説明

マイクロカプセル化送達システム

送達される1種または複数の物質を小さなカプセル(例えば、マイクロカプセル)中に封入し、該カプセルを基材の1つまたは複数の表面に適用または接着させる、マイクロカプセル化送達のシステム、組成物または方法が開示されている。封入した物質は、適当な条件に曝されると潜在的に放出される。一実施形態では、本発明は、マイクロカプセルを液体と組み合わせ、さもなくば接触させた際に、飲料に所望の追加特性を付与するマイクロカプセル化成分の潜在的放出を利用して、飲料の全体を調製し得るか、または出来上がった飲料に、追加の添加物を与え得る、好都合な手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2008年5月16日に出願された米国特許出願第12/121,089号の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2007年5月17日に出願された米国仮特許出願第60/936,586号の利益を主張する。上記出願の全体の教示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
液体環境または高水分環境などの環境中に、物質を潜在的に放出するための安全で簡単な信頼できる手段があれば、有用であると思われる多くの用途が存在する。このような放出または送達システムが有用であると思われる多くの用途例が、医薬品、食品、化粧品および分析の産業に存在する。
【背景技術】
【0003】
(発明の要旨)
例えば、「インスタント」飲料の調製、またはその飲料を調製した後の香味料もしくは他の成分のそれに続く添加のために、多様な方法が開発されてきた。自動ドリップ式コーヒーメーカーは、水を加熱し、挽いたコーヒー豆の固体を含有する透水性フィルターからの水の通過を調節すると同時に、細分したコーヒー豆から抽出したオイルおよび香味を水流中に供与することにより、コーヒー香味飲料を創り出す。同様にお茶を調製するとき、フィルター材料のバッグまたは外皮を用いて、葉の固体を収容すると同時に、熱水に浸しながら粉砕茶葉から香味を抽出する。現在のところ、薬味または薬草などの追加の香味料を望むのであれば、所望の調製品の予め香味付けした量を購入するか、または入れた後でその成分の添加を試みなければならない。さらに、高級な香味またはより濃厚なローストを望むのであれば、そのブレンドもある量を購入しなければならない。こうした添加物および高級ローストは、高価であり、保存期間が限られる傾向があり、個人がその購入量を適度に消費できる前にしばしば駄目になる。したがって、飲料の全体を調製できるか、または出来上がった飲料に、個々に小分けされ、保存安定な追加の添加物を与えることができる、好都合な手段があれば望ましかろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一般に、独特で印刷可能なマイクロカプセル化送達システム/組成物、ならびにそれだけに限らないが、香味料、医薬品、薬草治療薬、医薬製剤、化粧品、分析指示薬、および食品・飲料添加物を含む物質の送達を目的とした、該送達システムの使用に関する。本発明は、本発明のマイクロカプセル化送達システムを製造する方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、マイクロカプセルを液体と組み合わせ、さもなくば接触させた際に、飲料に所望の追加特性を付与するマイクロカプセル化成分の潜在的放出を利用して、飲料の全体を調製し得るか、または出来上がった飲料に、追加の添加物を与え得る、好都合な手段を提供する。追加の添加物には、例えば、香味料、ミネラル、ビタミン、調味料、着色料、薬草、薬味または医薬成分がなり得よう。別の実施形態では、本発明は、多様な飲料成分を「インスタント」に調製する方法であって、飲料の主要構成要素を本発明の送達システムに封入し、水または適当な他の液体をそのシステムに導入すると、液体がマイクロカプセルを溶解し、構成成分をその溶媒中に放出し、新たな飲料を即時に創り出す方法を提供する。
【0006】
同じ設計上の特徴および物理的な特性を維持しながら、全く異なる用途に適用できる、本発明の他の例示的な実施形態も包含される。例えば、本発明のマイクロカプセル化送達システムは、ワクチンおよび医薬品などの多くの医薬製剤、ならびに尿検査および妊娠検査などに用いられるような各種の分析指示薬の効用および使用便宜度を高めるために、使用することができる。液体中の不要な化合物の消毒または除去、それだけに限らないが、不純な水を飲料適性にするための抗菌剤の潜在的放出による微生物除去、および/または、味を改良するための硝酸カリウムもしくは炭酸リチウムなどの塩素除去剤の潜在的導入を利用した、塩素などの化合物の水からの除去を含め、それに関する追加の例示的実施形態も包含される。潜在的活性化を必要とする二成分接着剤(例えば、二部エポキシおよび二成分消毒剤)など、他の実施形態も含まれる。
【0007】
したがって、本発明は、送達される1種または複数の物質を小さなカプセル(例えば、マイクロカプセル)中に封入し、該カプセルを基材の1つまたは複数の表面に接着させる、マイクロカプセル化送達のシステム/組成物または方法に関する。物質(複数可)を送達するために、基材および/またはカプセルは、封入された物質(複数可)がカプセルから実質的に放出されるような条件(例えば、接触圧、pH変化、温度変化、薬品との接触または液体もしくは高水分環境との接触)に供される。本発明は、カップ、バッグ、フィルター、香味ディスク、化粧品塗布具などの形態の、マイクロカプセル化送達システムの特定の実施形態にも関する。
【0008】
本発明は、さらに、送達される1種または複数の物質をマイクロカプセル中に封入するステップ、および封入された物質(複数可)を基材に適用するステップを含む、マイクロカプセル化送達システムを作製する方法に関する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、1個または複数のマイクロカプセルを接着した基材を含む組成物に関し、この1個または複数のマイクロカプセルは、適当な条件に曝した際に送達される1種または複数の物質が放出されるように、この送達される1種または複数の物質を封入した1種または複数の高分子を含む。一実施形態では、前記適当な条件には、マイクロカプセルの接触破壊は除外される。一実施形態では、適当な条件は、1つまたは複数の特定の整合条件を含む。別の実施形態では、適当な条件は、マイクロカプセルおよび基材または環境とが関わる化学反応を含む。
【0010】
特定の実施形態では、基材は、紙、パラフィン紙(waxed paper)、プラスチック、ガラス、スチレン、繊維、ろ紙、ティーバッグ、コーヒー香味のポッドおよびディスク、ならびにアルミホイルからなる群から選択される。他の実施形態では、送達される1種または複数の物質は、1種または複数の香味料(flavoring)、芳香剤(aroma)、香料(fragrance)、着色料、医薬品、薬草治療薬、ビタミン、ミネラル、医薬製剤、化粧品、化粧剤、化学剤、分析剤、食品添加物および飲料添加物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、1種または複数の高分子は、天然または合成高分子、ゴム、澱粉、脂質、ペクチンおよび寒天からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、該組成物は、飲料フィルター、飲料香味ディスク、化粧品塗布具、薬用化粧品塗布具、クッキングバッグ、香味カップ、指示薬カップ、医薬品送達カップまたは水安全性カップである。
【0011】
本発明は、封入される1種または複数の物質と1種または複数の高分子とを溶液中で混ぜ合わせ、1個または複数のマイクロカプセルを生成するステップ、場合により溶液から前記マイクロカプセルを分離するステップ、およびこのマイクロカプセルが基材に固着するように、この1個または複数のマイクロカプセルをこの基材に適用するステップを含む、組成物を調製する方法にも関する。
【0012】
本発明は、主要物質に添加物質を提供する方法にも関し、この方法は、
1個または複数のマイクロカプセルを接着した基材を含む組成物を用意するステップであって、この1個または複数のマイクロカプセルは、適当な条件に曝した際に送達される1種または複数の物質が放出されるように、送達される1種または複数の物質を封入した1種または複数の高分子を含むステップ、および
1種または複数の物質を放出するために、適当な条件を供給するステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ひだ付きフィルターバスケット内の底部表面3に多数のマイクロカプセル集団を貼り付けた、ドリップ式コーヒーメーカーの典型的なバスケット型フィルター1の一例を示す図である。拡大図4に示すように、そのマイクロカプセル集団は、集団間の空隙を通る溢れ出し条件を防止するための通常の水ろ過と、ポット全体のコーヒー(例えば、12杯)の調製のために十分な容量の香味入り添加物を可能とするようなパターンに配列されている。
【図2】図2は、マイクロカプセルパターン内に画像または企業ロゴを「印刷」し得る様子を示すためにマスクされた、典型的な香味ディスクを示す図である。ネガ画像7は、カプセル集団8のスクリーン印刷中にマスクされており、したがってマイクロカプセルパターン内に画像を形成する。カラーの画像またはロゴも、多色マイクロカプセルを用い、通常のスクリーン印刷オーバーレイ技法を採用すれば可能である。
【図3】図3は、ペーパーフィルター基材11の表面における、マイクロカプセル集団9およびその間の空隙10の配列を示す拡大図である。
【図4】図4は、ペーパー基材13上の同じマイクロカプセル集団12のかなり拡大した側面図であって、個々の液体入りゼラチンマイクロスフェア14を明瞭に示す図である。
【図5】図5は、「円錐形」フィルターバスケットまたはMelitta(登録商標)型フィルター(15)を用いたコーヒーフィルターの代替形状を示す図である。マイクロカプセル集団16は、フィルター外皮の内面に貼り付けられているが、フィルター材料17が半透明のために、外側から見える。
【図6】図6は、医薬成分、薬草補助剤、香味料または他の有益添加物を含有できるマイクロカプセル集団18を、半透明の液体浸透性外皮19の内表面に貼り付けた、従来型ティーバッグを示す図である。
【図7】図7は、内相20および外相21の両方を示す、単独の液体入り単一コア・単一壁マイクロカプセルを示す図である。
【図8】図8は、上記集団を基材上に「スクリーン印刷する」ために使用する、テフロン(登録商標)被覆ポリプロピレンスクリーンマスク22を示す図である。拡大図23は、その穴開き材料の詳細を示す。穴24のサイズおよび穴開き材料25の厚さは、添加物送達容量の調節に合わせるために変化し得る。当然ながら、マイクロカプセルは、それだけに限らないが、インクジェット、スプレー、貼り合せおよび多くの他の方法を含む数種の代替法により、基材表面に適用してもよい。
【図9】図9は、マイクロカプセルパターンおよびディスクサイズが多様である、典型的な円形の「香味ディスク」形状を数種例示した図である。ディスク形が好ましいが、他の任意の外形または集団パターンを使用してもよい。但し、表面積の合計(前面および裏面)は、送達用封入材料の必要容量を支持するのに十分なことが前提である。図示したディスクは片面式である。
【図10】図10は、濃縮された成分または添加物を含有するマイクロカプセル集団が、典型的なパターンで内壁27に貼り付けられた、典型的な使い捨て飲料カップ26を例示した図である。しかし、この場合は、液体が容器を通過しないので、カプセルが「集団」となる必要はない。したがって、マイクロカプセル凝集体の間に「空隙」を設ける必要もない。所望であれば、カプセルを単一の連続被膜中に貼り付けてもよく、添加物の容量および効力を調節するために、パターンの厚さを増減させてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載するように、本発明は、送達される1種または複数の物質を小さなカプセル(例えば、マイクロカプセル)中に封入し、該カプセルを基材の1つまたは複数の表面に適用または接着させる、マイクロカプセル化送達のシステム、組成物または方法に関する。封入した物質は、適当な条件、即ちカプセルの破壊または浸透を起こす条件に曝されると、潜在的に放出される。一実施形態では、「適当な条件」には、マイクロカプセルの接触破壊、即ち、物理的な圧縮、摩滅、穿刺または圧搾によるマイクロカプセルの破壊が除外される。
【0015】
好ましい実施形態では、マイクロカプセルの破壊は、封入した物質の偶発的な、時期尚早の、または意図せざる放出を避けるために、1つまたは複数の特定の整合条件を利用して行われる。本明細書で使用する場合、特定の整合条件とは、封入した物質の相対的に即座な放出を起こすように特に工夫された条件である。例えば、一部のマイクロカプセルの相対的に即座な放出を起こすには、pHおよび温度の特定条件を必要とし得るが、他のマイクロカプセルの相対的に即座な放出を起こすには、水溶液および温度の特定条件を必要とし得る。好ましい実施形態では、放出は、1つまたは複数の動的条件の変化で起こされる。他の好ましい実施形態では、物質の放出は、マイクロカプセルと基材または環境とが関与する化学反応で起こされる。
【0016】
ほぼ任意の有用な物質が、本発明で使用するためにカプセル(例えば、マイクロカプセル)中に組み入れることができる。適切な物質には、それだけに限らないが、1種または複数の香味料、芳香剤/香料、着色料、医薬品、薬草治療薬、ビタミン、ミネラル、医薬製剤、化粧品または化粧剤、化学剤および分析剤、食品および飲料添加物、ならびに潜在的放出が有益または有用になると思われる他の任意の物質を挙げ得る。該物質は、本明細書にさらに記載するようなマイクロカプセルの形成を妨害しない限り、液体または固体の形態でもよい。幾つかの実施形態では、濃縮形態および/または疎水形態で、例えばオイルベースの抽出物として物質を含むことが、好ましくなり得る。単一の物質を単独で封入することができ、または物質の組合せを同じもしくは異なるマイクロカプセル内に封入することができる。
【0017】
例えば、香味料には、それだけに限らないが、シナモン、ヘーゼルナッツ、アーモンド、ナツメグ、バニラ、甘味料(例えば、スクロース、コーンシロップ、フルクトースおよびデキストロース)、薬味、果実香味料、食用酢、アルコール剤(例えば、Baileys(登録商標)、Kahlua(登録商標)、Chambord(登録商標)、Frangelico(登録商標)、ウォッカ、ラムなど)、チョコレート、グレービーならびに鶏肉および肉の香味汁、ミルク、クリームなどを含む、天然または人工の香味剤を挙げ得る。着色料には、それだけに限らないが、天然または人工の食用色素を挙げ得る。
【0018】
本発明における使用に適切な医薬品および医薬製剤の例には、それだけに限らないが、ワクチン、鎮痛剤、抗生物質、鎮咳剤、風邪治療薬、抗酸剤などを含む、任意の経口投与剤が挙げられる。適切な薬草治療薬および栄養補助食品には、それだけに限らないが、アカシア、朝鮮人参、イチョウ、エキナセア(Echinacea)、亜麻仁、亜麻仁油、フーディア(Hoodia)、リコペン、ルテインおよびコエンザイムQ10が挙げられる。ビタミンおよびミネラルには、限定しないが、ビタミンA、B(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB6、ビタミンB12および葉酸)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンK、鉄、カルシウム、マグネシウム、セレンおよび亜鉛を挙げ得る。本発明における使用に適切な食品および飲料添加物には、例えば、抗酸化剤、抗菌剤、乳化剤および安定剤が挙げられる。本発明の組成物は、微量添加用途に特に良く適合する。
【0019】
本発明において使用する適当な化粧品または化粧剤には、それだけに限らないが、Retinol(登録商標)、クリームおよびローションなどのスキンケア剤、歯の洗浄剤および白色化剤、ネイルケア剤、香水、口紅、日焼け止め、ヘアーカラー、マスカラおよび化学剥離剤などの有機および合成物質が挙げられる。適切な化学剤および分析剤には、それだけに限らないが、銀、塩素、ヨウ素、硝酸カリウム、タンパク質(例えば、抗体、受容体など)、Roccellatinctoria、酸、塩基、核酸などが挙げられる。
【0020】
封入すべき物質に応じて、当業者に公知であるような適切な封入法が選択されよう。例えば、複合または単純コアセルベーション、スプレー乾燥、Wursterコーティング、流動床または共押出、および超音波キャビテーションは、コスト、用途、物理特性、および封入すべき材料との適合性に応じて、使用に適当なほんの数少ない技術である。一般に、封入プロセスには、1種または複数の高分子(「外相材料」)を含む高分子カプセル内に、送達される物質(「内相材料」)を封入することが伴われよう。
【0021】
適当な高分子または高分子組合せの選択は、封入すべき物質、および封入する物質を貼り付ける/接着させる基材に依存することになろう。適切な高分子には、それだけに限らないが、天然または合成高分子、ゴム、澱粉、脂質、ペクチンおよび寒天を挙げ得る。例えば、ゼラチン(例えば、ウシまたはブタのゼラチン)、アラビアゴム、カラギーナン、ローカストビーンガム、ペクチンは、本発明に使用する適切な外相材料の例である。幾つかの実施形態では、該高分子は250以上のブルーム強度をもつことになろう。食品、飲料、栄養補助食品、医薬品または化粧品の用途の場合、外相材料(複数可)は、適当な規制体制(GRAS、DSHEA、FDAなど)の下で認可されなければならない。
【0022】
一般的に言えば、封入すべき物質は、外相材料(複数可)の溶液と混合され、当技術分野で公知の方法を用いて、外相材料(複数可)内に捕捉された内相材料(複数可)を含む小滴が形成される。単一のマイクロカプセルは、1種または複数の内相材料を含有することができる。直径が通常約50〜約2500μmのマイクロカプセルが形成されるが、より小さな直径またはより大きな直径のマイクロカプセルも、送達される物質の容量に応じて有用になり得る。
【0023】
必要であれば、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)などの数種の汎用架橋剤によって、さらに重合を実現することができる。さらなる架橋は、使用する外相材料が室温で固体を形成する場合、大部分の添加物については普通必要でない。
【0024】
形成されたマイクロカプセルは、任意の懸濁液から分離され、適当な基材に適用される。該マイクロカプセルは、それだけに限らないが、インクジェット印刷、オフセット印刷、パターンマスクを介したスクリーン印刷、およびスプレーコーティングを含む、基材への多くの異なる適用法を受けるのに十分な構造的強度を有する。次いで、湿潤なカプセルスラリーを乾燥すると、マイクロカプセルのシェルは、封入した内相成分の放出を起こさずに取り扱える十分な硬さを得る。
【0025】
マイクロカプセルは、紙、パラフィン紙、プラスチック(例えば、プラスチックバッグおよびプラスチックラップなどの硬質または軟質プラスチック)、ガラス、スチレン、繊維(例えば、布)、ろ紙、ティーバッグ、コーヒー香味のポッドおよびディスク、アルミホイルなどを含む、適切な任意の基材に適用することができる。基材表面は、改変しなくてもよく、またはマイクロカプセルの基材への接着を改善するために、マイクロカプセルを適用する前に改変してもよい。例えば、基材は、マイクロカプセルと基材との結合を改善するために、化学的または機械的手段によってエッチングすることができる。代替または追加として、適切な結合剤を基材の表面に適用して、マイクロカプセルをその表面に接着する、または貼り付けることができる。
【0026】
マイクロカプセルは、基材の1つまたは複数の表面の全体または一部に及ぶ、系統的またはランダムなパターンに貼り付けることができる。例えば、マイクロカプセルは、製品名、企業ロゴ、グリルの「焼け焦げ跡」、または他の愉快なデザインなどの図柄パターンに貼り付けることができる。この実施形態では、特定のパターンの創作を促進するために、マイクロカプセルに1種または複数の色素を付け、場合によりマスキング技術を用いる多種の適用法でマイクロカプセルを適用することが、望ましいことになり得る。あるいは、この実施形態の意図する使用に合致する、基材の一部だけにマイクロカプセルを適用することもできる。例えば、飲用カップ、統合的送達カップまたは指示薬カップそのものの内側下部および底部だけに、マイクロカプセルを適用してもよい。
【0027】
マイクロカプセルは、所与の基材が、1種または複数の内相材料を含有した単一種の外相材料だけを最終的に含有するように、適用することができる。あるいは、各外相中に1種または複数の内相材料を含有する、複数種の外相材料を適用することができる。例えば、塩素を封入した単一の外相材料を基材に適用することができ、塩素除去剤を封入した別の異なる外相材料も基材に適用することができる。異なる外相材料は、同じまたは異なる環境誘発因子をもつことができる。例えば、基材に貼り付けた1つの外相材料は、液体との接触により誘発させることができる一方、基材上に貼り付けた別の外相材料は、閾値温度により誘発させることができる。あるいは、基材に貼り付けた1つの外相材料は、ある閾値温度により誘発させることができる一方、基材に貼り付けた別の外相材料は、より高いか低い閾値温度により誘発させることができる。このようにして、封入した物質の放出を制御することができる(例えば、異なる誘発因子に反応して、同時に放出される、または異なる時に放出される)。
【0028】
送達時には、内相材料(複数可)の放出は、1種または複数の適切な放出法または誘発法を用いて実現することができる。この方法が、封入した物質の放出に十分な程度にマイクロカプセルを破損させる見込みのある条件を与えるという条件で、多くの放出法または誘発法を想定し得る。例えば、適切な誘発因子には、それだけに限らないが、マイクロカプセルの物理的破壊(例えば、接触圧)、pH変化、温度、水分の存在、内相材料の拡張、外相材料の収縮、マイクロ波エネルギーおよび/または化学反応が挙げられる。例えば、弱酸の存在下で溶解または不安定化する外相材料と接触する、オレンジジュースなどの酸性飲料により、内相材料(複数可)の放出が起こされよう。これは、特定の整合条件の一例である。あるいは、熱いにせよ冷たいにせよ、封入した成分に比して十分な温度差のある液体を導入すれば、内相材料は、カプセル外皮の限界を超えて拡張を起こし、遂には膜一体性の破滅的喪失が起きることになろう。本発明のある種の実施形態では、マイクロカプセル内に含有される物質(複数可)の放出のために、その破壊が必要になり得るが、他の実施形態では、マイクロカプセルの浸透性が、周囲の液体または環境との平衡点に達しさえすればよい場合がある。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態では、基材は、コーヒーまたはお茶などの加熱飲料を入れるのに多孔性が十分であり、有機性固体の保持能を有するが、ろ過される液体に対して浸透性の一片のろ紙からなる。自動ドリップ式コーヒーメーカーに使用されるコーヒーフィルターは、このようなフィルターの典型例である。「カップ」形または「バスケット」形で、丸く平坦な底部およびひだ付き側面を有するこのフィルターは、香味送達システムの一用途に対する基材として使用される。
【0030】
好ましい一実施形態では、完成したカプセルをコーヒーフィルター基材上に「シルクスクリーン印刷」し、図1に示すような集団化したマイクロカプセルのパターンを形成する。このパターンを用いて、ある程度の水がマイクロカプセルに妨害されずにフィルターを通って流れることが可能になるため、入れる過程の間、例えば、それ以前にマイクロカプセルが付着していたフィルター膜の水による通過を可能とする程度に、大部分のマイクロカプセルが溶解してしまうまで、溢れ出し条件を防止する。こうしたパターンは、所望であればテキスト、画像およびロゴを形成するように変化させ得る(図2)。このパターンは、添加物の相対強度を増減させるためにも改変させ得る。図3は、パターン化された集団に形成されたマイクロカプセルの拡大図を示すのに対し、図4は、フィルター材料表面上に現れるときの、凝集体集団にある個々の液体入りマイクロカプセルの近接図を描写している。同様な結果は、円錐型または「Melitta」フィルター(図5)などの異なるフィルター外形を用いても得ることができるが、但し、マイクロカプセルは、入れるサイクル中に濡れるフィルター材料内側部分の中にある。これは、「ティーバッグ」および主要調製プロセスとして加熱液体または蒸気を用いる他の香味抽出法にも当てはまる。本発明は、ホットアップルサイダー、ホットチョコレート、あるいは調製中のフィルターもしくは紙基材上、または飲料が摂取され得る一杯分容器の内壁上へのマイクロカプセル化成分の適用による、潜在的香味付与技法が有益と思われる、他の任意の加熱飲料に添加物を入れるためにも使用することができる。
【0031】
残りが古くなるのを避けるために十分素早く使用されない恐れのある、「ヘーゼルナッツ1ポンド」などの大きく、時には高価な容量の香味入りコーヒーを購入する代わりに、本発明のこの実施形態では、使用者が、標準的な香味なしコーヒーローストを用いてポットまたはカップ1杯に香味を一度に入れることが可能になる。例えば、本明細書に記載のフィルターが、シナモン、ヘーゼルナッツまたはアーモンドなどの多種の香味で得られるならば、使用者は、香味なしローストコーヒーを1種購入すれば済み、コーヒーの推奨された保存寿命期間内に完全には消費されない恐れがある、予め香味付けした3種のコーヒーを多量に購入する必要なく、所望の香味の1ポットを作製できよう。別の例では、使用者は、「コナ」などの上質コーヒー、または他のよりコクがあり、より高価なブレンドのマイクロカプセル化抽出物を含有するフィルターを手に入れてもよい。より高価なローストを多量に買うのではなく、使用者は、小売缶で入手できるようなより低級のコーヒーに、より高価なローストのエキスを入れてもよい。
【0032】
他の実施形態では、本発明は、殆ど任意の飲料に大部分の任意の添加物を加えるために使用することができる。例えば、特にサイダーで使用するために「薬味フィルター」を創製することができる。サイダーが適当な香味入りフィルターを通過する際に、薬味がサイダーに付与される。それに加え、室温での保存に普通不適当と思われる、他法では傷み易い多くの成分も、マイクロカプセル化が与えるバリヤー内で損傷から防護されよう。別の例では、本発明は、お茶を調製する、または浸けるために、水に浸漬される形状と類似のフィルター外皮を包含する。図6に示すように、「ティーバッグ」外皮の内部は、類似のマイクロカプセル送達システムと共に調製され、したがって加熱水と接触すると、お茶に香味、カモミールなどの薬草治療薬、またはアスピリンなどの薬物を付与する。
【0033】
以下の実施例は、本発明のある種の実施形態を例示することを意図しており、制限的であることを意図していない。本明細書で引用した全てのウェブサイトおよび文書の教示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
コーヒー/飲料フィルター
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが飲料フィルター(例えば、コーヒー)において具体化される。
【0035】
この実施例では、複合コアセルベーションが好ましい封入法であるが、スプレー乾燥、Wursterコーティング、流動床または共押出を含むが、それだけに限らない他の多くの適切な方法も知られている。シナモンを例示的な添加物として使用するが、例えばヘーゼルナッツ、アーモンド、Baileysなどの他の多くの添加物も使用し得る。ブルーム強度250以上を有するブタまたはウシの高ブルームゼラチン(即ち、好ましい第1の高分子)のある量を、ある容量の水に溶解する。等量のアラビアゴム(即ち、共存高分子)を等容量の水に溶解する。各ゾルのpHは、25℃でおよそ(6.0〜8.0)になろう。
【0036】
次に、適量の濃縮添加物、好ましくはオイルベースの抽出物(即ち、「内相」材料)を前記ゾルのいずれかに添加して乳濁液を形成する。適度に撹拌しながら、次いで第2のゾルを第1のゾル/乳濁液に添加する。両者が混合した後、撹拌によって、オイルまたは疎水性物質の層が形成されるのではなく、オイル抽出物の小滴が形成され始めよう。小滴が適切なサイズ(通常、直径が50〜2500μm以上)に分割された後、撹拌を継続するが、小滴のサイズを減少させる程に速くはなく、または増加させる程に遅くはない。次いでpHをおよそ4.5に低下させ、材料温度をおよそ45℃に上昇させる。pHが4.5に達すると、溶液の「曇り」が顕著となろう。高分子のこのフロック形成は、コアセルベートがオイル小滴の周囲に形成されていることを示す。即ち、ゼラチンおよびアラビアゴム(即ち、外相材料または複合高分子)の層が、オイルベースの添加物の周囲にシェルを形成しているところであることを示す。シェルが十分な厚さをもち、利用可能なコアセルベートが全てオイル相を包み終えた後、次いでゾルを、冷水浴中で約5℃に急冷する。この時点で、複合高分子の液状壁が固化し、新たに形成されたマイクロカプセル内に添加物を捕捉する(例えば、図7を参照されたい)。次いで、pHを6.0より高く調節して、コアセルベーションの進行を防止する。pHの調節は、必要なpH変化に応じて、酢酸または水酸化ナトリウムの薄い溶液(5〜10%)で実現することができる。
【0037】
必要であれば、グルタルアルデヒドなどの数種の汎用架橋剤によって、さらなる重合を実現することができる。しかし、この特定の例では、シナモン香味料中に既に存在する天然アルデヒド(シンナムアルデヒド)のために、十分ではあるが相対的に弱い架橋が起こる。使用する外相材料が室温で固体を形成するならば、他の大部分の添加物については、さらなる架橋は普通必要ない。次いで、マイクロカプセルを遠心機または分液ロートに入れ、水で濯ぎ、排水する。比較的均一で球形の液体入りマイクロカプセルのスラリーが、こうして形成される。こうしたマイクロカプセルは、脱水して自由流動性粉末にし、保存してもよく、またはそのまま使用してもよい。また、これらをスラリー状態で保存してもよい。外側カプセルによって、添加物の保存期間が増加し、内相材料の放出まで汚染または菌類蔓延に対してバリヤーを設けることにより、香味および他の有効な特性が保護されよう。
【0038】
次に、穴開きマスクまたは「スクリーン」(例えば、図8を参照されたい)を用いて、ろ紙基材にスラリーを適用し得る。このプロセスは、シルクスクリーン印刷に酷似しているが、但し、その穴は、マイクロカプセルがマスクを通過して、下側の基材に貼り付く、または接着することを可能にすると見込まれるサイズである。一実施形態では、穴の直径が、通常約0.066インチから約0.125インチであることにより、コーヒー1ポット全体(12カップ)に香味を付けるのに十分な添加物を含む、適切なマイクロカプセル集団を基材上に形成することが可能になろう。適切なマスク材料は、テフロン(登録商標)被覆した穴開きHDPEである。カプセルスラリーを、スキージ器具を用いて穴開きマスク全体に引き伸ばした後、マスクを取り除き、ろ紙を乾燥させる。外相材料は、一般に、乾燥時に基材表面に接着することになろう。しかし、必要であれば、澱粉、アルブミンまたは他の食用接着剤の結合剤を別に使用してもよい。脱水した後、カプセルは、そうしなければ壊れ易いカプセルを不注意による破壊が普通は無く取り扱える、十分な壁強度で硬化することになろう。このカプセルは、基材に適用する前に着色し、フィルター上に印刷する際、装飾的なパターン、テキスト、画像またはロゴ(例えば、図2を参照されたい)として適用することができる。あるいは、マイクロカプセルを基材に適用した後、マイクロカプセルおよび/または基材の全部または一部を着色することもできる。フィルターは、今や直ぐに使用できる。
【0039】
次いで、フィルターを自動ドリップ式コーヒーメーカーに配置し、恐らくはたいした等級でない適量の挽いたコーヒーで満たす。コーヒーは普通どおりに入れる。熱水がコーヒーを通ってろ過され始めると、フィルター壁に貼り付いたマイクロカプセルのゼラチン製シェルを溶かし始め、したがって香味添加物がコーヒーの流れに徐々に放出される。マイクロカプセルの空のシェルは、大部分は溶解し、使用済みコーヒー豆の顆粒と共にフィルター中に残る。シナモン香味料は、コーヒー飲料中に今や首尾よく入れられた。フィルターおよびその中身は、もう捨ててもよい。香味料以外に、他の特性向上材料も、本明細書に記載したようにフィルター中に取り入れてもよい。こうした材料には、それだけに限らないが、塩素および他の汚染物質の除去用材料、味改良用のpH調節剤、または入れたコーヒーの外観もしくは物理特性を向上もしくは変化させる添加物を挙げ得る。
【0040】
(実施例2)
香味ディスク
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが香味ディスクにおいて具体化される。
【0041】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが実施例1と同様に調製されるが、但し、基材は、ペーパーディスク、またはマイクロカプセル化物質のパターンもしくは被膜が適用されている他の所望形である。図9は、ディスクの全表面に亘って直径0.066インチ〜0.125インチの集団を有するディスク形パターン形状の数例を示す。この実施形態における封入物質の送達は、消費する前に、マイクロカプセルが溶解し、したがって内相成分(複数可)を送達するのに十分な期間、飲料中に調製済み香味ディスクを浸漬するだけで済ますことができよう。こうしたディスクは、熱いまたは冷たいに関わらず多様な液体飲料に、香味、香料、特性調節剤、着色料、ビタミンおよび医薬成分も送達するように構成することができよう。
【0042】
(実施例3)
化粧品および薬用化粧品塗布具ディスク
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが、塗布具ディスクなどの化粧品または薬用化粧品塗布具において具体化される。
【0043】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが実施例2と同様に調製されるが、但し、内相材料は、化粧品製剤、またはレチノールもしくは皮膚に塗布する他の局所皮膚治療薬などの医薬製剤を構成する。マイクロカプセルは、接触圧、pH変化、体温、発汗または外部環境条件を介して内相材料を放出し、したがって所定の放出状況下で指定した期間に亘り、所望の用量の内部成分を送達することになろう。
【0044】
(実施例4)
クッキングバッグ
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが、オーブン、蒸し器、電気鍋、電子レンジなどでの使用に適したバッグにおいて具体化される。
【0045】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが実施例1と同様に調製されるが、但し、基材は、表面がマイクロカプセルを確実に貼り付けるように調製された、耐熱性高分子のバッグまたは包みである。この調製例は、化学的または機械的手段により表面をエッチングして、プラスチック表面とマイクロカプセル外相材料との機械的結合を可能にすることである。マイクロカプセルが製造プロセスの前に、またはそのプロセスと無関係に調製される場合、必要であれば、カプセルを貼り付けるために、追加の結合剤を使用することができる。本実施形態の目的は、着色料、芳香剤、ビタミン、香味料もしくは他の成分などの食品添加物、またはこの用途に適合し得る添加物の潜在的放出を可能にすることである。食品は、対流、沸騰またはマイクロ波などの便利で適当な任意の方法による調理の前に、バッグに入れられる。マイクロカプセルは、包みとなるバッグの内部にパターン状に貼り付けられる。マイクロカプセルは、ある一定範囲の温度、マイクロ波エネルギーの存在、pH変化、またはマイクロカプセルの破壊の開始に使用できそうな他の任意の要因とし得る所定の条件下で、内相成分を放出することになろう。放出する際、カプセルは、香味、芳香、着色、または該カプセルをクッキングバッグ内部に貼り付けたパターンに従った、食品表面への「グリル焼け焦げパターン」さえも送達することになろう。本実施形態は、調製済み冷凍食品、特に、電子レンジで調理され、それ以外では従来のオーブン調理で付与される所望の特性が実現できない該冷凍食品の製造において、とりわけ有用である。
【0046】
(実施例5)
香味カップ
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが、カップまたはボウルにおいて具体化される。
【0047】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが実施例1に示すと同様にやはり調製されるが、但し、基材は、ボウル、飲用カップ、または他の食品もしくは飲料容器である。この器は、器内に導入される食品または液体が何であれ、それに物質を付与するために、パターン状または連続層に配列されたマイクロカプセルを容器の1つまたは複数の内表面に貼り付けた、熱いまたは冷たい食品または飲料と共に使用する使い捨ての1回使用容器となるのが理想的であろう。図10は、コーティングされた紙の内表面上にスクリーン印刷した「濃縮インスタントコーヒー」のマイクロカプセルの集団パターンを有する、ホット飲料汎用カップ(例えば、紙製コーヒーカップ)の内壁を示す。マイクロカプセルのシェルは、接触破壊により内相材料を不注意にまたは時期尚早に放出することなく、「入れ子式」重ね合せでカップを保存することを可能にする、十分な強度を有する。しかし、熱いにせよ、冷たいにせよ、液体を容器中に導入した後は、カプセルが溶解することにより、中身を液体中に放出することになろう。この実施形態は、プラスチック、スチレン、ガラス、天然繊維およびその他多種のものなど、紙以外の材料で構築された容器を含め、大部分の任意の他種容器と共に使用するように改変できることが予見される。プラスチック、ガラスまたは類似の材料を使用した場合、実施例4に記載のように、マイクロカプセルを基材に確実に貼り付けるために表面の活性化が必要になり得る。カプセルは、例えば、「インスタントコーヒー」を構成する成分を含有し、飲料を創り出すために水を添加しさえすればよくなり得る。カプセルは、高級なローストコーヒーの抽出物も含有し得る。より低級なコーヒー飲料をカップに導入すれば、高級なその抽出物が放出されるため、より低級なブレンドの香味および芳香を高めることになろう。あるいは、カプセルは、シナモンなどの香味料、またはさらには代用ミルク、砂糖もしくはその両方などの飲料調味料だけを含有してもよい。後者の場合、次いでコーヒーが添加され、代用ミルクと砂糖の組合せが放出されて、一般に「レギュラー」カップと認識される飲料が創り出されよう。この構成の「調製済み」カップは、コーヒー自動販売機で、または機上の接客乗務員などが不便な場所でコーヒーを提供する場合に特に有用であり、時間、空間および在庫がかなり節約されよう。
【0048】
(実施例6)
統合的送達プラットホーム(IDP)用カップ
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが、医薬品の統合的送達用カップにおいて具体化される。
【0049】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが実施例5に示すと同様に調製される。しかし、この構成の利用は、多様な医薬品用途を対象としている。この実施形態では、カップを用いて、ワクチン、ビタミン、鎮痛剤、薬物、またはこの種の送達に適当な他の任意の医薬化合物などの広範囲の医薬製剤を経口で送達し得る。これは、丸薬または錠剤の形態で医薬品を摂取することができない、さもなくばそれを嫌がる個人にとって特に有益になろう。この発明により、薬物またはサプリメントが、子供にとって食欲および親しみが高まる飲料内でひそかに送達できるので、ビタミンおよび他の医薬製剤の子供への投与も促進されよう。次いで、子供の好きなこの飲料は、封入材料の潜在的放出が起こった後、搬送媒体となろう。実用的で有益な幾つかの用途には、それだけに限らないが、子供および大人用ビタミン、風邪治療薬、歯の白色化システム、歯磨剤、アスピリンカップ、Alka−Seltzer(登録商標)カップ、使い捨てワクチンカップ、および栄養飲料が挙げられよう。
【0050】
(実施例7)
指示薬カップ
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが、指示薬カップにおいて具体化される。
【0051】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが実施例5に示すと同様にやはり調製されるが、封入物質が、指示的な色変化反応によって、特定の薬品、元素または化合物の有無を示すのに適切なものである。この実施形態は、従来のpHリトマス試験紙に概念的に類似しているが、Roccella Tinctoriaなどの指示薬を含有する溶液または飽和粒子の封入によって機能する。この指示は、例えば、以下の3通りで実現することができる。
1.貼り付けたマイクロカプセルの内相または外相中に組み入れた、指示薬または試薬が起こす色変化。指示的な色変化は、カプセルの溶解ではなく浸透により起こり、カプセルは、無傷で容器の壁に貼り付いたままの状態で色を変化させよう。
2.内壁に貼り付いたマイクロカプセルの外相の溶解による、液体中への指示剤の放出を介した導入液の色変化。
3.マイクロカプセルとの近接または密着で起こる色の変化。この代表例は、熱誘起色変化である。貼り付けたマイクロカプセルは無傷のままであり、カプセル膜の浸透は起こらないが、サーモクロミックロイコ色素の指示薬が、マイクロカプセルの内相または外相のいずれかに取り込まれ、カプセルが温度変化に感受性になり得る。こうしたカプセルは、液体との全般的近接が十分であれば、容器の外表面に貼り付いていてもよい。しかし、この実施形態は、熱伝達速度が肝要であり、液体との密着が必要である場合、付加的な有用性を提供する。この種の他の指示薬と異なり、分離を維持することにより、使い捨て容器内で指示薬が溶液と相互作用し、またはそれを汚染することが防止される。
【0052】
この実施形態は、薬品の有無を判定しなければならず、試料の妥当性を採取時に確認しなければならない状況において、特に有用である。この一例は、紙製またはプラスチック製採取カップの内壁に複数のマイクロカプセルが貼り付いた、尿検査用使い捨て薬物試験器具であり、ここで、ある比率のカプセルが抗体・色素コンジュゲートを含有し、残りのカプセルは適当に較正されたサーモクロミック指示薬溶液を含有する。採取した際、色変化は、カンナビノイドであるTHCなどの所定の化合物または薬品の存在下で、該コンジュゲートのカプセル中で起きよう。同様な色変化は、熱感受性カプセル中でも明らかとなり、試料が人体の温度を有し、実際に試験対象から直接採取されたことを保証することになろう。同じ試料の同時的な現場試験にとって、それ以外の方法では相容れない過程と思われる試験を含め、各種の個別試験のために、多種の指示薬カプセルを単一カップ中に組み入れてもよい。この実施形態の多くの用途が他にも予見され、効力、濃度、pH、またはこの方法に適した他の任意の即時薬品分析を指示するように構成することができる。用途には、それだけに限らないが、薬物試験、尿検査、ケトーシス試験、妊娠検査、水安全性分析、pH試験、化学分析、または安価で即時の使い捨て指示用容器が望ましいと思われる任意の用途が挙げられる。
【0053】
(実施例8)
水安全性カップ
本発明の一態様では、マイクロカプセル化送達システムが、水安全性カップにおいて具体化される。
【0054】
この実施例では、マイクロカプセル化送達システムが、実施例5に示すと同様に調製されるが、水の飲用適性を高める手段を提供することを意図している。塩素、銀およびヨウ素などの様々な水消毒剤は、未処理水に見出される大抵の有害細菌に対して有効であり、本発明の範囲内で使用するために封入することができる。先に掲げた3種の消毒剤のうち、塩素は最も安価で、使用に最も望ましい。しかし、塩素は、処理すべき水の正確な容量に基づいて正確な用量で送達しなければならないが、それは、制御した条件から外れて実施するのは非実用的と一般に見なされている。しかし、本発明の水安全性カップは既知容量の液体を収容するので、カップを満たしたときに、全量の消毒に十分な精確な塩素量を投与し得る。容器の内壁に貼り付けた、粒子形態の塩素を含有するマイクロカプセルは、水と接触した際に溶解することになろう。消毒は即時であり、1回使用容器は使い捨てである。あるいは、消毒用一次マイクロカプセルより潜在的放出時間が長いマイクロカプセルを、容器壁に同時に貼り付けてもよい。こうした二次カプセルは、初期精製プロセスで残った不快な任意の後味を除去するために、硝酸カリウム(硝石)などの塩素除去剤または他の香味向上剤を含有し得る。この実施例では、水は入手できるが、飲用適性が疑わしい、軍隊、国際的旅行、サービス業、キャンピング、ハイキングおよび他の戸外活動のために、特に有用な構成が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個または複数のマイクロカプセルを接着した基材を含む組成物であって、該1個または複数のマイクロカプセルは、適当な条件に曝した際に送達される1種または複数の物質が放出されるように、該送達される1種または複数の物質を封入した1種または複数の高分子を含む、組成物。
【請求項2】
前記適当な条件から、前記マイクロカプセルの接触破壊が除かれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記適当な条件が、1つまたは複数の特定の整合条件を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記適当な条件が、前記マイクロカプセルと基材または環境とが関与する化学反応を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記基材が、紙、パラフィン紙、プラスチック、ガラス、スチレン、繊維、ろ紙、ティーバッグ、コーヒー香味のポッドおよびディスク、ならびにアルミホイルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記送達される1種または複数の物質が、1種または複数の香味料、芳香剤、香料、着色料、医薬品、薬草治療薬、ビタミン、ミネラル、医薬製剤、化粧品、化粧剤、化学剤、分析剤、食品添加物および飲料添加物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1種または複数の高分子が、天然または合成高分子、ゴム、澱粉、脂質、ペクチンおよび寒天からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
飲料フィルター、飲料香味ディスク、化粧品塗布具、薬用化粧品塗布具、クッキングバッグ、香味カップ、指示薬カップ、医薬品送達カップまたは水安全性カップである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
封入される1種または複数の物質と1種または複数の高分子とを溶液中で混ぜ合わせ、1個または複数のマイクロカプセルを生成するステップ、場合により溶液から該マイクロカプセルを分離するステップ、および該1個または複数のマイクロカプセルが基材に固着するように、該マイクロカプセルを該基材に適用するステップを含む、組成物を調製する方法。
【請求項10】
主要物質に添加物質を提供する方法であって、該方法は、
1個または複数のマイクロカプセルを接着した基材を含む組成物を用意するステップであって、該1個または複数のマイクロカプセルは、送達される1種または複数の物質が適当な条件に曝した際に放出されるように、該送達される1種または複数の物質を封入した1種または複数の高分子を含む、ステップ、および
該1種または複数の物質の放出のために、適当な条件を供給するステップ
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−524739(P2011−524739A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509524(P2011−509524)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040710
【国際公開番号】WO2009/140018
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(511099858)ジ アディティブ アドバンテージ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】