説明

ポンプ用タペット

【課題】安価に製造することができるポンプ用タペットを提供する。
【解決手段】ポンプ用タペット21は、シャフト22と、シャフト22の外径側に配置され、シャフト22上に回転可能に支持されたころ軸受31と、シャフト22およびころ軸受31を収容し、その外径面23hに凹部としての貫通孔23iが設けられたケース23と、その一部が外径面23hから突出するように貫通孔23iに嵌合され、ケース23の位置決めを行なう円柱状の位置決めピン24とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポンプ用タペットに関するものであり、特に、ころ軸受を含むポンプ用タペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンには、高圧で燃料を噴射する高圧ポンプが備えられているものがある。高圧ポンプは、カムが設けられたカムシャフトの回転運動をポンプ用プランジャーの往復直線運動に変換し、ポンプ用プランジャーの往復直線運動によりガスを送り込んで高圧室内で高圧化し、燃料室内に噴射して燃料を供給している。高圧ポンプの構成部材として、カムシャフトの回転運動を往復直線運動としてポンプ用プランジャーに伝達するポンプ用タペットがある。ポンプ用タペットには、カムとの接触部の形状等により、ころを含むころ入りタペットやきのこ形タペット等、複数の種類がある。
【0003】
ここで、ころ軸受を含むポンプ用タペットに関する技術が、DE 10 2005 047 234 A1(特許文献1)に開示されている。図16は、特許文献1に示すポンプ用タペットの断面図である。図16を参照して、特許文献1に示すローラプッシュロッド101としてのタペットは、プッシュロッドハウジング102と、これに固定されニードルで支承されたプッシュロッドローラ103(ころ軸受)とを有している。ローラプッシュロッド101が、時計回りに回転するカム軸104の3段カム105により駆動される。これと共にローラプッシュロッド101はプッシュロッドガイド孔106の中で図16中の矢印XVIで示す軸方向に案内され、燃料高圧ポンプ(図示せず)のポンププランジャー107を駆動している。
【0004】
プッシュロッドローラ103は、3段カム105と当接する外輪108と、外輪108の内径側に配置されるシャフト109と、外輪108およびシャフト109の間に配置される複数のニードルころ110とを含む。プッシュロッドローラ103は、総ころ形式、すなわち、外輪108およびシャフト109の間に複数のニードルころ110のみが配置された形式である。
【特許文献1】DE 10 2005 047 234 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、ケースとしてのプッシュロッドハウジング102は、ガイドピン111によって、その周方向の回転を規制することとしている。ここで、特許文献1によると、ガイドピン111は、断面きのこ形状である。このようなガイドピン111は複雑な形状であり、容易に製造することができない。そうすると、ポンプ用タペットを安価に製造することができないことになる。
【0006】
この発明の目的は、安価に製造することができるポンプ用タペットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るポンプ用タペットは、カムが設けられたカムシャフトの回転運動を往復直線運動としてポンプ用プランジャーに伝達し、ポンプ用プランジャーと共に往復直線運動を行なう。ポンプ用タペットは、シャフトと、シャフトの外径側に配置され、シャフト上に回転可能に支持されたころ軸受と、シャフトおよびころ軸受を収容し、その外径面に凹部が設けられたケースと、その一部が外径面から突出するように凹部に嵌合され、ケースの位置決めを行なう円柱状の位置決めピンとを含む。ころ軸受は、カムと当接する外輪と、外輪とシャフトとの間に配置される複数のころとを備える。
【0008】
このようにケースの位置決めを行なう位置決めピンの形状を円柱状にすることにより、その外形形状を単純化して、容易に製造することができる。したがって、このような位置決めピンを含むポンプ用タペットを安価に製造することができる。
【0009】
好ましくは、凹部は、位置決めピンの外径面に沿うようケースの外径面から凹んだ形状を有する。こうすることにより、位置決めピンの外径面とケースの凹部とを合わせて、位置決めピンと凹部とをより確実に嵌合させることができる。
【0010】
さらに好ましくは、位置決めピンは、凹部に圧入固定されている。こうすることにより、位置決めピンがケースに設けられた凹部から脱落する虞を大きく低減することができる。
【0011】
さらに好ましくは、凹部および位置決めピンは、それぞれ複数設けられている。こうすることにより、より確実に、かつ、適切にポンプ用タペットの周方向の移動を規制することができる。
【0012】
さらに好ましくは、ころ軸受は、ころを保持する保持器を備える。特許文献1に記載された総ころ形式の軸受では、高速回転時において、軸受内におけるころの位置が安定せず、ころのスキューが発生してしまう。このころのスキューにより、ころがころ軸受を横方向、すなわち、図16の紙面表裏方向となるシャフト109の軸方向に押す形となる。このようなころ軸受の横走りにより、ころ軸受とハウジングとの間でころ軸受の端部が潤滑不良になったり、ころ軸受が摩耗してしまう虞がある。
【0013】
しかし、こうすることにより、ポンプ用タペットの構成部材であるころ軸受において、高速回転時におけるころ軸受内でのころの位置を保持器によって安定させることができる。そうすると、ころのスキューを抑制して、ころ軸受の横走りを防止することができる。したがって、高速回転時におけるころ軸受の潤滑不良、およびころ軸受の摩耗の虞を低減することができる。その結果、ポンプ用タペットの長寿命化を図ることができる。すなわち、このようなポンプ用タペットは、安価に製造することができると共に、長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように位置決めピンの形状を円柱状にすることにより、その外形形状を単純化して、容易に製造することができる。このような位置決めピンは、凹部に嵌合されてケースに取り付けられる。したがって、このような位置決めピンを含むポンプ用タペットを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るポンプ用タペット(以下、単に「タペット」という)を含む高圧ポンプの一部を示す断面図である。図2および図3は、図1に示す高圧ポンプに含まれるタペットの断面図である。図4は、図2および図3に示すタペットの概略斜視図である。図5は、図4に示すタペットを、図4中の矢印Vの方向から見た図である。図6は、図4に示すタペットを、図4中の矢印VIの方向から見た図である。図7は、図4に示すタペットを、図4中の矢印VIIの方向から見た図である。図8は、図4に示すタペットを図4中の矢印VIIIの方向から見た図である。なお、図2は、図5中に示すII−II断面に相当し、図3は、図6中に示すIII−III断面に相当する。なお、以下に示す図において、理解の容易の観点から、ころの断面のハッチングの図示を省略している。
【0016】
図1〜図8を参照して、まず、この発明の一実施形態に係るタペットを含む高圧ポンプの構成について説明する。この発明の一実施形態に係るタペットを含む高圧ポンプ11は、カム12aがその外径側に設けられており、図1中の矢印Aの方向に回転運動を行なうカムシャフト12と、カム12aと当接し、カムシャフト12の回転運動を往復直線運動としてポンプ用プランジャー13(以下、単に「プランジャー」という)に伝達すると共に往復直線運動を行なうタペット21と、タペット21に当接して往復直線運動を行なう棒状部材としてのプランジャー13と、プランジャー13の往復直線運動に応じてガスを送り込み高圧化させる高圧室(図示せず)と、タペット21と当接し、プランジャー13を内方側に配置するようにして設けられたバネ14と、タペット21、プランジャー13およびバネ14を収容するハウジング15とを含む。
【0017】
タペット21、プランジャー13およびバネ14は、ハウジング15に設けられた開口孔16内に収容されるようにして配置される。タペット21は、開口孔16の内径面16aで、図1中の上下方向、すなわち、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向に案内される。
【0018】
カムシャフト12とタペット21とは、カム12aの外径面12bと、タペット21に含まれるころ軸受31に備えられる外輪32の外径面32aとが当接するように配置される。プランジャー13の一方端部13aは、タペット21に含まれるケース23に設けられた中間底23cと当接するように配置される。バネ14は、その一方端部14aが中間底23cの下方側に設けられたバネ座17と当接するように配置される。
【0019】
バネ14は下方向、すなわち、図1中の矢印Iで示す方向と逆の方向に弾性力を有する。タペット21は、バネ14の弾性力によりプランジャー13を介して、上方向、すなわち、図1中の矢印Iで示す方向に付勢されている。
【0020】
カムシャフト12の回転運動、バネ14の付勢、および開口孔16の内径面16aの案内等により、タペット21およびプランジャー13は、上下方向、すなわち、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向に往復直線運動を行なう。ここでいう往復直線運動は、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向への運動である。タペット21は、多少傾きながらも、図1中の矢印Iの方向またはその逆の方向への往復直線運動を行なう。カムシャフト12が高速で回転すると、このタペット21およびプランジャー13の往復直線運動の速度も速くなる。
【0021】
高圧室は、プランジャー13の図示しない他方端部側に配置される。プランジャー13の往復直線運動により、高圧室内に供給された燃料の高圧化を図ることができる。
【0022】
次に、この発明の一実施形態に係るタペット21の構成について説明する。タペット21は、シャフト22と、シャフト22の外径側に配置され、シャフト22上に回転可能に支持されたころ軸受31と、シャフト22およびころ軸受31を収容するケース23とを含む。
【0023】
ケース23は、円筒状の周壁23aと、上下方向の空間を仕切るように周壁23aの内径面23bの途中位置に設けられた中間底23cとを含む。ケース23のうち、中間底23cの部分が、プランジャー13と当接する。周壁23aおよび中間底23cは、所定の肉厚を有する。
【0024】
周壁23aの一方端側には、シャフト22を支持する一対の支持孔23d、23eが設けられている。この一対の支持孔23d、23eにシャフト22を挿入するようにして、シャフト22を配置する。シャフト22の外径側には、ころ軸受31が配置される。このようにして、ケース23は、中間底23cから周壁23aの一方端側に向かう空間23fで、シャフト22およびころ軸受31を収容する。
【0025】
中間底23cから周壁23aの他方端側に向かう空間23gには、プランジャー13の一部が収容される。具体的には、プランジャー13の一方端部13aが中間底23cの径方向の中央部分に当接するようにして配置され、プランジャー13の一方端部13aが収容される。なお、バネ14の一方端部14aについても、空間23g内に収容される。
【0026】
中間底23cには、その厚み方向に貫通する4つの油孔25が設けられている(図7および図8参照)。4つの油孔25は、プランジャー13の一方端部13aと中間底23cとの当接部分を避けるようにして設けられている。この油孔25を利用して、空間23fおよび空間23g間において、タペット21に供給される潤滑油を通油させることができる。
【0027】
ケース23には、周壁23aの外径面23hから内径面23bまで貫通する凹部としての貫通孔23iが設けられている。この貫通孔23iには、その一部が外径面23hから突出するように位置決めピン24が嵌合されている。位置決めピン24は、開口孔16内に配置されたタペット21の位置決めを行なう。すなわち、タペット21は、ケース23の位置決めを行なう位置決めピン24を含む。なお、ケース23の位置決めについては、後述する。
【0028】
図9は、位置決めピン24の斜視図である。図10は、位置決めピン24の嵌合状態を示す図であり、図6中に示すX−X断面の一部に相当する。図1〜図10を参照して、位置決めピン24は、図9中の矢印Bで示す方向に延びる円筒状の部材であり、断面の外形が円となる(図10参照)。なお、この円は、真円でなくともよい。位置決めピン24のうち、曲面から構成される外径面24cの長手方向両側に位置する端面24aの角部には、C面取りやR面取り等の面取り24bが設けられている。このように位置決めピン24の形状を円柱状にすることにより、その外形形状を単純化して、容易に製造することができる。したがって、このような位置決めピン24を含むタペット21を安価に製造することができる。
【0029】
上記したように、位置決めピン24は、貫通孔23iへの嵌合時に、その一部が外径面23hから突出するように構成されている。ここで、位置決めピン24は、凹部としての貫通孔23iに圧入固定されている。こうすることにより、位置決めピン24がケース23に設けられた凹部としての貫通孔23iから脱落する虞を大きく低減することができる。
【0030】
ハウジング15の開口孔16の内径面16aには、内径面16aから凹むように図1中の矢印Iの方向に延びる凹溝16bが設けられている。タペット21の開口孔16への収容時には、位置決めピン24の突出した部分を、この凹溝16bに嵌合させる。これにより、開口孔16内におけるケース23、引いてはタペット21の周方向の位置決めを行なう。これにより、開口孔16内におけるタペット21の周方向への回転を防止することができる。
【0031】
次に、タペット21に含まれるころ軸受31の構成について説明する。図11は、図2中の二点鎖線のXIで示す部分の拡大図である。図11中の一点鎖線で、ころピッチ円31aを示している。図12は、図11に示す矢印XIIの方向からころ軸受31の一部を見た図である。図13は、ころ軸受31の一部を示す断面図であり、図11中のXIII−XIII断面である。図1〜図13を参照して、ころ軸受31は、外輪32と、外輪32とシャフト22との間に配置される複数のころ33と、複数のころ33を保持する保持器34とを備える。
【0032】
保持器34は、一対の環状部34a、34bと、ころ33を収容するポケット34cを形成するように一対の環状部34a、34bを連結する複数の柱部34dとを含む。柱部34dは、軸方向、すなわち、図11で示す断面において、紙面表裏方向に真直ぐに延びる形状である。
【0033】
保持器34は、ころ33と同様に、外輪32とシャフト22との間に配置される。複数のころ33は、保持器34に設けられた各ポケット34cにそれぞれ収容され、保持される。保持器34は、外径案内、すなわち、保持器34の外径側に配置される外輪32の内径面32bと保持器34の外径面34eとが径方向で接触するよう構成されている。また、保持器34には、外径面34eからその内方側に凹むように油溝34fが設けられている。油溝34fは、柱部34dの中央に設けられており、周方向に延びる形状である。
【0034】
カムシャフト12の回転運動により、ころ軸受31の構成部材である外輪32およびころ33も回転する。カムシャフト12が高速で回転すると、ころ33の回転も速くなる。ここで、タペット21の構成部材であるころ軸受31において、高速回転時におけるころ軸受31内でのころ33の位置を保持器34によって安定させることができる。そうすると、ころ33のスキューを抑制して、ころ軸受31の横走りを防止することができる。したがって、高速回転時におけるころ軸受31の潤滑不良、およびころ軸受31の摩耗の虞の少なくすることができる。すなわち、このようなポンプ用タペットは、安価に製造することができると共に、長寿命化を図ることができる。
【0035】
また、このような高圧ポンプ11は、安価に製造することができると共に、高速回転時におけるころ軸受31の潤滑不良、およびころ軸受31の摩耗の虞を少なくすることができるタペット21を含むため、安価に製造することができると共に、短時間でより安定して燃料を高圧化することができる。
【0036】
ここで、保持器34は、外径案内であって、保持器34の外径面34eに、その表面から内方側に凹んだ油溝34fが設けられているため、保持器34と外輪32とを接触させて、保持器34の径方向の位置を安定させることができる。また、保持器34の内径面34gとシャフト22の外径面22aの通油性を向上させると共に保持器34の外径面34eと外輪32の内径面32bとの間の潤滑性を向上させ、保持器34と外輪32との摩耗を抑制することができる。したがって、保持器34、ころ33、外輪32およびシャフト22の長寿命化を図ることができる。なお、油溝は、軸方向に傾きを持って延びるように設けてもよいし、湾曲して延びるように設けてもよい。また、油溝は、複数設けられていてもよい。
【0037】
なお、保持器34は、内径案内であって、保持器34の内径面34gに、油溝が設けられるようにしてもよい。こうすることにより、保持器34とシャフト22とを接触させて、保持器34の径方向の位置を安定させることができる。また、保持器34の外径面34eと外輪32の内径面32bの通油性を向上させると共に保持器34の内径面34gとシャフト22の外径面22aとの間の潤滑性を向上させ、保持器34とシャフト22との摩耗を抑制することができる。したがって、保持器34、ころ33、外輪32およびシャフト22の長寿命化を図ることができる。
【0038】
ころ軸受31に備えられる保持器34については、樹脂製にしても良い。こうすることにより、保持器34自体を軽量にすることができ、総じてタペット21の重量を軽くすることができる。したがって、往復直線運動に要する力、ここでは、タペット21の上下方向の動きに要する力を軽減することができる。また、保持器34を樹脂製とすると、射出成形等により製造することが可能であるため、大量生産が容易となり、安価に製造することができる。保持器34の材質としては、例えば、ナイロン66やナイロン46、ポリフェニレンスルフィド(PPS)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。なお、必要に応じて、樹脂に炭素繊維やガラス繊維、カーボンブラック等を充填することにしてもよい。
【0039】
なお、図12において、ポケット34cに収容されたころ33の転動面33aと柱部34dの側壁面34hとのすき間の寸法については、理解の容易の観点から、誇張して大きく図示している。
【0040】
なお、上記したタペットを構成するころおよびシャフトは、鋼製部材、例えば、SUJ2やSCM420(いずれもJIS規格)等を鍛造、切削等することにより製造される。
【0041】
ここで、上記の実施の形態においては、位置決めピンを嵌合する凹部は、ケースの内径面から外径面まで貫通する貫通孔とすることとしたが、これに限らず、凹部は、ケースの内径面から外径面まで貫通していなくともよい。さらに、凹部は、位置決めピンの外径面に沿うようケースの外径面から凹んだ形状を有するよう構成してもよい。こうすることにより、位置決めピンの外径面とケースの凹部とを合わせて、位置決めピンと凹部とをより確実に嵌合させることができる。
【0042】
図14は、この場合における位置決めピンの嵌合状態を示す図であり、図10に相当する部分である。図14を参照して、凹部27bは、位置決めピン24の外径面24cに沿うようにケース27の外径面27aから凹んだ形状である。このような凹部27bと位置決めピン24とは、位置決めピン24の外径面24cとケース27の凹部27bとを合わせて、より確実に嵌合させることができる。
【0043】
また、上記の実施の形態においては、タペットは、一つの位置決めピンおよび凹部を含むこととしたが、これに限らず、位置決めピンおよび凹部をそれぞれ複数設けることにしてもよい。こうすることにより、より確実に、かつ、適切にタペットの周方向の移動を規制することができる。この場合、複数設けられる位置決めピンおよび凹部は、ケースの周方向の位置は同じで長手方向に並ぶように設けてもよいし、周方向の異なる位置に設けることにしてもよい。なお、周方向に複数設ける場合には、これに対応してハウジングの開口孔の内径面に複数の凹溝を設けるようにする。
【0044】
また、位置決めピンについて、ケースの長手方向と位置決めピンの長手方向が揃うように設けることとしたが、これに限らず、ケースの長手方向と位置決めピンの長手方向とが垂直な方向となるように設ける構成としてもよい。
【0045】
図15は、この場合におけるタペットの一部を示す概略斜視図であり、図4の一部に相当する。図15を参照して、タペット30は、3つの円筒状の位置決めピン28a、28b、28cと、これらをそれぞれ嵌合させる3つの凹部29a、29b、29cとを有する。位置決めピン28a〜28cは、ケース29の長手方向に垂直な方向に嵌合されている。それぞれの位置決めピン28a〜28cは、長手方向の異なる位置であって、ケース29の周方向の同じ位置に設けられている。このように構成することによっても、ケース29の周方向の移動を規制して、位置決めを行なうことができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態においては、保持器は、一対の環状部と、複数の柱部とを含むこととしたが、これに限らず、一体型ではなく複数の部材に分割されており、ころの間に配置される間座型の保持器であってもよい。
【0047】
また、上記の実施の形態において、柱部は、軸方向に真直ぐに延びる形状としたが、これに限らず、柱部が径方向に折曲げられていてもよく、例えば、V型保持器やM型保持器のような形状であってもよい。さらに、柱部の側壁面に、ころの径方向の脱落を防止するころ止め部を設けることとしてもよい。
【0048】
なお、上記の実施の形態においては、ころ軸受は、複数のころを保持する保持器を備える構成としたが、これに限らず、ころ軸受が保持器を備えない構成、すなわち、総ころ形式のころ軸受についても適用される。
【0049】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明に係るタペットは、自動車等のエンジンに燃料を供給する高圧ポンプに含まれ、自動車用部品として、有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の一実施形態に係るタペットを含む高圧ポンプの一部を示す断面図である。
【図2】図1に示す高圧ポンプに含まれるタペットの断面図である。
【図3】図1に示す高圧ポンプに含まれるタペットの断面図である。
【図4】図2および図3に示すタペットの斜視図である。
【図5】図4に示すタペットを、図4中の矢印Vの方向から見た図である。
【図6】図4に示すタペットを、図4中の矢印VIの方向から見た図である。
【図7】図4に示すタペットを、図4中の矢印VIIの方向から見た図である。
【図8】図4に示すタペットを、図4中の矢印VIIIの方向から見た図である。
【図9】位置決めピンの斜視図である。
【図10】位置決めピンの嵌合状態を示す図であり、図6中に示すX−X断面の一部に相当する。
【図11】図2に示すタペットのXIで示す部分の拡大図である。
【図12】図2に示すタペットに含まれるころ軸受の一部を、図11中の矢印XIIの方向から見た図である。
【図13】図2に示すタペットに含まれるころ軸受の一部の断面図であり、図11中のXIII−XIII断面で切断した図である。
【図14】この発明の他の実施形態に係るタペットに含まれる位置決めピンの嵌合状態を示す図であり、図10に相当する部分である。
【図15】この発明のさらに他の実施形態に係るタペットの一部を示す概略斜視図であり、図4の一部に相当する。
【図16】従来におけるローラプッシュロッドとしてのタペットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
11 高圧ポンプ、12 カムシャフト、12a カム、12b,22a,23h,24c,27a,32a,34e 外径面、13 プランジャー、13a,14a 端部、14 バネ、15 ハウジング、16 開口孔、16a,23b,32b,34g 内径面、16b 凹溝、17 バネ座、21,30 タペット、22 シャフト、23,27,29 ケース、23a 周壁、23c 中間底、23d,23e 支持孔、23f,23g 空間、23i 貫通孔、24,28a,28b,28c 位置決めピン、24a 端面、24b 面取り、25 油孔、27b,29a,29b,29c 凹部、31 ころ軸受、31a ころピッチ円、32 外輪、33 ころ、33a 転動面、34 保持器、34a,34b 環状部、34c ポケット、34d 柱部、34f 油溝、34h 側壁面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムが設けられたカムシャフトの回転運動を往復直線運動としてポンプ用プランジャーに伝達し、前記ポンプ用プランジャーと共に往復直線運動を行なうポンプ用タペットであって、
シャフトと、前記シャフトの外径側に配置され、前記シャフト上に回転可能に支持されたころ軸受と、前記シャフトおよび前記ころ軸受を収容し、その外径面に凹部が設けられたケースと、その一部が前記外径面から突出するように前記凹部に嵌合され、前記ケースの位置決めを行なう円柱状の位置決めピンとを含み、
前記ころ軸受は、前記カムと当接する外輪と、前記外輪と前記シャフトとの間に配置される複数のころとを備える、ポンプ用タペット。
【請求項2】
前記凹部は、前記位置決めピンの外径面に沿うよう前記ケースの外径面から凹んだ形状を有する、請求項1に記載のポンプ用タペット。
【請求項3】
前記位置決めピンは、前記凹部に圧入固定されている、請求項1または2に記載のポンプ用タペット。
【請求項4】
前記凹部および前記位置決めピンは、それぞれ複数設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載のポンプ用タペット。
【請求項5】
前記ころ軸受は、ころを保持する保持器を備える、請求項1〜4のいずれかに記載のポンプ用タペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−293641(P2009−293641A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144797(P2008−144797)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】