モードにおける周期を「第1周期」という)。図3の低速モードでの周期は、高速モードの周期よりも長い2秒である(以下、低速モードにおける周期を「第2周期」という)。
【0028】
標準モードにおける速度波形では、吐出行程は、例えば図2(a),図3(a)に示すように、搬送部材103を所定の加速度で移動させる加速区間と、加速区間終了後に、等速で搬送部材103を移動させる等速区間と、等速区間終了後に、搬送部材103を減速させる減速区間とを有する。
【0029】
吐出行程における加速区間は、高速モードにおいて0.1秒(図2参照)、低速モードにおいて0.2秒(図3参照)である。また、吐出行程における等速区間は、高速モードにおいて0.4秒、低速モードにおいて0.8秒である。また、吐出行程における減速区間は、高速モードにおいて0.1秒、低速モードにおいて0.2秒である。
【0030】
吸入行程は、ポンプヘッド104に負圧を生じさせて搬送流体を吸入すべく、搬送部材103を、吐出行程の場合とは反対の方向に移動させるものである。吸入行程は、所定の加速度で搬送部材103を移動させる加速区間と、加速行程終了後に、搬送部材103を等速で移動させる等速区間と、等速区間終了後に、所定の加速度で搬送部材103を減速して移動させる減速区間とを有する。
【0031】
吸入行程における加速区間は、高速モードにおいて0.1秒、低速モードにおいて0.2秒である。また、吸入行程における等速区間は、高速モードにおいて0.2秒、低速モードにおいて0.4秒である。また、吸入行程における減速区間は、高速モードにおいて0.1秒、低速モードにおいて0.2秒である。
【0032】
図2、図3は、2つの搬送部材103のうち、一方の搬送部材103の速度波形を実線で示し、他方の搬送部材103の速度波形を破線で示す。図2、図3に示すように、2つの搬送部材103の速度波形は同形とされるが、一方の搬送部材103の速度波形と、他方の搬送部材103の速度波形は時間軸(横軸)に対して互いにずれるように構成される。具体的には、一方の搬送部材103の速度波形(実線)における減速区間の開始時点と、他方の搬送部材103の速度波形(破線)の加速区間の開始時点とが一致するように設定されている。
【0033】
さらに、一方の搬送部材103の減速区間と他方の搬送部材103の加速区間は一致している(図2(a)、図3(a)参照)。すなわち、一方の搬送部材103の減速区間と他方の搬送部材103の加速区間は同時に開始され、かつ、同時に終了するように設定される。同様に、一方の搬送部材103の加速区間と他方の搬送部材103の減速区間は、同時に開始され、かつ、同時に終了するように設定される。
【0034】
補正方法選択部203は、第1補正モード、第2補正モード、第3補正モードの3つの補正方法(モード)を選択可能に構成される。以下、この補正方法について図2、図3を参照して説明する。
【0035】
第1補正モードは、標準モードにおける速度波形に比べて以下の点が異なる。すなわち、第1補正モードは、図2(b)、図3(b)に示すように、2つの搬送部材103の減速区間における速度を標準モードの速度波形とは異なるように動作させる。具体的には、破線で示される搬送部材103の速度波形では、標準モードの速度波形に比べて等速区間が延長される(等速区間の終了時点が標準モードよりも遅くなる)。
【0036】
しかも、等速区間終了後に、第1補正モードにおける減速区間の終了時点が、標準標準モードの減速区間の終了時点と同じになるように、この第1補正モードにおける減速区間では、標準モードの減速区間における加速度よりも大きな加速度で搬送部材103を減速させる。
【0037】
第2補正モードは、第1補正モードと同様に、2つの搬送部材103の等速区間を標準モードの速度波形よりも延長するとともに、減速区間の終了時点が標準モードの速度波形の減速区間の終了時点と同じになるように、標準モードの速度波形の減速区間の加速度よりも大きな加速度で搬送部材103を移動させる。
【0038】
これに加えて、第2補正モードでは、2つの搬送部材103の速度波形において、加速区間が標準モードの加速区間に比して短縮され、この加速区間における搬送部材103の加速度は標準モードの加速区間の加速度よりも大きくされる。しかも、等速区間の開始時点が標準モードの等速区間よりも早くなり、等速区間が延長される。
【0039】
第3補正モードは、2つの搬送部材103の加速区間の加速度を標準モードの速度波形における加速区間よりも大きくして、標準モードよりも加速区間を短縮し、等速区間の開始時点(加速区間の終了時点)を早めて等速区間を延長する。
【0040】
なお、各補正モードでは、上記のようにすることで、吐出行程において吐出される搬送流体が増量する。これに対応して、吸入行程においても同量の搬送流体を吸入できるように、標準モードの速度波形における吸入行程に比して、各補正モードの吸入行程における吸入量が増加されるように駆動部101を介して搬送部材103が移動させられる。
【0041】
補正度選択部204は、第1補正度、第2補正度、第3補正度の3つの補正度を選択可能に構成される。ここで、「補正度」とは、上記の補正モードにおいて、等速区間を延長する場合の延長の度合い(延長幅、単位:[秒])をいう。本実施形態では、第1補正度よりも第2補正度が大きくされ、第2補正度よりも第3補正度が大きくなるように設定されている。
【0042】
例えば、高速モードの第1補正モード(図2(b))において、第1補正度が適用された場合は、標準モードの吐出行程における等速区間が0.4秒(図2(a)の0.1秒〜0.5秒の範囲、及び0.6秒〜1.0秒の範囲)であるのに対して、第1補正モードの等速区間が0.42秒(図2(b)及び図4においてt11から加速区間の0.1秒を差し引いた区間、及びt’11から加速区間の0.1秒を差し引いた区間(0.52秒−0.1秒))となり、0.02秒の延長がなされる。この場合、第1補正モードの速度波形における減速区間は、標準モードの0.1秒から、0.08秒に短縮される。なお、図4、図5は、図2、図3に示すt11〜t31、t‘11〜t’31に係る数値と補正モード、補正度との関係を示す表である。図4、図5に示す数値の単位はいずれも[秒]である。
【0043】
高速モードの第1補正モードにおいて、第2補正度が適用された場合は、標準モードの吐出行程における等速区間が0.4秒であるのに対して、第1補正モードの等速区間が0.44秒(図4を参照して、0.54秒(t11,t’11)−0.1秒)となり、0.04秒の延長がなされる。この場合、第1補正モードの速度波形における吐出行程の減速区間は、標準モードの0.1秒から、0.06秒に短縮される。
【0044】
高速モードの第1補正モードにおいて、第3補正度が適用された場合は、標準モードの吐出行程における等速区間が0.4秒であるのに対して、第1補正モードの等速区間が0.46秒(図4を参照して、0.56秒(t11,t’11)−0.1秒)となり、0.06秒の延長がなされる。この場合、第1補正モードの速度波形における吐出行程の減速区間は、標準モードの0.1秒から0.04秒に短縮される。
【0045】
高速モードの第2補正モード(図2(c))において、第1補正度が適用された場合は、標準モードの吐出行程における等速区間が0.4秒であるのに対して、第2補正モードの等速区間が0.44秒(図2(c)及び図4において、t22(0.52秒)からt21(0.08秒)を差し引いた区間、及び、t’22(0.52秒)からt’21(0.08秒)を差し引いた区間)となり、0.04秒の延長がなされる。この場合、第2補正モードの速度波形における吐出行程の加速区間は、標準モードの0.1秒から、0.08秒に短縮される。また、速度波形における吐出行程の減速区間は、標準モードの0.1秒から、0.08秒に短縮される。
【0046】
高速モードの第2補正モードにおいて、第2補正度が適用された場合には、標準モードの吐出行程における等速区間が0.4秒であるのに対して、第2補正モードの等速区間が0.48秒(0.54秒(t22,t’22)−0.06秒(t21,t’21))となり、0.08秒の延長がなされる。この場合、第2補正モードの速度波形における吐出行程の加速区間は、標準モードの0.1秒から、0.06秒に短縮される。また、速度波形における吐出行程の減速区間は、標準モードの0.1秒から、0.06秒に短縮される。
【0047】
高速モードの第2補正モードにおいて、第3補正度が適用された場合には、標準モードの吐出行程における等速区間が0.4秒であるのに対して、第2補正モードの等速区間が0.52秒(0.56秒(t22,t’22)−0.04秒(t21,t’21))となり、0.12秒の延長がなされる。この場合、第2補正モードの速度波形における吐出行程の加速区間は、標準モードの0.1秒から、0.04秒に短縮される。また、速度波形における吐出行程の減速区間は、0.1秒から、0.04秒に短縮される。
【0048】
高速モードの第3補正モード(図2(d))において、第1補正度が適用された場合には、標準モードにおける吐出行程の等速区間が0.4秒であるのに対して、第3補正モードの等速区間が0.42秒(図2(d)及び図4において、標準モードの等速区間0.4秒に、標準モードの加速区間0.1秒から短縮された加速区間t31又はt’31(0.08秒)を差し引いた区間(0.02秒)を加えた区間)となり、0.02秒の延長がなされる。この場合、第3補正モードの速度波形における吐出行程の加速区間は、標準モードの0.1秒から、0.08秒に短縮される。
【0049】
高速モードの第3補正モードにおいて、第2補正度が適用された場合には、標準モードにおける吐出行程の等速区間が0.4秒であるのに対して、第3補正モードの等速区間が0.44秒(図2(d)及び図4を参照し、0.4秒+(0.1秒−0.06秒))となり、0.04秒の延長がなされる。この場合、第3補正モードの速度波形における吐出行程の加速区間は、標準モードの0.1秒から、0.06秒に短縮される。
【0050】
高速モードの第3補正モードにおいて、第3補正度が適用された場合には、標準モードにおける吐出行程の等速区間が0.4秒であるのに対して、第3補正モードの等速区間が0.46秒(図2(d)及び図4を参照し、0.4秒+(0.1秒−0.04秒))となり、0.06秒の延長がなされる。この場合、第3補正モードの速度波形における吐出行程の加速区間は、標準モードの0.1秒から、0.04秒に短縮される。
【0051】
低速モードの第1補正モード(図3(b))において第1補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒(図3(a)を参照し、0.2秒から1.0秒までの区間、及び1.2秒から2.0秒までの区間)であるのに対して、第1補正モードの等速区間が0.84秒(図3(b)、図5を参照し、t11(1.04秒)から加速区間の0.2秒を差し引いた区間、又はt’11(1.04秒)から加速区間の0.2秒を差し引いた区間)となり、0.04秒の延長がなされる。この場合、第1補正モードの速度波形における吐出行程の減速区間は、標準モードの0.2秒から、0.16秒に短縮される。
【0052】
低速モードの第1補正モードにおいて第2補正度が適用された場合には、標準モードの等速区間が0.8秒であるのに対して、第1補正モードの等速区間が0.88秒(図3(b)及び図5を参照し、1.08秒(t11,t’11)−0.2秒(加速区間))となり、0.08秒の延長がなされる。この場合、第1補正モードの速度波形における吐出行程の減速区間は、標準モードの0.2秒から、0.12秒に短縮される。
【0053】
低速モードの第1補正モードにおいて第3補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒であるのに対して、第1補正モードの等速区間が0.92秒(図3(b)及び図5を参照し、1.12秒(t11,t’11)−0.2秒(加速区間))となり、0.12秒の延長がなされる。この場合、第1補正モードの速度波形における減速区間は、標準モードの0.2秒から、0.08秒に短縮される。
【0054】
低速モードの第2補正モードにおいて第1補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒(図3(a))であるのに対して、第2補正モードの等速区間が0.88秒(図3(c)及び図5を参照し、t22の区間(1.04秒)からt21の区間(0.16秒)を差し引いた区間、及びt’22の区間(1.04秒)からt’21の区間(0.16秒)を差し引いた区間)となり、0.08秒の延長がなされる。この場合、第2補正モードにおける加速区間は、標準モードの0.2秒から、0.16秒に短縮される。さらに、第2補正モードにおける減速区間は、標準モードの0.2秒から、0.16秒に短縮される。
【0055】
低速モードの第2補正モードにおいて第2補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒であるのに対して、第2補正モードの等速区間が0.96秒(図3(c)、図5を参照し、1.08秒(t22,t’22)−0.12秒(t21,t’21))となり、0.16秒の延長がなされる。この場合、第2補正モードにおける加速区間は、標準モードの0.2秒から、0.12秒に短縮される。さらに、第2補正モードにおける減速区間は、標準モードの0.2秒から、0.12秒に短縮される。
【0056】
低速モードの第2補正モードにおいて第3補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒であるのに対して、第2補正モードの等速区間が1.04秒(図3(c)及び図5を参照し、1.12秒(t22,t’22)−0.08秒(t21,t’21))となり、0.24秒の延長がなされる。この場合、第2補正モードにおける加速区間は、標準モードの0.2秒から、0.08秒に短縮される。さらに、第2補正モードにおける減速区間は、標準モードの0.2秒から、0.08秒に短縮される。
【0057】
低速モードの第3補正モードにおいて第1補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒(図3(a)参照)であるのに対して、第3補正モードの等速区間が0.84秒(図3(d)及び図5を参照し、標準モードにおける等速区間の0.8秒に、標準モードにおける加速区間の0.2秒から短縮された加速区間t31又はt’31の区間である0.16秒を差し引いた区間の0.04秒を加えた区間)となり、0.04秒の延長がなされる。この場合、第3補正モードの加速区間は、標準モードの0.2秒から、0.16秒に短縮される。
【0058】
低速モードの第3補正モードにおいて第2補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒であるのに対して、第3補正モードの等速区間が0.88秒(図3(d)及び図5を参照し、0.8秒+(0.2秒−0.12秒(t31,t’31)))となり、0.08秒の延長がなされる。この場合、第3補正モードの加速区間は、標準モードの0.2秒から、0.12秒に短縮される。
【0059】
低速モードの第3補正モードにおいて第3補正度が適用された場合は、標準モードの等速区間が0.8秒であるのに対して、第3補正モードの等速区間が0.92秒(図3(d)及び図5を参照し、0.8秒+(0.2秒−0.08秒(t31,t’31)))となり、0.12秒の延長がなされる。この場合、第3補正モードの加速区間は、標準モードの0.2秒から、0.08秒に短縮される。
【0060】
オートチューニング実行部205は、高速モード、低速モードの速度モード、補正モード、補正度をそれぞれ組み合わせてポンプシステムの運転を実行するためのものである。有効面積設定部206は、搬送部材103が搬送流体を搬送するために有効な面積を設定するためのものである。流量設定部207は、搬送路110の搬送流体の流量を選択・設定できるように構成される。
【0061】
脈動率算出部208は、流量信号検出部106から送信される流量信号に基づいて、搬送流体の脈動率を算出する。
【0062】
この脈動率(X)は、以下の式により算出される。
X=1/2×{(Qmax−Qmin)/Qave}×100[±%]
【0063】
ここで、Qmaxは、所定時間内における搬送流体の流量の最大値であり、Qminは、同じ所定時間内における搬送流体の流量の最小値である。また、Qaveは、同じ所定時間内における搬送流体の平均流量である。
【0064】
表示部209は、搬送流体の種類、流量、速度モード、補正方法(補正モード)、補正度、搬送部材103の有効面積、脈動率その他の種々の情報を表示できるように構成される。表示部209は、タッチパネル方式であってもよく、この表示部209を介して所定の数値を入力できるようになっていてもよい。
【0065】
制御部300は、設定値演算部301と、目標変位テーブル302と、変位フィードバック信号処理部303と、運転制御部304と、電流制御部305と、駆動制御部306を有する。制御部300には、2つの搬送部材103、2つの駆動部101に対応して、2つの目標変位テーブル302、2つの変位フィードバック信号処理部303、2つの運転制御部304、2つの電流制御部305、及び2つの駆動制御部306が設けられる。
【0066】
設定値演算部301は、操作部200で設定された設定信号を受信し、これに基づいて所定の演算を行い、演算結果に係る信号を目標変位テーブル302に送信する。これにより、搬送部材103の所定の速度波形が設定される。目標変位テーブル302は、設定値演算部301からの送信された信号を変位テーブルに書き込み、同時にそのデータファイルを作成保存する。変位フィードバック信号処理部303は、変位信号検出部102からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0067】
運転制御部304は、操作部200によって設定・選択された運転モードの制御、および目標変位テーブル302の信号と、変位フィードバック信号処理部303で検知される信号との比較演算処理を行う。電流制御部305は、駆動部101を制御するために駆動制御部306に送る電流量を制御する。駆動制御部306は、電流制御部305から送られる電流を駆動部101に送るタイミングを制御することで、駆動部101を所定の周期で駆動する。
【0068】
上記構成のポンプシステムにおいて、オートチューニング実行部は、速度モード選択部の速度モード(高速モード又は低速モード)、補正方法選択部の補正モード(第1補正モード〜第3補正モード)、補正度選択部(第1補正度〜第3補正度)のそれぞれを順次組合せ、全ての補正の組合せについて搬送流体を所定時間だけテスト搬送する(例えば、高速モードと第1補正モードと第1補正度の組合せ、高速モードと第1補正モードと第2補正度の組合せ、…)。このとき、各補正の組み合わせにおける第1周期、第2周期は、標準モードの場合と、補正が適用された場合とで変化しない。すなわち、第1周期において、各補正モード、各補正度が適用されたとしても、その周期は1秒で変わらず、第2周期において、各補正モード、各補正度が適用されたとしても、その周期は2秒で変わらない。
【0069】
脈動率算出部は、上記の全ての補正の組合せについて、搬送流体の脈動率を算出する。オートチューニング実行部は、全ての補正の組合せについての脈動率について比較をし、最も脈動率の低い補正の組合せを特定する。これによって特定された補正の組合せを用いて、オートチューニング実行部は、搬送流体の搬送を実行するように運転制御部304に制御信号を送信する。
【0070】
これによって、ポンプシステムは、搬送流体の粘度、圧力、温度の種々の条件による脈動を可及的に低減し、搬送流体の最適な無脈動搬送を実現できるようになる。
【0071】
なお、本発明は上記の実施形態に限らず、発明思想を逸脱しない範囲において適宜変更・変形が可能である。
【0072】
例えば、上記の実施形態では、速度モードの高速モードの周期を1秒とし、低速モードの周期を2秒とした例を示したが、これに限らず、周期は、搬送流体に応じて適宜選択できる。また、上記の実施形態では、高速モードと低速モードの2種類の速度モードを選択可能なポンプシステムを例示したが、これに限らず、3種類以上(少なくとも2種類以上)の速度モードを選択可能に構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、補正度について、第1補正度、第2補正度、第3補正度の3種類の補正度を選択できるポンプシステムを例示したが、これに限らず、2種類、又は4種類以上の補正度を選択可能に構成してもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、搬送路110を流れる搬送流体の流量信号に基づいて脈動率を算出する例を示したが、これに限らず、搬送流体の圧力に基づいて脈動率を算出することも可能である。
【0075】
また、吐出工程及び吸入工程における加速区間、等速区間、減速区間は、上記の実施形態で例示した数値に限らず、第1周期、第2周期の大きさに応じて適宜変更可能である。
【0076】
また、上記の実施形態では、第1補正度よりも第2補正度が大きく、第2補正度よりも第3補正度が大きくされた例を示したが、これに限らず、第1補正度よりも第2補正度を小さくし、第2補正度よりも第3補正度を小さくする等の他、第1補正度〜第3補正度を適宜変更できる。
【符号の説明】
【0077】
100…送液部、101…駆動部、102…変位信号検出部、103…搬送部材、104…ポンプヘッド、105…逆止弁、106…流量信号検出部、107…3方電動制御弁、108…圧力計、109…タンク、110…搬送路、111…背圧弁、200…操作部、201…運転・停止実行部、202…速度モード選択部、203…補正方法選択部、204…補正度選択部、205…オートチューニング実行部、206…有効面積設定部、207…流量設定部、208…脈動率算出部、209…表示部、300…制御部、301…設定値演算部、302…目標変位テーブル、303…変位フィードバック信号処理部、304…運転制御部、305…電流制御部、306…駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期の往復動によって搬送流体を搬送路内で搬送するための搬送部材と、この搬送部材を、搬送流体を吐出する吐出行程と、搬送流体を吸入する吸入行程とを併せて1つのサイクルとして駆動する駆動部と、搬送路内の搬送流体の流量を検出する流量信号検出部と、
流量信号検出部によって測定される流量信号に基づいて搬送流体の脈動率を算出する脈動率算出部と、搬送部材の周期について第1周期、第2周期の少なくとも2つの周期を選択可能にする速度モード選択部と、
搬送流体の吐出行程において、所定の加速区間、等速区間、減速区間の搬送部材を駆動する標準モードに対して、標準モードの等速区間よりも等速区間を延長するとともに、標準モードの加速区間、減速区間よりもその一方又は両方を短縮して、搬送部材を駆動する複数の補正モードを選択可能な補正方法選択部と、
前記各補正モードにおいて延長される等速区間の延長幅を複数の補正度として設定して選択可能な補正度選択部と、を備え、
少なくとも2つの周期、複数の補正モード、複数の補正度のそれぞれを組み合わせるとともに、標準モードとの周期を変えることなく搬送部材を往復動させて搬送流体を搬送するとともに、脈動率算出部によって各組合せについて脈動率を算出するとともに、最も脈動率の低い組合せを採用して搬送流体を搬送するように構成されてなることを特徴とするポンプシステム。
【請求項2】
前記補正方法選択部は、吐出行程の減速区間を標準モードの減速区間から短縮して等速区間を延長する第1補正モードと、吐出行程の加速区間及び減速区間を標準モードの加速区間及び減速区間から短縮して等速区間を延長する第2補正モードと、吐出行程の加速区間を標準モードの加速区間から短縮して等速区間を延長する第3補正モードとを選択可能に構成される請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記補正度選択部は、所定の第1補正度と、第1補正度よりも等速区間を大きく延長する第2補正度と、第2補正度よりも等速区間を大きく延長する第3補正度を選択可能に構成される請求項1又は2に記載のポンプシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−261379(P2010−261379A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113449(P2009−113449)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000229760)株式会社タクミナ (25)
【Fターム(参考)】